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2007年10月13日
No.547 「小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第63弾*」
『The Revel Ultima Salon 2 登場!! その秘めたる可能性を追求する!!』

             〔1〕美意識の追求

唐突だが、「弘法筆を選ばず」という格言を思い出している。これは、ご存知のよ
うに、文字を書くのが上手な人間は、筆の良し悪しを問わないということ。但し、
空海自身は、よい書を書くためにはその時々によって筆を使い分けるべきであると
言ったと伝えられている。「弘法筆を選ぶ」として、逆の意味のことわざとして
用いられることもある。

同様に音を出すのが上手な人、つまりオーディオシステムをコーディネートして
自分の感性で再生音を出すのが上手い人はコンポーネントを選ばないのか!?

この点に関しては主観的な個々人の好みがあるので、自分の気に入った道具を選ぶ
という事実に間違いはないだろう。その点では「弘法筆を選ぶ」がズバリの答えに
なっている。しかし、私は更に数段階上を目指したい!!

以前にも述べていたことがあるが、ここで演奏する音質に対するこだわりである。

スピーカーメーカーの試聴室よりも素晴らしい音を出したい。
アンプメーカーのラボよりもいい音を出したい。
CDプレーヤーの設計者が聴いてきた音よりも高い次元を目指したい。
ケーブルメーカーの開発者が聴けなかったような音を出したい。

つまり、世界中の様々なアイテムを作り出している各社で、自分たちが開発段階で
聴いてきた音質を上回るものをここでは目指したいという願いである。

先日、あるテレビのドキュメンタリー番組で日本の若い書道家のインタビューが
あった。硯で墨を磨るという作業から誠心統一を開始して一時間以上も黙々と手を
動かし墨を磨り続け、その鍛錬の後に一気に書き上げるというのだ。墨を磨るという
単純な作業に数時間をかける、その黙々と続ける単純な動きの中で書き上げるべき
作品のイメージトレーニングをしていたとは驚きだった。そして、書道の道具の
あれこれにも歴史的な高級品が多々あり数十万円、いや数百万円の値が付く道具が
実際にあるという。

高価な道具であればあるほど、それを使って行なう芸術的な仕事には自然に自らの
感性、そして美意識が発揮されなければならないだろう。そのために求められるのが
道具の使いこなしである。そして、最も重要なことは使いこなしたらどのような
結果になるのか、どのような素晴らしい作品が出来るのかというゴールを知って
いなければならないということ。使いこなしているかどうか、ということは第三者
からも認められる評価によって一つのパフオーマンスとして実を結ぶものだろう。

つまり、道具を選ぶというその段階で己の感性のレベルが問われるというものであ
り、選んだ道具の品格も使い手によって左右されるということなのだろう。

そして、今回私の“レベル”で選んだスピーカーがこれ!!
このスピーカーは私が選ぶだけの性能と魅力が備わっているということに間違いない。

The Revel Ultima Salon 2
http://www.harman-japan.co.jp/product/revel/ultima2.html

上記のように「弘法筆を選ぶ」という格言になぞられえて考えれば、ただ選んだ
だけで良いのか!? と、言うとそうではない!! 私にも硯で墨を磨るがごとく修練と
目指すべきこだわりの美意識があるというもの。そして、選んだ筆が選ばれたと
いう理由にふさわしい使いこなしを受けて、他者が同じ筆を使った時よりも高い
次元のパフオーマンスを追求するというのが私の信条でもある。

そのステージとも言えるシステム構成は次のようにした。


           ◇ The Revel Ultima Salon 2-inspection system ◇


………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-0Rb(税別\1,350,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/g0rb/
     and
JORMA DIGITAL/SMB-SMB for Internal Wire (税込み\88,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/544.html
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100(税別\950,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\500,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6100 BNC(Wordsync用)(税別\240,000.)→ESOTERIC D-01×2
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC P-01 (税別\2,200,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/p01_d01/
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100×1(税別\950,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/powercable/9100mexc.html
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\500,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6300 XLR 1.0m×2 Dual AES/EBU(税別\560,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/6300.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC D-01(税別\2,200,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/p01_d01/
     and
ESOTERIC PS-1500+7N-PC9100×2(税別\1,300,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/ps1500/
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/powercable/9100mexc.html
     and
Project“H.A.L.C”H.C/3M(税込み\500,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/audio/halc/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6300 XLR 1.0m×2 (税別\560,000.)
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/6300.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
HALCRO dm8(税別\2,200,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/product/halcro/dm8_dm10.html
     and
TRANSPARENT PLMM+PI8(税別\606,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 7.0m
http://www.teac.co.jp/av/esoteric/mexcel/
          and
Cardas Myrtlewood Block / Large single notch  (税別 \9,800.)
http://www.ohbashoji.co.jp/products/cardas/accessories/#woodblock

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
HALCRO HALCRO dm88 ×2 (税別\7,600,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/product/halcro/dm88.html
http://www.halcro.com/productsDM88.asp
          and
TRANSPARENT PIMM+PLMM(税別\606,000.)×2set
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

TRANSPARENT  Reference MM  Speaker Cable 2.4m (税別\2,600,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#REFERENCE
          and
KIMBER KABLE KS-9038  (税別\170,000.)
http://www.denon.co.jp/products/kimberse_acc.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
The Revel Ultima Salon2(税別1pair\3,600,000.)
http://www.harman-japan.co.jp/product/revel/ultima2.html
………………………………………………………………………………

システムの内容だけを見て、これほど高価であり過去に実証された能力と魅力がある
コンポーネントたちで鳴らしたら最初から文句はないだろう…、というのが大方の
推測だろうが、そこにこそ私なりの美意識を追求するこだわりがあった。



            〔2〕弦楽器の質感とは!?

ご多分に漏れず、先ずはさしたる疑いも持たずにセットしてマーラー交響曲第一番
「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団の定番から第二楽章を聴き始めた。ところが…

私が最初に設定したハードルの高さは尋常なものなのか、はたまた行きすぎなのか?
ここから徹底した分析の上での使いこなしが始まる。

これはボストンシンフォニーオーケストラだけに関わる問題ではなく、私が評価の
基準として必ず使用するセミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団ビゼー「アルル
の女」「カルメン」の両組曲、更に、指揮: ワレリー・ゲルギエフ/チャイコフス
キー《くるみ割り人形》全曲/サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団
などの選曲でも言えることなのだが、私はどうしても最初のボストンシンフォニー
の主に弦楽器を中心とした楽音の質感にこだわった。

では、自分がこだわり求めている音質がビジョンとして明確に持ち合わせていると
いうことを前提に、どうやって自分のイメージを自分が作ったシステムで表現して
いくのか!? ここからがプロフェッショナルの仕事になる。
決してスピーカーの取り扱い説明書に書いてあるというものではない。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

先ず最初はこれ。Ultimaシリーズに標準的に付属してくるスパイクである。

http://www.dynamicaudio.jp/file/071008/06.jpg

見てわかるように鋭いスパイクと丸く白い合成樹脂が取り付けられたものと双方向
で使い分けが出来るようになっている。実は、ある不都合があり最初は丸い方を
床面に向けて試聴を開始したものだった。この時点で弦楽器の質感については直感的
な違和感はなく、下記のイベントにも登場させたものだった。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/536.html

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/541.html

そして、図らずも当日参加されたお一人からは次のような賞賛を頂く事が出来た。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0394.html

さて、そのような初期セッティングでの日数が経過し、問題が解決したのでいよいよ
鋭いスパイクを床に直接打ち込んでみようと試したのである。ここの試聴室の床は
スラブ鉄板の上に10センチ以上のコンクリートを流し込み固めている。その上に
既成のタイルカーペットを敷き詰めているが、そのゴム層を突き抜けてスパイクの
先端がコンクリートに直接突き刺さるイメージである。

これには期待していたのだが、確かにスタジオ録音のリズム楽器の輪郭は鮮明に
なるなどの変化はあったものの、オーケストラに関しては以前よりも質感は悪化し
てしまったと私には感じられた。

また、このフットの先端をどちらにするのか、という問題に関して共通して意識し
ていたことがある。それはフロント側二個のフットはねじ込みをわずかにして長く
使用し、身体にリア側の二個はぎりぎりまでねじ込んで短くするということで、
後方に対して少しでも傾けて仰角をつけようとしていたことだ。

これは私の長年の経験でWilson System 6〜8まで、そして同社MAXXでも。あるいは
KRELL LAT-1やLAT-1000でも、そして最も有効だったものとしてMOSQUITO NEOも
そのチューニングによる変化を表してくる。

NEO TAILということで下記の随筆の最後に述べている音質変化の傾向がそうだ。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto54.html

その一例を引用してみよう。

             □ 引用開始 □

数時間に渡りテストしてきたNEO TAILによる三つの表情をまとめてみると次のよう
に表すことが出来る。色々な楽音でのパラメーターを一言ずつ整理してみた。

・オーケストラ(ステージ)との距離感が大きい順      "C" "B" "A"
・弦楽器群の定位感がNEO本体から遊離して中間に浮かぶ順 "C" "B" "A"
・ヴァイオリンの質感に柔軟性を感じる順               "C" "B" "A"
・木管楽器の音像が小さく引き締まる順                  "A" "B" "C"

             □ 以下省略 □

トゥイーターとミッドレンジの相対的な位置関係の変化から上記のように変化する
スピーカーは他にも結構あるもので、"A"とはほぼ垂直、"B"から"C"へと傾きが
大きくなるということだ。

これを意識していたのだが、Ultima Salon2の前後二組のフットの長さを調整しても
高低さは前後で1センチ程度にしかならなかったと記憶している。

ここで先ず私が判断したことは、コンクリートの床面に対しては付属スパイクの
鋭い先端を使用しては良くないということだった。

実は、このような経験は大分以前から感じたことがあり、次の随筆でも…

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto21.html

第六章『ジグソーパズルの最後の1ピース』で下記のように述べている。

             □ 引用開始 □

私のフロアーでは、スピーカーを置くステージはコンクリート基礎の煉瓦タイル
仕上げになっているため、いきなりスパイクを取り付けてしまうと位置を決める
のに苦労してしまう。タイル・カーペットを敷いた上にCS7を乗せて、とりあ
えずは音を出し始める。

             □ 以下省略 □

もう11年も前のことであり、当時の新製品だったThiel CS7 には同様なスパイクが
付属しており、それを本体から下に伸びた木の枠組み、いわゆるハカマのコーナー
にねじ込む構造になっていた。私はタイルカーペットにこのハカマを乗せて試聴を
開始したのだが、その後にスパイクを取り付けてコンクリートに直刺ししたところ
今回と同様な質感の低下を感じ取ってしまったのだった。しかし、当時はそれを
表ざたにすることはなかったものだ。

今回のUltima Salon2は思い出しても当時の変化と同じ傾向であり、これをクリアー
しなければという思いから、敢えて今後に続くストーリーのイントロとして実際の
ところを述べることにした。

さあ、果たして私はこの後どのようにつめて行くのか!?

そこで用意したのが、この小物。

http://www.dynamicaudio.jp/file/071008/05.jpg

黒く丸いブロックはNASPECが輸入しているJ1 Projectの製品だが、現在では生産
完了となっているので現行製品で近いものとして下記のBA72D 大型ベースを紹介
することが出来る。

http://www.naspec.co.jp/j1/j1-index.html

そして、金属製のディスクはTAOCのスパイク用プレートPTS-4という製品。

http://www.taoc.gr.jp/taoc/insulator.html

この両者が実に上手くぴったりとはまり込んで私の狙いに最適だった。

http://www.dynamicaudio.jp/file/071008/03.jpg

その使い道というのが、このようなセットアップとなった。合成樹脂の丸い先端が
PTS-4のくぼみがジャストにはまり込んでいる。
ただし、ここがミソなのだが、このセッティングはフロント側二つのフットにしか
行なわず、リア側二つはそのままで接地させている。するとこうなる!!

http://www.dynamicaudio.jp/file/071008/02.jpg

Ultima Salon2のベース部分を下から除いた写真だが、このようにフットのねじ込み
加減だけの調整できなく、もっと大胆に仰角をつけようとしたもの。
さあ、このチューニングがどのような結果をもたらしたかというのが次の写真だ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/071008/01.jpg

前述のように既にNEOはNEO TAILによって仰角を変更し、標準の"A"ほぼ垂直から
"B"の角度にしてある。これが推薦ポジションでもある。そして、その向こう側の
YG Acoustics Voyagerが完全な垂直状態となっているので、それとの対比でご覧
頂きたい。

この状態でUltima Salon2のベース部分のフロント側中心部で床から5.5センチ、
リア側では1.5センチという高低差になっており、偶然にもNEOの"B"の角度とほぼ
同一という仰角となっている。ここが最大のポイントだろう!!

さて、設計者に無断でこんなセッティングをしていいのか? これは邪道なのか?

実は、このようなトゥイーターとミッドレンジドライバーの位置関係に関しては
私はずっと以前から承知しており、かつ他のスピーカーメーカーでも同じような
着眼点がある。下記のブリーフニュースをご覧頂きたい。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/393.html

その何かにこんな一節がある…。

             □ 引用開始 □

the subject .2「Amati Anniversarioは私の気持ちをどう揺さぶるのか!!」

http://www.dynamicaudio.jp/file/051223/AmatiAnniversario.doc
ここで述べられているスペックだけでは音はわからないだろう。しかし、以前の
Amati Homageに対して仰角を設け、ミッドハイレンジの時間軸・位相軸を意識した
デザインに変化したことで私は同社の進歩を即座に感じ取ることが出来た!!

Amati/Guarneri Homage共に垂直にレイアウトされたデザインに見慣れていたもの
だが複数の設計ポイントにおいて同社が新しいパラメーターを獲得したことが伺え
るものだ。この音を日本で最初にハルズサークルの皆様にお届けできるのである!!

             □ 以下省略 □

あれだけ頑固なデザインを自信をもって続けてきたSonusfaberがなぜ、ピサの斜塔
よろしくスピーカー全体に傾斜をつけたのか!?

Avalon、B&W、lumen white、Wilson Audioなどなど、私がこれまでに手がけてきた
メーカーでも同様な垂直方向のレイアウトをとっているものは珍しくない。それは
皆さんもお解かりのことだろう。

今思い出すと、KRELL LAT-1が発表された当時、そのスパイクは同じ長さで水平に
しかセッティングできなかった。それを今回同様にスペーサーを挟むことで仰角を
つけたところが驚くほどの変化を示し、それをアクシスを通じて報告したところ
次回の生産から付属品で長いスパイクが用意されるようになり、それをフロントに
ねじ込むと同様な角度が付けられるようになったというエピソードがあった。

距離にすれば数センチのトゥイーターとミッドレンジドライバー。
その両者とリスナーの耳を結ぶ細く長い三角形のふたつの長辺の距離感の違い。
百分の一秒間で3.4メートル進行する音波、そして-6dBで50KHzまでも再生すると
いうUltima Salon2のトゥイーターでは、その最高域での音波の波長は何とわずか
68ミリ、更にトゥイーターのクロスオーバー周波数である2.3KHzの波長でも14.7
センチということになる。

つまり、それらの高い周波数の波長がこのように短いということはミッドレンジが
発する音波とトゥイーターが発生した音波が空間で交じり合う際に、耳がある距離
において位相がどのようにマッチするかという問題点があるのだろう。

「時間軸・位相軸を意識した」というのはそういうことであり、マイクロホンで
測定する場合のパラメーターとして重要なポイントになっているものだ。

http://www.dynamicaudio.jp/file/070903/Ultima2-WP.pdf

当然このホワイトペーパーを見てわかるように、十分に科学的な根拠をもって設計
されたUltima Salon2なので、同社から科学的な反論がなされれば私は経験則として
のノウハウの一環としてしか対抗できないものだ。しかし、私が追求する美意識と
いう観点では妥協できないものであり、人間の耳で聴いた結果、しかも私ほどの
経験を重ねてきた耳と感性から追求する美意識ということには、ユーザーからの
評価も私の感性の自信・裏づけとして述べることが出来るだろう。

そして、何よりも私はUltima Salon2に関してRevelと議論しようなどとは思っていな
い。それは、これから述べていくUltima Salon2の素晴らしさを知ってしまった以上は
彼らの偉業を讃えずにはいられないからだ。

さて、以上に述べてきたことは一日で体験したエピソードではなく、実に五週間
近くの時間をかけて色々と検証してきたものだった。そして、上述のセッティング
が完成した翌日、私は前夜から考えていた最終調整をしてみようと思っていた。

Ultima Salon2には低域とトゥイーターのコントロールの両方があり、それらの
スイッチを変化させた時の周波数特性のグラフも輸入元から頂いている。

三個のウーファーに用意されているのは3ポジション、Normal、Contour、Boundary
のみっつである。Ultima Salon2のクロスオーバー周波数は150Hz/575Hz/2.3kHz
であり、各々-24dB/octという急峻なスロープで仕切られている。

150Hzから下を受け持つウーファーの特性はフラットなNormalに対してBoundaryは
100Hz以下でおおよそマイナス5dBという減衰特性を持たせており、低域が飽和しや
すい部屋にマッチさせることが出来る。この状態をこの試聴室で試してみると低域
の音像が急激に絞り込まれ細身のベースラインとして聴くことが出来る。

Contourは両者の中間として減衰量はマイナス2dB程度となり、Boundary程の大きな
変化はないものの、スタジオ録音のベースではすぐに変化に気付き、オーケストラ
などでは微妙な変化量として的を得たポジションかもしれない。
当然ここではフラットのNormalで調整をしてきたものだ。
では、トゥイーターのレベルはどうなのか?

上述のセッティングを完了して私が納得できる質感でオーケストラが鳴り始めた時、
設計者が求めなかったセットアップの環境変化に対してUltima Salon2は微妙な反応
を課題として私に提示してきた。なるほど、弦楽器の質感は後述するように私の
求める方向へと上手くチューニングできたが、これまで私が評価してきた他社の
スピーカーよりも見劣りするところがあってはならない。これを再チェックせよと
Ultima Salon2が暗黙のサインを送ってきたようだった。

そして、翌日のこと。トゥイーターのレベル調整は聴く人に快感と不快感の両極端
な印象を与える重要なポイントだ。しかし、前日までの試聴からマイナス方向に
するという気持ちは一切なかった。

既に、聴感上では上記の仰角を付けたセッティングでトゥイーターの発する光量と
言うべきもので、高い音階に移行した時に同じ楽器が演奏する質感に変化がないか
どうかというチェックポイントで私は再確認の必要性を感じていたからだ。
つまり、トゥイーターレベルが0というセンターでは、私が行なったセットアップ
によって聴感上でのレスポンスの低下を聴きとっていたからだ。

そして、トゥイーターレベルの調整を何回も繰り返した結果、私が選択したのが
下記の写真のポジションだった。

http://www.dynamicaudio.jp/file/071008/04.jpg

この変化量はたったの+0.5dBというもの。+1.0dBでは高音階に移行したときに質感
に煌めきのようなアクセントが付加されることを私は否定的に感じていたものだ。

2.3kHzから上を受け持つトゥイーターが10KHzに差し掛かったところで+0.5dB、
このさじ加減が私の美意識の決着するところだった。



            〔3〕別次元のオーケストラ

芸術の秋、というのはオーディオにとってもありがたい一面があるようだ。
空調を止めても聴き続けることができるからだ。

営業中はじっくりと私が試聴するということは中々出来ないものだが、閉店後に
試聴室の空調を止め、照明も半分落として、いよいよこれまでの成果を味わって
みようとデスクを離れた。

あれほどこだわってきたマーラー交響曲第一番「巨人」の第二楽章をリモコンで
呼び出した。すると、P-01のカウンターが始動して演奏が始まる数瞬前にボストン
シンフォニーホールのステージに居並ぶ大編成オーケストラの楽員たちが呼吸する
音なのかざわめきなのか、Ultima Salon2が発する情報量の大きさを誇示するかの
ように私の耳をくすぐる…、さあ始まるぞ!!

「あー!! これは何と言うことか!! 変わったのは弦楽器の質感だけじゃないぞ!!」

冒頭の重厚な弦楽器群のアルコの繰り返しが左右から湧き上がるが、先ず今までの
チューニングの成果として程よい摩擦感を含ませた弦楽器の質感が空間に溶け込む
ように展開する美しさに心を奪われる。

今まで、垂直に立てただけのUltima Salon2では、左右のスピーカーの周辺にまとわ
り着いていた弦楽器の集団が、いつも私が述べているように面として横方向に散会し
ステージという水平線の上にゆったりと腰を降ろしたように定位するではないか。

Ultima Salon2が奏でる弦楽器には独特の浸透力があり、左右のUltima Salon2が
ある中間に他のスピーカーが置いてあるにも関わらず、細やかなヴァイオリンの
各パートが幾層にも重なり合って異なる色彩感が見え隠れする。絵画の絵筆に平たい
ものがあるが、その刷毛のような筆先に何色もの絵の具を含ませて横方向にさっと
払ったように一つの直線に見える中に様々な色合いが交じり合っていることがわかる。
しかも、素晴らしいのは各々の絵の具が完全に交じり合わずに、複数の色が確実に
存在しているという解像度の素晴らしさを実感させてくれる。これは凄い!!

そして、聴き進むうちにマーラーの特徴でもある木管楽器がソロで演奏し、時折
その姿を弦楽器の背後に浮かび上がられるのだが、その木管楽器の位置がすーっと
奥行き方向に後退しているという変化を私は嗅ぎ取っていた。

それは木管楽器のリードのバイブレーションが心地よい連続性を保ちながら、自身
の発したエコー感として以前になかった拡散領域の拡大を感じさせるからだ。
これほどクラリネットやオーボエの楽音が爽快に空間に浮かび、たなびくような
余韻感をまといながら演奏していただろうか?

ボストンシンフォニーホールのステージの奥行きが、オペラの大道具の建物の壁でも
取り払ったかのように、まだまだ奥深くに光沢のある木目の床材が伸びていったと
いう錯覚を催すほどだ。

Ultima Salon2が提示する空間表現がこのようにセッティングで豹変するという
ことは、私は使用されているドライバーの性能の素晴らしさとネットワークに使用
されているパーツの高品位を裏付けるものと解釈しており、潜在能力の大きさを
オーケストラの再現性で遺憾なく発揮したものと思う。こんなマーラーは初めてだ。


弦楽器の素晴らしさに目と耳を奪われる第二楽章がやがて終わり、最初に感じた
ホールエコーの残滓が耳に心地よく残っている。いや、このまま終わりたくない。
第三楽章が始まるまでのトラックの切れ目がこれほど長く感じたことはない!!

ティンパニーを優しく叩くリズムで始まる第三楽章は木管楽器が主役を務めるかの
ようにいたるところで美しい響きを投げかけてくる。同じ旋律をクラリネット、
オーボエ、フルートと連続して演奏し、パターンが定着した頃にピッチカートの
弦楽器が隙間を埋めるように静々と微妙なエコー感を…、えっ、何と…!!

「ピッチカートで弾いた瞬間に、その直後に一次反射音が聴こえてくるぞ!!」

そう、こんな体験は初めてだった。シューボックスタイプのボストンシンフォニー
ホールは写真で見ただけだが、左から指揮台までのステージのすそに沿って並ぶ
ヴァイオリンが奏でたピッチカートのエコー感が確かに、確かに聴こえる!!
長年聴き続けてはたCDにこんな音が入っていたのか!?

使い古された言葉ではあっても、いや何年この仕事をしていても新発見の喜びは
語らずにはいられないものだ。そうだったのか〜、と思わず努力が報われたという
安堵感と、早速誰かに聴いてもらいたいという気持ちが私の頬を緩めていただろう。

11分で締めくくる小澤征爾の第三楽章が中盤に差し掛かると、グランカッサを
ゆったりと鳴らす重低音が響きだす。おー!! これは何としたことか!!

「えっ、いつもこのパートではウーファーが鈍重になってしまったように大振りの
 叩き方でグランカッサを誇大表示するスピーカーばかりだったのに!!」

そう、演出効果とも言えるグランカッサの響き加減の大小は色々なスピーカーで聴き
慣れている。しかし、150Hz以下を専門に受け持つUltima Salon2のウーファーは
これまでの記憶のパターンに一致しないことが直ちに判断できた。同社では30cm
以上のウーファーでは出力後に室内に放射された音波が変調されるとの主張から
20cmウーファーを三基搭載するということに前作からこだわってきた。

スタジオ録音での検証はこれから行っていくが、4ウェイ構成という魅力がここで
叩かれるグランカッサの響きに表れている。重量感たっぷりに、しかも膨らまず、
打音の後にホールに拡散していくエコー感を目視できるほどに鮮明に保つ技!!

このグランカッサを誇張感なく響かせるということは3ウェイでは中々至難の業で
あり、チャームポイントとしてグラマーに聞かせるスピーカーが多い中で何と新鮮
な表現であろうか!!

お陰でコントラバスの弱音が鮮明に奏でられ、グランカッサはあくまでもステージ
のすべてを埋め尽くす響きを求められているのではなく、ティンパニーの左で
自分の領分をはっきりと節度として音像に表現している。そう、音像が見えるのだ。
こんな低域を出すスピーカーはあったか!?

深夜の試聴室では色々な発見もあり、この環境で聴くことでUltima Salon2にかけた
私のこだわりと美意識がオーケストラの演奏という現実的なもので語れるように
なった。いや、私が語るのではなくUltima Salon2そのものが聴き手に語りかける
ことが出来るようになる下地を私が作ったに過ぎない。

さあ、このまま第四楽章の迫力ある展開に身をゆだねよう!!

その最終楽章のエンディングで、魂が瞬間的に飛び出してしまったかのように、
指揮者は最後の最後に上体をかがめ、体中の力を抜いて両手を垂らし、ゆらゆらと
両手が揺れるにまかせるという姿勢でエネルギーをで使い切ったことを表現する。
オーケストラの楽員は自分が放った最後の一音がホールエコーとして空中に溶け
込んで行く様子を見つめながらスコアーの続きがないということを聴衆に聴かせる。

感動の余韻を構成するのに指揮者が果たす役割は実に大きい!!

そして、指揮者という存在が見えないオーディオの世界では、スピーカーという
存在が空間という小宇宙を擬似的に作り出し、そこに三次元的なステージを聴き手
に錯覚させることで大きな感動を提供する!!

私が選んだ“筆”は、使い手の感性と技にきちんと反応するということを証明した。

その感性と技を手に入れるためにはどうしたらいいのか!?

簡単だ!!

ここでUltima Salon2を聴き、感動出来たのであれば、皆様は私が選んだ“筆”で
描かれた美意識を共有していらっしゃるという証明になるものだ!!

先ずは聴き手が感動できるかどうか?
そこに挑戦しているのが私なのです!!


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
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