《H.A.L.'s Virtual 訪問記!!》


No.0023 - 2009/9/21

H.A.L.'s Virtual 訪問記 Kiso Acoustic特別編

Vol.23「美しい響きを作るKiso Acousticのクラフトマンシップを初公開!!」



2009年6月上旬、正確にはハルズサークルに第一報を配信したのは6月1日の事。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/655.html

6月14日開催のSunday ConcertにHB-1登場を公開。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/657.html

HB-1を初めて聴き、その場で発注するという感動の出会いと詳細レポート。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/660.html

ユーザーの試聴件数と販売実績がリンクし始めました。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/663.html

HB-1にどんなコンポーネントを組み合わせて行くかトライアルが開始されます。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/664.html

限定10セットのHawaiian Koa & Goldener Madronaは瞬く間に完売でした。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/666.html

三種類のHB-1を一堂に集めての比較試聴は驚きの連続でした。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/667.html

コンポーネントの実力と魅力を引き出していくHB-1は更に進化していきました。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/670.html

HB-1はCDプレーヤーの魅力も見事に聴かせてくれました。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/674.html

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たった? 三ヶ月間で21セットのご注文を頂いたHB-1にはこのようなストーリー
がつづられてきたものです。ここH.A.L.における組み合わせによる音質追求は
まだまだ続けて行くものですが、世界唯一の響きを作るスピーカーHB-1の秘密
を遂に皆様にお知らせできる機会がやってきたのです!!

読むことが面白いメールマガジンもたまには良いではないですか!!(^^ゞ
Virtual 訪問記として皆様を岐阜県中津川までお連れすることにしました!!

http://www.takamineguitars.co.jp/


Kiso Acousticの工房はこの高峰楽器製作所の中に創立されました。

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岐阜県中津川市坂下にある高峰楽器製作所です。Kiso Acousticの事務所も
同じ町内にあり車で約5分の距離です。Kiso Acoustic代表の原さん(今までは
原氏と表記していましたが今後は親しみを込めて原さんと書くことにしました)

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/005Kiso.jpg

ギターの材料となる木材のストックです。伐採してから最低でも4、5年置かれ
天然乾燥され、その後、強制乾燥、エアコン室でシーズニングが行われます。
社内にはエキゾチックウッド(木目や色が独特な材料)を含め、30近い樹種を
ストックしています。

この写真を見て私はこんな疑問を持ちました。

「保管している木材は積み重ねられていますが、上下の二枚は大気に接してい
 ますが途中に挟まれている板材は乾燥の仕方にムラで出てしまうのでしない
 でしょうか? 定期的にひっくり返したりするのでしょうか?」

するとなるほどな〜というこんな回答が…。

「入荷したての材料は、輸送上の都合で浅積み(板と板の間に隙間をあける)
 をしていないものもあります。この後ある程度厚みをそろえてから浅積み
 されます。写真は乾燥室ですが、材料の間に浅木が見えます。」

http://www.dynamicaudio.jp/file/090916/038.jpg

ほほ〜、更にこんな部屋もあったんですね〜、そして!!

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これを見て納得しました。通気性をちゃんと考えて保管しているんですね〜。

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原さんの基本設計をもとに弊社の3D-CADを用いてデザインと設計を行っています。
三次元データを部品として加工できるようマシニング用のプログラムを作成します。

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マシニング加工中のバッフル板。軸を傾斜させて加工する部分もあり時間が
かかります。バッフルはキャビネットの構造上、非常に高い精度の加工が必要
とされます。また私は意地悪な質問をしてみました。

「オーディオ製品のメタルワークのように加工精度として何分の一ミリ単位み
 たいな指標はありますか? 金属加工の分野では1/10、1/100などと説明され
 る時がありますが…」

すると…

「加工精度としては1/100単位でのこだわりはあります。とは言っても、無垢
 材の加工は難しいです。なるべく製品が安定するよう、材料選別、乾燥、
 作業環境には十分注意しています。」

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/009Kiso.jpg

加工が終わったバッフル板です。右側がバッフル板ですね。左側はボトムの
部分でネットワークのキャビネットの上にあり響きを出すエンクロージャーの
底の部分。この写真の左側のパーツで上の1/4くらいはエンクロージャーの上
の部分でバッフル板と直角に接するところの部品です。後でカットするものです。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/010Kiso.jpg

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レーザー加工機を使って、側面響板を正確にカットします。ブックマッチに
するため、響板はペア組され、一枚ずつ番号がふられています。

このレーザー加工機を使って作るのは側面響板だけでなく、他にも台座の部品、
フロントパネルの木取り加工に使用しています。

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力木に接着剤を塗って取り付けているところです。HB-1の接着材については、
タイトボンド使っています。これは楽器製作に良く使われます。
使用時の温度管理はもちろんですが、部分的に水分量を調整したりします。

力木を貼り付ける位置は全てのHB-1で同一箇所でマーキングがされています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/013Kiso.jpg

大変興味深い写真です。側面響板自体は平らですが、Rのついた力木を球面の
プレート上で接着する事で膨らみを持たせる事ができます。
クランプしたら1日置きます。

そして、ここで貴重な写真です。側面響板はわずかに膨らんでいるのですが、
これは側面響板の周辺を削って板厚を薄くして中心が盛り上がるようにして
いるのではなく、次の写真でお分かりのように微妙にRのついた力木を貼り付
けることによってデリケートな一枚板をほんのりとカーブさせているという
特殊な技術なんですね〜!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/090916/040.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/090916/041.jpg

ただし、力木のR加工だけだと、この微妙な膨らみを保つのは難しいというこ
とでした。側面響板の厚みは一定で、R加工された力木とRプレート上で接着
されることにより膨らみを持たせますが、胴部分の接着面が平らだと無理な力
がかかるため、専用機械にて胴側面をR加工(サンディング)してから響板を
接着し、形状を保つようにしているのです。この専用機械は後ほど紹介します。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/014Kiso.jpg

これも大変興味深い写真でした。このように一枚ずつ打音を聴きチューニング
されているということですね。この時にはどんなポイントに集中し、あるいは
打音の聴き方というのでしょうか? どんな結果になればOKなのでしょうか?

「写真は力木が貼られた状態ですが、打音は工程度に聞いてチェックするよう
 にしています。板材には個体差がある為、実際には前工程の側面響板の厚み
 を揃えた状態での選別が重要となってきます。

 バラツキが出ないよう選別については、私が耳でチェックして選び出します。
 選び出す音の基準については今までの試作経験から決定されたもので企業
 秘密です。」

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力木のはつり作業は一本一本、鑿、鉋、ヤスリで仕上ます。現在は原さんと
いうベテランの方が一手に引き受けている仕事だということでした。ブック
マッチした側面響板の左右、音のバランスに注意して仕上げていきます。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/660.html

さて、私の↑ブリーフニュースでは次のように説明している一節があります。
-----------------------------------------------------------------
原氏によると、この力木は細く、また中央部をこのように薄くして盛り上げて
いく形状が高音の響きに作用するという。逆に太く厚くしていくと低音方向に
向けての響きに影響してくるという。更に興味深いのは、この力木の厚みを
真ん中を薄くして両端を厚くすることで更に低い音を響かせるようになるという。
-----------------------------------------------------------------
これに補足するようなコメントがあったら頂ければと思います〜

「例えば、響かせたい部分には力木を薄く、抑えたい場合は厚くする…。
 というように、力木は振動モードを自由に調整することができます。
 響板の振動は縦(木目)方向に伝わりやすい為、設計上それも考慮しなけれ
 ばなりません。

 力木は適切な幅、長さ、形状、重さ、配置によって美しい響きをつくると
 ともに、薄い単板にしっかりとした強度を持たせる事ができます。」

なるほど〜ありがとうございました。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/016Kiso.jpg

力木は側面響板の補強および、振動の伝達を制御します。HB-1の側面響板には、
長さ・形状の異なった力木が適切に配置されています。
この力木の効果は小音量(ff)の比較で最もわかりやすく感じられるかと思います。

この写真でクローズアップされている力木は側面響板の一枚一枚で皆微妙に
違っている。でも、それは響きを均一にする調整で削った結果である。という
認識でいいですか?それとも側面響板の全てが見た目にも同一の力木でしょうか?
と尋ねてみました。すると…

「ブックマッチした側面響板の左右、音のバランスが合わない場合は削って
 調整します。」

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熱と蒸気で胴の単板を1枚ずつ曲げ加工します。迅速な作業を必要とし、単板
を曲げるには熟練の経験が必要とされます。曲げられた胴は冷まし型で数日
安定させます。

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胴とバッフル板を接着します。型を使って正確に接着されます。
隙間なく見事な技術ですね。本当に手間暇かかる工程に驚きますね!!

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バッフル板とロールしている一枚板をつなげるというか、023の写真で洗濯
バサミが付いていない部分ですが、バッフル板と直角に取り付けること、かつ
曲げられた一枚板を貼り付けるという場所ではけっこうな応力がかかると思い
ます。ライニングの間には、割れ止めが2本接着されます。
024の写真でわかりますでしょうか?

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/022Kiso.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/023Kiso.jpg

糊しろみたいなものですが、ライニングを接着します。
Rに沿うよう、スリットが入っています。ライニングは直線部分では必要とし
ません。009写真のバッフル板もライニングの糊しろの幅が同じになるように
テーパー加工してあります。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/024Kiso.jpg

この写真をじっくりと見て気がつく人は凄いです。私は発見できませんでした。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/025Kiso.jpg

木型の下に見えるのがターンテーブルで紙やすりが貼られています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/026Kiso.jpg

専用機でキャビネットのサイドをサンディングします。サイドに角度をつけな
がら、球面に加工しますが、このあと接着する側面響板に、わずかにハリを
もたせるようにしています。

026の写真ではキャビネットの中で白いものが回転しているように見えます。
この回転しているものが紙やすりということです。

写真024と025でキャビネットを固定しているのは完全な垂直を出すため、つまり
キャビネットと直角な位置関係を出すための押さえの役目をする木型にはめこ
んでいるという理解でいいのですね?と尋ねたのですが、実は違いました。
024の写真で気がつかなければいけないポイントがあったのですが、その答え
としてわざわざ図面を書いてくれました!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/090916/HB-1sanding.jpg
 ※イラスト追加 斜線部分が削られる部分です。

どうですか!? お分かりですか? HB-1を正面から見ればわかりますが、微妙な
テーパーがかけられて上の方が横幅が小さくなっているわけですが、その傾斜
も図面のようにターンテーブルがすり鉢状にR形状になっていて滑らかなカーブ
を描いているわけです!!いや〜、芸が細かい!!恐れ入りました!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/027Kiso.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/028Kiso.jpg

側面響板を接着します。側面響板の中心には負荷をかけないよう気をつけています。

万力のように挟み込む形での圧着ではなく、なぜこのような方法をとるのか?
まず、ロールさせた胴板は2.5ミリの厚みですから、万力のように強力な力を
かけたら割れてしまいますよね。

ですから、このように細長い竹で程良い圧力を加えているわけですね〜。
接着材は同じもので、クランプは1時間ほどということでした。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/029Kiso.jpg

外周をトリミングします。面取り作業になります。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/030Kiso.jpg

塗装前の磨きが完了したキャビネット。奥に見えるのはMapleモデルです。
このMapleは私が販売した第一号だと思います。本日大阪のVIPのお宅に無事に
納品されました!!こんなコメントを頂戴しています。(^^♪

「毎度で〜す(^^ゞ 只今、帰宅しました。
 本日、無事にHB-1が到着いたしました!!!
 今は取りあえず、開封して現物を確認した所ですが・・・
 いや~、自分でオーダーしたモノなのでバイアスかかりまくりですが、
 間違いなく、どのスピーカーより美しくてイケてると思います!!!!
 ありがとうございました

 嫁も「あら~小さくて可愛いし色も家のリビングにあうからイイね♪」って
 良い反応をしています◎はい、期待以上でした!!!日本の環境(マンション
 でのリビング兼用率)を考えるとマジで売れると思いますよ(笑)」

長いおつきあいで、私とはいつもこんな調子でやり取りしています(笑)
奥様の評判も上々ということで、この方は次はプリアンプをHB-1に合わせて
Criterionを狙っているので奥様対策が重要なんですね〜(^^ゞ
喜んで頂いて何よりでした〜(^^♪

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/031Kiso.jpg

原さんがキャビネットをチェックしています。後ろにはずらりとタカミネの
ギターが並んでいますが、ここは塗装室なんです。Kiso Acousticでは三つの
部屋を使っていて、今までの写真は組み立て室。これからの写真が塗装室で
もう一つはバーンインのために鳴らす部屋があるということでした。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/032Kiso.jpg

塗装乾燥中のキャビネット。フロントパネル接着面はマスキングされています。
この塗装工程には大変興味があります。バフがけ塗装の繰り返しは何回くらい
ですか?と尋ねたら…

「バッフィングについては、水研磨した後のキズがとれるまで行いますので
 何回とはいえませんが、塗装工程は下塗り→目止め→中塗り→上塗り→水研
 磨→バフがけの流れになります。ハワイアンコアモデルについては下塗りが
 セラックになります。台座は各モデル共通で艶消し塗装です。」

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ほほ〜、本当に輝いていますね〜!!(^^)

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バフ仕上げ(鏡面仕上げ)の終わったキャビネット。これからウッドホーンと
フロントパネルが接着されます。

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ウッドホーンはバッフル板とフロントパネルに挟みこまれるかたちで接着され
外れません。この為、トゥィータユニットはウーハー口から手をいれ、キャビ
ネットの中から取りつけを行っています。

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ウッドホーンはマシニング加工された後、職人の手により丁寧に磨きあげられます。
ウッドホーンはオイルフィニッシュ。オイルにもたくさんの種類がありますが
試作段階で音質、質感のあったものを選定して使用しています。なるほど〜。

このようにして職人さんたちが丹精込めて作り上げていきますが、どんなに
頑張っても月産20セットが限界だということでした。

ちなみに、一台のHB-1を作り上げるのに上記の工程を手作業でこなし、35日間
という日数をかけて作られていくのです。そして…

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/037Kiso.jpg

このシリアルナンバーが付けられていくのですが、ここに最終的な品質確認が
行われた後にサインをしているのが高峰楽器製作所の社員でもあり、また
Kiso Acousticのスタッフの一因でもある土井さんなのです。↓この方です。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/014Kiso.jpg

シリアルナンバーはマホガニーモデルは1000番〜、メイプルモデル2000番〜、
ハワイアンコアモデル3000番〜となっています。

http://www.dynamicaudio.jp/file/090910/036Kiso.jpg

こうして最終的に原さんがヴォイシングを行って音質をチェックし、更に48時間
のバーンインを行ってから出荷されていくわけです。

そして、HB-1の木目は1ペアずつ違うものなので、お求めになった方が手にする
HB-1は世界で一つだけの木目と仕上げによる作品と言えるものなのです!!

いかがだったでしょうか? 

岐阜県中津川市Kiso Acousticへのヴァーチャルトリップはお楽しみ頂けまし
たでしょうか!?

本日からはHB-1に対して8台目となるOCTAVEの管球式アンプで鳴らし始めまし
たが、これがまた素晴らしい!!近日中にレポート致しますが、益々HB-1が面白く
そして素晴らしい演奏を聴かせてくれています!!

今週末も、そして来週のシルバーウィークも、更に全国の皆様に、このように
して丹精込めて作られたHB-1を聴いて頂きたいとと願っています!!

そろそろ2,000時間を超えるというエージングが更に響きを豊かにしました!!
皆様のご来店をお待ちしております!!

ご精読ありがとうございました。


HAL's Hearing Report