発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
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1.プロローグ 昨年6月に配信したNo.0936で私はこのように述べていた。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「私は“LUXMAN”好きです!!これでこそ“LUX”と言える新製品登場!!」 私が入社した当時、LUXのラボラトリーシリーズというアンプたちが活躍していま した。5C-50とか5M21とか、こんな型式を聞いてもピンと来ないでしょうが、当時 の国産のオーディオメーカーは元気一杯で斬新なデザインも結構あって、私はJBL を使って変則マルチをやっていました。もう20年以上前ですが…(^^ゞ そんな中で私が発売とともに惚れ込んでしまい愛用していたのがB12というモノ ラルパワーアンプでした。下記に画像がないのが残念ですが、かっこよかった!! さて、本日飛び込んできたニュースとは、あの“LUXMAN”が11年ぶりに本格的な 真空管セパレートアンプを開発したというのだ!! そして、私はそのデザインを見て狂喜してしまいました。そうです。私が B12を愛用していた当時のデザイン・スピリットが蘇っているからです。 モデルナンバーはCL-88 MQ-88 EQ-88 です。これはカッコイイ!! (^^ゞ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- そして、今年3月中旬のこと、ステレオサウンド誌に突然の記事が掲載された。 http://www.stereosound.co.jp/ssweb/ 418P 速報 ラックスマン=B1000f───編集部 この段階では音も価格もわからず、「ふ〜ん、そうなんだ〜」といたって現実味を 感じることなく見ていただけだった。それから数日たってLUXの担当者が訪れ、 製品の企画内容と価格を知ることになり、これはただ事ではないぞ、という思い から「とにかく音を聴かせてください」ということでお待ちすることになった。 そして、社外に持ち出すのは初めてということで、3/30に実物がやってきた。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/344.html 当日のうちに持ち帰るということで三時間程度で臨時の試聴を行なったが、ここで はシビアに音質が問われるので合格点は与えることは出来たが私のレベルで感動す るというまでには至らなかった。とにかく音質的には最終的なツメはこれからとい うことで、設計者としても顔見せ程度ということで理解して欲しいというコメント を頂き私としてはただお待ちするということで月日が経っていたのである。 そして、5/12に受信していたメールがこれ…。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 川又店長 様 毎度お世話になります。 ほぼ最終段階に仕上がりましたので、もしご都合がよろしければ明日お持ちして、 月曜日に引き上げるというスケジュールで聴いていただければと思います。 急な話で申し訳ございませんが、よろしくお願い申し上げます。 先日お邪魔した、開発担当の橋本はマスプロの準備で同行できませんが社長と一緒 にお伺いしたいと思います。 以上 よろしくお願い申し上げます。 *************************************** ラックスマン梶@営業部 横浜市港北区新横浜1-3-1 tel:045-470-6991 fax:045-470-6997 *************************************** -*-*-*-*-*-*-*-*-*- そうか!! いよいよか!! ということで代表取締役社長 土井和幸 氏 自らがお持ち になるということで、私もお断りするはずがない。早速了解の旨を返答し搬入した。 さて、その日にベストな状態に持っていくのは不可能である。そして、昨日は他社 の新製品の分析に一日を費やしていたのだが、ウルトラ・システムエンハンサーを 二晩リピートさせて本日の試聴に望むことにした。さて、どう熟成したことやら? -*-*-*-*- LUX B-1000f 検証のためのリファレンスシステム -*-*-*-*- ESOTERIC G-0s ■8N-PC8100■ ↓ ESOTERIC 7N-DA6100 BNC(Wordsync)×3本 ↓ ESOTERIC P-01 ■8N-PC8100■ ↓ PAD DIGITAL YEMANJA XLR 1.0m ×2 (税別価格\588,000.×2) ↓ ESOTERIC D-01 ■8N-PC8100■ ↓ PAD YEMANJA XLR 1.0m (税別価格\1,480,000.) ↓ Chord CPA 4000E(税別価格\1,620,000.)■ESOTERIC 8N-PC8100■ ↓ ESOTERIC 7N-DA6100 RCA ↓ LUX B-1000f(税別価格\3,600,000.) ↓ *今回使用したスピーカーケーブルは未公開の新ブランドのため匿名とします(^^ゞ ↓ MOSQUITO NEO 2.チェックポイント その1 <オーケストラにおける再現性> 前回も最初に聴いたのがこれ。マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン 交響楽団で第二楽章である。 「あっ!? これは、もしかしていいかも…!!」 いや、まだだ。感動というレベルで納得しなくてはいけないので、次の曲を早速 用意した。昨日のbeholdの検証で重要な役目を果たしたこのディスクだ。 小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラによるブラームス交響曲第四番・ハン ガリー舞曲第五番・第六番(90年当時PHILIPS 426 391-2)である。 まず、最初にハンガリー舞曲第五番・第六番を、続けて第四番の第三楽章、最後に 第一楽章という順番で試聴することにした。これにはちょっと選曲の理由がある。 一般的には大太鼓、ティンパニーなどの打楽器はステージ中央の奥か左奥という 配置が多いのだが、このハンガリー舞曲では右手奥から盛大に打楽器が叩かれる。 しかも、カラヤンが好んで録音に使用したというイエス・キリスト教会という残響 が豊かな環境であり、打楽器のエコー感が大変広範囲に飛び散っていくのである。 そして、第四番の第三楽章でも同様に打楽器が多用される演奏であり、最後に聴き たい第一楽章では弦楽器群と木管楽器の印象的で流れるような旋律を奏でることか ら、教会という環境で打楽器の残響感と弦楽器群の響きの比率のようなものを感じ てから最も重要なチェックポイントのある第一楽章を聴こうと思ったものだ。 さあ、どのように聴かせてくれるだろうか!? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 私が3/30に試聴した際にバーンインが足りないのか、それともB-1000fとはこんな ものなのだろうか? と思ってしまった最大の要因がオーケストラの弦楽器だった。 それまでリファレンスとしていたChord CPA 4000E+SPM 14000という純正ペアでは 力感と同時に弦楽器の質感に潤いと滑らかさがあり、そこにふんだんな余韻感が立 ち込めていたのだが、前回パワーアンプのみをB-1000fにした時には残念ながら弦 楽器の質感はそのようにはならなかった。 80人を超える弦楽器奏者が集合体としてNEOの左右に位置し、その集団にラップを かけたようにエコー感の拡散を閉じ込め、またラップの表面には無機的な輝きとい うか反射のまぶしさがあって戸惑いを覚えたものだった。しかも、ラップを透かし てヴァイオリンの姿を見ようとしても、これほどのシステムなのだからラップは透 明であるはずだが光が反射して演奏者の動きが見えないもどかしさがあったものだ。 それは例えとしてはギクシャクとした表情の硬さ、緊張感が感じられ伸びやかさが ないということで言い換えることが出来るかもしれないが、とにかく弦楽器に関し ては二ヶ月前のB-1000fでは感動できるレベルではなかったのだ。 後に述べるが、それはヴォーカルの質感にも共通して感じられていた。 さて、5トラック目のハンガリー舞曲が始まった!? 「あっ、ほぐれてる!!」 瞬間的にひらめいた言葉はこれだった。大編成オーケストラの弦楽器の群れが見事 に解像度を上げ、奏者一人一人が個々に分離したように展開しているではないか!! これが“ほぐれている”という表現になったものだ。 前述の弦楽器の集団を包み込んでいた透明のラップはきれいに消え去っている。 奏者の一人ずつが発生した楽音はパートごとに違うメロディーをトレースして演奏 しハーモニーのレイヤーを構成し、それらが個々に余韻感を発生して教会という 空間の天井を目指して交じり合いながら滞空している様子がわかるようになってい るではないか!! そこに大太鼓などの打楽器が鮮烈でありエネルギッシュな打音を響かせ、その打音 さえもエコー感を含み教会の壁を天上目指して駆け上っていくようである。しかし、 盛大な打楽器のエネルギーは決して主題の旋律を奏でる弦楽器群の領域とは明確に 一線を引き、余韻が交差することはあっても交じり合うことはない。見事だ!! しかも、集団としてラップを透かして見えなかった奏者が、アルコのうねりに合わ せていっせいに体を揺らす熱演振りも手に取るように見えてきたではないか!! それは残響が多い教会ではありながら、私が見ている小澤征爾の背中の向こうに 整然と多数の楽員が並んでいる様子が見えるような錯覚まで感じてしまった。 “ほぐれている”ということは弦楽器群の多数の奏者は微妙に各々の音色を持って いて、それらが集団として完全に同期した動きで弓が上下しているというビジュア ルを今日のB-1000fは聴かせてくれているのである。 この解像度の向上はオーケストラでの管楽器にも当然変化を与え、弦楽器の向こう 側から明確な点としての楽音の始まりを感じ、それが点から発するエコー感に包ま れて弦楽器の上方の中空に浮かび上がる快感がたまらない!! ラップを取り払ったオーケストラは今まで閉じ込められていたエコー感の拡散が自 由に出来るようになったことから、今までラップの中で飽和していた連続音が開放 され潤いと滑らかさが共存するようになっている。こうでなくてはいけない!! 3/30の段階では低域のエネルギー感が良かったという方向で第一印象をフォローし ようと意識してしまい、音楽を楽しむという気持ちには至らなかったが、今日の B-1000fは見事にオーケストラがかぶっていた“殻”を打ち破っていた!! 3.チェックポイント その2 <空間とスケール感における再現性> さて、明日にはなくなってしまうB-1000fだ。要領よく試聴を進めたい。 次は定番となったこれだ。 http://www.kkv.no/ kirkelig Kulturverksted (シルケリグ・クルチュールヴェルクスタ)・Thirty Years’Fidelity より 7. Som en storm/Ole Paus/Oslo Kammerkor/Det begynner a bli et liv...(1998) NEOの音場感は聴く人を魅了する。特にヴォーカルでは使い古された「スピーカー が消える」という言葉を否が応でも私に突きつけてくるパフォーマンスがある。 当然、この曲の冒頭のコーラスには文句の付けようがない。フロントエンドにP-01 という強力なマシンが使われているせいか、昨日のbeholdでの印象よりもくっきり と一人ずつの口元が見えるのが頼もしい。 いや、これも熟成したB-1000fの仕業なのか!? そして、Ole PausのVoiceがNEOのセンターに現れた時に、推測は確信に変わった。 音像の輪郭表現の明確さ、次にその中身の色の濃厚さが直ちに感じられた。次だ!! 10 Mitt hjerte alltid vanker/Rim Banna/Skruk/Krybberom (2003) http://www.kkv.no/musikk_klubb/tekster/285_fidelity.htm 女性ヴォーカリストがソロで歌い上げる導入部ではエコー感の広がりが心地よい。 ということは、今まで同じ曲をNEOで数え切れないほどに聴いてきた私に安心感を 与えてくれるほど豊かな情報量が余韻感と空間表現の素晴らしさに表れている。 ソロから混声合唱による伸びやかな声楽が教会の空間を埋め尽くすのだが、ここで 今までの記憶のファイルと比較して何か相違点はないかと考え始めた。 「そうだ!! これかもしれない!! 」 B-1000fをNEOのシステムに組み入れる前よりも、何と教会の照明が明るくなってい るようなのだ。カテドラルの天井にあるステンドグラスを通じて取り入れる自然光 と、司教が説教をする演壇の周囲に灯された蝋燭の明かり。それが教会の雰囲気を 作っているものだと想像してしまうのだが、B-1000fはほの暗い教会に新たな光を 投げかけて合唱団の白黒の衣装をくっきりと見せてくれるようになったのである。 しかし、誤解されてはいけない。昔から言われている国産アンプのイメージはない。 B-1000fが提供する光とは蛍光灯の冷え切った明かりでもなく、強力なスポットラ イトのまぶしさでもなく、写真を撮ったら顔の陰影が飛んでしまうような正視でき ないほどの輝きでもない。 教会の壁面に沿って上を向いた白熱球の温度感のある明かりが適度に調整され、 歌手の影が背景にうっすらと浮かぶ程度の絶妙なライティングをしているようだ。 その結果、NEOが自分の姿とスピーカーユニットの存在感を極めて巧妙に消し去り、 国産アンプは平面的な音だ、という既成概念を微塵もなく拭い去っている。 「そうか、歌っている空間が明るくなって視界が広がったから広く感じるのか!!」 まったく同一メーカーの支援がなくパワーアンプのみが組み込まれた場合に、その パワーアンプだけの個性を発見するというのは本当は大変困難なことである。 アンプだけを聴いているつもりであっても、実際には他のコンポーネントの個性と 融合しているからだ。そこを何とか分析できないものか!? では次の曲だ。 4.チェックポイント その3 <パワーを測る尺度として低域の再現性> これまでの流れから各論だけでB-1000fの個性と実力を語るのは大変難しい。 せめて同じ設計者によるプリアンプという相棒が誕生すれば更に明確に検証できる のだが…。それは今後の期待として、上記の流れでチェックできたことを肯定しな がら次の段階へと進みたい。 「Muse」からフィリッパ・ジョルダーノ 1.ハバネラをかけることにした。 http://www.universal-music.co.jp/classics/healing_menu.html この曲は冒頭からチェックが厳しい。フィリッパの多重録音によるバックコーラス がどれほど分離して広がるか、同時にセンターのメインヴォーカルがどれほど浮き 上がって立体感を発揮してくれるのか。さあ、スタートだ。 「おー!! バックコーラスの一人ずつにライティングがされたようだ!!」 過去の記憶のファイルと照合しようとしたら直感が先行した。確かにバックコーラ スの口元ひとつずつのフォーカスがきりりと引き締まり、B-1000fの貢献が大出力 の場面だけではないということを納得させる。この心地よさはヴォーカルの口々か ら発するエコー感の存続性が極めて高いことを表しており、個々の口元が分離して いることでエコー感が滞空する余地をNEOの周囲に与えているのだ。これはいい!! そして例のゆったり響くドラムがNEOのセンターに…!? この第一打のドラムの音でピンときた!! 重量感が増している。そしてテンション が引き締められている。きちっとブレーキが利いている。これはゆとりなのか!? この観察は直ちに昨日と同じルーティーンで確認することにした。次の曲だ。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- もう迷うことはない、このディスクをかけてみた。Audio labの「THE DIALOGUE」 から(1) WITH BASSだ。すると…? http://www.octavia.co.jp/shouhin/audio_lab.htm 猪俣 猛の振るうスティックがドラムヘッドをヒットする瞬間、キックドラムの ペダルが風を切って短いストロークで往復する場面が見えないほどのスピード感。 NEOのインピーダンスは150Hzでは4オームまで落ち込む。この4オームで500W/chと いう出力を発生させるB-1000fは猪俣猛のハイスピードな演奏をNEOの低域をコント ロールするというバックアップで支えてくれた。 音圧から察してもこの曲でのピークでは700-800Wという瞬間出力をNEOに送り込ん でいるはずなのだが、1オームで2,000Wという理論値通りのパワーハンドリングが 可能なB-1000fにとっては朝飯前という余裕すら感じる打撃音の連続である。 今までの国産アンプでこのような強烈な打撃音をくっきりと描くものがあっただろ うか? 正面からNEOをにらんで聴き続けるとキックドラムの音像が私の記憶でもベ スト・スリーに入るほどのコンパクトな面積に納まっているではないか!! 伸びやかに重量感を持って広がり滞空する余韻を伴う低音再生。肉眼では見えない 程の高速で腕を振るうドラマーが叩き出すハイスピードな低音再生。このどちらに もケーブルからケアしたB-1000fの電源部の強靭さとパワーステージの完成度が感 じられるものだ。 三日目の熟成で二ヶ月前のイメージをすっかり変えてくれたB-1000fは、この先に 一体どのようなパフォーマンスを聴かせてくれるのか!? しかも、ここH.A.L.という高いハードルを見事にクリヤーしたという実績の先に。 5.エピローグ http://luxma478.rsjp.net/product/b-1000f/index.html ここでLUXが言葉で述べていることを体感して頂くのが私の使命だと考えている。 大振幅での低域再生で発揮された力強さ。 オーケストラでの滑らかさを伴う解像度で発揮された繊細さ。 声楽が響く教会の音場感をスピーカーに提供する豊かさ。 そうです!! 言葉で語るのはこれくらいにしておきましょう。 日本が誇る老舗がこだわりを捨てることなく、そして妥協は排除して完成させた B-1000fが、これからは音楽で皆様に語りかけることでしょう!! その舞台を提供するのが私の仕事です。 幕開きにご期待下さい。 |
このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。 | |
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担当川又 |
TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!! |