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発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
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2025年12月23日 No.1847 H.A.L.'s impression & Hidden Story - B&W 801 Abbey Road Limited Edition |
801 Abbey Road Limited Edition 税別¥9,200,000.(1pair/配送費別) https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/801-abbey-road/FP46485P.html B&W 801D4Signature https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/category/loudspeakers/800-series-signature/ B&W 801 Abby Road Limited Editionの誕生した経緯はどういうことなのか? 上記のメーカーサイトでは簡潔に次のように語られています。 「Bowers & Wilkinsとアビーロード・スタジオの45年にわたる他に類を見ない特別な パートナーシップを記念する801 Abbey Road Limited Editionは801 D4 Signatureを 音楽制作の聖地へのオマージュとして再構築したものです。」 (以降801 Abbey Road Limited Editionを801D4SigAR、801D4Signatureは801D4Sigと表記) 上記のようにパートナーシップを標榜しての記念モデルですが、その関係性はメーカーサイト でも象徴的な要素を簡単に紹介はしているものですが、Abbey Road Studiosに関しては 下記サイトにて現在の状況は公開されていおり、スタジオ風景にB&Wスピーカーも見られます。 https://www.abbeyroad.com/ ただB&Wとの関係性について詳細は語られていないようなので、同スタジオの歴史とB&Wとの つながりを簡単に述べておくことにします。以下は聞きかじりの情報です。 ■Abbey Road Studiosの特殊性 ジョージ王朝風タウンハウスとして1831年(日本では天保元年)に建てられ、 100年後の1931年にグラモフォン(HMV)が購入、英コロムビアと合併し改称した EMI(Erectric & Musical Industries)によって開設された録音スタジオ。 以後、EMIレコーディングスタジオと呼ばれた。 第一スタジオは、元々はダンスホールだった!客席がある! https://www.abbeyroad.com/studio-one トスカニーニが録音の途中で、音が気に入らなくて帰ってしまった。 そのため大改装して現在の仕様になる。 1962年6月6日の夜、ビートルズがレコード会社へのプロモーション用デモ録音を行う。 https://www.abbeyroad.com/studio-two ベースギターの音の歪みが酷すぎて録音を断念しようとした時に(ライブコンサート用と してはそれでも良かったのだろうが、録音となると酷すぎた)、たまたまスタジオ エンジニアの机の上に1台のアンプがあった。 これに切り替えて録音は無事終了しレコードデビューに繋がった。 ビートルズのアルバムAbby Road(1969年)にちなんでアビーロード・スタジオと 呼ばれるようになり、後年そのように改称された。 スタジオ前の横断歩道が2010年に歴史的文化遺産に指定された。 ■B&WとEMIとの関係 EMIは良い音を再生するには良いスピーカーが必要ということで、スピーカーシステムや ドライバーを製造販売していた。 B&Wは1966年の創業より1970年までドライバーは全て外部から調達しており、ウーファーは ほとんどがEMI製だった。 スピーカービジネスから撤退を決めたEMIからエンジニアを引き抜き、ドライバー内作を始めた。 1970年のDM-70Cのウーファーが最初の内作ドライバー。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20251217134843.pdf ■801レコーディングモニター 最初のケブラーコーン搭載モデルであるDM6(1975年)、最初のtweeter on topモデル DM7(1977年)の後、レコーディングモニターの開発に着手。 このプロジェクトは「1980年代で一番のスピーカーを作ろうプロジェクト!」と呼ばれ、 3年後の1979年にプロジェクトの名前そのままに801として完成。 以後、801F、Matrix801S2、Matrix801S3と改良を経て1998年までの約20年間レコーディング モニターの定番として君臨し続けた。 1998年からはN801、S800、800D、800diamond、800D3、801D4と続く。 B&W歴代800シリーズトップモデル比較 https://www.dynamicaudio.jp/s/20211030162111.pdf 801D4SigARは、内容的には801D4Sigと同じ仕様で外装が異なるのみ。 測定データーは801D4Sigと変わらない。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 2025.12.02-H.A.L.'s Circle Review-No.4950-では次のように述べていました。 「B&W 801 Abbey Road Limited Edition常設展示開始!」 展示企画に関しては下記にて公開済みでしたが遂に実物が登場しました。 https://dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1843.html Devialet AstraによるSAMの比較試聴をマラソン試聴会と同じシステム構成で再現します! https://www.dynamicaudio.jp/s/20251201143222.jpg -*-*-*-*-*-*-*-*-*- そして、このところ取り組んでいたのが下記のシステム構成による比較試聴! H.A.L.'s Sound Recipe / 801 Abbey Road Limited Edition-inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20251208161220.pdf その現場写真がこれです。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20251208164914.jpg 何と贅沢にもdCS Varese Music systemも使いました! https://www.dynamicaudio.jp/s/20251208164925.jpg 結論から言えば、このB&W 801D4SigARと801D4Sigには大きな違いがあります! 今まで評論家も雑誌もネットメディアも、誰も出来なかった実機での検証に より私は確信しました! この音質の違いをどのように語っていくのか、少々!?話しは長くなりますが このスピーカーの基点から始めたいと思います。 H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - B&W 801D4 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1685.html 上記は長文なので既読の方はスルーして頂いて結構です。 未読の方は興味関心と時間がありましたら挑戦してみて下さい。 その二年後に次の新製品が発表されました。 本日17時に世界同時公開! B&W 801D4/805D4 Signatureを速報! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1735.html B&W 801D4Signatureのサイトを参考のため下記に紹介しておきます。 https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/801-d4-signature/300678.html このサイトより抜粋して下記の三項目がエンクロージャー仕上げの他に 801D4とSignatureの違いということになります。 トゥイーター・グリル仕様変更 → 空間表現の違い アップグレードされたクロスオーバー → サウンドテイストの微調整 アルミニウム・トッププレート → 音抜けの違い また、上記メーカーサイトには書かれていませんがウーファー磁気回路に使用されている 鉄の種類が変更され高調波歪を減少させており、ウーファーのクロスオーバー周波数付近の スムースさ滑らかさにつながっていという点を補足しておきます。 論点としてユニットやクロスオーバーネットワークという振動系と電子回路は Signatureとまったく同じという事であれば、エンクロージャーの仕上げの 違いによる音質変化と推論して考えなければならないと思います。 Signatureの仕上げはカリフォルニアバール・グロスとミッドナイトブルー・メタリックの 2種類ですが、801D4ではグロス・ブラック、サテン・ホワイト、ローズナット、 ウォールナットの4種類があります。 Signatureの二種は光沢のあるグロス仕上げで最も塗装工程が多く、次にピアノ グロス・ブラック仕上げが順ずるもので、サテン・ホワイトはグロス仕上げでは ないので響きとしては少しマットな印象、ローズナット、ウォールナットの木目 仕上げは前記に対して暖かみのある響きというイメージでしょうか。 801D4SigARではビンテージ・ウォールナットとされていますが、 比較的硬めの木目肌の仕上げという事で今までになかったB&Wの仕上げとなります。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ここで同じスペックによる異種仕上げのB&Wスピーカーで、メーカーとしては 音は変わらないと公言していたものを私が聴き比べたら異なる音質だったという 事を24年前に私は経験していたというエピソードで紹介しなければなりません。 2001.12.12 -☆-H.A.L.'s Circle Review-☆-No.0242- https://www.dynamicaudio.jp/s/20251209152658.pdf 当時のN800のカタログデータを入手したので下記にて紹介しておきます。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20251216161252.pdf 大分前の若かりし頃の文章なので今読み返すと恥ずかしいものですが、 同じパーツとスペックの同社スピーカーなのに音質が違うというレポートです。 S800に続いてN800が発売されたわけですが、24年前に私は上記のNo.0242を ハルズサークル会員だけに発表していました。Webでは未公開の記事です。 24年前にハルズサークルに入会していなかった方は知らない記事だと思います。 お時間と興味がありましたら読んで頂けますと、801D4SigARの音質を私は どう評価したのかというヒントになっていると思います。下記は参考まで。 2001年9月21日に試聴したB&W35周年記念モデル Signature800に関しては 下記の随筆「音の細道」第49話「45×65に棲む鸚鵡貝」をご覧下さい。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto49-01.html 上記のNo.0242で述べている事をぐっと要点を絞り込んでみると、 エンクロージャーの仕上げによる違いが音響的にどのような変化をもたらすか、 私の推測とは真逆の結果となったということ。 S800を高く評価していた私は情報量、空間表現、楽音の質感などスピーカーを 評価する各項目においてS800の音質を再評価し、エンクロージャーの違いによる 音質変化に関して新たな発見をしたという事になろうかと思います。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、大変長い前置きとなってしまいましたが、801D4SigARは税別定価920万円、 801D4Sigは税別定価770万円と150万円の価格差があり、その価格に準ずる音質を どのように評価するかは営業政策的には微妙な判断が必要と考えているところ。 日本向け15セットという限定販売という801D4SigARの音質を語るときに、 今後とも継続して販売していく801D4Sigを踏み台にしての表現はしたくない、 されど150万円の価格差について外観以上の何らかの価値観を見出さなければと 考えるのも専門店として当然の事と思うからです。先ずは恒例の課題曲から…。 1)溝口肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」より「14.帰水空間」 https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099 http://www.archcello.com/disc.html 2)大貫妙子「ATTRACTION」より「1.Cosmic Moon」 https://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/products/upcy-7103/ 3)マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章(Normal CD) この写真で録音の古い順に左上から[1]右へ[2][3]、下段の左から[4][5][6]となる。 この中から定番の選曲で小澤征爾/ボストン交響楽団の1987年録音[3]から第二楽章。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210519123606.jpg 前述のような豪華システムにて上記の課題曲に加えて多数の試聴を行いましたが、 いつものように再生された楽音の一つ一つについての相違点を述べるのではなく、 同メーカー同スペックのスピーカー二者を比較して総論として次のようにまとめます。 両者スピーカーにおいて感じた違いは、絞り込まれた音像と広大な音場感の両立を 理想とする私が感じた事を説明するにあたり、以前から音質表現に使用してきた 「音の等高線理論」という表現方法をここでも採用することにしました。つまり… 小学生で習う地図の等高線です。簡単に言えばリスナーが前方にある左右二台の スピーカーを見た際に、そこに等高線が描かれた地図を上から眺め見下ろしている という状態をイメージして頂きたいものです。 スピーカーの前に地図をスクリーンのように垂らしているという構図になり、 音像の在り方を等高線の間隔・密度という解釈でサイズ感を例えており、標高が 高くなるにつれて平地の緑から茶色へ、更に山の頂上では赤茶色に色分けされて いくという色彩感の変化で音圧の分布と音色の濃淡を例えようとしたものです。 等高線の間隔は斜面の傾斜角度を表していますが、富士山の稜線のようになだらかに 間隔のあいた等高線が左右スピーカーの間に広がったとすると、音像そのものも 正面から見るとゆったりとした存在感であり響きが拡散していく領域が広いという例え。 逆に等高線の間隔がぐっと縮まり密になり、楽音の核というか中心点に対して音圧が 密集しアルプスの稜線のような急斜面として楽音の投影面積が縮小されていくという 例えで凝縮した音像があり、俯瞰的に見た地図を思い浮かべて頂ければと思います。 801D4SigARは801D4Sigと対比して再生音の音色、質感など楽音の音像内部にあると 言える音質的項目は当然のことながらほぼ同一という分析となりました。 その辺はB&Wが測定データを元に同一ユニット、パーツを使用しているので音質も 同等のものと発言する根拠となっているもので、今後も販売を続ける801D4Sigの パフォーマンスに何ら疑いの余地はないという確認が出来たものです。 しかしながら、当フロアーの環境と上記システム構成で私が厳密に比較したところ、 この「音の等高線理論」という分析方法において大きな違いがあったのです! 結論としては801D4SigARは801D4Sigに比べて等高線の間隔が狭く密になっている事。 これによって音像サイズは縮小されており、この特徴は低音楽器から高音階の楽音 まで同一傾向にあり、私の目指す方向性にジャストミートする変化と言えます! 溝口肇の「14.帰水空間」における冒頭のドラム、続くベースで低域は実に引き締まり、 大貫妙子の「1.Cosmic Moon」ではセンター奥に展開する重厚な低音も濃厚な質感! いずれの曲でもパーカッションの響きもジャストフォーカスの微細な音像を描き、 ピアノやギターの立ち上がりは鋭敏な反応となり非の打ちどころのない質感! これらは標高を示す等高線の中心部の色彩が茶色から赤へと変化していく音像の 核とも言える濃密な音色として確認され、等高線の密度感が急峻な傾斜として 楽音のピークを空間に捉えているという充実感として納得させられたもの。 そして更に特筆すべきは、上記で述べた音像の収束だけでなく、そこから発祥した 余韻成分は801D4Sigにおけるトゥイーターメッシュの仕様変更に由来しているのか、 芳醇な響きの展開は両者同等であるはずなのですが、801D4SigARは音像の核が 鮮明化されているためか残響成分の拡散が実に美しく展開されているということ! これがオーケストラだったら個々の各パートの楽音では個別の存在感が誇張気味に 聴こえるのかというと、全くその気配はなく弦楽器が醸し出す響きは十分な滞空時間を もってスピーカー周辺に拡散していき、点在する管楽器の定位感が向上するとともに 木管金管ともに残響の終息時間を延長する美技を801D4SigARは有していると納得! 2001.12.12 -☆-H.A.L.'s Circle Review-☆-No.0242- https://www.dynamicaudio.jp/s/20251209152658.pdf 上記のレポートにおいて光沢あるグロス仕上げのS800に関して私が評価した各項目は、 ある意味で同じグロス仕上げの801D4Sigに対して言えることなのですが、あれから 24年経過してSignatureモデルの特徴となった情報量は801D4SigARにおいても健在であり、 ビンテージ・ウォールナット仕上げにおける響きの整理という想定外のチューニングが 価格差を納得させるパフォーマンスを生み出したものと結論したものです! なぜ想定外と述べているのか? それは801D4SigARの企画、設計、製造という過程において B&Wそのものが狙って801D4SigARの音を作り上げたものではないだろうと推測するからです。 やはり彼らからすれば801D4SigARと801D4Sigの音は変わらないという声明しか出し ようがないと考えられ、なぜならば電気的・物理的構成要素は同じという説明を しておかないと今後のモノ作りにおいて自説表明が出来なくなってしまうからです。 なぜならばエンクロージャーの仕上げだけで音質が変わるという事実を科学的に証明し、 そのノウハウを今後のスピーカー作りにおいて音質の根拠として説明できないからです。 グロス仕上げと木目仕上げの違いを測定する方法がないという事です。 最後に、ここでB&Wのキーパーソンの一人を紹介しておきます。 同社全ての製品の音決めの責任者です。 珍しいB&W一筋の生え抜き社員で、今や創業者のジョン・バウアーズを直接知る数少ない一人、 B&Wのチーフ・アコースティック・エンジニアであるスティーブ(ステファン)・ピアースです。 彼は大変シャイでプライベートな人物で、インタビューや動画や、画像を撮られることが 大嫌いで、オーディオイベント、ショウや試聴会に出演することもなく、ネット検索しても ヒットしないであろうという伝説的人物です。 彼が承認しなければ全てのB&W製品は世に出ないという事であり、私が察した音質の違いも 当然承知した上で801D4SigARを送り出してきたという事実です。 このようなサウンドマスターの存在があり、既報のように外観仕上げが異なるだけという 801D4SigARの音質を狙って作れるものではなく、逆に言えば記念限定モデルとしての 商品企画において外装上げのみ変更して作ってみたら音質はこうなってしまったという、 B&Wとしても想定外のスピーカーだということです。 その結果としてスティーブ・ピアースが認めた音質ということであれば、同じ血統の 801D4Sigが世の中に定着した後に、実は修行の旅に出ていた兄貴分として、更に進化し 洗練された長男が出現したという例えで801D4SigARの価値観に私は納得したものです。 皆様の耳と感性での試聴と評価をお待ちしておりますので是非ご来店下さい! ■試聴はご予約の上で承りますので下記よりお申し込み下さい。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/appoint.html |