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H.A.L.担当 川又利明


2011年8月10日
No.850 「ショックを受けて楽しみながらシステムと環境を分析できる川又推薦のテストCDとは!!」
 
最近はこのように↓高音質ディスクに注目して皆様に話題提供しています。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/847.html

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/842.html

これら数万円というプライスのディスクはテストCDというよりも、芸術作品と
して音楽を鑑賞して頂くためのものと考えていますが、三千円以下という価格
ながら皆様の愛器とリスニング環境の実態を楽しみながら分析する事が出来る
高音質CDをご紹介しましょう。

えー!!ホントに!!と思わず叫んでしまう面白いテストが色々と出来る他、私が
唸る程の高音質録音によって再生システムの潜在能力を推し量ることも出来る
というレアなディスクです。これは私の営業実績向上ということよりも皆様の
音質向上にお役に立てばと言うノウハウ提供の情報発信とお考え下さい。

では、先ず最初にディスクそのものをご紹介しましょう。

http://www.sts-digital.nl/index2.html

先ず上記URLを開いて頂き左側のコンテンツのHomeの下、二番めの「CD-SACD」
にポインターを置いて下さい。開いたメニューから「MW coding process」を
選択して頂くと出てきます!!上から二番めのこれです。

■STS Digital 611189, various music. 

A fantastic test CD to determend the right listening position and 
loudspeaker placement. Great sound due to the MW coding process. 

おや、このジャケット写真のスピーカーは最近川又が推薦して話題になって
いるMORDANT-SHORT Performance6じゃないか!! はい、その通りです!!

でも、MORDANT-SHORTが全てを企画・制作したわけではなく、同社の40周年
記念盤としてSTS DigitalがMORDANT-SHORT Performance6をモチーフとして
企画されたもの。

当然MORDANT-SHORTの認定によりPerformance6の魅力を更に引き出すための
録音内容であり、世界中のハイエンドスピーカーを多数聴いて来た私が、この
ディスクを聴き内容を分析したら…これはぜひとも皆様にお薦めしなくてはと
行動を起こすことにしたものです!!

このディスクの聴き方を私がレクチャー致しますので、騙されたと思って最後
まで聴いてみて下さい。俗にいうテストCDは特定の発信音や人工的な効果音など
が入っていて、それなりの使い方をすれば役に立ちますが、聴いて楽しいか?
というと中々そのようなディスクにはお目にかかれません。

このディスクは人間の耳で音楽を聴くことでルームアコースティックの特徴、
システムの個性、スピーカーのリプレースメントなどの基本項目などが自然に
身に付くように理解される、いや!!現状の音響的コンディションというものを
再発見できるものなのです!!だから、これを聴いたらショックを受けるかも!?
という非常にハイレベルなテストディスクと言えます。

皆様の愛器が、皆様のリスニング環境が果たしてどんな状況なのか? それを
人工的なテスト信号では分からないアコースティックな音楽を楽しみながら
聴いているうちに次第に実感されてくるでしょう。

しかし、ただ黙って最初から聴き流すだけではいけません!!
これからトラックごとに、このディスクの使い方!?を説明致しますので、さあ、
CDプレーヤーのリモコン片手にリスニングポジションに座って下さい。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

先ず、私が使用したシステム構成は当然MORDANT-SHORTに敬意を表して同社の
Performance6 & ESOTERIC I-03 & Black Ravioliというものです。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/835.html

各トラックごとに試聴室とデスクを往復しながら、ここを聴いて欲しいという
ポイントを解説していきましょう。

先ず、最初の1〜5トラックまでは共通の音源が使われています。古典的傑作と
直訳するとちょっとオーバーですが、これらのトラックでは同じ音源を収録
しています。オーボエ、クラリネット、ファゴット、リコーダー、それに太鼓
という古典的な木管楽器のアンサンブル。

私はここでSTS Digitalのプロフェッショナルを感じました。ルームアコース
ティックをチェックするのに重厚な低音や輝くような高音楽器を、これ見よが
しに採用しなかった事です。

生演奏でもさほどの大音量にならないもの、低域成分を含みすぎるとルーム
アコースティックの特徴をつかむ前に低音が洪水のように溢れすぎてしまうも
のであり、恐らくは200Hz以下の低域はあまり含んでいないだろうファゴット
と太鼓の低音が誰にでも分かりやすい違いを聴かせてくれるからです。

高域もトゥイーターだけが張り切って鳴り響く楽音ではなく、木管楽器という
シンプルであり音階の高低で質感の変化が少なく連続性があり、響きと余韻の
成分を知らぬうちにリスナーが聴かされていて違いがわかって来るという趣向
を凝らしているのが分かります。いいですね〜、彼らはプロですね!!

さて、私はESOTERIC I-03のボリュームを“50”というところで聴いています。
この音量はご家庭ではちょっと大きめでしょうが、収録されている音楽そのも
のが生演奏したらこのくらいだろうという想定であり、決して騒々しい音楽で
はないので皆様も音量は大きめでスタートして下さい。

1トラックでたったの48秒なのですが、最初から皆様は目(耳)から鱗が落ちる
驚きの経験をなさるはずです。では、スタート!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■1. Sound Left (classic masterpiece   0.48)

何とも愛嬌のある軽妙な木管楽器のアンサンブルがスタートしましたね〜。
この時にオーボエの高い音階での響き、鮮やかさ、太鼓のリズムと同時に打音
の質感をよ〜く記憶して下さい。モノラル信号として1台のスピーカーで聴く
演奏は各楽器が一か所から聴こえてくるので、分離感よろしく各楽器のパート
を聴き分けるのは最初は難しいかもしれません。まあ、とりあえずは48秒間と
いう演奏を聴き流して下さい。

■2. Sound Right (classic masterpiece   0.48)

さあ、48秒後に最初のショッキングな出来事が起こります!!録音としては同じ
音源でありデータであるはずの演奏がポンと右チャンネルに移動します。当然
全く同じ音で聴こえなければいけないはずですが、さあ、どうでしたか!?

理論的には全く同じ音質で聴こえなければならないはずが、ころりと音質が
変化してしまうということが起こりましたか?

http://www.dynamicaudio.jp/file/110626/msr6.03.jpg

私がここで聴いている状況とは↑こんな風景の位置関係です。QRDを多用して
十分にルームチューニングしているここでも左右の音質差はかなりありました。

ここでアドバイスしたいのは、48秒のトラックを全て聴いてから比較するので
はなく、一度通しで聴いた後はリモコンで1トラックと2トラックを数秒間ずつ
頻繁に切り替えて比較してみる事です。

上記のようにセッティングをしている私のところでは、左チャンネルでは高域
の残響は長く、輝くような響きでのびのびしたオーボエの音でした。太鼓の音
もタンタンと歯切れよく、自由空間においてあるというイメージ通りです。

ところが、右チャンネルはQRDのDIGI-WAVEをセッティングしてある右側壁面に
近いせいか、先ず太鼓の音は重量感が出てダンダンという音色になり、逆に
オーボエの高い音階は吸音面に近いせいで遠くに感じられ、質感としては少し
暗くなったように感じられます。右側に壁面があるせいで起こる低域の増量と
DIGI-WAVEがあるせいで起こる高域の減衰という現象が立ちどころに分かります。

皆様のシステムで左右チャンネルの音質差がないとしたら大変良好な環境か、
または不適切な残響が多すぎて解像度のない再生音になっているかどちらかと
いうことになります。私はこの左右の音質差に関しては予想していても実際の
楽音としてここまでリアルに聴かされるとショックでした。

サラウンド機能のあるAVアンプなどで、5.1chのレベルを合わせる時に各々の
スピーカーからピンクノイズを出して調整するので、スピーカーの位置関係で
ノイズの聴こえ方がかなり違うということを経験している人は多いと思います。

でも、それで音楽を聴いてみるとどうなんだ、どんな影響があるんだと思うで
しょうが、このディスクの冒頭2トラックの比較だけで十分に思い知ることが
出来るでしょう。

こんなに違うのか!とショックを受けられるかもしれませんが、これが音楽で
体感する伝送周波数特性の違いということになります。さて、次です…。

■3. Sound Mono (classic masterpiece   0.48)

1チャンネルずつ聴くと大きな違いがある楽音を今度はセンター定位のモノラル
再生として聴かせてくれます。リモコンでトラック1-2-3と数秒間隔で切り替え
て試してみて下さい。

左右別々の音質だったものがセンターで合成されるとこうなります。そして、
ここでチェックして欲しいのはオーボエの高い音階の定位はきちんとセンター
にありますか? 左右のどちらか片寄っていませんか?
また太鼓の低音、ファゴットの低音は同様に左右に片寄っていませんか?

左右チャンネル別々に伝送周波数特性の違いを体験した後は、更に残響特性と
いうポイントもこのトラックで推測出来るようになります。壁面に近い側の
スピーカーが放射した低音は壁面の反射、あるいはアルミサッシやガラス面の
反射などで低域の残響時間が長くなると定位感もずれが生じる場合があります。

今までは楽音の音色や質感に注目していた左右別々の再生音が、今度はセンター
で合成された時、その定位する位置関係でのチェックで第二のショックを受け
る方がいるかもしれません。

さあ、皆様はトラック1-2-3の繰り返しを何回やるでしょうか?私はここでも
10回以上繰り返してチェックしてしまいました。基本的にはオーケストラの
低音階の楽器群は右方向に定位している場合が多いので、まずまずの演出効果
として左右の音質差を納得し、トラック3での定位感のずれは敏感なPerformance6
でもなかったので問題なしという事で安心したものでした。さて、次です…

■4. Sound Stereo (classic masterpiece   0.48)

トラック1-2-3の繰り返しからステレオ録音のトラック4へ!!この変化は先ず
音楽を聴くという楽しさ、ステレオフォニックの立体感、当たり前と思って
普通に聴いてきた2chステレオの面白さが先ず感じられます。

センター定位のモノラルで推し量ることが出来る観察ポイントは述べましたが、
ステレオ化したら他の項目がチェック出来るのですから面白い。それは左右ch
スピーカーの中間に定位する楽音のフォーカスイメージの鮮明さという事です。

音源位置がひとつというモノラルではセンター定位にこだわっての観察ですが、
今度はポーンと木管楽器の個々が分離して左右に定位します。モノラルでは
楽器個々が集団となっていて演奏の各パートの描写が今一つですが、今度は
楽音一つずつに視点を当てることが出来ます。

左からリコーダー、オーボエ、太鼓、ファゴット、クラリネットという順番に
定位されているようです。左右スピーカーのトゥイーター辺りから、木管楽器
のバルブの開閉音がカタカタと聴こえていますか? それも情報量の一つです。

このトラックでは音像が分離しているかどうか、定位感が音階の高低に伴って
動くことはないか、楽音が中空に浮かんでいる立体感はあるか、などシンプルな
録音ですが、チェックできる項目は多いものです。

今度はトラック1-2-3-4の繰り返しで、モノラルで聴いた楽音の音色や質感に
変化がないかどうか、音場感の広がりはどうか、など楽しく比較出来ます!!

■5. Sound Out Of Phase (classic masterpiece   0.48)

左右逆相のトラックです。太鼓は右側に片寄り、オーボエの残響は左側だけに
片寄り、頭を少し動かすだけで違和感が十分に感じられて当然。左右同相との
違いが大きく感じられれば先ずはOK。そして配線の初歩的なチェックもここで。

このトラックは1-2-3-4-5まで続ける必要はありませんので、定位感が片寄り
残響が左右スピーカーの外側に向かっていくということが確認出来れば良いです。
さて、次が面白い!!

■6. Sound Left Transient Attack And Reverberation Time (Gun shot  00.5)

■7. Sound Right Transient Attack And Reverberation Time (Gun shot  00.5)

わずか5秒間だけのトラックです。ピストルの発射音に続くリヴァーヴの長さ
をチェックするわけですが、これがまたまた面白い!!低域はあまり含まれて
いないのでボリュームは下げなくても大丈夫でしょう。というよりも逆に
ボリュームを上げて聴いて頂いても良いでしょう。

「パーン!!」というパルシブな発射音に続く余韻が反対側のチャンネルにまで
きちんと広がっていくかどうか、環境によるリヴァーヴの左右差がないかどうか
を楽しくチェック出来ます。これもリモコンでトラック6を繰り返し三回くらい
聴いてからトラック7にすると良く分かります。

ここではトラック6で左チャンネルから発射された音はセンターくらいで消滅
してしまうのですが、トラック7で右側での発射音は左方向に向かって残響が
長く長く伸びて広がっていきます。

これはトラック1と2の違いで発見したように左チャンネルの自由空間に近い
環境の方が残響成分の滞空時間が長く、右側ではQRDのDIGI-WAVEの吸音効果の
影響で残響時間が短くなっているわけです。今では冷静にその違いを聴き分け
することが出来るようになりました。

私なんぞはリモコンで10回以上「パーン!!」「パーン!!」と繰り返しましたが、
皆様の部屋ではどうでしょうか? 左右チャンネルのリヴァーヴが短い方に合わ
せて、残響時間の長い方に吸音材を設置するなどのチューニングをすべきか
どうか、このピストルの「パーン!!」が「パーーーン!!」になるかどうかで
判断出来るわけです。

http://www.escart.jp/ ←残響時間が不揃いな場合にはこちらを使いましょう。

さて、まだまだ面白くなってきます!! 次です…

■8. Utrechtsch Studenten Concert (Roel vun Oosten  4.40)

「coherently stereo」とクレジットされたトラックでオーケストラものです。
でも、4分40秒の録音なのに、ここでも注目点が色々と含まれているものです。

最初の導入部は木管楽器のソロパートがオーボエ、フルート、クラリネットと
位置を変えながらつながりを見せて演奏されます。さあ、木管楽器のひとつ
ずつの楽音で皆様のシステムは空間提示をしてくれていますか?

音像は細身に聴こえるがホールエコーが感じられないという方はチェックです。
50秒程すると弦楽二部が入ってきます。これがまたきれいな弦楽器で、この
ディスクのこだわりの音質が実感されてくるところ。いいですね〜!!

2分くらいから他の弦楽三部が加わってきて重厚なハーモニーが聴こえてきます。
すると2分40秒くらいから大太鼓の低音がズシーンと響きわたります。

この低域に再現性に関してはPerformance6 & ESOTERIC I-03 & Black Ravioli
という構成が特筆ものの追随性を見せてくれます。重量感はあるが膨らまない、
大太鼓の打音は瞬間的にホールのエアボリュームを連想させる雄大さであり、
不要な残響を演出しないのはスピーカーの特徴と言えるでしょう。

次第に盛り上がってくるオーケストラが「coherently stereo」を象徴しています。
定位感と密度感、今までチェックしてきたポイントが楽音個々の音像をどれ
だけしっかりと見せてくれるのか、弦楽器と管楽器の色分けを自然にこなし、
実に多数の楽器が重なり合う演奏で解像度が維持されているのかどうか。

そして、この短いながらもドラマチックな曲は3分40秒くらいから最初の木管
だけの演奏にもどり静かにエンディングとなります。個々の楽器と大編成での
演奏のダイナミックな展開を鳴らし分けしているかどうか。

時間経過にともなってスケール感が変化せず、どのパートも自身が発した余韻
を空間に浮かべることが出来なかったら要チェックという素晴らしいトラック。
この曲など短いながらもオーディオシステムの店頭実演には厳しくもふさわしい
録音内容だと思います。これだけでもお薦めです。しかし、次は更に面白い!!

■9. Hot Club De Frank (Traditional  4.18)

「heights in stereo」とクレジットされた曲です。大編成オーケストラとは
対照的にギター中心の小編成でのスタジオ録音のトラックです。

導入部はセンターより右寄りの空間からアコースティックギターのソロが登場。
このギターの質感が実に切れ味よく余韻もともない素晴らしい質感で25秒程の
演奏が続きます。

この25秒くらいから一斉に左寄りにギターがもう一人、センターに重厚な
ウッドベースが登場します。この展開はちょっと感動的なアレンジでした。
そして、注目すべきは左右のギターはスピーカーの軸上の定位ではなくセンター
との中間にあるという事と、センターのウッドベースの真上にドラムが表れます。

しかし、このドラムはハワイアン調のメロディーをサポートするようにブラシ
ワークだけで波の音をイメージさせるように優しくドラムヘッドをさすります。

「heights in stereo」とは何を意味するのか? 私はブラシワークのサラサラと
いう音がトゥイーターの再生音での位置関係を示すのかと思っていましたが
実はそうでないことに気が付きました。

二人のギターとドラムのブラシ音、そしてあろうことかウッドベースさえも
Performance6の上半身と言える高さに横一列に並んでいるのです。低域の
楽器だけが床に響きを垂れ流しているような状況ではなく、他の楽器と演奏
空間を一体化したように垂直方向での定位感を同じレベルに保っていること。

このような特徴はPerformance6で以前から発見していましたが、定位感が
上下に分離しない再現性というのは重要なのだと思います。だからこそ、
前のトラックでのオーケストラではコントラバスや大太鼓の響きが他の
パート同様に切れ味よく、また濁りもなく展開する秘訣だと思いました。

高い音階は上の方向に伸びていくのは予想できる事。しかし大切なのは低域の
楽音をウーファーだけ独自にひねり出しているということなしに、空間表現の
一体感というものをリスナーに提供してくれるかどうかという事かと思います。

そして、3分30秒ほどしてドラムがズシンとブラシでヒットする低音が実に
鮮明でダイナミックに出現し、再度テクニック抜群のギターが締めくくりで
4分18秒の曲が見事な余韻に包まれて消えていく。いいですね〜

■10. Volkswagen Bottom Plate (Traditional  3.45)

「depths in stereo」とクレジットされた曲です。これは好き嫌いが出る曲。
ハープシコードの弦を擦る、ひっかく、弾くという色々な演奏法で音を出して
いるのだが、このエコー感が弦の振動がわずかでも残っているうちには途切れ
ないという深いリヴァーヴで空中にずっとたなびいている。

メロディーがないので聴きにくいということもあると思いますが、確かに奥行き感
をステレオで聴かせるとしたらこうなるかな〜という一例。しかし、それだけ
ではなかった。1分50秒まで辛抱して下さい(笑)

突然のパーカッションの低音がダイナミックに響きわたります。この音は普通
のドラムではないですね、恐らくタブラという民族楽器です。皮だけ張った
タンバリンのような楽器で、とにかくバウン!という強力な低周波に驚きます。

しかし、この低音を口径の大きなウーファーで聴くと様々なバリエーションと
して低音だけの品評会のように個性的な再生音が幾通りも聴けるでしょう。

でも、私が認めたPerformance6の低域は見事でした。ウーファーの振動板の
質量によってデフォルメされることなく、見事にテンションを引き締めた低域。
これはPerformance6を使っている皆様だったらご理解頂けるでしょうが、ここ
ではPerformance6の魅力をしっかりと聴かせる変わった曲ということで…。

ただし、奥行き感というものが音波の消滅までの長い時間軸を正確に再現する
ということで感じられることは間違いありません。ぐっと割り切って聴いて
頂きたいユニークな曲でした。弦をひっかく音にはご注意ください(笑)

■11. Michiel Ras (Traditional  3.12)

「lavish sounds in stereo」とクレジットされた曲。何が気前いいのか?
このトラックがスタートしてプレーヤーのカウンターが動き始めると、先ず
録音している現場のグランドノイズがスピーカー周辺にぱーと広がります。

まるで、ドアを開けたら外の騒音が室内になだれ込んでくるような幕開け。
何が始まるのか、とおもったらパイプオルガンのソロ演奏なのです。

左側で主旋律を奏で、右方向では低音の伴奏が物凄い空間表現の大きさで展開
するのですから、これのことか?

パイプオルガンは機械仕掛けです。そのメカニズムのカタカタという音、バルブ
の開閉音、リードを風が吹き抜けていく音、それらが静かな教会の中で壮大な
情報量としてPerformance6の周辺に展開するのは圧巻でした。

決して派手な演奏ではありませんが、パイプオルガンという楽器が出すのは
リードのバイブレーションでけではなく人間が動かしているというリアルな
細かい音で埋め尽くされるような空間描写がlavishなんでしょうか?

■12. The Nuns From Megen Holland (Traditional  3.40)

「imaging and placing in stereo」とクレジットされたトラック。
スタートして最初に表れるのは何とハープのソロ演奏でした。演奏しているのは
恐らく教会でしょう。残響時間が6秒から7秒にも達するという教会の空間で
ハープが感動的な音で鳴り始めたのですからぞくっとしました!!

教会のスペースは大きく分けて三つになるとか。左右のベンチで二つとセン
ターのステージ前と言いましょうか、教壇のあるスペースが一つ。この曲では
オランダのアマチュア女声コーラスが左右で二部に分かれ、中央にハープと
いう位置関係で伝統的な歌曲を歌っています。ため息が出る程美しい!!

しかし、教会の高い天井に向けて広がる空間の壮大さ、左右に分かれた女性
コーラスが交互に歌い上げる時の何とも壮麗で美しい響き。絶対に商品化は
されないだろうと思われる3分40秒のハープ伴奏の女声コーラスは新鮮な印象
であり、ステレオ装置が作り出す疑似空間の大きさという可能性を皆様の
再生装置でも十分に堪能出来ることでしょう。実に美しい歌声!!

トラック6と7でのピストルの発射音で分析した皆様のシステムのリヴァーヴが
左右で多少違っていても、この曲は女神の微笑みをもって見逃してくれる?
かもしれません。このトラックを最初に聴いて感動して頂いてもいいでしょう!!

■13. Djembe Dutch Percussion (Traditional  4.12)

「dynamics and rhythmic in stereo」とクレジットされて曲に大感動!!
そもそもDjembe(ジャンベ)とは西アフリカ一帯(ギニア、セネガル、マリ、
コートジボワール、ブルキナファソ)などで伝統的に演奏されている深胴の
片面太鼓のこと。このパーカッションが物凄い!!

13トラックをリモコンでスタートさせて瞬間、センターから強烈な一打が響く。
その後の6秒間はずっと打音からたなびく余韻だけを聴かせられることになります!!

この余韻感が何とも素晴らしく、7秒くらいから指で太鼓を細かく叩く小さな
音が空間を埋めていく見事な情報量の描写が続き11秒たつと最初の打音が再度
ズシーン!!と響き渡ります。これ凄いです!!

この強烈なアタックをPerformance6 & ESOTERIC I-03 & Black Ravioliの構成
によるシステムが何とも見事にまとめていきます。演奏者は最低でも4人はいる
と思いますが、一人で複数のパーカッションを叩くので正確には分かりません。
しかし、その音の数は実に多様であり数えきれないくらいの楽器があります。

乱れ打ちという風情でランダムな打音が90秒程続いてから、切れのいいリズム
が展開し始めます。思わず体が動き出しそうになる爽快な演奏が素晴らしく、
2分10秒くらいから鐘を小刻みに叩く音がちょうど和太鼓と一緒に叩かれるあの
鐘の音と同じような音です。

前のトラックとは全く対照的に極めて高速に立ち上がり、広い空間に余韻感を
見事に拡散させ展開するパーカッションのダイナミックさは半端ではありません。
この曲を最初に聴く時には音量は控えめに、などとは言いません。最初の一打
から6秒間に静寂にたゆたう余韻感の美しさのためにはボリュームはそのままで。

4分過ぎには叩く楽器の数が次第に少なくなってくるというアレンジで、最後は
静寂感というものをきちんと残していくのはオーディオシステムにとって逆に
厳しいチェックポイントになるかも。ピストルの発射音の迫力と比べて三倍は
ダイナミックなこのトラックはぜひ皆様のシステムで楽しんで頂きたい!!

あ〜、今日は何回試聴室とデスクを往復していることか…、ちっとも営業に
ならないけど、それとも私が楽しいと思う事を皆様にも知らせたいからか。
さて、次のトラックを聴きに行くぞ!!

■14. Woodwind Orchestra From St. Oedenrode (Traditional  5.30)

「starting and ending transients」とクレジットあり。トランジェントです。
であれば、またパーカッションのようにアタックの鋭い音楽なのか?違います。

吹奏楽ですが、どうやらアマチュアバンドのライブ録音のようです。しかし、
このライブ録音に含まれている暗騒音、ホールの客席から聞こえてくる物音が
何とも鋭い音ではありませんか。

対照的に演奏そのものはスローな出足で各パートはロングトーンの重なり合い
がステージを埋め尽くすような充実ぶり。3本のオムニ・マイクロホンでホール
のアンビエンスを再生装置のスピーカーで再現して欲しいという狙いだという。

ステージに位置する各パートの演奏者の位置関係がくっきりと感じられるので
安心して聴いていると2分30秒くらいで突然の打楽器の登場。そこから一気に
盛り上がるブラスバンドは鮮明であり迫力十分で文句なしに楽しめる内容。

5分過ぎには再度ソロパートが長いストロークで吹く演奏が戻って来ると、また
そこには客席の鋭い物音が聞こえるようになってきます。
スタートとエンディングで感じて欲しいトランジェントとはこのことなのだろうか?

雄大かつダイナミックな吹奏楽のトラックを含めているというのは嬉しい。
さて、また試聴室に行こうか!!

■15. Johannes Passion (J.S Bach  3.40)

「Live feeling in stereo」とクレジットされた一曲。スタートした瞬間から
グランドノイズがスピーカーの周辺にさーと広がり音場感を形成します。

バックグラウンドノイズを情報量のひとつと認めている録音なのでしょう。
でも、その効果は抜群でした。オルガンとチェロというシンプルな伴奏で
メゾソプラノの声楽が力強くセンターに表れます。

オルガンもチェロも1フレーズ1音階というシンプルな伴奏で、ひょっとして
このまま終わってしまうのかと思っていると、センター左寄りからテナーの
男性が極めて鮮明な質感で歌い始めます。

この二人が発した声が教会の天井に3回4回とバウンドして跳ね返り、余韻感の
レイヤーを積み重ねていく空間表現のスケール感は感動ものでした。すると…

1分を過ぎたところで背後から合唱が弦楽器と共に盛大に参加してきます。
この時の展開には痺れてしまいました。臨場感という言葉では不足するような
気持ちさえする響きに包まれる快感。こんな音の洪水に飲み込まれてみたいものです。

2分40秒あたりからコーラスに加えて古楽器のヴァイオリンとチェンバロが
加わり、ライブ・フィーリングをコンパクトに3分40秒でまとめたトラックが
終わります。いや〜、実に素晴らしい。これほどの響きが普通のCDで聴けると
いうことはまだまだ潜在能力が高いということなのか! 恐れ入りました。

■16. Muzuet Le France (Traditional  2.45)

「ambience with and without in stereo」というクレジットからは想像が
出来ないが、一体何のことだろうか。またまた試聴室へ向かいます。

聴き終わってから思わず口にした私の一言を最初に「あ〜、いいわ〜!!」

先ずセンターにアコーデオンが登場し、至近距離で素晴らしいリアルな演奏を
始めると右チャンネルではウッドベースがゆったりとした広い音場感という
対照的な空間表現でデュオの演奏が続きます。

しかし、このアコーデオンの質感の何と見事なことか。それに見とれていると
今度は左チャンネルにヴァイオリンが入ってきます。このヴァイオリンも距離感
としては近く感じられるもののぎすぎすした印象はなく、切々と語るように
旋律を奏でるのですが、あ〜、この曲聴いたことあります。有名な曲なのに
タイトルのスペル通りでいいのでしょうか?

英語では「close microphone」と記してありますが、日本流に言うと無指向性
マイクと言うことになります。穴が空いていてマイクカプセルの後ろがオープン
になっているのは単一指向性マイクと言うことになります。

その原理を説明すると脇道にそれてしまいますが、無指向性マイクをメインに
して二本のアンビエンス用マイクを使って録音しているとか。

しかし、このトラックは絶対に感動ものでお薦めです。左寄りの至近距離で
リアルな質感と右側のベースが作っている広い音場感が見事にひとつのステージ
としてまとめられて録音されています。2分45秒で終わってしまうのなんて
もったいない!!もっと続けて欲しい演奏!!

■17. Pan Flute And Guitar (Piazzola 0.60)

「Transient attacks in stereo」えっ、1分のトラックでトランジェントと
アタックだと〜、一体どんな録音なんだ!!

いや〜、驚きました!! 超絶技巧のテクニックでミリセコンドのスピードの
タンギングか唇の技で吹き込むパンフルートがこんなに鋭い立ち上がりの音を
出すとは全くのイメージ違いというか驚きでした。

左側でパンフルート、右側でギターのデュオなのですが、二人が作り出す
音場感の何と広いことか。これは再生装置の魅力も十分に発揮されていると
思います。この曲をここと皆様のシステムとで聴き比べたらまずいかも!!
あっという間の60秒に私は敬意を表します。素晴らしいです!!

■18. Amstel Quartet (9.15)

「soft and gently in stereo」このトラックが最も長い時間の録音です。
ソフトでジェントルなステレオとは一体何を聴かせてくれるのか。
アムステルダムにあるThe amstel churchでのライブ録音とか。どうれ〜また
試聴室に行きますか!

弦楽四重奏の演奏。一口に言えばそうなのですが原曲はオリジナルか?
雰囲気的にはラヴェルがドビュッシーの趣もあるが…。

演奏空間の響きが美しいと弦楽器の倍音をここまで引き出すのかと驚きました。
弦楽器の音質にうるさい皆様にぜひ聴いて頂きたいトラックです。
9分間はあっという間でした。これほどリアルで美しい弦楽器というのは大手
レーベルの録音でもめったにないのではと思います。いや〜言葉を失いました!!

さて、厄介なのが次から始まる4トラックです。

■19. Cable Test Recording Analogue Choir (Traditional  0.55)

■20. Cable Test Recording Analogue Choir (Traditional  0.55)

■21. Cable Test Recording Analogue Choir (Traditional  0.55)

■22. Cable Test Recording Analogue Choir (Traditional  0.55)

何々…、Studer A807に使用したケーブルの比較ですと。リファレンスはあの
Crystal Cable、次にKharma Enigma Signature Kei-1A、更にSiltech Forbes 
Lake and Van den Hulなどのケーブルにて比較しろということか…。

聴きました!!リモコン片手に三回繰り返して聴きましたが、ここで推薦したい
トラックという気持ちにはなれませんでした。微妙過ぎて(笑)

■23. Jazz At The Triple 

5×20メーター位のPawn shopでのジャズ。ドラム、ベース、ギターのリズムに
オルガンが加わり、サックスがリーダーの演奏です。ここでも観客のもの音が
沢山含まれているのが特徴ですが、どうもこのトラックはお薦めしません。
メリハリつけて評価しないといけませんしね(笑)

■24. Judith Nijland, After 

ヴァイオリンが左、センターにピアノ、右にチェロというアコースティックな
伴奏で始まったイントロが終わると、センターには実に美声の女性ヴォーカル
が登場するポップスでした。

ヴォーカルと同じセンターに気持ちいいベースが並び、サビではソプラノ
サックスがきりりと引きしめて好印象の録音。可もなく不可もなくという感じ。

■25. Jazzed To The Max(Traditional  2.55)

これは良かった!!多分男女三人ずつだと思いますがアカペラの美しい録音。
各ポジションに明確に定位する口許が大変好ましいリアルさで、今回使用した
システム構成が見事に的中した演奏と言えます。これも推薦出来ます!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

いや〜、今日の試聴の繰り返しは疲れました〜(^^ゞ
でも感動的なトラックがこれだけ入っているディスクですから、これは何と
しても皆様にご紹介しなければと頑張りました。

これをどのように新企画につなげていくのか、今からでもハルズサークルに
ご入会頂ければお分かり頂けます。ぜひよろしくお願い致します。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
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