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No.274 小編『音の細道』特別寄稿 *第25弾* 『聴きました!! Stillpoints Equipment Suspension Systemの音!!』 |
先日ハルズサークル・レビューNo.0873でお知らせした完全中空マウント・ ハイエンドラックStillpoints Equipment Suspension System(以降ESSと表記) を本日試聴した。 http://stillpoints.us http://stillpoints.us/1Pages/ess_products.html 長らくH.A.L.ではzoethecusをリファレンスとして多用している中で、 バリエーションとしてfinite-elementeのpagodeやGrand Prix Audioの Monacoなどを使用しているが、やはり私がコンポーネントの評価を 行うときにはzoethecusが基準となっている。 http://www.axiss.co.jp/fzeoth.html http://www.finite-elemente.de/frameset/index.htm http://www.teac.co.jp/av/import/gpa/gpa_main.html さて、このESSは見ての通りの構造と特徴ということで回りくどい解説は 必要ないと思われるのだが、有効なアイソレーション・デバイスとして Stillpointsそのものを床との接点に配置しているのはお解りだろう。 そして、他社の高級ラックが棚板位置が固定されているのに対してESS は自在にその間隔を設定できるという使いやすさがある。この補強され たアクリルの棚板は幅505ミリ奥行き403ミリというサイズでzoethecus のz.slabとほぼ同じ面積である。また、現在は日本向けにもっと高さの 低い段数の少ないものも検討しているという。 さて、今回の比較試聴のシステムは下記の通りとした。 -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*- ESOTERIC X-01(AC DOMINUS) →PAD BALANCE DOMINUS 3.0m → Brumester Pre-Amp 808 MK5(AC DOMINUS)→PAD BALANCE DOMINUS 7.0m→ Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS & BALANCE DOMINUS 1m×4)→ JEFFROWLAND MODEL 304×2(AC DOMINUS×2)→B&W Nautilus→ murata ES103B With PAD ALTEUS 6.0m この中でX-01をzoethecusとpagode、そしてESSと乗せ換えて再生音の 変化を観察しようとしたものだ。ちなみにX-01にメビウスやG-0sを 使用したいのは山々なのだが、ケーブルの長さが足りず、また頻繁に 重たいX-01を三箇所に置き換えるという作業のため純粋にX-01のみ を使用することにした。どのラックも一番上に重量25キロのX-01を 一曲ごとに乗せかえるのは結構大変だ。特に腰よりも高い位置に持ち 上げることもあるので、試聴と言えども重労働だ(^^ゞ 選曲はケーブルなどのデリケートなチェックにも多用している次の 三曲からスタートすることにする。 押尾コータロー『STARTING POINT』の6.Merry Christmas Mr.Lawrence http://www.toshiba-emi.co.jp/oshio/ 「Muse」からフィリッパ・ジョルダーノ 1.ハバネラ http://www.universal-music.co.jp/classics/healing_menu.html fidelioaudio FA-FACD010 HAMADRYADE (Hybrid CD / SACD)より 8.I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR http://www.fidelioaudio.com/prod/production_show.php?id=25 さて、最初にzoethecusで押尾コータローを聴き始めて、次にESSに 乗せ換えた。この時にパッと表れた変化。まず押尾のギターの色彩感が ちょっと薄くなるのだが、広がりが微妙に拡大しているということだ。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- もう20数年前だろうか…、板厚50ミリ重量50キロという単純な箱型の GTラックをYAMAHAが発売し、ヒット商品となって色々なところで使われた ものだった。その後に板厚70ミリとかの同様なラックが他のメーカーから 発売されたりと、ヘビー級ラックがもてはやされた時代があったものだ。 私も98年の秋までは、このように板厚があり重たいラックを使用してき たものだったが、この年の9/25に初めて体験した衝撃的なラックがあの zoethecusだったのである。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/brn_old.html この中の「No.061 日本初上陸、zoethecus audioを誰よりも早く聴いた」 もご一読下さい。zoethecusの初体験の模様が書かれています。 それまでは、重たく硬いラックが良いものだ!! という認識でいたのだが このzoethecusの登場によってそれまでの認識は大きく変わってしまった。 重たく硬いというだけでは、ラックを接地する床のコンディションに音質 が大きく左右されてしまうという事実なのである。簡単に言えば、同じ ラックを畳の上とコンクリートの床に置くのとはたいそう音質が変わって しまうという体験なのである。つまりはラックの使命としてはコンポーネ ントを使いやすく収納するというだけでなく、使用環境の最大の要因であ る床の材質と性格からコンポーネントをアイソレーションしてやるという ことが近代のハイエンドオーディオに求められることなのである。 さて、今回このような思いを胸に試聴を開始したのだが、ESSの音質を 第一印象として捉えつつ、このアイソレーション効果をイメージしていて ふとESSの足元を見ると…。 ESSの脚部が床に接するところには、セラミック球体が13接点で振動エネル ギーを熱に変換するという最先端のアイソレーターStillpointsが使用され ているのだが、この試聴室の床にはコンクリートの上にラバーシートを敷い たタイルカーペットが敷き詰められており、セラミック球体がそれに埋没 する形でめり込んでいるのである。これはどうしたものか!? と思いつき ESS純正の受け皿を使ってStillpointsの先端を下記のように点接触する ようにセッティングしなおしたのである。そうしたら…!! http://stillpoints.us/1Pages/ess3.html http://stillpoints.us/1Pages/ess4.html http://stillpoints.us/1Pages/ess5.html 押尾のギターの一音一音が何と、ピーンッと姿勢を正したようにメリハリ の効いたテンションを取り戻し、広がり感と思っていた音像の大きさが きゅっと引き締められたのである。しかもエコー感が鮮明になるのだから これは言うことなし!! 最初の印象で、zoethecusよりフォーカスが甘いぞ、と思っていたESSが 実は使い方としてStillpointsの原理に即した点接触という基本的な セッティングをしてやらなければ本領を発揮しないということがわかった のである。危なかった…、これをやらなかったらESSをここまで語ろう という気持ちにはならなかったであろう。 しかし、このようなスチールワイヤーでの吊り構造という見かけ上でも 完璧なアイソレーション方法だと思っていたことが、何と床面との接点 でこんなデリケートな違いを聴かせてくれるとは驚きであり、ESSのノウ ハウとして貴重な体験をすることになった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、これで三者の比較試聴に取り組むことができる。右からzoethecus、 ESS、pagodeという順番に並べ、X-01を各々のトップに置き換えて試聴を 開始した。 押尾コータローでは、上記のようにESSの質感と開放的な音場感の広がり が高得点を付けた。しかし、楽音の質感の低い音階での充実感はやはり zoethecusがさすが、という魅力がある。pagodeは解像度に関しては何の 不満もなく、明るめの音場感がギターのエコー感を上手く引き立たせる ので魅力的な演奏といえる。 次に、フィリッパ・ジョルダーノのハバネラを各ラックで相当しつこく 繰り返して試聴してみた。このヴォーカルのオーバーダビングしたバック コーラスとフィリッパとの対比、またフォルテでスピーカーの両翼に消え ていくエコー感はzoethecusが上手くバランスさせて安心して聴ける。 pagodeは淡白ながらもフォーカスの描き方は一流の抑え方があって、この 製品のポイントでもあるラックとしてのレゾナンスの分散処理がヴォーカ ルのように連続する楽音の滑らかさに素直さを表しているようだ。さすが!! さて、ESSなのだが、このようにスタジオ録音のクラシック調の音楽、これ をレコード会社ではクロスオーバー・クラシックと呼んでいるが、楽音の 細部を表現するという解像度の偏差値がかなり高いということに関心して しまった。しかし、この曲のセンターに響くドラムの低域の表現がやや 軽くなり音像もちょっぴり大きくなる。それではとzoethecusに戻すと 不思議なことに重量感とテンションが戻ってくる。ラックのポイントと して低域の打音で色々な性格が判定できるので、それではと臨時に選曲 を変えて、フォープレイの「ベスト・オブ・フォープレイ」(WPCR1214)で ある。この5トラック目の「チャント」のイントロで展開するハーヴィー ・メイソンの強烈なフロアータムの音がたった20秒間で色々なことを 教えてくれる。 この曲で低域の解像度とテンションの引き締まり、そして重量感の三拍子 を見事に満点で再生したのはzoethecusであった。それに対してESSは 若干音像が大きく軽くなってしまう。不思議なことだが、メカニズムと エレクトロニクスの両方が一体となったX-01では、それをダンピングし て制動するという考え方でzoethecusが優れており、吊り構造のESSでは 良い意味で低域の打音に関してはゆったりした表現になってしまうようだ。 しかし、次に選曲した8.I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR ではESSがその特徴をまざまざと見せ付けてくれたのである。 この曲はギターのリヴァーブ処理で描かれる余韻感が大変巧妙にスピー カー周辺の空間に広がり、その余韻の滞空時間を観察することで再生 システムの情報量というチェックポイントを明確に提示してくれる。 ESSがNautilusに与えた空間の広がり、それもミッドハイ・レンジの ドライバーが担当する余韻感を大変魅力的に聴かせてくれるのである。 音楽を分析的に聴かせるのではなく、音圧を肌に感じるほどの強力な プレッシャーを求めるのではなく、響きという美点に寄り添うように 自分を音楽の中に浸透させていきたいというスタンスの方には好ましい ラックであろうと推奨の根拠を感じ取ったものである。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、簡単ではあるがESSの特徴をなるべく簡単に述べたつもりなのだが、 上記の記述は私が感じる微細な相違点をデフォルメしながら表現したもの であり、当初よりESSのパフォーマンスはハイエンド・ラックの新星とし て皆様に推奨できるという自信があったことは言うまでもない。 zoethecus、pagodeに次いで第三のH.A.L.レベルのラックの登場であり、 インテリア性と機能性を考慮してコンポーネントの本質を引き出すラック として皆様の選択肢が広がったということを結論とさせて頂く。 最後に、98年当時アクシスの営業部長としてzoethecusを私のところに 持ち込んできた木村氏が、今回は有限会社アッカの取締役としてESSを 持ち込んでこられたという背景も語っておきたい。 この人はシカケ人だ!! http://www.accainc.jp/contents.html http://www.accainc.jp/Stillpoints.html |
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