美声をもたらすテクノロジー 

2月某日、DEVIALETのからやってきたのはSegal氏の他に次のお二人でした。
社長であり開発責任者のPIERRE-EMMANUEL-CALMEL、セールス責任者のMANUELDE LA FUENTEのご両名。
ちなみにCALMEL氏は38歳で、FUENTE氏は36歳、更にSegal氏は34歳ということ。
お若いのに大そう頭の良い人なんだな〜、と感心しつつCALMEL氏は初来日とのことで、
FUENTE氏は昨年末にSegal氏と一緒にサンプルを持ってこられたので二回目の顔合わせとなりました。

CALMEL氏は開発者であり、その話しを私が聞き質問するための通訳はSegal氏が担当するのだが、 Segal氏はオーディオと電子工学の専門家ではないので、CALMEL氏の話しをどこまで忠実に伝えられるかの自信はないものの、 彼らと打ち合わせした中でD-Premierのテクノロジーを何とか日本語で説明すること、しかも簡単にという役目は私が担うことになってしまいました。 大役です(^^ゞ

では、ちょっと小さいですが、先ずは内部の写真をご覧下さい。
この中に同社の申請したパテントが五つも搭載されているということでした。
この小さなボディーにフォノイコライザー、D/Aコンバーター、プリアンプとパワーアンプという四つの機能が凝縮されているのですから驚きです!!

D-Premierのサイズは400x400x44.5mm、重量は何と6.9 kgという信じがたいほどに軽量かつコンパクトでありながら、 実行出力は全高調波歪:THD+N=0.001 %、総合S/N比130dB、更に出力インピーダンス 0,001オームという超高レベルのスペックを維持しつつ 何と2オームから8オームまで負荷において240W/chというパワーを叩き出します!!
 この強力なパワーの源は何か? という事ですが、上記内部写真の左上にあるブラックボックスを拡大した写真が次のものです。
これをご覧になればお分かりになる方も多いことでしょう。

他社のアンプでも見受けられますが、電源のサインカープがピークに達した時にだけ瞬間的に流れる電流を電源周波数を高めることで 効率化させて取り出すという原理が"Power Factor Correction"の原理ですが、何と総合出力600Wという電源モジュールを自社設計したのがこれです。

本体内部のこのモジュールの右側にフィルターブロックと比較的小容量のキャパシターブロックが見受けられますが、 これらを高速反応させるためのレイアウトと斬新な電源モジュールそのものの開発が功を奏したものと言えるでしょう。

では次に、確かに出力は大きいが品位はどうなのかという最も重要な要素を、DEVIALETが4年間の歳月をかけて開発したのが最新テクノロジー ADH (AnalogDigital Hybrid) というユニークな増幅段。何がハイブリッドなのか?
 小さくて出力の大きなアンプはデジタルアンプが当たり前なのか?いや、違います!!
D-Premierのシグナルパスは見事にアナログアンプとしての特徴を留めているのです。
簡単に述べればD-Premierには二つのクラスAアンプと八つのクラスDアンプの両方が搭載されています。
先ず、その心臓部とも言えるクラスAアンプの基板を撮影したものがこれです。

D-Premierはデジタル・アナログ入力を同等に受け入れますが、推奨しているのはデジタル入力ということでした。
入力されたデジタル信号を忠実にアナログ変換するためにDEVIALETが選んだデバイスがT.I.のPCM 1792です。
それを拡大したのがこの写真ですが、日本ではBBと略してバーブラウンという名称の方が通りがいいかも入れません。
でも、実質的にはテキサス・インストゥルメンツの経営傘下にあるために同社ではT.Iと表記しているもの。
ここでアナログ変換され、クラスAで伝送されていく方向が写真で右から左方向へというシグナルパスを形成しています。

その流れの末端に位置するパワートランジスターを拡大したのがこの左の写真。
左右で4個あり、プッシュプル動作をさせて更に左側への出力端子へと向かいます。
この間わずか20ミリ程度の最短距離であり、このクラスAアンプの忠実度がD-Premierの心臓部であることは間違いない。
この小さな増幅段ではミリセカンド単位という短時間であれば何と5アンペアを出力できるという見かけによらず強力なのだが、 到底これだけで240Wのパワーは不可能というもの。

実は、写真を取り損ねてしまったのですが、T.I.のPCM 1792のチップの右側のブロックには不思議なことにA/D変換するステージが用意されているのです。 何でまた、せっかくD/A変換したものをデジタル信号に戻すのか?
高精度なクラスAアンプを通過するシグナルパスからのアナログ信号を分岐させ、 それを再度デジタル化するというのはクラスAアンプの支配力を生かしたまま、8個のクラスDアンプにデジタル入力を与えるためだったのです。

そのクラスDアンプというのがこの写真。
これはメーカー資料の一部の画像なのですが、この基板が格納されているモジュールのカバーを思い切って取り外してもらいました。
完全に中身が見えるという写真が下の大きな写真です。 この写真の上部に片チャンネル4個で8系統のデジタルアンプが並んでいます。
ここにクラスAアンプのアナログ伝送経路からわざわざデジタル変換した信号を入力し、大きなパワーを生み出して出力する先は何と!!ここがポイント!!
上記のクラスAアンプの出力ステージと同じ所にパラレルで接続され、出力端子へ流れていくというもの。
忠実な波形伝送として純A級動作がアンプには理想的ということを前提に、 その波形と完璧な相似形の電力をスピーカーに送り込むという役目をクラスDアンプが担っているのです。
 だったら、最初からD-Premierに入力されたデジタル信号をわざわざクラスAアンプでいったんアナログ変換するという面倒をせずに、 直接デジタルアンプのここに接続してやればいいではないか?
はい、ごもっともな考え方なのですが、そうしなかったところがCALMEL氏の着想の素晴らしいところです。
 つまり、「クラスAアンプの支配力」と前述しましたが、実はクラスAとDのアンプは高度なインテリジェンスによって結合している、 もしくはシンクロしているという表現が似つかわしいかもしれません!!
この最新技術のすべてを私が述べることなど困難ですが、概念として簡単に解かりやすいように日本語で説明すると 次のようなイメージになるかと思います。

クラスAアンプで伝送される波形とユーザーが求めるボリュームによって出力の大小が決定されますが、 クラスAアンプに付随するDSPが波形観測を常に行い、 求めるパワーの大きさに応じてクラスDアンプに対して必要な電力供給を 極めて短時間のうちに要求するというコントローラーの役目を果たしているらしいのです。
 クラスAアンプではもっぱら電圧領域での忠実な波形伝送、それを電力として送り出すための電流領域での仕事をクラスDアンプが担当し、 その両者が同一のシグナルパスに合流してスピーカーへと向かいます。

残念ながら現在は私がCALMEL氏に要請したブロックダイヤグラムが届いていないので言葉での説明となりましたが、 クラスAアンプからクラスDアンプに対してフィードバックループのように信号経路を表す手書きの図面を書いてくれた事で私にも概要が理解できました。

アナログ入力の場合には上記のプロセスでD/A変換が省略されます。

CALMEL氏から正式な資料が届きましたら続報としてお知らせしたいと思いますが、 現在のところは試聴しての音質の素晴らしさで結果オーライということで、拙い説明をさせて頂きました。
皆様にもイメージとしてとらえて頂ければと思いますが、PWMアンプのようにアナログ信号をデジタル化するアンプではないという事が特徴かと思いました。
論より証拠でぜひ実物をお聴き下さい。
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