発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
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【検証試聴⇒H.A.L.'s One point impression!!-秘密兵器Wadia 381とは!!】 先日webにアップされた最新の訪問記の最後には次のように述べています。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_visi0022.html Kiso Acoustic HB-1に関しての私の認識と推薦の言葉として… 「このスピーカーは第二のメインスピーカーです。セカンドシステムの安易な アンプで鳴らすのではなく、皆様が使用しているメインシステムのアンプで 鳴らして下さい。 大きなスピーカーが出す音を小さいボディーで出せるから偉いのではありません。 小さいボディーでは想像もできない低音が出るから凄いのではありません。 HB-1は大きなスピーカーに出せない音を聴かせてくれるから素晴らしいのです。 響きを伴って聴かせてくれるから今までのスピーカーとは別世界の音楽を 聴かせてくれます。だから、今まで聴いてきた曲を全て聴き直したくなるし、 どんな音楽でも本当に楽しく聴かせてくれます。それがKiso Acoustic HB-1 の最大の魅力なのです!!」 ここH.A.L.で私が扱っているスピーカーの価格からすれば1ペア130万円という HB-1は異例の低価格ということが言えます。しかし、私は真に魅力あるものは 価格に関係なく皆様にお知らせしたいというのが信条であり、それは今までに も何度となく新企画として実施してきました。 このスピーカーという分野でHB-1の存在感は既に何回も述べてきたものであり、 これからも更なる可能性の追求として色々な取り組みをしていくつもりです。 目下のところ私の関心事として、このHB-1を鳴らすコンポーネントに関して 様々な組み合わせを試みているわけですが、アンプに関しては価格を問わず 相当高額なモノアンプでもHB-1とのマッチングでは素晴らしい演奏を聴かせて くれたものであり、まだまだ違うブランドとのマッチングを試していきたいと 思っています。 数百万円から一千万円以上というスピーカーの中でも存在感を発揮するHB-1は 当分目が離せない存在ですが、アンプの分野以外にもその魅力を引き出してく れる要素がプレーヤーにあったということを発見しました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/hlu.html ここH.A.L.でリファレンスとして使用しているESOTERICやdCSのプレーヤーは 500万円から800万円を超えるものですが、そこに“たった98万円!?”という 価格でもHB-1同様に己の存在感を見事な説得力として聴かせるプレーヤーを 発見した…と申し上げたら皆様には信じて頂けるでしょうか!? HB-1を鳴らすソースコンポーネントとして私が推奨する、そのプレーヤーは CD専用機なのですが皆さんはSACDがかからないとだめでしょうか? もし、そうだとしたら大変残念なことですが、この続きはお読みにならなくと もよいかもしれません(^^ゞそんなことはない、という方でしたら今回の私の 推薦はCDプレーヤーの選択に新しい可能性をご提案することになるでしょう!! もったいぶらずに早く教えろ!!(^^ゞ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- はい、ごもっともでございます。そのブランドとは皆様ご存じのWadiaです!! そこで、ちょっとWadiaの歴史を振り返ってみましょう。1988年夏、革新的な D/AコンバーターWadia2000でデビューしました。1982年にCDというものが登場 したわけですが、その10年後にWadiaは初めて一体型CDプレーヤーWadia 6を 発表し、これが歴史的な大ヒットとなり国内で累計1,300台以上という驚異的な 販売実績を作り出しました。当時の価格は75万円ということですから、決して お安いものではなく、もしろ高額なCDプレーヤーとして脚光を浴びたものです。 そして、その2年後に登場したのが更にアップグレードされたWadia 16(110万円) でした。このWadia 16も450台以上のいう販売記録を出しましたが、当時アク シスでは販売台数をコンピューター管理していなかった時代であり、正確な 出荷台数はそれ以上ということで最低推測台数ということでした。 更に1994年の10月にはWadia 21(68万円)が登場し、これも求めやすい価格設定 もあってか前作を上回る出荷台数となり、翌年にはWadia 23(39万円)が登場し 日本におけるWadiaブランド浸透に大きく貢献してきました。 この時点でWadia一体型プレーヤーの累計販売台数としては2,600台以上となり、 輸入CDプレーヤーとしては前例のないヒット商品に成長していったのでした。 低価格化をいったん進めたWadiaは1997年に3ケタ番号のWadia 860(125万円)で 同社のDACテクノロジーをコンプリート化して音質強化を図る方針に転じます。 同年にはWadia 860の姉妹機としてコストダウンさせたWadia 850(90万円)から Wadia 850STD(75万円)とデジタルIOの必要性に応じてバリエーションを拡大し、 翌年にWadia 830(55万円)を発表を経て二年間のブランクを余儀なくされました。 そして、1999年の5月にSACDが登場し次世代フォーマットの追求が各社で進め られるようになり、2000年6月、スイフトカレントI/V、96kHz24bitDACの搭載 などパワーDAC技術のエッセンスを盛り込んだ最高級CDプレーヤーとして発表 したのがWadia 861(139万円)でした。そのデジタルIOを省略して2003年に登場 したのがWadia 861basic(98万円)でした。同年の9月にこれらの後継機として 発売されたのがメカニズムを変更したWadia 302(68万円)という流れになります。 http://www.axiss.co.jp/whats_discon_Wadia.html 以上のWadiaブランド一体型プレーヤーの国内販売実績は累計で四千台に近い 実に素晴らしい歴史となっています。 そして、2007年秋、Wadia初のSACD/CDプレーヤー"581""581i"をリリース。 マルチビット変換されたSACDを伝統のデジマスターアルゴリズムで再生すると いう手法を取り、2008年各々581se(168万円)581i se(195万円)にモデルチェンジ されていきます。 1990年にWadiaが発表したトランスポートはESOTERIC VRDSが搭載され、ずっと その関係は続きましたが近年は他社のメカニズムも一部採用するようになって いました。そして… -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 2009年9月8日現在、アクシスのwebサイトでも未公開という新製品。そして、 ここH.A.L.のクォリティーというハードルを見事にクリアーした新製品として 私が皆様に推奨するのが98万円のWadia 381なのです!! http://www.dynamicaudio.jp/file/090902/Wadia381_u.pdf 外観は同社の共通デザインで極端な変化はありませんが、内容と音質に関して は驚くものがありました。ちなみにCDドライブメカにはStreamUnlimited社の ものを搭載していますが、サーボ回路はWadiaの特注仕様となっています。 http://www.streamunlimited.com/v2/index.php?show=documents http://www.streamunlimited.com/app/webroot/v2/content/downloads/PB_JPL-2580B.pdf 過去に同じドライブのプレーヤーを見ていました。こんなプレーヤーです。 http://www.noahcorporation.com/soulution/740.html さて、それでは今回私が聴いて感動したシステム構成を先ずご紹介しましょう。 ◇ Wadia 381 & Kiso Acoustic HB-1-inspection system ◇ ……………………………………………………………………………… Wadia Wadia 381 (税別\980,000.) http://www.dynamicaudio.jp/file/090902/Wadia381_u.pdf and TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER and Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ STEALTH Sakra balanced XLR / 1.0m $13,000 http://www.stealthaudiocables.com/products/Sakra/sakra.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… JEFFROWLAND Criterion (税別\2,780,000.) http://www.ohbashoji.co.jp/products/jrdg/criterion/ and TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER and Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\560,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別\2,280,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… MARKLEVINSON Dual Monaural Power Amplifier No.532(税別\2,800,000.) http://www.harman-japan.co.jp/product/marklev/no532.html and TRANSPARENT PIMM(税別\240,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ SILTECH Royal Signature series King 2.5m (税別\2,720,000.) http://www.harman-japan.co.jp/product/siltech/index.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Kiso Acoustic HB-1/Mahogany(税別\1,300,000.) http://kisoacoustic.com/ and H.A.L.'s original“P-board”×2 (税込み\136,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/508.html ……………………………………………………………………………… Wadia 381をセットして電源を投入したのは私が定休日だった9月3日の木曜日。 当日の夕方に電源を入れてひと晩エンハンサーCD-ROMをリピートさせておき、 ほぼ24時間の経過してからの試聴開始でした。 ただし、イベントへ向けてのセッティングの変更からMARKLEVINSON No.532は 外されていたので、私が出社した4日の午前中に再度セットアップして鳴らし 初めて四時間ほどウォームアップさせてから試聴を開始したものでした。 二時間ほど色々な曲で聴いたので通算六時間程経過したところで評価しましたが、 この段階ではピンときませんでした。(-_-;) 悪いということはないのですが、取り立てて私のハートに火を付けるという程 のものでもなく、この価格帯のプレーヤーとして個性は認めるものの音質は 他社と横並びか〜、というのが第一印象だったのです。これで終わりかい!? という気持ちとバーンインの進行によってオオバケするかも!?という諦め半分 期待半分で更に24時間のバーンインを行った三日目の朝のことでした!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 今までの経験からもバーンインの重要さと私が求めるレベルの音質が出るまで 予想以上の時間がかかったということは何度もありました。逆に時間をかけて もここまでか、という諦めがあったこともしばしばであり、今回のWadia 381 に関しても期待と不安が半分ずつという心境で努めて希望的予測をしないよう 三日目の音を聴いてやろうか〜、という思いで試聴室に入りました。 先ず最初はいつものこの曲です。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 冒頭の弦楽器群の合奏が始まった瞬間に私は異変を察知しました!! 「何なんだ!!これは!!ほぐれているし浮かんでいるじゃないか!!」 さして期待していなかったものが良い意味で裏切ってくれた時の驚きと感動は 昨日までの記憶を一瞬にして吹き払ってしまいました。 “ほぐれている”というのはオーケストラの弦楽器群の中身が見えてくるとい うこと。今までひと固まりの集団で一色の色彩しかなかったものが演奏者の数 だけ微妙に異なる多数の色合いを含み、同時に多数の演奏者が存在していると いう楽員個々を認識できるように感じられるということを象徴して使い始めた 表現でした。 袋詰めされたものを外側からビニールを通して中身を見るように、のっぺりと して、つるっとして中身の楽員の各々の粒立ちがわからなかった音なのに、 今日は一体どうしたということか!? 蝋人形の髪の毛には櫛は通せませんが、本物の髪にはすーっと櫛が通り髪の毛 一本ずつの存在感が伝わってくるかのように、弦楽器の集団がほぐれて個々の 質感にセパレーションを感じさせるのですから驚きです。今聴いているボスト ンシンフォニーの弦楽パートには数十人の奏者が個別に演奏しているという 感触が確かに伝わってきます。 “浮かんでいる”というのは私が以前から述べている音場感の基礎であり、 中間定位が見事に提示されているということ。昨日までは弦楽器群の音像の 両端はHB-1という音源の位置に絡まっていて、左右のスピーカーを結ぶ一線に 貼りついたように平面的な音だったのです。 それがどうしたことでしょう!! ファーストヴァイオリンからコントラバスに 至る全ての弦楽器は左右のHB-1の音源位置という定点から解放され、あたかも スピーカーなど存在していないかのように中空に定位しているからです!! 言い換えれば、昨日までは大判に引き延ばした写真のように二次元的な展開で したが、今日聴くオーケストラは油絵の絵具をキャンパスに乗せて行くような 厚みと起伏が感じられ、しかも昨日よりも実に多彩な色遣いが実感されます。 そうです!!今日のオーケストラはまるでレリーフのように私の三メートル先の 中空に浮かんでいます!!これはH.A.L.のリファレンスプレーヤーたちが達成 していたレベルの音質ではないですか!! あまりの変化に驚き、また反面呆れつつ、他のディスクでも確認しなければと オーケストラの課題曲を続けて試聴することに。 ■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「カル メン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール 最初の聴きどころは1.前奏曲の弦楽だけの合奏から。 「これでこそパリ管だ!!この厚みというかレイヤーの多重構造が冒頭の弦楽器 だけのアルコで見事に発揮されているじゃないか!!」 いや〜、これには恐れ入りました。この曲のインプレッションを五年前に次の ように私は述べていました。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- これまでに引っかかっていた課題曲、セミヨン・ビシュコフ指揮、パリ管弦楽 団によるビゼー「アルルの女」「カルメン」(PHCP-5276)を早速かけてみた。 [1]前奏曲 「こっ、これは!!」 導入部の弦楽器群による重厚なアルコの合奏のいきなりの変貌にわが耳を疑った。 私がこのディスクの中でも特に好きなパートであるが、この時の弦楽器が幾層 にもレイヤーを構成して左右スピーカーの更に両翼の周辺部までも広がり、 その質感にほのかな甘みを感じさせてくれるのがたまらない。思わずイメージ したのは、あのミルフィーユであった(笑)ちょっとした雑学だが調べたところでは。 < millefeuille > 薄い生地が何層にも重なったパイ菓子。 日本では銀座マキシム・ド・パリの「ナポレオン・パイ」が有名。日本では ミルフィーユとして売られていますが、正確にはミルフイユ<millefeuille> と言います。 ミルとは「千」、フイユとは「葉」、つまり「千枚の葉っぱ」という意味です。 何層にも折り重なるパイ生地(実際にパイ生地という単語はなくフイユタージュと 言います)を焼くと葉っぱが重なったようだと言うところからこの名前が付け られました。製菓職人のルージェが作ったといいます。 ちなみにミルフィーユとミルフイユ、フランス語だと全く違う意味になってし まいます。ミルフィーユは「一千人の娘さん」という意味になるのです。 正しい発音はミルフイユなのです。 弦楽器群の多数のアルコの繰り返しの中で大変微妙だがわずかに舌にざらっと する感触を覚えたものだが、この時の演奏は大違いだ。 視覚的にはまさに「千枚の葉っぱ」のごとく一本一本のヴァイオリンが重なり 合った縞模様が鮮明に見えるようであり、その一つずつの層の間に塗り込めら れたクリームがえもいわれぬ口溶けのまろやかさで絶妙な甘さに至福のひと時 を得た思いでである。これは初めての体験である!! 美味い!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 長年使い込んでいる課題曲が今も変わらず私の基準になっているということで、 一体このように同じ曲を何回聴いてきたのだろうか、と考えると数百回か一千回 以上にもなるのだろうか? それだけ同じ曲で千変万化の可能性を何年もの間に 体験してきたものですが、三日目のWadia 381が聴かせてくれた音は正にミル フイユをビジュアル的にイメージした木目細かい弦楽器の多重構成でした!! 前曲同様に解像度の向上が弦楽器の再現性に大きく関与した証拠であり、昨日 までのパリ管とは大違いです。 弦楽器だけでなく次は8.ファランドールです。前奏曲と同じ主題が管楽器を 交えて始まり、やがてタンバリンと小太鼓がステージ奥でリズムを刻み始める。 最初から豊潤な余韻感がオーケストラ全体に潤いを与えながら、リズム楽器の 鮮明さが対照的に歯切れいい。やがてフルートが中央で絶妙なタンギングを 披露すると弦楽器もピッチカートで応え始める。このピッチカートの最初は 点としての音源からふわ〜、とホールに響き渡る余韻感が感動的でした!! そうしたら何と!!やってくれました!! 耳で感じて欲しい遠近感を98万円のCD専用プレーヤーでここまで聴かせてくれ るとは予想していませんでした。これは解像度の素晴らしさが楽音の輪郭を 鮮明にすることで奥行き感を聴き手に認識させるからであり、過去に蓄積された Wadiaの技術力が発揮されていると感じられました。 その最も重要なテクノロジーとして音質に貢献していると感じられたものが DigiMaster 2.5というアルゴリズムの進歩でした。これはA・B・Cと三つの 選択が出来るので実際に比較してみましたが、Wadiaがデフォルトとしている のがAということで納得させられました。 B・Cはある周波数から高域をカットオフさせる特性であり、高域の質感と音場 感においてAとは感触が違うものがあります。まあ、好みの選択ということで 良いのですが、Aモードでのパフォーマンスを基準とした音作りに私は感動し たものであり、これをWadiaが選択したということで彼らの耳を信頼すること が出来ると思いました。いやいや、素晴らしい!! 軽快なリズムでテンポアップし盛り上がっていくファランドールのフィナーレ でビシュコフの腕が静止した瞬間に、私の体温は2度ほど上昇したようです!! 声に出さないShout bravo!!を胸の内で連発していました!! ■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクト ペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団指揮: ワレリー・ゲルギエフ 第一幕の序曲での弦楽器の質感にはため息が漏れそうな余韻感の美しさがあり、 アルコの切り替えしごとにヴァイオリンだけのエコー感がほんのりと展開する。 この辺は単に迫力だけを印象付けるというWadiaのイメージを一新する美味が 感じられ、余韻感をどれだけ引き出せるかという私の指向性にミートしました。 決して力の入った音量での演奏ではないのだが、ピッコロやフルートの木管 楽器のソロパートの響きは弦楽器の質感と絶妙な融合をホールという空間で 果たしているという再現性が素晴らしい。思わずうっとりするような充実感と して日頃の私の目標とする音質がここにあったのかと聴き入ってしまう。 いやはや参りました!! 15トラックの中国の踊りではファゴットの軽妙な演奏がゆったりした余韻感を HB-1の後方に提示し、その空間表現のあり方が絶妙であり鋭く切れ込むピッコロ の高域部のエコー感を見事に包み込んでいく。これはいい!! 寄り添うように始まる弦楽器のパートが左側から右方向にホールエコーをたな びかせるように振りまいていくが、この余韻感を支える要素は何なんだろうか と、98万円のプレーヤーにWadiaが投じた最新テクノロジーにコストパフォー マンスの恩恵を感じずにはいられなかった。本当か〜!! 次のトレパークは実に楽しかった。大音量での迫力はいつも聴きなれたもので すが、HB-1の低域の量感がここまでオーケストラ全体を支えているという実感 が好ましく思える。そうだったのか!! 長年に渡り認識していたWadiaのイメージ、その特徴は重厚な低域であったで はないか!! それがグランカッサの打音のエネルギー感を大事に抱擁するかの ように、ホール全体に余韻感を最後の一滴まで振りまくような微小な信号の 再現性に寄与している。重厚であるということが全てではなく、低域の余韻感 を根底から支えるという妙技に新しいWadiaを見た思いだ!!しかも、この価格!! ■MUSE 1.フィリッパ・ジョルダーノ/ハバネラ http://www.universal-music.co.jp/classics/refresh/muse/muse.html オーケストラの音場感にWadiaの象徴的な低域のダイナミズムが余韻感という 微妙な世界で貢献しているということを聴き、次にはこの曲です!! クロスオーバークラシックというジャンルでスタジオ録音のヴォーカルに ホール録音のオーケストラをオーバーダビングして仕上げた録音。 はっきりくっきりとしたヴォーカルの多重録音、打楽器のエコー感も背景に マッチするようにしつらえたスタジオワークの見事さ。 特にセンターでズシンと響くドラムの再現性に私は多くの再生音の記憶を持ち、 新しいシステム構成で聴き、またユーザー訪問の際にも個性がわかりやすい チェックポイントでもある。 冒頭のフィリッパ・ジョルダーノのヴォーカルをオーバーダブしたコーラスで はすこぶる明確なセパレーションが期待感をあおり、そしてドラムがきた!! 「ほほ〜、そうなりますか〜」 HB-1の10センチウーファーが叩き出す低域には遅滞がなく切れ味がいい。 他社のプレーヤーで比較した場合、そして昨日までのこの打音との比較。 その両方で端的にWadiaの自己主張を発見することが出来た。濃厚なのです!! 打音の瞬間にセンターに出現する音像は十分に引き締まりテンションも上々!! このドラムが濃厚な質感を聴かせるという私の表現には裏があります。 打音の中心部分の色彩感が濃厚であればあるほど、その打音が消滅していく 過程で次第に薄くなっていく色彩感の階調が実に細かい段階として表現され、 淡い余韻感となって消えて行くまでの時間軸を延長しているのです!! 後方から控え目に聞こえるカスタネットやタンバリンのエコーも同様に長い 余韻感としてHB-1の向こう側に響かせ、たった3メートルの距離にスピーカー があるということを忘れさせてくれる遠近感の素晴らしさが録音の演出を際立 たせます。いいですね〜、98万円ですよ!! ■MICHAEL BUBLE/1.「Fever」WPCR-11777 http://wmg.jp/artist/michaelbuble/profile.html イントロのペースからして色々な観察点がある曲です。このベースの振る舞い を比較していくと、前曲と合わせて低域の望ましい質感というチェックが出来ます。 打楽器のようにインパクトの瞬間から消滅までの時間軸における変化は減衰と いうことでエネルギー感としては下降線での表現になりますが、エレキベース のように連続する低音というのは音量感が維持される楽音であり、音像のプロ ポーションとして観察できるものです。 打楽器は豪快に叩かれても消滅していく時間軸が音像を細身に変えていくので 最初の一打の音像が多少大きくなっても良い意味での演出で逃げられます。 しかし、ベースのように連続する低音では音像の輪郭を見せてくれないと聴き手 としては欲求不満に陥ってしまいます。 それはスピーカーの要因でもありパワーアンプも一枚絡んできます。そして、 その両者で低音の音像が膨張する傾向にないと確認された後はソースコンポー ネントという各論で傾向を分析することが出来ます。 そして、前曲とは違いホール感を意識しない100%スタジオ録音の割り切りが 鮮明な音像の低域としてこの曲を盛り立てています。その出足からいい!! 「これは参ったな〜、昨日聴いたベースの音は腑抜けではないか!!」 グリッと芯があるベースが始まった時に既に私は記憶との比較を済ませ、現在 鳴っている低域の質感に及第点を与えました!!いいですこれ!! Wadia 381のドライブメカのパフォーマンスを証明する低域の見事さであり、 もしかしたら、この点では同社の上級機を追い越しているかもしれない。 ESOTERICのメカも大変素晴らしいものですが、海外製品で98万円という価格で はコスト面からもESOTERICは採用できないものでしょう。 しかし、Wadiaは実にいいところに目を付けてStreamUnlimitedを採用したと いうことでしょう。まったく問題なしです!! 前曲と同じようにMICHAEL BUBLEのヴォーカルもたっぷりとしたエコー感が 与えられており、2.9メートルという間隔でセットしたHB-1のセンターに実に 見事に浮かび上がります。これはオーケストラの場面でも確認した素晴らしい 情報量の一端として評価できるものであり、アメリカ製だからゴージャスな 低音とビッグマウスという傾向は微塵もありません。 しかし、いいヴォーカルではないですか!! ヴォーカルも濃厚だと言えます。 それでは次の曲はこれでしょう!! ■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is(MVCI-24004) http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/diana/disco.html ヴォーカルと低域の質感を判定するのに好都合な一曲です。毎回申し上げてい るように、ノンエコーでドライに録られたウッドベース、それとはまったく 対照的に深いリヴァーヴがかけられて広範囲に余韻感を拡散させていくDIANA KRALLのヴォーカルというオーディオ的観察点からすると相反する音像展開が 同居している録音です。 先ず冒頭からは例のDIANA KRALLが指を鳴らす音が…!? 「ありゃ〜、ひっぱりますね〜、この響きの拡散領域が実に広い!!」 のっけから驚かされる展開が!!情報量として認識できる指が弾けた瞬間から 左右に広がっていく有り様は見事という一言に尽きます。これだけ微小な余韻 がくっきり描かれていたのだからオーケストラで感じたホールエコーが豊かで あったはずです。納得のイントロ!! そしてウッドベースが…!! 「おー!!小振りの音像で引き締まってますね〜、それに重量感というおまけつき!!」 前曲でベースはドラムと違って連続する低音なので音像のサイズが重要だと 述べましたが、これだけダイエットしたプロポーションならば申し分なし。 しかし、ダイエットしても質感が軽くなるわけではなく、音像の中身に濃厚な 低域がぎっしり詰まっているので重たく感じるという魅力的なペースが展開する。 さあ、DIANA KRALLのヴォーカルは…!? 「あっ!!密度感というか濃厚な口元から余韻感として発散される周辺への響き の拡散が実にきれいに分離している。これはいい!!」 なにを言いたいかというと口許にピントが合っているという音像の輪郭表現は くっきり描かれ、ため息に近い発声で歌う比較的声量を抑えた歌声をスタジオ ワークで心地よいリヴァーヴという衣装をまとわせた艶めかしさがいい!! DIANA KRALLのヴォーカルは120インチスクリーンの大きな面積で映写され、 Christian McBrideのウッドベースは20インチのサイズでスクリーンの前に チョコンと置いてあげたような対比としてイメージして頂ければいいだろう。 大型スクリーンに大きく映写されるDIANA KRALLの歌っている顔のクローズ アップがあり、その前にきっちり引き締めたサイズで輪郭が鮮明に見える Christian McBrideのペースを手前に見ているという構図だろうか。 指を弾く音にヴォーカルとベースだけというシンプルな録音がWadia 381の チャームポイントを見事に聴かせてくれたものです。実にいい!! 低域の再現性にしっかりとWadiaの伝統を聴かせてくれるCDプレーヤーがこの プライスで手に入るということ。あるいはWadiaオーナーの所有する同社製品 の世代交代として、私はこれ以上にない後継者が見つかったものだと改めて 実感してしまいました!! でも、最後には日本人の声を聴かなくては、といつものこの曲がどうなるか!? ■ちあきなおみ/ちあきなおみ全曲集「黄昏のビギン」 http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/disco/ce32335.html イントロのギターとヴァイオリンの伴奏から始まるこの曲、えっ!! 「どうしてこんなにコンパクトになってしまったの!?」 私も何回聴いたか忘れるほどのこの曲。このギターとヴァイオリンの音像が 今まで聴いてきた膨大な記憶と比較して、更にHB-1で聴いてきたという範囲に 絞り込んで比較してみても実にチャーミングで引き絞られた音像なのです!! アメリカ製のWadiaはもっと大きな音像表現でダイナミックに聴かせてくれる という既成概念があったとしたら、いや、実は私も長年そう思っていたかも しれませんが、国内録音の特徴も手伝ってということもあるのでしょうが、 実に凝縮された音像が展開することに最初は戸惑いと驚きの両方がありました。 シャープな切れ味で鋭利な質感を連想する音像展開ですが、実はこの裏に新しい Wadiaの隠された魅力の一面があるようです。 コンパクトな音像で実に引き締まったギターとヴァイオリンが始まりましたが、 問題はその中身の質感と言っても良いと思います。くっきりした輪郭の中に 感じられる楽音はディティールが鮮明であるだけにクールで切れ味のいい鋭角 的な音という想像があったとしたら、まったく正反対の傾向が感じられました!! ギターのアルペジオで一音一音が何とも温かみのある質感なのです。 ヴァイオリンのアルコの切り返しもビブラートもウェットな質感で心地いい!! HB-1の特徴でもあるわけですが、同じHB-1で既に幾通りもの組み合わせを体験 してきた私から見ても初めてのことでした。いや〜、安らぎますね〜(^^ゞ どうしても外観からマッチョなイメージを持ってしまうWadiaですが、実は こんなウォームトーンを奏でてくれるとは思いませんでした。それが次の 瞬間にはヴォーカルの声質にも反映されて私の印象を裏付けてくれました!! 「あ〜、しっとりしてるね〜。ちあきなおみはこうでなくっちゃ〜」 と、自分勝手な期待感との一致を内心でほくそ笑む私がいました。(^^ゞ これまでの課題曲で感じてきた価格対比での音質評価ということに新しい定義 をもたらしてくれるのが、どうやらWadia 381の存在ということになりそうです。 誤解して頂きたくないのは、ここH.A.L.にあるリファレンスプレーヤーたちを しのぐ音質、ということでは決してありません。 最大要因としてKiso Acoustic HB-1とのコンビネーションにおいて素晴らしい 表現力を聴かせてくれたCDプレーヤーの一例ということです。 しかし、98万円という価格が歴代Wadia製品のユーザーに対して心憎い世代交 代の誘惑となってくるものです。それはなぜか!? CD専用プレーヤーということがハンディギャップになるとお考えの方は仕方 ありませんが、実はこんな一面があることが大切なポイントなのです。 ■Digital Inputs with USB 超低ジッターを実現する新開発のUSB入力装備 (Wadia381i) そうなんです!! 33万円で後付けも出来ますが、Wadia 381iを選択しますと コンピューターからUSBで96kHz/24 ビット・デジタル入力を受けられるのです。 この音質でパソコンにある音楽ファイルを再生できるとしたら…!! さあ、私はこれからどうしたものか!? 早速、ハルズサークル向けの新企画を実施することになりそうです。 こんな新企画に興味のある方はぜひハルズサークルにご入会 下さい。 |
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