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H.A.L.担当 川又利明

No.995 2012年12月13日
 N&Fによる高音質ディスクへのこだわりを皆様に知って欲しい!!

■話題の20万円もするガラスCDをハイエンドオーディオからの視点で分析!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/561.html

上記の本文に次の一節があります。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

“CD2007”では、同じドイツ・グラムフォンのエミール・ベルリナースタジオ
で保管されているオリジナルマスターテープを使いながらも、それをどのよう
に蘇らせるのかという手法とセンスが違っているのである。“HGCD”付属の
ライナーノーツを見ると、Master Transfer & Master Engineer として記され
た名前を見ると…、福井末憲。おー、そういえば年賀状も頂いていました。

このディスクの企画ではプロジェクト・ディレクターとして西脇義訓氏の名前
もきっちりとクレジットされています。

そうです!! マスターテープの音というのは確かに基準であり原基なのだが、
その音質はひとつではないという事実があったのです!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ここに登場している福井末憲氏が2008年の同時期にN&Fが発売している通常の
CDに関しても高音質にこだわる独自の製法を採用していたというレポートを
入手する事が出来ました。

ディスク再生にこだわる私としては、ガラスCDという存在はもちろんのこと
ディスクの材質が一般的なものであっても、このように高音質への挑戦という
努力にスポットを当てないわけにはいけないと考えたのです。

長文になりますが、ぜひN&Fのこだわりを皆様にもお伝えしたいと思います。

■ダイレクト・マスター・プレス製法にこだわるディスク生産プロセスとは

有限会社エヌ・アンド・エフ:録音家/Balance engineer 福井 末憲
2008年 N&F テクニカル・レポートより (2012年一部加筆)

有限会社エヌ・アンド・エフは2001年9月創業以来、CD/SACD/ガラスCD全ての
デジタル・オーディオ・ディスク商品を、ダイレクト・マスター・プレス製法
で製造発売しています。

ダイレクト・マスター・プレス製法は、マスター・スタンパをダイレクトに
採用して、レコーディングからマスタリング時のマスター*原音クオリティを
損なうこと無く、豊かな音楽ダイナミクス(躍動感)と音の鮮度をそのままに、
デジタル・オーディオ・ディスク製品に反映することができます。
<*N&Fでは、CDではCD-R(PMCD)、SACDではBlu-Ray Disc-Rが用いられます>

■説明図の解説とコメント
http://www.dynamicaudio.jp/file/20121207/DISC_Process.JPG

上記は、CD/ガラスCD/SACDの製造プロセスで、ダイレクト・マスター・プレス
製法によるディスク・レプリカのクオリティ優位性について、スタンパ作成
から製品に至るまでをイメージ・グラフでご紹介のものです。

注:以降ではコンピューターの機種依存文字による文字化けを回避するために
 図中のマル数字をカッコ数字として表記致しますのでご了承下さい。

★(1)ガラス・マスター作成(デジタル・オーディオ信号記録〜データ・ピット(凹面)形成)

ガラス基盤上に塗布されたフォトレジスト(感光剤)にデジタル・オーディオ
・マスター音源をレーザー照射して信号を記録します。照射されたフォトレジスト
を現像すると感光した部分が凹面ピットを形成し、(1)のガラス・マスターが
作成されます。<ガラス・マスター=ガラスCDではありません>

★(2)マスター・スタンパ作成(メタル原盤=世界に1つ)

(1)のガラス・マスターのフォトレジストに形成の凹面に、電鋳メッキして
(主にニッケル)仕上げの後、ガラス・マスターから剥離して、ディスク・
プレス成型のための凸面金型(2)マスター・スタンパ(原盤)を作成します。

★(3)-A/(3)-B:デジタル・オーディオ・ディスクのプレス生産と方式

A-ライン=ダイレクト・マスター・プレス製法によるディスク・レプリカ生産
(3)-A-ライン/(3)-Bラインは、オーディオ・ディスク本体のプレス生産
工程で納期や製造枚数規模により、A-ラインのダイレクト・マスター・プレス
製法とコピー・スタンパ・プレス製法とに分かれます。

通常オーディオ・ディスクは、A-ラインのダイレクト・マスター・プレス
製法で作成されます。

1タイトルの作品に対し1つのマスター・スタンパ(原盤)が1基のイン
ジェクション・マシン(ディスク成型機=プレス・マシン)に取り付けられて
プレス量産されます(連続で数十万枚程度プレス可能)

通常のオーディオ・ディスク基材は、熱溶融したポリカーボネイト樹脂が主原料です。
インジェクション・マシンにより約4秒に1枚のペースで圧着(プレス)成型
されレプリカ(120mm径、1.2mm厚、≒15g重=製品)が量産されます。


★工場ウラ話し:資材セッティングやコンディションにもよりますが、1枚目
プレス開始から100枚程度のレプリカはスタンパと樹脂が馴染まず、デジタル
・オーディオ・ディスクとして良好なデータが得られないため全て廃棄されます。
100枚程度から安定し良質のディスクがプレスされるようになります。

よく整備されたディスク成型機で事故が無ければ1つのマスター・スタンパから、
80万枚程度の極めて安定して良質なレプリカが連続作成可能です。

弊社N&Fをはじめ、数十万枚以下のディスク製造では、このA-ラインの
ダイレクト・マスター・プレス製法が主流です。


ダイレクト・マスター・プレス製法の優れた長所は、孫コピー・スタンパ
(5)-B作成の必要が無く、プレス・コストの軽減と、オーディオ的には、
マスター・スタンパで直接プレスのためレコーディング〜マスタリング時の
原音が高音質で鮮度高くそのまま高品位に製品に反映することができます。

短所は、万が一製造中にスタンパが壊れてしまった場合です。(不慮の事故)
そのスタンパは廃棄されて再度(1)-から造り直しますが、フォトレジストへの
レーザー・カッティングのセッティングは非常に微妙で、1回目と同じ音質
傾向の再作成ができにくいことです。

むろん、壊れた1回目のスタンパと再作成スタンパで製造のレプリカどうしの
デジタル・データは同一で良品なため、マスター・スタンパ損壊はなかなか厄介な問題です。

■A-ライン:ダイレクト・マスター・プレス製法によるExtreme Hard Glass 
 CD=ガラスCDの生産とガラス基材について

同じく(3)-のディスク・プレス製造で、Extreme Hard Glass CD《高品位ハード
・ガラス製音楽CD》=ガラスCDは、ディスク基材がポリカーボネイト樹脂では
なく、高級光学ハード・ガラス(120mm径、1.2mm厚、≒30g重)が用いられます。
スタンパは、CD製造で用いられた(2)マスター・スタンパが共用されます。
<2006年 世界初のガラス製音楽CD 発表・発売>


光ディスクは精緻な光学製品であることは周知のとおりです。高級レンズ材で
おなじみの光学ガラスは、プラスチック樹脂や石英=クリスタルと異なり、
澄んだ真水(まみず)同様光線の直進性に優れ、入射光線に対し歪みや乱反射
(複屈折)が全くありません。
<石英=クリスタル基材では、2006年12月 試作品作成試聴済み。
 光学ガラスに比して自然体の音質が得られずN&Fでは不採用とした>

併せ、強化ガラス特性から盤面の反りや歪みが無く、耐吸湿性など、完璧で
究極の光オーディオ・ディスク基材です。ガラスCD基材には、高価な高級光学
ガラス以外に代役はありません。

ガラスCDのプレス成型は、オートメーション機器であるインジェクション・
マシンではなく、一品一品熟練した匠による手創りで、1枚あたり1時間以上
の製造・検査時間を要します。

従来の樹脂製オーディオ・ディスク・プレス生産費用は、数十円〜数百円程度
ですが、ガラスCDのプレス生産費用は数万円と高額です。

ガラスCDもCDですから(4)-から先の工程は図のとおりで、基材がプラスチック
樹脂から光学ガラスに換わった以外通常のオーディオ・ディスク製造工程と
変わりません。
Extreme Hard Glass CD=ガラスCDは「Compact Disc」の規格を完全に満たして
おり、再生できないCDプレヤーやシステム不都合はプレヤー・メーカーに
問い合わせて頂ければと思います。

そして、ガラス製SACDも試作品としては完成されるが…
Extreme Hard Glass SACD=ガラスSACDは、2009年にN&F/セーラーで世界初、
試作品完成(重量規格外品=市販不可)


■(3)B:メガ・ヒット同時大量生産オーディオ・ディスクのプレス製造方式
B-ライン=コピー・スタンパ・プレス製法によるディスク・レプリカ生産

うらやましい話しですが、100万枚以上ものメガ・ヒット予兆のオーディオ・
ディスクを短期間で大量生産や、複数のインジェクション・マシンあるいは
海内外のディスク工場で同時に生産進行する場合、(3)-B-ラインのコピー・
スタンパ・プレス製法で量産します。

このような場合、1つのスタンパで1基のプレス・マシンを動かしていたので
は生産が追い付きません。そこで、(3)-B → (4)-B → (5)-B工程のように、
1つの(3)-B-マスター・スタンパ(凸親)から(4)-B-マザー(凹子)を
メッキ作成し、そのマザーを親として「(5)-B-コピー・スタンパ(マスター・
スタンパから見て凸孫)」を必要複数作成します。

複数のインジェクト・マシンの稼働により、短期間で膨大な量のレプリカ生産が可能です。

むろん、N&Fでは、この製法でデジタル・オーディオ・ディスクを製品化することはありません。
コピー・スタンパ・プレス製法の特長は、その高い生産性と、(3)-B-マスター
・スタンパ(凸面)の永久保持性にあります。

短所は、2度((4)-B → (5)-B)のメッキ工程からスタンパ転写による音質の
鮮度劣化現象などが挙げられます。


★工場ウラ話し:マスター・スタンパ製法とコピー・スタンパ製法で作成の
レプリカをそれぞれ検査すると、デジタル・データは全く同一ですが、不思議
なことに、それぞれに再生音質傾向が異なります。同じスタンパで作成の
ポリカ樹脂製CDとガラスCDが採用基材の違いで音質傾向が異なる現象と似ています。


■(4)-A/(7)-B:反射膜形成(スパッタリング)工程

(4)-A/(7)-Bの工程は、CD、ガラスCD、SACD共に、プレス成型されたレプリカ
基材のピット面に光反射膜となる鏡面スパッタリング(蒸着)を附します。

スパッタリング素材は、主にアルミニューム、銀、金が用いられます。
CDスペックの本流はアルミニューム反射膜です。

金、銀はアルミニュームよりも反射率が高いためCDでは標準的仕様ではありません。
N&Fでは、ガラスCDをはじめ光オーディオ・ディスク製品にアルミニュームで
のスパッタリングを推奨しています。

銀は経緯黒ずみ、金は特有なカラーリングでの可視光源反射となります。
「如何なる裕福なご婦人も金色の鏡面ではお化粧なさいません!」
理由はお察しのとおりです。
 
■(5)(6)-A/(8)(9)-B:保護膜形成とルーベル印刷工程

(4)-A/(7)-Bの工程で成層した反射膜は、スパッタリング膜の酸化や外傷を
防ぐため、特殊な接着剤により強固な保護膜を生成します。

その保護膜の上にレーベルが印刷されますが、やはり不思議なことに、印字や
インクの配色により、オーディオ的にディスク再生時の音質に変化が現れる
ことがあります。

具体性はありませんが、光オーディオ・ディスク本来のレーベル面は無塗装
(保護膜のみで透明)であること、オーディオ・ディスクのプルーフ(テスト)
盤は正確な試聴評価を得るため無印刷(透明)であることが望まれています。

無印刷(透明)で自然体に音楽再現していたプログラム・ソース音源もレーベル
印字配色のあり方次第で不確定に不自然な音楽再現となってしまうことがあります。
光でデータを読みだすCD/SACDは、ディスクの両端にフエルト・ペンで黒点を
付けたり、レーベル面や光学面に何かを塗布加工しただけでその再生音に
影響が現れます。

原因は、光学面に入射するレーザー光線の複屈折で、レーベル面の配色や外部
から入る光により、ディスク基材の有する複屈折が不規則に干渉し吸収された
り増強されたりで複屈折(乱反射)に一層の拍車がかかるためと考えられています。
レーベル面にはプログラム・ソースの内容に音質変化を与えにくい印字配色を
考査し選択したいものです。

■高音質で高品位なオーディオ・ディスク・レプリカ作成は「ダイレクト・
 マスター・プレス」製法以外に方法が無い

以上が、ダイレクト・マスター・プレス製法にこだわるオーディオ・ディスク
生産プロセス概要のレポートでした。

デジタル・オーディオ・データ(0/1信号)のやり取りで、再生音が完結する
はずのCD/SACD/ガラスCDなどの光オーディオ・ディスク類ですが、不思議な
ことに、ディスク本体に一寸でも光学的な手を加えると、アナログ再生時代に、
状況微変で起きた様にデリカシーな音質変化を感じることが多々あります。

CDが登場して以来、種々デジタル・オーディオ・ディスクを製品としてグローバル
に世に送り出して来たわれわれレコード・メーカーのディスク生産現場では、
そのレプリカ量産において数値特性検査データでは絶対に現われることの無い、
ありとあらゆる奇妙で不思議な要因で、製品のサウンド・クオリティ・コント
ロールが思うように進行できない実態に遭遇したことが幾度かありました。

例えば、同じカテゴリのプロダクション・マスター1つを、順次複数それぞれ
のプレス工場に送り、それぞれずれにレプリカを製造してもらいますが、良く
も悪くも工場の数だけそれぞれ独自のサウンド・キャラクターを有するレプリカ
が生産されます。

無論、測定上のデジタル・オーディオ・データは全て同一です。
各社レーザー・マスタリング技術の差か、あるいはプレス機々の機械的クセ
なのかを調査の必要がありました。

1985年代、日本フォノグラム(PHILIPS)で、輸入盤と国内盤のサウンド・
キャラクター差について社命で研究していた私は、しばらく後、当時の三洋
電機とガラスCDを使い各種分析調査を実施しました。
<PHILIPS はCD開発期1980代より実験用CDはガラスCDでした>

そこで判明した様々な興味深い実体は次の機会でご紹介のこととして、デジタル
・オーディオ・ディスクの製造歴サウンド・キャラクター変化についての結論
は「レーザー・マスタリング〜プレス製造からレーベル印刷色や印字まで、
製品となる如何なるプロセスで、具体性無くサウンド・キャラクターは変化し
てしまうもの」でした。

要は、1タイトルあたり全製品が同一のサウンド・キャラクターを有し高音質
&高品位な、CD/SACD/ガラスCDのオーディオ・ディスク・レプリカを量産するには、
1つのマスター・スタンパと、1基のプレス機で連続生産(数十万枚程度)、
つまり、ダイレクト・マスター・プレス製法以外に方法が無いという結論に至ります。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

川又より

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http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/842.html

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http://www.dynamicaudio.jp/file/20121207/MoriyamaRyoko.pdf

http://sailorshop.jp/hpgen/HPB/entries/55.html

1.「北ドイツ・バロックの神髄」
アーレント・オルガンat カザルス・ホール - 水野 均 / オルガン 
J.S.BACH トッカータとフーガニ短調 他
 
2.「彗星のごとく現れた奇跡のアンサンブル」
In Memory of Hideo Saito 長岡京室内アンサンブル
チャイコフスキー 弦楽セレナードハ長調 他

3.「錬成された重厚な響き!!」
ホルスト:組曲「惑星」 / 秋山和慶 指揮 東京交響楽団

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http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/appoint.html
 
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 サウンドパーク・ダイナ 担当:矢部(木曜日定休)にお申し付け下さい。
[E-mail]info_spd@dynamicaudio.co.jp
TEL:03-3255-2151
FAX:03-3255-2159




担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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