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H.A.L.担当 川又利明


2010年9月25日
No.754 「FrancoSerblinの本音を伝えるフランコ語録とは!?-Vol.5」
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/742.html
 
上記の本文に次の一節がありました。
 
「ある意味ではFrancoSerblinを最も知る日本人として、更に女性の目から
 見たダンディズムをオーディオという世界で発揮する男性と、そのファミ
 リーとの親交からFrancoSerblinの思想を最も忠実に私たちに伝えてくれる
 貴重な人材でもあるわけです」
 
とは株式会社アーク取締役 宮崎美穂 様のことを述べているわけですが、
H.A.L.'s"Ktema"Partyが開催されて参加者の皆様からありがたいメールを日々
頂戴しておりますが、今度は宮崎さんからもメッセージを頂きました!!
 
「そのようなわけで、フランコにまつわるエピソードは、尽きることなく
 湧いてきます。クテマが完成したとの知らせを受けイタリアに飛んだ際、
 挨拶もそこそこに氏が発した第一声とは?!
 
 クテマの試聴パーティで色々とご紹介できたらと思っています。」
 
ということで、↓来場者の前で達者なスピーチを披露する宮崎美穂さんです!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100910/P1080167.JPG
 
しかし、緊張気味の宮崎さんはまだまだ語りつくせない事があったのです…
 
……………………………………………………………………………………………
 
ダイナミックオーディオ5555
川又店長様
 
お世話になっております。
ハルズサークルのメールマガジン、たいへん有り難く拝見させて頂きました。
H.A.L.'s"Ktema"Partyご参加メンバー様の温かなメッセージの数々に心が慰め
られ、皆さまのお心遣いに感謝の気持ちで一杯になりました。
 
心より御礼申し上げたく存じます。ありがとうございました。
 
あのようなパーティは私も初めての経験でしたが、音楽を愛する素敵な方々と
クテマで醸し出された濃密な空間を共有する、それは予想以上の気持ち良さで、
私は感動いたしました。
 
ご参加くださいました皆さまそして川又様に、心より感謝申しあげます、
ありがとうございました。
 
実はひとつ心残りなことがあるのです。
 
折角頂戴したお時間で私の口からもっとお伝えすることがあったなぁと、あと
になって思い返すと後悔の念が頭をもたげるのです。
 
クテマお披露目の日に語られた"フランコ語録"です。
印象深かったひとことをメモしていました。
 
私の胸の内に温めていても仕方がないので、ここで紹介してもよろしいですか?
 
■フランコ語録 その.10
 
「どうやっても口径の大きなウーファーを前面、特に中高音ユニットと同じ
 面にもってくると、大切な中音域が汚れてしまうので苦心をした。
 コンサートホールをイメージした配置と聴こえ方の再現はこの意味でも
 とても意義があったよ。」
 
 
■フランコ語録 その.11
 
「エンクロージャーのサイドにある細いスリットと後面の反射板のスリットは
 何気に効果的なんだ、ユニットから発せられるエネルギーを上手に逃がして
 やる事で美しさが活きてくるんだ。何事もただ力で押さえ込むのでは無理が
 でてくる、適当な逃げが必要だよね。」
 
 
■川又より
 
けだし名言!?というか、スピーカーデザイナーとして感性が先行し音響工学を
その後に応用しているというフランコの選択肢のひとつでしょう。
 
ミッド・ハイレンジドライバーが発する中・高域の音波が拡散するバッフル面
というのはウーファーを機械的に保持するための、ある意味必要悪である事も
ないわけではない。それだけ波長が短い中・高域の音波をどれだけきれいに
空間に放ってやるのか?
 
でも、そのようなこだわりは実は結構古くから使われていたテクニックでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto21.html
 
今から16年前に執筆した上記の随筆に下記のような記述があります。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
「さて、そのウーファーから一キロHzまでを受け持つのが、同じくアルミ
 素材の16.5cmのメタルコーンのミッド・ローレンジドライバーだ。
 
 但し、見た目にはコーンの表面は露出しておらず、グレーの制動剤をコーテ
 ィングしたキャストポリスチレンがコーンに充填され平面振動板として見受
 けられる。
 
 この上の帯域で一キロHzから三キロHzを再生する、同軸構造のトゥイー
 ターの外輪を囲む周辺部のドーナツ型のミッドハイ・ユニットも同様な
 「ウェーブガイド」と称する充填処理が施されている。
 
 これらは表面的な外見を持つ、平面振動板の放射特性を狙ったものではない。
 全帯域に渡りショート・ボイスコイルとメタルコーンで質感の連続性を重視
 したCS7は、最高域を1インチ・メタルドーム・トゥイーターが三キロ
 Hz以上を一手に引き受けている。コーンを充填剤で埋めてバッフル板の
 凹部を徹底して排除したのは、すべてこの働き者のトゥイーターの労働環境
 を良くしてあげようとする配慮からなのである。なぜかというと、三キロ
 Hzでの音波の波長は、11.3cmであり、10キロHzでは3.4cm、
 20キロHzではわずか1.7cm、となってしまう。
 
 同様に考えると各ユニットのダイヤフラムからは、このような波長の音波が
 毎秒三千回、一万回、あるいは二万回と繰り返し放射され、球面を維持しよ
 うと努力しながら広がっていくわけだ。
 
 この大変細やかでデリケートな高域の音の行進が、何の抵抗もなく気持ち
 良く球面の原形を留めながら空気中に広がっていくためには、バッフル上に
 落とし穴があってはまずいのである。
 
 音波の進行拡散する方向に向かって、その落とし穴の音源に近い方の周辺部
 で一回、遠い方で一回、同方向に向かっている円周部では例えが難しいよう
 な不規則性をもって乱反射が起こる。
 
 従って、せっかくの同軸構成でコヒレント・ソースの理論を完成させようと
 しても、その乱反射によって音像の肥大、フォーカシングの劣化、空間表現
 力の低下を招くことになるのだ。
 
 「ウェーブガイド」というネーミングの由来が、このような解説からご理解
 頂ければ幸いである。たぶんコンピーターによるシミュレーションとヒアリ
 ングによって、音波の放射拡散特性を吟味した上での設計であると思うが、
 細やかな気配りには本当に頭の下がる思いがする。」
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
ちょっと長い引用でしたが、音響的に解説するとその.10の根拠は上記の
ウェーブガイドと同様な意味を持っていることがお分かり頂けるでしょう。
 
16.5cmのミッドレンジ・ドライバーのコーン形状でくぼみが出来てしまうと
高域に影響をもたらすということ。
 
そうそう、B&W Nautilusのミッドロー・ドライバーも同様にコーンを埋めて
見た目には平面振動板のようにしていますが、まったく同じ理由なのです。
 
波長の短い中・高域の音波を何のストレスもなく拡散されていくためには、
フロントバッフルに落とし穴があってはいけないのですね!!
 
だからフランコは他の要素との相乗効果を狙ってウーファーとミッド・ハイ
ドライバーを同一のディメンションに配置したくなかったのです!!
これは私には大変良く理解できることでした。しかし、思い切りましたね〜
 
その.11で述べられているスリットのアイデアはかなり熟練したアイデアだと
思います。ミッドレンジドライバーのトランジェント特性を極めて良好にする
トランスミッションライン(B&W Nautilusではトランスミッション・ロッド)と
言いますが、ドライバー後方に音圧の逃げ場を作るという事はダイヤフラムの
立ち上がりをスムーズ、かつ高速化するオーソドックスな方法なのです。
 
大昔ではシーメンスのオイロダインなどは同様な後方開放型というデザインで
スピーカーユニットの後方にはエンクロージャーのない方式でした。ただし、
ウーファーの帯域でそれをやると低域の再生帯域を下に伸ばせないという事も
あります。しかし、ミッドレンジだったら大丈夫!!
 
スリットですから、ウーファーのポートチューニングのようにバスレフ効果と
いうものは気にせずに、ユニットのバックプレッシャー(背圧)だけを抜いて
あげるという目的でしょう。ただし、外からは見えませんが、このスリットの
内側にはお約束としてけっこうな量の吸音材が詰め込まれているはずです。
 
背圧は抜けますがミッドレンジのバックキャビティー内部には反射波が充満し
てしまうので、消音して上げないとスリットから混濁した高域が漏れてきて
しまう事がありますから。
 
そんな専門的な表現よりはフランコの五番目の娘として親しくお付き合いして
いる宮崎さんに、分かりやすく説明していたんだな〜という語り口がいいですね〜
 
多数のスピーカーを扱ってきた私からすると、新開発の誰もやっていないよう
なアイデアや新技術がいくつも盛り込まれたKtemaという印象はありません。
 
以前からあるテクノロジーとノウハウをフランコ自身の感性で紡いでいったと
いう開発方法、手作りの試作品と対話しながらチューニングしてきたという
彼の情熱とこだわりを感じさせてくれるものでした。だから語録なのでしょう!!
 
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川又より
 
宮崎様ありがとうございました。そして、「フランコ語録」にはまだまだ続き
があるのですが、一つずつをじっくりと噛みしめて頂こうと小出しにご紹介
させて頂こうと考えています。(^^ゞ続報にご期待下さいませ!!
 
そして、フランコ語録の示すところはKtemaの音です!!
ぜひ皆様の耳と感性でご確認下さい。ご来店をお待ちしております!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
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