発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
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〔1〕序章 2003年11月に新メカVRDS-NEOを搭載した新製品X-01を初めて試聴した印象と、なぜ ESOTERICはSACDの信号をPCMに変換して再生するという方式を選択したのか、次の レポートに当時の思い出がよみがえる。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/250.html しかし、こだわりのある私は第一印象だけでは納得できずにX-01の音質追求は 第二幕として次のような展開を見せた。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/253.html すべてが新しくなるということは必ずしも音質において当初から完璧なものに仕上 がるということはなく、このような過程を経て完成していった。そして、新メカニ ズムの特徴をどなたにでもわかりやすいように私が解説を行い、完成したX-01によ っていよいよSACDのディスクもH.A.L.の試聴ソフトとして認定できるレベルに進化 してきたという実感を新たにまとめたストーリーが次の随筆であった。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto52-01.html 1997年に開発されたP-0から六年の歳月をかけ、VRDSというESOTERICのお家芸を 磨き上げ、遂に新メカVRDS-NEOの開発に成功したということは、またにESOTERICに とっての一大飛躍であり、本格的なSACDプレーヤーの登場ということでは第一段階 の hop! がこの時に踏み切られたと言っていいだろう。そして… 「安いプレーヤーでもSACDがかかるという普及促進を図る時代には休息を与え、 本当にSACDでなければできないことを消費者に啓蒙していくというハード メーカーの活躍の場を模索する時期にさしかかったのではなかろうか…」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto53.html という一節をプロローグに配した次なる随筆を作成したものだったが、そこでは… 「2004年の夏"P-01 & D-01"という前例のない高価なプライスタグを付けた画期的 なSACD/CDプレーヤーとして世に送り出したESOTERIC、そこに集う技術者集団と、 それを率いる音と音楽にこだわった熱血漢をめぐるほんのささやかな物語を今回 は追跡する」 このようにVRDS-NEOはなぜ開発されたのか、という真の意味を問いかけるものであ り、このストーリーの結論として再度私が強調しておきたいのは次なる思想である。 「このくらいのコストでこの程度の音が出るものを作ろう、という目指す音質基準 が前例のあるものであれば苦労は少ないものだ。また、同程度の音質でコストを 下げて商品化しようという開発もあるだろう。しかし、そこには「挑戦への勇 気」は見ることが出来ない。 果たして第一部でご紹介した大間知氏や開発グループの方々は、セット価格440 万円という高価なシステムを作り上げる場合に、当初の企画段階から開発過程、 そして音質の検証と練り上げという時系列の中で目指す音、求める音という具体 的なターゲットを特定し持ち合わせていたのだろうか? 答えはNO であろう。 開発の段階で設計の自由度ということを繰り返し述べているが、技術者が本当に やりたいことを妥協しないで、自分に嘘をつかずに、そして経営トップがそれを 認めたときに一体どんな素晴らしい音が出る作品が出来るのかという結果は誰も 知らなかったのである。つまり、未知のものを作り上げるという情熱と信念があ っただけなのだ。 440万円というプライスを付けて果たして何台売れるのか? 価格にふさわしい音 質とはどんなものなのか? それは時代が求めているものなのか? どんなショップ が何社くらい取り扱ってくれるのか? 企業としての採算は? こんな疑問だらけで未知数ばかり、そして大きなリスクもあるだろうP-01&D-01 のプロジェクトを発進させたということは株式会社ティアック エソテリック カンパニー・プレジデント大間知 基彰氏が上述のハイエンド思想の持ち主であ るからに他ならならないだろう!! 柔軟な発想をする有能な若手のエンジニアとチームワークによって、彼らの技術 力と感性による判断に妥協を許さず嘘をつかせず、これまで世界中に存在してい なかった素晴らしいものを作り出そうという執念があったからこその結果である。 だからこそ、ここに「挑戦への勇気」があったと言えるのだ。そして、次は私に も同様な挑戦をするという順番が求められてくる。ESOTERICが情熱と執念で作り 出したP-01 & D-01を開発した彼らが知らなかった素晴らしいパフォーマンスを 引き出し実演し証明するということだ。」 ここで私が強調しておきたいポイントを抽出すると、このような一言になる。 「すべての妥協を配して作り出したものがどんな音を聴かせてくれるのかを予測 したわけではなく、その結果を未知の領域として挑戦したら最高到達点では どのような世界が待ち受けているのだろうか? その夢の領域に挑む…」 ESOTERICとしての最高到達点のレベルを一気に達成した。これはすなわちJump!!! として世界記録の更新をしたということに他ならないだろう!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 敢えて説明の要もないだろうが、三段跳びは陸上競技の跳躍競技に属する種目で、 助走をつけてホップ・ステップ・ジャンプと三回跳び、その距離を競うものだ。 しかし、ホップとステップは同じ脚で連続的にするという決まりがあり、例えば 右足で踏み切った選手はさらにステップも右足、ジャンプを左足で行うということ を知っているのは競技のテレビ中継を見ている人々の何割くらいいるだろうか? 私は学生選手に国内のトップアスリートが三段跳びの指導をする記事を偶然目に したのだが、hop、step、では助走スピードが減速しないように高さよりも速度を 意識すること。そして最後の jumpでこそ二回の跳躍で使わなかった一方の蹴り足 で高さを求めるというアドバイスだった。 ESOTERICは最後のjumpで未知の領域まで登りつめたものだが、その跳躍はどこから 生まれたのか? そう、いきなりhopからjumpへと飛躍してしまったのではないだろ うかと私は考えていたものだ。 hopとしてX-01、jumpとしてP-01 & D-01、であればstepとして位置を占める存在は 必要ないのだろうか? 私は最後のjumpが終わった後に、ESOTERICの担当者にX-01と P-01 & D-01をつなぐ製品を開発すべきである、という進言を行ったのは昨年の ことだったろう。 それは決してP-01 & D-01のコストダウンモデルという位置付けであってならない。 そう、stepの跳躍はhopと同じ足で飛ばなければならないのだ。すなわち、X-01と VRDS-NEOを開発したスタート地点を振り返り、その踏み切り板に足をかけた時の 助走スピードをそのままにして新しい飛躍をしなければならないのだ。 果たして、stepではhopからどのくらいの飛距離を稼ぐことが出来るのか? その予測を行える資料がこれだった!! http://www.dynamicaudio.jp/file/050824/p-03_d-03.pdf 〔2〕推測 さて、上記のリンクによって概要が述べられているが、私なりに気がついたことで 強調しておきたいポイントを追加してみた。 先ずP-03 に関して ・外観はご覧のようにトレイの位置が右側に移動しているのがP-01と大きく異なる ところである。これはVRDS-NEOのメカの次に容積をとる電源部をひとつの筐体に 収納したためである。P-01のように理想的には別電源という方法が望ましいこと はわかるのだが、P-01 & D-01で結果的に4筐体を並べなければならないという 図式からすると大変セッティングがしやすくなったものだ。優秀なトランスポー トがラックのひとマスに収まるというのは人によっては大変ありがたいことでは ないだろうか。 ・次に外観からはわからないことだが、P-01の随筆でも写真で説明している厚さ 10mmもあるスチール製の強固なフレームは使用されていない。これはコストの かかり方が半端ではないので、とても採用は困難であろう。であるからこそP-01 の完成度を示したものであろうと思われる。P-03では5mm厚のスチール製ボトム プレートにメカや電源を搭載するという構造になっている。 ・P-01ではPCMのアップコンバートにより88.2KHz、176.4KHzへとオーバーサンプリ ングしているが、P-03ではそれに追加してDSDへのコンバート機能を追加した。 これによって通常のCDをSACDとしてDSD変換して出力することが可能になった。 ・トレーにはシャッター機構が施され、ローディングすると密閉状態になる。 これは以前の同社プレーヤーにはなかった新機軸のアイデアだ。 ・VRDS-NEOはX-01世代、P-01世代、X-03世代、そして今回のP-03世代と進化した。 ・ターンテーブルの材質はX-01世代のマグネシウムからジェラルミン製に変更。 ・100KHzのUniversal Clock 入力を装備。これはUX-1/3などに装備されたものと 同じでDVDオーディオ系の48KHzの倍数になるクロックにも自動追随するので便利 なものだ。しかし、P-01のクロック入力も実は同じように100KHzの入力に対応し ているので、どうぞご安心を。 そして、D-03 に関しては ・最初に声を大きくして強調したいところが、これだ!! http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/250.html 冒頭のこのリンクでも後半にESOTERIC 大間知プレジデントの声明としてDSD信号 をPCMに変換することで音質的なアイデンティティーを確保したというくだりが あり、これまでのESOTERICのDACはすべてバーブラウン社製24bitマルチビット型 D/AコンバーターPCM1704というチップを使用してきたものだった。 それがなんと!! アナログデバイセス社製のAD1955という1bit系DACを差動モード で使用するというのだから、驚いてしまった。 前記のリンクによる資料で概要が述べられているが、私が最大の関心を持って いるのが、心臓部であるDACチップの変化である。 これまでのESOTERICの音作りの根底を揺るがすような一大変化をなぜ採用した のか、試聴しての判断を待つしかない!! 〔3〕試聴 このP-03 & D-03のプレス発表を行う数日前、2005年8月24日の午後、ESOTERICの step を担う開発試作機が持ち込まれた。私はこれまでにも何度となく持ち込まれ た多数の新製品をここで評価してきたものだが、ESOTERICが持ち込んでくるとき には他社との大きな違いを感じている。 それは他社の場合には自社の試聴室で音質を決定したものを持ち込んできて、これ で音質は決定しましたがどうでしょうか? という、いわばお披露目をしてくること が大半なのだが、ESOTERICはここに持ち込んでからH.A.L.のリファレンスシステム と環境、そして私の耳と選曲によって最後のチューニングをここで行いながら私が それを音質的に同時検証するという流れがあるということだ。 つまり、自社試聴室の設備で判断できないこと、聴き取れない情報量などをここの 世界中のトップモデルたちを使って吟味し最終的な量産前の音質決定をするという ことなのだ。そして、私は同社の過去の製品群を知り尽くしているので判定役とし ても厳しい注文を付け、同社対比や同価格帯の他社製品などともいっぺんに比較検 証できるというメリットを音質の仕上げに生かしているのである。 一言で言えば近年のESOTERIC製品の最終的な音質はH.A.L.のクォリティーによって 鍛えられ決定されてきたという図式が今回も数時間を要して展開されたのであった。 機材が持ち込まれてから6時間を経過して、貸しきり状態での試聴が続いた。 -*-*-*-*- ESOTERIC P-03 & D-03の検証システム -*-*-*-*- ESOTERIC G-0s ↓ 7N-DA6100 BNC(Wordsync)×3本 ↓ ESOTERIC P-01 & D-01 and 7N-DA6300 MEXCEL AES/EBU 1.0m ×2 vs ESOTERIC P-03 & D-03 and 7N-DA6300 MEXCEL AES/EBU 1.0m ×2 vs ESOTERIC X-01Limited vs EMM Labs CDSD & DCC2 ↓ ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 1.0m and ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 1.0m ↓ HALCRO dm8(AC DOMINUS) ↓ ESOTERIC 7N-DA6100 MEXCEL RCA 7.0m ↓ HALCRO dm68 ×2 (AC DOMINUS×2) ↓ PAD YEMANJA BI-WIRE SPK 5.0m ↓ MOSQUITO NEO -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 今回はタイトルのようにstepという最終跳躍の一歩手前の価格帯で登場した新製品 であり、P-01 & D-01というフラッグシップの存在と価値観をそのままに、その ハーフプライスでESOTERICが何をなそうとしているのか、そして、同価格帯のEMM Labsのプレーヤーを私はなぜ同席させたのか? ここで一言述べておきたいのは、 その両者を時折の確認のために使用したものであり、音質的な参考として比較対照 させて新製品を聴いたのではないということだ。 私は今回のP-03&D-03に真の意味で要求したのは130万円のX-01Limitedをどれほど 引き離し、240万円の製品としての価値観をどれほど聴き手に納得させるかという ことを主眼にして徹底してX-01Limitedと比較試聴したのである。 以下は深夜にまで及んだチューニングと試聴の繰り返しにおいて、X-01Limitedを 最初に聴き、その後にP-03&D-03によって感じ取れた印象である。 最初はP-01 & D-01の開発段階で重要な役目を果たした通常のCDを二枚。 マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団の第二楽章、そして http://www.kkv.no/ kirkelig Kulturverksted ・Thirty Years’Fidelity (シルケリグ・クルチュールヴェルクスタ) より 10 Mitt hjerte alltid vanker/Rim Banna/Skruk/Krybberom (2003) である。 http://www.kkv.no/musikk_klubb/tekster/285_fidelity.htm 今までESOTERICのDACはPCM1704というチップをいかに巧妙に、かつ使用する個数を 倍加するなどしてコンポーネントのグレーディングとして音質格差を付けてきた ものだった。そして、その過程の中で私が注目してきたのは空間表現の中に聴く ことが出来る余韻感・エコー感の保存性、存続性ということであり、楽音の周囲と 背景にいかに隠された情報が刻まれているかに重きを置いてチェックしてきたもの だった。ノーマルなCD二枚を最初に何度も繰り返して聴くうちに、従来のX-01に 対してLimitedバージョンがどんな旨みをもってアップグレードされたのかを再度 認識することになり、このバージョンアップの効用を有効な投資として再評価せず にはいられなかった。それほどX-01Limitedの実力はD-01のノウハウを受け継いで 高い次元に達していたということだ。しかし、P-03&D-03は44.1KHz 16bitで記録 されたディスクに対して、176.4KHzへのアップコンバート、更にDSDコンバーター によるSACDフォーマットへの変換という新機軸をもって最初からX-01Limitedを 軽々と引き離していることが確認されたのだった。 D-01はESリンクによってDSD信号を受信して88.2KHzのPCMに変換してアナログ信号 を生成する。そこにESOTERICの音質的な選択があり、私もそれを高く評価しながら フラッグシップモデルのP-01 & D-01をゆるぎない存在として認定していたものだ。 しかし、D-03は従来のようなPCMへの変換に決別したまったく新しい発想による 設計がなされ、1bitのままでいっきにアナログ変換までもっていくという試みが 私のSACDに対する音質評価をどう塗り替えていくのか。いよいよSACDのディスクに よってチェックするときが来た。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- http://www.phileweb.com/shop/super-audio-cd/7/782.html Livingston Taylor ink 1.Isn't She Lovely イントロの口笛と美しいアコースティックギター、そして声量の変化にともなって 口元の音像の大きさがリアルに変化するシンプルな編成でありながらチェックポイ ントを多数含む一曲である。想像以上に善戦するX-01Limitedで一通り聴きなおし、 念のためにイントロをリピートして記憶を鮮明にしてからP-03&D-03に切り替える。 P-03に採用されたトレイ格納部のシャッター機能は滑らかな動作とクローズした後 の密閉度もよろしく、メカノイズを巧妙に封じ込めている。このアイデアは憎い!! SACDをローディングすると自動的にP-03&D-03の両者はDUAL DSDモードに設定され、 AD1955/1bit系DACにDSD信号が直結されたことを示す。さあ、スタートだ!! 息遣いが風となり口笛をそのままマイクに向けたら大変なことになっているはずだ が、口笛のイントロからして情報量の違いを見せつける。口元から放たれたかすれ た口笛のエコー感が周囲から湧き上がってくるのだから驚かずにはいられない。 そして、続くギターの質感が玉虫色に輝くようにエコー感を撒き散らすのだから たまらない!! いままで同色のエコー感だったはずだが、空中を漂っていくうちに、 日差しの中に霧吹きで水を撒き散らしたように余韻感が消滅するまでの滞空時間の たなびきの中できらきらと虹色に輝くようなイメージを私に抱かせるのである。 こんなシンプルな伴奏が彩りをあらたにしていくうちにテイラーのヴォーカルが 入ってくる。この声を聴いた瞬間にぞくっとする!! 自分の耳に内緒話の声が吐息 と共に吹き込まれて鼓膜をくすぐるように、テイラーの声はNEOの中央から私の 体表を包み込むように空気の中に振動する透明な微粒子を撒き散らすかのようだ。 ギターの弾き語りという音源の数がこれほど少ない演奏なのに、テイラーと一緒に タイル張りの浴室で過ごしているように感じるほどヴォーカルの温度感と息遣いが 見事に再現されている。 今までのNEOの周辺には目に見えない吸音性の壁面があった。しかし、P-03&D-03を 聴き始めると、その壁面は瞬く間に反射面に変化し、微弱な楽音がエネルギー感を 失わないようにエコー感の時間軸を延長しながら極めて自然に異次元空間にワープ していくような錯覚に陥る。これには参った。チェスキーというスタジオワークの 巧みなレーベルが、自分たちの作品にこのような可能性が含まれていたということ を彼らは知っているのだろうか!? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 深夜に及ぶ試聴とチューニングは続き、小編成のスタジオ録音に託したSACDという 記録の器にどんな可能性を封じ込めたのか。ギターとヴォーカルが作り出す眼前の 音場展開に心を奪われた私は次にこの一枚を持ち出した。 http://www.stockfish-records.de/ http://www.stockfish-records.de/stckff/sf_stockfisch_e.html この中からSara K. 3.トラックめの Turned My Upside Downを聴き始めた。 ギターの低音部がうねるように耳をくすぐり、その瞬発力あるアタックから信じら れないほどのエコー感が左右のNEOを駆け巡る。Sara Kのハスキーなヴォーカルは NEOのセンターに躍り出ると、左右のギターとの三角形のエネルギーバランスを絶 妙にこなしながら自身の余韻感を空気中に浸透させる。爽快なヴォーカルだ!! そこまではテスト曲に選んだのだから予測していたものであり、X-01Limitedでも ギターという楽器がスタジオワークの冴えによってここまで空間表現を含有するよ うになるのかと感心したものだった。その延長線上で推測していたのだが、P-03& D-03で同じ曲を聴きはじめた瞬間にそのスケールを10倍に拡大しないと表現できな いものがあったと驚かされるはめになってしまった。 二本のギターが左右チャンネルに位置を占めながら、そのエコー感は反対チャンネ ルへ向けて飛散し拡大していくという展開なのだが、左右双方が放つエネルギー感 あふれるギターはそれ自身のエコー感が通過していく空間を明るく照らし出すとい う演出をしていたことがわかったのである。 P-03&D-03で聴くとギターの背景に後光が輝くがごとく、ギタリストの背後から 強烈な照明が灯されたようにNEOの後方を明るく浮かび上がらせ、オーロラのよう に原色をちりばめたようなエコー感が揺らめいているのがわかるのである!! Sara Kのヴォーカルに起こった変化はキュートだった。口元の輪郭が鮮明になった と思ったら、オリジナルNautilusを彷彿とさせる浮遊感を漂わせ、ギターの余韻感 が背景を締める空間にきっちりと赤い原色のペンキをスプレーしたように存在感を 鮮烈にする。こんなにも色彩感を濃厚に変化しながらも、水彩画の絵の具が水で 薄められながら白紙の表面に色の残り香をほのかに置いていくような耳による残像 現象をもたらしてくれるのである。ああ、目をつぶってもSara Kがそこにいる!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 昼間の喧騒が過ぎ去って、今夜という残された時間の中で少しでもP-03&D-03の魅 力を私の体内に取り込んで記憶しておこうと次の選曲では趣を変えることにした。 http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/akiko-suwanai/ 諏訪内晶子/詩 曲(ポエム)より3トラック目の3. ラロ:ギター 作品28 である。 X-01Limitedではある意味聴きなれた諏訪内のストラディバリの質感がしっくりと 私の記憶の上をトレースしていく。さあ、P-03&D-03でDSDストレートに切り替えた。 するとどうだろう!! 驚きからため息へ、そして納得へと、聴きなれたはずの演奏 に隠されていた細やかなニュアンスを確かな情報量の拡大現象として私の耳は判断 したようだ。 タンバリンのリズムが印象的に叩かれ、その距離感をイメージの中で測定していた ものだが、P-03&D-03によって再現されたホールの大きさは手持ちのメジャーでは 足らないほどの奥行き感をあっさりと展開する。そして、最も私が驚き、そして 聴く人の誰もが気がつくであろう変化が諏訪内が弾くストラディバリ・ドルフィン の質感の激変として私の目線をそこに釘付けにしたのであった。 諏訪内の弾くヴァイオリンは周囲の空気を膨らませたり萎ませたりというエコー感 の呼吸とも言えるような存在感の提示を始めたではないか!! なぜ彼女の背景に響きというベールがまといつき、彼女のシルエットに半透明で 潤いのある余韻感のたなびきをともなうようになったのか!? SACDに含まれていた空気感のヒダをP-03&D-03があらわにした瞬間であった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- P-03&D-03が今夜ここにあるうちに、そのパフオーマンスを脳裏に少しでも焼き付 けておきたいという願望と時間との戦いから、次の選曲は短時間で多くを知ること が出来るものにした。 http://www.universal-music.co.jp/classics/gergiev/uccp1053/uccp1053.html ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》(ラヴェル編曲)歌劇《ホヴァンシチナ》 前奏曲(モスクワ河の夜明け)(ショスタコーヴィチ編曲) 交響詩《はげ山の一夜》(R=コルサコフ編曲) ゴパック(歌劇《ソロチンスクの市》から)(リャードフ編曲) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ワレリー・ゲルギエフ 録音:2000年4月28日(ライヴ録音)12月22日ウィーン、ムジークフェライン 18トラック目のゴパック(歌劇《ソロチンスクの市》から)この1分49秒の短い曲 の中に色々な発見をすることになった。 弦楽器群のアルコが美しく繰り返される中で背後の打楽器と金管楽器がホールの 大きさを的確に伝えてくれる。この冒頭の10秒間で既にP-03&D-03はX-01Limitedを 置き去りにしてしまったような変化を聴かせる。 どうして同じ録音のはずなのにこうもホールの残響時間を違えて長く響かせるのか。 オーケストラの各パートが発する楽音に髪の毛のように細い糸があったとしたら、 P-03&D-03に変えた瞬間にホールに微風が吹き込んで、すべての奏者の糸が水平に 近くなるくらいに風が流していくほどに、オーケストラ全体の発する楽音にエコー 感の尾ひれを優雅に提供するのである。こんな現象はSACDの秘めた可能性なのか!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 試聴とチューニングが始まってから8時間が経とうとしている深夜の秋葉原。 空調の静かなノイズに中で私の記憶は熱くP-03&D-03の魅力をメモリーした。 私が聴いたことのないSACDの再生音は、私が皆様に言葉で伝えずとも確実に驚きと 興奮を、そして最後には幸福感をもたらすだろうと実感するに至った!! 語らずとも伝わる…、それを体験する勇気のある方はハルズサークル向けの企画を ぜひ入手して頂きたい!! 国内最速で試聴を可能にする ハルズサークル に皆様もどうぞご入会下さい。 |
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