発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2025年1月10日 No.1787 Supreme Sound! HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS 10th Anniversary Edition |
New Original Product Release - HIRO Acoustic 10th Anniversary Edition https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1776.html ■HIRO Acousticの10年間の歩みと企画意図 先ずは上記にてHIRO Acousticの歴史をご一読頂ければと思います。 既読の方はパスして下さい。 H.A.L.'s Special Installation - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1540.html そして、HIRO AcousticがMODEL-C4CSへと進化していく過程は上記に書かれています。 これも既読の方はパスで結構です。 H.A.L.'s One point impression - MSB Select Digital Director https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1722.html 「今回のインプレッション記事を作成するに当たり、タイトルをどうするか一考したものです。 この体験談を何処から語り始めるのか、先ずは2019年の下記からスタートさせる事にします。」 …と始まる上記の記事にて紹介した埼玉県三郷市 T.I.様の部屋が今回の舞台となりました。 今回のアップグレードの音質を述べる前に、上記から更に進化したソースコンポーネントが 収納されたラックの画像を下記に紹介します。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106140002.jpg https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106135954.jpg 日本で最初に納品されたAurender N30SAが下から二段目の右側にセットされ、 その左に同社のACS10がセッティングされました。 https://www.aurender.jp/products/n30sa/ https://www.aurender.jp/products/acs10/ 下記の画像にて最後の仕上げということで、最上段左側のMSB Select Transportが 少し浮き上がっている事に気が付かれたでしょうか。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106140012.jpg そこにはY'Acoustic System Ta.Qu.To-Isolatorを使用したのです。 これによって今回のアップグレードに最後の磨きをかけたものでした。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/yas/iso.html そして、このラックを前にして眺めると、なんとスピーカーにも変化が… https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106135851.jpg 左右チャンネルを切り分けて撮影したのが下記の画像です。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106135901.jpg https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106135911.jpg 私が試聴したセンターポジションからの眺めは下記のようになります。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106135840.jpg H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - B&W 801D4 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1685.html なぜ801D4が…!? これに関しては私の上記インプレッションにT.I.様の遊び心が 反応されてということで、違うテイストも楽しんでみたいという発想でご理解下さい。 ただ、HIRO Acousticとの共存は重要課題であり、セッティングの際に私が苦心した 事をスピーカーレイアウトから汲み取って頂ければありがたいものです。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 2024.09.16-☆-H.A.L.'s Circle Review-☆-No.4840-にてHIRO Acoustic 10AEを 正式発表したのですが、何と翌日にはT.I.様は来店され試聴の結果、即決にて Ta.Qu.To-SPL for HIRO Acoustic MODEL-C4CSのご注文を頂いたものでした。 ここから制作者であるY'Acoustic System吉崎さんの苦労が始まったのです。 通常のTa.Qu.To-SPL for HIRO Acousticであれば、3ウェイのためケーブルの端末 処理は両チャンネルで24か所、24個のプラグ取り付けという工程になるわけですが、 MODEL-C4CSでは両チャンネルで40箇所の端末処理という大掛かりな作業となりました。 更に4基のウーファーをシリパラで接続するためのジャンパーケーブルも特注で 設計制作しなければならず、廣中さんから15枚に及ぶ設計図と画像の資料を元に、 約二か月間に及ぶ悪戦苦闘でゼロから作り上げるという仕事をやり遂げてくれました。 さて、MODEL-C4CSが当フロアーにあれば時間をかけて私なりの実験試聴を色々と やるのですが、今回はT.I.様への納品という事なので時間的余裕はありません。 しかしながら、Ta.Qu.To-SPL for HIRO Acousticの使用前使用後の音質比較を したいという私のこだわりを理解して頂いたT.I.様のご厚意により、絞りに絞り 込んだ選曲を行い4枚のCDをセンターポジションで聴かせて頂きました。 先ずはオリジナルケーブルで厳選した課題曲を一通り聴いたのですが、いや〜 MODEL-C4CSの素晴らしさに感服するばかり。これ以上の音があるのか!?と 思える久しぶりのHIRO Acousticの極地という音に感動してしまいました。 そして、いよいよTa.Qu.To-SPL for HIRO Acoustic MODEL-C4CSのセッティングです。 手裏剣型 制振ダンパーS.F.I.S(Self floating isolation system)によって スピーカー本体とは完全に非接触となるセッティングを行った状態が下記です。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20241112154759.jpg https://www.dynamicaudio.jp/s/20241112154813.jpg クロスオーバーネットワークへの接続に関しては下記のようになりました。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20241112154826.jpg ここでT.I.様の情熱とこだわりが見て取れるのが肝心なスピーカーケーブルのグレード。 TransparentのMAGNUM OPUSがミッドハイレンジ、ウーファーにもOPUSというコンビで モノバイアンプ・バイワイヤーというレベルなのですから正にハイエンドでしょう。 http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- New Original Product Release - HIRO Acoustic 10th Anniversary Edition https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1776.html *上記より抜粋引用 以下に述べるコメントは従来のHIRO Acousticとの比較であり、 一度もHIRO Acousticを聴いたことがないという皆様に向けてというよりは、 HIRO Acousticオーナーの皆様に向けて語っているという書き方の表現となります。 Point.1 パーカッションなどの瞬発的楽音に関して もし、あなたの好きな曲でトライアングルやウィンドチャイムなどの金物パーカッションが 印象的に叩かれている音があったとしたら、その一打一音の輝度が上がり輝きが増します。 それはスタジオ録音の近い距離感であってもホール録音のオーケストラの場合でも同様に、 音像そのものが明るくなった変化と余韻の滞空時間が長くなる変化が起こります。 木製のパーカッション、ドラムのシンバルやハイハット、ハープなどの撥弦楽器も同様に 一音ずつの音像が鮮明になり、その周辺に響きのレイヤーが拡散していく描写力が向上します。 Point.2 センター定位の音像に関して もし、あなたの好きなヴォーカルを聴いたとしたら、その音像サイズが更に引き絞られて いる事に気が付くはずです。ただし、小さくなったマウスサイズは周辺の残響成分を ネグレクトして楽音を細身にしたからではないという事が重要な事です。 スタジオワークで周到なリバーブが施された歌声は周囲の空間に響きを存分に広げ、 歌手の周辺に空気感を醸成させるような巧妙な雰囲気づくりの妙技が楽しめます。 次にセンター定位の楽音としてピアノやハープなど鍵盤と弦の数が多い楽音はどうか、 それらは一打鍵ごとに緻密なパンポットによってセンターを中心に左右に展開する 音像を提示しますが、楽音の存在感は左右スピーカーの中間に広がるものの、その 各音階で打鍵と弦の一音ずつの音像にメリハリと鮮明さが向上していく事が分かります。 これはオーケストラによるピアノやヴァイオリンのソロをセンターに置いた協奏曲でも、 その恩恵がステージの左右方向への広がりという残響成分の拡散状態と、ソロ楽器の 音像がくっきりと屹立するという両立に更に磨きをかける進化として楽しむことが出来ます。 Point.3 低音楽器の質感に関して あなたの好きなバンドの演奏、スタジオ録音でのドラムやベースなどの低音楽器に関して、 先ず最初に感じるのはやはり音像サイズの凝縮という変化のベクトルであると言えます。 特にキックドラムやウッドベースのようにアコースティックな低音楽器の音源として、 前後関係の定位感が読み取れるようになり、それらの低音楽器から放たれた響きの 中心点が目視できるほどはっきりと感じられるようになり録音センスの良し悪しを 具体的な音質として判定できる自信が湧いてくるでしょう。 ただでさえ楽音の輪郭をつかみにくい低音楽器ですが、音像の核とも言える低音の 中心部において、今までの低音よりも重厚感、重量感が増している事に次の段階で 気が付くはずです。重低音という言葉をHIRO Acoustic 10AEによって実感出来ます。 音像の中心部から周辺に向けて響きの階層がくっきりとなるにつれて、音色の濃淡が 認識できるようになると演奏している空間の大きさがイメージ出来るようになるのです。 更にアコースティックな低音楽器だけでなく、シンセサイザーやサンプリング音源の 打ち込みによる低音に関しても、電子的に作られた低音であるにも関わらず、楽音の 倍音成分がこれほど含まれていたのかという新発見もあります。これはいいです! *引用終了 聴けば聴くほどに進化のベクトルが確認されていくHIRO Acoustic 10AE、それは スピーカー本体の刷新ではなくTa.Qu.To-SPL for HIRO Acousticによって実現した。 しかしながら、その真価を当フロアーで確認したものの、それはMODEL-CCCSにて 行った検証においてという大前提があり、私でも未体験というMODEL-C4CSでの進化は オーナー以上に私も期待していたもの。 静岡県から廣中さん、大阪から吉崎さんというご両人が参上され前述のセッティングを して下さり、その第一声をセンターポジションにて聴かせて頂けるという貴重な体験。 上記にて引用したHIRO Acoustic 10AEへの音質変化をT.I.様に先んじて検証すべく、 絞り込んだ選曲にて代表的な課題曲を聴くことにした。すると…!? ■溝口肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」 https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099 http://www.archcello.com/disc.html 「1.世界の車窓から」 この第一声は衝撃的でした!今まで数え切れないほど聴いてきたチェロとハープと いうシンプルな録音だけに、ふたつの楽音にロックオンして集中できる音の素材。 その冒頭から8秒間のハープだけという再生音の何と素晴らしい変化であることか! この瞬間に私の背後で聴いていた廣中さんと吉崎さんから「おー!」と歓声が上がった! スピーカーとケーブルの創造者でありながら、自分たちでは体験できないパフォーマンスに 感動され、産みの親の想像を超える成長を遂げた音に思わず声が上がる。その気持ち解ります! 右から左に向けて音階が上がる47本の弦の配列を巧妙なパンポットで、中空の一点に ピンポイントに定位させている録音センスが高解像度のビジュアルとして眼前に展開し、 その一本ずつが分離感を発揮して弦を空間に出現させた描写力に驚く。これは凄い! その見えない弦の一本ずつから、これも見えない糸でつながれた糸電話の振動板が 私の耳元に存在しているかのように錯覚するほど、弾いた弦のバイブレーションが ビンビンと伝わってくる迫力に圧倒される。そして楽音そのものが実にきれいだ! 特筆すべきは弾かれた弦の残響成分の激増!私は良く余韻の滞空時間が延長される という表現を使うのですが、下記の画像で見られる左右MODEL-C4CSのトゥイーターの 更に遠くに余韻を拡散していく広大な空間を創出しているのだから素晴らしい! https://www.dynamicaudio.jp/s/20241106135840.jpg 上記のPoint.1で述べていた「一打一音の輝度が上がり輝きが増す」という瞬発的な 楽音が、弾かれた弦というハープの楽音に対して膨大な情報量の拡張を見せつける! そしてMODEL-C4CSセンターの空間に登場したチェロの解像度の高まりに興奮する! Point.2ではヴォーカルを事例に述べていた変化は人間の声に最も近い楽音のチェロに おいても、音像サイズの凝縮という変化を見事に提示しホログラフィックな溝口肇を 忠実に浮かび上がらせる未体験領域の描写力が私の視線を釘付けにする快感に酔う! 「音色の濃淡が認識できるようになる」と述べていた表現は、この時のチェロの 質感に大きくかかわっており、音像の中心部の濃密さが高まり弦と弓の摩擦感が 細かい脈動として訴えてくる感触が生々しく、そこから発祥した残響が音像の 周囲から奥行き方向へと遠近法の消失点を私に探せと言わんばかりに深々と伸びて いく余韻を初めての体験として記憶に留める充実感にいそしんでいく。これはいい! たった一曲、しかも楽器は二つだけというシンプルな録音に対してMODEL-C4CS AEが 見せつけた変化量は、私がここで体験したMODEL-CCCSでの変化量を遥かに上回るもの。 当フロアーの音響的環境とは比較にならない素晴らしいT.I.様の部屋だからこそ、 Ta.Qu.To-SPL for HIRO Acousticによって引き起こされたHIRO Acousticの覚醒とも 言うべき物凄さに興奮してしまった。心地良い胸騒ぎをなだめつつ次の曲を聴きたい! 「10.Offset Of Love」 冒頭のアコースティックギターが登場した瞬間に上記のPoint.1とPoint.2の合わせ技 という表現が閃いた! センター左寄りのスピーカーユニットが存在しない空間に定位 したギターの解像度が爆発的進化をもたらしていることに私の体温は1℃上がった! ピックが弾く瞬間の弦の緊張感と残響成分の増量が心地良く空間を満たし、 右スピーカーの軸上で叩かれるコンガの鋭い打音が鮮烈な響きを放射する。 ここで登場したベースにも明らかな変化を直感するが、低音楽器に関する項目は 後述する事にして主役のチェロに集中する。前曲と同じ奏者であるはずのチェロ には新たな変化の要素が感じられた。すこぶるつきの絶妙な質感の変化に驚く! 同じチェロであっても曲によって録音センスの違いが克明に表れていた。 デュオという小編成でのチェロの音像の取り扱いと、楽音数が多いバックバンドの 中心に定位するチェロの音像サイズと遠近感の違いを見事に再現するAEに舌を巻く! 多数のパーカッションを散りばめ、背景を優雅な旋律で飾るストリングス、 その手前という前後感で定位するギターと立体的な構成の中で前曲よりも遠く 小さい音像として、ゆったりしたアルコで弾かれるチェロの存在感にしびれる! 上記のPoint.1とPoint.2の合わせ技と前述しましたが、その論点において当日 持参したもう一枚のCDを聴かずにはいられなかった。 ■Kirkelig Kulturverksted 30 years’ fidelity https://www.kkv.no/en/music/divers-2 7.Som En Storm, O Hellig And - Ole Paus & Oslo Chamber Choir https://www.youtube.com/watch?v=9CJBropx7SE センター定位の音像という事に関して、7.Som En Stormではヴォーカルではなく、 Voiceという着目点がMODEL-C4CS AEを語るのにふさわしいと直感していた。 ちょっと調べてみると、このOle Pausはスウェーデンとノルウェーのバラードの 伝統におけるノルウェーの吟遊詩人であり、作家、詩人、俳優とのこと。 彼はノルウェーで最も人気のあるシンガーソングライターの一人と考えられ、 ボブ・ディランに相当するノルウェー人であり「国民の声」と言われていという。 この曲の冒頭は大変美しいオスロ室内合唱団による合唱から始まります。 この混声合唱が始まった瞬間に私の口は半分開き、声にならないほ〜というため息が…。 「なんということか!透明感溢れる歌声が広がっていく空間と余韻の素晴らしさ!」 ノルウェー語でSom En Stormとは「嵐のように」という意味らしいのだが、その嵐の 前の静けさを歌ったらこうなるのだろうかと思ってしまうほどの清々しいコーラス! そして、左右チャンネルに二本のギターが軽やかにカッティングを刻むリズムが入り、 センターにはウッドベースが登場する。ここです! センター定位のベースは膨らまず広がらず極めて鮮明な輪郭を描くのだから堪らない。 MODEL-C4CS AEの強靭な低域は前代未聞の引き締め効果をもって音像を描き出す。 そして、そのペースと定位は同じくするが更に遠方の上の空間からサックスが登場する。 このサックスは十分にウェットな質感を保ち、正に点音源と指さすことが出来る ような引き締まった音像から呆れるほど広大な音場感の広がりをもって展開する。 何よりも今までに聴いたことのない質感のサックスであることに思い当たる。 それはコーラスにおける声の質感とも共通するものであり、他のスピーカーとは異なる HIRO Acousticの極めて自然であり正確無比な音色の魅力をAEが作り出している。 そして、絶妙なリバーブによって残響という衣装をまとった伴奏楽器とは反対に すっぴんのOle PausのVoiceがほぼノンリバーブという鮮明さでセンターに登場すると… 「一皮むけた声質と言ったらC4CSに申し訳ないが、それほど鮮明だから仕方ない!」 喉元から発する息遣いをマイクが拾っているのか、唸るように唇を閉じて発する 低い声は耳元で囁かれた時に感じるくすぐったい空気の振動を思わせるリアルさ! 歌うでもなくラップのように叫ぶでもなく、しっとりとしながらグルーブ感のある Voiceが正に吟遊詩人として語り掛けてくるリアルさに背中がぶるっとする! 「オンマイクでのリアルな声、余分なリバーブもない緻密な音像が素晴らしい!」 センター定位のヴォーカルやVoiceの再生音に関してウーファーの反応が遅かったり、 バスレフ型スピーカーのように共振周波数を利用した低音がポートからも再生され たりする場合、人間の声という帯域の再生音に大きな影響を与えているという事なの ですが、そんな心配はHIRO Acousticでは無用であると見事に証明してくれる。 このOle PausのVoiceに関しても私が今までに聴いたことのない質感、好ましい 音像表現としてMODEL-C4CS AEが鳴らし始めた時に驚いてしまったのです。 変調され位相が遅れた低域という設計者の視野に入っていなかった要素によって、 低音の吹き溜まりのような、ぼそっとした後味がない爽快ですっきり整理された 素晴らしいVoiceというものを私は初めて聴いた!ケーブルによってここまで変わる! 知らぬ間にOle Pausの背後にはオルガンが表れ、長いトーンの合間に細かい音符を挟み、 ギターとベースの背景に風に揺らぐ音響カーテン、いや、オーロラのように煌めき 揺れる響きの背景を形成する。これがまた素晴らしい! 二本のギターはVoiceの合間に交互にスリリングな見せ場を作り、間奏でのサックスを 再度迎え入れ、リードのバイブレーションをたなびかせるサックスとの連携において、 あたかも教会という豊かな響きの空間で吹いているような美しい音場感を私の眼前に 展開していった! この音場感はいったい何なんだ!これがMODEL-C4CS AEへの進化なのか! 紹介したyoutubeでパソコンのスピーカーで聴いている皆さんには想像も出来ない ハイエンドオーディオの極みとも言いたい演奏空間にしびれていると、オスロ室内 合唱団のコーラスが冒頭の主題をもう一度繰り返し、その厳かな響きが数秒間 私の頭の中に余韻のリフレインを残して幕を閉じる! いや〜、これには震えました!! 10.Mitt Hjerte Alltid Vanker - SKRUK / Rim Banna https://www.youtube.com/watch?v=42fIQbjp3bY SKRUKは1973年に設立されたノルウェーの合唱団で、指揮者のPer Oddvar Hildreと 共に現在まで広範囲な活動をしている。Rim Bannaはパレスチナの歌手、作曲家。 Rim Bannaが登場するのは冒頭の一分間だけ。しかし、このソロバートが凄い! 伴奏はウッドベースだけ。それも、わずかにそっと弦に触れるだけという弱音の ピッチカートでヴォーカルに寄り添うような低音の起伏を響かせる。 このRim Bannaのソロヴォーカルが聴かせる音像の忠実さ克明さという描写力に驚く! 同時に彼女の歌声によってMODEL-C4CS AEの周辺に展開するサウンドステージの素晴らしさ! そして、一分後にセンターからアフリカ系パーカッションの乾いた打音が出現し、 同時に右チャンネルからは一定間隔で鳴らされる鈴の音が幻想的な空間を醸し出す。 その辺からベースは低音階のピッチカートで存在感を示し始め、先ずはSKRUKの 男声合唱が重厚なベールを思わせるハーモニーで湧き上がってくる。ここがいい!! 幾重にも重なるコーラスはパートごとの分解能を理路整然と示し、センター右寄りの 中空に極めて鮮明であり美しいピアノが登場する。このピアノの質感は絶妙な立体感と ともに、まさに空間を転がるように一鍵ずつの打音の連続と、その瞬間から放出される 透明感抜群の響きの連鎖を展開していく。これは見事! ピアノの一弦にも音像あり! ゆったりした男性合唱が招き寄せるように女性コーラスが登場し、youtubeでも分かる バラード調の旋律が上品なうねりを伴って重なり合っていく。素晴らしいです! 右チャンネル寄りのピアノが儚なげなメロディーを奏でていると、左チャンネル寄りの 後方から女性ソプラノが立ち上がり清涼感溢れるみずみずしい歌声を披露してくる。 伴奏楽器はシンプルであるが繰り広げられるコーラスの響きの階層は美しい連なりを見せ、 それを縫い上げるようにピアノの美音が演奏空間を引き締めながら、しっとりと幕を下ろす。 スタジオと教会という残響時間が極めて異なる空間で演奏された両者の楽音を 絶妙なテクニックで合成することで展開する録音芸術の見事な再現性! ここでPoint.1とPoint.2の合わせ技という進化のベクトルを、音像と音場感の両方で 確認したい私は更に聴きたいCDがあることを思い出した。お馴染みのこれです。 ■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1 http://www.hifijapan.co.jp/booklet_ucw1.pdf http://www.hifijapan.co.jp/AA_Uncompressed_World_Vol.1_PR_np.pdf TRACK NO. 3 TWO TREES Track No.4 SAMBIENTA この「TWO TREES」はセンター左寄りに定位するサックスと、センター右寄りの ピアノというデュオの録音なのですが、両者ともにスピーカーユニットが存在しない 中間定位により空間に浮かぶ上がる音像が特徴の曲。 よってセンター定位という楽音に対する分析ではなく、中空で発祥した楽音が どのように展開していくかという音場感を前曲と対比し評価するために選曲した。 「お〜!こんな三次元的な空間表現にはお目にかかったことがない!」 センター左寄りのサックスが発した残響は右チャンネルスピーカーの更に外側へ、 センター右寄りのピアノは反対側の左方向へと残響を引き伸ばしていき、左右 スピーカーの更に両翼にまで拡散していく広大な余韻感のスケールに圧倒される! オーディオシステムの再生音で言うところの余韻とは、すなわち最小レベルの 微小信号をどこまでトレースして再現できるか、その情報量によって余韻として 認識できるサウンドステージの大きさが論点となるのだが、記録されている余韻の 長さはここまであるんだ!という実証がAE化によって私の眼前で構築されていく! そして、サックスとピアノという楽音の発祥源における解像度の高まりが追い打ちをかける! サックスのリードのバイブレーションが、ピアノの弦を叩くハンマーの存在感が、 ただのMODEL-C4CSに比較して五割増しのリアリズムで迫ってくるのだから堪らない! そうすると「SAMBIENTA」ではどうなるのか!? この段階で私は多くを推測していた! 冒頭での多数のパーカッションが左右に縦横無尽に展開するが、それらの打音の 一粒ずつから発する残響が輝度を高めて光り輝く変化が凄い!予測…いや、それ以上! ホイッスルの音が遠方から響いてくるが、前曲からの予測通り残響成分が鮮明になり、 パルシブなパーカッションの余韻と相まって広大な音場感を既に作り上げていた! さあ、そしていよいよシンセサイザーによる重低音が湧き起ってくる。 混じりっ気のない人工的な脈動をしっかりと聴かせる重々しい低域がスピーカー 周辺に巨大なサウンドステージを展開していくが、他の場所と他のスピーカーで 再生した同じシンセサイザーの低音と最も違うポイントに直ぐに気が付く。 「あっ、この低音、床に落ちてこない!スピーカーの足元に溜まらないぞ!」 このような合成された連続する低音をスピーカーが再生した場合、ウーファーや バスレフポートからの低音が床を這いまわるように響く場面に遭遇することがあるが、 素晴らしい音響特性という環境とHIRO Acousticの特性と相まって、脈打つような 重低音の連続であってもミッドレンジドライバーの高さにしっかりと留まり、 床に低音の吹き溜まりをイメージさせることはない!これは実に気持ちいい! そして何よりも、連続する重低音の中でしっかりと脈動感が捉えられている事。 こんな低域に関してもAE化によって進化した低域特性の素晴らしさを実感した! この段階で既にPoint.3「低音楽器の質感に関して」という項目に触れているわけですが、 連続する低音ではなく瞬発的な低音に関しての分析ということで最後の選曲となる。 再び溝口肇に戻り「14.帰水空間」 この曲も私の試聴では必ずといって良いほど多用しているものですが、冒頭から 左、右、センターと繰り返すシンセドラムの重低音が再生システムと再生空間の 音響特性を浮き彫りにするもの。 前曲同様にサンプリングによる合成音でありながら、打楽器としてのテンションと 周波数の高低両方向での倍音成分が含まれており、再生システムによって重量感と 音色が様々に変化する録音内容が私にとっては重宝な音のリトマス試験紙となっている。 そして、何よりもHIRO Acousticの最大の特徴である密閉型エンクロージャーによる ウーファー振動板前方だけの音響出力ということで、特定周波数の共振による低音の 増強補強を目的としたバスレフ型スピーカーによる振動板後方へ出力される音波の リユースを一切行わないという低域再生のメリットが、4発ウーファーのMODEL-C4CS にはあるという事が大変重要なポイントとなってくるのです。さあ、どうなるか!? 「わっ、なに、このドラム!鋭い切れ味、ハイテンション、AEの低域凄い!」 当フロアーの残響時間特性は押しなべて平坦ではあるが125Hzで0.6秒、それに対して T.I様のオーディオルームはほぼ全帯域で0.2秒代でフラットという理想的環境。 この大前提において比較されたAE化による低域の変化量は当フロアーを軽く凌駕する! 録音されている信号では既にドラムの打音は終わっているのに、スピーカーからの 低音では様々な付加的要素の低域が追加されてしまうのが一般的。でも、それがない! ディスクに記録されている低音の立ち上がりがAE化によって鋭さを増し、同時に 打音の信号が完了すればウーファーのストロークもストンと終わり制止する。 当たり前のように言われていて最も難しい低域再生の純度の高まりに圧倒される。 一言で言えば引きずらない低音、何も引かず何も足さない低域とはこのこと! 爽快なドラムの音に気を良くした私はじりじりとボリュームを上げていくが、 どこまで上げても打音の造形は変わらず破綻しない追随性が素晴らしい!これだ! このドラムは曲の最後まで続くのだが、イントロから目覚めてキーボード、ベース、 多彩なパーカッションが加わり、スピーカー中央の空間にチェロが登場する。 既に述べてきた見事な質感のチェロに関して繰り返しの文句はもはや必要なし。 前後左右と上下方向に拡散していく音像と音場感の素晴らしさも同様。 でも、当日持参した最後のディスクでMODEL-C4CS AEを聴かずにいられなかった。 ■HELGE LIEN / SPIRAL CIRCLE 7. Take Five http://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245411462 名曲「Take Five」いきなりフローデ・バルグのドラムソロから入る斬新な一曲。 前曲でのシンセドラムのように管理された音像の打音とは違い、アコースティックな ドラムがもたらす打音は空間を使って表現されるという録音センスの違いに私は 興味を持っていたのです。 恐らく10本以上のマイクを使って録音されたのではないかと推測しているのですが、 多数のタム、小口径のシンバル、スティックでヒットする小粒なベル、実に多数の 鳴り物を高速で叩くドラムソロの迫力と緻密さにのっけから私の耳は釘付けです! その中で最も注視していたのがキックドラムの音。前曲では左右とセンターに きっちりと分離させて定位させた三種のドラムが明確な音像を示していた。 しかし、ここではキックドラムの重低音はセンター左寄りに打点をちらつかせながらも、 低音の波動をスピーカー周辺の空気を巻き込んで展開する面として壮大な空間を提示し、 打撃の瞬間に発する音圧は爆風のごときエネルギー感で私の体表を揺さぶる物凄さ! 重低音と言える周波数での波長は長く、再生帯域が低域に伸びれば伸びるほど明確な 音像を結ぶという事はなくなり、波長の長い音波が正確に再生されると極めて短時間の 瞬間的な空気圧の連続として耳よりも体表面で感じるものです。 しかも、前述のようにHIRO Acousticの低域は録音に忠実であり余分な音は出さない。 他社のスピーカーでは複数のウーファーを一つのキャビティーで共有するという 設計がほとんどですが、MODEL-C4CSでは一基のウーファーに独立したエンクロージャーを 当てがっているので純度の高いハイスピードな低域再生を実現している。 そこにAE化による情報量の拡大が低域再生に関しても多大な貢献をしている事が 多様な低音の録音で確認出来た。更に曲が続くと、その証拠が表れてくる。 ヘルゲ・リエンのピアノが変拍子でお馴染みのメロディーを奏で始め、前述して きたようにピアノの打鍵一つずつに細やかな音像表現がなされ、ケーブルのみの 更新で情報量が増大した恩恵を更に証明していく。 そして、クヌート・オーレフィアールがピッチカートで弾いていたウッドベースが、 弓で弾くアルコで主題の旋律を右奥の定位で奏で始めた時、AE化によってスポット ライトがあてられたように摩擦感を帯びたベースの解像度が向上している事に驚く! 形式的にはピアノトリオでありながら、超絶技巧のテクニックと抜群のセンスで 演奏する三者の共演は、実は一人ずつのプレーを自己表現する競演というスリリングな モダンジャズを展開させ、これまで述べてきた各項目においてMODEL-C4CS AEの 完成度を高らかに歌い上げたという実感を得て、私はT.I様にセンターポジションを お返ししたのでした。本当に素晴らしい体験ありがとうございました。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 私は長らくダイナミックオーディオで仕事をしてきました。 その歴史には自分自身のオーディオに対する感性の成長と進歩がありました。 この世界を知らない人々からすれば大変高価なオーディオ製品を販売してきたわけですが、 皆様から頂ける信頼感の裏付けとして理想の音というビジョンを持ち得る事は重要だと思います。 「あなたの理想の音とは何か」と問われた時、私は本稿で述べてきたT.I様の環境と システムであると自信を持って答える事が出来ます。 私の理想の音が実現したという喜びと自信、ここまで信頼頂けたT.I様の情熱と誠意。 世界中に無数にあるオーディオショップの中で、このような営業マン冥利に尽きる 事例が他にあるだろうか…、きっとあると思うのですが、最後に私の自己満足と いうことにしておき締めくくることにします。本当にありがとうございました。 当フロアーでも下記システムにて体験して頂けますので是非ご来店下さい。 New Original Product Release - HIRO Acoustic 10th Anniversary Edition https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1776.html |