Vol.1
Motivation
Vol.2
Naming
Vol.3
Enthusiasm
Vol.4
Details
Vol.5
Final finish
Price
Ordering instruction
コンクリート打ちっぱなし、コンクリートの上に直接貼り付けたタイルや石材の床、同様な基礎に根太を張りフローリングを施した床、 また木造の基礎の上にフローリングもあり、更にこれらの床材の上に絨毯やカーペットの敷物、そして畳と日本の住宅では床の種類が他国に比べて種類が豊富だ。 ここにもProject“H.A.L.C”の目的がある。どのような床においてもアイソレーション効果を発揮しベストなコンポーネントの動作環境を作り出すこと。
言葉で言えば簡単だが、これまで述べてきた“H.A.L.C-Shelf”“H.A.L.C-frame”の他にも実は重要な要素が控えていた。

これまで行なってきた各部仕様のための試聴システムを再度ご紹介しておく。
これによって、いよいよラストの“オトギメ”に取り組んでいくことになった。

◇Project“H.A.L.C”最終検証システム◇

ESOTERIC G-0s(税別\1,200,000.)*Rubidiumオンリー

7N-DA6100 BNC(Wordsync用)

ESOTERIC X-01D2 (税別\1,400,000.)■ここに“H.A.L.C-Shelf”使用

ESOTERIC 7N-DA6300 MEXCEL RCA 1.0m

HALCRO dm8(税別\2,200,000.)

ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 7.0m

HALCRO HALCRO dm88 ×2 (税別\7,600,000.)
※参考:http://www.halcro.com/productsDM88.asp

STEALTH Hybrid MLT Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version

MOSQUITO NEO(税別\4,800,000.)
〔 H.A.L.C-Disc決定 〕
前章までに述べてきた“H.A.L.C-Shelf”での音質検証、そして“H.A.L.C-frame”とのマッチングがProject“H.A.L.C”の最終課題として上記のシステムにて再び28キロもあるESOTERIC X-01D2をその都度置き換えながら試聴することになった。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3B05.jpg

ここでの着目点は上記画像に見られる補強を兼ねたアクリルボードの上にどのようなインシュレーターを載せて“H.A.L.C-Shelf”を搭載するかというシンプルであり音質変化の起こりようで中々予想できないポイントである。

http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/halc_disc03.jpg

ここでは考えられる素材をすべて試してみようと、上記の画像以外にも入手可能なものを極力用意して試聴に望んだ。
  • 発泡ウレタン(zoethecus同様なクッション性のあるもの)
  • ソルボタン(無反発ゴム)
  • コルク
  • ソフトシリコン
  • ハードシリコン
  • 硬質ゴム
  • 塩化ビニールマット
  • 軟性プラスチック
  • フエルト(繊維質の粗めのもの)
    何と9種類もの素材をいちいち載せ変えて試聴するというのだからH.A.L.C-Shelfでの各段階の試作品の検証を思い出す。 しかも、前回は試作品の入荷を待って段階的に聴いていったが、今回はいっきにすべてを載せ変えて記憶の新しいうちに判定していかなくてはならない。

    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

    使用する課題曲は前回同様だが、打楽器の低音もチェックしたいのでディスクの枚数も数枚増やしている。
    先ず驚いたのは“H.A.L.C-Shelf”と“H.A.L.C-frame”がこれだけ充実し確立しているというのに、たったこれだけの違いで低域の輪郭表現と重量感、 そして音場感の発散の仕方がころころと変わる面白さ、いや検証する際の辛さというものだろうか。
    真っ先にふるい落とされたのは弾性のある素材だった。
    硬さはいかにあってもゴム製のものは低域の質感がふっくらする傾向をもちつつ余韻感も吸い取れられるようで、これまでの方針に一致しない。 これはハード・ソフト両方のシリコンでも同様であり、軟性素材は決してProject“H.A.L.C”の柔構造という設計方針をサポートしてくれることはないと直ちに判断できた。
    微妙だったのはzoethecusと同じスポンジ状素材だったが、潤いという点では余韻感を保ちつつ低域の輪郭もそこそこ描くのだが、 打楽器のアタックやウッドベースの開放弦での膨らみ具合がどうも私は納得がいかなかった。これは中途半端だろう。
    それに対してコルクや塩化ビニールマットや硬質プラスチックなどは低域の質感を“H.A.L.C-Shelf”での判定を思い出されるような引き締め効果を聴かせてくれるのだが、 いかんせんヴォーカルと弦楽器の質感を乾燥させてしまう方向で、どうも潤いを感じさせてくれない。
    私がこうあって欲しいというエコー感の保存性という見地からも空間表現が乏しくなってしまうのはどうしてだろう?

    zoethecusを超えなければ、という当初の目的では同素材の発泡ウレタンでは物足りず、 早い場合には数秒間で乗せ変えて次から次へと一素材に対して違う曲でも確認を続けていく。
    しかし…、これはというものが中々見つからない。せっかくここまでこぎつけたのに、たったこれだけの要素で挫折することも妥協することもしたくない…。
    内心で唸りながら、どうしたものかと思案しつつ最も期待していない素材が残っていたことに気が付く。

    「えっ、後はフェルトしか残ってないの?」

    これだダメだったら消去法で残ったもので自分を納得させなければならないのか?という不安を胸に、 何度目かは忘れてしまったX-01D2の乗せ変えを行なって・・・先ずはベースとギターとヴォーカルという今回最も頼りにしている課題曲をかけた。
    すると・・・

    「おーーー!! これだよこれ!!」

    冒頭のギターに余韻感は正確に45度の角度で投じられたボールがすーっと自然な放物線で滞空時間を稼ぐように飛び交い、 ベースは輪郭をきっちりと留めたままで重量感という決定的な要素でも今迄で最高の得点を付け力感を増しながらNEOのウーファーをぐっとストロークさせる。
    ヴォーカルは口許を引き締めながら唇の湿り気が伝わってきそうな潤いを持ちながらもスピーカー後方へとエコー感を拡散させていく。
    これは何と気分爽快なことか!!

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/halc_disc01.jpg

    画像を見てお解かりのように繊維質をまとめるために接着剤を含浸させていない毛羽立ちのあるフェルトが微妙なクッション性を発揮したのか、 絶妙なコントロールで“H.A.L.C-frame”に対して“H.A.L.C-Shelf”というボールをストライク!!で投げ込んだようである。
    正にダークホース的なフェルトという素材が今回の試聴でProject“H.A.L.C”の完成度を高めてくれた!! 私は内心ほっとしたのもつかの間、更にインシュレーターの奥深さに舌を巻くことになろうとは誰が予想しただろうか!?

    〔 H.A.L.C-Discのノウハウ 〕

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/set02.jpg

    上記のようにインシュレーターの試聴は各アクリルボード上に一個という個数で試聴してきたものだった。
    まあ、これで止めておいても問題はないのだろうが、好奇心と完全主義へのこだわりという私の悪癖がここでも更にエピソードの続きを自分自身に命じていた。

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/set01z.jpg

    この写真はzoethecusのマニュアル通りに貼り付けられたアイソディスクと呼ばれる発泡ウレタン・インシュレーターの配置と枚数である。
    私は長年zoethecusの指示通りに写真のようにセッティングして使用してきた。 せっかく発見したフェルトの素性のよさと可能性を引き出すのなら枚数を増やして更に多角的にセッティングの仔細を調査してみるのもいいだろうと考え、そこで…

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/set03.jpg

    このように同じフェルトを最初の一枚のラインに合わせて三枚としてみた。すると

    「おー!! 何で低域がこうなっちゃうの!!」

    驚くというより呆れる。たったこれだけの変化なのにベースの重量感が一段と増し同じNEOかと思うほどに濃厚な低域がスピーカー周辺の床面に放射されていく。
    ちなみに、この写真では一コーナーでのセッティングだが、当然他のコーナーでも同様であるので追記しておく。調子に乗った私はでは五枚に増やしたらどうなるか。 と永遠に試聴が終わらなくなってしまうような思いつきに至る。そして…

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/set04.jpg

    そう、zoethecusのマニュアル通りにフェルトもやってみた。

    「あ〜、低域の重量感は飽和点という感じで変わらないけど、せっかく引き締めたベースの輪郭が不鮮明になってしまった。こんなことあるのかな〜」

    これはやるだけの価値があると調子に乗った私は更に…

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/set05.jpg

    先ほどは直線状に三枚を並べたのだが、今度は荷重がかかるポイントを縮小しようというアイデアでこのように三角形に並べてみた。

    「あっ…、これいいですね〜!!」

    ベースの重量感は維持したままでフォーカスが出てきた。しかし、わずかな変化でこのようにころころ変わるというのは、 それだけProject“H.A.L.C”の各段階での追求での完成度が高いということなのだろう。 微妙なコントロールを可能にするということは土台そのものが敏感でありデリケートである証拠だ。

    さて、私の頭は更に一歩先を考えていた。この三枚の配置はアクリルボードにかかる荷重が“H.A.L.C-frame”の横木に近い部分と中心部ではたわみ方が違うはずだ。
    当然フレームへの取り付け位置に近付けばがっちり固定され、アクリルボードの中心部では荷重によっての微妙なたわみもあるだろう。 試しに指先でアクリルボードの各所をカツカツと叩いてみると打音が違う。であればこれはどうか!?

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/set06.jpg

    四コーナーともに同様な位置に張り替えた。フレームの直線に逆らわず荷重のかかり方によってたわむ方向性を一致させようという発想でのこと。
    しかし、たったこれだけの変化で何が変わるというのか!? しかし・・・

    「あっ!! これ余韻感とフォーカスが最高!! こんなの初めてだ!!」

    理由はわからない。
    でも事実なのだから仕方がない。こんなノウハウがあろうとは夢にも思わなかった。

    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

    私は日頃から直感で音を判断している。
    名作といわれる絵画を初めて見たときの感動は、筆のタッチがどうこう、色使いが良い等々技巧的な理屈を分析してから感動するものではないだろう。正に直感というもの。
    美しい女性を見かけたときに世の男性たちがどう感じるかも直感。
    肌の色艶、顔の輪郭、目鼻立ちの分析、などなどじっくり眺めてから思うようなことではなく、初めて見た瞬間に去来するもので美意識が共鳴するのが普通のことだろう。

    私は今回のProject“H.A.L.C”の最終的な音質決定で自分の直感にひたすら素直になろうと意識し、直感を証明することに時間を費やしたと言っても過言ではない。
    第一印象でインパクトのあったものを複数の曲で確認し、自分で自分に嘘がつけない状態まで追い込んで確認してきた。

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061231/halc_disc02.jpg

    最後に執拗に行なったのがフェルトの二重使い。
    ここまでやってみて二重にすることで若干のテンションの弛緩を得られたものの、総じて一重の三枚使いというセッティングがベストであるという結論に落ち着いた。
    数時間にも及ぶ肉体労働の中にあって、同時に耳と大脳をフル回転させてProject“H.A.L.C”に最強の完成度を実現したのだ。
    でも・・・

    〔 H.A.L.C-Spike baseのノウハウ 〕
    まず再度この画像をご覧頂きたい。

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/H.C3F02.jpg

    この部分の内部構造は前章で述べているが、柔構造によるアイソレーション効果をゴム質のような弾性素材には求め得ないという教訓を元に、 私が体験したエピソードから将来のH.A.L.Cシリーズ・オーナーの皆様へ使いこなしのヒントと付属品に関する配慮を述べておきたい。
    そもそも、この“H.A.L.C-Shelf”における試作段階での体験がここH.A.L.という環境でのセットアップに関連してくるものだ。 つまり、低域の質感と音場感の両立という目標をどうバランスさせるか、そのノウハウを棚板というパーツレベルの開発段階で習得したものだったが、 “H.A.L.C-frame”を設置する際の私の推奨として次のような使いこなしを自然に報告しておきたい。

    http://www.dynamicaudio.jp/file/061228/halc00.gif

    先ずは、この図で示しているUnder stainless spike baseにも驚くべき特徴が結果的な音質判断としてあることが判明した。

    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

    低域の楽音の輪郭表現を優先し引き締まった音像を追求したい場合、音楽ジャンルとしてはホール録音のクラシックよりもスタジオ録音のポップスやジャズのように 余韻感よりもむき出しの音像をくっきりと捉えようとする場合には受け皿のベースを使用せずに Under high mass stainless spikeをきっちりと床面に打ち立てて使用されることを推奨する。
    独自のスパイクと制振構造によってごりっとした手応えの低域を提供してくれる。
    ただし、“H.A.L.C-frame”で述べた柔構造がアイソレーション効果を発揮して床材に違いによる音質の偏差を最小限にとどめ同時にコンクリートのような 硬質な床の反作用として付きまとう高域の付帯音が発生しないのでシャープで鮮明な音質を皆様のシステムにもたらしてくれるはずだ。
    固体感を低域に持たせることを望まれるユーザーにも“H.A.L.C”は先ず最初にこの特徴を発揮してくれるので、 ユーザー個々の環境におけるセッティングの手始めはここからスタートして何ら問題はない。

    次に、私が“H.A.L.C-Shelf”における試作段階で述べていた余韻感、エコー感の充実という観点を要素に加えていきたい時にSpike baseを使い始めて頂きたい。
    木造の床の構造に比較してコンクリートのような硬質な床においてSpike baseを使用することによって、 使用前よりもベースやドラムのような低域の楽音が骨太のイメージを持ち始める。
    これは決して低音楽器の音像をダブらせてフォーカスを甘くするという方向性ではなく、重量感として重みが加わってくるという印象だ。
    木造のフローリングの場合には、この変化量はそれほどではないかもしれない。

    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

    しかし、ここでホール録音のエコー感が欲しい、ヴォーカルでも声質に潤いが欲しいということになってくると、 硬質な床面にステンレスのベースを直置きということでは対応しきれない要素があり、 商品化する“H.A.L.C”シリーズには受け皿のベースよりもやや直径が小さい厚手のフエルトを付属させることにした。
    これをSpike baseの下に敷いて頂くことで“H.A.L.C-Shelf”の変化で試作No.7で音質を決定した要素を取り戻すことが出来るのである。
    ここでの実験のようなことは中々一般家庭では難しいと思われる。
    木造でフローリングまたは畳という柔軟性がある床材では良いのだが、硬い床材になればなるほど、この一枚のフエルトがニュートラルな方向へとシフトさせてくれるので 当初から使用されることを推奨しておく。
    また、それでも更に響きの要素をもう少し増量させたいという場合にはホームセンターで一枚500円程度で購入できるタイルカーペットを用意して頂き、 上手にカットしてフエルトと同様に敷いて頂くことによって好みの方向へチューニングすると言う手もある。
    低域の解像度という点については“H.A.L.C”シリーズではいかなる床に対しても一定の引き締め効果を付帯音なしに提供してくれるが、 余韻感の表れ方はアイソレーション効果とは違うベクトルで現れる現象なので記憶して頂ければと思う。
    このSpike baseのノウハウはProject“H.A.L.C”を完成させたという実感に基づき私が体験したチューニングで多方面のベクトルがあるという事実。 それを様々な環境で一定のパフオーマンスを引き出すための基準ラインの設定としてご理解頂ければと思う。
    これは皆様のお部屋における“H.A.L.C”シリーズのフィッティングということで、ご記憶頂きたい。

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    Project“H.A.L.C”の使命とは何か!?
    次世代のH.A.L.のリファレンスとして長期に渡り音質的なステータスを維持し、お客様にとっても飽きの来ないシンプルであり高級感あるデザインと仕上げを目指し、 安定価格にて末永く供給できるということを目指した。

    そして、何よりも重要なことは、その開発過程でラックというものがいかに音質に影響を持ち、その構成要素の部分部分で変化のベクトルに違いがあるという学習を この私が出来たことだったろう。

    今となってはProject“H.A.L.C”に関する質問がどのようなものであっても、私は自信をもって回答することが出来る。
    生みの親として我が子を知る自信が皆様のシステムを更に数段階成長させてくれることを予言しておきたい。

    どうぞお試しあれ!!
    文:川又
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