《H.A.L.'s 訪問記》


No.0013 - 2008/7/26

東京都港区 H.K 様-H.A.L.'s 訪問記

Vol.13「しかし、変ったね〜、うちのNEOは…!!」

H.K 様とのお付き合いは10年以上になります。96年にEggleston Works ANDRA
をJEFFROWLAND COHERENCEとMODEL6で組み合わせたシステムから始まって、
二代目のスピーカーはB&W Nautilusでした。私が推薦してきた歴代のコンポー
ネントを時代に応じてほとんど採用して頂き、そのうちにアナログプレーヤー
の面白さにはまり、あっという間にLPレコードの相当なコレクターになって
しまいました。そして、現在のスピーカーは三世代目ということになります。

H.K 様はご自身であれこれといじるよりも一定の音質を決定したらゆっくりと
楽しみたいという志向性の方であり、細かいことの変化をご自分で探し出して
いくというよりも私がセッティングし調整したもので安心して聴きたいという
ユーザーでいらっしゃる。

都内で医療法人を経営され多忙な日々を送りながら、今まで世田谷区の一戸建て
のお住まいで長年Nautilusを愛用されてきました。しかし、今年になってから
お仕事の関係で移転を余儀なくされ、新しいお住まいに選んだのが六本木近く
のマンションでした。先ずは新居の大きな窓から望む風景はこんな感じです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/013.jpg

東京タワーのてっぺんが直接見渡せるという場所で、あの東京ミッドタウンの
すぐ近くです。一か月ほど前に移転されオーディオシステムの引っ越しも全て
私が業者を手配して行い、当日には当店からも人員を派遣して基本的なセット
アップもすべて行いました。

今回のお部屋は以前のリスニングルームと比べてサイズ的にも小さくなり、
オーディオシステムもシンプルにまとめたいということで次のようなシステム
構成に変更されました。Nautilusを手放した後でスピーカーをどうするのか?
それが最も気になるところでしたが、熱心にイベントにも参加して頂き試聴の
上で選択された後継者がNEOだったのです。

ハードなお仕事でストレスも溜まるというもの。そんな日々に音楽は欠かせな
いということで、シンプルかとコンパクトにまとめようということで現在の
システム構成はこんな感じになりました。


 ◆ H.A.L.'s 訪問記-Vol.13  東京都港区 H.K 様システム構成 ◆

………………………………………………………………………………
AMAZON SYSTEM AMAZON2i (税別\740,000.)
http://www.scantech.co.jp/amazon_2i.html
               with
LYRA  TITAN  (税別\540,000.)
http://www.scantech.co.jp/titan.html

                ▽ ▽ ▽

LYRA AMPHION AMPHION PHONO (税別\298,000.)販売完了/下記リンクは参考
http://www.scantech.co.jp/amphion_phono3.html

………………………………………………………………………………
    アナログプレーヤーシステム
                 and
………………………………………………………………………………
ESOTERIC X-01D2(税別\1,400,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/x01d2/index.html
………………………………………………………………………………
    CD/SACD プレーヤーシステム

                ▽ ▽ ▽

GOLDMUND  LINEAL IC CABLE 1.0m(税別\165,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/accessories/ic_cable.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND  MIMESIS 27ME(税別\1,640,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/support/sellingend/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

GOLDMUND  LINEAL IC CABLE 6.0m(税別\315,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/accessories/ic_cable.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND TELOS 600 (税別\5,900,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/amplifiers/telos600.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

Acoustic Zen  SATORI 6 ft /pair (税別\104,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/acousticzen/

                ▽ ▽ ▽

………………………………………………………………………………
MOSQUITO NEO (税別 \4,800,000.)
http://www.mosquito-groupe.com/
http://www.dynamicaudio.jp/file/050413/oto-no-hosomichi_neo.pdf
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.html
………………………………………………………………………………

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2008年7月某日、H.K 様のご住所をwebの地図検索に入力すると、なるほど〜。

六本木交差点から歩いて数分という立地であり、一棟のマンションに確か4基
のエレベーターが備えられている近代的、かつ落ち着いたデザインのお住い。

ここに移転された当日は家財道具一式と膨大なレコードとCDの搬入もあり、
その当日派遣した当店のスタッフもH.K 様の指示に従ってスピーカーやコン
ポーネントを配置して接続し、動作に問題なしという確認までを済ませました。

しかし、住環境も変わり音質も大きく変わり、視界の中に東京タワーが見える
という環境からアナログプレーヤーは電磁波の干渉を受けてノイズだらけ。
それを特殊な方法でS/Nを実用レベルに抑え込むという試みに時間がかかって
しまい、基本的な音質判断をやっと下せるようになったということで訪問させ
て頂きました。

引っ越し作業中はH.K 様が置き場所を采配して決定し、とりあえずバランス
良く配置したという状況はこのようになっていました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/003.jpg

この右側にコンポーネントがあります。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/005.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/011.jpg

欠かすことのできないアナログプレーヤーはこのようにセットされました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/007.jpg

ご覧のように視覚的なバランスを優先して取り合えずセットしたという感じ
ですが、このお部屋はリビングダイニングルームを兼ねているので、音質だけ
を優先してレイアウトを決めるわけにいかないという宿命があります。

また、H.K 様のお人柄としてもあれこれとリプレースメントを変えたりケーブル
をとっかえひっかえするというマニア的な試みはしない方なのです。

それと、この訪問当日はH.K 様の奥様とご一緒に三人で会食をというお誘いも
頂戴し、お二方ともにオーディオシステムの調整をする間はお待ち頂いている
ということもあり、今回はあまり長時間の試聴はできません。

そして、上記の写真を見てお分かりのように、室内の限られたスペースでどこ
まで動かして調整出来るのかという限界があり、あまり大胆な変化は付けられ
そうもないという私の判断もありました。さあ!!テキパキと始めましょう!!

最初にH.K 様はどうしても自分の好きなLPを先ず聴いて欲しいということで
弦楽曲のレコードを聴かせて頂き、電磁波ノイズがここまで改善されたという
ことを私も確認させて頂きました。これに要したノウハウは今のところ非公開
ですが、近い将来には音質改善グッズとして商品化の可能性もあります。

さて、それでは私の課題曲でいよいよ診断を開始することにしました。

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■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

最近は色々なお宅にお伺いして最初にこの一曲を聴かせて頂くのが快感!?
というか大変楽しみになってきました。最も聴きなれたオーケストラがどの
ように展開するのか? 

「おっと〜、これは頂けません。都心部のマンションでありがちな音質です」

NEOの持っている音場感が発揮される以前の音質といいましょうか、低域に下
がるに従ってブーミーな残響が長く残り、天井高もないので一次反射音が盛大
に悪さをしている状況です。ただ救いは床に敷き詰められた絨毯が中高域を
何とか反射しないでくれるということでしょうか?

弦楽器のレコードを小音量で聴かれる分にはそこそこ楽しめるでしょうが、
オーケストラではどうしようもありません。う〜ん、予測はしていましたが
これをどうしたものか!?

今回はオーケストラを続けて聴くことに意味がないということは直ちに察しられ、
かつH.K 様はクラシックしか聴かないということを念頭に入れ、今後の調整の
変化をご本人に感じ取って頂くためにも、いつものポップス系の課題曲では
実感がわかないだろうということで、次の選曲はこれにしました。


■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ
http://www.universal-music.co.jp/classics/refresh/muse/muse.html

冒頭のバックコーラスにおける解像度、フィリッパのメインヴォーカルと、
どれをとっても混沌とした再生音で分離が悪く不要な残響がNEOのある壁面
全体に立ちこめているという感じです。

そして、このポイントはチューニングのカギになるもので例のドラムの低域の
質感に注目しました。いつもは上半身の傾きで耳の位置を変えて低域の変化を
観察するのですが、今回はそんな各論での調整という以前の問題でした。

ドラムの打音と余韻感はほとんど分離感がないので、ぼうぼうと響く低音が
室内に充満するという状況。それでは、と試しに音量を下げてみますが反射音
の悪影響はボリュームの調整でも傾向は変わりません。

大変残念ながらコンパクトなお部屋であり、一辺はすべてガラス窓、他の壁面
もコンクリートにクロスを貼り付けた仕上げの内装ということで、低域の再生
能力に素晴らしいものがあるNEOのウーファーがもったいない感じです。

さて、どうしたものか!?

私はいつも申し上げていますが、「音圧は距離の二乗に反比例して減衰する」
という原則をこのようなケースに当てはめてみることにしています。

まず、音源であるスピーカーを反射面から少しでも離すこと。
次に、吸音材があればスピーカーに接近させるほど吸音・整音効果が上がる。

限られたスペースでもこの法則は有効なのです。そこで私がやったことは…

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/003.jpg 調整前

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/025.jpg 調整後

この対比をご覧ください。NEOを壁面から遠ざけるということはイコール左右
の間隔を縮めるということになりますが、パワーアンプを15センチ程奥に移動
し、NEOのボディーの後ろ側がつぼまっている形状を利用してアンプの前に
重ねるようにして移動させました。

同時にほぼ平行に置かれていたNEOに内向きの角度を付けることで少しでも
音像のディティールを引き出そうとしました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/005.jpg 調整前

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/023.jpg 調整後

これは右チャンネルのNEO付近の変化ですが、QRDのAbffusorを部屋のコーナー
に対して斜めに位置変更を行っています。実は、国産化される前のAbffusorは
後ろ側にも黒い生地が貼られていて完全な吸音面になっているのです。

その吸音面が壁に押し付けられて機能していない状態だったので、コーナー部
に向けて三角形の空間を開けることで裏面での吸音効果を使うようにしました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/080716/025.jpg 左側の調整後

次に左チャンネルのNEOをできるだけ手前に引き出したという変化の他に、
上記のように部屋のコーナーにAbffusor二枚を集中させて配置しました。
つまり、音源に近い所にAbffusorを設置した方が吸音効率が高くなるからです。

同じAbffusorをセンターに置いても、スピーカーから放射された音波が拡散
進行していく限られた領域でしかAbffusorは存在しないことになりますが、
このように接近させることでNEOから出力された音圧をダイレクトに吸音・整
音してくれるようになります。

QRDの中でもAbffusorを初めとしてBADやDigiwaveなどの吸音効果を持っている
アイテムに共通する使い方として皆様もヒントにして下さい。ライブな室内
ほどスピーカーに接近させることです。

今回は時間が限られていたので、二曲を聴いて判断し、ざっと50分くらいで
上記の調整を行いました。でも、このくらいが変化を付けられる限界かもしれ
ないと思います。私も万全の自信ありというものではありませんが、何とか
改善されてくれればと同じテスト曲を聴き直すことにしました。

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■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

「あ〜、やっと出てきましたね〜。こういう感じで鳴らなくてはいけません!!」

冒頭の弦楽器の重奏が始まった時に私はほっとしました。今までは左側のNEO
の後頭部近くにあった壁面から一次反射音が盛大に折り返され、それらが壁面
全体からあふれるように残響をまき散らすような感じで、まるで壁全体が音源
であるかのように疑似的に大きなスピーカーという役目を果たしていたものです。

まず位置的に壁面からの距離をあけることで反射効率を抑え、次にAbffusorの
吸音効果を直近で定着させることで低域までも整理されてきました。

これでやっとヴァイオリンの各パートにそこそこの分離が得られるようになり、
録音されている本来のホールエコーが少しずつ聴けるようになりました。


■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ

「この低音は変わりました!! やって良かったー!!」

冒頭のコーラスにおいても変化は直ちに聞き取れました。調整前のNEOの位置
よりは30センチほど手前に移動し、左右の間隔は40センチほど狭くなったと
いうことですが、左右の間隔が狭くなるとステレオ感や広がりが減じられると
思われるでしょうが、このような場合にはまったく逆に解像度が上がります。

音源であるNEOの周囲で吸音効果を持つ要素が増えたことと、左右壁面からは
距離がとれたということで一次反射音の影響も減少しているからです。

さて、問題のドラムですが…

「ふむふむ…、この変化は好ましい方向だ。一歩前進ということで輪郭が見えてきた」

今までにご紹介してきたNEOオーナーの皆様のリスニングルームから比較する
と大変狭いお部屋ということになりますが、その中でどれだけNEOの持ち味を
発揮できるかということに挑戦したものです。

ドラムで打音の瞬間が鮮明になってきたことで、のちに続くズシーンという
響きとの境目が認識できるようになりました。これは以前にはなかったもの。

個体感を感じたい打撃の直後から次第に空間に広がっていくという低音の様子
がずっとはっきりしてきました。大変初歩的なことですが、これらをやると
やらないとでは今後H.K 様が聴かれる音質に大きな違いがあることは間違い
ありません。

私がこの曲のここを聴いていてくださいね。と申し上げて奥様と二人で変化が
感じられたということに先ずは一安心したものでした。

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「しかし、変ったね〜、うちの音は…」

とは、この後の会食の席でH.K 様が奥様に向かってしみじみと述べていた一言でした。
今まで10年以上のお付き合いで、お酒をご一緒したことは何回もありました。
今回は二年ぶりくらいでしょうか。色々と話は弾みます(^^ゞ

「川又さん、いくつになったの?」と聞かれて「今年で51歳ですよ〜、白髪が
 増えたでしょう!!」というと、「なんだか嬉しいな〜」とお笑いになる。

H.K 様の年代に私が近づいていくことがうれしいらしい(笑)困ったものだ^_^;

オーディオを聴いてストレス発散がH.K 様のお楽しみでもあるわけですが、
どうやら奥様と私の三人でテーブルを囲んで会食することも同様にストレス
発散に良いらしい。

私の訪問が楽しみであり喜んで頂けるのであれば、商品以外のものも納品させ
て頂いたということになるのでしょう。いいですね〜、こういう仕事も!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

今回の訪問では最初の診断から対症療法が必要であり、出来る範囲での調整で
H.K 様にもその変化と音質向上をご納得頂きました。

今回の滞在時間では試聴と調整の時間よりもH.K 様ご夫妻との会食の時間の方
が大分長くなってしまいましたが、10年以上もお付き合い頂いているという
秘訣は意外とマニア的なオーディオだけ!!という付き合い方だけではないと
いうところにもあるようです。本当にありがとうございました。<m(__)m>


HAL's Hearing Report