《H.A.L.'s 訪問記》
No.0030 - 2011/5/24 埼玉県川口市(茨城県笠間市) LUX FAN 様-H.A.L.'s 訪問記 Vol.30「熟成したStradivari Homageの魅力をSONYが引き出した!!」 ■ Customer's history ■ 「2000年5月22日月曜日 19:24」とはLUX FAN 様がハルズサークルに入会された 日時です。早いものであれから11年目の5月22日となりました。 ハルズサークルの創立とほぼ時を同じくしてご入会頂いた皆様とこのように 長年に渡るお付き合いをさせて頂いており本当に感謝しています。 これはハルズサークル入会の年に頂いたマラソン試聴会の感想でした。ここで 初めてLUX FANというハンドルネームが登場したわけです。 《HAL's Hearing Report》 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0015.html オープンして間もない当店でのイベントにも参加して頂いていました。 《HAL's Hearing Report》 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0026.html そのLUX FAN 様が自己紹介を兼ねて次に投稿して下さったのがこれでした。 《HAL's Monitor Report SAP RELAXA2PLUS》 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0129.html その同じ年に二度目のモニターレポートを頂きましたが、この時点でも複数の システムを使用されていることが分かってきます。 《HAL's Monitor Report》marantz SC-7S1&MA-9S1 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0141.html 前回に続いてRELAXAの熱心な試聴レポートを頂きました。ここでも使用システム に変化が起こっています。 《HAL's Monitor Report・RELAXA3PLUS特別編》 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0169.html H.A.L.がDyna5555にスケールアップして移転してからは世界中の名器を皆様に 聴いて頂けるようになりましたが、その波にちゃんとLUX FAN 様も乗って頂きました。 「GOLDMUND FULL EPIROGUEとダイナ5555訪問記」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0139.html この一カ月後には更に異色のハイエンドシステムをここで体験されています。 《HAL's Hearing Report》「諸君、帽子を脱ぎたまえ、天才だ!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0143.html そして、当時は爆発的な人気を誇ったESOTERIC P-0をとうとう導入され、この コンクールでも熱の入った文章を投稿して頂きました!! 懐かしいですね〜 《ESOTERIC 論文コンクール応募作品 Vol.7》 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0124.html 好奇心の対象は当店だけでなく↓このように情報収集にも余念がありません。 「2003東京インターナショナルオーディオショウ訪問記」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0144.html このように↓体験することでLUX FAN 様の感性は次第に磨かれていきました。 《HAL's Hearing Report》「人生の目標となるスピーカー!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0147.html 私にとって大変貴重な体験となったSACD4.0chの再生もしっかり研究されています。 《HAL's Hearing Report》「“よんちゃん行脚(^^ゞ”H.A.L.'s Hearing Report」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0189.html 海外のレアレーベルも体験して頂きレスポンスの良いレポートも頂きました。 《HAL's Monitor Report》「 The Best of TACET on SACD2004/2005 」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0240.html 「エフコンの感想か何か分からなくなりましたが、ここまできたら最後に エフコンとかけてダイナで戴いたカツサンドと説く。その心はソースが絶妙… お後が宜しいようで。」■これLUX FAN 様のセリフです(笑) 《HAL's Hearing Report》「何じゃこりゃ!??」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0245.html LUXMAN C-1000f&LUXMAN B-1000fを使ってエベレストを鳴らしていたのですから 見逃すはずはありません。しっかりレポートを頂きました。 《HAL's Hearing Report》「"The JBL!"と呼ぼう!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0303.html H.A.L.でのイベントには本当に随分と参加して頂きました。 《H.A.L.'s “エフコン”Hearing Report》「ついに完成!"The DDD"」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0319.html 《H.A.L.'s “エフコン”Hearing Report》「何も言えねえ!(by 北島)!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0462.html マラソン試聴会にも長らく参加して頂き、そのたびにありがたいご感想を頂き 本当にありがとうございました。 《33th マラソン試聴会 Audio Opera 2009' Hearing Report》 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0526.html 話題性ある新鮮品が登場する度にチェックされていました。これも!! 「H.A.L.'s Hearing Report - FrancoSerblin Ktema!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0582.html そして、その一カ月後にはとうとうこのスピーカーを導入されたのでした!! http://www.dynamicaudio.jp/file/100926/098.JPG http://www.dynamicaudio.jp/file/100926/103.JPG ハルズサークル入会から実に多数の試聴をしてきたLUX FAN 様が心中で狙って いたスピーカーとは実はこれだったのですね〜!! 「Sonusfaber Stradivari Homage導入顛末記!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0587.html 今回はこのStradivari Homageを聴かせて頂くためにお伺い致しましたが、実は 私の承知している範囲で、この他にも2セット、いや! それ以上のシステムを 違う場所で使用していらっしゃるのです。そして、一か月前のことでした。 「昨年の9月に川又さんから導入したStradivari Homageがイメージ通り鳴って くれません。Sound check希望します。周辺機器のためかケーブルのためか、 はたまた直前までKEFを使っていたためかわかりませんが、Stradivari Homage ってこんなものじゃない!との思いから調整の依頼です。像が大きすぎる。 奥行き感がでない。もう少し、低域を締めたい。」 LUX FAN 様からのご要望を受けてうかがったところは、実は埼玉県川口市では ありませんでした!! ■ Customer's room ■ 私が通勤で地元の駅から快速に乗る時に常磐線の特急フレッシュひたちがよく 停車したり通過したりします。これから出勤だという時に特急電車にゆったり 座っている乗客たちをホームから見ていると実に羨ましい限り。でも…、その フレッシュひたちに乗れるというのがちょっぴり嬉しい当日でした。 ゴールデンウィークの真っ最中ですが震災の影響もあってか下り方向の特急も さほどの混雑ではなく、見慣れた景色の中をすいすい走っていきます。 何!?下り方面なのに見慣れた風景とは!? 実は私の母親の実家が今回の訪問先 であるJR水戸線沿線にあるもので、私が子供のころは母親に連れられてよく 田舎に行ったものでした。その時の常磐線の車窓から眺めていた風景を本当に 久しぶりに見ていたものです。 当時、水戸線と言えば蒸気機関車で母親の実家から田畑の向こうに黒い煙が 動いていくのを子供心に面白く見ていたものでした。今でも単線ですから一時間 に一本しか来ない路線であり、今回仕事で乗る事になったのは本当に久しぶり の事でした。 どんな所かと言いますと、こんな風景です。 駅員さんは一人だけの駅舎はこんな感じです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/02.jpg ホームから眺めるとこんな景色ですが、目指すお宅は小高い山の向こう側です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/01.jpg 駅までお出迎え頂き、ふたりでしばしの散歩がてら田舎道を話しながら歩きました。 こちらのお宅を新築されたのはかれこれ15年ほど前ということ。当時の勤め先 が茨城県北部にあり、ゴルフ場も沢山あるので新築するにはここがいい、と 一念発起して新居を構えられた二年後に転勤の辞令が…。 良くある話しではありますが、それで埼玉県川口市のマンションに現在は一家 で暮らしながら時折こちらのお宅に来てオーディオを楽しまれているという、 いや、むしろこちらのお宅はオーディオのためにしか使っていないという贅沢 なスペースとなっているのでした。どうしてか…!?先ずはこれをご覧下さい。 二階の階段を上がったところ… http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/11.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/12.jpg そして部屋の中に入ってみると!! http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/14.jpg お部屋の壁一面がカセットデッキで埋め尽くされていました!! http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/020.JPG 懐かしいではありませんか!! 下がPIONEER CT-A1という名器、私も売りました!! 上はAKAI GX-F95で当時のフラッグシップ。えっ? アカイ? 当時は有名でした。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/018.JPG そして、これ!! TEAC Zシリーズで5000から7000までが揃っているなんて!! 随分スイッチの数が多いですね〜。当時はカセットテープのというメディアを 使いこなすのに様々な技術が開発され、音質変化をユーザーの選択で楽しんで いたのですね〜実に懐かしい。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/023.JPG Nakamichiの500シリーズです。もともとNakamichiの高性能ヘッドは周波数帯域 が大変広くとれるのですが、バイアスをいじる事で高域特性が変化しました。 これも私は数えきれないくらい売りましたね〜(^^ゞ http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/13.jpg Nakamichiの変わり種、RXシリーズです。オートリバースデッキが求められて いた時代に、テープの走行を逆転するのではなく、メカによってテープが パタンと裏表がひっくりかえるというユニークなもの。テープ走行は一定方向 なのである種、理想のオートリバースとしてもてはやされました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/016.JPG Nakamichiは当時のカセットデッキのハイエンドメーカーでした。そのNo2が この700シリーズ。700/2と700ZXLでした。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/013.JPG 極めつけがこれです。Nakamichi1000は35年くらい前で30万円していましたから、 いかに高価なデッキであったことか。それをDynaは平然と店頭に並べ売ってい たのですから若い私にはあこがれのオーディオショップだったわけですね〜^^; 下が1000ZXLです。オートアジマスによって画期的な高域特性をカセットデッキ にもたらした名器と言えます。いや〜、実に懐かしい!! http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/17.jpg そして、更に一階の別室にはこんなシステムもセットしてあり、この左右には サブウーファー、背後にはリアスピーカーがセッティングされています。 LUX FAN 様の名前の所以であるLUXMANのトップモデル。このスピーカー知って いる人は少ないでしょうが、アメリカで生産されたSONYブランドスピーカーです。 カセットデッキはあくまでもコレクションで正常に動作するものは少ないと いうことなのですが、あまりの懐かしさにしばし見とれてしまいました。 この写真には写っていないもう一部屋にも同様なカセットデッキの山、箱に 入ったままのものを含めて総数は400台以上あり数えきれていないという事。 すなわち、一戸建てのお住まいそのものがLUX FAN 様の趣味に使われていると いうことなのでした。いや〜恐れ入りました。<m(__)m> ということで、普通であればシステム紹介を詳細にさせて頂くのですが、今回 はごくごく一部ということで、下記のシステムで試聴したものをご紹介します。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/03.jpg SONY CDP-R10 DAS-R10 TA-ER1 TA-NR10 という当時のSONYが誇るフラッグ シップモデルにてStradivari Homageを聴かせて頂いたものでした!! ■ Customer's Sound ■ LUX FAN 様のリスニングルームは特にオーディオ専用の部屋として設計された ものではなく、一般的な戸建て住宅のリビングルームを使用しておられます。 写真のように長方形のお部屋の短辺にスピーカーをセッティングされ、椅子の 左側にCDプレーヤーとプリアンプをセットされています。ご本人が心配されて いるような症状が果たしてあるのだろうかと、滞在予定時間で二時間ぎりぎり というところまで持参したテスト曲の全てを聴かせて頂きました。 というよりも、この場ではLUX FAN 様との会話は最小限にして、先ずは出来る だけ聴かせて頂くことに集中していたのです。先ずは定番のこの曲から。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 冒頭の弦楽器の合奏が始まった瞬間から私はなじんでしまいました。(^^ゞ 実は、このStradivari HomageはLUX FAN 様がセカンドオーナーであられる。 前オーナーのもとで数年間鳴らされたものであり、最初に私が販売したもの。 スピーカーの熟成というのは何年かかるかわからない、いや、使い続けている とオーナーそのものが自覚できない場合が多いものですが、私には本当に良く 熟成の度合いが感じ取れるものでした。 弦楽器のしなやかさはお金を払ってでも手に入れたいくらいの美しさであり、 私から言わせて頂ければ「これこそStradivari Homageのあるべき姿と音質」 と最初からなじんでしまったというものです。 ちょっと遠慮しながらの音量設定でしたが、いつもこのくらいは出していると いうことで安心して聴いていましたが、左右スピーカーの間隔はさほど取れて いないものの、スピーカーの個性から発するものなのかオーケストラの奥行き感 が何とも香ばしく感じられ、スピーカーユニットの位置関係よりも左右両翼に ホールエコーが広がっていく展開も力みがなく結構な音場感を提示している。 スピーカーに向かって左側はアルミサッシの掃き出し窓で反射面なのですが、 特に違和感なくヴァイオリンの多数の合奏がみずみずしく感じられて問題なし。 右側は出入り口のドアがあり、これも中高域では反射面なのだがコントラバス の量感を不純に上書きするような低音の積み重ねも感じられず、どちらかと いうと端正に低域の楽音を区切って聴かせてくれるものでブーミーな所はない。 ステージ後方でのティンパニなどの打楽器は、コンクリートの建物では良くある 低音の反復した反射という現象が皆無なので遠近感がしっかりと感じられる。 管楽器の質感はギラギラすることのない金管楽器が響きの拡散を想像以上に 空間に飛び散らせてくれるので解放感があり、木管楽器はきちんと弦楽器の 並ぶ枠内で存在感を提示してピンスポットの定位感できちんと並んでくれる。 各パートの隅々でエージングが進行した大人の質感と雰囲気をまとわせている Stradivari Homageは新品と同時比較したら高く売れそうなほど素晴らしい!! どこにLUX FAN 様の不満があるのだろうか〜? と気持ち良くオーケストラを 聴き終わり、では低域のチェックでは選曲を変えてみようとこの曲。 ■“Basia”「 The Best Remixes 」CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX) http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/Basia/ http://www.basiaweb.com/ http://members.tripod.com/~Basiafan/moreimages.html#remixes1 冒頭のきらびやかな打ち込みの高域成分が散りばめられるパーカッションの 展開は上記のように熟成したまろやかさがありながら高域特性は素直に伸びて いるという実感で実に聴きやすく、同時に出現したドラムの低域に集中し私は 思わずボリュームを上げてしまいました。なぜか!? 「いや〜、実にドライで引き締まってますね〜。それに重量感も申し分ない」 お部屋によってはこのドラムは水分を含んだように重たい響きを床に垂れ流し てしまうようなケースがあるのですが、何とこちらでは私の経験では大変適正 な重量感を打音に含ませていながらキレがいいのです!! つまりは、Stradivari Homageの4個のウーファーがきっちりと制動されて打音 を発した後にルームアコースティックの悪さによって残響の付加という現象が ないからだと思います。 低音は重たく引き締まっているのがいい、と良く言われますが、スピーカーが 発した低域が数瞬の時間差で室内の反射音を多く含んでしまう事で誤解が発生 するケースが多いものです。 つまりは部屋が作った低音ということになってしまう傾向があるのですが、 いやいや…このドラムはテンションが締まっていて打音の瞬間のスピード感が 維持されているし、反射音で上塗りされた虚構の重量感というものがないと いう高品位なものであると言えます。いいじゃないですか〜!! そして、Basiaのヴォーカルが入ってくると…!? 「おー!!熟成したヴォーカルとはこういうことか!!」 先ほどのオーケストラで弦楽器の絶妙な質感はエージングの成果が表れている ものと直感したわけですが、このBasiaのヴォーカルは他にではないテイスト でしたね〜。 クールでシャープでクリスタルなイメージ、透明感が素晴らしく左右スピーカー の空間一杯に広がり消えていく、という録音の特徴があるわけですが、先ずは センターにしっかりした口許のビジュアルイメージとして観察出来る事です。 この最初の発見と確認がヴォーカルを聴く時には大切なこと。周囲に拡散して いく余韻感は、スタジオワークで付加される深みのあるリヴァーヴがあれば 簡単に演出出来てしまうものであり、ハイファイシステムで聴いてしまうと その厚化粧がかえって仇になる録音もあります。 しかし、先ずはヴォーカルの中心点がしっかりと認識出来るかどうかが先決 問題であるわけです。そこが最初からくっきりとBasiaの口許を見せてくれる のですから言う事はありません。 そして、ヴォーカルに施されたリヴァーヴの展開にバックの楽音がマスクされず、 小粒のパーカッションからピアノまで瞬間的な立ち上がりが美しい楽音との 共存が私の目の前で確認されダイナミックに弾けていくではありませんか。 このように瞬間的に立ち上がり消えていく楽音で反射音のいたずらは少ない ものでした。私はいつものように上半身を前後に動かして、一次反射音によって ストレスを感じるポイントがありはしないかと探したのだが、実用上の問題が あるような反射音は感じられませんでした。 写真で見るとスピーカーの間に引き違い扉がありますが、そこは何かと尋ねると 実は扉の向こうにはもう一つのシステムが置いてある部屋、つまり空間がある ということで、それで低域の抜けが良い理由が分かりました。 何と、このStradivari Homageは隣り合う部屋の真ん中にセットされていると いう位置関係が意識せずとも大変良好な環境となっていたわけです。 ■MICHAEL BUBLE/1.「Fever」WPCR-11777 http://wmg.jp/artist/michaelbuble/profile.html この曲で低域の状態を確認してみましょう。ドラムとベースというリズム楽器 だけではなく、この曲は途中から100Hz前後と思われる独特の低音が効果音と して録音されているのか、口径の小さいスピーカーやヘッドホンで聴いた時の 演出効果を狙ってなのか、ちょっとおどろおどろした低音が入っています。 その部分を私は定在波のチェックに使ったりするのですが、ここではどうか? 低域のテストをするぞ、という私の内心を知ることなくLUX FAN 様は私の背後 でじっと耳を傾けていらっしゃいました。 独特の低音が「ズン、ズド」と響きを残すようであれば定在波の可能性がある のですが、これがまた見事にしっかりメリハリをもって区切りをつけ、重厚な 低域でありながら強力なブレーキをかけて室内に響きを残さず消えていきます。 出すものを出して、残してはいけないものは残さず。LUX FAN 様が心配して おられた低域の不満点ということは私にとっては逆に良い現象の確認という ことで心地良く聴くことが出来ました。いいじゃありませんか〜!! さて、低域のポイントをずっと観察してきて問題なし。では楽音の音像として もう少しフォーカスを絞り込めないものか、という事でこんなことをしました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/03.jpg ←最初の状態です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/04.jpg ←角度の変化を付けました。 カメラアングルを同一にしなかったので分かりにくいでしょうが、微妙に角度 を変えています。うかがった時には左右のStradivari Homageはほぼ一直線で 平行にセットされていたのですが、それを内側に振り向けています。 スピーカーベースの手前外側を支点にして回転させたことによって内側に スピーカーの角度を振ったわけですが、多少ですが左右のスピーカーユニット の距離は狭まってしまいました。 これを少しでも改善しようと、スピーカーまでの距離を目測で10センチ程度 ですが遠ざけました。スピーカー後方壁面で低域の反射音という悪影響がない という事を利用して、少しでもスペースのある壁際の方がスピーカーベースの 角度を付けやすい事と音源との距離感をわずかでも大きくすることでホール録音 の再生をした時の奥行き感を出せればと考えたものです。 この変化を分かりやすいようにスピーカーの足元で見るとこうなっています。 http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/05.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/110503/06.jpg スピーカーの下に敷いてあるボードはパワーアンプの置き台との位置関係と ドアの開閉に障害にならない範囲ということで内振りに角度を付けるには限界 があるので、ボードの上のStradivari Homageも更に内側に向けるということ で調整してみました。簡単なことですが、これが音像再現性には大きく関係が あることなのです。 さあ、再度オーケストラで確認していきましょう!! ■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール 前奏曲の冒頭から弦楽器の美しさが再度確認されます。前奏曲での重厚かつ 多層構造の弦楽器の後方であり、上下位置が少し上となる中空のポイントに 管楽器のソロパートがピンポイントに定位し、そこから拡散する余韻感が実に 広大に広がっていきます。これが出てくれればやったかいがありました!! 木管にしても金管楽器でもステージの横幅に全体をイメージさせる水平方向の 広がりを十分に意識させ、それは管楽器の音源が点として明滅する高解像度の 表れでもあります。そこにカスタネットなどの鳴り物が小気味よくリズムを 刻み、何とその響きに見事な遠近法が加味されており、スピーカーの後方を 覗き込むように耳で感じる奥行き感をこともなげに展開するようになりました。 繰り返しになりますが、この曲でも弦楽器の質感は本当に美しいくエージング の魔法を実感するではありませんか!! いいですね〜。 ■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクト ペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団指揮: ワレリー・ゲルギエフ ここでも続けてオーケストラで試聴を続けていく事にしました。 先ずは「序曲」での繊細な弦楽器の楽音でホールエコーの含み方を観察します。 スピーカーの左右間隔が大きくとれない状態ではホールエコーのような空間の 大きさをイメージさせることは難しいのか? いや、実は左右間隔を大きくすれ ば良いというものではないのです。 楽音の出始めの音像が絞り込まれてフォーカスが鮮明である事。その鮮明で 濃厚な音像の発生点から周辺の自由空間に向かって余韻感がどれほど解放感を 伴って飛散していくのか、という音波の発祥から消滅までの過程が緻密に観察 出来るかどうか、ということが大切なのです。 さて、「くるみ割り人形」の中でも短時間でこなせる比較試聴に向いている トラックが15トラックの中国の踊りです。ファゴットの軽妙な演奏がゆった りした余韻感をもって繰り返される。まず、この愛嬌のある木管楽器の繰り 出す軽妙な楽音に与えられたホールエコーの存続がしっかり確認できます。 そして、右側後方からはコントラバスのピチカートが繰り返されますが、 その低域のゆったりとした余韻が運ばれていく先がずっと遠くに感じられるの が不思議なくらいです。これは情報量ということになりましょうか。 ホールの余韻感というと、どうしても煌びやかな中・高域の楽器群によって 華々しく展開されるものという印象がありますが、実は低音楽器がスーッと 拡散させていくエコー感は、多くの場合にホールの空間の大きさをイメージ させてくれるものであり、これは新鮮な余韻感なのです!!それがしっかりと 出てくるようになり、管楽器のフォーカスが良くなったということなのです。 16トラック「トレパーク(ロシアの踊り)」では打楽器の低音が不必要に誇張 されて聴こえるケースがありますが、その低音打楽器のフォルムも改善された ように感じられ、引きずるような残響を含ませないところがお部屋のメリット ということになりましょうか。いいじゃないですすか〜。 ■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ http://www.universal-music.co.jp/classics/refresh/muse/muse.html 冒頭からオーバーダビングで多数のフィリッパの声が重複するイントロでの 解像度の高まりが感じられました。左右間隔が広くとれなくても分離が良い 再生音が聴けるという事例は良くあります。 先ずはルームアコースティックの悪影響で一次反射音が直接音にダメージを 与えたりしない事ですが、前記のように何の違和感もなく、しなやかな弦楽器 を心地良く聴けるということはヴォーカルにしても同様な事です。 しかし、以前にも述べているように弦楽器群というのは面として音像の集合体 を作りますが、同じ連続楽音のヴォーカルでは先ず声の核心となる中心点での フォーカスが感じられ、そこから周辺に拡散していくうちに余韻感が濃度を 薄めていき消滅するまでの過程が観察できることが重要でしょう。 そのような素性の良い環境とシステムであれば、左右間隔をさほど必要とせず とも各楽音の分離感があり、それがあると奥行き感につながっていくという事 がポイントなのです。 このStradivari Homageは見せてくれました!!この録音で展開するスケール感 と響きの長さから消滅までの描写力はしっかりとあります。いいじゃないですか〜 ■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is(MVCI-24004) http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/diana/disco.html Stradivari Homageのセッティングをちょっと変化させてみたらこの曲です!! 次は全く対照的という音場感をヴォーカルとウッドベースで録音したこの曲。 今までに何度も使用してきた曲ですが、上記の空間表現を個々の楽音で逆の 音場感として捉えています。 Christian McBrideのウッドペースは爽快なピッチカートで弾け、開放弦で ぐっと重量感を伴い放ち沈み込んでいくベースが実に鮮明な輪郭を描きながら Stradivari Homageのセンターにくっきりと浮かびます。 「これいいじゃないですかー!!」 DIANA KRALLの弾ける指先は実に切れ味良く、再生システムの個性として本来 はあってはいけない残響を付加することもなく、実にすがすがしいエコー感を 空間に残しながら引き締まったテンションを聴かせてくれます。更にいいです!! この後にリヴァーヴをかけていないウッドベースがStradivari Homageの センターでソロを展開するのですが、何とも質感の良いベースなのです。 まったく問題なし!! ■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」 http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html イントロとギターとヴァイオリン、そしてヴォーカルの三要素がいっぺんで チェックできる選曲です。更に、前曲のDIANA KRALLのようにアメリカ録音の ヴォーカルと違って日本人のヴォーカルは口許が鮮明に描かれているという 特徴もあります。 音像が大きいというご指摘のLUX FAN 様のご指摘でしたが、実はヴォーカルに かけられているリヴァーヴの深さによって音像として広がるサイズが誤認され る場合もあります。 つまり、リヴァーヴが深く長いと音像も大きく感じてしまうのですが、この 曲でのヴォーカルの根っこというものがしっかりと認識出来ると、それが 発した響きの枝葉が広がっていくということを美しく感じられるようになります。 その音源という根っこの部分がヴォーカルの口許ということなのですが、 以外に左右スピーカーの角度によって根っこの存在感が高まるものです。 本当に些細な変化ではありますが、スピーカーの角度の調整によって、この 楽音の発祥地点が目に見えるようになること、これはスピーカーセッティング のコツということになります。 そして、そこから広がっていく響きが消滅するまでの過程を正確に聴きとれる ようになること、これらはコンポーネントが有している情報量の大小という事 で左右されるものです。 LUX FAN 様が組み合わせされたSONYのコンポーネントが見事に微細な情報を Stradivari Homageに注入しているということが確認できました。 私はお伺いする前はLUX FAN 様のご指摘の症状でかなり深刻な状況なのかと 思っていましたが、いやいや!!これだけの音質であれば心配はご無用です。 得られる環境の中で各コンポーネントの持ち味を生かしておられるという事を 今回は確認させて頂きました。どうぞご安心下さい。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 一時間に一本しか来ない単線のJR水戸線の某駅に降り立った時、一人きりの 年配の駅員さんに午後の上り線の発車時刻を尋ねておいたものでした。 途中までLUX FAN 様にお見送り頂き、最初はゆっくりな歩調から次第に小走り になり、駅舎が見えてきた時には時計を見ると三分前ということでダッシュ!! ホームに駆け込んだ時には四両編成の電車が遠くに見え始めていたタイミング でした。LUX FAN 様今回は本当にありがとうございました。 上りの特急フレッシュひたちが東京に戻ってきた時には土砂降りの雨でした。 車中では今回の体験を思い返し、カメラの液晶モニターで撮影した室内の模様 を再度確認し、在宅訪問診療ではありませんがLUX FAN 様の自己評価での音質 は全く問題なくシステムの健康状態はすこぶる良好であるという診断書をお送 りするのに時間がかかってしまったことをお詫び申し上げます。 最後にLUX FAN 様は私と同じ年齢である事。 カセットデッキのコレクションから思い起こされる青春時代も同じであること。 そして、最後に…オーディオにおける美意識をちゃんと持っておられるのも同じ。 実に多数の共通点を確認し、短いながらも有意義なひと時を過ごせたことに 改めてお礼申し上げます。 【LUX FAN 様よりメッセージを頂きました】 遠い田舎までSound checkに来ていただき、大変ありがとうございました。 その上、車のトラブルで駅までの往復を歩いて頂くことになり誠に申し訳 ありませんでした。 私の当初の予定では一緒にじっくりとチェックをされえるところを聴きながら と考えていましたが、帰りは車でお送りできるようにとばかり考えていて落ち 着かない対応になりましたことあらためてお詫びします。 さて、詳細な訪問記を作成くださりありがとうございました。 内容を確認させて頂くと、それほどひどい状態ではなく「得られる環境の中で 各コンポーネントの持ち味を生かしておられる」というコメントを頂き、私に とっても、Stradivari Homageにとっても大変うれしいものでした。 川又さんが帰られてから課題と言われてた右のスピーカーの間隔を少し広げ、 更に巻尺を使って正確に微調整したところ、真ん中の像がより濃くなり、 広がりのグラディエーションも良くなったように思われました。 この線でもう少し詰めてみたいと思っているところです。 このことから、セッテングの重要さを今回改めて感じた次第です。 早速写真にあるもう一つのLUXシステムのスピーカーも内振りにしました。 ここで使っている「SONY SS-1ED」「SCD-1」が今回掲載されているH.A.L.'s Hearing Report 24回マラソン試聴会に登場していたのですね。忘れていました。 なお、カセットデッキ収集は道楽であり、若いころからの男の夢ですね。 同じ年齢という気安さから帰りの道すがら話しした自称「おいしい空気と緑、 それに良い音楽が最高のご馳走」のある環境。 近くに来られることがありましたら、またぜひお立ち寄りください。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- LUX FAN 様ありがたいコメントに感謝しております。 「2000年5月22日」あれから11年後の同じ日に、この訪問記を配信・発表 出来た事を大変嬉しく思っています。そして… LUX FAN 様のこれからのオーディオ遍歴に私もお供出来ればと願っているものです。 ありがとうございました。 |