《H.A.L.'s 訪問記》
No.0009 - 2008/6/25 茨城県潮来市 R.N 様-H.A.L.'s 訪問記 Vol.9「これほど愛されているJohn太とNEOのツーショットが結論でした!!」 冒頭から大変失礼なお話しの展開となるが、今回訪問させて頂いたR.N 様は 昭和15年のお生まれであられる。御年は9月で68歳という年齢ですが、これが また大変お元気でお若い!! 太平洋戦争の前年のお生まれであるということだが、当時の日本は正に動乱期 とも言える。それは欧米の外交圧力を象徴する中華民国・インドシナからの軍、 警察力の撤退や日独伊三国同盟の否定などの条件を含む、いわゆるハルノート が提示され、昭和16年の開戦へと地すべりのように時代が動いていった。 当時の東條内閣で閣僚時代を過ごした岸 信介が1956年に第56代内閣総理大臣 に就任し、次に1958年(昭和33年)4月25日に衆議院を解散。5月22日の総選挙 で勝利し、6月12日に第57代内閣総理大臣に就任し、第二次岸内閣が発足した。 R.N 様が成人された1960年には、この岸内閣の後継として所得倍増計画を提唱 する第一次池田内閣が発足し、翌1961年からの10年間に実質国民所得(国民総 生産)を26兆円に倍増させることを目標に掲げたが、その後日本経済は驚異的 に成長した。 戦後の復興は政治経済の両面で目覚ましい発展を遂げる中で、GNPを倍増させ るという意気盛んな、そして現代では思いもつかない発想と政策が大いに国民 に支持された当時、つまり昭和35年に第一回レコード大賞新人賞を受賞した 橋幸夫の名曲「潮来笠」の出だしの歌詞がこれ…。 「潮来の伊太郎 ちょっと見なれば 薄情そうな 渡り鳥〜」 大変唐突ながらR.N 様との会話の中でこんな歌詞を思い出してしまいました。 当時の私の自宅にはラジオしかなく、コロンビアトップライトという漫才師が 大いにうけて夕方の歌謡番組の司会をやっていたのをうっすらと覚えています。 また両親が昭和の懐メロ番組をテレビで見ていると、必ずと言っていいほど 「潮来笠」をやっていました。近年の流行歌にはとんと疎く、カラオケは大の 苦手としている私が不思議と幼少のころの流行歌を今でも歌えるのだから思わ ず笑ってしまう。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ほぼ40数年ぶりに、この「潮来笠」を思い出させてくれたのがR.N 様との談笑 のひと時からでした。昭和の高度成長期に生まれた私がこの歌で聞き覚えた “潮来”という町に初めてやってきたのです。 2008年6月某日、R.N 様のご住所をwebの地図検索に入力すると、なるほど〜。 当日は早起きしてJR成田線から鹿島線へと乗り継いで行ったが、潮来の一つ 手前の駅“十二橋”に停車した時の風景は初めてのものでした。 見渡す限りの景観は水郷地帯というにふさわしい遠望が360度展開し、利根川 と霞ヶ浦からの支流が形成する水田地帯の広がりに目を奪われてしまった。 私も生まれて初めて降り立った潮来駅。そこでは観光客が一人しかいない駅員 の改札をもどかしそうに待ちながら、6月に開催されている水郷潮来あやめ まつりに向かっていくところでした。 http://www.city.itako.ibaraki.jp/cgi-bin/kanrisystem/kaview.cgi?no=103 webで調べた地図であらかじめ承知していたものの、駅前の風景では建物より も圧倒的に空の大きさが目立ってしまうものでした。駅から徒歩で3分くらい というご案内を頂いていたのですが、あまりにも目印がなく一本先の曲がり角 まで行ってしまい、これは違うぞ…と引き返して手前の角を曲がって行くと…。 何と50メートル程先で大きく手を振っているR.N 様の姿があるではないですか。 恐縮してしまいました。<m(__)m> いそいそと近づいていくと、またもやお出迎えが…。ありゃ〜これはこれは!! http://www.dynamicaudio.jp/file/080620/johnta01.jpg R.N 様宅の愛犬、John太くんをご紹介します。人懐っこいJohn太くんが生垣の 中から顔を出し、私が歩いて行くと走り寄ってきて違うところから顔を出し とびっきりの笑顔を出迎えてくれました。犬種はラブラドール・レトリーバー だと思いますが、三歳三か月のオスというJohn太くんは今回のもう一つの主役 という感じになってきました。 私がこの業界に入った頃に開業されたという地元に古くからある内科医院を 経営され、奥様も小児科で同じ診療所を立ち上げてお二人で頑張ってこられた ということでした。その医院はご自宅の目の前にあり、三年前に新築された ご自宅とは目と鼻の先。そのご自宅は上記のJohn太くんの背景に写っている ように都心ではありえないような大きなお庭で、恐らくは500坪くらいあるの ではと思われる庭を走り回っていました。 R.N 様にJohn太くんの散歩は毎日ですか? とお訪ねすると週一回くらいという ことで笑っておられましたが、なるほど…、これだけ広い庭を毎日駆け回って いたらストレスも溜まらないでしょう。いいですね〜(^^ゞ 「午前中の診療を早めに終わらせて待ってましたよ〜!!」 と、おっしゃるR.N 様にご案内を頂き、先ずは玄関へ。そして、もう顔馴染み の奥様にご挨拶申し上げて広ーいリビングルームへと…。 これまでの訪問では大体の滞在時間は二時間くらいなのですが、始めに言って おきますが、今回は何と四時間もお邪魔してしまいました。しかも、そのうち の半分はリビングでR.N 様ご夫妻と世間話が弾んでしまいました(^^ゞ こんなことは初めてです。^_^; 私がお訪ねしたことをご夫妻で喜んで頂き歓迎して頂き、本当に私も久しぶり に楽しいひと時を過ごすことができました。R.N 様もオーディオだけでなく、 私が訪問させて頂いたということ、そのものに喜んで頂いた様子であり、話し 相手ができたということでしょうか!? 人情に厚いお付き合いというのは私も 大変うれしいものです。ありがとうございました。<m(__)m> 私がリビングルームに入っていくと既にJohn太くんも上がっていて、テーブル の脚に結んだリード(首輪をつないでいるヒモ、ロープというもの)をピンと 引っ張って私の方に向かって来ようとしています。私もワンちゃんは好きなの で頭を撫でてあげようと手を伸ばすと、もうそれはそれは興奮して黙って頭を 撫でさせてはくれません。私の腕と顔をベロベロと舐められてしまいました。 とにかく愛嬌たっぷりのJohn太くんです!!いやはや参りました(^^ゞ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 思えばR.N 様とのお付き合いも1999年の3月にB&W N801をお求め頂いた事から 始まりました。下記に紹介している東京都練馬区 T.I 様と同じストーリーが あったということです。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0005.html そして、奇遇にも千葉県松戸市 S.Y 様と同じようにN801からNEOへという アップグレードをたどられたお一人でした。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0008.html リビングでJohn太くんの歓迎を受けてから、奥様より冷たい茶菓でおもてなし を頂き、先ずはそのまま一時間、まったく自然に世間話に花が咲いてしまいま した。こういうことは珍しいです。その中で、三年前に新築されたお住まいに 関して参考になることが…。 http://www.mitsubishi-home.com/ この三菱ホームが設計施工したということで、敷地も広ければ建坪も大きい。 リビング・ダイニングルームだけで目測で40畳はあろうかと思いますが、 エアロテックという空調機構が大変素晴らしく、冷暖房の効率と住み心地が 予想以上に快適であるというお話でした。 二人のご子息がいらっしゃいますが、ご長男もドクターであり今では診療所の 跡取りとして世代交代をされていらっしゃるという。その奥様もドクターです。 ご長男には一男一女のお子様がいらっしゃいますが、リビングにはもっと小さ い子供が座りそうな椅子もありました。 うかがったところでは二男もドクターであり都内の某大学病院に勤務されて いらっしゃるということ。その奥様もドクターであり、双子の女の子が誕生 されたという。そのお孫さんたちが訪ねてきた時のためでしょう、かわいい 椅子がちゃんと用意してあるのですから。 お二人のご子息と各々の奥様と四人のお孫さんが一堂に写っている写真を拝見 し、R.N 様ご夫妻がうれしそうに指さしながら写真の説明をして下さるもので 本当にお幸せそうなご家族という感じでした。あっ、John太くんもそうですね、 家族の一員でした(^^ゞ 四人のお孫さんと息子さんご夫婦、そしてJohn太くんも一緒に広い庭で走り 回って遊んでいる風景など私も思わず想像してしまい微笑んでしまいました。 私から見ても、うらやましいくらいの理想的な老後というものですね。 普段はご夫婦二人だけですが、そこに存在感を発揮しているのがJohn太くんです!! http://www.dynamicaudio.jp/file/080620/johnta02.jpg どうです? John太くんとオーディオシステム。どっちが主役かな〜(^^ゞ 四ヶ月間訓練所に行っていたというJohn太くんはご夫妻の言葉をきちんと理解 しているようで、大変お行儀のよいワンちゃんでした。可愛い〜です〜(^^ゞ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、本当にご夫妻との世間話はしごく自然に話題はあちらこちらへと飛びま すが、「おや!? 到着してからもう一時間も経ってしまった〜」ということで そろそろオーディオの話題へとということでお部屋にご案内頂きました。 リスニングルームは広い玄関から右手にすぐのドアを開けたところ。 先ず入って驚くのは天井の高さでした。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/644.jpg 設計施工は三菱ホームということでしたが、この部屋は別の音響建築の設計士 の方にやってもらったということで、基本的には石井式の吸音面と反射面の 比率を応用したもの。天井の高さは3.7メートルということで、上記の明かり 取りのハメ殺しの窓に向かう両側面の壁面にもこのようなデザインが施されて います。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/645.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/618.jpg そして、スピーカーNEOとの対比はこんな感じです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/619.jpg 私が訪問する前にはR.N 様ご本人と第三者によってひと通りのセッティングが なされていたものですが、それを正面から見るとこのようになっていました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/609.jpg 天井の高さと比較するとこんな感じです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/616.jpg ラックにはProject H.A.L.C. H.C/3Bを二台使用して頂いています。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/614.jpg さて、それではここでシンプルなR.N 様のシステム構成をご紹介しましょう。 ◆H.A.L.'s 訪問記-Vol.9 茨城県潮来市 R.N 様システム構成◆ ……………………………………………………………………………… Marantz SA-1 (税別\550,000.) http://www.marantz.jp/ce/products/past_products/audio/sa1/index.html with Project H.A.L.C. H.C/3B (税込み販売価格 一台\660,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/index.html ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ PAD mizunosei Rev.B RCA/1.0m ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… MarkLevinson No.26L (税別\1,250,000.) http://www.harman-japan.co.jp/enjoy/brand/marklev_01.html with Project H.A.L.C. H.C/3B (税込み販売価格 一台\660,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/index.html ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ PAD Istaru PLASMA XLR/1.0m ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… JEFFROWLAND MODEL 12 (税別\2,600,000.) http://www.jeffrowland.com/ClassicAmps.htm http://www.ohbashoji.co.jp/support/discontinued/file/model12-10.pdf with Project H.A.L.C. H.C/3B (税込み販売価格 一台\660,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/index.html ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ STEALTH Audio Hybrid MLT Speaker Cable H.A.L.'s Special Version 2.0m(税別 \355,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/278.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… MOSQUITO NEO (税別 \4,800,000.) http://www.mosquito-groupe.com/ http://www.dynamicaudio.jp/file/050413/oto-no-hosomichi_neo.pdf http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.html ……………………………………………………………………………… お仕事の他には遊びらしい遊びは何もせず、オーディオと音楽だけが楽しみと いうR.N 様ですが、お孫さんたちとのひと時やJohn太くんのおちゃめな悪戯で 明るい笑い声が絶えないということでしたが、オーディオに関しては日頃から ご自身で色々といじって調整するというよりは、もっぱら聴くだけというスタ イルの接し方であり、音質を変化させることの喜びよりは音楽を聴くという 時間の価値観に重きを置いておられるということでした。 しかし、いずれのコンポーネントもご自身で試聴されて選んできたものばかり であり、それら高価なシステムがどのような音質で鳴っているのか? この領域 には音響設計の専門家も立ち入ることはできず、果たしてこれでいいのか?と いう思いはあれど確信が持てる状態、安心できる音質、という納得が今まで 中々できなかったという思いがあったようです。 さあ、それではいよいよ診察開始です。 しかし、本物のドクターを目の前にしていつものように往診などと表現するの もちょっと照れくさいですが、いよいよ私の診断を始めることにしました。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 最近は色々なお宅にお伺いして最初にこの一曲を聴かせて頂くのが快感!? というか大変楽しみになってきました。最も聴きなれたオーケストラがどの ように展開するのか? 今回のR.N 様のシステムでは聴き始めから一発で特徴がつかめました。 これには対処療法が必要なようです。 先ず各楽器の分離感が乏しいということ。面で展開して欲しい弦楽器群は 左右のスピーカーの軸上に集合してしまい、混然としてありさまでした。 初見で早くも改善すべき症状が見受けられ、この対処療法は比較的簡単だ、 というイメージが出来てきました。しかし、一曲だけでは言いきれません。 聴診器を当てただけではなく、血圧や脈拍もまだまだチェックポイントは ありますので早速次の曲を…。 ■“Basia”「 The Best Remixes 」CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX) http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/Basia/ http://www.basiaweb.com/ http://members.tripod.com/~Basiafan/moreimages.html#remixes1 冒頭の賑やかなパーカッションの乱舞、この質感は鋭すぎずにまあまあのもの。 そして注目すべきドラムの連打。このドラムでは低域の量感と質感が耳の位置 によって変化してくるという今までの経験からも上半身を動かしてチェック。 さすがに良く設計されたお部屋だけに大きな変化はないものの、部屋の中央に 向かって少しずつ動いていくと量感における変化がやはり見えてきます。 しかし、この場合にはスピーカーとの距離感をとった方が音像として輪郭表現 が鮮明になってくるという現象がありましたが、今回はそうではない。この点 もどのような処方箋を作るべきか、その対処療法のシナリオが見えてくる変化 が感じられました。これは後ほど再度の説明をしましょう。 ■MICHAEL BUBLE/1.「Fever」WPCR-11777 http://wmg.jp/artist/michaelbuble/profile.html 天井が高いということは低域の質感には大変有利なことです。この曲でも冒頭 のペースとドラムの再現性でかなり違いが出るものですが、こと低域に関して は大きな問題はなく、むしろヴォーカルのエコー感と口許のセパレーションが 明確ではないという現象が私の注目を引きました。 これはオーケストラにおける現象と同一のもので、前曲のスタジオワークとは 違ってアコースティックな楽音を含む割合が多い演奏だけに音像と余韻感の 対比においても輪郭表現の不鮮明さが目立ってくるものでした。 しかし、ここでも私が感じた問題点はかなりの確率で解消可能なものという 期待感が逆に見え始め、R.N 様には現状の問題点のご説明よりも調整後に ご説明しようということで私は黙々と聴き続けていきました。 ■DIANA KRALL 「LOVE SCENES」11.My Love Is(MVCI-24004) http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/diana/disco.html 指を鳴らす音が広がる空間はフォーカスの見え方で変化します。それも直ちに 症状として発見しました。ウッドベースの音質もしかり、DIANA KRALLの口許 の鮮明さでも問題点ははっきり見えてきました。この解説も調整後に述べます。 ■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ http://www.universal-music.co.jp/classics/refresh/muse/muse.html この曲のチェックポイントも複数ありますが、冒頭のコーラスの解像度。 ゆったり響くドラムの質感、バックのオーケストラがフォルテで発する余韻感。 なるほど〜、という症状の確認作業が更に続きます。とにかく、いつもの課題 曲を全部聴いてからということで記憶に焼き付けていきます。 ■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団 指揮: ワレリー・ゲルギエフ CD PHCP-11132 http://www.universal-music.co.jp/classics/gergiev/discography.htm ここで意図的にオーケストラの曲に戻します。これは1.15.16トラックという 象徴的な三曲を聴いていきますが、スタジオ録音でチェックしたポイントが ホール録音でどのように変化していくのか、調整後に確認するためにあえて オーケストラでの確認です。 ■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール ここでの選曲も同様です。弦楽器の重厚なレイヤーによる合奏の解像度はどう なるのか、ステージ後方からのパーカッションにもスポットを当てて後ほどの 変化で確認するためです。 ■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」 http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html さあ、ラストはこの曲を聴きました。イントロのギターとヴァイオリンの 両者にオーバーラップしている音像表現を解きほぐすことができるかどうか。 ヴォーカルの口許が見えてくることで立体感に結びつくのか? センターポジションを譲って頂き、傍らで聴いているR.N 様には何も具体的な ことを告げずに課題曲を一通り聴き続けました。 さあ、これからどうするのか!? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- R.N 様のシステムがどのような状態と音質で演奏されているのか? それは今までの訪問記で述べてきた様々なケースを思い出しても、私は課題曲 を聴くうちに比較的簡単に、大体頭の中で対処方法が想定出来ていました。 R.N 様に「さて、それでは始めます。動かしていいですね」とお断りして… 先ず私はラックそのものを後方の壁面に寄せていきました。そして… 変更前 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/609.jpg ↓ ↓ ↓ 変更後 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/630.jpg ラックを後方に下げると同時に左右スピーカーの間隔をこのように広げました。 CDラックも他に移動し、更に絨毯の向きを90度変更してスピーカーの足元の床 まで覆うようにしました。 「音圧は距離の二乗に反比例して減衰する」という大原則はルームチューニング の取り組みでの基本項目です。つまり音源であるスピーカーの近くに吸音要素 を接近させた方が効果が大きくなります。変更前と比較してみて下さい。 この状態を横から見ると次のようになります。 変更前 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/622.jpg ↓ ↓ ↓ 変更後 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/625.jpg ラックの前後関係とスピーカーの前後の変化もお分かり頂けると思います。 そして、せっかくある壁面の吸音材に良い意味で一次反射音を吸収してもらい、 その代り壁面に近づけることができるのでスピーカーの左右間隔を広げること にも壁面反射の影響を小さくすることができるというものでした。 そのためにスピーカーの前方に吸音材が位置するように前後関係を調整して みました。ここでも絨毯の使い方でスピーカーの足元まで吸音面を接近させて いるというこがお分かり頂けると思います。 次に天井との対比でも位置関係をご覧ください。 変更前 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/616.jpg ↓ ↓ ↓ 変更後 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/633.jpg 斜めから見てもスピーカーの間隔の違いと前後関係、そして絨毯が吸音材とし てスピーカーの直近で有効面積が大きくなっているのがお分かりでしょうか。 結果からすれば、たったこれだけ!? と思われるかもしれませんが、NEOとはこうあるべきという音質の基準を知り つくしている私が求めるもの、そして、それは過去の投資を有効活用すること ということで一切のお金をかけずに製品本来のパフォーマンスを引き出すと いうことが大切なことなのです。 上記の写真には写っていませんが、もうひとつ大きな変更点がありました。 R.N 様がこれまでリクライニングチェアーを置いていた場所から約1メートル 程、椅子の位置を前に移動して部屋の中心に近づけて置き直しました。 音源であるスピーカーと同時にリスニングポイントも変更しました。 お部屋全体の伝送周波数特性と残響時間は適切な状態にありますが、しかし リスニングポイントの特定は測定用マイクロホンだけでは判断できません。 以前はリクライニングチェアーの後方の壁面との距離は座った時の耳の位置で 約1.5メートルくらいでしたが、それを2.5メートル程に離すことによって二つ の効果を同時に得ることができました。これも後述致します。 さあ、今回の処方箋がどのような効果をもたらしたのか、同じ課題曲を聴き直 しながら、そこに表れた変化をR.N 様に説明していきました。ただし、記憶を さかのぼるように曲順は逆にして、変更前に最後に聴いた曲からとします。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」 まっ先に注目したのはイントロのギターとヴァイオリンの分離感でした。 次に、ヴォーカルの口許が見えてくるかどうか、というポイント。これらの リプレースメントが音質をどのように変えてくれたのか!? さあ、スタート!! 「おー!! これですよこれ!! してやったり!! 」 変更前は左右のNEOのフロントバッフルの平面をつなぎ合わせたようにして スピーカーが存在する距離感において大きなスクリーンがあったようです。 そのスクリーンにギターやヴァイオリンの楽音がプロジェクターで投射されて いたのでしょう。各楽音ともに等距離であり平面的な音場感だったということ。 それが、変更後はイントロのギターにしてもヴァイオリンにしても、見事に 中空に浮かぶような音像表現に変わっています!! この両者の音像の輪郭がお互いにオーバーラップしていたようで、その重なり あった状態が遠近感を消失させていたのでしょう。各楽音の音像が分離してく れたことで遠近感と奥行き感が出てきました。 上記の変更ではスピーカーを後方の壁面に近づけたわけです。普通だったら スピーカーの後方に空間があった方が奥行き感で出ると思われるでしょうが、 その前に左右方向の水平軸で分解能が得られていないとだめだということです。 左右スピーカーが接近し過ぎていると、いくらスピーカーの後ろに空間を設け ても奥行き感は出てこない。各楽音の分離感が優先されるという良い見本です。 そして、左右スピーカーの直前に両サイドの壁面にある吸音材を配置させる ことで最も音源に近い壁面の一次反射音を軽減できたことも定位感の向上に つながっているようです。それはヴォーカルが入ってきた時にことさら感じ られました。 「あー!! いいですね〜、浮かんでいるようですよヴォーカルが!!」 そうです。今までのようにスクリーンに映写されたイメージではなく、ちあき なおみが発した声が自分の後方にエコー感を残すように消えていく過程が見え るようになってきたことで口許の輪郭も冴え、ぽっかりと浮かんでいるという 状態で歌い始めました!! そうです、これこそNEOの魅力というものです!! ■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール 導入部の分厚い弦楽器群のアルコの合奏が始まりました。これは別モノか!? 「いや〜、ここまで行ってくれれば何も問題なしです!!」 変更後に初めてかけたオーケストラ。この弦楽器だけの重厚なレイヤーが先程 とはまったく違い、左右スピーカーの中間に浮かび上がってきたという感じ。 やはりオーケストラにおいてもステージ感はスクリーンに映写された平面での 描写して出来ていなかった。そして、弦楽器群はNEOという音源の位置に固執 するかのように付きまとい、左右スピーカーの中間に面として定位するという 印象がなかったものでした。それが変更後は左側のNEOの軸上ではなく、やや 内側からセンターに向けて音源であるスピーカーユニットが存在しない空間に きっちりと整然として面として浮かんでいるのです!! これでなくてはいけません。 ファランドールでは管楽器や打楽器も加わり、壮大な演奏がホールエコーを はらんで広がっていきます。タンバリンの打音が鮮明になり奥行き感が以前に ましてすーっと展開するのか気持ちいい。木管楽器のタンギングが小気味よく 弦楽器の裏側に展開し、それが点から空間へとエコー感を広げるが、先ほどに 比べて色の濃淡が音量の大小に同期して変化する。ピッコロの鋭い音がすーと 空間に消えていく様は各々の楽器との対比においてホールのスケール感を見事 に描き出している。 前曲のスタジオ録音で感じた再生音の遠近法という意味ではスピーカー後方の 空間が小さくなって壁に接近させたわけだが、同様にオーケストラの個々の パートが分離感を発揮するようになって空間表現が大きく感じられる。 これはスピーカーの間隔を広げたということと、両サイドの壁面にスピーカー が接近したという状況のバランスの向上に他ならない。壁に接近させた時に 吸音面をうまく利用できたということが楽音の解像度に貢献したということだ。 ■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団 指揮: ワレリー・ゲルギエフ CD PHCP-11132 さて、この序曲でも改善効果は直ちに感じられた。弦楽器の抑えめの演奏が 発する余韻感が心地よくNEOの中間から立ち上り、木管楽器のソロパートに くっきりとしたエッジの輪郭が備わり、ホールエコーの滞空時間が延長される。 15トラックの中国の踊りではファゴットの軽妙な演奏がNEOの後方に展開し、 低い音階の楽器まで奥行き感を増加させていることに気が付く。フルートの ソロパートの定位感と輪郭表現は俄然鮮明になり、弦楽器のピッチカートが 発するエコー感の中にくっきりと浮かぶ対比に思わず私はにんまりしてしまった。 16トラックのトレパークでは先ほどまでの混沌としたNEOの再生音と比較して、 音量も同じなのに力感が増しているので弦楽器のフォルテが実に歯切れよく、 またタンバリンの連打と大太鼓の分厚い余韻が対称的な響きを繰り返す。 NEOの4個のウーファーは決して大口径とは言えないが、打音の発生から消滅 までを正確にトレースしているイメージが先ほどまでとは全然違う。えっ!! 低域の変化もこれだけあるということか? これはスピーカーのリプレースメントの影響だけではないかもしれないぞ!! 次の選曲ではその辺を再確認しなくては!! ■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ 冒頭のコーラスの解像度。スピーカーの間隔というのは単純そうでも重要な ポイントだ。このコーラスを聴き始めた時にも改めて実感された。スクリーン に写された楽音という例えをしてきたが、フィリッパの歌声がどこから生まれ、 どのように配置され、わずかにエコー感の重複を感じながらも分離している のかということがつぶさに観察できるようになった。 このように中域の解像度が上がったということはNEOの足元までカバーするよ うになった絨毯の吸音効果もあるようだ。部屋全体の伝送特性の素直さがあり、 また周波数の高低によって残響時間のムラもないという環境においては、音源 から発した音波が室内全体に二次・三次の反射音も含めての総合的な特性とい うことで理解できるものだ。 当然、二次・三次の反射音というのは一次反射音のリバウンドであり、最初の 一発目の反射音の質感を反映してくるもの。その最初の反射音が最も多く発生 するのは当然スピーカー前方の床面である。そして、写真でもわかるように R.N 様のお部屋の床はがっちりしたフローリングで足音などはまったく響かな い上質の構造となっていた。このような硬質な床面では当然一次反射も発生し、 また強度が高い材質の床であればほぼ全帯域での反射があり得る。 変更前とその後のNEOの前面の床を見れば絨毯の役割ということが間違いなく 音質的な改善をもたらしているものであり、ヴォーカルのフォーカスを鮮明に してくれるという変化を私は最初から内心で微笑みながら聴いていた。 さて、先ほど気になったオーケストラでの低域に代わって、この曲ではドラム の重厚な二連打がNEOのセンターから鳴り響く。その質感が音像が集約された ことから重量感を増していることが先ず違い、そして打音の繰り返しごとに 私は上半身を動かして低域だけの観察をしてみた。 「おー!! なるほど〜、そういうことも起こっていたか!!」 これはリスニングポイントの変更における現象だった。以前はリクライニング チェアーの後方の壁面との距離は座った時の耳の位置で約1.5メートルくらい でしたが、それを2.5メートル程に離すことによって低域の量感を適正にして 解像度まで向上していることを確認した。 スピーカーのリプレースメントだけでなく、リスニングポイントをどうしたら 良いのかということを正確に詰めていくだけで同じスピーカーとは思えないよ うな質感に豹変するのだから、この基本は決しておろそかにはできない。 これをスタジオ録音で再確認していこう!! ■DIANA KRALL 「LOVE SCENES」11.My Love Is(MVCI-24004) 指を鳴らした時のフォーカスがピシッと決まっています!!これはいいですね〜。 次に注目しているウッドベースですが!? 「おおっと!!NEOのセンターにぽっかりとベースが浮かび見えてきました!!」 左右スピーカーの間隔を狭めた方がセンター定位の楽音はくっきりするのか? それはケースパスケースでしょう。R.N 様のお部屋のように伝送周波数特性や 残響時間が考慮された環境において、スピーカーのセンターという音源が存在 しない中空にどのような音像の輪郭を描くのか? 室内がもっとデッドで残響が 少ない環境であれば、スピーカーの間隔を詰めた方が音像がしっかりしてくる という変化の方向性はあり得ます。 しかし、今回のように適切な残響時間が設定されている室内ではスピーカーが 放射した音波が空間で合成されて音像を結ぶには音源位置が離れていた方が 鮮明な輪郭を示すものなのです。このベースはいいですね〜。 そしてヴォーカル!! 期待感がありましたがズバリ的中しました!! 上記の変更後の写真をプリントアウトしたとしたら、NEOのセンターのど真ん 中に赤いマジックインキでDIANA KRALLの口許はこのくらいですよ〜と丸い線 を書き込みできるような鮮明さでヴォーカルのフォーカスが見えてきました!! 更に私は上半身を前後に動かしてみましたが、やはり椅子の後ろの方に移動 していくと低域の質感が変化してきます。いっそのこと立ち上がって、という ことで椅子の背もたれの位置、つまり変更前の位置に戻ってみるとあからさま に低域の音像が大きくなっていることに気が付きます。 リクライニングチェアーの後方の壁面から1メートル前に移動する。言い換え れば部屋の中央に近づいていくことで低域の輪郭表現がこのように変化するの ですから、ウッドベースという連続する楽音、そして演奏パターンによって ピッチカートの瞬間の小さい音像での鋭さと開放弦でのダイナミックな響き とで、音像の縮小拡大という変化を忠実に聴かせてくれるようになりました。 そうですとも、これでなくてはNEOの魅力が発揮されたということにならない でしょう!! これには一切費用がかかっていないのがポイントです!! ■MICHAEL BUBLE/1.「Fever」WPCR-11777 これは前曲のクリスチャン・マクプライドのノンエコーのウッドベースとは 録音スタイルの違うペースが冒頭で聴けますが、これが出始めた時に私は思わ ず内心でまたもやニンマリしてしまいました。 NEOの低域の特徴として床を這うようなどろどろした低域をNEOは決して出しま せん。これはオーケストラの演奏でもメリットとして感じられるところですが、 中・高域の楽音が定位する高さに伴って低域の楽音も床面から1メートル近く の高さで低域の楽音も定位します。 この曲でもそれが最初から発揮されますが、変更前に比べて高さだけではなく 音像のサイズが縮小し輪郭が鮮明に見えるようになったことから、ベースの 音色の濃厚な中心部分と拡散していくに従って濃淡が変化しているエコー成分 との対比がはっきりと聴き分けられるようになっていました。 ドラムの打音も同様で定位感に高さがあり、NEOのミッドレンジあたりの床か ら1メートル程度の高さに打音が整然と並び、左右にパンしながら連打される 様子を観察することができるようになっています。変更前には打音とひとつ ひとつが接近し過ぎでオーバーラップしていましたから、これは気持ちがいい 変化でした。さて、ヴォーカルは… 「おー!!くっきりですねー!!さっきよりエコー感が広く長く聴こえます!!」 解像度の向上は音像の中心点から同心円状に拡散していくエコー感の再現性を 引き立たせてくれます。きれいな余韻感と大きな音場感を引き出すためには 音像をしっかり描くということが大切なポイントです。写真と同じですね〜。 スタジオ録音での確認でも大きな違いが見えてきました。では、音量を上げて あの曲を聴いてみましょう!! ■“Basia”「 The Best Remixes 」CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX) サンプリング音源によるドラムの連打はある意味では無機的な正確さで繰り 返されるものですが、その人工的に管理された打音のひとつひとつにチェック ポイントがあります。 前述にもありましたが、スピーカーの間隔を詰めた方が音像が濃厚になるとい うケースは多々ありますが、それはルームアコースティックの条件によって 逆効果になる場合もあります。今回のようにスピーカーの間隔を広げ、更に 後方の壁面に近づけるということは通常であれば部屋のコーナーに発生する 低音の吹きだまりのような低域だけの残響時間の延長を発生することもある。 簡単に言えばスピーカー後方の壁に近づけるということ、部屋のコーナーに 向けて寄せていくということは反射面が三次元として接近してくるので低域の 反射効率が良くなって低音の量感が増大し同時に音像も膨らんでくるものです。 それを応用して低音の物足りなさを補うようなテクニックもあるのですが、 慎重に設計されたルームアコースティックにおいてはどうなるのか? 私も興味深くこの曲の変化を聴くことにしました。さて…!? 「あら〜、ドラムの打音が切れてます!!」 スピーカー本体は反射面である壁面に接近させたというのに、この曲のドラム はなんとなんと…、一打一打がきっちりと区切りが付けられたようにテンション が引き締まり、変更前よりも立ち上がりとブレーキが利くようになっています。 つまり、良質な設計のお部屋では音源位置の変化で低域の伝送特性が極端に 変化しないということなのでしょう。そして、それよりもスピーカーの間隔に よってセンターの空間にゆとりを持たせることで楽音の解像度を上げてあげる ということがこの曲でも確認されました。 しかし、意地悪な私は更にちょっとした実験をやってみました。いかに素晴ら しい設計の部屋と言えども、コーナー部では必ず反射波の影響はあるものです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/619.jpg ↑このような部屋のコーナーでは三角形に張り出した装飾部があります。 http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/625.jpg 実際のNEOとの位置関係は↑こちらの方がわかりやすいと思います。 ダウンライトが埋め込まれたコーナー部が張り出した位置ですが、ここまで スピーカーを押し込んでしまうとだめです。私はR.N 様にも実演してお教え しましたが、自分で声を出して話しながらコーナー部の張り出しの下に頭が 入っていくようにすると定在波が発生し、自分が変調されて響くのがわかり ます。変更後での位置関係がぎりぎりのところでしょう。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 さあ、各種のディスクでチェックポイントを確認し、変更後の音質に納得し 高いレベルで質的向上を確認しましたが、今回もこれだけでは終わりません!! 全くコストをかけずに、R.N 様のシステムが本来のパフォーマンスを発揮し 始めたことから更に一歩踏み込んで、R.N 様のお好きなクラシック音楽が より良くなるためにとひと工夫することにしました。 最後のオーケストラを聴く前に私はR.N 様にある実験に立ち会って頂くことに しました。さて、下記の写真をよ〜く観察して下さい。お分かりですか(^^ゞ http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/640.jpg ラックとリクライニングチェアーとスピーカーのリプレースメントをやり直し たことでコンポーネント本来の音質が得られるようになりましたが、私は更に オーケストラで…特に弦楽器の質感と音場感を1ランクアップさせようと小さ なパーツを仕込んでみました。答えは↓これです!! http://www.dynamicaudio.jp/file/080616/638.jpg そうです、前回の松戸市S.Y 様と同じようにNEOに仰角を付けてみる工夫です。 ここで使用したのはthe J1 projectのハイブリッドベースBA35HB/4P¥13,860 (税込価格)です。http://www.naspec.co.jp/j1/icp01.html この写真のようにBA35HBの本来スパイクの先端を受けるくぼみにNEOのボール がぴったりとはまってくれます。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.html 上記の随筆の48ページから述べているNEO TAILと同じ原理です。 私は先ずR.N 様にハイブリッドベースを使用する前にマーラーを聴いて頂き、 そしてBA35HBを使用してから同じ音量で聴き直して頂きました。すると… 「へえ〜、なんだかこう…、包み込まれるような感じがいいですね〜」 と、好感触の反応を頂きました。では、私も…ということでお席を譲って頂き 表れた変化を私も確認しました。 「いいですね〜、これが二時間前に聴いたNEOとは思えない音ですねー!!」 スタジオ録音の各種CDが確認してきた変化が見事にオーケストラに反映されて います。弦楽器の集団はほぐれ、個々の演奏者の弓が一本ずつ微妙な傾きの 違いを見せながら完全に同期して波打つようにアルコを繰り返しているような ビジュアルがイメージされます。 ヴァイオリンの微細な表現力が向上し、弦楽器群の中に個の存在があることで リアルさが増し、コントラバスの重厚さに切れ込みの良さが加わり、管楽器の 楽音も鮮明さが増している。 それらの遠近感がつい先ほどよりも引き立っているのでステージの奥行き感を 無理なく聴き手に伝えてくれる。そして何よりも弦楽器群の質感に滑らかさが 加わったことでオーケストラの鑑賞に心地よさをもたらしてくれた。これだ!! 約二時間の試聴と調整だったが、私の訪問前とその後の比較における集大成と して、このマーラーの音質にはR.N 様が望まれたリスニングルームの品位と コンポーネントの価値観が数段階高まってくれたのではないかと自負できる レベルを確認させて頂きました。 John太くんの表情から変更前はこんな感じ↓だったでしょうか? http://www.dynamicaudio.jp/file/080620/johnta04.jpg そして、調整後の音質を聴いたJohn太くんは↓こんな表情に!! http://www.dynamicaudio.jp/file/080620/johnta03.jpg おちゃめですね〜(^^ゞ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- R.N 様の希望を汲み入れて設計されたリスニングルームはさすがに音響的な 環境としては素晴らしいものがありました。大きすぎず小さくもなく、上品な インテリアと開放感のある明るい天井の風景、そして伝送周波数特性に起伏な く自然な余韻感として響かせ消滅させていくルームアコースティックの素晴ら しさ。 これまでの努力とご苦労の末に築き上げたR.N 様の生涯のご褒美として、音楽 を聴くための贅沢をいかんなく発揮させる素晴らしいお部屋でした。しかし… その素晴らしい環境と高品位なオーディオシステムが同居したらば直ちに満足 できる音質になるのか、というとそうではなかったようです。 いや、使い手の感性が求める要求の度合ということになるのでしょうが、器と 中身という両者には各々のマッチングをきちっと調合させるノウハウが必要だ ということなのでしょう。私も今回は大変に良い勉強になりました。 このSound checkで色々なお宅に伺っていますが、私が感じたことをその場で すべて解説出来ているかというと決してそのようなことはありません。 というよりもできないでしょう。^_^; 後日、このような訪問記にさせて頂き、これをお読み頂くことが診断書として 私が色々と調整や実験をやったことの意味を改めてご確認頂けるということか と思っています。R.N 様のお役に立てれば何よりでした。そして… R.N 様の暮らしぶりを拝見して都会とは違うゆったりした時間がそこには流れ ているのだな〜という思いが実感されました。実にうらやましいものです!! 何より証拠に、ご来店頂いた時のR.N 様よりも何倍もお元気でした。(^^ゞ やはり東京よりはマイホームでくつろぐR.N 様が本来のご自身なのでしょう。 東関東自動車道の潮来インターまで奥様に車でお送り頂き、高速バスの東京駅 直行で一時間と少しで行けるという。私の自宅から電車で行くよりも随分早い。 東京での日々で見慣れている秒針は見掛けよりも早く進んでいるのでは…、 と思いながら帰路に就いた私の胸中にはR.N 様ご夫妻のお人柄と人情に触れた 温かい記憶、John太くんの愛らしい瞳。まるで大作映画を見終わった後のよう な心地よい感動と余韻が残っていました。本当にありがとうございました。 |