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2005年3月27日
No.338 Vol.8「又さんの、よんちゃん行脚(^^ゞ その.7」
  「4ch志向は私だけではなかった!! 更に興味を弾かれる驚きのディスクを発見!!」

No.1055でTACET Real Surround SoundシリーズのSACDサンプラーをご紹介しました
が、皆様からも多数のご意見ご感想を頂き、同時に私がこのレビューで述べてきた
事を実演して差し上げたお客様からは絶賛を頂いております。
これ本当ですよ〜(^^ゞ

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

TACETはDVDオーディオでも作品を発表しているのだが、ライナーノーツに追記され
ている説明文には、再生システムの必要条件としては二台のスピーカーの追加で十
分であると明言している。5.1chのうちセンタースピーカーについてはアーチストが
どうしても、と望む場合には使用することもあるそうです。そして、最も興味深い
のはLFEつまりサブウーファーに関しては全く必要ではなく、逆に問題を引き起こす
だけだと言い切っている。ここでお断りしておかなければいけませんが、あくまで
もTACETが考える音楽再生という場合での考え方です。誤解なきようにお願いしま
す。

さて、国際電気通信連合(ITU)が勧告するITU-R BS.775-1のセッティング事例を以
前にも紹介していますが、下記リンクでも私たちが一般的に呼び表しているサブ・
ウーファーやスーパー・ウーファーとは言わずに、なぜ“LFE”と表現するのでしょ
うか?

http://www.super-audiocd.com/aboutsacd/format2.html

http://www.jas-audio.or.jp/m/index.html

つまり、音楽再生のシステムという考え方に対するこだわりを今一歩踏み込んで
TACETに問い合わせてみたら次のような回答がありました。

LFE stands for Low Frequency Effects. This is the ".1" of the "5.1".
The LFE channel was introduced for very deep frequencies such as special
cinema effects in movies. However every SACD channel of a 4.0 setting
can transfer the same deep frequencies. That's why there is technically
no need for a LFE channel in music.

LFEとはLow Frequency Effectsを表わしています。この 5.1chの .1chがそれを示し
ています。LFEは映画における効果音として非常にディープな周波数の音を多用した
いからです。しかしながら、どのSACDでも4chという方式を採用してもシステムセッ
ティング(スピーカーの選択)によってLFEによるディープな低域も同様に送り出す
ことが出来ます。これが技術的に音楽再生にLFEを必要としない理由です。

そうなのです!! LFEとはEffects(効果音)であり、映画鑑賞における音響的演出の効
果を高めるために作られた低音だということです。つまり現実的に存在しない低音
も合成することを映画制作側が求め、それを再生するためにLFEを設定したというこ
とを改めて思いました。しかし、音楽の演奏者、アーチストたちはそのような低音
を効果音として追加することを望むでしょうか?

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

そして、 LFEと共にセンタースピーカーに関してもTACETの考え方を引き出しまし
た。
私がTACETのwebやディスクのライナーノーツに4chという単語を使用しないのはなぜ
なのかな〜? という問いかけをしました。そうしたら…!?

TO GET THE BEST SURROUND SOUND AMBIENCE IT IS NOT NECESSARY TO HAVE
A CENTER OR A LFE SPEAKER.

なぜかここだけは大文字で回答を寄こしました(^^ゞ
きっと彼らの考え方を強調したかったのでしょう。ここでもセンタースピーカーと
サブ・ウーファーは必要ないと言い切っています。そして…

They are for different purposes, e. g. choose a language during movies.
The TACET SACDs S10, S17, S36, S49, S52, S70, S74, S101, S117 were recorded
with no need for a center channel or a LFE channel.

要は映画のセリフを再生するためにセンタースピーカーは必要なので音楽再生とは
目的が違うということを言っています。そして、私がNo.1055で紹介してきたSACD
はセンターchとLFEなしに録音されたということです。更に…

The center and the LFE channel are empty. That's why they can be played on
a 4.0 system without any additional adjustment.

この“empty”という表現が意味深なのですが、要はそのチャンネルに録音するにふ
さわしい楽音の対象がなく「からっぽ」ということを言いたいのでしょう(^^ゞ
だからこそ、どんな調整を追加しなくても4chで十分な再生ができると言うことで
す。

The SACD S114 does have a center channel which is very important.

お〜、ここで今回私が試聴したディスクが引用されてきましたね〜。これには重要
なセンターチャンネルがあるということです。

However when spread on the two front speakers this disc (S114) can be
played back on a 4.0 system without any lack of sound quality.
This is valid also for all TACET Real Surround Sound recordings.

二台のフロントスピーカーの広がりによって音質的には何の不足もなく、このS114
は4chで再生できるということでしょう。そして、これはTACETの他のSACDの録音で
も同様に有効なものだということです。

When there is a center channel it is only necessary to link it to the
front speakers and they are perfect for a 4.0 system.

そして、センターチャンネルがあるときには、それがフロントスピーカーにリンク?
要は上手にフロントの3chがマッチングするかということが重要だということです
ね。
つまり、プアーなセンタースピーカーはダメですよ〜、ということでしょう。
これはまったく同感です。

あるいは、私がこれまでにやってきたダウンミックスによってセンターチャンネル
がフロントchにリンクする、つまりダウンミックスすることをリンクと称している
のかもしれません。それが4.0、つまり4ch再生を完璧にするものだと言っています。
だから言ったでしょう〜(^^ゞ 私は最初からですが…(笑)

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

話しは変わって、同社のレーベル名の由来を問い合わせたメールを引用しますが…。

1) The means of brand name TACET 

という問い合わせに対して、同社代表のAndreas Spreer氏から次のような回答が
ありました。

TACET is a latin word and means: He is silent.
It is used in scores of classical music when one of the players has to stay
 quiet (to play nothing).
This word - when used for a record company - is a paradox. I like paradox!

ラテン語の単語からの引用らしいのですが、クラシック音楽の譜面で使われる言葉
で、ある演奏者は沈黙のままでいること、沈黙の演奏、という意味らしいのです。
そして、それはレコード会社のネーミングにしたのだからパラドクスだと言ってお
り(笑)そして自分もparadoxが好きだ、と言っています(^^ゞ

私はここでふと思いました。
同社がデジタル録音において5.1chの作品を制作しはじめ、そのチャンネルの中で
「沈黙の演奏者」がセンタースピーカーとサブウーファーではなかろうかと!!
私からの我が意を得たり、という“意訳”ですが、いかがでしょうか(^^ゞ

さて、このようにAndreas Spreer氏とのやり取りをしていましたが最後に…。

I hope this is what Mr. Kawamata was asking for.
If not please email me again and explain what you mean with "objection"
and "revel".
Thank you. We are happy about the interest of Mr. Kawamata!

私の問い合わせの回答にふさわしいかどうか、なんて気にしないで下さいな〜(^^ゞ
もちろん、これからも気になったことがあれば質問させてもらいます。(笑)
しかし、objection(異論)とrevel(非常に喜ぶ)という表現は難しいな〜^_^;

私がTACETに関心を持ったことを喜んで頂けて私もうれしいですね。ハイエンドと
いうのはこだわりの世界ですから、TACETのこだわりには大いに共感するものです。

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

TACETはこれまでにサンプラーを除いては10タイトルのSACDを制作している。そのう
ちの8タイトルについてはNo.1055で紹介しているのですが、残り2タイトルが先日私
のもとに届きました。この内容がまた素晴らしいのです!! http://www.tacet.de/

さて、早速試聴したインプレッションをお伝えしましょう。リファレンスシステム
は前回同様です。もちろん、とても"revel"してますよ〜(笑)

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

TACET 114 Moving Real Surround Sound
http://www.tacet.de/ware/01143e.htm
・Peter and the Wolf (Prokoviev)
・Carnival of the Animals (Saint-Saens)

“Moving Real Surround Sound”とは何なのか? ドルビーデジタルのような映画の
効果音と同じなのか? このタイトルを音楽的に理解するとどうなるのか!?

1TrでいきなりBradly Coleというエンターティナーの男性ナレーションが登場する。
左リアchから深いリヴァーブのかかった声がしたかと思うと、エコーがとれて右の
リアchに移動し、右フロントchに変わったと思ったらポンとセンターからエコーな
しのリアルな声が現れる。しかも、語尾の震えるような発音ではリアchの左右に
ビブラートをつけてぶるぶると飛び交い、そう!! まるで東京ディズニーランドの
人気アトラクション「ミクロキッズ」の体験のように声が飛び交うのです。

これは面白い!! 

そして、上記ではこのディスクにはセンターchがあると述べられていますが、これ
はどうやらセンターchとしての信号を記録してあるということではなさそうです。
以前にも述べていますが、P-01のセッティングでセンタースピーカーをオフにする
ということはダウンミックスするということなのですが、これをやるとフロントセ
ンターに定位したときのりBradly Coleの音像は薄らいでしまいます。つまり、ダウ
ンミックスしようとすると本来あるべき電気的なセンターchを左右フロントchに振
り分けるということなのですが、おおもとのセンターchの信号が記録されていない
ときには逆効果で音像の鮮明度を低下させることになってしまいます。それを数回
の実験で確認しました。どうやら重要なセンターchというのは楽音の定位という意
味であると思われました。その楽音の配置とはどうなっているのか?

2Trでは彼のナレーションによって各楽器が順番に紹介されていきます。

1stヴァイオリンが左リアch、2ndヴァイオリンは左フロントch、ダブルベースは右
のリアとフロントの両方で、チェロは右リアchという弦楽器の配置ごとに実際の演
奏を交えて紹介されていきます。次に管楽器は左フロントchにオーボエ、センター
にフルート、右フロントchにクラリネット、左リアchにバスーンとトランペットが
ポジションを取ります。ドラムとパーカッションは演奏のパートごとに色々な位置
に定位されています。ティンパニーなどは左右のリアchとセンターという三箇所に
一台のティンパニーが置かれて、一打ごとに三角形を描いて私の周囲で叩かれると
いう芸の細かさです。

3TrからはいよいよBradly Coleの語るストーリーが演奏とともに展開していきます。
ヴァイオリンのピッチカートを背景にフルートの小さなツバメが私の周辺を飛びま
わります。一小節ずつ小刻みで繊細なフルートが前後左右を飛び回り、この辺にも
新しいマルチチャンネルの使い方という挑戦が聴く人をひきつけていきます。

そして、皆様ご存知の主題が弦楽器群によって演奏されますが、左リアchと左フロ
ントchでのヴァイオリン、それに右リアchのチェロと右フロントchのビオラ、その
間にダブルベースという配置で奏でられる弦楽器に包み込まれるような演奏は私で
も未体験のものであり、No.1055で散々述べてきたTACETの真空管を多用した録音で
の質感は本当に麗しい弦楽器群を聴かせてくれる。今までは前方に浮かぶステージ
にあるものとして見てきた弦楽器が自分の周囲を取り囲んでくれるという音場感の
あり方がこれほどまでに心地良いものかと感動してしまった!!

物語が進む中で7Trではオーボエが左方向に現れると、それを重厚なドラムが鳴り
響く。思わず「これは凄い!!」と言葉にならない驚きが喉元まで出かかってしまう。
以前にStingのディスクでも低音のリズム楽器に取り囲まれた驚きがあったが、ア
コースティックな太鼓の音がリアchからも放射されると、その迫力は四倍になるも
のか!! これは音圧の問題だけではないようだ。同じ気温でも風があると体感温度は
大きく変わってしまうように、個々のスピーカーの出力はさほど大きくないのに何
と打音そのものと余韻に迫力があることか!! こんな低音の再現性も4chならではと
いうことでしょう。

8Trではいよいよ狼の登場です。ダブルベースを中心にした弦楽器群の低音階のアル
コがずしりと演奏されます。そうですよね〜、ここでLFEがブンブンと鳴り出したら
バランスは総崩れでしょう。大体何ヘルツから下を別のスピーカーでと振り分けた
ら、このような場面では定位も壊れてしまいそうです。
なるほどね〜、と関心しきりでした(^^ゞ

さて、このような弦楽器にしてもドラムにしても、リスナーを取り囲むような音場
感で低音楽器を再生するには何が重要なのか? そうです、理想的には4chすべてが
同じスピーカーであると言うことでしょう。それも低域の再生能力が十分なものと
いう条件です。ただ、これは中々実現が難しいものです。
それをこのあとにチッェクしようと、またまた頭にメモを書き付けておきました。

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

13Trからは「動物の謝肉祭」が始まりました。これもナビゲーターは同じBradly
Coleです。こはれ前曲とは違って二台のピアノが大変重要な要素を持つ組曲です。
各楽器の配置は次のようになっています。

フロントセンターにはビオラ、左フロントchに1stヴァイオリン、右フロントchには
2ndヴァイオリン、左リアchにチェロ、右リアchにダブルベース。フルート、クラリ
ネット、ドラム、パーカッションは色々なポジションを動き回ります。そして、
肝心なピアノはというと、左のフロントとリアの両方で1stピアノ、同様に右の前後
で2ndピアノというように、今までフロントchの二台のスピーカーで表現されていた
ピアノの鍵盤の位置関係を二組の前後スピーカーで表現しようとするものです。

これは早速16Trでの「序曲とライオンの行進」で聴くことが出来ます。従来は正面
で展開していたピアノの同じものが、左に90度移動して一台が、そして右にも90度
首を回すとピアノがあるという私も初体験の演奏です。ここでもお解かりのように
リアchのスピーカーがBOSEの101のようだったらどうなるでしょうか? また、ピアニ
ストの左手が鍵盤の左端を弾き始めたときにLFEがあったらどうでしょうか?

入念にセットアップされて4chシステムでは、そんな杞憂を吹き飛ばすように未体験
であり素晴らしいピアノのデュオが両翼から私を包み込んでくれました。特に低い
音階の打音の伸びの余韻感がことさら素晴らしく、2chでのピアノとは別世界の演奏
でした。恐らくは右側のピアノの余韻感を左chが引継ぎ、同様に左側のピアノの余
韻も右chの前後スピーカーが引き継ぐということで三次元的な立体感を出している
ものかと思います。こんな体験を皆さんにもして頂きたいと思うことしきりです!!

この二台のピアノが本領発揮するのが26Trの文字通り「ピアニスト」の曲です。
とにかく和音の展開が四つの音源から空間に飛び交い、その余韻感が私の頭越しに
行き交うという快感は私も始めてのものです。これはいいですよー!!

21Trの「カンガルー」では二台のピアノが4chの方向各々に移動し、余韻感をお互い
に引継ぎし合うという展開ではなく、楽音のポジションを細かく移動しながら聴か
せます。同じピアノの演奏でも空間の大きさを前面に押し出したスケール感豊かな
録音に変わり、短い小節ごとに四方から交互にピアノが飛び出してくるという展開
は4chのスピーカーぞれぞれの能力とセッティング環境を別個に聴かせるわけであ
り、
音場感の豊かさという見方ではなく、音源位置の移動ということが新しい4chの一面
をチェックさせられるものでした。

23Tr「Donkeys」は面白いです!! 左リアchと右フロントchというクロスする位置関
係でヴァイオリンが掛け合いをするのです。フロントch左右での弦楽器の掛け合い
という図式は今までにも経験ありますが、なんと自分の頭越しにヴァイオリンが行
き交うのですから、奇想天外とはこのことでしょうか!! これもぜひ体験して頂きた
いものですね〜!!

24Trの「カッコー」はクラリネットが私の周辺にある4本の大木の間を飛び交うよう
にして鳴いているように、次から次へと方向が変わります。でも、鳴き声が大きく
変わらないところがミソでしょうか。25Trの「鳥かご」も同様にフルートが小刻み
に四つのスピーカーを飛び交う展開で楽しめます。これは面白いですよ〜!!

そして、次の28Trがこのディスクで最も私が気に入っているご存知の「白鳥」曲で
す。
今までの録音もタイトルにふさわしい面白さでしたが、この曲の展開には驚きと共
に感動してしまいました。もうおなじみの曲ですから皆さんもメロディーが頭に浮
かぶものと思いますが、これも真空管を多用しているTACET一流の音色によるピアノ
の伴奏がゆったりと始まり、フロントセンターのやや左よりにチェロが登場します。
このチェロの余韻感は4chのすべての方位に発散され、いや〜、実に気持ちいい白鳥
のメロディーが流れはじめました。すると…!?

「おー!! なんということか!!」

何とKlaus KanngieBerが演奏するチェロが、その演奏を続けながらするすると左リ
アchに向けて動いていくではありませんか!! ゆったりしたメロディーを数小節ずつ
演奏しながら、更にリアchのセンターに来たかと思うとゆっくりと移動を続け右側
のリアchに動いていきます。
ここで注意しているとピアノの伴奏も合い相互して回転していくので、二人の演奏
者に囲まれた私があたかも回転椅子に座って回っているかのようです。それほど滑
らかにゆっくりとチェロとピアノが左回転に移動し、遂には右フロントchに移動し
エンディングではぴったりとフロントchセンターに戻ってきます。これはいい!!

今までのパターンではフルートでもクラリネットでも、そしてピアノでも、数小節
の切れ目を境にして位置を変えてきましたが、このようにチェロの演奏が途切れる
ことなく自分を中心に一周してしまうというのは初めての体験でした!!

そして、ここで大切なことを発見しました。私のシステムコーディネイトの品質が
問題なしと証明されたことにほっとしたのです。考えてみてもください(^^ゞ
演奏を続けるチェロがそっくりそのままフロントchからリアchへ移動しますね。
その定位が次第に動いていく過程において、もしもリアスピーカーが貧相なものだ
としたら、リアchに移動していったチェロの音質はどうなってしまうでしょうか?
あるいはセンタースピーカーが小型のものだったらどうでしょうか!?

しかし、私がセッティングしたシステムでは何とか無事にチェロの質感に違和感を
持つことなく一周して来てくれました(笑)このように品位の高いアコースティック
な楽音が自分を一周するような意外な展開が録音されているとして、既にマルチチ
ャンネルをやっている皆様のシステムではどのように聴こえるでしょうか?

楽音の質を落とすことなく無事に一周してくれるでしょうか!? ここにもリアchは
余韻感だけのサポートだけではなく、積極的に演奏の一部を担当するという新しい
発想が見えてきました。TACETが言うところの“Moving Real Surround Sound”とい
う意味には決して映画の効果音のように音が動き回るというだけではなく、楽曲の
選択にふさわしい演出が出来るということだったようです。これも演奏者たちが聴
かせたい、そして自分たちも聴きたい音という彼らのこだわりがあります!!

29Trはフィナーレです。フロントchセンターでフルートが、そして弦楽器群と二台
のピアノが演じる4ch再生で私は新しい“よんちゃん行脚”の一ページをしっかりと
開くことが出来ました。

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、現在リリースしているTACETのSACDでご紹介していない最後の一枚がこれで
す。

TACET 74 Die Rohre - The Tube
http://www.tacet.de/ware/00740e.htm

しかし、これは“よんちゃん行脚”にはちょっと一致しないのですが、実は2chの
録音です。では、なぜご紹介したくなったのかと言いますと、TACETはヴィンテージ
もののマイクの真空管の機材を多用する録音にこだわっているということは既に
述べていますが、このディスクでは1949年に開発されたノイマンの真空管マイクM49
を使用し、ミキシングコンソールも真空管を使用したV72というプリアンプを搭載し
たものを使用。そのフェーダーも多数のシングルレジスターを使用したW85という年
代モノだが高品位なものを使用し、遂には1950年に開発されたテレフンケンの真空
管式モノラル・テープレコーダーM5をステレオヘッドに換装したもので録音したと
いう超こだわりの音源をDSD処理したものなのです。

Boccherini, Sammartini, Scarlatti, Handel, Vivaldi, Biber and Corelliなどの
ヴァイオリンの小品を集めてTACETの母体であるStuttgarter Kammerorchesterの演
奏家が腕をふるったものです。私は、しばしリアchの存在を忘れて半世紀前のアイ
テムを総動員してのヴァイオリンの音色に耳を傾けることにしました。

最初の一曲で私はノックアウトです!! (笑) 

Luigi BoccheriniのLa Musica Notturna delle strade di Madrid という曲は私も
初めて聴きましたが、冒頭に強烈なピッチカートがありますが。これがまた何とも
心地良く目の前で弾けました。しかし、そこには刺激成分は皆無であり、深い長い
エコー感がNEOの後方と両翼にさーっと拡散していきます。これは素晴らしい!!

そして、その後に続く主題でヴァイオリンのハーモニーが流れてきて更に驚きです。
ただただ美しいのです!! これまでクラシック音楽にあまり興味なかったという皆様
にもぜひぜひ所蔵されることをお薦めしたいディスクです。これに収録されている
ヴァイオリンをぜひ聴いて下さい。皆様の記憶にない質感が楽しめます。

“よんちゃん行脚”の枠から外れていますが、この一枚はお薦めです!!

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さてさて、現在リリースされているTACETのSACDの半数が手元に届きましたが、その
中でどうしても再度ご紹介しておきたいのがこれです。

TACET S49 Das Mikrofon Vol. 2
http://www.tacet.de/ware/00490e.htm

No.1055で紹介している内容は省略いたしますが、サンプラーでは「St.Martin」と
「Someday My Prince Will Come」の二曲が収録されていましたが、単体でのディス
クを手にして驚きました。何と、総トラック数は47トラックもあります。

これは何かと言いますと、サンプラーに収録されている「Someday My Prince Will
Come」はたった58秒しかなかったのですが、このディスクでは何と16分間と演奏と
いうことで収録されています。なぜでしょうか!??

実はこの58秒の演奏を7Trから23Trまでの17Trで、17通りの異なるマイクロホンで
録音したものを次から次へと聴かせてくれるのです!!

Neumann、B&K、RCA、Schoeps、そして何とソニーのC800Gという真空管マイクまで
含み、何と同じ演奏をリアルタイムで同時録音していたものなのです。スピーカー
と全く逆の動作原理がマイクロホンです。音波を受けて電気信号に変換する。それ
は既に半世紀以上の歴史を持つ道具と言えますが、その違いによって同じ演奏での
録音された音質にこれほどの違いがあるとは!!

当社の「マラソン試聴会」で同じ曲でスピーカーを次から次へと交換して試聴した
りという経験はありますが、それと同じようにマイクロホンの違いがこれほど個性
豊かであったとは、録音のプロの人たちにも勉強になるものでしょう。

同じく24Trから37Trまで「A Foggy Day」にて、そして38Trから46Trまでは「Con
Alma」という曲で同様な趣向でのマイクロホンのオンパレードが体験できます!!

これは“よんちゃん行脚”をしてみての副産物と言えるような発見でした。
ぜひ皆様のシステムで世界中のマイクロホンの個性を引き出してください!!

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私の“よんちゃん行脚”はハードウエア中心での旅立ちから、ここ数日は私の提唱
する4ch再生のために録音されたのでは? というディスクにめぐり合い、それらを
色々と検証してきました。

今回は、リアchのスピーカーの品質ということを改めて考えさせられました。
人工的に作り出したエコー感をそれとなくフロントchの信号に追加するというよう
な4ch再生では、リアchの品質とは小型スピーカーであっても高域だけをメインにし
て使うので割り切っていいだろう…、という既成概念があったとしたら、それは大
きな間違いであるということをはっきりと認識させられる経験となりました。

だからといって、フロントchと必ず同じスピーカーを組み合わせしなければならな
いのか、というと必ずしもそうではありません。要は組み合わせのコツというか
ポイントがあるということが大切なのだと良い学習になりました。

さて、私は今回のTACETの他にもマルチチャンネル収録のSACDを数十枚注文しまし
た。
それらも随時これから試聴していくつもりですから“よんちゃん行脚”はまだまだ
続きます!! 私が十代の頃にラジオで聞いていたロックもあったりして、私の選曲は
本当に雑食性です。どうぞお楽しみに!! (*^_^*)

しかし、この4chは聴いてしまったら止められませんな〜(笑)
どうぞ次回にご期待くださいませ!!

              -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

追伸  
私はこのような素晴らしいTACETのSACDをハルズサークル特典を設定して
販売する企画を実施しています。この機会に皆様もどうぞご入会下さい。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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