発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.273 小編『音の細道』特別寄稿 *第24弾* 「遂に…!? という驚き!! H.A.L.の次世代リファレンスケーブル決定!!」 |
-*-*-*- プロローグ -*-*-*- 私はこの五年間というものDOMINUSを中心にH.A.L.の音を作ってきた。いや、 DOMINUSに支えられてH.A.L.のパフォーマンスがあると言っても過言では ないだろう。それほどコンポーネントの潜在能力を引き出す存在として 高く評価しているものである。 では、私はDOMINUS以外を一切受け入れない“偏屈者”なのだろうか? いや、それは違う。長らく親しんできたDOMINUSの素晴らしさを知り、そして DOMINUSとの対比において個性は尊重しつつクォリティーが認められるもの が登場すれば喜んで新しいケーブルのリファレンスを採用しようという気持 ちなのである。その兆しがあったのは例の“Gケーブル”であったが、残念 なことに全ラインアップの採用にまでは至らなかった。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/259.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/260.html しかし、遂にDOMINUSと比類しうるケーブルが登場した!! 今回は最初に ご紹介しておくことにする。ESOTERICが開発したMEXCELシリーズだ。 細かい理屈は後にして、下記をパラパラとめくって頂ければ、どのような特徴 を持ち、どのような材質と構造なのかは概略ご理解いただけることでしょう。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/040224/esocable-ja.pdf 昨年よりESOTERICの大間知プレジデントから話だけは聞いていたが、1月に 行われたラスベガスでのCESにおいて公開し内外の注目を一挙に集めることに なったのがこのMEXCELシリーズだった。その詳細が下記である。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/040224/mexcel.pdf それが、やっと昨日(2/24)私の元に大間知プレジデント直々に持参されて きたのである。そして…!? 1.こだわりのコンセプト 今回の検証では、あくまでも「試聴して良かったら採用する」という前提で あり、その後の展開に一切の希望的観測を含まずに平常心で望もうという スタンスで試聴を開始した。しかし、大間知プレジデント他4名の社員が 随伴されて陣取っているので、私も中途半端なことは出来ない(^^ゞ このMEXCELシリーズは大別するとラインケーブルとスピーカーケーブルの 二種類となる。ラインケーブルはデジタルとアナログの共用となっていて プラグの形状によって使い分けするということになる。 7N-A2500 MEXCEL RCAと7N-A2500 MEXCEL XLRは二芯シールドケーブルなので コネクターの設定としてはRCA/XLRの両方があり、基本的にはデジタルケー ブルとしては一本パッケージ、アナログ・インターコネクトとして使用する 場合には二本パッケージとなる。ケーブルそのものは全く同じだがデジタル ケーブルとしての一本の場合にはプラグのレタリングがゴールドとなり、 アナログ・インターコネクトの場合には左右チャンネルの識別でプラグの レタリングは“赤・白”となっている。 7N-DA6000 MEXCELと7N-DA6100 MEXCELは単芯シールドケーブルなのでXLR プラグの設定はなく、デジタルとアナログの使い分けは7N-A2500 MEXCEL と同じである。先ほどの下記のリンクをご覧になるとお解りになるはずだ。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/040224/esocable-ja.pdf そして、下記の価格表でも、これらの構成がお解り頂けると思う。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/040224/mexcel_price.pdf 上記のリンクでもケーブルの構造と画像があるのだが、まず音質以外に大変 驚いたのは製品としての完成度である。それは手にとって見て、また実際に 使用してみてわかることなのだが、各ケーブルのプラグは完全にESOTERIC オリジナルの特注品であり、この私でさえも世界中の高級ケーブルを色々と 使った記憶の中でこれほど信頼性のあるプラグは初めてである。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/7n-a2500mex.jpg まずN-A2500 MEXCEL XLRだが、業界ではノイトリック社のXLRコネクターが 高級品として多用されており、海外のほとんどのケーブルメーカーが採用し ている。しかし、このN-A2500 MEXCEL XLRを実際にX-01に接続したときの 国産同士の緻密で一部のガタツキもなく、きっちりと接合するときの精度感 の素晴らしさは経験したことがない。 “遊び”という意味ではスムーズな抜き差しでは必要なのだろうが、上記の ようにESOTERICのケーブル同士のオスメスを試しにつないでみると、挿入の 途中段階での精度感溢れる抵抗感と「カチッ!!」というロッキングの感触は 快感を覚えるほどである。このXLRプラグは他社ケーブルにも使ってもらいた いほどの完成度で思わず唸ってしまった。更に驚かされたのは、このXLRプラグ は何と黄銅のムク材からくり抜いて作った超重量級プラグだということだ。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/7n-da6100mex_r-b01.jpg また、MEXCELシリーズのRCAプラグは世界初のカーボンファブリックスリーブ のピンプラグカバーを装着している。これはイルンゴ・オーディオなども 着目して製品化しているWBS-1のようにWBT社のRCAプラグに対するオプション スリーブなどで音質が変わるというポイントに妥協をしていないということ であり、設計の細かさがうかがい知れるところだろう。 カーボンファブリックスリーブの肉厚は約一ミリなのだが、これを採用する ことで外部から電磁波や静電気を吸収し消滅させるという目的がある。 この輝く光沢感と仕上げの美しさはMEXCELシリーズのすべてのプラグに 共通するものなのだが、XLRプラグは黄銅のムク材から、RCA/BNCプラグは 鉄成分をまったく含まない最も音質的に優れたリン青銅から削り出しており、 それに丁寧にバフをかけて磨き銀メッキを施す。 更にその上に肉厚のロジウムメッキをかけるのという凝りようである。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/7n-da6100mex_r-b02.jpg このRCAプラグの肉厚感を見て頂こうと考えたのが、この画像である。RCA プラグのマイナス側は特にロックするような機構はないのだが、ご覧のように しっかりとした肉厚のハウジングにより変形をしないように保護されており、 使用するうちに広がってしまい接触が甘くなったりするようなことはない。 実際に差し込むときの抵抗感は圧着の手応えがしっくりと感じられる絶妙な 感触であり、ロック機構の必要性を全く感じない。もとよりドイツ製のWBT という世界的に有名なプラグメーカーの製品を輸入している同社が、自社 の製品開発に当たってロック機構を持つWBTのRCAプラグの存在を知りながら それを採用しなかったという自信の現われが感じられるところである。 さて、上記のバランス型XLRプラグにも共通することなのだが、この画像で お解りのようにピンプラグのセンターピン、XLRのピンもリン青銅中空パイプ 構造にすることで、表面積が通常のピン形状に比べ約2倍近になり音質面 でMEXCELケーブルの性能をさらに高める構造になっている。表皮効果という ことで上記のリンクでもご紹介している特長をプラグのピンにまで徹底して 応用していると言うことなのだ。しかし、私が驚いたのはXLRのピンもリン 青銅からわざわざくり抜いて作っているというのだ。金属板を丸めて作った ように見えるだろうが、こんな小さな金属棒をくり抜くというのはなんと 贅沢な、そして妥協ない設計だろうか!! そして、画像では見えにくいが RCAプラグのマイナス側、つまりチューリップの花びらのように円周状に センターピンを取り囲むスリットが入った大変薄いパイプ状の部品だが、 これも何とリン青銅からくり抜いて作っているというのだ。またBNC端子も 同素材の構成でセンターピンのみ肉厚の24K直メッキ仕上げとしている。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/7n-s2000mex.jpg このスピーカーケーブルでは超高域まで伝送特性が伸びたことにより、ノイズ 対策も長距離電力送電や巨大通信分野あるいは宇宙技術分野のノウハウを導入、 ケーブル内部に半導電層を形成して外来ノイズを遮蔽、さらにホット、コールド の分岐部分にアルミのくり抜き材に圧入したカーボンケブラーコンポジット スリーブを採用することで外部から電磁波や静電気を吸収し消滅させる事に より長尺使用にも高度に対応している。 音質面でスピーカーケーブルの端末は精密NC機で丹念に加工されたリン青銅製 バナナプラグも6NCu Yラグもどちらも肉厚24K直メッキを採用することで永年の 使用にも万全を期している。 どちらのタイプの端子もハンダを使用しないピュア伝送のスクリューマウント 方式を採用した。ユーザーのスピーカー及びアンプ端子の形状によりどちらの タイプも選択が可能だ。 2.私でも未体験の第一印象 ケーブルの厳密なる試聴には時間がかかる。そして、部分的な差し替えでの テストを行っていくときにどのような順番でシステムに導入していくのか。 -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*- ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS) →ESOTERIC X-01(Moebius“10000952”) →PAD RCA DOMINUS 1.0m→ Brumester Pre-Amp 808 MK5(AC DOMINUS) →PAD BALANCE DOMINUS 7.0m→ESOTERIC A-70(AC DOMINUS×2) →PAD BI-WIRE DOMINUS 3.0m→B&W Signature 800 With BRASS SHELL このシステムを使って近年のケーブルの試聴では欠かすことが出来なく なった次のテスト曲を使用することにする。 押尾コータロー『STARTING POINT』の6.Merry Christmas Mr.Lawrence http://www.toshiba-emi.co.jp/oshio/ 「Muse」からフィリッパ・ジョルダーノ 1.ハバネラ http://www.universal-music.co.jp/classics/healing_menu.html fidelioaudio FA-FACD010 HAMADRYADE (Hybrid CD / SACD)より 2.LIGHTS OF BARCELONA 8.I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR http://www.fidelioaudio.com/prod/production_show.php?id=25 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ケーブルの試聴というとまずはACケーブルからスタートしたいのだが、 このMEXCELシリーズではACケーブルの開発は今後の課題ということで スタートすることになった。さて、それではオールDOMINUSでセット アップされたシステムのどこから手をつけていくのか? 以前のGケーブルでの教訓をもとに早速ここにしよう、と考えたのがG-0s からX-01へワードシンクを送るBNCケーブルである。上記のシステムでは PAD DIGITAL COLOSSUS(\92,000.)であった。これとて決してお安いもの ではないが、既に販売終了していることから引き合いに出しても良いだ ろうと勝手に考えてしまった。ユーザーの皆様ごめんなさい<m(__)m> さて、多くの人々があまり注目しないであろう、このワードシンク用の ケーブルが驚くべき第一印象をどのように叩き出したのか? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- まずはDIGITAL COLOSSUSで押尾コータローの6.Merry Christmas Mr.Lawrence を数回繰り返す。そして、価格の順ということで7N-DA6000 MEXCEL BNC(14万円) に差し替えてみる。すると…!? 「お〜、のっけから激変だ!!」 音声信号が通過するシグナルパスのケーブルで情報量が変化するという ことは誰しもが想像しうることだろう。そして、更にトランスポートが 送り出すデジタル信号も変調された音楽信号を伝送する部分として、DAC に至るデジタルケーブルの選択によっても音質が変化するということも 推測できよう。しかし、ワードシンク信号を伝送するケーブルには音楽 の成分は全く含まれないところであり、そのケーブルでなぜ音質が変化 するのだろうか? 素朴な疑問ながらも現実に目の前で起こる変化には 我が耳を疑うという心境が偽らざるところだろう。 私は録音に含まれる情報量として余韻感、エコー感というものを尊重する 聴き方をする。単純に言えばエコー感が多いほど伝送されている情報量が 多いという考え方である。これはMoebiusの評価、考え方でも述べている ことだが、クロックリンク用のケーブルでも同様に解釈しているものだ。 7N-DA6000 MEXCELがクロックリンクを受け持った瞬間から、結果的に Signature 800 が放射するエコー感は増量され、ディスクの奥底に 隠されていた余韻という微小信号がスピーカーにまで到達したのだ、 と確認されるのである。これはいい!! そして、私の期待感はおのずと上級モデルでの試聴にスキップしたいと いう欲求にとって変わった。7N-DA6100 MEXCEL BNCに差し替える時間も もどかしく、X-01がワードシンクにロックしたという表示を待つ。 「これはなんたることか!?」 一回り上のエコー感の存続性が直ちに感じられる。同時にエコー感が Signature 800 の周辺の空気に残響というわずかな色彩感を乗せた ように空間表現が拡大するではないか。続けてフィリッパ・ジョルダーノ のハバネラでも確認する。間違いない!! 一回り大きな空間表現が提示 されるのだが、どこに7N-DA6000との違いを見出すのか!? 感覚では既に わかっていても言葉ではどのように表現したものか? それでは、と限定 販売のSACD、HAMADRYADE から8.I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR(以降8.I STILLと表記)で比較をし直す。 ギターのガットを引っ掻く鮮烈な導入部と、それに続くリヴァーブで すーっと広がっていく余韻が大変美しい。ギターの爪弾きの瞬間に 求められるフォーカスの引き絞られたイメージと、その後に続く滞空 時間の長い余韻とを何度も繰り返して聴いているうちになるほど…、 という表現の仕方が頭に浮かんできた。いつも述べているあれだ!! 「音像を極限まで絞り込むフォーカスの縮小に伴って、その周辺に 出来る空間にエコー感が鮮明に描かれること。音源と残響との セパレーションが明確に感じられること」 何度も繰り返してサンプルを聴き比べたBRASS SHELLの開発段階を 思い出してしまった。音像ににじみがなく鮮明さを増せば、それだけ 余韻が広がっていく有様が鮮明になるということだ。そのベクトル上 で明らかに7N-DA6100が優れているのである。 これならばクロックリンク用のみならず、すべてのデジタル系に使用 したらどうなるのか!? すべてのデジタルコンポーネントに使用して 頂きたいという期待が膨らむ素晴らしさである!! この第一印象でMEXCELシリーズの感触を十分に捉えたのだが、それを どのような言葉で表現したものか、まだ適切な表現がみつからない。 この段階でいえることは「未だに体験したことのない音」という 何ともありきたりな表現だけであった。 3.インターコネクトで示された実力 クロックリンク用ケーブルでの比較はスタートがPAD DIGITAL COLOSSUS (\92,000.)ということで、それよりも高い価格のMEXCELシリーズという ことから、音質的にも向上してくれなければ困ってしまうものだった。 しかし、いよいよインターコネクトの比較と言うことになると標準で使用 しているDOMINUSの価格は118万円ということなので、私としても従来の リファレンスケーブルよりもMEXCELシリーズが素晴らしかったりすると 困ってしまうというジレンマがある(^^ゞ MEXCELシリーズはデジタル・アナログ共用なのだが、その象徴する特徴 としては7N-DA6000、DA6100においては、高域伝送特性18GHzまで周波数を 問わずインピーダンスがフラットという驚異的な伝送特性にある。 これは言い方を変えれば180億Hzというとんでもない領域であり、これが 必要かどうかという議論をするにしても、それを検証比較するための実験 が出来なかったのが現状であろう。ケーブルにとって何が必要なのか? その議論に対してクリアすべき問題がオーディオ帯域ではないところに あるということが前提となってMEXCELシリーズがは開発されたものである。 より高度な製造設備を求められるストレスフリー7N Cuを導体とするMEXCEL ケーブルは、宇宙関連ケーブルでトップシェアにある三菱電線工業(株)と (株)アクロジャパン、ティアックエソテリックカンパニーの共同開発に よる全く新しいケーブルだ。 MEXCELケーブルは高域伝送特性を劣化させる表皮効果を阻止し、導体断面 積を増やして情報伝達能力の極めて高い理想的な素線だ。いわゆるリッツ 線と呼ばれる種類になるが、断面は0.1x0.8(mm)平角状であり、これまで 極めて困難であった4つの角への均一な絶縁体のMEDIS(電着絶縁)を実現 しているのである。これを高密度な編素線に編み上げることで線間歪みを 排除した。その構造や絶縁体およびシースの素材、ピンプラグやXLRコネ クターの設計と素材などのひとつひとつに、新たな視点から投入された 特殊ハイテク素材と新構造の総合的な成果が超広帯域伝送を実現している。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ここでは、7N-A2500 MEXCEL XLR、そして7N-DA6000 MEXCELと7N-DA6100 MEXCELという三種類をX-01とプリのBrumester 808 MK5との接続として 差し替えて比較してみた。 ここでのリファレンスとしてきたRCA DOMINUSは使用時間もさることなが ら情報量と密度感、そしてフォーカスの描き方でも“ここでの常識”と いうレベルの高さを提示しており、それを相手に半分以下の価格で MEXCELシリーズがどのようなパフォーマンスを見せたのか!? ここでは対DOMINUSという一対一の比較というよりは、DOMINUSを 標準としてきた私が価格の順に各MEXCELシリーズを試聴してみての 印象ということで述べてみることにする。ちなみにクロックリンク ケーブルは私が最も評価した7N-DA6100 MEXCELに固定して試聴した。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 7N-DA6000 MEXCEL RCA 1set \280,000. 当然というのか不思議に思えるのだが、クロックリンク用として試聴し た先ほどの印象が蘇ってくる。7N-DA6000に差し替えた最初、音像とし ては小ぶりな表現のギターとヴォーカルとして感じられた。その代わり DOMINUSが持ち得たほどの広大な空間表現は残念ながら追随できない のだが、それにしても聴きやすい!! 言葉にすると“透明感”というのはわかったようなわからないような 便利な言葉ではあるのだがオーディオ的に使うと定義が難しいものだ。 ここでは、楽音に対する“視認性”ということでイメージして頂きた いのだが、これまで体験してきた色々なケーブルの質感に対して、この MEXCELシリーズ各モデルで共通して感じられる印象として適切なのでは ないかという言葉がやっと見つかったようだ。 とにかく、すっきりとした音質が得られる。言い換えればコンポーネ ントの素性が浮き彫りになるということか。飾り気のない無個性な音 というと魅力がないという表現になってしまうが、どの曲を聴いても 音像の捉え方、輪郭の表現力が優れているので定位感と奥行き方向へ の展開がきれいに並ぶのである。 Signature 800の持ち味である音場感とX-01の精緻な解像度を両者 ともに間違いなく伝送してくれるケーブルとして28万円という のはありがたい!! これはダークホースとして推奨したいものだ!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 7N-A2500 MEXCEL XLR 1set \360,000. 7N-DA6000の28万円に若干の上乗せというプライスだが、ここでは バランス型としてのXLRタイプを試聴した。しかし、このプラグにかけ た情熱とコストは手にすることで否応なく使い手を唸らせるはずだ。 冒頭にあるリンクから、この7N-A2500は7N-DA6000/6100などとは 違うということがお解りになるだろうが、近似する価格帯なのに なぜこれを商品化したのか? 高度に進化した新しいストレスフリー7N Cuを信号導体に使用。これを 断面形状が長方形の平角線とし4つの角にも均一なMEDIS(特許の電着 絶縁)コーティングを実現したMEXCEL導線を棒状のポリオレフィン系 エラストマー紐を介在として高密度編素線として仕上げている7N-A2500 は、コアも外殻もMEXCEL導線を使用しているという技術的なアプローチ の一つの完成形であり、断面が丸い芯線を使用している7N-DA6000/6100 とは違った音質が得られるはずだという期待感があったという。さて…? 同じテスト曲を7N-DA6000と比較してみると面白い個性が見えてきた。 楽音に対する“視認性”の素晴らしさを“透明感”とする例え方は同様 なのだが、その音像のあり方が微妙にシルエットを大きくして聴かせる のである。従って、演奏全体に見晴らしがいいゆったり感のような印象 で緊張感を味わうことなく音楽が楽しめるのである。 テンションをちょっぴり緩めながらも視界は広く、自分のスピーカーを なぜ選んだのか、という理由がそのままケーブルの選択につなげられる ような、ありがたい選択肢がMEXCELシリーズの中にあったのである。 ちょっぴり暖色系でありながら、楽音の輪郭をそのままに音像の容積を ちょっぴり増やしたMEXCELの音を楽しんで頂きたい。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 7N-DA6100 MEXCEL RCA 1set \480,000. 私は7N-DA6000/2500の両者を試聴し、果たしてDOMINUSとのクォリティー としての共存がここで出来るかどうかという大変難しい判定をしようと 頭の中では7N-DA6000/2500の各々に対する微妙な不満点を解決してくれ るものがないかと、この7N-DA6100には大変な期待をしていた。そして、 いざ試聴!! と思ったら…。何と三鷹にあるティアックのに片チャンネル のケーブルを置き忘れてしまっていることがわかる。 「誰かに持ってこさせろ!! 」という大間知プレジデントの一言でバタ バタと連絡を取り、急遽役付きの偉い人が電車で駆けつけるということ になり、到着を待つことに…。その間はスピーカーケーブルの評価とい う事で時間を無駄にしないように配慮した。 さて、色々なアクシデントが他にもあったが(^^ゞ なんとか待望の7N- DA6100が到着した。先ほどまでの私は7N-DA6000/2500の記憶が薄れて しまったので、再度聴き直してから7N-DA6100へと差し替えた…!? 「これですよ!! これだったらDOMINUSに置き換えてもいい!!」 さあ、今回のキーワードとして楽音の“視認性”から来る“透明感”を どれほど感じられるかというポイントで、クロックリンク・ケーブルと インターコネクトの両方を7N-DA6100にした時の印象は強烈であった。 「今までのケーブルは白いキャンバスに描いた音楽だったようだ。 そして、7N-DA6100で聴く音楽はクリスタルグラスに色彩を乗せて、 その背後から透明なガラスで出来た電球の中に輝くフィラメントの 光でバックライトを当てるように音楽が空間に浮き上がってきた!! 」 7N-DA6000/2500の両者に見られた両方の良いところが、すべて満たさ れた7N-DA6100の演奏にしばし聞き惚れて時間が経過していく。 4.太くて軽いMEXCELスピーカーケーブル 7N-S20000 MEXCELの偉容は画像でお解りだろうが、持ってみるとあっけに とられるほど軽い。それはこれまで述べてきたような構造を持っている 導体を使っていてスピーカーという瞬間的な大電流を伝送するために 必然的に太くなったMEXCEL導線をいかに安定してケーブル内に保持する かという設計の着眼点によるものだ。 外形寸法で直径が約34ミリということはDOMINUSより2ミリ太い。しかも 曲がりにくいのである。しかし、前述のリンクによって見られる断面の 構造のように導体自体は充実介在と呼ばれる内部の詰め物でケーブルの 中心に位置するように保持されるため、DOMINUSのように重たいシールド 材がないので大変軽く感じられるのである。 ただし、MEXCELスピーカーケーブルは構造的に一本の中に二組のMEXCEL 導線を格納することは出来ないので、バイワイヤーには対応しない。 バイワイヤーで使用するには単純に2ペアの7N-S20000を使用することに なるのである。従って、ここで使用しているDOMINUSのバイワイヤーと 同じ長さで価格を比較すると、DOMINUS BI-WIRE 2.0mでは\3,050,000. それに対して2.0mの7N-S20000では\2,200,000.となってしまう。 さて、この日は7N-S20000は1セットしかないので、Signature 800の 入力でジャンパーケーブルを使って他社のケーブルのニュアンスを ミックスさせたくなかったので、7N-S10000との併用でとにかく MEXCEL導線での伝送特性でスピーカーを駆動することにした。 最初はミッドハイに7N-S20000、ウーファーに7N-S10000という バイワイヤーでSignature 800を鳴らしてみることにした。フロント エンドは7N-DA6100にしているが、プリアンプからESOTERIC A-70まで の長いインターコネクトはDOMINUSのままである。そして、先ほどまで 聴いていたプラズマDOMINUSに馴染んでいる耳にMEXCELスピーカー ケーブルはどう評価されるのか!? -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 同じメーカーと設計によるケーブルというのは、不思議なことに 音質的な共通項を持っているものだ。例えば電源ケーブルを最も システムの上流に位置するCDプレーヤーやトランスポートに使って 試聴し、それをDAC、プリアンプ、パワーアンプと順番に移し変えて いくと、どのコンポーネントでも最初に感じられた印象がそのまま 継続されていくのである。Moebiusの時にもそうだった…。 そして、今回これまでの流れのようにフロントエンドから順番にMEXCEL ケーブルを要所要所にインストールして来たのだが、一番最初に驚かさ れたクロックリンク・ケーブルとしての変化のベクトルにピッタリ一致 する新発見がされてきたことを思い出した。 さあ、セッティングにちょっと時間がかかったが、DOMINUSから 7N-S10000/20000のバイワイヤーコンビに切り替わって、テスト曲を 一巡したが、最もその変化を確実に聴かせてくれたのがSACDで 広帯域な録音であるHAMADRYADE 8.I STILL…であった。 冒頭のギターでは広大な空間表現が余韻感の豊潤さにバックアップされ て響き渡るのだが、このスケール感は素晴らしかった!! スケール感という言葉も、大音量で部屋全体に響くように反射音を豊富 に聴かせるようにボリュームの大きさによって感じさせるような演出も あるだろうが、本当のスケール感というのは音量とは違う着目点で認識 されるものだろう。 この時7N-S20000によって表れたエコー感の素晴らしさは筆舌に値する ものであり、まるでSignature 800の背後にスクリーンを張り正面から センターの床に置いたランプでスピーカーをライトアップしたように Signature 800の後方にはそれ自身のシルエットが大写しされたような 余韻の広がり方でスピーカーの存在感を数倍にして見せるのである。 「これは素晴らしい!!こんなスピーカーケーブルは今までなかった!!」 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- しかし、7N-S10000/20000のバイワイヤーコンビではDOMINUSには 勝てなかった。このディスクで多用されているパーカッションは重量感と 切れ味のよさが両立した低域をスパッとDOMINUSは再現するのだが、 残念ながらウーファーに使った7N-S10000では7N-S20000と対等な パフォーマンスまでは至らず、私の印象ではやはり上下ともに7N-S20000 での演奏をしてみないとだめだろうということになってしまった。 試しに7N-S10000/20000の上下を入れ替えて7N-S20000でウーファーを 鳴らしてみたら…!? 驚くほどの低域のエネルギーと残響がわきあがって くるではないか!! このスピーカーケーブルは只者ではない!! DOMINUS BI-WIREとの直接比較ということは出来なかったが、DOMINUS と共存できるパフォーマンスが7N-S20000にあるということはしっかり と確認できた。これは、決して7N-S10000単体での音質が良くないという ことではなく、あくまでもMEXCELスピーカーケーブルの能力を追求した 7N-S20000というフラッグシップとの対比であることをご理解頂きたい。 そして、やはりこと一言がどうしても口を突いて出てくる。 「こんなスピーカーケーブルは聴いたことがない!!」 聴覚で感じる“視認性”とは変な例えだが、それほど楽音をストレート に聴かせ、リスナーとスピーカーの間にある空気を浄化するように鮮明な 楽音を聴かせられるとどうしても“透明感”という言葉を使いたくなって しまう。Nautilusシリーズの特徴であるスピーカーの存在が消えるという 表現は、実はスピーカーまでの過程で“演奏の周辺に漂う空気感”がどれ だけ存続されて伝送されるかということで更にアップグレードされていく ものだということが痛切に感じられた体験だった。 MEXCELケーブルはスピーカーを変えます!! 皆さんのスピーカーの素顔が見えてきます!! -*-*-*- エピローグ -*-*-*- PADの次世代DOMINUSと言えるものはまだ開発されていない。既報のよう に販売を終了することが予定されているが、ここのDOMINUSは直ちに 姿を消すということはない。後継モデルが到着するまではH.A.L.の パフォーマンスを維持するためにも愛用を続けていくものだ。 しかし、ここにDOMINUSがあるうちに、そのパフォーマンスと比較しても 遜色のない新しい血統のケーブルが登場したことは私にとってありがたい ことである。そして、将来的にはDOMINUSとMEXCELケーブルを基準にして PADが更に素晴らしいものを作り出してくれることがハイエンドオーディオ にとって切磋琢磨してのモノづくりの姿勢としてユーザー側から見ても 望ましいことだと思う。 2004年3月、MEXCELケーブルによってH.A.L.の演奏が更に素晴らしい 感動を皆様に提供していけることでしょう!! 業界初の未公開情報をハルズサークルの皆様にお届けできた事を私も 大変喜ばしく思います。そして、ハルズサークルの皆様には私が体験 した感動を味わって頂けるように、このプレビューの続編をお届け していく予定でおります。どうぞご期待下さい。 最後までご精読頂きありがとうございました。<m(__)m> そして、このMEXCELケーブルに関するハルズサークル特典企画がスタートしていま す。 この機会にどうぞご入会下さい。 |
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