発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
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2005年3月23日のこと、私にとってGOLDMUNDのイメージが大きく変わろうとしていた。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 1981年スイスのジュネーブに発足したゴールドムンドは、まずアナログ分野でその 評価を世界的なものとしてきた。1983年にはリファレンス・ターンテーブルが米国 のアブソリュートサウンド誌で五つ星(芸術の領域)の評価を得て、世界のハイエ ンドシーンに彗星のごとく、その航跡を印したのだった。 1987年MIMESIS 2プリアンプとMIMESIS 3パワーアンプを発表しエレクトロニクスの 分野でも、その英知を世界中のエンドユーザーのために披露し始めたのである。 1988年にはアポローグ・スピーカーシステムを発表し、クラウディオ・ロタ・ロリ ア氏によるデザインのこの作品は、ニューヨーク近代美術館に展示されることとな った。1990年MIMESIS 10 D/Aコンバーターを発表し、1992年のCDトランスポート MIMESIS 36と、大変計画的な製品開発を行ってきた。 そして、MIMESIS 2/3から始まったGOLDMUNDというメーカーのアンプに対する考え方 は、長らく私を初めとする日本のオーディオファイルにも受け入れられる側と否定 される側の両方があったのではなかろうか。 鋭角的でシャープな印象は同社が標榜するところの“ハイスピード”という設計思 想においては両刃の剣ではなかったかと思われるのだ。しかし、それは時代として 10年早く誕生してしまった弊害と言えなくもない。つまり、現在のようにシステム の最も下流であり出口でもあるスピーカーの近代化が追いついていなかった時期に 生まれてしまったと思われるのだ。18年前に日本で主流だったスピーカーの数々を 思い出して頂きたい。 その時代にGOLDMUNDを鳴らすにふさわしいスピーカーがあっただろうか? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- GOLDMUNDの数々の思い出は随筆でも述べてきたが、その時々に私が評価したハイ エンドスピーカーの多くで時代に即した素晴らしさに感激した思い出が多数あった。 やっとスピーカーの近代化がGOLDMUNDのエレクトロニクスに追いついてきた感があ るのだが、今回体験した同社の新世代パワーアンプのTELOS 600は、何と更にスピー カーに革新を求めるものであり、更にGOLDMUNDのテクノロジーが一世代先のクォリ ティーとパフォーマンスを達成してしまったと私を唸らせたものだった。 2005年3月23日 GOLDMUND社長のミッシェル・レバション氏が来訪した。その前夜に 急遽搬入されたTELOS 600はレバション氏の訪問に合わせたものであり、同氏と私が いっしょに再生音を確認してから解説をして頂くというスケジュールに間に合わせ るものだった。文字通り世界初の店頭公開であり、しかもMOSQUITO NEOでの演奏と いうことで私の期待も否応なく高まっていたのだった。 そのシステムは下記のように何ともシンプルなものであり、先ずはレバション氏に 試聴して頂いたのだが…!? -*-*-*-*- 次世代GOLDMUNDのリファレンスシステム -*-*-*-*- GOLDMUND MULTIFORMAT PLAYER EIDOS REFERENCE 税別 \8,500,000. http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/players.html ↓ GOLDMUND LINEAL DIGITAL CABLE ↓ GOLDMUND MIMESIS 24ME 税別 \5,000,000. http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/ultimate/mimesis24.html ↓ GOLDMUND LINEAL DIGITAL CABLE ↓ GOLDMUND TELOS 600 税別 \5,100,000. http://www.goldmund.com/products/Telos600/ ↓ STEALTH Hybrid MLT Speaker Cable 5.0m H.A.L.'s Special Version ↓ MOSQUITO NEO -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ここを二時間足らずで出発して成田空港に向かうというレバション氏は日本での 予定も大分ハードスケジュールであったようだ。今回の来日前にはバンコク、シン ガポール、台湾、香港、韓国などを歴訪され、これからロスアンジェルスに飛んで プロモーションを続けるということで、年間で三ヶ月程度は一人で海外を飛び回っ ているというのだから大変だ。 当然レバション氏は海外のオーディオショップや雑誌メディアなとの試聴室も数多 く訪れているものであり、自社製品がどのような音質で演されているのかを厳しく チェックしているという。そんな“音がわかるこだわりのプロデューサー”として レバション氏はここでのTELOS 600のデビューをどのように感じられたのか!? この時も選曲は私が行うことでセンターポジションにお座り頂き、最初はおなじみ のマーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団で第二楽章をかけた。 同氏は前回の来日の際にも MOSQUITO NEOを聴いており、自社のコンセプトに共通す るものが音質的にあるということで高く評価して頂いた。 そのNEOがTELOS 600を初めとするGOLDMUNDのUltimateシリーズとReferenceシリーズ の混成フラッグシップ・システムで演奏を開始すると…、満面の笑みがレバション 氏の表情に浮かんできたのである。そして、早速ディスクのナンバーをメモされた。 次に私が選曲したのは…!? http://www.kkv.no/ kirkelig Kulturverksted(シルケリグ・クルチュールヴェルクスタ) ・Thirty Years’Fidelity より 7. Som en storm/Ole Paus/Oslo Kammerkor/Det begynner a bli et liv....(1998) 10 Mitt hjerte alltid vanker/Rim Banna/Skruk/Krybberom (2003) http://www.kkv.no/musikk_klubb/tekster/285_fidelity.htm レバション氏の反応は大きかった!! 手の平を上に向けて肩まで上げ下ろしして素晴 らしい!! を連発で口にしていた。海外の拠点で多数の音を聴いてきた同氏の経験と 比較しても、「カワマタさんの選曲とボリュームの取り方はナンバー1です!!」と おっしゃる。外交儀礼と自社製品のトップモデルでの実演ということも確かにある だろうが、本当に喜んでくれたようで何よりでした。思わず私は、このKKVのディス クをプレゼントしてしまった。これからは同氏が訪問した先々でこのディスクが演 奏されることだろう(笑) この時には、まだ私はセンターポジションでじっくりと 試聴してはおらず、昼食後に改めてレバション氏の解説を聞き、レバション氏を 送り出してから一人でゆっくりと聴いてみようと考えていた。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 先ずは速報として下記のリンクをご覧頂きたいものです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/050324/telos600.pdf TELOS 600を見て最初に感じたことは「おー、小さくなったな〜」ということだっ た。 従来のUltimateシリーズのトップモデルであるMIMESIS 29ME/29.4MEなどは440W× 410D×253Hミリというサイズで重量は60kgであったが、今回のTELOS 600は330W× 470D×270Hという大きさである。特に奥行き D は本体は380ミリなのだが、以前と は違ってヒートシンクが大きく、それを含むと47センチの奥行きがある。重量は 下記のwebでは65Kgとなっているが、後日入手した資料では55Kgとなっており、恐ら くはこちらの方が正しいのではないかと考えている。 http://www.goldmund.com/products/Telos600/ さて、外観については日本向けのUltimateシリーズのパワーアンプはトップパネル がカーボントップになっているが、今回のTELOS 600も同様な仕上げとなって3月末 に入荷する予定であるという。 http://www.stellavox-japan.co.jp/products/goldmund/ultimate/ultimate.html さて、改めて着席したレバション氏はTELOS 600の特徴を語り始めた。 従来のパワーアンプで音質と性能向上にあたり最も大きな課題であり必要悪で あったのがプロテクション機構である。何らかの方法で異常を検出したらリレー、 プレーカー、フューズなどの遮断パーツを使って出力をカットするわけだが、シグ ナルパスにこれらのパーツが使われることが歪み率の問題からも諸悪の根源となっ ているのが実情であった。当然、同社の従来製品も同様な保護回路を有していた。 しかし、TELOS 600は従来の方式とはまったく発想が違う保護回路を開発したとい う。 パワーアンプの出力においてショート状態が発生した場合、そのピーク電流が流れ るのに約100n(ナノ)secかかるところをTELOS 600では約10n/secで電源部をシャット ダウンさせてパワーステージの電源供給を止めてしまうという保護回路を開発した というのだ。つまり、シグナルパスには一切の遮断パーツが挿入されていないとい う画期的なプロテクション機構の開発に成功したというものだ。これは凄い!! そこで私は質問した。 リレー、プレーカー、フューズなどの遮断パーツを使用しないということが、いか に画期的であるかはわかるのだが、肝心な過電流、DCや高域発振、温度上昇、そし てスピーカーショートなどの問題が発生したときに、一体どのような検出方法で上 記のようにプロテクションを起動させるのか!? これにはレバション氏から即答があった。 何とホール素子を応用しているというのだ。ホール素子というのは1879年にアメリ カの物理学者ホールによって発見されたホール効果(Hall effect)を応用したもの だ。長方形に成型された半導体に電流を流し、その電流の垂直方向に磁界を与える と電流が流れている方向と磁界の方向に対して各々に垂直な電圧が発生する。その 電圧をホール電圧と言うのだが、それをシグナルパスの最終段での異常検出に応用 したというのだ。なるほど〜、思わず唸ってしまった。道理で超高速での検出と反 応ができるわけだ!! 下記の私の随筆でも解説しています。ご参考まで。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto52-01.html しかし、待てよ!! まだ私は疑問があった。 そもそも電源部ではレギュレーターとしての役割から大容量のコンデンサーが搭載 されているのが普通だ。ましてや600Wなどという大出力アンプであれば数万マイク ロファラッドのコンデンサーを使うことが多いし、そのように大容量ではシャット ダウンさせようとしても放電時間が長引くので保護回路の起動が遅くなってしまう。 「Good Qestion!!」とレバション氏は言いながら… 「ミスター・カワマタ、だからTELOS 600の中身を見て欲しいのです!!」と言われ る。 それで撮影したのが、先ほどのこれである。 http://www.dynamicaudio.jp/file/050324/telos600.pdf このファイルでの「2.内部構造」でのコメントと重複する説明は割愛するようにす るが、このメインボードに並ぶ24個のコンデンサーを見てお解かりのように、従来 の電源コンデンサーとは比較にならないほど小容量で小型のコンデンサーを多用し 総合容量を稼ぎながらも充放電の高速化を図っている。そして、解説にも述べてい るように巨大なシールドケースには10個の電源トランスが樹脂で充填されて格納さ れているのだが、このようにアンプの各ステージごとに必要とされる電源供給を、 そのステージが求める範囲で小型化し、多数のコンデンサーともども分離すること で放電速度を高速化しているので上記のような新開発のプロテクションを有効にす ることが出来たというのだ。そして、当然のことながら各ステージごとにアイソ レーションしての電源供給を行えるという副産物も同時にもたらされた。 一個の大きな電源トランスの二次側出力を違う巻き線から取り出すだけだったら、 このような高速電源は出来なかっただろう。何のために多数のトランスとコンデン サーを使用したのか、という目的はすべて新開発のプロテクション機構にあったと いうことだ。 TELOSシリーズが従来のアンプと極めて違う点としてレバション氏が私に直接説明し たいというポイントはこれだったのだ!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 次に上記の写真でも見られるのが新開発の「JOB5」サーキットである。これも述べ ているように従来のようにモジュールではない。「JOB5」は二枚の基板で構成され る回路であり、以前のようなボックス形状をしていないので、残念ながら「JOB4」 からのバージョンアップは不可能ということだ。 さて、この「JOB5」はなぜ二枚で構成されているのか? パワーアンプの中身を大きく分けると電圧のみを増幅する初段と電力としてスピー カーを駆動する出力段に大別できるのだが、従来の「JOB4」まではどちらかという と初段におけるハイスピード化を目的としてきたのだが、今回は写真でも見られる ようにパワーデバイスに直結される形で1ステージを構成し、それが写真のように ヒートシンクと一体となったパワー段としての役目をになっており、それが写真で 見られるようにテフロンによるフローティング構造となっているものだ。 一方メインボードでは以前からのメカニカルグランディングを徹底しており、この 電源部と一体になった基板にも「JOB5」の一部を搭載することで電圧増幅と電力増 幅の両分野で超広帯域ハイスピードを実現させたというのだ。 従来のMIMESISシリーズのパワーアンプの内部構造を思い返してみても、いかに今回 のTELOSシリーズが革新性を持ったものかが次第にわかってきた。さあ、そろそろ 私がセンターポジションでじっくりと試聴できる時間となってきた。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ゴールドムンドが初めて世に送り出したTELOS 600の量産前試作機を上記のような 最高のシステムで世界初の試聴が出来るとは何と幸運なことだろう。しかし、私は 大変疑り深いので同じシステムで同時に比較しないと納得できない性分である。 そこで、聴きなれたMIMESIS 29.4Mと比較しようと思ったのだが、MIMESIS 24Mを 使用しての比較ではパワーアンプにデジタル・インプットが搭載されていないと 同じ動作環境を作ることが出来ない。現在ここにあるMIMESIS 29.4Mにはデジタル 入力がないので、外付けでGOLDMUNDのデジタル・インプットモジュール(写真.3)を MIMESIS 29.4Mの直前に配置してアナログ変換を行いパワーアンプに最短で直結させ るというセッティングで「ALIZE5」搭載のデジタル・インプットモジュールを標準 装備しているTELOS 600と比較することにした。 さあ、先ずはレバション氏と同じ曲を聴こうとマーラー交響曲第一番「巨人」の 第二楽章をかけることにした。すると…!? 「なんなんだー!! この“弦”は!?」 今までこの曲を聴いたことは何回あったろうか? LPレコードだったら擦り切れてし まっていてもおかしくないくらい聴いてきたが、こんなヴァイオリンの音が出たこ とはなかった!! 清涼とした音色は一点の曇りもなく、NEOの周辺にある空気に抜群 の浸透圧で瞬く間に溶け込んでいくような滑らかさだ。 その質感はこれまでのGOLDMUNDのイメージを大きく変えるものであった。艶やかで あり滑らかであり、スピーカーから放射された音波という印象はことごとく消え去 り、あたかも私の眼前4メートルの中空にビデオプロジェクターでオーケストラが 映し出されたような錯覚を覚えたのである。これには驚いた!! 私は手間がかかるが、この一曲を聴いた直後にあるMIMESIS 29.4M+DI/INユニットへ とつなぎ換え、同じボリュームで再度第二楽章を聴きなおしたのだが…!? (以前はMIMESIS 20にてD/A変換していたので、そのギッャプもありますが) 「なんということだろう、今まで私はこういう音を聴いていたのか!?」 その驚きは自分でも想像を絶するものだった。今まで自分で聴いていたNEOという スピーカーがもたらす空気というキャンバスに、MIMESIS 29.4Mでは絵筆によって オーケストラが描かれていたことがわかったのである。そして、TELOS 600では楽音 の一つ一つを描くのには“エアーブラシ”を使ったような質感だと気が付いたのだ。 絵の具をミクロの霧と化して極細のノズルから噴射するエアーブラシはキャンバス への距離と吹き付ける時間、そしてノズルの噴射口の径の大小によって描かれる質 感に大きな違いがある。もちろんプロの画家では絵筆の使い方、テクニックによっ て千変万化の違いを描ききるというものなのだろうが、素人の私のイメージではあ くまでも絵の具を含ませた筆先がキャンバスに触れて、白いキャンバスや紙に絵の 具がしっかりと塗りつけられて定着するように筆先が触れた部分だけに色が付く。 しかし!!今、私が聴き始めたTELOS 600によるマーラーは、白紙に触れんばかりの近 くで噴射させたエアーブラシをすーっと引き離していったように、楽音の中心には 鮮明な色を乗せながら周辺に淡い余韻の色彩をほのかに残すような質感なのである。 そして、弦楽器のアルコでは、あたかもエアーブラシを滑らかにスイングさせたよ うに楽音の濃淡が広がり、ミクロの粒子が濃密感の異なる色合いをかもし出し、 ヴァイオリンの周囲を次第に消えていく残響の火照りとして漂っていく。 あ〜、快感である!! これは一大事だ!! この私でさえ体験しえなかったことが、今ここで起こっている!! 早速次だ…!? ・Thirty Years’Fidelity より 7. Som en storm/Ole Paus/Oslo Kammerkor/Det begynner a bli et liv....(1998) 10 Mitt hjerte alltid vanker/Rim Banna/Skruk/Krybberom (2003) http://www.kkv.no/musikk_klubb/tekster/285_fidelity.htm 7.トラックでは冒頭のコーラスの響きが先ほどの弦楽器での存在感に置き換えられ、 何とも絶妙な色彩感で広く、そして長く余韻を漂わせる。そしてギターのテンショ ンが甘くなるのではという危惧はまったくの取り越し苦労であった。 パーカッションの立ち上がりは逆にスピード感を高め、見事に垂直に立ち上がる エネルギー感を見せ付ける。Ole PausのVoiceは何ともクールに口元を結ぶのだが、 エコー感が心地良く飛散していくのでウェットな舌の動きが目の前に見えるようだ。 これには驚いた!! 10.トラック目では更なる驚きが待っていた。 女性ヴォーカリストRIM BANNAがソロで歌い上げる導入部が声の質感と空間情報を観 察するのに適切な素材となっているが、このヴォーカルが始まった瞬間に私は異変 を感じ取っていた。RIM BANNAの口元から湧き起こる響きは見事に周辺の空気に浸透 し、前述の魔法のエアブラシが描く漂うような余韻感が教会のカテドラルから差し 込む色付きの空気を思わせる。それはステンドグラスを通過してきた光によって照 らされた人々の顔に淡い色合いに染められているようなのである。美しい!! kkvのレインボースタジオで収録されたパートとVolda Churchで録音されたパートを 合成しているのだが、センターに位置するタブラはきっちりと輪郭を示すのだが、 その余韻は同様に空気に溶け込んでいくようであり、個体から気体へといっきに昇 華するように最初の打音という個体、余韻という気体を鮮明に区別していく。 右チャンネルから一定のリズムで鳴らされる鈴の音色は光り過ぎずに適度な明るさ で鮮度を保ち、鈴の銀色が震えている様子まで見えるような解像度に背筋が震えた! 今まで聴いていた鈴はどうやら曇りガラスを通して見ていたようだ。TELOS 600は 10枚重ねても透明度が落ちない完璧なガラスを通して楽音を見せてくれるのである。 弱音である鈴の鮮明さをこれほど高めるというのは一体どういうことなのか!? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 私の耳と大脳を一瞬にして虜にしてしまったTELOS 600は、楽音を空間に描く妙技を いとも簡単に見せつけながら解像度にまったく不満を持たせないことが不思議でな らない。そのためには何が必要なのか、私は直ちに過去の記憶を参照し始めた。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/312.html そうだ、ここで述べていたこの一言。 「あっ!! 音像の間から向こうが見えるようだ!!」 圧倒的に静寂感が引き立つ、言い方を変えればノイズフロアーが極めて低いので 微小な余韻感の滞空時間が長く長く空間を漂うのである。エアーブラシが噴射した ミクロの粒子がきちんと白紙の上に定着して色彩の濃淡が認識できるようになるた めには何が必要か!? そうです、空間というキャンバスが限りなく純白であること、 一点の曇りもないガラスのように透明であるということです。 UNIVERAL PREAMPLIFIER という新世代の発想。それはシグナルパスをデジタル領域 で構成し、アナログ伝送の経路をいかになくしていくか、という他社が到達できな い新技術の到達点として、いよいよGOLDMUNDの新境地が提示されたのである。 GOLDMUNDが追求するハイスピード伝送とは、打撃音の爽快な音だけをイメージする のは間違いである。弦楽器や声楽などの連続する楽音の質感をしなやかに、その質 感からは今まで気が付かなかった一切の汚れを取り去り刺激成分を除去すること。 すなわち、ハイスピードとは「波形の正確な伝送」ということなのだ。 そのハイスピード伝送という目的のために、GOLDMUNDは数々の新技術を開発し歴代 のコンポーネントに集積し更新してきた。それは見方を変えればB&Wが過去の開発を 捨て去るのではなく累積させ、新技術を上乗せしていくことで新しいシリーズを作 り上げてきたようなものだ。そう、古くは「マトリクス構造」そして「Nautilusテ クノロジー」更に今回のダイヤモンド・トゥイーターに続く新技術は過去の技術の 上に成り立ってきたものだ。 GOLDMUNDは「ハイスピード」という概念と設計方針の大きな幹を創立当初から持ち、 それは時代によって刷新され変化して行くのではなく、過去の開発力をそのままに にして新技術を上乗せしていく“進化”を遂げているのである。 TELOS 600はGOLDMUNDの24年の歴史の中で、デジタル伝送という究極のスタイルを 目指した今、最も必要とされるパワーアンプというアイテムにおいて必要不可欠と いう使命を帯びて同社が開発したものだろう。 GOLDMUNDとの過去の出会いと遍歴を思い出すにつれ、GOLDMUNDのコンポーネントを 一つだけ他社製品の中に組み込んだときの印象、それはクールであり鋭角的であり シャープな質感に変化させたものだった。これは同社のアンプで相性がよろしくな いスピーカーを鳴らしたときにもそうだった。逆にすべてをGOLDMUNDで統一してい たシステムに、他社製品を一つだけ放り込んだとしたら、逆にスピード感が損なわ れ、聴きやすかったものが荒れた質感に変貌してしまうという経験も多々あった。 だから私はGOLDMUNDは血統を重んじるブランドであると再三述べてきたものだ。 今思い出してみよう!! GOLDMUNDのアンプを他社のスピーカーで評価してきた時代から、同社のEPILOGUE シリーズで同社のコンポーネントを聴き始めた時の感動を!! http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto41.html 私がタイトルとして「GOLDMUNDの個性そのものを変えた」ということは、同社が 追求する上記のような思想が変わったということではない。 私たちが思い描いていたGOLDMUNDというメーカーに対する既成概念、GOLDMUNDが誕 生した時代が早すぎたために誤解され続けてきた年月があったようだ。同社はwebに も公開しているように、未来のプロダクツを数年先まで計画的に行っている。 そして、数年前には絵空事のように思っていたことが次第に実現し、それを聴いた 私が感動し納得されられてきたという経験からも、今回のTELOS 600の登場は明らか にデジタル伝送の優位さという彼らの理論を裏付けるものであり、デジタルだから こそ描けた世界なのだと感動してしまった。 これほどしなやかで温度感があり優しくたおやかな質感が、解像度という視野を狭 くするどころか拡大してしまったのである。 今までGOLDMUNDに対して抱いていたイメージをいったんは捨てて頂きたい!! TELOS 600が聴かせる世界こそGOLDMUNDが求めているものだということを皆様に 知って頂きたい。GOLDMUNDの個性が変わるのではなく、今までGOLDMUNDの個性だと 思っていたものが、そう考えていた人々の認識が変わっていくということだという ことを最後に強調しておきたい。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 今までに体験したことのない美意識、快感に近い楽音の質感、陶酔できる幸福感。 そうです!! TELOSの持つエネルギーがそれを可能にしたのです!! ハイパワーがなぜ必要なのか? それは微小な信号をスピーカーに送り届け、それをスピーカーから放射させるため に必要なものだったのです。 そしてそこに、波形の歪みや音場感を曇らせる要素があってはいけないのです!! そのために必要なことを今回は解説してきたに過ぎません。 さあ、これからは皆様がTELOSを通じて本当のGOLDMUNDを知って頂く時です。 世界初公開の場になぜH.A.L.が選ばれたのか? その答は体験して頂ければわかります。 さあ、皆様もTokyoへ!! |
このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。 | |
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担当川又 |
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