発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18
ダイナ5555
TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
H.A.L.担当 川又利明


2010年11月9日
No.767 「Documentary of The Audio Session 2010'」
 
■あれから一年…
 
「Documentary of Audio Opera 2009'」
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/679.html
 
The Trinityというテーマを発想し、業界では誰もやらない前代未聞の実演に
昨年初めて挑戦したものでした。そのシステム構成の実際は下記にてご覧下さい。
 
http://www.catbank.jp/event/2009/dms/kawamata/index.html
 
まったく個性の異なる三機種のスピーカーを同時に演奏する…、そんな前例の
ない試みをどのように感じて下さったのか? 下記のご感想と会場での皆様から
の生の声を頂き、これはやって良かった!!という思いを新たにしたものでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0524.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0525.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0526.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0527.html
 
今年は何をやろうか…、という思いが私の頭に浮かんできたのは二カ月ほど前。
The Trinityを更に新しい形で実現できないものかとスピーカーの候補を探し
始めたものです。そこに表れたのが響きを作る第二のスピーカー↓これです!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/739.html
 
2010東京インターナショナルオーディオショウに出品されないKtemaをぜひ
ステージに上げなくては、という思いがあり先ずは第一の候補が決定しました。
 
そして、次なる候補としてほぼ同時進行でKiso Acoustic HB-1単独でThe Trinityが
実現できないものかと研究を始めたものです。1セットだけでもマラソン試聴会
の大きな空間に響き渡る演奏をこなしてしまうHB-1の実力は承知していました。
しかし、私は更にその上を目指したい…。そんな思いを同社代表の原さんに
相談したものです。
 
HB-1を三セット同時演奏したいが垂直線上にインラインレイアウトしての演奏
にこだわった私は10月上旬に↓こんな実験をしたものです。
 
http://dyna5555.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2010/10/04/kiso.jpg
 
標準的な58センチの高さがあるPODIUMの前後に高さの異なる二種類のスタンド
をセットしてインラインでの演奏を試してみたい、先ずはその第一弾としての
実験を試みました。ところが…、私が原さんに報告した音質とは!?
 
「上記のセッティングで試聴しましたが聴くに堪えない音でした。ここでは
 下のスピーカーの高域が私の耳の高さでは聴こえないので低域だけ強調され
 てしまいました。マラソン試聴会のステージでは大丈夫だと思いますが…」
 
マラソン試聴会本番まで一ヶ月を切り、私のわがままなアイデアをどう実現
したものか、これ以上原さんに甘える事も出来ません。
 
高さ1メートルのステージに上げれば、下のHB-1のトゥイーターの再生音も
お客様の耳には届くはずという想定で、上記写真の2セットの背後に更に高い
スタンドをセットして、とにかく正面から見てのインラインを実現させようと
思っていたのでした。だって、それしか試しようがありません…、これは
ぶっつけ本番で臨むしかないか…、という気持ちになっていたものです。
 
それから十日ほど過ぎたある日、原さんから送られてきた一枚のファックスを
見て私は狂喜してしまいました!! こんなこと出来るんだろうか?
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101105/STAND-3.jpg
 
そのファックスに描かれていたアイデアとは↑このイラストだったのです!!
この特注スタンドをタカミネ楽器に作らせてマラソン試聴会の一週間前には
私のところに持ち込むので試聴して欲しいとのこと。
 
こんな短期間で本当にこんな立派な物が出来るのだろうか、という心配をして
いた私に実物がとうとう届けられました。実際にHB-1をセットしたのが↓これ!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101102/P1080392.JPG
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101102/P1080400.JPG
 
この写真では一番下の棚板には私の判断でHB-1をセットすることはやめました。
床面に近いので低域輻射高率が高くなるのと、実用的にはリスナーの耳よりも
大分低い位置にトゥイーターがあるので高域が減衰してしまうことの両方で
バランスが取れないだろうと思ったからです。
 
その代わり、私が思いついたのは初期の構想になかったレイアウトとして最上段
の棚板に1セットを乗せてみようというアイデアでした。それが上記の写真の
セッティングとなったわけです。
 
そして、原さんの設計は細かいところまで配慮されており、使用しない場合に
は下段の棚板を取り外す事も出来るようになっているとのことでした。
 
更に最上段の棚板はわずかに傾斜しており、中間の棚板はPODUMと同じ高さの
58センチに位置しているが、ここにセットしたHB-1と上段にセットしたHB-1の
中心軸はスピーカー前方2.5メートルで交差するようになっているという。
 
久しぶりに音を出す前の期待感と興奮にセッティングを急ぎ、その第一声を
耳にした時の印象は忘れることが出来ないものだった!!
 
上記の写真のように3セット使いたいということはThe Trinityというテーマを
意識しての事ですが、実はマラソン試聴会の会場において音圧を稼ぎたいと
いう狙いもあってのこと。これは最後の一曲に求めた要素だったのです。
 
大きな空間でステージと客席という距離感をもって私が選曲した音楽を昨年
以上の音量で鳴らしてみたいという単純な狙いを、まさかこのような形で
実現して下さるとは夢にも思っていなかった。
 
試聴の結果で色々な事がわかってきたが、2セットのHB-1のトゥイーター間隔
をなるべく至近距離にセットしようという原さんのアイデアによって1セット
を逆さ吊りするという奇策が実現したわけですが、音質的には1セットを反転
して2ペアで鳴らす状態が一番好ましかった!!
 
既にHB-1を1セット所有している皆様にとって、次なるステップとして推薦に
値する音質が発見できたと言えます。2セットで鳴らすHB-1では更に低域が
充実し、同時にステージの全景を再現するスケール感を雄大に展開する!!
 
「これだったらいけるぞ!!」
 
マラソン試聴会のわずか五日前に届いた秘密兵器?に思わずニンマリ!!
 
そして、第三のスピーカーをどうするのか? 上述のスピーカー二者はいずれも
それ自身で響きを作り出すという発想のものるそれらに対して第三の選択は?
その起源は実は↓こんな体験から浮上してきた選択でした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/687.html
 
Technical Audio Devicesの指向性を十分に追求した昨年の体験から、今年は
何が生まれてくるのか? 同社ではスピーカーの他にCDプレーヤーとパワーアンプ
の開発は完了しており、残すはプリアンプという課題に取り組んでいたのでした。
 
上述のHB-1のThe Trinityシステムを聴く数週間前、その試作機が持ち込まれ
ました。それが現在は発表されているTAD C2000、そしてM2500とM4300でした!!
 
C2000はJeff Rowland Criterionと比較し、個性の違いこそあれ同等の品位を
獲得している事を確認し、クラスD動作のパワーアンプでいい印象を持って
いなかった私に新しい価値観を聴かせてくれたM2500とM4300を聴き、国産ブラ
ンドでフルシステムを構成できるハイエンドメーカーの誕生をこの機会に実演
してお披露目しなくてはという気持ちがふつふつと湧いてきたのでした。
 
http://tad-labs.com/jp/corporate/event.html#osaka
 
このようにTAD Reference oneを核とするTADフルシステムを本邦初公開すると
いう試みに自信が持てるようになりました。しかし、これは単独ブランドでの
事であり、今回のファイナルThe Trinityシステムとしていかにまとめていくのか?
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/762.html
 
一期一会のシステム構成だけに、正に現場でのセットアップとチューニングと
いう本番主義の試みに挑む事になったのです!!
 
 
■頭の中にしかない設計図を実際に組み立てていく事…
 
今回のプログラムの構想は最初にHB-1のThe Trinityシステムを演奏し、その
後にスピーカー1セットずつの個性を引き出しながらコンポーネントの比較を
あまり意識せずに体験して頂こうというもの。
 
では、その進行と選曲を先にご紹介しましょう!!これ↓です!!
 
(川又デモプラン)
http://www.dynamicaudio.jp/file/101027/TheAudioSession2010_KawamataDemo.xls
 
これらの実演を進めていくのにふさわしいセッティングとは? これはステージ
の上で試行錯誤しながら決定していきましたが、最も重要なのが3セットの
スピーカーをどのように配置するかということ。私の選択は↓こうでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101104/L1002715.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101104/L1002721.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101104/L1002742.jpg
 
3セットのスピーカーの音源位置をどれだけ接近させることが出来るか?
しかも、使用するパワーアンプは中央に置くステレオアンプ、その左右に開く
モノラルパワーアンプとのワイヤリングも配慮しなければなりません。
 
そうすると当然一番小さなHB-1が中心になり、Ktemaを内側に配置したのは
このスピーカーの発する音場感と低域が拡散する空間領域が大きいという特徴
を踏まえてのもの。
 
そして、TAD Reference oneのCST(Coherent Source Transducer)ドライバー
が点音源というフォーカスの再現性で有利であることから、横幅14メートルの
ステージではワイドにセットすることで小粒の音像をリスナーに察知して頂く
ためにという狙いがありました。
 
リハーサルの時間は十分か? いえいえ、4人のMCが9時間かけてやることを前日
に全てできるわけがありません。しかし、各パートで求める音の最大公約数が
どこにあるのかを自問し、デモプランの要所に必要な確認だけで本番に備える
ということが精いっぱいでした。
 
思わぬアクシデントでロスタイムが長引いてしまいましたが、何とかここだけ
はチェックしておきたいというポイントを押さえ、いざ本番に臨む事に!!
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
何とも恨めしい事に初日10月30日は台風14号が関東地方に接近するということ
で天気は大荒れの予報。テレビでは外出は控えるようにとニュースでは繰り返し、
ひょっとしたら会場はガラガラになってしまうのではと本気で心配していました。
 
ところが…、ふたを開けてみたら開演前からお客様が一人、また一人と途切れ
ることなくお見えになり、本当に感謝感激という心境で初日がスタートしました!!
 
プログラムの進行に当たり各パートで私が何を狙っていたのか? 順番に解説し
て行きたいと思います。上記(川又デモプラン)を見ながらお読み下さい。
 
■Demo.1
 
いきなりHB-1のThe Trinityシステムを聴いて頂くスタートとなりました。
TAD M2500には最上段のHB-1を、M4300はバイアンプ設定として逆さ吊りのHB-1
と下段の2セットを接続しています。
 
ちなみに、この3セットのHB-1に使用しているスピーカーケーブルはこの日の
ためにKiso Acousticの原さんにお願いした特注品です。また、逆さ吊りHB-1
の支持部には他のHB-1と同じくゲルインシュレーターを使用して、機械的に
スタンドからはフローティングするようになっています。
 
このDemo.1では初日と二日目の進行の仕方を変えてみました。今となっては
デモプランに正解が記載されていますが、初日は各選曲において鳴らしたHB-1
のセット数を内緒にしておき、聴き終わってから参加者に言い当ててもらおう
というクイズ形式にしました。これは面白かったです!!
 
1セットで鳴らしているにも関わらず多くの皆様が2セット以上で演奏されたも
のと思われました。
 
そして、二日目は最初にいたずらとして3セットでmightyechoesのヴォーカル
を聴いて頂いた後に、私は何も語らずに観客に分からないようにHB-1の背後で
配線を外して行きました。
 
そして、溝口肇のチェロをぐっと音量を上げて演奏しました。(^^ゞ
皆様はまだ3セットでなっているものだろうと考えていらしたようで、演奏が
終わった後に「只今の演奏は実は1セットだったんです!!」と私がステージの
中央で種明かしをした時のお客様の表情の変化を忘れる事はできません。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101104/L1002728.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101104/L1002727.jpg
 
どうでしょうか? 何だか↑ちょっぴり得意そうな表情をしていますね〜(^^ゞ
そして、3セットに戻してからThe Real Group≪Jazz:live≫Round midnightと
二日目にはSplankyもかけてしまいました!!
 
ヴォーカルが多かったセッションですが、最後に3セットの本領発揮という事
でTalk to Herのサントラ盤から2.Hable Con Ellaをじっくり聴いて頂きました。
 
3セットの状態で真正面のセンターでじっくり聴くと2セットの音よりも多少
音像のフォーカスは甘くなります。しかし、この会場のスケールであれば
細かい事は気にせずに、劇場のスクリーンを見上げるように大画面を楽しんで
頂けた事と思います。ビセンテ・アミーゴのギターをフューチャーしチェロの
ソロパートもあるロマンチックなオーケストラの演奏を楽しんで頂ければ何よ
りであったと思います。いかがだったでしょうか?
 
■Demo.2
 
さて、ここで毎年お世話になっているavcatさんのきれいな写真をご覧下さい。
 
http://www.catbank.jp/event/2010/dms/kawamata/index.html
 
DEVIALET D-PremierとFranco Serblin Ktemaのマラソン試聴会デビューです。
しかし、Ktemaはともかくステージのセンターに配置したラックに置いただけ
では厚みがたったの44ミリしかないD-Premierは客席からは見えはしない。
 
そこでもう一台のD-Premierを用意して客席から見えるように手で持って…
 
「40センチ四方で厚み約4センチ、重量は6.9キロというこのコンパクトな
 ボディーの中にD/Aコンバーター、フォノイコライザー、プリアンプと
 パワーアンプの四つの機能が搭載されています。
 しかも、チャンネル当たり240Wという強力なパワーアンプ何です!!」
 
と最も短時間で単純な口上で説明してからの演奏となりました。
そして、ここでもKtemaに関して前置きしたことがありました。
 
「Franco Serblinが設計したからと言って麗しい弦楽器の音だけを得意とする
 ようなスピーカーではありません。そんな既成概念を壊すためにも本日最初
 に聴いて頂くのはビートルズからとしました!!」
 
デモプランの曲順とはちょっと違いますが、Ktemaで聴ける音楽ジャンルには
多様性があるということをご理解頂きたかったものです。余談ですが、私が
机上のプランニングで演奏したいと考えた選曲の演奏時間を合計すると123分
という事になりました。まったくおしゃべりせずに演奏だけしていても持ち時
間が足りないとという予測のもとに二日目は選曲を絞り込んだりフェードアウト
しながら調整していたものです。どうぞご了承頂ければと思います<m(__)m>
 
そうそう、ESOTERIC P-01+VUK-P01からは176.4KHzのアップサンプリングした
デジタル信号でD-Premierを鳴らした事も重要なポイントなので追記しておき
たいと思います。もっと時間があったらサンプリング周波数を変化させての
比較試聴もしてみたかったものです。
 
DEVIALET D-PremierとFranco Serblin Ktemaのステージデビューはお楽しみ
頂けましたでしょうか? そして、今後の比較試聴の進行につながっていきます。
 
■Demo.3
 
さて、次のステップです。肝心な事はスピーカーはKtemaと変わらず、トラン
スポートもESOTERIC P-01+VUK-P01にて変更なく、その中間がごっそり変わる
という変更です。しかも、ここでJeff Rowland Model 625が登場してきます。
 
初日だけはピアノソロの録音でDemo.2のシステムとの比較を行いましたが、
二日目はデモプランに表記したオーケストラの演奏のみとして聴いて頂きました。
 
この選曲はFranco Serblin Ktemaに期待されるコンサートホールの情景描写に
ふさわしい美しい弦楽器を堪能して頂こうという意図のものです。艶やかで
華麗なオーケストラを見事な音場感で聴かせてくれたKtemaのイメージに一致
した感動をお届けできたのであれば何よりでした。そして…
 
■Demo.4
 
さあ、今度の展開も面白いですね〜。プレーヤーとアンプは全く同じとして
スピーカーだけが変化します。上記にはKtemaのイメージにマッチした選曲と
述べていますが、それと同じ曲をTAD Reference oneがどう聴かせるのか?
 
一見したイメージでは緊張感を伴うモニタースピーカー然としたイメージで、
しかも、これまでのスピーカー二者が響きを作り出すという個性に対して全く
対照的な高剛性・無共振思想のTADだからです。そんなTAD Reference oneが
Ktemaで味わったばかりの弦楽器の質感をどのように聴かせてくれるのか?
ここが私の狙いだったわけです!!
 
次のデモでは来場者の好奇心を大いに刺激する比較試聴へと進んで行きますが、
そのためにも響きを作らないTADの思想によって比較のリファレンスとすべき
スピーカーを登場させたわけです。
そして、Jeff Rowland Model 625の初舞台の印象はいかがだったでしょうか?
 
ここでも初日しか演奏しなかった曲がありましたが、次のステップで比較する
ための選曲としてUNCOMPRESSED WORLD VOL.1から4.SAMBIENTAを選びました。
 
パーカッションと超低域を含むシンセサイザーとサックスのコラボレーション
はステージ上で華々しい展開と同時に比較ポイントを耳に残してくれたはず。
その記憶が残っているうちに急いでセッティングを切り替えていきます。
 
■Demo.5
 
デモプランをご覧になれば一目瞭然というもの。フロントエンドのESOTERICと
スピーカーのTADは変えずに、プリアンプとパワーアンプがそっくりTAD新製品
に置き換わります。
 
パワーアンプの価格帯は同じくらいですが、クラスDで500W/chを叩き出すM2500
に対してJeff Rowland Model 625は内部でBTL接続を行い300W/chという比較。
 
単純なパワーの違いだけでなく両社の個性が火花を散らす比較試聴であり、
同時にここに初めてTADのプリとパワーアンプが登場した事になります!!
 
SAMBIENTAの選曲は空間に散りばめられたパーカッションと重厚な低域の質感、
サックスが浮かぶ中空での音場展開など複数のチェックポイントで比較して
頂ければと思いました。そして、両者の演奏が終わった後に来場者に挙手にて
お好きなブランドに投票して頂いたものでした。
 
私が皆様の挙手を数えてみますと…
 
「TAD支持派は…55人、Jeff Rowland支持派は…、おー!! こちらも55人!!
 全く互角の投票結果でしたね〜。そして両者の数字を合わせると“5555”
 となりますね〜(^^ゞ」というジョークに笑いがおこりました。
 
リスナーの集中力を高める演出でございますので他意はございません。厳密な
条件下での商品選択のための比較ではありませんので、ご愛敬ということで
楽しんで頂ければと思います。でも…、メーカーさんは気が気ではなかった
でしょうね〜^^;
 
さて、このシステムで次の課題曲を先ず聴いて頂き、次の比較に備えます。
ガーシュウィン:ピアノ協奏曲へ調III Allegro agitato です。
今度は何をやるのか、と言いますと…。
 
■Demo.6
 
アンプとスピーカーは変更ありません。今まではESOTERICのフロントエンドで
鳴らしてきましたが、同じ曲でCDプレーヤーだけをTAD-D600に切り替えると
いうことでプレーヤーの比較をやってみたわけです。
 
これも前回同様に同じ曲を二社のプレーヤーで聴き終わってから来場者の挙手
にて投票をして頂きました。当日会場にいらした方は大よその反響はお分かり
かと思いますが、不思議な事に私が数えるとまたしても55対55になってしまい
ました〜(^^ゞ&(笑)
 
そして、遂にここでTADブランドによるフルシステムが完成した事になります。
皆様いかがでしたでしょうか?そして、同じTADの中で次なる比較を行いました。
 
■Demo.7
 
今までのパワーアンプはTAD-M2500で500W(JEITA、2チャンネル同時駆動、
20Hz〜20kHz、T.H.D. 1.0 %、4オーム)という基本スペックでした。
 
そして、同社のフラッグシップTAD-M600は(600W/4オーム20Hz〜20kHz T.H.D.
0.2 %)という対比で出力はほぼ同じというもの。
 
しかし、パワーアンプの価値観とは出力だけではないわけで、音質に関わる
こだわりは価格差をどうユーザーに納得させるかがポイントというもの。
 
ここでは同社のパワーアンプだけを切り替えるという比較を行いました。
ご来場の皆様は貴重な体験をされた事と思います。これは皆様から投票を頂く
までもありませんね(笑)ご清聴ありがとうございました。
 
さて、ここでの選曲は次の比較試聴への橋渡しとなるものです。もう25年前の
録音ですが、中空に浮かぶオーボエとダイナミックなドラムとピアノという
対照的な録音がスピーカーやアンプの素性を引き出してくれるものですが、
私は意図的に猪俣猛のドラムソロのパートでちょっとボリュームを上げました。
 
■Demo.8
 
そんなTAD Reference oneのダイナミックな演奏をフルTADで楽しんで頂いた後、
今度はフルsoulutionで同じスピーカーを鳴らしてみようというもの。
スピーカー以外が全て変わってしまうわけですが、そこにブランドの個性が
見えてくるわけです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/556.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/610.html
 
今までにもsoulutionの素晴らしさを↑このように体験してきた私ですが、
実はこの日が本邦初公開という新製品がもう一つありました。
 
http://www.soulution-audio.com/english/e_745.html
 
soulution 745 SACD/CDプレーヤーです。この最新モデルをソースコンポーネ
ントとしてTAD Reference oneを鳴らしたらどうなるか?同じ曲で比較しドラム
パートではやはりボリュームを少し上げてダイナミックな打音をホール一杯に
まき散らしたものでした。この比較は楽しんで頂けた事と思います。
 
■Demo.9
 
さて、聴いて頂きたい曲はまだまだあれど時間は限られています。他流試合と
いうわけではありませんが、今まで1ブランドシステムとしてTADを聴き、
そしてスピーカーのみを残してスイスメイドのsoulutionにて違う表情を引き
出した後で、更にエレクトロニクスをそのままで再度Franco Serblin Ktemaを
鳴らしてみる事にしました。
 
ここで私のコレクションから既に廃番となっている貴重なCDをお披露目します。
25年前の録音で場所はニューヨークのセントジョン大教会、深夜に二人の
アーチストがチェロとピアノ+オルガンで即興演奏したものです。私もwebで
色々と検索してみましたが、このCDの情報はほとんど見つけることが出来ませ
んでした。
 
深夜の大聖堂に響き渡るチェロとピアノの広大無辺の余韻感を壮大なスケール
の音場感で、このホールで再現出来たらという目論見からの選曲でした。
お楽しみ頂けましたでしょうか?
 
■Demo.10
 
さて、色々ラストステージの一曲です。「The Trinity - 2010'Version」とは
一体何をやろうとしているのか?
 
それは形式的には前回と同じ三種類のスピーカー、正確には三種類のシステム
を同じ曲で同時に演奏しようというもの。
 
Demo.1の3ペア使用するHB-1のThe Trinityシステム、次にDemo.7のフルTAD
システム、そしてDemo.9のフルsoulutionとKtemaという3システムを同時に
演奏するという前代未聞の演奏です。なぜこんな馬鹿げた?ことを始めたのか?
 
私はこの会場でリアルであり十分な音量が欲しかった。しかし、音圧だけを
追求したコンサートPA/SRなどに使用される拡声器としてのスピーカーでは
私が求めるような品位、音質は難しいでしょう。ましてや音場感という近代の
家庭用ハイファイシステムが追及しているベクトルなどは求めても無駄という
実用主義から発した大音量スピーカーが聴かせる音はここでは関係ない。
 
響きを作り出すスピーカー二機種、無共振思想の権化のようなTADの設計。
これらをどのようなバランスで鳴らしていくのか、という挑戦はこの場での
私の感性によってチューニングされたものなのです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/101104/L1002717.jpg
 
さて、本番前に私は何を↑しているのでしょうか?
 
前日のリハーサルで3システムの動作確認をして、3スピーカーの合奏という
基本的なことはチェック出来たのですが、私の記憶の中にはどうしても納得
できなかった疑問があり、初日の本番前にどうしても確認したかったのです。
 
それは各システムの絶対位相でした。使用するコンポーネントはバランス接続。
各々のメーカーはホット2番なのは確認済み。パワーアンプとスピーカー間の
接続もプラスマイナスは間違いない。そこまで確認しても私の耳で3システム
の合奏を前日聴いた時には疑問が残っていました。
 
3システムのうち一つでも絶対位相が反転していたらフォルテの低域の音圧感
がこのように伸び悩む事はないはずだと昨年の体験からも疑っていました。
 
そこで、イントロにウッドベースが録音されている曲で冒頭の数秒間だけを
再生し、先ずは3ペアのHB-1とKtemaを同時に鳴らしスピーカーケーブルの赤黒
を反転させて実験します。OKです!!
 
次に同じくHB-1とTAD Reference oneを同時に鳴らして同じ実験をします。
最初は今までチェックした接続でベースの音量感を聴きます…? おやっ!!
 
「天野君、Reference oneが逆相になってるね!!この後はスピーカーケーブル
 を反転しておくように!!」
 
http://www.catbank.jp/event/2010/dms/kawamata/index.html
 
この最後にも当時の写真があります。一番下までスクロールして下さい。
 
1システムだけでは何も問題ではありませんが、最も大きな音量を出せるTAD
システムが他の二つと絶対位相が逆転していました。これを確認できて本当に
今回は良かったと思います。上記の写真は私が耳で四通りの位相テストをして
いる時の模様でした。さて、これで安心して最後の一曲をバンバンいけます!!
 
今回のマラソン試聴会でも最後まで悩んだのは選曲です。私は一か月前から
検討を始め各デモパートに対して一つずつ曲を決めてきましたが、今回の主題
である「The Trinity - 2010'Version」では最後に演奏する約13分のこの曲と
一週間ほど前から決めていました。
 
「鬼神」和田薫の音楽より 3.津軽三味線とオーケストラのための「絃魂」
http://www.kaoru-wada.com/
 
この曲のダイナミックな盛り上がりを私はオーディオシステムを使って演奏
しようと試みたものです。冒頭から鋭い立ち上がりで打楽器が展開し、やはり
HB-1のThe Trinityシステムを採用して良かったと思います。
 
あのスピード感と低域の量感を期待通りに鳴らしてくれました。冒頭から4分
30秒はHB-1/The Trinityシステムがホール一杯に三味線の鋭さとオーケストラ
のスケール感を存分に発揮してくれました。
 
私はsoulution 745のカウンターを見ながらsoulution 721のボリュームノブを
少しずつ回していき、4分30秒の表示までカウントダウンしながらKtemaの音量
を徐々に上げていきました。恐らく皆様はすぐには気が付かなかった事でしょう。
 
中盤は時折太鼓の打音が二つびしっと再現され、管楽器のソロパートと弦楽器
の演奏に厚みと広がりが加わっていったものです。そして、私の台本では次の
タイミングは9分ちょうど、遂にTAD Reference oneが加わってきます!!
 
三味線の音も二段階でわずかに変化しているものですが、圧巻なのは和楽器の
打楽器を随所にちりばめたオーケストラの迫力とホールエコーの広がりだった
と思います。
 
ハイスピードな低域が作り出す残響が会場のステージから飛び出して客席後方
へと飛び去っていくような美しい大音量!!これをやってみたかったのです!!
 
正に一期一会の演奏であり、さすがのH.A.L.でもこればかりはできません。
私の出番は一番最後なのですが、最後まで聴き続けて良かったと思って頂ければ、
そして他では体験できない音質と迫力で感動して頂ければという一念から今年
もThe Trinityに取り組んでみました。
 
大変ありがたい事に最後の一曲が終わりボリュームを絞っていく前に、ご来場
の皆様から湧き上がった盛大な拍手が本当に嬉しかったです!!
 
これは誰でもできるのか? はい、それは不可能ではないと思います。
では、誰がやっても人々に感動を与えられるのか?
それは演奏者に“音の美意識”がなければ難しいと思います。
 
今年のマラソン試聴会は熱(暑)くて長い二日間でした。
ご来場頂きました皆様に少しでも楽しんで頂き、オーディオシステムでこんな
事が出来るんだ!!という体験と感動を提供できたのであれば何よりでございます。
 
どうぞ、ご参加頂きました皆様からのご感想をお待ちしておりますので、
今回のドキュメンタリーを参考にして頂ければ幸いでございます。
 
本当にありがとうございました。
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
34th マラソン試聴会 Hearing Report
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0588.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0589.html
 


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

戻る