《HAL's Hearing Report》


No.0240 - 2005/12/7

東京都町田市 KKU 様より


Vol.35「AvantgardeはH.A.L.で生き返った!!」

前回の投稿をご紹介致します。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0223.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0212.html

      「第六回エフコン(11/25開催)の感想」

川又様

 当日は大変お世話になりありがとうございました。以下に感想を述べます。

「Avantgarde META PRIMOをしっとり鳴らしたいという試み!!」という川又さんの
キャッチフレーズに引かれて参加したが、半信半疑であった。

というのも、今までオ−ディオショウなどで聞かされた音に期待を裏切られて来た
からである。 

しかし、“エフコン”は期待を満たしてくれた。 

HALに収容されたAvantgardeは、川又医師の治療により生命を取り戻したので
ある。以下は、あるオーディオマニアのホーンスピーカーへの思い入れを込めた
試聴記である。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

団塊以前の世代のオーディオマニアにとって、ホーンスピーカーは理想のスピー
カーとして刷り込まれている。1970年から80年前半ごろのオーディオ誌にはホーン
システムの自作記事が連載されており、それを試しては失敗を繰り返し、でも何時
かは完全なシステムをと 、遠くに仰ぎ見る憧れの星でもあった。

その後、オーディオ界は音場再現型のスピーカーが主流となり、スピーカーユニッ
トのタイムアラインメンを揃えて、正確な音像の再現をなによりも重要視するよう
になった。ホーンスピーカーはJBLなどに健在ではあるが、いわゆるハイエンド
で話題になることは少なくなっていった。

そのような時期にAvantgardeはデビューした。

四年位前からアメリカのオーディオ誌にも広告を見かけたが、昨年日本にも上陸し
た。有楽町のインターナショナルオーディオショウのティアックのブースに半日座
り込んで、昨年と今年の2回聴きこんだ。

そして、落胆した。

朗々とした音が飛び出してくるが、音像がはっきりしない。
そのためか、バランスがちぐはぐで、演奏家たちの全体像がわからない。
オーケストラの弦楽器群の浮遊音などが再現されない。
独奏楽器の音は、PA装置を通してホールに朗々と響かせているような音である。
最初の期待が大き過ぎたこともあるが、納得のいかない印象を持った。

そこへ、“エフコン”に登場とのニュースがはいった。

「META PRIMOをどこかで聴いたことのある方は、当時の記憶を一時お忘れ下さい。
 私がMETA PRIMOの更なる可能性を引き出す音質に仕上げておきます!!」

という川又さんの言葉に背中を押されて参加した。
そして、その魅力の一部を堪能することが出来た。

まず、音がバランスよくまとまって聞こえた。 
あたりまえのことであるが、Avantgardeはこれがむつかしいようだ。 
音像も見えてきた。 

といっても、川又スクールの優等生のような明確な音像ではないが、そんな些細な
ことなど気にするな、とでも言っているような元気のいい筋肉質の朗々とした音が
出る。 

演奏家の情念が直接こちらに訴えてくるようである。 
ポーカルがすばらしい。 
ベースも音程がしっかりとして明快だ。 

未熟な若い俳優が派手な演技で、渋い名演技の先輩をわき役にみせてしまったよう
な一幕であった。この辺の機微は川又ディレクターの音量の設定などの演出の影響
もあると思われる。

この日のAvantgardeの音が気にかかり、翌々日の日曜日にCDを持参して一人で
試聴させてもらったのが、以下の試聴記である。

まず、デッカのCDデモンストレーションから、チョン・キョンファの演奏する
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を鳴らす。 
オケも独奏楽器も明快に再現される。 

カデンツァでの独奏のエコーもよく拡がるが、天井に反射してホールの大きさを
実感させるようなところまでは聞こえない。この辺は川又スクールの優等生に一歩
譲るだろうと思われる。

ケルテスが三十歳のときウィーンフィルを指揮したドヴォルザークの「新世界」を
聴く。第一楽章の序奏のあとのティンパニィーのフォルテの連打に度肝を抜かれる。

ケルテスのきびきびとした指揮に鋭敏に反応するウィーンフィルの鮮やかさが
聞き手の身体に直接飛び込んで来て、否応なしに納得させられる。この録音は
1961年であるが、多くの「新世界」の演奏の中でいまだにトップ5にランクされる
わけがよくわかる。

しかし、小うるさい評論家は、Avantgardeの鳴らす明快な音を評して、これは
ウィーンフィルの音ではないと言うかもしれない。 

Avantgardeは、このような批判に対して明快な主張を持っているように思われる。
それは、再生装置の目的は、演奏家が演奏という行為を通じて表現しようとしてい
る情念を効果的に聞き手に伝達することであって、オーケストラや楽器の音色の違
いを鳴らしわけるのは副次的な問題である、と主張しているように聞こえる。

このCDを、「タンノイ」で再生すれば、ウィーンフィルの音が出るかもしれないが、
炸裂するティンパニーの音やオーケストラの機敏でシャープな動きの再生は、
おしとやかにバランスのとれた音になるだろう。

ボーカルを聴く。 

パヴァロッティの「誰も寝てはならぬ」(プッチーニ)とアルバレスの「妙なる調
和」(プッチーニ)をかける。新旧二人のテノールだか録音時は両名共に40歳代。
朗々たるテノールの響きは、音楽を聴くときの生理的快感を身体で感じさせてくれ
る。寝てはおられなくなる。(^^ゞ 

ここで気になったことは、このスピーカーは、声を、明るく元気に若々しく再生す
るが、暗い諦観のような陰影のある表現は苦手ではないだろうかということである。

ピアノの再生に移る。 

アシュケナージの弾くショパンの「雨だれ」、左手の低弦のフォルテが豊かな響き
を伴ってしっかりとした音で再生される。

川又さんの調整の極意が底辺を支えていることを実感する。 
次に、ユンディーリーの弾くショパン「スケルツォ2番」を聴く。 

低弦の再生は完全であったが、右手の高音部の連打音にメタリックな附帯音が聞こ
えてきた。これは、高音ホーンの共鳴音ではないかと思われる。
レゾナンスチップでも貼り付けたくなったが、特定の楽器にはこのままの方が魅力
的になることもありそうだ。

例えば、ジャズの再生での、シンバル、打楽器のブラッシング、サックスの
ビヤッーという附帯音などは、ゾクッとくるような魅力的な音が出るのではないか
と想像する。

誰か試してみませんか!!

Avantgardeは、ホーンのデッドニングに無頓着というか、関心がないようだが、
ホーン鳴きによる効果も計算のうちに入っているのだろうか。

弦楽器の再生を聴く。 

Avantgardeが演奏家の激しい情念をどのように再生するかを聴くためで、ソナス
ファベールのような美音を再生出来るとは期待していない。

ハーゲン弦楽四重奏団の弾くベートーベンの弦楽四重奏作品133の大フーガを聴く。
期待したとおりの、叩きつけるような激しい弦楽器の音が再生される。

これが作曲者や演奏家の意図したものと納得する。続けて、ヴェンゲーロフの弾く
イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第二番をかける。 
空に舞い上がるようなヴァイオリンの鋭くきらめく音が再生される。 

美音ではないが、ナマを近くで聴く音である。
 
きつい弦楽器の音にいたたまれなくなった(?)ためか後部座席の女性が急いで
退席した。 

「すみません」と心の中で詫びながら、先を続ける。

今井信子がヴィオラで演奏したバッハの無伴奏チェロ組曲を聴く。

ヴィオラがチェロの大きさの音像になってしまうのではと心配するが、音像の明確
な表示はAvantgardeの不得意というか、あまり気にしていない部分で、ヴィオラ
のサイズまでは分からなかった。 

それよりも、演奏に伴う楽器のきしみ音や演奏者の呼吸音などが聞こえてこないの
である。

Avantgardeも、エコーなどの小レベルの音を明確に再生する。 

しかし、それよりもさらに微小な、演奏時に発生する微細なレベルの楽器の附帯音
や演奏者の身構える空気感、そしてその場の臨場感などは聞こえてこない。

これについてもAvantgardeには、明快な主張があるのではないかと推察される。
つまり、Avantgardeの再生音は、「弦楽奏者の呼吸音なとが聞こえたからといっ
て、それが音楽に感動することに何の効果があるのか」と声高に主張しているよう
な音である。 

それに対してオーディオマニアは「そのような音も聞こえることで、音楽への感動
がさらに増してくるのです」と反論したいのだが、相手の勢いに気押されして声も
小さくなる。

Avantgardeは、入力された信号を忠実に再生することを目標とするよりもさらに
明快な主張を持った製品で、それは音楽の感動を伝えることを目的としており、
その目的に集中している。 

特性を揃え繊細な音も再生するが満足な音を出すには高出力のアンプを要求する
音場再生型のスピーカーへのアンチテーゼとして、小出力のアンプでも十分に音楽
の感動を運んでくれるスピーカーである。 

アメリカのオーディオ誌に、このスピーカーを直熱三極管シングルのアンプでドラ
イブして目の覚めるようなすばらしさであったとの体験談があったことを思い出す。

Avantgardeの再生音が自分の感性に会う人にとっては、ほかのスピーカーなどは
論外となるほどの魅力がある。

このような体験をさせてくれるHAL川又さんに感謝しながら、駄文を終わりにしま
す。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

川又より

KKU様 本当にありがとうございました。私も恐縮してしまうような熱の入った
文章であり、まったく頭が下がります<m(__)m>

さすがだな〜、と考えてみましたら《ESOTERIC 論文コンクール応募作品 Vol.11》
にて既に素晴らしい文章を頂戴したことがありました。ありがとうございました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0128.html
ぜひ、こちらもご覧下さい。

そして音質に敏感なKKU様は既に“Pケーブル”“PI”“PD”の導入を決断されまし
た。やはり語る言葉の裏に皆様の感性と努力、そして情熱が見えてくるものですね。
皆様のオーディオの歴史とハルズサークルが連動していることが大変うれしく思わ
れます。KKU様これからもどうぞよろしくお願いいたします。<m(__)m>


HAL's Hearing Report