《H.A.L.'s 訪問記》


No.0025 - 2010/3/26

大阪市中央区 T.K様-H.A.L.'s 訪問記

Vol.25「H.A.L.が負けた…それほどの“音の美意識”による傑作!!」
 
         ■ Customer's history ■
 
今回は先ずT.K様から頂戴した↓この投稿からご紹介しましょう。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0515.html
 
T.K様にお買い上げ頂いた履歴は当社のコンピューター上では2001年から記録
されていますが、今思い出しても初めてお目にかかったのは現在のDyna5555が
開店する前からだと思います。
 
つまりは私がハルズサークルをスタートした年にご入会頂いていますが、実は
現在の大阪市に住まわれる以前は徳島県在住であり、ステレオサウンド誌の
ユーザー訪問でも取材されたことがありました。ですから、足かけ10年以上の
お付き合いという事かと思います。
 
当時はKRELL LAT-1やJEFFROWLAND MODEL 9など錚々たるコンポーネントを駆使
されており、独自の世界観をきちんと持たれているユーザーであると私も認識
していたものでした。
 
そういう意味でも前回の訪問記のように“音に対する美意識”をお持ちの稀有
なユーザーでもあり、お付き合いが本格化してから私にとってのVIPという
位置づけで大変お世話になったものでした。
 
そのT.K様からSound checkのご依頼を頂戴して数カ月、オーディオルームの
電源強化の工事を行うということでお待ちする時間もかかり、またお互いの
スケジュールを調節しつつ、やっと念願かなって訪問が実現したものでした。
 
ハルズサークルでは大阪在住・在勤の皆様が大よそ100名以上、関西地方とい
う事では200名以上の会員がいらっしゃいますが、文化圏としての大阪は恥ず
かしながら私にとっては未知の地域でした。
 
それは主にテレビやマスコミのニュースによる話題性が大変多いにも関わらず、
その地を訪れた事がなかったという私が世間知らずということでしょう。
 
2月末の平日早朝、久しぶりの東海道新幹線に乗るべく東京駅へと向かい、
新幹線の自動改札を入ろうとしたら遮断機が下りてブザーが鳴り出しました。
何事か!?
 
予定の発車時刻まであと数分だというのに何たることか!!若い駅員がやってきて
チケットを見て一言「お客様の切符は明日の指定になってますが…」何だと!!
 
前日に秋葉原のみどりの窓口で“明日の新幹線”と言って買い求めた切符でし
たが、オペレーターの女性が日付を打ち間違えたのでしょう。私も確認すれば
良かったのですが、インターネットで調べたのぞみ号の発車時刻は見たものの
日付には気が付きませんでした。
 
気が動転してしまって冷や汗は出るし、どうしたものかと改札近くのみどりの
窓口に駆け込んで事情を説明すると、何とか同じ発車時刻ののぞみ号で指定が
取れ、ぎりぎりで乗り込んだものでした。一時はどうなるかと思いましたが、
ほっとして座席に落ち着き一路、新大阪に向けての道中が始まりました。
 
さて、二時間半はあっという間でした。新大阪に降り立ってJR東海道本線に
乗り換えて大阪へと向かいます。T.K様のおもてなしで大阪駅近くの某ホテル
のレストランにご招待頂いたものですが、新幹線を降りてからというものの
私は異国情緒を感じていたものです。
 
JR駅構内のアナウンスは標準語なのですが、すれ違う人や行きかう人々の会話
が皆いわゆる関西弁なのです。当たり前と言えばそれきりですが、人々の話し
声を耳にして初めて大阪に来たんだ〜と実感したものでした。
 
本当においしい昼食をご馳走になりありがとうございました。さて、T.K様の
ご自宅にうかがう前に、ちょっと寄り道をということで以前から一度は訪ねて
みたいと思っていた日本橋電気街「でんでんタウン」にある同業者のショップ
を視察させて頂くことにしました。
 
その道すがら、しばしのドライブとなりましたが驚きました。あの有名な御堂筋
の名前は知っていたものの、何と六車線の一方通行という道路は初めてでした。
東京では考えられない広い道路で思いきった都市作りをしたものだと感心して
しまいました。
 
そして、御堂筋の歩道に面した路面店としてビルの一階には高級ブランド店が
ずらりと並んでいます。平日の昼過ぎという時間帯もあったのでしょうが、
歩道を行き交う人がまばらで東京と違うな〜と思ったものでした。
 
食い倒れの街と言いますが、ぜひ数日間の滞在で色々なところを食べ歩きした
いものだな〜、と思ったものです。残念ながら翌日に予定があったので今回は
日帰りとなってしまいましたが、大阪の都市空間が東京に比べてゆとりがある
な〜と思いました。
 
T.K様をお待たせしてもいけないので、同業者のショップは二軒ほど視察させ
て頂きました。ここでは店名と私の感想を述べる事は致しませんが、私の職場
であるDyna5555の存在感を再認識したということにしておきたいと思います。
 
新大阪から地下鉄でT.K様のお宅に直行したら、大阪の街並みを車から眺める
ということはできなかったでしょう。大阪城周辺の広大な緑地と大阪府庁など
も見る事が出来ました。本当にありがとうございました。
 
さて、話を戻しますと、徳島在住の頃から大阪市内に新築するマンションの
一階にオーディオルームを新築するという構想の元、後述するコンポーネント
をお求め頂いたのは七年ほど前になるかと思います。
 
KRELL LAT-1やJEFFROWLANDなどを鳴らし込んでいたT.K様が、その次の世代と
してどのようなシステムを構築されたのか。その選択はもちろんここH.A.L.で
試聴されて決定されたものでしたが、私が察するに以前のシステム構成で楽し
まれた経験を踏まえての発想の転換があったものと考えています。
 
そして、システムを再構成されてから七年間という時間をかけてのチューニング、
そして、その間にも一部のコンポーネントを処分され現在の組み合わせになり、
これからはプリアンプのチョイスに時間をかけたいということでした。
 
言わばT.K様の美意識に基づいて熟成された時期に訪問させて頂いたという事
になろうかと思います。ビルトインのガレージに車を納め、ご案内頂いたマン
ションの一室に一歩足を踏み入れると、そこはもう別世界でした!!
 
 
            ■ Customer's room ■
 
先ずは、この↓ドアをご覧下さい。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070211.jpg
 
このドアの反対側に玄関があり、向こう側から入室するものですが、私が初めて
室内を見た時の驚きと感動をちょっぴり演出するために敢えて室内側から見た
ドアを撮影したものです。
このドアを開けて私の目に飛び込んできたのが↓こんな風景でした!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070239.jpg
 
この景観を見ただけで知る人ぞ知るというシステム構成がピンとくる方も多い
と思います。このお部屋はスピーカー側の壁面よりもリスナー側の壁面の方が
大きくなって台形の底辺となっており、スピーカー両サイドの壁面を傾斜させ
て定在波を抑制している構造となっています。
 
スピーカー設置の御影石が台形で短辺5.9m長辺7.5m高さ(奥行き)2.0m
であり、フローリング部が長方形で7.5m×4.7mとなり、部屋の奥行きは
ざっと7.0mというところでした。
 
さあ、このシステムの正面に移動して撮影したのが次の写真です
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070234.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070235.jpg
 
カメラの調整で色調が大分違うので、フラッシュ撮影したものとしないものの
両方を掲載しました。ある時点からT.K様が気を利かせて下さり室内の調光を
明るくして頂いたので撮影しなおしたというものです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070242.jpg
 
システムの中心にセットされているのは大変うれしいことにProject“H.A.L.C”HC/4Mです。
その前に鎮座するのが究極のアナログプレーヤーとして国内でも少数のオーナー
しかいないというAUDIONOTE GINGAです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070243.jpg
 
ただし、同社のトーンアームではなく、T.K様は特注扱いでこんなアームを
指定されています。そのフォノアンプとして使用しているものは、あの3.0です。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070247.jpg
 
さて、システムの裏手に回ってみましょう。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070251.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070268.jpg
 
見る人が見ればケーブルの大よそはお分かりになると思います。ここでも妥協
なき選択をされているものですが、ラックの裏側というのはどちらのお宅でも
大同小異ということになってしまいますね。
 
さて、この辺でT.K様のシステムをご紹介した方が良さそうです。こちらです!!
 
 
 ◆H.A.L.'s 訪問記-Vol.25  大阪市中央区 T.K 様システム構成◆
 
        ■ DIGITAL SYSTEM ■
 
………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-0Rb(税別\1,350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g0rb/index.html
               with
zoethecus z.3/R(Maple)+z.slab×3 (税別 \384,000.)          
http://www.axiss.co.jp/fzeoth.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC8100(税別\300,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/8ncpc8100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-DA6100BNC×3(税別\720,000.)→Wordsync-for ESOTERIC D-01×2
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6000/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC P-01+VUK-P01(税別\2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/system/p01_d01/index.html
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/brn/576.html
               with
Project“H.A.L.C”HC/4M(税込み \720,000.)          
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/index.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC7100(税別\200,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc7100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-DA6300XLR×2(税別\560,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC D-01+VUK-D01×2(税別\2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/system/p01_d01/index.html
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/brn/576.html
               with
zoethecus z.3/R(Maple)+z.slab×3 (税別 \384,000.)          
http://www.axiss.co.jp/fzeoth.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC7100(税別\200,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc7100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA Interconnect/XLR 1.0m (税別\1,200,000.)
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC C-03 (税別\800,000.) 
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c03/index.html
               with
Project“H.A.L.C”HC/4M(税込み \720,000.)          
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/index.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC7100(税別\200,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc7100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA Interconnect/XLR 1.0m (税別\1,340,000.)
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND MIMESIS 29.4ME (税別\6,800,000.) ■200V仕様
http://www.stellavox-japan.co.jp/library/download/pdf/gm/ultimate/mimesis294me.pdf
               with
zoethecus z.Block2(Maple)×2(税別 \328,000.)       
http://www.axiss.co.jp/fzeoth.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC9100×2(税別\700,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/7npc9100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA Tri-Wire 2.0 (税別\3,388,000.)  →for Avantgarde TRIO
               and
GOLDMUND LINEAL SP CABLE 2.5m+LSA-S1→for 2 BASSHORN or Kiso Acoustic HB-1
http://www.stellavox-japan.co.jp/01goldmund/lineup.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Avantgarde TRIO+2 BASSHORN  (税別\10,000,000.) 
http://www.avantgarde-acoustic.de./
               and
Kiso Acoustic HB-1 / Hawaiian Koa & Goldener Madrona(税別\2,000,000.)
http://kisoacoustic.co.jp/
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/hb1/top.html
………………………………………………………………………………
 
 
        ■ ANALOG SYSTEM ■
 
………………………………………………………………………………
AUDIONOTE GINGA(税別\54,000,000.) & GRAHAM ENGINEERING PHANTOM U(税別\780,000.) & Lyra TITAN(税別\540,000.) 
http://www.audionote.co.jp/jp/index.html
http://www.scantech.co.jp/
               and
ヘルツ株式会社 サイズ7060M
http://www.herz-f.co.jp/lineup/16.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD AQUEOUS PHONO 1.2m
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Connoisseur   Connoisseur 3.0 (税別\7,500,000.)■200V仕様
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/103.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/120.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD Signature Series DOMINUS PLASMA Interconnect/RCA 2.0m (税別\1,320,000.)
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC C-03 (税別\800,000.) 
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c03/index.html
               with
Project“H.A.L.C”HC/4M(税込み \720,000.)          
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/index.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC7100(税別\200,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc7100/index.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
              以下は上記同様
 
ビジュアルシステムはESOTERIC U-X1、VPはmarantz、スクリーンはスチュワートなど使用
 
スクリーンボックスも共振を避けて重厚な造りとしてあり、↓このように天井
にきっちりと納まっています。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070291.jpg
 
さて、T.K様はビジュアルも楽しまれていますが、5.1chは採用していません。
2.1chで十分だというお考えです。何といってもBASSHORNがありますからね〜
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070271.jpg 
 
ということでスクリーンを下ろすと↓このようになります。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070294.jpg
 
この部屋にはオーディオシステムと同程度の予算がかけられており、T.K様の
希望を取り入れつつ独自の設計で素晴らしい結果を出したインストーラーを
ここにご紹介しておきましょう。私も色々な経験をしてきましたが、とにかく
コンポーネントの前に部屋そのものに脱帽というほどのものでした。
 
http://www.homecinema.co.jp/kyoto/index.html
 
さて、気になったポイントを見て行きましょう。このインシュレーターは昔
一部のマニアで有名になったマーク某ランド製のものということでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070265.jpg
 
壁コンセントもご覧のようにしっかりしたものです。
真ん中に見える電源ケーブルは珍しい特注ものです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070296.jpg
 
冒頭にT.K様の投稿を紹介していますが、↓このようにKiso Acoustic HB-1 
Hawaiian Koa & Goldener Madronaを国内最速でお求め頂いたものでした。
 
この写真ではフローリングの木目と平行にセットされているということを記憶
しておいて頂ければと思います。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070253.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070262.jpg
 
そして、その配線ですが、↓こうなっています。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070273.jpg
 
このスピーカーの一端はパワーアンプの後ろで↓こうなっています。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070275.jpg
 
GOLDMUND LINEAL SP CABLEのバナナプラグによってHB-1とBASSHORNとを差し
替えているものです。しかし、HB-1もこのパワーアンプで鳴らしたら本望と
いうものでしょう。これは後ほど印象を述べますのでご期待下さい。
 
趣味のためだけに作られた部屋という環境がT.K様のこだわりをいかんなく
発揮しており、巨大なAvantgarde TRIO+2 BASSHORNの前にチョコンとセット
されたHB-1が果たしてどのような音を聴かせてくれるのか!!
 
今までのSound checkで最長の滞在時間となってしまった今回の感動は只者で
はないレベルだったのです!!今回の訪問記は、ここからが長いのです!!(^^ゞ
 
 
         ■ Customer's Sound ■
 
私は先ず室内の模様を先に撮影させて頂いてから、その後にじっくりと聴かせ
て頂こうということでT.K様の指定席を譲って頂き、最初はH&GタイプのHB-1
から聴かせて頂くことになりました。
 
冒頭でもT.K様が“音に対する美意識”をお持ちのレベルのユーザーであると
述べていますが、そのような方は私に聴かせたいという曲を何曲か用意されて
いるというのが常です。
 
“音の美意識”をお持ちの方は日頃聴く曲にもセンスの良さを感じさせるもの
ですが、ボリュームはお好きなようにとリモコンを貸して頂き、この日も先ず
はT.K様の選曲で試聴が始まりました。
 
イントロから流れてきたのは何とウクレレでした!!そして、ヴォーカルが…!!
あっ、この声は!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070259.jpg
 
この時に私が見ていたビジュアルは↑こんな風景でした。これは椅子の背もた
れの上にカメラを置いて、山勘で撮ったものなので多少斜めになっていますが
お許しを。左右のHB-1は全くの平行状態にセットされています。
 
と言いますのは、背もたれの背後は壁になっているので、一番引いたポジション
がここという事なのです。えっ!!椅子の直後が壁ということだと反射波が気に
ならないのか?せっかく、これだけ広い部屋なのになぜ壁際に椅子を置くのか?
 
と考えられる方もいらっしゃると思いますが、そこがT.K様のお部屋の素晴ら
しいところ。スピーカーの対向面の壁には特殊な多孔質の素材が一面に埋め
込まれており、吸音性を持たせた材質ということで反射波が気にならないほど
上手くコントロールされています。
 
私の目測ではHB-1とリスナーの位置関係はちょうどここの試聴室と同じくらい
に約3メートルが一辺の三角形となっているものでした。そして、HB-1の後方
にも同様に約3メートル程の十分な空間があり、正面から見た時にESOTERIC
P-01のあたりに極めて鮮明なヴォーカルが浮かび上がります。この声は!?
 
そうです、あのシンディ・ローパーです。しかも伴奏はウクレレだけという
シンプルな編成による録音です。曲はお馴染の"Across The Universe"では
ありませんか!!そして、ウクレレと言えばこの人ジェイク・シマブクロです。
 
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/JakeShimabukuro/
Jake Shimabukuro/Across The Universe
 
この部屋は7.5m×7.0mくらい、天井高が2.8メートルくらいの空間であると
お見受けしました。しかも遮音・防音はほぼ完璧というものであり、
音楽に浸るという事では望むべき最高レベルの環境と言えると思います。
 
H.A.L.でも追いつけないノイズフロアーの低さが素晴らしく、再生音の細かな
ディティールまでも完璧に再現し、一音一音の発生から消滅まで私にも経験の
ない程の素晴らしさでウクレレという音量が小さな楽器の音を克明に描きます。
 
建造物の中で残響時間が最も長いのが、ステンドグラスや壁画を見上げるよう
な尖塔のある教会だと言われています。大よそ6秒以上の長さで余韻が降り注
ぐようなイメージです。
 
そして、オーケストラが演奏するコンサートホールで求められるのが2.5秒から
3秒くらいの残響時間と言われ、ではオーディオルームではどのくらいが適当
なのかというと、その10分の1程度で0.25から0.3秒くらいと言われています。
 
そこで、もうひとつ重要なパラメーターがあります。オーディオルームでは
残響時間というものに伝送周波数特性という要素を考慮しなければなりません。
 
つまり、すべての周波数が均一の残響時間を持つことが望ましいのです。
更に一般家庭においてコントロールすることが難しいのは高域よりも低域と
いうことになります。
 
後ほどオーケストラを聴いて実感するのですが、この一曲目を聴いた瞬間に
私はT.K様のお部屋は理想的な残響時間と伝送周波数特性を持っていることが
察せられました。それは同時に楽音のエネルギー感を吸音ということで奪い去る
だけではなく適度にコントロールされているという事でもあります。
 
ウクレレという楽器の胴とほぼ同じような容積のHB-1から発せられたわずか
四弦の音はスタジオワークで補強されているとはいえ、左右のHB-1の空間に
一本ずつの弦が分離して違う音階を奏でているのが見える、という錯覚を起こ
す程に素晴らしい解像度で展開します。
 
そして、一音一音にみなぎるようなエネルギー感があり、HB-1にしては大きす
ぎと思えるようなエアボリュームの空間に鮮明にして濃密な音像を描くのです
から驚いてしまいました。
 
しかも、シンディ・ローパーのヴォーカルの質感の何たることか!!
 
陳腐な形容詞で語ることは避けたいのですが、歌手が声に乗せて表現しようと
しているニュアンスがここまで克明に感じ取れるという体験をしたことはあり
ませんでした。
 
特に声量を抑え唇を閉じ加減にしてビブラートを利かせるようなパッセージが、
あたかも彼女の顔をクローズアップして眼前のスクリーンに投射したように、
唇の動きとハスキーな声が完全なシンクロを見せるような生々しさなのです。
 
「いいですね〜、これ!!素晴らしいです!!」
 
私はひねくれ者なのか、T.K様の前では自分の感想と分析を事細かな言葉で
直ちに述べるようなことはしないものの、明らかにH.A.L.が負けた!!と直感
してしまいました。
 
演奏者の数が少ない程にごまかしのきかない録音のクォリティーがチェック
されるものであり、私もここでHB-1の個性と魅力を理解して頂くためにソロ
演奏の曲を最初に聴いて頂くことにしていますが、T.K様の選曲は私の思惑を
知ってか知らぬか、ジャストミートでHB-1の潜在能力を引き出した実演を
されるのだから本当に最初から脱帽という心境でした。参りました<m(__)m>
 
初めての料理に感動すると次に出される料理も同様なレベルの説得力を持って
しまうという事はあるでしょう。私はそろそろ食べなれたもので試してみたく
なったので、いつもの曲を聴かせて頂くことにしました。
 
■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団
 
聴きなれているからこその衝撃、これは最前まで聴かせて頂いた曲の数倍と
いうインパクトがありました!!
 
「えっ、ほんとに!!これがHB-1の音なんだろうか!!」
 
冒頭の弦楽器群の合奏が始まった瞬間に、私はHB-1で聴く未体験の領域があった
のだと気がつかされました。先ずはコントラバスの豊かさです。この低域は
本当にHB-1が出しているのだろうかと思うほどの量感を提示し、HB-1の周辺の
空間に群像となって濃厚な響きを拡散していきます。
 
この低域はここの試聴室でも出し得ないものでした。室内を見てお分かりのよ
うに、スピーカーの対向面の壁には特殊な材質による高域の吸音性を持たせて
いますが、一次反射音の発生ポイントに120×180センチの面積でQRDのDiffusor
をセットしてあるだけでグラスウールなどの繊維質を使った吸音材は使用して
いません。
 
恐らくはコンクリートの上に直接的に貼り付けたフローリングなのか、強固な
床はゴルフボールが高くバウンドさせる程に高い剛性のものであり、Avantgardeを
セットしているところは御影石で作られています。
 
私は自分が発声した声やハンドクラップなどで残響のあり方を試してみましたが、
手を叩き合わせた瞬間の反射音は明確に聴き取れ、その後に自然減衰していく
過程が実にリニアに消滅していくことを実験の上で感じていました。
 
今まで経験してきた鉄筋コンクリート製の建物では、往々にして微妙な定在波
が発生したり低域だけ残響時間が長かったりという事例がありましたが、何と
素直な減衰特性であろうかと感心してしまいました。
 
真空が断熱効果を持つように、そして魔法瓶に入れたお湯の保温性が良いように、
T.K様の部屋では音響エネルギーを適切な時間軸で見事に維持しているのです。
 
もしも電気ポットのように電熱線で湯を沸かし保温するというものであれば、
強制的に熱湯に近い温度で保温できるでしょうが、これは残響が多すぎる部屋
の例えになってしまうでしょう。
 
魔法瓶は断熱性はありますが、いつかは冷めてしまうものであり温度の低下は
時間の経過に伴って緩やかにぬるま湯となり常温まで下がっていくものでしょう。
そんなイメージを思い浮かべたものでした。
 
室内の壁面に吸音面を作らずとも、一次反射音という一番エネルギーの大きな
反射波を正確にもたらし、距離の二乗に反比例して減衰するという音波の大原
則からすれば、二回目の反射面にたどり着くまでの距離で音響エネルギーを
適度に自然減衰させているということでしょうか。
 
とにかく低域の保存性が良いという事かと思いますが、鮮度の高い低域がこれ
ほどHB-1から出るのか、という新たな驚きに舌を巻いてしまいました。
 
目を奪われるのはコントラバスだけではありません。第一第二ヴァイオリンの
緻密でハーモニーの豊かさが際立ち、微細な色どりを加えて多層構造の響きと
なって左右のHB-1の中間に見事なグラデーションを展開します。そして、その
音場感の何と広大であることか!!
 
しっとりとしたしなやかさと力強さを併せ持ち、HB-1という極小の音源が私の
眼前に音場感という巨大なビジュアルイメージを作り出す情景は圧巻でした!!
 
“音の美意識”をお持ちだという事は、この場で聴くことのできる音質をT.K様が
聴きながら選択されたということ。それに対して先ずは敬意を表して、あくま
でも私の好みにおいてということで、ちょっといじらせて頂きました。
 
このHB-1のセッティングも当然T.K様がご自身で決定したものであり、不具合
は特にないのですが、私としてはオーケストラの各パートの音像の輪郭をもう
少し小ぶりにしたいという事がありました。そこで、上記の写真でもおわかり
のように左右平行にセットさせたHB-1を↓このようにリスナーに向けて内側に
オフセットしました。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070284.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070285.jpg
 
このように床の木目の方向性と比較して頂き、かつ自分に対してHB-1の正面を
向けるという簡単な変化です。ここでも同様なセッティングをしていますが、
これでオーケストラの弦楽器の集団として輪郭を見せるようになり、また管楽
器の定位感も音像が縮小されたことで鮮明になってきました。
 
そして、大切なことは音像のフォーカスがはっきりすると奥行き感が出てくる
という事かと思います。ただし、個人の好みによっては弦楽器が見せる音像と
してある程度の面積があって広がったように聴きたいという場合には中間的な
角度でも良いと思います。
 
基本さえ出来ていれば好みの範疇ということかと思います。“音の美意識”を
お持ちだという事を解かっていますので、その選択も認めた上でのアレンジでした。
 
HB-1のあまりの素晴らしさに感動した私は、帰社後に次のような紹介状を送信
したものでした。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
Kiso Acoustic 代表 原 様
いつもお世話になります。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0515.html
 
上記にてご感想も頂き、Hawaiian Koa & Goldener Madronaのご注文を頂いた
T.K様のお宅を昨日訪問してきました。
 
T.K様のお宅で聴かせて頂いたHB-1は完全に私の試聴室での音質を超越しており、
これほどの情報量と低域の豊かさを聴かせるHB-1は他にはないものと感じました。
それほど素晴らしいものです。
 
同時に、原様にもT.K様のシステムでHB-1をぜひ一度聴いて頂き、潜在能力の
大きさを実感して頂ければと思います。
 
T.K様も大歓迎ということでしたので、ぜひ表敬訪問を検討して頂ければと思います。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
さて、HB-1の試聴だけで結構な時間を使ってしまいましたが、いよいよ次には
Avantgarde TRIO+2 BASSHORNの試聴ということでスピーカーの切り替えをする
と同時にバーンインも行い、しばし休憩をということでマンション最上階の
ご自宅へとお招き頂きお茶をご馳走になりました。
 
奥様にもご紹介頂き、美味しいコーヒーなどご馳走になりながら世間話しの
話題になったのが何と仏壇の話し。T.K様のお部屋に備えられているモダンな
仏壇を私が気に入ってしまったからです(^^ゞこんな↓デザインのものでした。
 
http://www.memoria-ginza.com/
 
昼食を頂いたホテルの中華レストランから買ってこられたという焼き菓子など
を頂きながらしばしの歓談の後に再度オーディオルームへと降りることになりました。
 
さて、HB-1はそのままで聴くのかというと違います。次の写真のようにすっき
りとHB-1を片づけての試聴となりましたが、わずか4.5KgのHB-1は本当にこんな
時には楽に移動できます。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070313.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070315.jpg
 
何気なく見られる写真ですが、前記の同様な構図での写真を再度比較のために
ご覧頂ければと思います。↓これです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070284.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070285.jpg
 
HB-1を片づけて私の意図するところを気が付かれたでしょうか? 
Avantgarde TRIOのトゥイーターの軸上の真下にHB-1をセットしておきました。
 
つまり、HB-1というコンパクトなスピーカーが発した音源位置に合わせて大型
システムのAvantgarde TRIOの高域音源位置も同じとしていたのです。
 
この対比によって左右両チャンネルの音源位置の間隔を同じくしておき、次の
Avantgarde TRIOも聴こうと思っていたものでした。
 
さて、その意味合いでAvantgardeで聴く最初の曲もHB-1と同じものにしました。
Jake Shimabukuro/Across The Universe です。
 
同じ曲をということはT.K様の選曲のセンスをAvantgardeでも生かそうという
もので、HB-1という小型スピーカーが描く音像の在り方と音場感の音源位置と
同じところから発せられるAvantgarde TRIOの高域がどのように違うのかを
小編成の楽音で比較したかったからです。
 
「おー!!なるほど〜」
 
イントロからウクレレの音にテンションの高まりが感じられます。たった四弦
の楽器でボディーも小さい。当然スタジオワークで音響的な処理をしていると
は言え、そのエネルギー感が当然のことながらHB-1とは異なる次元のものです。
 
そして、シンディ・ローパーのヴォーカルです。Avantgarde TRIOとHB-1を比較
するのはナンセンスとわかっていながらも、左右スピーカーのセンターに浮かぶ
ヴォーカルの何と異なる質感であることか!!
 
これは言い換えればAvantgarde TRIOの描くヴォーカルは濃厚であり輪郭の
描き方がくっきりはっきりのシルエットであるということかもしれません。
 
Avantgardeのスフェリカルホーンは85%の直接音をリスナーに届けるという同社
の思想が見事にシンプルな録音で再現されています。そして、HB-1が醸し出す
ヴォーカルにはスピーカーの自由裁量によって響きが加味された美しさがあり、
それは音像の描き方において、周囲の空間に歌手のオーラを発散させるような
効用があると言えるかもしれません。
 
空間に滲み出していく響きが心地良く、同時に音像の周囲に臨界線を描かずに
聴かせるHB-1との対比が見事にAvantgardeの個性として感じられました。
 
だからHB-1とTRIOのトゥイーターの位置関係を上記のようにしておいて正解と
いうことなのです!!
 
さて、小編成の録音によって大小スピーカーの対比を実感した後に、持参した
CDで聴きなれたものを、そして次は大編成のオーケストラを聴かせて頂く事に
しました。
 
■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団
 
HB-1である意味でのふくよかさを伴った弦楽器の美しさを堪能した後に、この
Avantgarde TRIOの弦楽器は対照的でした。
 
「おー!!これはいい、そして懐かしい!!」
 
Avantgarde TRIOをここの試聴室で盛んに鳴らしていたのは、もう早いもので
七年前となってしまったからだ。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/679.html
 
そして、昨年は上記のようにAvantgarde DUO OMEGA G2をここでも鳴らしてい
ましたが、同社のスピーカーは機種が違ってもオーケストラの質感は見事に
伝統を守り同じ質感と傾向で聴かせてくれるということを再確認しました。
 
スピーカーからの直接音、言い換えれば録音された信号の忠実な再現性を室内
の音響特性に左右されずにリスナーに届けるという思想です。この意味では
TRIOの発するオーケストラを最初は鋭角的な印象を持ったものの、聴き進む
うちに情報量が多いせいなのだと再認識するようになりました。
 
直接音を重視する発想の音質には曖昧さがありません。KRELL LAT-1を愛用さ
れていたT.K様が何故このスピーカーを選んだのか、その理由が次第に理解さ
れてくると同時に、私にはもう一つのポイントが見えてきました。それを確認
するためにも更にオーケストラを聴き続けることにしました。
 
■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル
 メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール
 
「これは素晴らしい!!ここまでくっきりと分離させているのに、ひとつの余韻感
 としてオーケストラを包み込むような空間描写は経験がないぞ!!」
 
前奏曲での弦楽器群の再現性は私の記憶にないほど克明でした。弦楽五部で
恐らくは騒然50人程の奏者の合奏は複雑なレイヤーによって各パートの存在感
を微妙な色彩感の違いとして認識させてくれます。
 
ざっと50本の弓が一斉にシンクロするかのように律動しますが、完璧に同じ
角度で上下動しているかというと微妙なずれがあるものです。ビジュアル的な
そんなイメージを音にしたら集団の中に個々の演奏者による異なる音色の集合
体であるということを聴き手にきちんと伝えてくる音なのです。
 
ファランドールでは同じ主題に管楽器と打楽器が加わりますが、この時の小物
の打楽器、タンバリンやカスタネットの遠近感がホーンスピーカーであること
を忘れさせてくれるほどTRIOの後方に深々と響きの消失点を延長していきます。
 
そして、ここでも前曲を聴いて思いついたポイントが気になってきます。
そこで、同じオーケストラでも核心をチェックすべくこの曲をかけることに!!
 
■TUTTI! An Orchestral Sampler "The Absolute Sound Super Disc List"
http://www.referencerecordings.com/SAMPLE.asp#samplers
http://www.super-audiocd.com/software/disc.php?dno=7208080018
1 Rimsky-Korsakov: Dance of the Tumblers, Eiji Oue/Minnesota Orchestra
 
Reference Recordingsの特徴でもある深々とした低域の表現がどうなるか?
それは気になり始めたポイントをズバリ診断するのに必然的な選曲でした。
 
アメリカ的と言ったら異論が上がるかもしれませんが、他のクラシックレーベル
とは違う独特な低音をしなやかな弦楽器と共存させ、演出効果と悟らせない
ようなレコーディングのこの曲をT.K様がチューニングされたAvantgarde TRIO
+2 BASSHORNがどのように聴かせてくれるのか? 
 
「おっと!!これは…やっぱりそうか!!」
 
以前にKRELL LAT-1にてT.K様が体得されたセンス、低域をどのように美しく
聴かせるのかというポイントが実は私が気になっていたところでした。
 
BASSHORNのようなアクティブ(サブ)ウーファーを搭載したスピーカーの使い方、
つまりは使い手の任意によって独自に低域をコントロールできる機能を与え
られた場合の多くが過剰な低域を知らず知らずのうちに出してしまうという
ケースが多いものです。
 
便利なようで使い手のセンスが問われる低域の調整をKRELL LAT-1という前歴
を持つT.K様がBASSHORNにおいてどのように発揮されたのか!!ここです!!
 
Reference Recordingsの曲で確認が出来ました。量的・質的にも低域に関して
ストイックなチューニングをしているというT.K様の感性がここにあります!!
 
スピーカーそのものが過剰な低域を垂れ流すことなく、きっちりと制動し、
直接音を重視するAvantgardeのポリシーにマッチする低域とはこれなのです!!
私は思わずここ↓をクローズアップせずにはいられませんでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070305.jpg
 
BASSHORNのコントロールパネルですが、私がチューニングの秘訣をT.K様に質問
したところ、一度測定機を持ちこんで伝送周波数特性をチェックし、もっとも
フラットになるように調整した結果がこのポジションだったということでした。
 
しかし、T.K様はこれでもまだ低域が少し膨らんでしまう傾向があると感じて
いるというコメントを述べておられました。このチューニングのお部屋の環境
が相まって重量感とタイトな輪郭表現をものにしたということでしょう。
いやいや、恐れ入りました。
 
ルームアコースティックによって低域は大きく変化しますが、私が七年前に
この試聴室でBASSHORNを調整した時のセッティングは↓こうでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100328/51-231.jpg
 
FREQUENCYを私は60Hzまで下げていますが、これはルームアコースティックの
違いによる結果だと思います。言い換えれば、私は当時もAvantgardeを使って
鳴らす曲はオーケストラからポップスまで広範囲なジャンルを聴いて設定して
いましたが、ここまで絞らないと低域は膨らんでしまったのです。
 
その低域の膨張がないということでT.K様の部屋の素晴らしさを再確認しました。
なぜか?
 
VOLUMEのセッティングを比べて下さい。私は11時の角度にしていますが、
T.K様は1時の角度まで2ステップも上げています。しかし、それでも見事に
引き締まった低域であり、同時に重厚感も絶妙に再現されているのです。
 
それでもT.K様は測定結果よりもご自身の感性では更に低域を引き締めたいと
考えておられるということで、音の美意識をここまでしっかりとお持ちである
ということに感服させられました。
 
このようなセンスによってチューニングされたAvantgardeであれば、オーケス
トラだけではなく、スタジオ録音の多種多様な楽曲であっても何も問題はあり
ません。その証拠に私が持参した課題曲のすべてにおいて、見事なディティール
を描く素晴らしい解像度が保証され、何曲もおかわりして聴かせて頂きました。
 
さて、外の世界ではもう暗くなってきた時間だろうか。思い切って窓が一切
ないという室内で時を忘れで持参したCDを、更にはLPまでも聴かせて頂きました。
 
今からちょうど20 年前に祖国ベルギーの首都ブリュッセルで心臓発作のため
に他界した20 世紀における大ヴァイオリニストのひとり、アルテュール・
グリュミオー(Arthur Grumiaux)のこの一枚が私のバイブルともなっている。
 
タモリ倶楽部の取材の折にタモリさんとコブクロの皆さんに聴いて頂いたもの
で、あの曲は何か?ということがネットでも話題なったり問い合わせの電話が
多数来たものでした。
 
アルテュール・グリュミオー/ソリスト・ロマンド/アルバト・ゲレッツ指揮
による、バッハのヴァイオリン協奏曲第一番イ短調です。私がダイナミック
オーディオに入社した1978 年の録音であり、LPしかなかった当時から試聴
盤として数えきれないくらい聴いてきたレコード。
 
演奏者のグリュミオーは1921 年の生まれとされているので、彼が57 歳のとき
の録音ということになる。近代注目される若手ヴァイオリン奏者の録音は、
音階の移行を大変なスピードで繰り返す技巧が印象に残るのだが、このグリュ
ミオーの演奏は趣が違う。
 
職業的関心事から多くのクラシック音楽を聴いているが、私はクラシック音楽
に造詣が深いわけではない。むしろ、お客様からクラシック音楽に関しては
色々と教えて頂いているところが多い。この録音は超ハイファイという解像度
最優先のものではないのだが、システムの分析にあたっては私のリファレンス
となっているものです。それをAUDIONOTE GINGAで聴けるなんて!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070300.jpg
 
AUDIONOTEの設計者が自ら持ち込んで試聴したという経緯を伺いましたが、
その威風堂々たる存在感と音質には舌を巻くばかりでした。
 
グリュミオーの力強いアルコから始まり、動機的展開のソロとトゥッティーが
絡み合うように結びついていく。この時のヴァイオリンの質感の芳醇さと明晰
さは何としたことか!!
 
こんな高剛性のターンテーブルからしなやかなグリュミオーが流れてきた時に
は思わずうなってしまいました。これだからアナログの世界は不思議です!!
 
そして、厚かましくも更に持参したこのレコードを聴かせて頂きました。
クインシー・ジョーンズのA&M での三枚目のアルバム「SMACKWATER JACK」
1978 年の作品。この頃から既に彼のアルバムでの豪華な参加ミュージシャン
には現在のスターが多数共演しています。
 
ピアノ・キーボード関係ではボブ・ジェームス、ボビー・スコット、ジョー・
サンプル、ジェイキー・ビアード、ジミー・スミス、後年リファレンス・
レコーディングスで作品を出しているディック・ハイマン、そして何と私の
大好きなモンティ・アレクサンダーなどなど。
 
更にベースはレイ・ブラウン、ギターではトゥース・シールマンス、エリック
・ゲイル、ジム・ホール、ジョー・ベックなどなど。参加ミュージシャンを
リストアップしていくとまだまだ続いてしまいきりがないほど。
 
それほどの人脈とアレンジャー、プロデューサーとして当時から脚光を浴びて
いた存在。さて、このアルバムからA 面「IRONSIDE」「WHAT’S GOING ON?」
を聴かせて頂きました。
 
「WHAT’S GOING ON?」のイントロではやはり低音リズム楽器の引き締まりが
物凄い。プラッターに完全にレコードが一体化するという具体例であり、アナ
ログなのにCD なみに定位感と音像の輪郭表現がなぜこれほどに素晴らしいのか!!
 
上記に登場するブラスセクションが同様に未体験の鮮明さで交互に登場すると
トゥース・シールマンスのハーモニカやミルト・ジャクソンのバイヴがソロ
パートを奏で、ハリー・ルーコフスキーのジャズヴァイオリンが激しく切り
込んでくる。
 
エキサイティングな演奏であれば、ダイナミックさの代名詞として多少の荒れ
を含むものと思っていた私は、実際に記録されている信号がこれほどまでに
純粋な質感を持っていたのかと驚いてしまいました。さすがでした!!
 
時を忘れてというのはこのことでしょう。サウンドチェックというよりは楽し
んでいる私がいました。こんなのはいかがでしょうか、とT.K様が開けたボッ
クスからはこんなレコードが…
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070326.jpg
 
これをターンテーブルに乗せると↓こんな半透明なビニール盤でした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100307/P1070320.jpg
 
このレコードでした。
 
http://www.classicrecords.com/item.cfm?item=BST%201595%2D45%2D200G
 
いいですね〜、選曲のセンスといいコレクションの素晴らしさといい、私は
こんなCannonball Adderleyを初めて聴きました!!
 
数々の手段によってリマスターされたり再発売されている名曲ですが、こんな
システム構成と完璧な部屋と、そして音の美意識を有するユーザーの手にかかる
とこんなにも情報量が多かったのかと改めて驚いてしまいました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
あっ!!と、思いつくともうこんな時間です!!
恐らくは五時間近くお邪魔していたのではないでしょうか。往復の新幹線より
と同じくらいの滞在時間となってしまいました。こんな訪問は初めてです。
 
この日の大阪は気温が高く、しっかり冬の洋装で出かけたものでしたが、
最寄りの地下鉄駅へと降りて行くと上着を外したい程の熱気でした。
 
あらかじめ学習していけば良かったものの、いざ切符売り場の上にある路線図
を見ても新大阪までいくのにどうしたらいいのかちんぷんかんぷん(^^ゞ
 
悩むよりも駅員さんに聞いた方が早いと呼びとめると、異国情緒たっぷりの
関西弁で乗り継ぎを教えて頂きました。欲張って持ってきたレコードとCDを
入れたカバンが重たいし、脱いだ上着とマフラーにセカンドバッグを抱えて
人でごった返す地下街を汗だくで歩いていました。
 
新大阪で新幹線の切符を買って大汗を流しながらホームに上がると、そこで
目に止まってしまったのが缶ビールです(^^ゞなぜか!?
 
T.K様から「新幹線の中で食べて行って下さい」と頂戴したのが、私の大好物
の鶏の唐揚げ(笑)後で調べたら↓この有名なお店のもので豪快な丸揚げ!!
 
http://www.ippoutei.com/menu.html
 
帰宅してからゆっくりと…、なんてことは考えられません!!
幸いに指定席の隣は空席。東京までの道中に素晴らしい演奏の記憶と好物を
テーブルに並べ、大汗をかいた後に流し込むビールの何と美味いことか!!
 
食べ歩きはできませんでしたが、生涯の記憶に残る音の美意識を耳で味わい、
飛び過ぎて行く車窓からの夜景を見ながら妙味のつまみを舌で味わい、そして
渇いたのどにはビールが…、あ〜、大阪はいいところだな〜(^^ゞなどと感動
しながら東京に向かっていました。
 
ちょっと足を伸ばしたサウンドチェックもいいものですね〜(^^♪
T.K様、本当に今回はありがとうございました。
 
関西方面の会員の皆様、ぜひ再度の大阪訪問のお誘いをお待ちしております!!


HAL's Hearing Report