発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明




2007年5月7日
No.492 「Documentary of “Friday concert” Vol.24」
ゴールデンウィーク真っ最中の5月4日、予定通りエフコン第24回が開催されました。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/490.html

このフロアーは試聴システムのセッティングを優先したスペース配分なので、
どんなにがんばっても収容できる人数には限界があります。ましてや前回のように
スピーカーを2セット使用するのであれば、スピーカー個々にまたがって椅子を
横幅広く並べるのですが、今回はAvalon Acoustics“Isis”1セットだけなので
出来るだけそこに集中させる形で座席を配置しました。と、このようになりました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/070504/guest.jpg

その皆様の向かって左側にセットされたGOLDMUNDのフロントエンドがこのように
セットアップされました。でも大変コンパクトに収納できました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/070504/goldmund.jpg

さて、実は今回の本番を向かえる前に私はリハーサルを兼ねて同一ブランドによる
デジタル伝送とアナログ伝送の音質比較を行ってきました。この比較システムは
いったんセッティングしたら比較試聴は簡単で、TELOS 2500の入力スイッチで
デジタルとアナログを切り替えるだけです。このように簡単に切り替えできるが
ゆえに、私はMIMESIS 22SignatureとMIMESIS 24MEの二台のプリアンプで全く同じ
音量を設定したかったのです。

しかし、ご存知のようにCDの録音レベルは10dB以上も格差があり、ディスクを交換
するたびにプリアンプのボリュームをこまめに調整しなければならない。そして、
アッテネーター方式のボリュームではマイナス何デシベルという風にボリュームが
表示されるのだが、GOLDMUNDの両者では00から99という数値が相対的に表示される
だけで、数値とプリアンプ出力には直接の関係はない。

ましてや、この両者共にグローバルゲインを調整できるので、その設定を変化させ
てしまうと同じ数値でも音量が変化してしまう。私は何枚ものディスクを聴きな
がらリハーサルを行なったが、その過程の中である法則があることに気がついた。

録音レベルが大きいディスクの場合、はMIMESIS 22SignatureとMIMESIS 24ME両方
で同じ音量を設定しようとすると、ディスプレーの数値が50から70くらいの間だと
するとアナログ伝送のMIMESIS 22Signatureの数値を大きくしなければならない。
事例としては24MEの60で演奏する音量を22Sigで得ようとすると68から70くらい
必要になる。

逆に、録音レベルが小さいディスクは当然プリアンプのボリュームノブの回転は
大きくなり数値も大きくなるのだが、24MEで80以上で鳴らしたいときには逆転
して22Sigの数値を小さくしなければならないということだ。
事例としては24MEで演奏する音量で85を基準とすると、22Sigでの同じ音量は大体
75くらいということになる。

私はもこの現象をリハーサルで察知して輸入元であるステラヴォックスジャパンの
社長、西川氏に5/2の夕方慌しく電話した。

「西川さん、この両者は大体70くらいを境目にして音量に対するゲインが逆転する
 ようですね。アンプのボリュームにはご存知のように聴覚補正が入ったAカーブ
 やBカーブのように完全リニアではなく一次関数曲線の変化を付けてあるものが
 普通ですが、GOLDMUNDの場合はどうしているんでしょうね〜。これを説明できる
 図面を何とか同社に依頼してエフコンに間に合うように送ってもらえませんか」

と、図々しい私は出先から電話を下さった西川氏に突然の依頼をしてしまった。
開催まで48時間という時間で果たして間に合うのだろうか…、と思いつつも当日の
司会進行をどうするか選曲に忙しい私は依頼してからは本番に向けての思いで頭は
一杯になっていたものでした。

そして、5/4の本番も宴もたけなわという19:39に受信したメールに添付されていた
のが下記のファイルでした。

http://www.dynamicaudio.jp/file/070505/M22S_M24ME-gain.pdf

ダイナ5555
川又 店長殿

いつもお世話に成っています。
ご依頼のありました、MM22S, MM24, のゲイン特性表を添付しました。
但し、組み合わせるDAC のアナログ出力により特性表は変わります、
この表はMM20ME のアナログ出力を基準に測定した結果です。

ご参考にして下さい。

---------------------------------
       Hideaki Nishikawa

           President
      Stellavox Japan Ltd.

*****@stellavox-japan.co.jp
---------------------------------

おおー!! これですよ、これ!! やっぱり私の分析は間違っていませんでした。

これを当日ご来場の皆様にお配りできれば口頭での説明よりもご理解頂けたので
しょうが、ちょっと間に合いませんでしたが改めてハルズサークルの皆様に両者
のボリューム特性をじっくり比較して頂けることになりました。

しかし、私の急な要請に対して、このように本格的なデータとして回答して下さる
ステラヴォックスジャパンとGOLDMUNDの姿勢を私は大変高く評価しました。
このようなこだわりに対する回答の迅速さこそハイエンドと言えるものです。

こんな比較試聴という物好きな企画を考え出し実行するのは世界中でも私くらいの
ものでしょうから(^^ゞ当日のイベントに間に合うようにと尽力して下さった両社
の社長に改めてお礼申し上げたいと思います。そして、このような対応は日本の
GOLDMUNDユーザーに対しても向けられるものであるということを追記しておきます。

そして本番は…!?


          □ the subject .1 □

最初は22Sigを使ったアナログ伝送の組み合わせです。しかし、これから数々の
試聴をしていく上で基本となるD/Aコンバーターの能力というものを皆様に認識
して頂きたかったので、こんな実験をしました。

■EIDOS REFERENCE→MIMESIS 22Signature→TELOS 2500

■EIDOS REFERENCE→MIMESIS20ME→MIMESIS 22Signature→TELOS 2500

このようにEIDOS REFERENCEからのアナログ出力を直接プリアンプに入れた場合と
EIDOS REFERENCEのデジタル出力を20MEに入力して同じプリアンプへ入力した場合
の比較というものです。

使用したディスクはこれ。The Best of Cantabileの1トラック目。
http://www.universal-music.co.jp/classics/release/m_topics/umcl200702/uccd3681.html
1. チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》〜こんぺい糖の踊り
マリインスキー劇場管弦楽団、指揮:ワレリー・ゲルギエフ

このオリジナル盤も長らくここで試聴ディスクとして使用していますが、この曲で
チェレスタの響きと弦楽器群のピッチカート、コントラバスの広がりある余韻感
などなどチェックポイントが多数含まれています。オリジナル盤だと22トラック目
なので頭出しが大変ですが、このディスクでは1トラック目なので重宝しています。

世界限定50台というEIDOS REFERENCEからのアナログ出力は、もとより素晴らしい
音質であるのは承知の上ですが、24MEとの比較ということで私は20MEの採用は
必須条件と考えていました。

この違いは大きいのか小さいのか!?
参加者の皆様はどのように感じられたでしょうか!?



          □ the subject .2 □

上記の同じ実験試聴を曲を変えて行ないました。
弦楽器はこう鳴って欲しい、ピアノの音とはこうあるべきだ。と、人々には自分の
好きな楽器の再生音に対して期待感・既成概念、早い話しが思い入れが必ずある
ものでこんな感じで聴きたいという好みを色々な楽音に対して知らないうちに求め
ているものです。

従って、そこには主観的な要素が多分にあり、再生装置の個性よりも演奏と録音の
個性に対して敏感に反応してしまい、誤解を招く場合が多々あります。そこで私は
人工的に一切の先入観をもたれないサンプル音源によるディスクで客観的に音質を
分析して頂こうと、こんなディスクを使用しました。

神山純一「水の音楽」6.Sweet Rhapsody
http://www.supercompany.co.jp/
http://www5b.biglobe.ne.jp/%7Escomp/cd/cdd2.html

この曲の冒頭30秒ほどを繰り返しEIDOS REFERENCEの直接出力と20MEで比較して
頂き、今回の企画でいかに20MEが大切な要素であるかをご理解頂いたものです。

そして、この流れでいよいよ22Sigのアナログ伝送と24MEのデジタル伝送との比較
に突入していきました。

ちなみに前半では、今からデジタル、次はアナログということで事前にどちらを
演奏するかということを皆様にお知らせしてから試聴して頂きました。

次ぎの選曲では冒頭の10秒間ほどしか使用しないのですが、今回の両雄の性質を
感じ取って頂くには面白い再生音と言えます。

Gidon Kremerの公式サイト http://www.gidon-kremer.com/ はどうやら工事中のよう
なので見られませんでした。そこでちょっと見苦しいのですが下記にてご紹介を。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%82%BD%E3%83%A9%E3%81
%B8%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A5-%E3%82%AE
%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A1%E3
%83%AB/dp/B00005HHG8

「ピアソラへのオマージュ」10.El sol sueno〔エル・ソル・スエニョ〕ラテン語
の正しいスペルがキーボードでは入力できないので、このように表記しましたが、
要はタイトル曲の「アストラ・ピアソラへのオマージュ」という曲です。ただし、
これはピアソラの作曲ではなくJ.ペテルブルシュスキーという作曲家によるもの。

この冒頭でヴァイオリンのピッチカートと打音が猛烈な立ち上がりの信号として
鋭い音を発する。このパートでの鋭さとエコー感の消滅までをボリュームを大きく
して観察すると大変面白い比較が出来る。たった10秒間の比較試聴で再生装置の
特徴がつかめる実験を参加者の皆様はどのように感じられたことでしょうか!?

さて、これまでは短いパートを繰り返し比較するということで、どちらかと言うと
高い周波数帯域の音でデジタルとアナログ伝送を比較してきましたが、今度は
がらりと違う選曲で、しかも管理された音質のスタジオ録音で全帯域をくまなく
チェックできる選曲をしてみました。ピアソラの次はマリアです!! (^^ゞ

“マリア”というとピアソラからの展開でクラシック系の歌手かと思いきや…^_^;

http://www.smile-co.co.jp/mariya/ そうこの方です。“まりや”です(笑)
使用したディスクはこのアルバムから11.告白
http://www.smile-co.co.jp/mariya/pg/disco_album_1.html#impressions

冒頭にいきなりの電話の呼び出し音。携帯ではないので着信音とは言わない(笑)
固定電話の新しいタイプで「プルプル…」というか、そんな人工的な電話のベルと
いう効果音が入っています。その音色が再生装置によって結構違うということ。

その次にキーボードが入ってきますが、このかすれたような、ノイジーな感じの
音がひっぱる残響感というか、ホワイトノイズのような音が結構違う。そして、
その次にプログラミングされたドラムのシンセベースの強力な低音が始まる。

このベースのように合成された低音というのは輪郭が非常に鮮明であり、アコース
ティックな拡散してしまう低域とは違うというところがミソです。

この冒頭30秒間程がチェックポイントで、22Sigのアナログ伝送と24MEのデジタル
伝送との比較には面白い素材となったはずです。参加者の皆様はどう感じられたこ
とでしょうか!?



          □ the subject .3 □

前半ではアナログとデジタルの傾向の違いをよ〜く聴きとって下さい。後半では
ブラインドテストで、両方式で各々演奏してからどちらがデジタル伝送だったかを
私が質問しますので、挙手で答えてくださいね〜、という進行に変わりました。

実験的に短いパートを繰り返し聴いてきた前半とは違い、今度は一曲全部を演奏
することにしました。さて、最初の曲はこれです。

http://www.kingrecords.co.jp/saisin/bass/2nd/contre_dis.html

L'Orchestre de Contrebasses より2.「BASS,BASS,BASS,BASS,BASS&BASS」

先ほどの竹内まりやのスタジオワークによってコントロールされた輪郭と重量感の
ある低音ではなく、開放的でアコースティックな低域であり、かつ彼らの演奏は
楽器を叩いたり弾いたりするパーカッションとしての奏法で、激しいアタックの
録音が随所にある。もちろん、ハイスピードなアルコの切り返しもあり、全帯域を
鋭さとエコー感の両方でチェックしてもらいたいもの。これは全曲かけました。

そして、私は「最初の方がデジタル伝送だと思った方は手を上げてください〜。
はい、では後の方がデジタルだと思った方はどうですか〜」という感じで皆様の
判定をうかがっていったものです。


そして、次は近代的なスタジオワークで贅沢な録音をたくさんしてきた、あの方。
なんとマイケル・ジャクソンの曲をもテストに使用しました。ただし、彼のアル
バムではなく、この方のベストアルバムからピックアップしました。(^^ゞ

http://www.quincyjones.com/
http://www.quincyjonesmusic.com/ このサイトはかっこいいですね〜
やっと見つけました。「From Q, With Love」というアルバムから
http://www.quincyjonesmusic.com/SongCatalogue/contempindex.html
あっ、でも私が使った曲は上記には紹介されていないようなので、下記で(^^ゞ
http://www.amazon.co.jp/Q-Love-Quincy-Jones/dp/B000A2H8XA

このディスク1の8. Liberian Girl を使用しています。マイケル・ジャクソンの
曲でヴォーカルもチェックのしどころですが、リズム楽器の輪郭と重量感、切れ味
のいいパーカッションや対象的にエコー感たっぷりのコーラスなど、私としては
わかりやすい課題曲のつもりだったのですが…、果たして皆様の判定は!?


次ぎの選曲は思い切ったものです。といっても廃盤で入手出来ないはずのもの。
http://www.bis.se/index.php

と、今まで諦めていたので、ご来場の皆様にも入手不可能と言っていましたが、
なんと見つけました!!
BIS-CD-490  Japanese Orchestral Music
http://www.bis.se/index.php?op=album&aID=BIS-CD-490

このディスクは何と昔々のソニーのPCM-F1という懐かしいプロセッサーを使用して
16ビットで録音したもの。今となっては古めかしい機材で収録されたアルバムで
すが、音質としては意外なほどに魅力的なものがあります。

デジタルとアナログ伝送の違いをアコースティックな録音と、きっちりとコント
ロールされたスタジオ録音の両方で比較してきましたが、録音年代のテクノロジー
とBISレコードのセンスというものでしょうが、16ビットという今では小さく思え
る情報量に中に色々な要因が含まれており、それを近代的な再生装置が聴くと
こうなるという興味深いテスト曲です。使用したのはこれでした。

Akira Ifukube
Ballata Sinfonica (1943)   1. I. Prima ballata

7分48秒のすべてを聴き終わって、皆さんの反応はどうだったか!?
実は、この選曲こそアナログとデジタル伝送の違いを出しにくい意地悪なテスト曲
だったのです(^^ゞ



          □ the subject .4 □

さて、三曲でのブラインドテストを経て、私が最後にトライしてみたかったものは
これです。あえてSACDなのですが、このディスクのCDレイヤーを使っています。

JEAN-PHILIPPE RAMEAU / Une symphonie imaginaire
Les Musiciens du Louvre / Marc Minkowski

このサイトにたどり着くのは結構大変でした^_^;
http://www.deutschegrammophon.com/home.htms?CONTENT=%2Fsacd%2F

http://www.deutschegrammophon.com/catalog/product.htms?PRODUCT_
NR=4775578&COMP_ID=RAMJE&WIDTH=1101&HEIGHT=684&COLORS=&PLAYER=yellow

この1トラック目「Overture」を前回同様に比較しました。GOLDMUNDはSACDには
対応していないのですが、SACDでなくともここまで素晴らしいという演奏は過去に
何回も体験して来ましたし、これからも多数の感動を通常のCDフォーマットでも
感じることでしょう。ちなみに、このCDレイヤーのフォーマットはStereo 48 kHz
24 Bitでした。しかし、これほど素晴らしい空間表現を見せてくれるとは!!

冒頭から力強く響き渡るドラム。そして、宙を舞うように展開する優雅な弦楽器。
そのすべてが今回のテスティングを象徴するかのようです。

さて、私は今回のイベントのラストで、急遽システム構成を変化させました。

■EIDOS REFERENCE→MIMESIS 24ME→MIMESIS20ME→TELOS 2500

そうです、長い距離を伝送しても劣化のないデジタル伝送でパワーアンプの直近に
移動した20MEに信号を送り、《EIDOS REFERENCE》のために開発された最新デジタ
ルテクノロジー「ALIZE 5」に基づいたデジタルインプット・モジュールD/A 回路
を内蔵するTELOS 2500のデジタル入力を使わずに、フラッグシップモデルとして
「ALIZE 96/24」テクノロジーを搭載するMIMESIS20MEにてアナログ化した信号を
TELOS 2500に送り込むという贅沢な発想の実験です。

つまり、前回のフエコンでも抜群の評価を得たGOLDMUND最高峰のD/Aコンバーター
とパワーアンプ内蔵のD/Aコンバーターの比較ということになります。

しかし、パワーアンプ内蔵ということではシグナルパスの圧倒的な短縮が魅力で
あり、パワーステージに最も近くD/Aコンバーターをセットできるメリットは他社
では体験できない音質をもたらします。

その位置的な優位に対して、MIMESIS20MEではミレニアムテクノロジーから生まれ
た9独立電源やフルメカニカルグラウンディングコンストラクションという同社の
基幹技術が惜しむところなく投入されているという固体としての完成度がどのよう
に音質に影響をもたらすのか!?

この比較試聴に立ち会った皆様はラッキーであったと私は思えるのですが、皆様
いかがでしたでしょうか!? 予定時間をオーバーしての閉幕となりましたが、皆様
お楽しみ頂けましたでしょうか?

私は皆様の表情から察するのみですが、ご感想をお寄せ頂ければうれしく思います。

ご来場ありがとうございました。

そして…

参加された皆様のインプレッションはこちらで。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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