《H.A.L.'s 訪問記》


No.0029 - 2010/7/5

埼玉県上尾市 T T 様-H.A.L.'s 訪問記

Vol.29「ここに技あり!!ヴォーカルを制する者はオールジャンルを制す!!」
 
         ■ Customer's history ■
 
長いお付き合いのお得意様は数々あれど、このT T 様ほど来店回数と試聴回数
それに投稿回数が多い会員は他にはないと思います。いつかは表敬訪問しなけ
ればと、昨年から打ち合わせていましたが、やっと今回実現したものでした。
 
T T 様に当社をご利用頂きお買い物をして頂いたのはコンピューター上では
12年前の1998年から履歴が残っています。一番最初にお求め頂いたのは何と
S-VHSのビデオデッキとパイオニアのCDプレーヤーでした。この時には私が直属
の担当者というものではなかったのですが、それから三カ月後の同年7月には
Marklevinsonの有名なプリアンプを私からお買い上げ頂いたものでした。
そして、翌99年にはSACDの第一号機SONY SCD-1をお求め頂きました。
 
そして、T T 様がハルズサークルにご入会頂いたのはハルズサークル発足前の
ことだったのです。現在のようにweb上でハルズサークル新規会員を募集する
ようになる前に、私はそれまでに随筆「音の細道」を印刷して郵送していた
約1,300名の皆様に「これからの私の情報発信は印刷物の郵送ではなく、イン
ターネットにて行います。メールアドレスをお持ちの方は今後メールによって
各種情報をお送り致しますのでお知らせ下さい」とご案内状をお送りしたものでし
た。
 
ハルズサークルが発足した2000年5月より一ヶ月早く、T T 様から当時のメール
アドレスをお教え頂き、H.A.L.'s Circle Reviewの第一号からの読者のお一人
となって頂いたものでした。その当時のシステム構成は懐かしくもこれです!!
 
--------------------------------------
プリ ラックスマン C−10
メイン M−7 バイアンプ
CDプレーヤー SCD−1
スピーカー B&W MATRIX801S3
ケーブル類 アクロテック 8Nシリーズ
--------------------------------------
 
これほど投稿数の多いT T 様の履歴はどこまでさかのぼればいいのか?
私はコンピューターの検索を繰り返して、やっと調べた物がこれ↓でした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100626/hcr0583.html
 
2003年2月17日の配信にて初めてT T 様の投稿を掲載させて頂いたものでした。
そうです、当時は限定生産50台で当社が独占販売したESOTERIC P-0s with VUK-P0
の残り台数のカウントダウンで盛り上がっていた時でした。
そして、その一カ月後には第二の投稿を頂戴しました。これ↓です!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100626/hcr0610.html
 
何と、これらの投稿を頂く二週間前にP-0s with VUK-P0をお求め頂いていたと
いうことで、その歴史は次回の投稿にシステムの変化として反映されています。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0173.html
 
この時にPADとの出会いがあったわけですが、ケーブルのアップグレードとは
別にルームチューニングも進んで行くのが↓この時代というものでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0227.html
 
ここで注目して頂きたいのがスピーカーはB&W MATRIX801S3をお使いになって
いたということです。そして、2003年8月ESOTERICのフロントエンドを強化す
るために導入されたのがマスタークロックでした。当然↓ESOTERIC G-0sです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0141.html
 
このようにT T 様はシステムのアップグレードの度に投稿をして頂き、それを
一つの歴史としてハルズサークルの紙面に残しながらオーディオを楽しんで
来られたわけです。このように2003年はソースコンポーネントとケーブルの
充実に充てられてきたわけですが、次に大きな変化が翌年に待ち構えていました。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0242.html
 
気が付かれました? 何とスピーカーがB&W Signature 800に変わっています。
このスピーカーの近代化がT T 様に何をもたらしたのか? それは2004年以降
からH.A.L.の各種試聴会に盛んに参加されるようになり、情報収集に力を入れ
始めたということです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0215.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0244.html
 
ここで試聴される回数とコンポーネントの数が累積していくうちに、何が重要
なのかということを試行錯誤され、遂にはH.A.L.と同じ電源ケーブルを何と
8本も一気に導入する↓ということになってきました。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0269.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0282.html
 
懐かしい“PEIP”企画であり、それほど評価されたのがTRANSPARENT PLMMで
あり、下記に紹介する特注のP8MMであったわけです。特にP8MMはアナログ系統
とデジタル系統を独立させて二台導入されたのですから凄いこだわりです。
 
スピーカーの更新からケーブルと電源環境のアップグレードとT T 様の計画は
年々着々と進行していくのですが、そんなT T 様の前に立ち塞がることになる
避けて通れない新製品が2004年9月に↓発表されたのでした!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/314.html
 
それをT T 様は↓このように観察していたものでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0170.html
 
あれから二年間の間にT T 様の心境はどのような変化があったのでしょう。
こだわり見極めて選択し導入したESOTERICのフロントエンドが世代交代した
実際の音を当然のことながら試聴会以外に何回も何回も試聴されていました。
 
そして、運命の日がやってきました。あれは2006年の9月20日、何と当社の
年度決算日の当日というタイミングです。遂にT T 様はP-01 & D-01の購入を
決意されて来店されたのでした。
 
そして、翌年に初めて開催したH.A.L.'s Partyでは愛用システムを製造・輸入
する各社の代表者と、ユーザーとして語り合う好機に恵まれて大変感激して
頂いたようです。二年連続で開催したH.A.L.'s Partyのレポート↓は必然的に
気合いの入ったものとなりました。ありがとうございました。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0387.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0446.html
 
さて、冒頭では当社のコンピューターの履歴から12年前からのお付き合いと
私はすっかり思い込んでいましたが、実はT T 様とは随筆を印刷していた頃
からのお付き合いということで、こんな投稿も頂戴していました。そこには
冒頭にこのように記されています。
 
「入会して良かった!ハルズサークル!!家に置いてある川又さんの「音の細道」
 の冊子をあらためて読み返すと、川又さんとの初めての出会いは1995年前後
 だったような気がします。」
 
T T 様から頂いた投稿は実に多数に上りますが、すべてを読破するのは大変な
事ですが、自らの歴史を語られている↓この二編はぜひご一読頂ければと思います。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0175.html
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0187.html
 
私が語るまでもなく、ここに間違いなく情熱的なオーディオファイルの一人と
してT T 様の歴史が語られています。
 
懐かしい思い出の数々を思い返しながら、T T 様の来店頻度から考えるとほぼ
私と同じ数の製品数を試聴してきたことになるでしょう。このようなトレーニ
ングを積んできたT T 様にも、やはり“音の美意識”が備わっているという
ことが日頃のお付き合いから私は既に察知していました。
 
ご自身の“音の美意識”に合わせてシステムをどのように使いこなしているのか、
当日の朝は興味津々で地元から電車に乗り込みました。ネットで色々と調べて
いたのですが、一度都内に出て乗り継ぐと数分間は早く到着するものの乗り換え
の回数が多くて面倒くさい。
 
私は好きな本を読みながら行きたいので、再度調べると何のことはない地元の
駅からたった一回の乗り換えで行けることがわかりました。埼玉県大宮市で
乗り換えたのは何とゴムタイヤの電車でした。これは初めて乗りました(^^ゞ
 
http://www5.ocn.ne.jp/~snut/
 
6月中旬の梅雨空の朝でした。やはり駅までのお出迎えは辞退させて頂き、
小雨が降る中を付近の風景を眺めながら地図を見ながらT T 様のお宅へと
向かって行きました。付近には住宅と団地が立ち並び、静かな環境でいいな〜
などと思いながら表札を探しながら歩き続け、ここかな〜と思って立ち止り
番地を確認していたら背後でいきなりドアが開きました。
 
「川又さん、どうも〜。そう、ここですよ〜」
 
と、T T 様のいきなりのご登場にちょっと驚いてしまいました。お約束の11時
にジャストという時刻でしたが、呼び鈴を押す前にドアを開けて下さったのは
テレパシーでも通じていたのでしょうか〜(^^ゞ
 
気温はさ程ではないものの湿気に弱い私は汗をふきふき、お邪魔します〜と
お部屋にご案内頂きました。いつものことながら、皆様のお部屋に一歩立ち
入って私が内心で思う一言があります。
 
「おー!!やってますね〜!!」
 
アーチストのアトリエに足を踏み入れて感じること、作家の書斎で膨大な蔵書
を目の当たりにした時に感じること、多数の道具に囲まれた職人の仕事場を
訪ねたとしたら…、そんな局面で感じる一種の感嘆です。やってますね〜!!
 
 
            ■ Customer's room ■
 
細かいことはその後にご説明した方が分かりやすいと思いますので、今回は
先ず最初にT T 様システム構成をご紹介しておきましょう。
 
 ◆ H.A.L.'s 訪問記-Vol.29  埼玉県上尾市 T T 様システム構成 ◆
 
………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-0s(税別\1,200,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g0_g0s/index.html
        and
JORMA DIGITAL/BNC-BNC for Internal Wiring
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/467.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/470.html
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC9100MEXCEL(税別\350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9100/index.html
        and
TRANSPARENT P8MM(税別\298,000.)
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
■これはPEIP企画によるオリジナル商品なので下記に説明致します。
 
TRANSPARENT PLMM (PowerLink MM)   税込み定価\226,800.→税込み\170,000.
http://www.axiss.co.jp/photo_transparent_PLMM.html
         +
TRANSPARENT P8   (PowerBank 8)    税込み定価\150,150.→税込み\113,000.
http://www.axiss.co.jp/photo_transparent_P8.html
この合計では 税込み定価\376,950.→税込み\283,000. となりますが…
この組み合わせのパフォーマンスを理解して下さった皆様に何らかのアドヴァン
テージをご提供できないものかと!!
 
そこで私はTRANSPARENTのラインアップにもないという、こんなモデル名です!!
そして価格的にも魅力あるものを実現しました!!
 
TRANSPARENT "P8MM" (PowerBank 8 with PLMM)というパッケージ商品です!!
(梱包は単品のものと違い1パッケージです。標準のPLPは付属されません)
 
そして、この企画では税別定価\359,000.となる単品の組み合わせに対して何と!
税別定価 \298,000.を実現しました!!
 
これはアクシスにおいてもカタログ商品とはならず、同社のwebでも公開され
ない完全なオリジナル商品です!!
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-DA6100 BNC(Wordsync用)×3 (税別\720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/mexcel/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC P-01+VUK-P01(税別\2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p01/
        and
PAD  T.I.P(Total Isolation Platform) (税別\160,000.)
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC9100MEXCEL(税別\350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9100/index.html
        and
TRANSPARENT P8MM(税別\298,000.)→上記解説参照
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-DA6300 XLR 1.0m×2 (税別\560,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/mexcel/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC D-01+VUK-D01(税別\2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/d01/
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC9100MEXCEL(税別\350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9100/index.html
        and
TRANSPARENT P8MM(税別\298,000.)→上記解説参照
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD TANTUS XLR 1.5m×2
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
LUXMAN C-10(税別\1,300,000.)
http://www.luxman.co.jp/cgi-bin/production/db.cgi?mode=view&no=332
 
        □Power equipments□
 
ESOTERIC 7N-PC9100MEXCEL(税別\350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9100/index.html
        and
TRANSPARENT P8MM(税別\298,000.)→上記解説参照
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD YEMANJA XLR 7.0m×2
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
LUXMAN B-10(税別\1,300,000.)
http://www.luxman.co.jp/cgi-bin/production/db.cgi?mode=view&no=324
        and
H.A.L.'s original"Z-board"×2(税込み\120,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html
 
        □Power equipments□
 
壁コンセント
    ↓
TRANSPARENT P8MM(税別\298,000.)→上記解説参照
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
    ↓
ESOTERIC 7N-PC9100MEXCEL(税別\350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9100/index.html
    ↓
SAEC TAP MATE
http://www.saec-com.co.jp/product/power/tapmate.html
     ↓
TRANSPARENT PLMM×2(税別\480,000.)
http://www.axiss.co.jp/ftran.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
PAD SHANGO Bi-Wi
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
B&W  Signature800(税別\3,600,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto49-01.html
                 and
H.A.L.'s original“B-board”×2 (税込み\256,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/B-bord.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/521.html
………………………………………………………………………………
 
T T 様のお部屋のドアを入って先ず正面に居並ぶのが歴史を物語るコンポー
ネントの数々です。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070835.JPG
 
このセットアップを眺めつつ、私が気になったのは↓これでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070899.JPG
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070841.JPG
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070844.JPG
 
これは15年ほど前に考案されたもので、何と自作インシュレーターなのですが、
これは相当に効いているのではという印象を持ちました。その実物を単体で
撮影したのが↓次の写真です。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070886.JPG
 
これに関してはT T 様より次のコメントを頂戴しましたのでご紹介しましょう。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
この写真の向かって右は沢村式インシュレーターです。オーディオ評論家の
故沢村さんが発案したものです。
http://www.asahi-net.or.jp/~AQ6T-HRG/p300005.htm
上記HPはFM fan誌のコピーですね。
 
私のは大型で直径が80mm厚さ5mmの鉛円盤2枚の間にブチルゴムをはさみ
上に直径が80mm厚さ1mmの銅円盤を載せ、全体をコルクで覆ったものです。
 
左は月刊誌stereo誌で使われているブチルゴムのインシュレーターです。
通称金子式インシュレーター。オーディオ評論家の金子さんが発案したものです。
http://www.k3.dion.ne.jp/~kitt/audio/insu.html
適当なリンク先はありませんがだいたいが同じですが中身が違います。
 
幅50mmのブチルゴムテープに厚さ0.2mmで約4.5mm角の銅板を積層構造と
なるように5枚はさみこんで、全体をテフロンシートで覆ったものです。
 
写真が表示されませんがある方のHPで両方が紹介されています。
http://www.geocities.co.jp/MusicHall/3708/jisaku.html
 
金属の材料は東急ハンズでテフロンシートとブチルゴムはオヤイデ電気で
手に入れました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
なるほど〜、解説して頂きありがとうございました。後述しますが、これが
T T 様の音作りに多大な効果をもたらしているものでした。
 
さて、そのラックの裏側を見るとこの↓ようになっています。ケーブルが這い
まわっているという風景は何処も同じと言えるでしょう…、と思ったら…!?
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070901.JPG
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070903.JPG
 
T T 様の場合にはちょっと余所とは違うグレーの生地があちこちに巻きつけら
れています。それを象徴するのがこれ↓でしょう!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070854.JPG
 
待てよ〜!? この風景はどこかで見た事あるぞ〜(-_-;)そうだ!!あの↓時だ!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0015.html
 
東京都江東区 M.Y 様も同じことをしていらっしゃいました!!
この布地は何か、と言いますと株式会社東進の静電気除去タオルマフラー
「tafura・たふら」という製品です。色は炭を使用しておられました。
 
http://j-net21.smrj.go.jp/establish/abc/entry/category04/20091119.html
http://shop.yumetenpo.jp/goods/d/kenkoumama.com/g/D-00017/index.shtml
http://www.wisecart.ne.jp/pukapuka/7.1/9991058/
 
このマフラーをケーブルの太さ・長さに合わせて切って筒状に縫ったものです。
合計でマフラー10本以上使用しています。というT T 様のコメントでした。
なるほど〜、こんな↓ところにも使っていますね!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070870.JPG
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070879.JPG
 
そして長年連れ添っているパワーアンプが↓これですね!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070862.JPG
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070883.JPG
 
Z-boardの上に沢村式インシュレーターを使っているのがお分かりですか?
 
そして、B&Wのスピーカーは使い込むほどにミッドレンジのケブラーの黄色が
このように山吹色というか、独特の深みのある色彩感になってくるものです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070891.JPG
 
この中心にあるフェイズプラグは、このSig800を使って試聴し開発した思い出
のオリジナル商品、BRASS SHELLですね〜!!ご愛用ありがとうございます!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/b_shell/b_shell.html
 
Signature800のボディーを眺めてみて現在のB&Wスピーカーと比べて↓何か気が
付くことはありませんか?
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070895.JPG
 
そうなんです。ウーファーのセンターキャップがこんなに大きかったのですね。
スピーカー全体の姿はこうなります。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070858.JPG
 
ちょっと、その足元をご覧になって下さい。二つのポイントがあります。一つ
はパワーアンプへの、こだわりの電源供給ラインを中継している↓これです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070864.JPG
 
そして、もうひとつは128KgのSignature800と一人で対決してセットしたと
いう42KgのB-boardです。悪戦苦闘の傷跡がちょっと見えますが、その情熱に
頭が下がる思いです。ありがとうございました。<m(__)m>
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070866.JPG
 
さて、スピーカー側の全体像は↓こうなっています。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100625/P1070875.JPG
 
T T 様はレーザー光線で距離を測る道具をお持ちだったので、左右スピーカー
のトゥイーターの間隔を測って頂くと1.6m、そのトゥイーターとリスニング
ポジションの耳との間隔は約2.2mというサイズの三角形になっていました。
 
さあ、このようなセットアップでT T 様の“音の美意識”が展開するのでしょうか!!
毎回のことですが、リモコンをお借りしてセンターポジションを譲って頂き、
いよいよ試聴が始まりました!!
 
 
           ■ Customer's Sound ■
 
女性ヴォーカルを専門に聴かれるT T 様はオーケストラやジャズものは殆どと
言ってよい程聴かないという指向性を持たれているということは先刻承知の事。
 
ユーザーの音楽的趣向性はもちろん当然のことながら、それを肯定しつつも
私が訪問した際に聴かせて頂く課題曲で違う局面での分析と評価がなされる
ことも多々あります。ヴォーカルを聴くためにチューニングされたT T 様の
システムは私の課題曲に対してどのように反応するのでしょうか?
 
先ず最初は当然このオーケストラです。これが上手くならなければ診断方法を
直ちに切り替えて色々と試さなくてはなりません。さて、どうでしょうか?
 
■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団
 
ESOTERIC P-01のリモコンでトラック2を押して、LUXMAN C-10はリモコンが
ないので腕を伸ばしてボリュームを上げていきます。すると…!?
 
「おー!!いいですね〜、この弦楽器は!!ほぐれて、しなやか、文句なし!!」
 
先ずは第一第二のヴァイオリンの合奏の質感に一発で合格点です!!というより
もケチの付けようがないまとまり方なのです。私はよく弦楽五部編成の50人の
演奏者の個々の色彩感が微妙に異なる解像度を見せて、一人一人の楽音が分離
して聴こえるという例えをしますが、この時は良い意味で逆なのです!!
 
微妙に異なる音色が実に多彩な質感として表現されるのはもちろんなのですが、
それらの楽音が各ユニットから放射された直後に、実に巧妙に空間でブレンド
されて絶妙な中間色のグラデーションを提示してくるのですから恐れ入りました。
 
私はミックスではなくブレンドという表現で述べましたが、弦楽器個々の質感
が多数入り混じり混在しているという事ではないのです。個々の楽音が空中で
境目に一線を引かれたような分離を見せるのではなく、色と色の境目というか
隣り合う二色がお互いに侵食しあって中間色を作り出しているという美しさな
のです!!多数の原色があり、その分二倍の中間色を醸し出しているという意味
を言葉にするのは難しいのですが、私はハタとこの音質をどこかで聴いた事が
あると記憶の奥底をスキャンしてみました。そうしたら…!?
 
「あーっ!!そうで、あの時に聴いたB&Wがこれと同じ音質だったぞ!!」
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0014.html
Vol.14「私が太鼓判を押す世界最強のSignature 805がここにあった!!」
 
この千葉県市川市 T.I 様のお宅で聴かせて頂いたSignature 805の質感に
大変に近いものがありました。T.I 様のシステム構成も錚々たるものでしたが、
同じB&Wで同じSignatureシリーズであり、しかも!!BRASS SHELLまで同じなの
ですから当たり前と思われるでしょうが、私の視点にはもう一つの分析があり
ました。
 
上述にて「B&Wのスピーカーは使い込むほどにミッドレンジのケブラーの黄色が」
と述べていますが、この象徴的なケブラーのミッドレンジの特徴をもう一度
おさらいしてみましょう。
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto49-02.html
 
上記に次のような一節があります。
 
「さあ、ここで登場するのがB&Wのトレードマークとも言うべきウォーブン・
 ケブラーコーンである。これは高張力ケブラー繊維を直角に織り込んだもの
 であり、やわらかいバインダー材によって保持されている。
 
 そのために、何とこのケブラー繊維は外部からエネルギーを与えられた場合
 にはある程度動くことが出来るのである。この黄色いコーンは円形でありな
 がら折り目によって四角い分割振動を発生させるのである。
 
 四角い分割振動はコーンネック(円錐の中心部)からの距離がランダムで
 あり、そのためにコーンの内部で発生する定在波を分散させてしまうので
 ある。つまり、カラーレーションがなくフラットな軸上レスポンスとエネル
 ギーバランスを両立するということが可能になったのである。」
 
そして、事実上のエッジレスということで次のように続きます。
 
「FSTエッジの無視できないスティフネス(軟らかさの指数)と重量でコーン
 の動作に制約を加え、その表面で不要な音を発生させるエッジが存在しない
 画期的なコーン型ミッドレンジユニットが完成したのである。」
 
私の視点とは経年変化というものです。その要因には上記から二つ考えられます。
ひとつは直角に織り込んだ高張力ケブラー繊維をまとめているバインダー材と
FSTエッジという両方が、長年の機械的な運動と変位によってこなれていくと
いうエージングの事実が音質に表れているということです!!
 
まっさら新品の鮮やかなイエローのケブラー繊維が長年の使用によっていぶし銀
のような変化を遂げて“いぶし黄金”として見えるように音質にも間違いなく
熟成があるということなのです。
 
もちろん、同じSignatureシリーズでも強靭な下半身を持っているSignature800
では付随する低域の量感と質感ともに805とは違うわけですが、それはボディー
サイズの違いだけではなく、両者の認められるべき個性として尊重されるものです。
 
このようにSignatureシリーズが有するミッド・ハイレンジの熟成した大変
魅力的な弦楽器にSignature800では軽やかなトランジェントと重厚な響きを
両立した低域が加味されているのだから申し分ない!!年輪を加えたB&Wだから
こそ出来る技と改めて納得されられてしまいました。実に美しい!!
 
この特徴は管楽器においても同様な兆候を示し、木管のしなやかさな質感、
金管の発するエネルギーの長い消滅時間と耳に優しい響きの妙味があります!!
 
とにかく使い込んだB&Wの魅力というものは得難い魅力であり、オーケストラ
の演奏において先ず私の想像を超えていたということで試聴を進めることに!!
 
第一印象から及第点、というよりも私は今までに何回も経験があるのですが、
H.A.L.に持ち込まれた新製品を聴いて、その音質が素晴らしかった時には思わず
口元が緩んでしまい、それを輸入商社やメーカーの皆さんに見られないように
我慢してしまうという心境と同じものを感じていました。
 
実に私の求める方向性に品位と個性の両方でマッチしており、ヴォーカルしか
聴かないというT T 様のセンスはオーケストラのバランス感覚においても素晴
らしいセンスを発揮されていることが分かりました。特に問題らしきものは
見当たりませんので、私は再生帯域の上下両端の特徴を聴いてみようと次の
選曲はこれにしました。
 
■“Basia”「 The Best Remixes 」CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX)
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/Basia/
http://www.basiaweb.com/
http://members.tripod.com/~Basiafan/moreimages.html#remixes1
 
冒頭のきらびやかな打ち込みの高域成分が散りばめられるパーカッションの
展開は実に聴きやすく、同時に出現したドラムに低域に集中し私は思わず
ボリュームを上げてしまいました。なぜか!?
 
「いや〜、実にドライで引き締まってますね〜。それに重量感も申し分ない」
 
このドラムの質感はスピーカーによって、それからルームアコースティックに
よっても大変大きな違いを見せるものであり、B&Wの800シリーズのこれ以降の
スピーカーに対しても同じチェックポイントで評価してきたものでした。
 
バスケットボールをドリブルする時の床でのバウンドする手応えと感触、また
跳ね返る瞬間の音をイメージして下さい。私が低域の再現性で評価している
スピーカーというのは、空気がパンパンに注入されたボールと同じイメージ
なのです。床でのバウンドで接地する時間とボールがへこみ変形するのは極め
て短時間であり最小面積の変形による接地と言えます。
 
スナップを利かせて床に叩きつけたボールはタン!!という感じの音で瞬時に
床から跳ね返りプレーヤーの手に吸い付くように生き物のような反応を見せます。
 
しかし、空気圧が低いボールだとどうでしょうか? 床に接地するとドス!!とい
う音でボールのへこみと変形も大きく、跳ね返るエネルギーも少なくて鈍重な
バウンドとしてプレーヤーの手が迎えにいかないとドリブルの足並みについて
来られないような重々しい感触のバウンドにいらいらしてしまうでしょう。
 
ところが、T T 様のSignature800は正にパンパンに空気圧が高められており、
バウンドして跳ね返るスピードは床に落とす時よりも加速されているような
強烈なテンションの引き締まりを聴かせてくれるものでした。だからドライと
いう言葉が適切であり、タンタン!!と連打するドラムの質感は見事の一言に
尽きるものでした!!
 
当然、このようなハイスピードな低域を叩き出すSignature800のウーファーで
聴くエレキベースも見事なものでした。それは連続する楽音だけに下手すれば
床面を漂ってくるような茫洋として重々しさのみを強調したベースになりやすい
ものなのですが、驚いた事にT T 様のSignature800ではきっちりと上側のウー
ファーの高さでベースが定位しているのが分かるのです!!これはいい!!
 
そして、Basiaのヴォーカルが入ってくると…!?
 
「おー!!何ということか!!低域の分析とは逆の傾向があるじゃないか!!」
 
これには驚きました!!というよりも熟成したB&Wはこんなヴォーカルを聴かせ
てくれるものなのか!!と改めて感心してしまいました。というのは上記のよう
にオーケストラの質感では「新品の鮮やかなイエローのケブラー繊維が長年の
使用によっていぶし銀のような変化を遂げて“いぶし黄金”として見える…」
と述べていますが、これがヴォーカルでも実に見事に発揮されているのです!!
待てよ!!このヴォーカルの質感もどこかで聴いた事があるような〜!?
そう、あの時↓のヴォーカルでした!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0017.html
埼玉県幸手市 T.M 様-H.A.L.'s 訪問記 Vol.17
「システムチューニングの技が聴かせるB&W 802dのスレンダートーン!!」
 
急ブレーキをかけた車の車体がホイールの回転が止まった後にぐっと前方に
つんのめるような印象はなく、タイヤの接地面と車体の制止がジャストに
シンクロしているような見事さで展開するT T 様のSignature800の低域です。
 
そんな高剛性をイメージさせる低域なのだから、果たしてヴォーカルも同様に
鋼鉄の強靭さが先行してカチコチになってしまうのか、というと逆なのです。
 
オーケストラの弦楽器のようにBasiaのヴォーカルは透き通るような美しさに
しなやかな表情を持ち合わせ、そして定位感が鮮明にしてくっきりと音像を
描くということから、埼玉県幸手市T.M 様の802dで聴いたヴォーカルが思わず
回想されてしまったのです。共通項が沢山あります!!
 
これでは低域も高域もいいとこ取りの都合のよい評価ではないか? と思われる
かもしれませんが、イントロのリズム楽器の躍動感から発展して推測できる
マッチョイメージのヴォーカルではなく繊細かつ微細な再現性と共存している
ということが分かります!!いや〜、実に上手くチューニングされています!!
 
そして、そろそろ本題に進むヒントですが、その前に下記の続編が重要です。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0019.html
 
T.M 様の行った詰めのチューニングでJS-32をお試し頂く事で解決していくと
いう流れがありましたが、各論において再生音の部分的特徴をコントロールす
るのにしばしば使われる手段がインシュレーターやスパイクなどの小物です。
 
私は前回の訪問記でもコンポーネントの機械的設置環境を変化させることで
各機器の潜在能力が、言い換えれば使い手の好む傾向への変化を付ける事が
出来ると述べてきましたが、T T 様の場合には独自のインシュレーターに
よって既にポイントを押さえていたということが私にはしっかりと理解できました。
 
美しく年輪を重ねたSignature800がT T 様の求めているヴォーカルの再生音に
関して、そのバックの楽音との関連性をも視野に含めてのチューニングが
ここら辺から表れてきたものでした。さすがです!!
 
私は違うヴォーカルの課題曲も聴くつもりですが、他のオーケストラも含めて
持参したいつものディスクすべてを聴かせて頂くことにしました。次はこれ!!
 
■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル
 メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール
 
前奏曲の冒頭から弦楽器の美しさが再度確認されます。私はミックスではなく
ブレンドという表現を上記にて使いましたが、弦楽器だけの演奏で更に言葉の
使い分けをしておいて良かった、という印象を持ちました。
 
主題の旋律を弦楽五部の大編成で壮大な音場感を伴って演奏されるパートです。
ブレンドという表現にはこんな意味を込めていました。演奏全体に含まれる各
楽音の質感には、ブレンドした個々の要素がしっかりと認識されているという
こと。ミックスされて渾然一体となって別物になってしまったということでは
ないというイメージをお伝えしたかったものです。
 
第一第二ヴァイオリンの旋律がしっかりと独立した響きとして確認でき、その
ハーモニーを支えるようにビオラが中央付近で微妙に異なる質感を提示する。
コントラバスとの調和を意識しながらもチェロの演奏は流れるように空間を
埋めていくという音像を集団として捉えつつも内部に異なる色彩感を包含する
壮大なアルコが左右スピーカーの間隔以上に両翼を広げて展開する素晴らしさは
ちょうど65インチのハイビジョンテレビが眼前を2メートル前方にセットされ
ているようである。本当に緻密で細かい再現性がしばらくは耳を釘づけにする!!
 
ファランドールで同じ主題に管楽器や打楽器が加わってきます。左右スピー
カーとリスナーが構成するトライアングルの大きさは人それぞれでまちまちな
のは当然のことですが、そのサイズに応じたスピーカーとの距離感によって
ルームアコースティックと共存する演奏の実風景の再現性が求められるもの。
 
前奏曲での重厚かつ多層構造の弦楽器の後方であり上下位置が少し上となる
中空のポイントに管楽器のソロパートがピンポイントに定位し、そこから拡散
する余韻感が実に広大に広がっていきます。これは大変気持ちいい!!
 
木管にしても金管楽器でもステージの横幅に全体をイメージさせる水平方向の
広がりを十分に意識させ、それは管楽器の音源が点として明滅する高解像度の
表れでもあります。
 
そこにカスタネットなどの鳴り物が小気味よくリズムを刻み、何とその響きに
見事な遠近法が加味されており、スピーカーの後方を覗き込むように耳で感じ
る奥行き感をこともなげに眼前のSignature800が展開するのだから恐れ入ります。
 
最新の3D技術によって弦楽器奏者の後方にいる楽員との距離感がすーっと遠の
いていくような錯覚をもたらすのだから参りました!!これはいいです!!
 
■MICHAEL BUBLE/1.「Fever」WPCR-11777
http://wmg.jp/artist/michaelbuble/profile.html
 
コンパクトなトライアングルの中に展開する見事な解像度と空間表現をホール
録音で確認した後に、今度はアコースティックな演出を含めてのスタジオ録音
で男性ヴォーカルを聴くことにしました。この曲です。
 
冒頭のベースに先ず引き付けられます。Signature800の四基のウーファーが
構成する幅1.6メートル高さ約0.8メートル程の面積でベースが聴こえるのかと
いう予想を見事に裏切ってくれ、イントロのベースは何ともコンパクトな音像
で展開します!!
 
これは先ほどのBasiaで特徴的だったドラムのように瞬発的な打音とは違い、
連続する低音として認識できる楽音が往々にして聴かせるふっくらとした音像
とは傾向が違うのです。
 
T T 様がチューニングされた方向性を的確に示唆する再現性であり、私はここ
でも前述のインシュレーターの効果を内心ではっきりと察知していました。
低域の解像度を高めることと中・高域の情報量と質感を低域と同傾向にして
犠牲にしないという音楽的アイソレーションとも言うべき妙味があります!!
 
MICHAEL BUBLEのリヴァーヴたっぷりのヴォーカルが遠慮なく周辺の空気に
パステルカラーの色彩をスプレーしたように思わせ、それは口元の音源位置と
音像の核を濃厚にして余韻感との分離を見事に再現しているのが凄い!!
 
時折展開する切れのいいドラムはスタジオワークによって左右に広がるように
パンされており、タムの連打が一つずつ定位感を異にするパートがある。
スピーディーに定位を変えながら短時間で叩き出されるタムがダンスを踊るよ
うにSignature800のセンター付近にポップアップしていく楽しさに心躍る!!
 
そして、前回の訪問記で極めて低い周波数で定在波をチェックした例のドラム
がここでも再生されるが、T T 様のお部屋では低周波の定在波は何も感じられず、
すとんと落としたように歯切れのいい変調されたキックドラムが叩き出される。
 
再生帯域の上下両端で実にスムーズな質感を保ち、特に低域での極めて短時間
での立ち上がりと低音の終息にヴォーカルの再現性を高める要素を感じること
が出来た。小気味良いリズム楽器のバックに支えられてMICHAEL BUBLEの声は
逆に余韻の滞空時間を延ばしていくという技をT T 様は習得されていたようだ。
 
■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクト
 ペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団指揮: ワレリー・ゲルギエフ
 
ここでもオーケストラを挟んで試聴を続けていく事にしました。
先ずは「序曲」での繊細な弦楽器の楽音でホールエコーの含み方を観察します。
 
センターから左チャンネルにかけて定位するヴァイオリンの弱音の響きに反応
したフェストシュピールハウス(祝祭歌劇場)の空気がピリリッと緊張し、その
余韻感の最後の一滴まで絞り出そうかというくらいにSignature800の後方へと
空間サイズの認識を高めるようにエコー感が展開していく様が美しい!!
 
さて、「くるみ割り人形」の中でも短時間でこなせる比較試聴に向いている
トラックが15トラックの中国の踊りである。ファゴットの軽妙な演奏がゆった
りした余韻感をもって繰り返される。まず、この愛嬌のある木管楽器の繰り
出す軽妙な楽音に与えられたホールエコーの存続が一回り寿命を延ばしている。
 
そして、右側後方からはコントラバスのピチカートが繰り返されるのだが、
その低域のゆったりとした余韻が運ばれていく先がずっと遠くに感じられるの
である。 ホールの余韻感というと、どうしても煌びやかな中・高域の楽器群
によって華々しく展開されるものという印象があり、 実際多くの聴き手は
ホールエコーの存在感を高い音階の楽音によって感じてしまうだろう。
 
しかし、低音楽器がスーッと拡散させていくエコー感は、多くの場合にホール
の空間の大きさをイメージさせてくれるものです。これは新鮮な余韻感です!!
 
16トラック「トレパーク(ロシアの踊り)」ではいきなりのフォルテが、すべ
ての弦楽器が鮮烈なアルコの切り返しから、同じフレーズを二回繰り返した
あとに、タンバリンとティパニの連打が飛んできた。 正に"飛んできた"と
いう表現が似つかわしいような反応の高速化です。これは見事でしたね〜!!
 
叩かれている楽器は「ほら、あそこにあるんだよ。」と指差す彼方から定位感
はキッチリと微動だにせず距離感を保ち、 その定位置から打音がホールの
空間を伝わってここまでやって来るという感触が手に取るように分かります。
 
強烈な一打に対してもウーファーの挙動が中・高域に干渉せず、整然とオーケ
ストラの楽員を並べなおしたようなのです。 トランペットが加わって益々盛
り上がってきますが、ここでも低域と中・高域とが別方向のベクトルで
チューニングされていることが分かります。本当に執念とも言うべき幾多の
カットアンドトライから生まれた音だろうと頭が下がる思いでした。
 
次はSignature800でBRASS SHELLを開発していた時に最も使用した選曲です。
 
■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ
http://www.universal-music.co.jp/classics/refresh/muse/muse.html
 
冒頭からオーバーダビングで多数のフィリッパの声が重複するイントロでの
解像度の素晴らしさにちょっと息を呑む思いでした。なぜか?Signature800の
トゥイーターまでの距離が約2.2メートルという空間において、複数の口元が
きれいに分離している様子がきちんと聴きとれるからです。
 
H.A.L.のエアボリュームならではの試聴体験で確認したことが正確な相似形と
して私の目の前に並ぶ様は数秒間で私のモチベーションをリセットしました。
 
六年前に同じSignature800でBRASS SHELLを試聴するのに要した時間の膨大さと、
執拗な試作品の試聴の繰り返しを思い出しても、当時のスピーカーはT T 様の
場合のように使い込まれていなかったわけです。
 
その意味においては今回のSignature800が醸し出すフィリッパ・ジョルダーノ
の声質が何とも素晴らしい円熟味を醸し出していることに瞬時に気が付きます。
 
T T 様が聴かれるヴォーカルの主流は近代的な録音作品が多いのですが、この
ようにクロスオーバークラシックと呼ばれるオーケストラバックのヴォーカル
も守備範囲でしょう。オーケストラの見事さは既に述べましたが、それを背景
に歌われるヴォーカルの音場感というものはオーケストラの空間表現に合わせ
て録音されているものです。
 
つまりオーケストラバックでオンマイクという録り方はあまりされず、スタジ
オで録音したヴォーカルに巧妙な空間表現を追加するというケースがほとんど。
 
ポップスの録音テクニックをクラシック畑のアーチストに応用した事例は他に
も多数見受けられますが、歌手とオーケストラの空間的一体感をT T 様は見事
にものにしているということがすぐに分かってしまいました。いいですね〜!!
 
■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is(MVCI-24004)
http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/diana/disco.html
 
次は全く対照的という音場感をヴォーカルとウッドベースで録音したこの曲。
今までに何度も使用してきた曲ですが、上記の空間表現を個々の楽音で逆の
音場感として捉えています。
 
Christian McBrideのウッドペースは爽快なピッチカートで弾け、開放弦で
ぐっと重量感を伴い放ち沈み込んでいくベースが実に鮮明な輪郭を描きながら
Signature800のセンターにくっきりと浮かびます。
 
「これいいじゃないですかー!!」
 
DIANA KRALLの弾ける指先は実に切れ味良く、再生システムの個性として本来
はあってはいけない残響を付加することもなく、実にすがすがしいエコー感を
空間に残しながら引き締まったテンションを聴かせてくれます。更にいいです!!
 
この後にリヴァーヴをかけていないウッドベースがSignature800のセンターで
ソロを展開するのですが、何とも素晴らしいベースなのです。まったく問題なし!!
 
特筆すべきはDIANA KRALLのヴォーカルがSignature800周辺の空間に拡散させ
る広大な余韻空間であり、ふっと浮かぶDIANA KRALLの唇がぞくっとさせる
リアルさで、前方の背景に三次元的、彫刻的な存在感をもった立ち姿として
見せてくれることです。
 
空間の大きさと奥行き感の深さを無意識にイメージさせるSignature800の得意
技が見事に決まっており、DIANA KRALLの足元を支えるウッドベースには何の
違和感もないのです。
 
余韻感と空間表現でまったく逆のヴォーカルとベースを描き分けるという技。
このチューニングに情熱を燃やしてきたT T 様の音の美意識を実感するのに
ふさわしい一曲でした!!
 
私の課題曲は今まで実に多数のシステムで試聴してきたものです。それを絶妙
の味付けで聴かせてくれたT T 様の腕前に感激しつつ、今までSignature800で
聴いていなかったヴォーカルを最後に選曲してみました。これです!!
 
■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」
http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html
 
先ずイントロのアコースティックギターの質感にはっと気が付きました。
私も多数のシステムで数え切れないほど聴いてきた曲ですが、この時のギター
の質感には覚えがないのです。どういう意味か?
 
私がH.A.L.で扱ってきたシステム構成ではスピーカーにしてもアンプにしても
10年以上のという年輪を刻んだコンポーネントで音を聴くということがないと
いう事実からでしょう。
 
この時のギターは歯切れ良くもまろやかに、しかも“いぶし黄金”と例えた
ように微妙な輝きと光沢感を維持しながらも、熟成に伴う質感の円熟味が見事
に音質に表れていました。
 
エージングとは良く語られることですが、それが美しく折り目正しく加齢して
いくということは使い手の感性の表れでもあるわけです。T T 様が目指して
きたヴォーカルの再生ということは人間の声だけにフォーカスしたものではな
いということが、これまでの試聴でも十分に分かりました。
 
それは、主役のヴォーカルを聴く上で何が必要かというご自身の“音の美意識”
が備わっていなければ困難なことなのです。
 
可動範囲が限られた中でのスピーカーのリプレースメント、それを補うための
ケーブルという伝送系のこだわり、更に電源環境にもメスを入れて徹底した
選択で妥協せず、スピーカーのセッティングでもB-boardを、各種コンポーネ
ントにも振動対策を、そして最後に他では見た事もなかったオリジナルインシ
ュレーターというピンポイントの使いこなしが“音の美意識”を成長させたの
だと思います。
 
イントロでのもう一つの伴奏楽器ヴァイオリンにも同様なテイストが感じられ、
シンプルなバックの演奏に導かれるように登場するちあきなおみの歌声は私の
心に沁みました!!
 
定番の課題曲で唯一の日本語の歌です。ちあきなおみの発した声が巧妙な余韻
をまとってすーっと空間に溶け込んでいく自然さは何とも心地よく、ギターの
アルペジオと響きを共存させながら、しっとりとした情感を描く時間を私は
大変貴重であり素晴らしいと感じました。
 
T T 様のお部屋は特にオーディオルームとして作られたものではありません。
しかし、周辺は大変静かな住宅地であり、私が訪問した昼の時間帯でもノイズ
フロアーが大変に低い環境でした。おまけに雨という天候も静けさを支える
ひとつの演出になっていたかもしれません。
 
至近距離と言えなくもない三角形のスピーカーとリスニングポイントの配置で、
室内には音響的に不利な癖も見当たらず、ボリュームのわずかな調整は直接的
に耳に対する情報量に比例関係を作り出し、遠くを望みながら近くの楽音を
観察できるという独自の“音の美意識”を作り上げてこられたようです。
 
ちあきなおみの伴奏にベースとオーケストラが加わって、彼女の声を包み込む
ような展開が始まった時、ヴォーカルにこだわったT T 様の美意識が結実した
演奏に私は舌を巻く思いでした。
 
これまでの分析で中・高域の質感と低域のそれとを別方向のベクトルでチュー
ニングしていくこと、音像は明確化し余韻感との識別を可能とし、しかし、
空間で楽音がブレンドされる時には個々の楽音の中心点が鮮明に残されている
ということ。日本語のヴォーカルを最後に聴いて大変納得されられました。
 
T T 様から頂戴した膨大な試聴インプレッションはなぜ書けたのか?
それは、ご自身が持ち得る“音の美意識”というゆるぎない基準があり、
それと比較する事によって多様な分析をなさってきたものだと思います。
 
もしも、私がお役に立てたところがあったとしたら、ここH.A.L.で日頃演奏
している音のサンプルを提供させて頂いたことくらいでしょう!!
 
T T 様恐れ入りました。
今回は私からのアドバイスは何もございません。
 
もしあるとすれば、これからH.A.L.にて演奏していく私の音に参考になるもの
が発見された場合ということでしょうか。
 
これからも末長いお付き合いをどうぞよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
さて、試聴が終わったら次はこちらへということでT T 様からお誘いを頂きました。
 
「お昼は東大宮駅東口徒歩3分の麺飯菜館「じょうじょう」という顔見知りの方
 (小さい頃近所で一緒に遊んだ仲)のやっているお店で如何でしょう?
 長野県伊那市名物B級グルメ「ローメン」のお店です。」
 http://red.ap.teacup.com/jo-jo/
 
恥ずかしながら、「ローメン」というのを初めて頂きました。盛りだくさんの
野菜から太めの麺がのぞき、熱々を頂くのですが、これが中々イケました!!
 
この店の主もオリジナル料理として手を加えているということでしたが、
やはり作り手の感性が入っているものは素晴らしいものがありますね!!
 
今回の訪問では耳と舌の両方で収穫ありということで感謝しております!!
ありがとうございました。
そうしたらT T 様からこんなメールを頂戴してしまいました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
T T 様より
 
川又さん、今回はSound checkに来て頂いてありがとうございました。
当日の心境としては「学校を卒業して何十年も経ちますが、久しぶりに恐い
先生の授業に宿題をしていかない事がどれだけ恐いか」というものでした。
 
前日まで細かいセッティングをして、まだまだ発展途上のシステムの音ですが、
今あるベストの状態を聴いて頂きました。
 
当日、川又さんが真っ先に聴き始めた曲はマーラー交響曲第一番「巨人」
第二楽章、試聴会ではお馴染みのオーケストラのチェック曲でもあります。
 
川又さんの横に座り「私のシステムは女性ボーカルオンリーでセッティング
されているのでオーケストラはダメだと思いますよ」と声にならないつぶやき
を察してか川又さんが「この曲でシステムの状態が分かるんですよ」とおっしゃる。
 
聴き終えて「いいですよ」と、黙々とそれからも持参されたCDを聴き続けら
れて、こちらとしては「何時ダメ出しされるか」とビクビクものでした。
 
「何も問題はありません」と川又さんからお言葉を頂き、私が目指している
方向性は間違っていなかったと、改めて自信を持ちました。
 
通勤先が都内という事もあり、大体週一回ペースで川又ROOMにお邪魔し、
できる限り試聴会に参加し耳を自分なりに鍛えてきました。
 
今回のSound checkはH.A.L.Tの音の再現は無理としても、できる限りの事を
したご褒美のお言葉と受け止めております。
 
お忙しい中、Sound checkに、リポートにと貴重なお時間を割いて頂き恐縮です。
これからもダイナ5555に通い続けますのでよろしくお願いします。
 
今回は本当にありがとうございました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
T T 様ありがとうございました。ご来店の頻度と音質が比例関係にあるという
お手本のような音を聴かせて頂きました。そして、大切な事は私たち専門店の
ビジネスでは何を最終目標にすべきか、という答えがこのような訪問記による
ユーザー紹介に表れているという事だと思います。
 
それは結果的に顧客満足度を如何にして高めるかという事だと思います。
そして、これには二つの考え方があります。
 
一つは商品を納品した後に音質的にご満足頂いているかどうかということに
大きな関心を持ち努力していくということ。当然のようでもユーザーのお宅に
訪問しての活動は中々出来ないものですし、訪問しての音質チェックのレベル
の高さにも自信がなくてはなりません。私が日々ここで聴いている音質を基準
として皆様の音質を判定しているということが重要な事です。
 
もう一つは私たちとお客様との人間関係の在り方だと思います。私がお伺い
する皆様の歴史を必ず紹介するようにしていますが、このように人生の中で
何年間ものお付き合いを頂いているということが結果的に大切な事であり、
単なる店員と客という関係以上のものを築き上げていきたいと、努力して行く
ことが大切なのだと思います。
 
既に15年間のお付き合いを頂いているというのは専門店にとって一つの実績で
あると思えるのです。大変ありがたいものであり、うれしく思っています。
 
最後に、この訪問記をご覧になった皆様が、あの方、あのお宅を自分も訪問し
て聴かせ欲しい、というご希望がありましたら私が紹介の労を取らせて頂きます。
 
同じ音楽とオーディオの趣味が一致する皆様と親交が生まれるというのは楽し
いものだと思います。気軽にお声をかけて頂ければと思います。
 
さて、私もT T 様に飽きられないようにH.A.L.の音質を磨き、これからも世界
中の素晴らしい作品をご紹介し続けるように精進努力して参ります。
今回は色々な意味で大変勉強になりました。
T T 様ありがとうございました。<m(__)m>


HAL's Hearing Report