《H.A.L.'s 訪問記》


No.0027 - 2010/5/18

東京都世田谷区 H.K 様-H.A.L.'s 訪問記

Vol.27「目と耳と口で感じた“Synesthesia”の素晴らしさ!!」
 
         ■ Customer's history ■
 
こんなことがないと私自身も見ることがないだろうというサイトをご紹介します。
 
http://hasegawamachiko.jp/
 
長谷川町子美術館が1985年に開館した事にちなみ、桜新町商店街振興組合が
音頭をとって東急田園都市線の桜新町駅前から国道246号へとつながる「中通
り」が1987年に「サザエさん通り」と改称されたました。
 
1946年(昭和21年)4月22日、福岡の地方新聞『夕刊フクニチ』で連載を始め
たが4コマ漫画であるが、今なお国民的アイドルとして愛されているという事
は思えば何と素晴らしいことでしょうか。
 
日々の寒暖差が異常な今年は五月になってからも予測できない天気が続きました。
そんな、春らしさがないまま月が変わったある日の夕方、私は早足で「サザエ
さん通り」を歩いていたのでした。
 
最寄りの駅まで迎えに行くというH.K 様のお申し出を辞退しても歩いてみたかった
という思いはありましたが、接客に追われて出発時間が遅くなってしまい、
結局は「サザエさん通り」の風物を味わうゆとりもなく、足早にH.K 様のお宅
に向かっていたのでした。
 
国道246号から脇道に入り、深沢の地名を残す学校に囲まれた閑静な住宅地に
新築間もない地上四階建ての近代的なマンションの玄関にたどり着きました。
 
今までタワー型高層マンションのお宅には何回も訪問させて頂きましたが、
住宅地に囲まれた低層マンションは見るからに高級感溢れるたたずまいです。
 
二重オートロックのインターホンにおとないを告げるとH.K 様自らがお出迎え
頂き、恐縮しているところに玄関では奥様までお出まし頂き更に恐縮の体です。
 
そんな大それたゲストではございませんので、どうぞお構いなくと腰を折りつつ
玄関に招じ入れられ、その私の目の前に現われたのが91×65cmのオイルキャン
パスに描かれた色彩豊かな一枚の絵画でした!!こちら↓です!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070688.jpg
 
この絵を見ただけでピンとくる方がいらしたら、この時点で私にメールにて
お知らせ下さい。H.K 様と同レベルのファンであられると思いますので、H.K 様
をご紹介することもやぶさかではございませんので。
 
私のおんぼろカメラの画質では到底紹介しきれない色彩感だと恐縮しながらも、
左下にある作者の小さなサインに思わず吸い寄せられるようにレンズを向けました!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070682.jpg
 
ここまでクローズアップするとキャンパス地のざっくりした質感が現れ、
そこに作者の人柄を示すように小ぶりなサインが描かれています!!
さて…、ご覧になった皆様はお分かりでしょうか? この作家は誰か!?
 
私の訪問記では先ず最初に「Customer's history」としてH.K 様の音楽的、
オーディオ的な遍歴と私とのお付き合いの思い出などを述べさせて頂くのが
通例だったものですが、今回に関してはちょっと趣が違います。
 
H.K 様の人生において記念碑的なエピソードがあった。それは、10年以上前か
らファンだったという、あるアーチストとの出会いと、その後の親交により
作者との“共感覚”を所有されたのではないかという私の推測とH.K 様が好ま
れる音、お好きな音楽という趣味世界の拡大を知る一夜となったものでした。
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
2009年5月中頃のこと、奥様を伴ったH.K 様が呼んだタクシーの運転手に難題を
持ちかけていた。
 
「PUNCTUM(プンクトゥム)に行ってくれ…」
 
このやり取りを聞いて“プンクトゥム”という名前に心当たりのある方は相当な
アートマニアと言えるかもしれません。東京は京橋にあったPUNCTUMは現在
活動は休止中ということでwebサイトとタブロイド判のみで作品紹介をしてい
るという。
 
http://www.punctum.jp/exhibitions_past.html
 
http://www.punctum.jp/times.html
 
H.K 様が見に行かれた個展は正に活動休止直前のタイミングであったわけだ。
そして、その個展とは↓これです!!
 
http://www.punctum.jp/shojisayaka_jp.html
 
さあ、これをご覧になればお分かりになるでしょう!!
H.K 様はデビュー当時からほぼすべてのコンサートを聴きに行ったという庄司
紗矢香の大ファンであったわけです。
 
http://www.sayaka-shoji.com/
 
http://www.sayaka-shoji.com/synesthesia/gallery.html
 
私が訪問直後に遭遇した絵画は何と庄司紗矢香作による Anna and Vronsky
「アンナとヴロンスキー」のオリジナルそのものだったのです!!
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
銀座にほど近い京橋にあるギャラリーということで、さほど広いフロアーとも
思えないのですが、H.K 様ご夫妻が階段を上がってギャラリーに入ると若い
女性が作品の紹介をしてくれたという。
 
上記で紹介している「アンナとヴロンスキー」も実はプロコフィエフ:ソナタ
2番4楽章をイメージした描かれたものということで、展示されている作品には
皆イメージした楽曲がサブテーマとして表示されている。
 
ギャラリーでは人一倍かいがいしく来場者に気遣いする女性がいることに気が
付いたH.K 様は、解説してくれた女性に尋ねると「紗矢香さんのお母様です」
という答えが…。
 
H.K 様は小声で奥様に「あの庄司紗矢香のお母さんだって…」奥様も「私も
そう思ったのよ〜」と同じく小声で返ってきたという。その後、直接お母様
から絵の説明を受けたそうなのだが、緊張と興奮で話の内容はまともに記憶さ
れていなかったという。
 
私はここで何故H.K 様がご自身の素晴らしいお車でなくタクシーを使ったかと
いうことが初めてわかったのでした(笑)
 
ある種の興奮状態でギャラリーを出られたH.K 様ご夫妻は、しばし後にミシュ
ランのふたつ星をとった有名な銀座の寿司屋のカウンターに陣取られていたと
いうのです。多分あの店ですね〜(^^ゞ
 
有名店の寿司職人相手に先ほどのエピソードを語りながら、程良い興奮状態を
板前に見抜かれておまかせと言ったのが運のつき。酒のつまみが立て続けに
出てくるのに任せて結構な散財になってしまったとか…。
 
ほろ酔い気分で寿司職人に最後に言ったのは「また来週寄らせてもらいます」
という一言だったという。
 
次の週の木曜日、やはりタクシーで再び“プンクトゥム”を訪れた。午後4時
過ぎには到着し、しっかり馴染みの心境となってしまったギャラリーのドアを
入ったところに、先週同様にお母様が立たれていたという。
 
「あら、いらっしゃいませ!!」という一言に次いで「ちょうど…」と一言を
言い終わる前にH.K 様の奥様が「あら〜!!」と絶句したという。
 
N響とのコンサートを次月に控えて多忙であるはずの庄司紗矢香がそこに!!
 
「あっ、あっ、アッ、アッ、ホンモノ!!」H.K 様の内心の声でした。
 
それはそうでしょう〜、10年以上もステージ上での姿を見つつ録音を聴き続け、
雲の上の人物と思っていたご本人が目の前に現れたのですから!!
 
「こちらのお二人は貴女の大ファンでいらっしゃるのよ。コンサートにもよく
いらしてくださるんですって!!」とお母様に紹介して頂いた時のH.K 様の心境
はいかなるものであったか。素顔を知る私としては思わず失笑していました。
 
何の連絡もなく突然現れ、数分間だけで出て行ってしまうという本当に偶然の
出会いにH.K 様の興奮は相当なレベルに達していたことでしょう。
 
先週の行きつけの寿司屋へはタクシーを使わず、銀座の教文館で購入された
「1Q84」を雨に濡れないように抱えて、頭を冷やすためにご夫妻で歩いて行か
れたというのですから…。
 
その後、6月1日と6日に立て続けにH.K 様ご夫妻は庄司紗矢香のコンサートに
出かけられたという。特に6月1日はハンガリーの現代音楽の作曲家リゲティ・
ジェルジュ・シャーンドルのヴァイオリン協奏曲という難解な選曲であったと
いう事なのだが、これを何とか理解しようという動機も実は“プンクトゥム”
で鑑賞した庄司紗矢香の作品「中世の手 hand of medievalリゲティ:協奏曲
2楽章」から受けた感銘からだったという。
 
http://www.nhkso.or.jp/calendar/concert_day_2009-06-01.shtml
 
作者との“共感覚”を目と耳の両方で味わいたいという願望がご夫妻を動かし
たものであり、庄司紗矢香とはこのようなファンを持つアーチストであるとい
うことに私も改めて感じ入ったものでした。
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
http://www.punctum.jp/shojisayaka_jp.html ★より引用
 
■庄司紗矢香個展[於:プンクトゥム(東京)]によせて
 マリー・ドゥパリ・ヤフィル(美術評論家)
 
私が初めてパリのカフェで若くて華奢な紗矢香に会った時、彼女はバイオリン
についても、自身の輝かしい経歴についても触れず、一つの夢について語ってくれ
た。
 
その夢とは音楽にまつわるビデオ制作で、彼女が演奏する時に頭に浮かぶ
イメージ、あるいはロシアやショスタコーヴィッチやタルコフスキーへの想い
を映像化することであった。
 
以来、少しずつ《Synesthesia》計画は生まれてきたのである。
 
これは大胆な計画であったが、庄司紗矢香は彼女の天才的な演奏の聴衆への
影響や、あえて他の芸術分野に挑戦するという冒険に対して全く恐れを抱かな
かった。
 
彼女の中には絶えず沸騰するエネルギー、豊かな感受性、多彩で力強い内面世界、
強い希望、好奇心、抑えがたい美への渇望が存在しているのである。
 
音楽は彼女の世界を満たすが、それで充分であるとはいえない。彼女にとって
役者になりビデオ作家になり、音楽家であり画家であるためには多くの人生が
必要かもしれないが、人生は一回限り、紗矢香はここで今、その全てを試みよ
うとした。
 
そして私たちが知っているバイオリニストではなく、一人の若い画家として、
彼女はサンジェルマン・デ・プレからほど近い小さなアパートメントの部屋で
私に油絵を見せてくれたのである。
 
《Synesthesia》(共感覚)というタイトルは彼女がビデオ作家パスカル・
フラマンと共に制作したビデオ作品のために選んだものだが、これは音楽が
イメージを呼び、イメージが感覚を生み出すように、芸術は互いに呼応し合う
と信じる彼女の考えによるものである。
 
これはまさに庄司紗矢香の作品の中で示されており、すべてが彼女自身の内面
への旅、彼女がそこで聴いた音楽、彼女が知るそのかすかな変化の中から着想
を得ている。
 
キャンバスの上にあらわされた形の単純さや色彩の純粋さが、キャンバス全体を、
呼び覚まされた記憶の感覚で満たしていく。
音楽は彼女自身の中にある故、彼女は描くときは音楽を聴かない。
 
彼女の絵画は、音楽が我々に馴染みのあるイメージ―曲線、色彩、モチーフ、
そして感覚のイメージ化としての風景画をも―を生み出すという不思議さを示
している。
 
リゲッティのバイオリン協奏曲第2楽章から着想を得た絵のように彼女は人の
身体の動きも描き、そこではたぶん彼女自身のものであろうバイオリニストの
手が澄み切った輝く風景を生み出しているようにみえる。
 
紗矢香の中でプロコフィエフのバイオリンとピアノのためのソナタ第4楽章が
響けば、色彩や暗示的抽象的な形が爆発する作品が生まれ、ブロッホのソナタ
に触発されればシュールレアリズムの風景が出現する。
 
これこそ音楽が持つ魔術ともいえる力であろう。
 
「音楽は平原に吹く風の歌に耳を貸さず、夜の芳香に無関心なものであっては
ならない」とロシア出身のフランスの哲学者ヴラジミール・ジャンケレヴィッチ
は言っているが、まさに彼と同じく、紗矢香は芸術だけが人生を詩的に終わり
なきものにすることを知っているのである。
 
 パリにて 2009年3月
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
2009年9月のある日、H.K 様がご自宅で寛いでいると一本の電話が入った。
不運と幸運のいずれかを運んでくる電話の音に、H.K 様はいつも音楽とは
別次元の聴覚が自動的に働き多少の警戒心をもって応対するという。しかし、
その時に電話をとったのは奥様だった。その声に自然に耳を傾けた…。
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/archive/2009-09.html
 
「あ〜、はい、うかがっております。庄司紗矢香さんの個展ですね。
 え〜と、黒壁美術館でなさるそうですね。ええ、え〜、はあ、11月の5日
 木曜日に長浜の文化芸術会館で庄司紗矢香さんのトークショーがあるんですか?
 そこに呼んで頂けるとおっしゃるんですか? そうですか、それでは行ける
 ようでしたらお電話致しますので…」
 
http://www.kurokabe.co.jp/blog_pdf/syoji.pdf ←これです!!
 
そういうのを聞きながら、長浜という場所がピンと来ないH.K 様は木曜日なら
休みなので行けるが前後一日の仕事を休めないので無理なのでは…、ご夫妻で
話し合った結果、断りの電話を奥様がかけたところが…
 
「えっ、そんなに近いんですか? では東京から日帰りでも行けるんですか!!」
 
と先方とのやり取りをかたわらで聞いていたH.K 様は内心で「行くと言え!!
行くと言え!!」とやきもきしながら首を縦に何度も振っていたという。
 
庄司紗矢香は多忙な人であり、また彼女の忙しさは聴衆との接点を作るためと
いうものであり、自らの個展とイベントをこなしながら↓直前までコンサート
に精力を尽くす。もちろん、H.K 様も絶品のシベリウスだったとのコメント。
 
http://www.japanarts.co.jp/html/2009/orchestra/cincinnati/index.htm
 
そして、11月5日午前10時10分の東京発のぞみだった。その時のH.K 様の胸中
にはもう一つの目論見があった。昼食は彦根で近江牛のすき焼き!!ここだ!!
 
http://www.sennaritei.co.jp/site/index.html
 
銀座の寿司屋同様に美食家のH.K 様は当然、十分なエネルギー補給が出来た
わけだが、その後で国宝彦根城へと向かわれた。
 
http://www.hikone-400th.jp/
 
見上げる城は美しい!!そして奥様から「天守閣の中見る?」というひと声が…。
H.K 様としてはガソリンが満タンとなった直後でもあり、わざと消極的な声で
「そうだね〜」と言ってしまったのが運のつき(笑)
 
ほぼ直角に近い階段をうんざりしながら登っていく姿を想像して私も失笑(^^ゞ
ちなみに昨年のH.K 様は…、あっ!!年齢を明かしてはいけませんね(笑)
 
細身の奥様が軽々と上り、さっさと先を行く。大きなカバンに一眼レフの
カメラを持ち、お腹に納めたご馳走とビールとワインの余韻をそのままに苦行
の城見物の場面は想像に難しくない。その証拠にH.K 様の回想は次の一言で
締めくくられていた。
 
「もう絶対に来ない、何があっても来ない!!」
 
琵琶湖からの涼風にひと心地を付けて、いよいよ黒壁美術館へ。
 
http://www.kurokabe.co.jp/
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/kiji/18267.html
 
その日の夕方6時から「庄司紗矢香 音楽を語る夕べ」開催
この会場にH.K 様ご夫妻もいらっしゃったのですね!!
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/kiji/19498.html
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/kiji/17285.html
 
このトークショーの休憩時間が終わろうとした時、ホールの係員が客席にいる
H.K 様ご夫妻にすぐに楽屋に来てほしいと呼びに来たという。その後をついて
楽屋に行くと庄司紗矢香とお母様がニコニコと笑顔で迎えてくれた!!
 
夕方6時の開演から90分のはずが、20分ほどオーバーしてしまいH.K 様ご夫妻
は急いでタクシーで米原駅まで向かい、ひかりに飛び乗り名古屋でのぞみに
乗り継いで帰路についたという。
 
昼間の城見物の苦行はどこ吹く風で名古屋ではしっかりビールとつまみを調達
して新幹線に乗り込んだご夫妻は、東京へ向かうサラリーマンで満席状態に
大変驚かれたとのこと。すべて一人というスーツ姿の男たちが異星人に見えた
ということですが、平日のその時間帯とはそういうものなのでしょうね〜。
 
そして、トークショーを終えた庄司紗矢香は大阪に一泊して翌日早朝には成田
からパリに向かったという。勤め人もアーチストも忙しい!!
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
あれから半年経った今年5月に時間軸を戻し、ここはH.K 様であり、お出迎え
に恐縮しつつリビングルームへ足を運びいれると何とここにも!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070676.jpg
 
ひょっとして↓これも!?
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/kiji/18371.html
 
そうです、何と「遠い昔に」Nostalgic Landscapeのオリジナルがありました!!
 
http://blog.ko-blog.jp/kurokabe-museum/kiji/18991.html
(フォーレ ピアノ三重奏曲二短調 第二楽章 アンダンティーノによる)
 
もう16年くらいのお付き合いになるH.K 様が庄司紗矢香の大ファンであったこと、
このようなエピソードが昨年あったことなどをうかがい、すべてがH.K 様の
お人柄に一致するものだと改めて感心しつつ、リビングルームの椅子を勧めて
頂き腰を下ろしたものでした。
 
 
          ■ Customer's Sound ■
 
玄関のドアからオープンキッチンの脇の廊下を進み、大よそ20畳プラスアル
ファという広さのリビングルームにセットされたシステムとは↓これです。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070630.jpg
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070634.jpg
 
そのシステム構成を早速ご紹介しましょう。
 
 
 ◆H.A.L.'s 訪問記-Vol.27 東京都世田谷区 H.K 様-システム構成◆
 
………………………………………………………………………………
AMAZON SYSTEM AMAZON2i (税別\740,000.)
http://www.scantech.co.jp/amazon_2i.html
               with
LYRA  TITAN  (税別\540,000.)
http://www.scantech.co.jp/titan.html
 
                ▽ ▽ ▽
 
LYRA AMPHION AMPHION PHONO (税別\298,000.)販売完了/下記リンクは参考
http://www.scantech.co.jp/amphion_phono3.html
 
………………………………………………………………………………
    アナログプレーヤーシステム
                 and
………………………………………………………………………………
ESOTERIC X-01D2(税別\1,400,000.)
http://www.teac.co.jp/audio/esoteric/x01d2/index.html
………………………………………………………………………………
    CD/SACD プレーヤーシステム
 
                ▽ ▽ ▽
 
GOLDMUND  LINEAL IC CABLE 1.0m(税別\165,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/accessories/ic_cable.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND  MIMESIS 27ME(税別\1,640,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/support/sellingend/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
GOLDMUND  LINEAL IC CABLE 6.0m(税別\315,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/accessories/ic_cable.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
GOLDMUND TELOS 600 (税別\5,900,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/amplifiers/telos600.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
Acoustic Zen  SATORI 6 ft /pair (税別\104,000.)
http://www.stellavox-japan.co.jp/products/acousticzen/
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
MOSQUITO NEO (税別 \4,800,000.)
http://www.mosquito-groupe.com/
http://www.dynamicaudio.jp/file/050413/oto-no-hosomichi_neo.pdf
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.html
………………………………………………………………………………
 
当日は結構な早足で歩いてきたこと、また少し湿度も高かったのか、汗かきの
私はしばらくは呼吸を整え額の汗がひくまで落ち着いてから、先ずは現在その
ままの音を聴かせて頂こうと先ずオーケストラから聴き始めました。
 
■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団
 
第一印象は意外にいい!!いや、失礼(^^ゞ
H.K 様は以前より高いレベルで音の美意識をお持ちなのは承知していたが、
それをご自身で頻繁なチューニングによって作り出していくというタイプの
方ではない。
 
美食家=名シェフではありえないという同義ということか、ご自分で料理を
することはしない。テーブルに供された料理の味がどうかにはうるさいが、
それを自分の手で作るということには熱心ではない。
 
オーディオユーザーも同様に自分自身で音を作っていく人、私たちにすべてを
任せることで安心して音楽を楽しめるという人の二種類があるだろうし、その
ために私たちプロフェッショナルの存在意義があるというもの。
 
現在のマンションに移転されてから、ご本人の都合とインテリア感覚でここに
スピーカーをセットしようと決めて、とりあえず置いてからはいじっていない。
 
そんな状態を承知していた私だが、驚くことにオーケストラの音は実にいい!!
 
■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル
 メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール
 
一曲目のオーケストラで何ら不満もないまま、確認ということでこの曲を聴く。
マーラーのコントラバスによる低音部に対して、こちらのCDではグランカッサ
の響きが低域のディティールをどう描くか、そこに注目したもの。不満はない。
しかし…、可能性はないのかというとそうでもない。
 
先ず弦楽器の質感はまことに好ましい。NEOの上半身の高さに展開する弦楽器
はそれ自体で奥行き感を持ち、NEOの後方に妥当な広がりを見せて展開し、
それらが潤いをもって響くのだから先ずは及第点を与えた。
 
管楽器も同様にNEOの後方から吹きあがり、遠近法の消失点をスピーカー後方の
壁面に位置しているのがわかる解像度をきちんと持ち合わせている。
 
低域の楽音も無駄な膨張はなく、適度に弾力性ある響きを保っているのだが、
ホール録音での低域だけでは見逃すことがあってはいけないとスタジオ録音の
選曲でも試してみることにする。
 
■MICHAEL BUBLE/1.「Fever」WPCR-11777
http://wmg.jp/artist/michaelbuble/profile.html
 
なるほど〜、量的には不要な膨張はないと感じたが正にその通り。鉄筋構造の
マンションで、しかもリビングルームの三方は大きなガラス窓が取り囲む。
 
往々にして、このような環境では低域の残響時間だけが長くなりブーミーな
質感に陥ってしまう事が多いのだが、幸いにその心配は全く感じられない。
というよりも、NEOのシステムは実に多くのお客様宅で聴いてきたが、こと
オーケストラに関しては特段のチューニングをしていないにも関わらず、
すこぶる健康状態が良好という音質だった。
 
この曲のイントロでのペースも好感触。必要十分な量感を伴い適切な輪郭を
保ち、ドラムとの共存も違和感なく展開するので音量を上げても苦にならない。
 
ヴォーカルの再現性は実にチャーミングな音像がNEOのセンターに浮かび、
奥様も大変気に入られた様子。でも、ひょっとしたらもっと良くなるのでは?
 
■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ
http://www.universal-music.co.jp/classics/refresh/muse/muse.html
 
この曲の導入部でのオーバーダビングによるフィリッパその人のバックコーラス
が個々の口元が溶け合わないで再現され、メインヴォーカルとの前後感と輪郭
の再現性がきちんと維持できるか、そんな初歩的なポイントは苦も無くこなす。
 
ゆったりしたドラムの二連打でスピーカーの低域再現性をチェックするのに
良く使う曲なのだが、先ほどのペースのように連続した楽音でもあり、瞬発力
ある立ち上がりにメリハリがあるかどうかもチェックする。
 
いいですね〜、肝心なヴォーカルの質感も前曲同様に引き締まった口元が見え、
それとは対照的に余韻感として空間に広がっていくリヴァーヴが美しい。
 
さて、最初から上質の言えるもののどこに改善するポイントがあるのか?
それを考えつつ、一つの可能性を予想しながら再度ヴォーカルで反応を見る。
 
■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」
http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html
 
日本人のヴォーカルにおける録音の傾向、それは端的にいえば口元サイズが
海外の歌手よりもおちょぼ口になっているという事だろう。言い換えれば
小ぶりな音像で余韻感の拡散する中心点として濃厚な存在感を見せる。
 
それは伴奏のギターにもヴァイオリンにも共通な傾向として表れるものであり、
尾を引いて消えていくという光源としての楽音の発生地点を空間に明確に示す。
 
特に不満はないものの、同じ道具を使うのなら更に高いパフォーマンスを求め、
コストをかけなくても使いこなしによって音質向上を実現すること。それが
訪問の目的なので何もしないわけにはいかない。リビングルームという部屋の
用途を逸脱しない程度に私がやってみた事はシンプルであり大事なことだ。
 
さて、スピーカーのリプレースメントがここでも効いてくる!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070634.jpg
                ▽ ▽ ▽
先ずスペースを確保するためにラックを移動します。
                ▽ ▽ ▽
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070648.jpg
 
私がやろうとしたのは左右のNEOの間隔を広げること。そして、NEOを後方の
壁面から手前に移動して後方の空間を広くすることでした。
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070630.jpg 
                ▽ ▽ ▽
その結果、次のようにNEOのポジションを変化させています。
                ▽ ▽ ▽
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070642.jpg
 
スピーカー後方の壁面からの距離がどうなったかは写真では分かり辛いと思い
ますが、約15p幅のフローリングの板目に合わせて前後に四段階に分けて
移動し、効果の飽和点を見極めながら適切な前後位置を設定しました。
 
スピーカーの左右間隔を広げた状態で起こった変化、スピーカーの前後での
動きで起こった変化を一段階ずつ確認し、最後にはH.K 様にも比較して頂き
納得して頂きました。
 
NEOの左右間隔を広げた事でオーケストラの各パートの音像と、発生した楽音
の輪郭が空間でオーバーラップすることがなくなり、すっきりしてきました。
 
それは平面での解像度の向上を促しただけでなく、各パートの輪郭を鮮明に
することで音像の後方に視界が広がるという副産物を生みだし、ホールエコー
という旨味要素が以前にもまして感じられるようになりました。
 
これはスタジオ録音のヴォーカル曲でも同様です。センターに定位する歌手の
口元という音源位置とその輪郭がくっきりしてきます。
 
ヴォーカルのエネルギー感を定位する中空の一点、そこに盛り上げたように
立体感が向上するので、声に肉厚な響きの要素がプラスされ、音階を下げた時
のヴォーカルでは特にミッドレンジドライバーからウーファーまですべての
ユニットから歌声が再生されるという調和のとれた質感が見えてきます。
 
以前のNEOから一皮むいたように聴こえるという不思議な現象が現れてきます。
H.K 様もその変化に気が付かれた様子で、これでいいでしょう〜とコメントを
頂きました。それにしても、安直なように思われていたインテリア的な配慮に
基づくスピーカー配置が、こんな幸運な音響的結果をもたらすという事はどこ
に原因があるのだろうかと私は後学のために椅子から立ち上がり室内の色々な
場所で聴き、また手を叩き反射音の具合を確かめ、次第にスピーカーに近付いて
言ったのでした。
 
そして…「あ〜、そういうことだったのか〜!!」と合点が行きました!!
 
           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
スピーカー後方の壁から距離を取りたい、これは多くのユーザーの希望が一致
するポイントかと思いますが、私はNEO後方の壁をノックしてみて直ちに分か
りました。
 
重厚な鉄筋構造のマンションですが、外壁はともかく室内の間仕切りの壁に
関しては中空構造になっていました。つまり、叩くとボンッ!!と音がします。
 
このような壁だと再生音の周波数が低くなるにつれて音響エネルギーは透過し
てしまいます。簡単に言えば、ドアの向こう側の部屋では低音だけが聞こえる
という現象で、リビングルームから見ればローパスフィルターとして、隣室か
ら見ればハイカットフィルターとしてスピーカー後方の壁が存在しているとい
うことなのです。
 
ですから、オーケストラの弦楽器に関して音響的な柔軟剤として心地良い質感
を適量の反射音として戻してくれるという妙味が存在していたということ。
 
逆に低域に関しては他の壁面からの一次反射が大きいのに対して、隣室と一体
感のある空間につながる壁を通じて、周波数が下がるにつれて吸音効果を持っ
ているという仮想吸音材として壁面が機能しているということなのです。
 
偶然かもしれませんが、H.K 様は実に好都合な部屋を手に入れたということです!!
 
こんな設計のリビングルームに設置されたNEOは正に幸運と言わざるを得ません。
人間にも生まれ変わりがあり、前世はどうだったかと思われる時もあるでしょう。
そうなのです、H.K 様のNEOの前世は↓こんな感じだったのです!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0013.html
 
 
            ■ Customer's room ■
 
今回の訪問記では以前のストーリーと順序が違っています。いつもだと、この
「Customer's room」という解説が先になるのですが、なぜか今回は最後に…
 
前述の多数のエピソードをご覧頂ければ、H.K 様は音の美意識はもちろん絵画
とアート全般に対して、そして美食にも大変旺盛な好奇心をお持ちであるとい
うことがお分かりになるでしょう。
 
音の美意識は耳で、愛でる美意識は当然視覚で、そして舌で味わう美意識も
皆ある種の共通点があるのかもしれません。
 
それらは“共感覚”として連鎖反応を引き起こすことがしばしばあるものです。
当日は、その締めくくりに何と奥様が手料理を用意して下さったというのです
から、またまた恐縮してしまいました<m(__)m>
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070654.jpg
 
先ず最初に供して頂いたのは白ワインでした。お分かりですか?アンティーク
テーブルにもこだわりが見られますね〜(^^ゞ奥様が明治屋で見立ててこられ
たという“Vernaccia di San Gimignano Conti Serristori”です。
 
http://www.snooth.com/winery/conti-serristori/
 
http://www.seetuscany.com/food/vernac.htm
 
http://www.vinovinovino.com/wine/Vitigni/vernaccia_di_san_gimignano.html
 
奥様は店頭にて「ミケランジェロが愛飲していたと伝えられている…」と書い
てあったのが目に留まって求めたみたところ美味しかったので、ということでした。
お安い白ワインだと甘さが先行してしまうものが多いのですが、飲み口は意外
にさっぱりしていて後からほんのり甘みが広がってくるという感じで、私も
久しぶりに美味しい白を頂いたものでついつい進んでしまいましたっけ(笑)
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070657.jpg
 
なぜか? だってオードブルがこれまた美味しかったです〜(^^ゞ
トマトにバジル、モッツアレラチーズです。それに塩と胡椒とオリーブオイル
というシンプルなドレッシングが程良く調和していましたね〜(^^♪
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070661.jpg
 
次に供して頂いたのはこれです。何だかわかりますか? なんとアスパラです!!
ここで奥様に出演して頂くことに…(^^ゞ
 
「アスパラはフランス産のアスパラを輸入している業者からインターネットで
 取り寄せてます。
 フランス産のアスパラは出ている時期が短くて(まるで日本の筍やマツタケ
 のように)日本のアスパラにはない味がして主人は大好物です。
 以前はレストランへ食べに行っていたのですが、インターネットで取り寄せ
 可能ということを知ってからは5月は必ず取り寄せてうちで食べることとな
 りました。
 
 フランスのロワール産のホワイトアスパラはフレンチ好きの人にはピン!
 とくる野菜で、フランス料理好きな人に出すと、たいてい大喜びです。
 知らない方でも出すと好評です。けっこう毎年のうちのイベント的存在かも
 しれません。川又さんが5月に来てくださってよかったです。調理方法は、
 ボイルです。シンプルにヴィネグレットソースをかけてみました。」
 
いや〜、ご馳走になった上に後日の私の質問にご返事まで頂戴して本当に恐縮
しております。このアスパラは私も初体験でしたが独特の香りと風味、それが
後に続くお料理へと実に巧妙な誘導をしてくれるものでした。美味しかった!!
ありがとうございました。<m(__)m>そして更に!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070663.jpg
 
話は弾み食も進み、気が付いたら一本空いてしまいました。次のお料理に備え
て常温の赤ワインをタイミング良くお出し頂きました。撮影したタイミングで
既に二本目も残り少なくなっていますが、まだ続きがあるんですよ〜(*^_^*)
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070666.jpg
 
このパスタ絶品でした!! お尋ねするとフィシリという種類のショートパスタ
であり、バジルのソースとソラマメであえたものだということ。私の好みに
ぴったりの味付けでワインが更に進みましたっけ〜(^_^;)
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070668.jpg
 
いや〜、本格的ですね〜、こんなものまでご用意頂きました!!リゾットです。
当然パルミジャーノチーズの濃厚な香りとテイストが口いっぱいに広がって、
ワインも美味しいし何も言う事はございません!!
 
ちなみにバスケットに入りのパンは、お米の粉のパンとバケット、レーズンと
ドライイチジクの入ったライ麦入りのパンの3種類でした。私はお米のパンが
美味しくておかわりまで頂いてしまいました〜(笑)
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070673.jpg
 
更にメインにはこんな本格的な肉料理まで!!合鴨のローストと鶏肉の煮込みの
取り合わせです。これがまた美味しかったです!!付けあわせは菜の花のソテー
と春にんじんのグラッセという細かな気配りが家庭料理とは思えませんね〜。
 
いずれも真心こもった手料理でワインも美味しく、あっという間に時間が経って
しまいましたが、H.K 様が「川又さん、食後の飲み物どうします?」とおっしゃる。
きりっとしたものを頂ければ、と頭に浮かんだのはグラッパでした。それを
口にするとこともなげに「ありますよ〜いいのが」ということで↓これが!!
 
http://www.dynamicaudio.jp/file/100505/P1070698.jpg
 
私が某ファミレスで飲んでいるグラッパなどとは格が違う(笑)
サシカイヤというメジャーなグラッパが登場してきました!!
専用のグラスまで用意されているのですから恐れ入りました。
 
オーディオにも普及価格の庶民的なものとハイエンドがありますが、音質に
関しては美意識を自負する私ですが食の世界では何とも素人です。そんな私
にもグラッパの違いは一目(口)瞭然でした!!
 
白ワインと同じように甘さは強調すべきものではなく、先ずは香り、次に唇で
触れるようにして風味、そして舌にからませて芳醇なテイストを、三段階での
味わいはグラッパとはこういうものなのか!!という発見をさせて頂きました。
 
いや〜、実に貴重な体験をさせて頂きました。正直に述べると試聴時間よりも
食事時間の方が長かったような気がします(^_^;)本当にありがとうございました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
私が前述している一節を繰り返します。
 
「音の美意識は耳で、愛でる美意識は当然視覚で、そして舌で味わう美意識も
 皆ある種の共通点があるのかもしれない。それらは“共感覚”として…」
 
庄司紗矢香の大ファンであるH.K 様宅への訪問記の締めくくりとして、奥様の
手料理では舌で味わう美意識というものに感激したわけですが、この訪問記を
インターネットの世界に記念として残すに際して、H.K 様が最も喜んで下さる
のは庄司紗矢香のステイトメントと並び掲載される事だろうかと考えました。
 
■音楽と絵画/庄司紗矢香(前記webサイトより引用)
 
音楽はいつも私にとって不可欠であったし、これからもずっとそうである
ことは確かだ。
 
ヴァイオリンを習い始めた頃でひとつ覚えているのは、自分からこの楽器を
欲したという事。しかしヴァイオリンという美しい楽器の音の魅力やその
ユニークな奏法を超えて私を魅了したのは、舞台に立つ演奏家の姿というより、
ただその音と音楽が私たちに与える「世界」そのものだった。
 
その「世界」は見知らぬ土地のように神秘的で、私に心の内での旅を夢見
させてくれた。
 
ヴァイオリンを始めてから間もなく、画家である母のもとで絵も覚えた。
当時私は母の横にイーゼルを並べよく一緒に油絵を描いていたが、15歳で
青りんごとソーセージの国に旅立ってからは高校の授業とヴァイオリンと
ドイツ語の勉強に追われ、ギムナジウムの美術の授業以外では描くことは
なくなっていた。
 
でも私が8年間過ごしたケルンの街には、近代的なコンサートホールやローマ
遺跡の他に、近代美術館と古い映画を上映している映画館がひとつずつあって、
お気に入りの作品やまだ知らぬ作家を探すべく順繰りに訪れたものだ。
 
また、演奏旅行に出るようになってからは、鞄に本を一冊入れて、時間に余裕
ができれば美術館に出かけることをやめなかった。
 
そこで出会った数々の「世界」は、私に幼いころ夢見たものを思い出させてくれ、
再び新鮮な気持ちで音楽に向き合うことを促してくれた。
 
そうしているうちに十代後半には、演奏するとき私が見る映像を実際に目に
見えるものにしたいという漠然とした夢が私の内で出来上がっていた。
 
音楽大学を終えてふと周りを見渡せばいろんなものが見えてきた。
自身を含めて閉鎖的になりがちなクラシック音楽界の見えない扉、芸術が
イメージ先行の商品になりつつある時代に疑問をもつアーティスト。
 
パリに引っ越したのも音楽の映像化という夢に加え、そんなミネストローネの
ようにごちゃまぜな思いを抱えてのことだった。
 
演奏会とその準備の合間に美術館やビデオテック、ギャラリーを巡り、数々の
友人に出会えたことで美術評論家のマリー・ドゥパリ・ヤフィルを知ることと
なった。
 
私の夢を話し、彼女と一緒にビデオ・アーティストを探している頃、ある晩
ひとつのフレーズが頭の中で鳴り続ける中、再びキャンバスに向かった。
 
するとその時初めて、描くことによってその音楽と自分の無意識的なつながり
が見えるのを知って驚いた。
 
クラシック音楽における「演奏」=インタープレテーション(解釈)とは、
作曲家のメッセージを伝えること。言ってみれば音符を読んで弾くという、
見方によってはとてもシンプルな作業だ。
 
でもそこには、必ず「演奏家の想像力」が加わり、それによって音楽ががらり
と変わるのが面白いところ。
 
だから時には演奏家とは想像力の仕事だとさえ思えてならない。
ヴァイオリンの演奏が私にとって第一のインタープレテーションとするならば、
その音楽の内に見えるものを絵画や映像で表現してもみたいという願いは、私
に第二のインタープレテーションとしての新たな扉を開いてくれた。
 
私はこの個展が音楽と絵画をそれぞれ愛する人たちの自由に行き交える扉とも
なってくれればと願っている。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
まだ20代という若さで聡明な思想と卓越した技術を持たれているアーチスト
として、今後の活躍が期待されるものであり、Synesthesia“共感覚”に目覚
めた彼女の才能は多方面に広がっていくことでしょう。
 
耳で聴くという感性を追求している私にとって、それは演奏者ではなく聴き手
という立場なのだが、彼女と同様に聴きながら膨らむビジュアルイメージとい
うものは経験を重ねるごとに増える記憶のファイルも膨大な資料として頭にある。
 
それをどのように役立てていくか、ということは日本のオーディオファイルの
皆様に再生音の品質として常に進化する演奏として体験して頂くことでしょう。
 
今年11月にはサントリーホールで庄司紗矢香のコンサートが予定されているい
るそうです。H.K 様も当然聴きに行かれるということで、益々芸術を通じての
親交と趣味が広がっていくことでしょう。
 
私が出来ることは何か? 庄司紗矢香の残した録音を出来るだけ美しく再現し、
彼女の感性にSynesthesiaを出来るだけ忠実にファンの皆様に伝えていくこと
だと誓ったものでした。
 
今回のH.K 様宅への訪問記では本当に私もたくさんのことを勉強させて頂いた
ものでした。ありがとうございました。そして、ご馳走様でした。<m(__)m>


HAL's Hearing Report