] H.A.L.'s One point impression!! - ESOTERIC K-01XDSE & F-01 & G-01XD

発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明
    
2024年6月29日 No.1769
 H.A.L.'s One point impression!! - ESOTERIC K-01XDSE & F-01 & G-01XD

H.A.L.'s One point impression!!-ESOTERIC I-03に感動した私!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/817.html

上記より抜粋引用。2011年3月のこと、この試作品を発売二か月前に試聴した時に
私は下記のように最悪と評価していました。

ESOTERIC I-03 税別¥600,000.
https://www.esoteric.jp/jp/product/i-03/top

「I-03は4月1日発売となっていますが、その前にプロトモデルが持ち込まれた
 ことがありました。その時の印象は…!?思えば二か月前に聴いた時は最悪でした。

 ESOTERIC担当者S氏が少しでも聴いて欲しいと持ち込まれ、電源を入れてから
 三曲くらい聴きましたが、くもりガラスの向こうにスピーカーがあるような印象で、
 こんな音じゃESOTERICの名に恥じるね〜と辛らつな事を言ってしまいました。」

その後に当フロアーで私が実際に試聴してきたESOTERICのインテグレーテッドアンプと
して代表的な製品は下記の二機種ということになりましょうか。

2016年4月 F-03A 税別¥950,000.
https://www.esoteric.jp/jp/product/f-03a/top

2016年10月 Grandioso F1 税別2,300,000.
https://www.esoteric.jp/jp/product/f1/top

これまでも当フロアーで体験してきたESOTERICのインテグレーテッドアンプで
鳴らすスピーカーの選択において、その価格帯に相応しいもの相性の良いものと
いう視点から考えていたという経緯を否定することは出来ないでしょう。

そもそもインテグレーテッドアンプとは、同じメーカーのセパレートアンプを
サイズダウン・プライスダウンさせたという存在に留まるのだろうか?

同じ設計者がセパレートアンプ開発でのノウハウを出来る限り品位を落とさずに、
販売しやすい価格帯での妥協したモノ作りの結果として存在しているのだろうか?

そして、デビューから10周年となったHIRO Acousticは私のリファレンスでもあり、
音楽と録音品位もオーディオ製品の素性をも裸にしてしまうという率直さと清廉さを
有するスピーカーであり、妥協なき音質判定の指標として評価する対象に容赦はない。

一般的なオーディオシステムの考え方として予算のかけ方を考慮すれば、どなたにも
推薦できる組み合わせとして提案出来るものではなく、非常識な価格構成のシステム
となってしまった今回のトライアルですが、それには私なりの目論みがあったのです。

ESOTERIC Integrated Amplifier三部作とは!?
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1761.html

上記の経験から私が察知した可能性とは、ESOTERICのフラッグシップとして存在する
Grandiosoシリーズのセパレートアンプに対して、サイズダウン・プライスダウンを
させただけという音がESOTERICのインテグレーテッドアンプの存在意義なのか!?

H.A.L.'s One point impression!! - ESOTERIC Grandioso P1XSE & D1XSE
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1757.html

その問いかけに対して、ソースコンポーネントとしてもGrandiosoシリーズにて
SEモデルを開発した事は既知の通りだが、同様にGrandioso P1XSE & D1XSEを
サイズダウン、プライスダウンさせただけというのがK-01シリーズなのかという
思いを否定するようにESOTERICは絶妙なタイミングでK-01XDSEを発表した。
https://www.esoteric.jp/jp/product/k-01xd_se/top

Grandioso M1X+C1X+P1XSE+D1XSE+G1Xは税別合計1,870万円。

この高価なラインアップを導入できるユーザーは幸運であると言えるのですが、
それを実現できないユーザーに対してサイズダウン・プライスダウン、そして
クォリティーも妥協し求めやすくしたというのが01シリーズなのだろうか?

アンプとソースコンポーネントの両分野において、01シリーズの全ての要素で
Grandiosoシリーズが勝るものであり、音質におけるグレードの違いは回避できない
絶対要素なのだろうか!?

言い換えれば、Grandiosoにない魅力を01シリーズから引き出すことが出来るのかどうか!?

この挑戦のために招集したラインアップはK-01XDSE+G-01XD+F-01+PS-01F税別合計555万円。

しかし、ここで01シリーズの価格に見合ったスピーカーという発想では意味がない。
妥協なき音質判定のためにHIRO Acousticを組み合わせたシステム構成は下記の通り。

H.A.L.'s Sound Recipe / ESOTERIC K-01XDSE & F-01 & G-01XD-inspection system
https://www.dynamicaudio.jp/s/20240602175242.pdf

前方にHIRO Acousticを望む位置にセットアップした風景を記念撮影。

ESOTERIC K-01XDSE & F-01+PS-01F & G-01XD
https://www.dynamicaudio.jp/s/20240604163916.jpg

ただ一言だけ追記しておかなければならないのは、あくまでも私のこだわりによる
チューニングと音質評価のハードルを相当高くして試聴に望んだということです。

つまり上記のシステム構成に至るまで、数日を要しての試聴と実験を繰り返した末に
たどり着いた組み合わせの一例であること。

そして非常識な価格構成ではあるが、このシステム構成で評価したパフォーマンスを
各コンポーネントが有しているという証明が出来た事で、これらの潜在能力を確認でき
他の多様な組み合わせにおいても推薦できるかどうかを検証することにしたのです。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私が本格的に試聴する時には両目をしっかり開けて眼前の音の風景を観察しつつ、
前方にあるスピーカーの周辺にグラフ用紙のような方形パターンをイメージする。

そのグリッド一つずつのサイズはスピーカーによって異なるのですが、その空間に
表れる音像を可視化するように意識して、音像のサイズや輪郭、更に遠近感を
パターン認識するようにして再生音の分析を行っています。

そんな経験からスピーカーそのものの個性や各種コンポーネントの性格、ケーブルや
電源関係の製品から各種アクセサリーまで多様な記憶の引き出しを作り、オーディオ
システムにおける再生音の膨大な記憶ファイルを蓄積し、変化の方向性を視覚的に
表現できるようなトレーニングをしてきました。

抽象的で主観的と言える文章表現だと、読者の解釈と理解によって音質傾向を語る
言葉が千差万別のものとなってしまい、受け取り方によっては別種の音質となって
しまうことがあり得ると考えています。

私が音質を文章化する際には色々な比喩も用いますが、それによって直感的に私が
感じた事を疑似体験して頂けるような感覚の共有化を意図した文章を意識しています。

そして、皆様に伝えたい音質傾向を上記のような聴き方からビジュアルイメージとして
文章化することで、第三者が同じ音を聴いた時に視覚的な情報共有が出来ることを目指して、
あたかも音を見ているような語り口を多用するように心がけているものです。

聴覚を通じて音を語るのではなく音を見る。視覚的に共感して頂けそうな文章表現
によって読者の頭の中に私が見た音風景を再構成して頂ければと考えてきました。

世界初、音の波をハイスピードカメラとAIで高精細に見える化
https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/06/17/240617c.html

私の頭の中で行っている分析方法に関して、後世に渡り記憶のランドマークとして
ふさわしい最新技術が開発されたという事で、上記の記事を紹介しておきます。

音の可視化、オーディオシステムの音質評価に関して私はAIほど賢くありませんが(笑)
スピーカーから放射された音波を私はイメージングして分析・評価しているという
共通項の最先端技術に感性で立ち向かっているということでしょうか。

前置きが長くなってしまいましたが、今回も上記のような発想による文章表現にて
皆様の頭の中に、私が見ていた音の情景が映し出されるように頑張ってみました。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■溝口肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099
http://www.archcello.com/disc.html

この課題曲のディスクはSACD、K-01XDSEで再生する際には音質に関係する設定を
メニュー画面から選択できるのだが、下記よりダウンロードできる取扱説明書の
27Pにある「設定2」に関して触れておかなければならないと思う。
https://www.esoteric.jp/jp/product/k-01xd_se/download

DSDフィルター設定はDSDF>OFFとしている。F1、F2、F3と三種類のローパスフィルターの
ターンオーバー周波数が選択できるのですが、私は断然OFFが好ましいと判断していた。

また、この課題曲のディスクとは無関係ですが、通常のCD再生の場合には上記の
26P「設定1」にてPCM信号のアップコンバート設定 UPC>***という項目があり、
今後試聴するCDではORGでアップコンバートしない設定を私は選択していました。

同時にPCMM>***PCM再生時のD/Aコンバーターの動作モードをM1、M2、M3の
3種類から設定できるのですが、これも試聴の結果で私はM1を選択しています。

ソースコンポーネントであるK-01XDSEではユーザーの好みに合わせて音質調整が
出来る機能があり、それを最初に述べておくことが必要と考え記しておきます。

「1.世界の車窓から」

三年前から聴き始めた課題曲が今では私の頭の中に音のテンプレートとして定着している。
溝口肇のチェロとハープだけという新規録音で両者ともにセンター定位。

このハープの弦は音階が低くなると右側に、高い音階では左側に定位し、一弦ずつが
左右スピーカー間に展開した音像と余韻感という情報量の両方をチェックできる。

冒頭の15秒間はハープだけのソロ演奏、その向こう側にチェロが浮かび上がるのだが、
私はこの曲を聴き始めた瞬間に再生システムのクォリティーを直感できる。すると…

「えっ!違う!このハープは今まで聴いてきたGrandiosoとは違う!」

たった15秒、しかもハープの音だけ。でも感じてしまったのだから仕方ない。
ここで気が付く、音のテンプレートとして記憶していたのはGrandiosoだったと!

お見合い写真を見た瞬間に一目惚れ…、陳腐な例えではありますが、正に今回の
システムが奏で始めたハープが眼前の空間に表れた瞬間に私は直感したのです!

引き絞られた音像と広大な音場感、何度も言葉にしてきた私の評価基準に対して
この01シリーズシステムが見せつける音の風景は前例なきものだったのです!

そうは言っても同じESOTERICの設計陣が開発したもの。
音質の傾向は当然のごとくGrandiosoシリーズと同方向のベクトルではあるのですが、
01シリーズというもう一本のベクトルが存在していたという事なのです。

適度な緊張感がハープの質感に表れており、このハイテンションが純A級アンプ
F-01の特徴として直感されるのですが、それにしても30W/8Ω・60W/4Ωという定格
出力だというのに、空間に出現する弾かれた弦の輝度が極めて高いことに驚く!

しいてGrandiosoシステムとの違いを述べるとしたら、微妙にハープの弦が太く
力強く感じられるという事だろうか。さすがHIRO Acousticの表現力は素晴らしい!

鋭く引き締まった音をイメージする際に、多くのユーザーはアンプの定格出力の
数字に比例した印象を持たれるのではないでしょうか。

50Wのアンプよりは100W、150Wよりは300Wのアンプの方が鋭く引き締まった音を出す。
でも実際にはアンプのパワーだけが再生音のテンションを支配しているのではないのです。

この場で音像の引き締まり方を左右する要素は何かを述べ始めると長くなってしまうので、
その各項目には触れませんが、先ず最初にF-01というアンプの魅力が垣間見えてきた
という第一印象を述べておきたいと思います。

ハープの弦が明るく輝くように感じられるのは、弾かれ振動している弦の残像が
目視出来ることで、無音であるはずの周囲の空間に長く鮮明な余韻として光明を
振り撒いていく事で残響成分という素晴らしい情報量を音にしているからか!

このハープのソロ演奏においてK-01XDがSEモデルへと進化した情報量を提示し、
01シリーズの得意技であるES-LINK Analogの恩恵を確実な再生音としてものにした。

たった15秒間の観察だけで多項目の真価を確認して行くのだが、最も驚き感動したのは
この後に入ってくるチェロの質感だったのです。

「うわ!このチェロのプロポーション凄い!こんなダイエットされた音像は初めて!」

バスレフ型とは違いウーファーの背圧をリユースしない密閉型スピーカーのHIRO
Acousticは低域の音像形成に秀でた特徴があり、各種コンポーネントにおける
低域の質感の違いを克明に描き出す。

人の肉声に最も近いと言われるチェロは多くの倍音成分を含む楽器でもあり、
この三年間聴き続けてきた曲でのチェロの音像サイズと質感の変化に驚愕する!

肉体改造を商品化したライザップでは食事療法だけでなく、筋トレによって体形を
整えていくという手法で脚光を浴びたが、単なるダイエットでウエイトだけ落とせば
いいという訳ではなく、01シリーズで聴く溝口肇のチェロは音階の高低に関わらず
すらりとしたプロポーションの音像としてHIRO Acousticのセンターに浮かぶのです!

音の筋トレという表現を私が連想したのは、アルコで奏でるチェロの弓が1ストロークで
発する音色に関して、溝口肇の左手がこんな多彩なビブラートをかけていたのかと再発見し、
引き絞られた音像の中身である楽音の音色という着目点を01シリーズで教えられたのかと
聴き慣れたはずのチェロの変化に驚いてしまいました!いいです、これは新発見です!

撥弦楽器のハープは弦を弾き空間に点に近い音像を提示し、同じ弦楽器でもアルコで
弓で擦るチェロは一定の面積を持つ楽音として捉えることができ対象的な音像のあり方。

このチェロの音色に関して他者の組み合わせでは感じなかった新色を発見し、
その色彩感を美しさとして認知している私の感性に正直に従うしかない!いいです!

たった二人での演奏で、のっけから多項目のチェックポイントを発見した私は
直ちに次の選曲へと飛ぶ。その必要性を感じて選曲したのはオーケストラだった。

点在するハープの弦、空間に彫像のごとき立体感を見せつけるチェロの音像表現。

ふたつの楽音が示した01シリーズのベクトルが大編成のオーケストラでどうなるのか。
この対比への好奇心がディスク交換の手を急がせる。そして…

■マーラー交響曲第一番「巨人」
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210519123606.jpg
この写真で録音の古い順に左上から[1]右へ[2][3]、下段の左から[4][5][6]となる。

この中から小澤征爾/ボストン交響楽団の1987年録音[3]から第二楽章を聴き、同じ
小澤/ボストンで1978年録音の第二楽章「花の章」を含む[1]と2018年録音で[6]の
フランソワ=グザヴィエ・ロト/レ・シエクルで第二第三楽章を続けて聴くことに。
https://www.kinginternational.co.jp/genre/hmm-905299/

先ずは[3]の第二楽章、冒頭での弦楽五部の合奏。ここで躓いたら先には進めない。

PHILIPSレーベルの録音の特徴、美点と言えるものでしょうが、管楽器よりも弦楽を
主体としたバランスが好ましく私の定番の課題曲でもある第二楽章の冒頭から凄い!

前述した私の試聴方法で、スピーカー周辺の空間に方形パターンのグリッドを
イメージしていると述べていましたが、これがオーケストラの場合には役に立つ。

2チャンネル再生の場合に左右とセンターに定位する音像は確認しやすいものです。

私は以前から左右とセンターの三点の中間に定位する音像を「中間定位」という
表現で説明してきました。これがオーケストラの場合には大変重要な事なのです。

低レベルな再生システムでは左チャンネルに高音階の弦楽器、右チャンネルには
低音階の弦楽器とトランペットなどの金管楽器が集中してしまう傾向があります。

スタジオ録音のヴォーカルものではセンターのヴォーカルと左右に伴奏楽器という
配列の定位感になってしまう事があり、特に違和感なく聴けてしまうものですが
オーケストラの場合には客席から見たステージ上での各パートの配列が重要です。

上記の中間定位というのは、ヴァイオリンが一つの群像として左チャンネル側の
スピーカーから集合体として聴こえるのではなく、センターとLchの中間に並ぶ
グリッドに均一に分布した位置関係にて第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが
再生される定位感を私は重要であると考えています。

同様に右チャンネルでもビオラとチェロ、コントラバスなどもセンターとRchの
中間にあるグリッドに分散してステージの存在感を再現して欲しいという考え方です。

このような弦楽五部の配列が、ステージでの左右方向への展開を思わせる横並びした
グリッドの位置関係と一致して、各パートの弦楽器が点ではなく面として分布する
中間定位のあり方を01シリーズが素晴らしく実現したのです!これが凄いのです!

前曲のハープで一弦ずつ空間に見事な音像を定位させていたという実績が、
オーケストラでは弦楽パートのグリッドを正確にステージ上に並べていくという
定位感の素晴らしさに結実しているという01シリーズの魅力と能力に感動しました!

左右のHIRO Acoustic間に整列した弦楽パートのグリッドに上乗せした各種管楽器の
グリッドが存在し、それは点音源として例えられるような小さいグリッドとして認識され、
明確な定位感にて交互に立ち上がる管楽器の残響が拡散していく事で、雄大な空間を
大スクリーンに投影した4K画像のように眼前に展開するのだから堪らない!これはいい!

そんな情景描写の素晴らしさは[1]と[6]の「花の章」で、右チャンネルから響いてくる
冒頭のはかないトランペットの演奏で、新たな01シリーズのベクトルを聴き手に認知
させる説得力を発揮している事に感動し、[1]と[6]の録音年代の違いや低域の重量感
の違いにも明確な録音センスの違いを提示する。

アナログマスターの[1]では低域の重厚さは控えめであり淡泊な音色とバランスと言える。
しかし近代楽器を用いての演奏であることに変わりはなく[6]との音色の違いを感じる。

2018年録音という[6]ではグランカッサやティンパニーの低音打楽器の迫力と重厚さを
感じるのですが、管弦楽器は約100年前のオリジナル楽器によるもので管楽器の音色は
微妙に暗い表情であり、弦楽器もガット弦の微妙に酌れ上がった甲高い音色と言える。

近代楽器の古い録音、オリジナル楽器の最新録音という対極において、01シリーズで
再生すると前述した各楽器の引き絞られた音像の明確化と、情報量の一種として録音に
含まれるホールエコーの存在感の違いが驚くほど克明に描写されていく音風景が凄い!

こんなマーラーを聴かせられたら、更にもう一曲聴きたくなってしまった。

H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acousticにしか出せない低域!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1481.html

上記を全て読まれる必要はありませんが、お時間がありましたらオーケストラの
セッションレコーディングにおける価値観ということを述べていますので参考に
して頂ければと再読もお薦め致します。

「HIRO Acousticにしか出せない低域」と題していますが、この録音においては
前述のように低音に関してグリッドで囲い込むような音像表現は適切ではありません。

マーラー:交響曲第五番 嬰ハ短調
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
録音:2017年2月20-22日/シュトールベルク街スタジオ(ケルン)
https://www.kinginternational.co.jp/genre/kkc-5842/

この交響曲第五番の第一楽章の冒頭は大変印象的なトランペットのファンファーレ。
このトランペットは再生システムによって大きな違いが出るパートなのですが、
01シリーズでは今までにない爽快であり清廉な質感と素晴らしい余韻と出色の出来栄え。

右チャンネル奥から響き渡ってくるトランペットの音像は極小のグリッドに当てはまり、
左方向に連なるグリッドには次第に楽音が薄くなっていく残響のグラデーションが
きちんと保存され、ホールの大空間を思わせる響きの連鎖が大変美しい!これはいい!

皆様はトランペットという楽器に関して、ほぼトゥイーターとミッドレンジユニットが
受け持っている楽器というイメージでしょうが、実はHIRO Acousticのウーファーが
トランペットの楽音にこれほど関わっていたという事実を01シリーズに突き付けられ
てしまいました!Grandiosoとは違う、なんでこんなに違うんだ!

トランペットの低音階に含まれる音圧というものが正確に再現されると、演奏者の
実在感をステージ上でこれほどにたくましく鮮明に描き出されるものなのか。

右奥から響き渡るトランペットの咆哮を01シリーズが見事に調教し、壮大な響きが
ホールの天井まで照らし出するような音響的視野の拡大が実に素晴らしいのです!

叩きつけるような強烈なオーケストラ全体のフォルテが嵐のように過ぎ去った後、
上記でも述べていたグランカッサの恐ろしいほどの超低域の波が押し寄せてきます!

HIRO Acousticの特徴として重たい低音を軽く出すという表現をしたことがありますが、
もはやグランカッサの波動といえる低音をグリッドの枠内に納めるというのは無理。

この低音ばかりは室内の空間すべてに渡って響き渡る圧巻の持続性を持つものであり、
F-01の定格出力を置き去りにしてしまう程の雄大な視界を聴き手に提示してくるのです!

たった二人のスタジオ録音、大編成オーケストラのホール録音と音像と音場感の
比較対比が大きく違う選曲で、K-01XDSEが送り出すアナログ信号の情報量の素晴らしさと
F-01+PS-01Fが実現した緻密さと雄大さの両立を確認した後は再び溝口肇の選曲へ。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「10.Offset Of Love」

冒頭ではセンター左寄りの中間定位となるギターの質感が最初のチェックポイント。
Lchスピーカーの軸上に貼り付いた定位ではなく、センターとの中間でピックが弾く
弦のグリッドが確認出来る事が重要。

ハープとは違いボディーの共鳴がサウンドホールから湧き出た響きが隣のグリッドに
引き継がれ、次々に複数のグリッドに響きを連鎖していき、ピックで弾いた瞬間の
音像と残響が広がる空間との対比を心地良く眺められる表現力がいい!

弾力性のあるベースがセンターに登場し、そのベースにもきっちりグリッドの存在感を
当てはめることができる。このベースいいですね〜!

次にRchスピーカーの軸上に表れるコンガの実に鮮明で切れ味のいい打音に痺れる!

注意しないと聴き逃す軽妙な音色のマラカスが左右の空間で一定のリズムを刻む。

センターから右寄りの中間定位で表れるピアノは短いパッセージを奏で、センター
左側のギターと対極をなすイントロからセンターに登場するチェロを迎い入れる。

この曲でのチェロは前曲のデュオの音像とは違い、センターに位置するグリッドに
ぴっちりと納まる小ぶりな音像サイズで登場する。この引き締まり方に思わず拍手!

主題を奏でるチェロから再度ピアノの透明感ある音色が誘発され、右寄りの中間
定位で深いポジションから湧き上がるようにオーボエが登場する。いいです!

オーボエの響きが背景に大きな空間を見せつけると、前列の伴奏楽器の背後に
しっとりとしたストリングスがチェロを挟んだ空間に展開し清楚な音の風景を完成させる!

Grandiosoシリーズで進化したES-LINK5では最大:DSD22.5MHz、PCM768kHz/48bitという
ハイスペックな伝送方式で私は今まで音のテンプレートを記憶していた事を思い出す。

これは通常のデジタル伝送と異なり、送り手側での信号変調と受け手側での復調の
プロセスを必要とせず、DAC側のデジタル処理負荷を大幅に軽減することに貢献した。

そんなアップサンプリングの妙味を私はESOTERICの魅力の一端と捉えていたので、
これまでK-01シリーズのアップコンバートではPCMで8fs/16fsという設定を気に入り、
今までの試聴ではDACに対してハイサンプリング信号を送り込む音質が好みだった。

「通常のCD再生の場合には上記の26P「設定1」にてPCM信号のアップコンバート設定
 UPC>***という項目があり、今後試聴するCDではORGでアップコンバートしない設定を
 私は選択していました。」

ところが、SEモデルに進化したK-01XDSEでは前述していた上記の設定を採用した。
何故か…!?

従来のK-01シリーズではアップコンバートした方が余韻感を感じやすく、今では
ESOTERICの多数製品に採用されているVRDS-ATLASメカニズムの存在に裏打ちされた
音像表現における完成度の高さを評価し特定しておくとすれば、アップコンバート
による残響成分の効果的な演出を優先した方が私が求める音場感の創成にふさわしいと
考えてきたからです。

しかし…、SEモデルの音質傾向はGrandiosoシリーズでも述べていたのですが、
K-01XDSEでは上記の残響成分の表現力が相当高まっている事から余韻感に何の
不足感もなく、それよりは音像のエッジを引き立てる傾向にあるUPC>ORGという
設定での音質に惚れ直してしまったということなのです!

上記のES-LINK5の一節を逆に引用すると…

「送り手側での信号変調と受け手側での復調のプロセスを必要とせず、
 DAC側のデジタル処理負荷を大幅に軽減することに貢献した。」

Grandiosoシリーズだからこそ、コストを度外視した最高レベルの技術力と物量投入
によって、TransportとDAC間の伝送方式を確立できたものであり私も納得している。

でも、それをK-01/03シリーズで同レベルのデジタル処理を行う事を目指すのかと
いうと、ここでは前述したように同方向であっても別のベクトルを作り出した方が
良い結果になるのではという設計思想ではないかと私は推測したものです。

SEモデルへの進化によって増大した音場感の情報があるのであれば、「DAC側の
デジタル処理負荷を大幅に軽減する」という原点回帰のUPC>ORGという音質を私は
高く評価したという根拠にならないだろうか!?

この曲での冒頭のギターの質感!ピックで弾かれた弦に鋭いエッジを感じる、いい!

コンガのヘッドをアタックした時の切れ味の良さに爽快感を感じる、いい!

ピアノの打鍵の一音ずつの分離感がいいのに余韻の滞空時間が素晴らしい、いい!

そして何と言っても前曲のデュオの録音で観察できたチェロの音像とは違い、
伴奏楽器の数が多くなった曲で提示されるチェロのサイズ感の凝縮が素晴らしい!

UPC>ORGという選択が01シリーズの骨格を見事に造形する演奏に聴き惚れる!

それでは、この視点にマッチした次の選曲はと早速に考え始めた私の手が動いた。

■Kirkelig Kulturverksted  30 years’ fidelity
https://www.kkv.no/en/music/divers-2

7. Som En Storm, O Hellig And - Ole Paus & Oslo Chamber Choir
https://www.youtube.com/watch?v=9CJBropx7SE

ちょっと調べてみると、このOle Pausはスウェーデンとノルウェーのバラードの
伝統におけるノルウェーの吟遊詩人であり、作家、詩人、俳優とのこと。

彼はノルウェーで最も人気のあるシンガーソングライターの一人と考えられ、
ボブ・ディランに相当するノルウェー人であり「国民の声」と言われていという。

長時間の残響時間を有する教会における録音と、音響環境を整えたスタジオでの
鮮明な録音を融合させて作られた上記の課題曲が真っ先に頭に浮かんだ。

それは前曲でギターの音像と質感に言及していたことから、同様なギターが印象的に
収録されており、心なしか音色と質感も似ているとの記憶から聴きたくなったというもの。

この曲の冒頭は大変美しいオスロ室内合唱団による混声合唱から始まります。
この合唱が始まった瞬間に私の口は半分開き、声にならないほ〜というため息が…。

前述の課題曲でチェロの質感が音像サイズの凝縮と同時に、如何に素晴らしいかを
述べてきましたが、HIRO Acousticが醸し出す人間の声、広大な空間を描き出す
01シリーズで再生されたコーラスの美しさに感動してしまいました!

「これは私でさえも未体験だ!透明感溢れる歌声が広がっていく空間と余韻の素晴らしさ!」

ノルウェー語でSom En Stormとは「嵐のように」という意味らしいのだが、その嵐の
前の静けさを歌ったらこうなるのだろうかと思ってしまうほどの清々しいコーラス!

伸びやかな女性コーラスが織りなす残響が消え去った時、センター左右に中間定位
する二本のギターが軽やかにリズムを刻むカッティングが入り、センターには
ウッドベースが登場する。ここです!

センター定位のベースは膨らまず広がらず、きっちりとグリッドの枠内に納まり、
極めて鮮明な輪郭を描くのだから堪らない。F-01の駆動力が音像を捉えた証拠。

更に、そのペースの定位は同じくするが更に遠方の上の空間からサックスが登場する。

このサックスは十分にウェットな質感を保ち、正に点音源と指さすことが出来る
ような引き締まったグリッドに格納された音像から、呆れるほど広大な音場感の
広がりをもって展開するK-01XDSEの情報量が只者ではない証拠!

そして、何よりも今までに聴いたことのない質感のサックスであることに思い当たる。

このサックスの音色と質感、そして余韻感というものをHIRO Acousticが主体を成して
表現しているのは当然のことながら、F-01のプリ部をサポートしている強化電源
PS-01Fの貢献が見事な音場感として展開しており、高域の情報量を適切に存続させる
多数のプロットを描く相乗効果として空間再現性の素晴らしさとして私を唸らせる。

これらの絶妙なリバーブによって残響という衣装をまとった伴奏楽器とは反対に
すっぴんのOle PausのVoiceがほぼノンリバーブという鮮明さでセンターに登場すると…

「一皮むけた声質と言ったら過去の事例に申し訳ないが、それほど鮮明だから仕方ない!」

喉元から発する息遣いをマイクが拾っているのか、唸るように唇を閉じて発する
低い声は耳元で囁かれた時に感じるくすぐったい空気の振動を思わせるリアルさ!

歌うでもなくラップのように叫ぶでもなく、しっとりとしながらグルーブ感のある
Voiceが正に吟遊詩人として語り掛けてくるリアルさに背中がぶるっとする!

「オンマイクでのリアルな声、余分なリバーブもない緻密な音像が素晴らしい!」

このOle PausのVoiceに関しても小型グリッドにピタリと納まり、私が今までに
聴いたことのない質感、好ましい音像サイズの表現としてセンターに浮かぶ情景に
驚いてしまったのです。このような定位感と余韻感はG-01XDの実力によるものか!

微量な濁りもなく爽快ですっきり整理された素晴らしいVoiceというものを、
01シリーズに従ったHIRO Acousticで私は初めて聴きました。こんな声だったのか!

知らぬ間にOle Pausの背後にはオルガンが表れ、長いトーンの合間に細かい音符を挟み、
ギターとベースの背景に風に揺らぐ音響カーテン、いや、オーロラのように煌めき
揺れる響きの背景を形成する。これがまた素晴らしい!

二本のギターはVoiceの合間に交互にスリリングな見せ場を作り、間奏でのサックスを
再度迎え入れ、リードのバイブレーションをたなびかせるサックスとの連携において、
あたかも教会という豊かな響きの空間で吹いているような美しい音場感を私の眼前に
展開していった。この整然と楽音のポイントを提示する音場感はいったい何なんだ!

youtubeでパソコンのスピーカーで聴いている皆さんには想像も出来ないハイエンド
オーディオの極みとも言いたい演奏空間にしびれていると、オスロ室内合唱団の
コーラスが冒頭の主題をもう一度繰り返し、その厳かな響きが数秒間私の頭の中に
余韻のリフレインを残して幕を閉じる!いや〜、これには震えました!いいです!

10. Mitt Hjerte Alltid Vanker - SKRUK / Rim Banna
https://www.youtube.com/watch?v=42fIQbjp3bY

SKRUKは1973年に設立されたノルウェーの合唱団で、指揮者のPer Oddvar Hildreと
共に現在まで広範囲な活動をしている。Rim Bannaはパレスチナの歌手、作曲家。
この曲も、くれぐれもパソコンのスピーカーで聴いて誤解なさらないように(笑)

Rim Bannaが登場するのは冒頭の一分間だけ。しかし、このソロバートが凄い!

伴奏はウッドベースだけ。それも、わずかにそっと弦に触れるだけという弱音の
ピッチカートでヴォーカルに寄り添うような低音の起伏を響かせる。

このRim Bannaのソロヴォーカルが聴かせる音像の忠実さ克明さという描写力に驚く!
同時に彼女の歌声によってスピーカーの周辺に出現するサウンドステージの素晴らしさ!

ヴォーカルが当てはまるグリッドの輪郭が鮮明になればなるほど、それを取り囲む
無色透明なグリッドに残響が流れ込み、音響的浸透圧によって無音だった空間に
微小な余韻が浸透し、新たな空間を創造していく再生音に息をのむ!いいです!

それはヴォーカルの質感に先ずは安定した艶やかさと滑らかさが感じられるという
基本構造の上に成り立っていて、ここでも強化電源PS-01Fとマスタークロック
ジェネレーターG-01XDの存在感を知らしめ、その貢献は楽音そのものよりも空間の
スケール感に対する成功例として、人間の声をここまでリアルに浮き上がらせるのか
という発見に言葉を失う!いいですね〜01シリーズ!

そして、一分後にセンターからアフリカ系パーカッションの乾いた打音が出現し、
同時に右チャンネルからは一定間隔で鳴らされる鈴の音が幻想的な空間を醸し出す。

その辺からベースは低音階のピッチカートで存在感を示し始め、先ずはSKRUKの
男声合唱が重厚なベールを思わせるハーモニーで湧き上がってくる。ここがいい!!

幾重にも重なるコーラスはパートごとの分解能を理路整然と示し、センター右寄りの
中空に極めて鮮明であり美しいピアノが登場する。このピアノの質感は絶妙な立体感と
ともに、まさに空間を転がるように一鍵ずつの打音の連続と、その瞬間から放出される
透明感抜群の響きの連鎖を展開していく。これは見事! ピアノの一弦にも音像あり!

ゆったりした男性合唱が招き寄せるように女性コーラスが登場し、youtubeでも分かる
バラード調の旋律が上品なうねりを伴って重なり合っていく。素晴らしいです!

右チャンネル寄りのピアノが儚なげなメロディーを奏でていると、左チャンネル寄りの
後方から女性ソプラノが立ち上がり清涼感溢れるみずみずしい歌声を披露してくる。

伴奏楽器はシンプルであるが繰り広げられるコーラスの響きの階層は美しい連なりを見せ、
それを縫い上げるようにピアノの美音が演奏空間を引き締めながら、しっとりと幕を下ろす。

この二曲を聴いて、これほどの自然な滑らかさを表現する01シリーズであった事、
私にして初めてという体験のグリッド分析による空間提示の素晴らしさと魅力に
納得しつつ、ESOTERICが作り出したGrandiosoではないベクトルの素晴らしさに
感動してしまった!

スタジオと教会という残響時間が極めて異なる空間で演奏された両者の楽音を
絶妙なテクニックで合成することで展開する録音芸術の見事な再現性!

オーディオ的には絶妙な録音テクニックによる新境地に強く惹かれるものがあるが、
楽音の収録状態をしっかりと管理できて、もっとポピュラーに聴けるスタジオ録音で
少し肩の力を抜いて聴ける曲、そうだ、ヴォーカルを聴こうという事で次の選曲。

■Melody Gardot/Sunset in the Blue[SHM-CD/Deluxe Edition ]
https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/uccm-1264/
https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/about/

少しリラックスして聴こうと思いつつ、職業病なのか録音内容をついつい分析して
しまう悪癖が先行してしまう。先ず、このアルバムで決まって聴くのがこの二曲。

1.If you love me
9.From Paris with Love

ストリングスバックという伴奏は共通なのですが、ヴォーカル、ベース、ギター、
ブラシだけのドラムなどすべてセンター定位となっており、1.ではセンター右の
中間定位でTill Bronnerのトランペットが儚く切ないメロディーを奏で、9.では
左寄りの中間定位でハープが登場し、右側の中間定位で日本のジャズ・ヴァイオリン
の第一人者である寺井尚子が数フレーズを演奏しているという似た構成の二曲。

私はホール録音のオーケストラではヴァイオリンまたは弦楽と呼び、スタジオ録音での
それはストリングスと称しているが、単なる私のこだわりなので特に深意はありません。

そして、このアルバムセールスにおいてユニバーサルミュージックはあまり宣伝は
していませんが、このストリングスは何と!名門Royal Philharmonic Orchestraの
メンバーが参加して、あのAbbey Road studioで行われていたというのだから驚いてしまった。
https://www.abbeyroad.com/news/melody-gardot-releases-sunset-in-the-blue-recorded-in-studio-two-2828

この二曲ともに上記の流麗なストリングスのイントロから始まり、センター定位の
伴奏楽器が短いフレーズでMelody Gardotを呼び入れるようにセンターに歌手の立ち
位置を用意し、前述二曲の人の声で感じ取った01シリーズのベクトルが示された!

「あ〜、このヴォーカル、スマートになってる!Melody Gardotにもダイエット効果あり!」

以前にも述べていたことですが日本人のヴォーカルのマウスサイズはおちょぼ口。
それに対して海外アーチストのヴォーカルは音像が大きく録音されている傾向がある。

本稿で述べている課題曲以外にも相当数の曲を01シリーズで聴いていたものですが、
大貫妙子、石川さゆりなどのヴォーカルではセンターに小ぶりなグリッドに納まり、
Diana KrallやMelody Gardotなどは日本人歌手のグリッド三つ分くらいのサイズ感。

それも、やせ細った歌手というイメージではなく巧妙なスタジオワークで造形し、
芳醇な余韻をまとった歌声なのだから文句のつけようがない!いいですコレ!

GrandiosoではないESOTERICという新たなベクトルを学習してきた私の予感が的中。

個々の伴奏楽器は皆センター定位なのだが、その分離感も申し分なくグリッドの
枠組みをイメージできる鮮明さであり、巧みな前後感も各楽音の分解能に寄与している!

さて、このヴォーカルの質感を同じ歌手で確認出来るトラックが下記の三曲なのです!

2.C'est Magnifique(feat. Antonio Zambujo)

14.From Paris With Love[Acoustic Version]

18.C'est Magnifique[Live In Namouche Studios](feat. Antonio Zambujo)
https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/uccm-1264/
このサイトで見られるVEVOの動画リンクでのバージョンです。

先ず、9.From Paris with Loveでオーケストラバックからアコースティックな
バンドによる伴奏で収録された14.で、同じ曲ではあるが伴奏の変化にともない
ヴォーカルの質感も巧妙にチューニングされていることが解かる。

ストリングスの響きと余韻に同調するように録音されているトラック9.での
ヴォーカルのリバーブの深さに対して、14.ではリバーブが浅く淡泊になり、
グリッドのサイズ感は同様にしてアコースティックなバンドの雰囲気にマッチ
させるというテクニックが01シリーズによって暴かれる!これはいい!

2.C'est Magnifiqueではセンター定位の伴奏に加えて男性歌手Antonio Zambujoの
ヴォーカルもセンター定位となり、デュエットではあるがMelody Gardotと同じ
定位でセンターに浮かび並ぶのだが、両者の分離感は精密であり一切の混濁はない。

そして、この曲でもリバーブの深さは調整され、隣り合うヴォーカルが発する残響は
音響的トリマーによって余韻の毛足を揃えられた如く、余韻の広がり方に節度を
持たせた巧みなレコーディングセンスが光る!いいですね〜!

同じ楽曲を異なるアレンジで収録したアルバムの妙味として、録音センスの成り立ちを
01シリーズはしっかりと鳴らし分ける再生音の充実ぶりに、これまでの分析からの
私の予測が見事に的中するという課題曲に安堵し感動しつつ見事なヴォーカルを味わう!

長文をスクロールして頂ける読者の気持ちに感謝しつつ、そろそろまとめに入らなければと
最も難度の高い選曲として溝口肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」に戻ることに。
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099
http://www.archcello.com/disc.html

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「14.帰水空間」

毎回この課題曲を使うたびに注目すべき項目を述べるのだが、今までの課題曲と
最も異なる楽音として冒頭の三種のドラムが真っ先に比較の対象となる。

深く沈み込む左チャンネルの重量感あるドラムは最初の一打でシステム全体が
成し得た低域再生の限界値を提示し、続く右チャンネルの切れ込み鋭く跳ねあがる
ようなドラムはスピーカーの低域特性を示し、その後にセンターで連打される
小気味よいドラムはアンプの駆動力が問われるかのように、シンセドラムと思われる
無機的ではあるが想像以上に倍音成分を含む打ち込みの打楽器として多項目の
観察点を聴き手に問いかけてくるドラムに先ず今回も私の視点が向けられた。

次にドラムの背景にシンセサイザーとキーボードが織りなす幻想的な旋律が表れ、
その空間に点滅する輝きのように高音階のパーカッションが出現し、K-01XDSEの
カウンターが1:02というタイミングで重厚なベースが立ち上がり一気にアンプの
労力が極限まで引き上げられるという大出力の展開が始まる。

この曲で私が求める音量は既に一般家庭でのリスニングレベルとは違い大きい!
果たしてA級30W/8ΩというF-01はついてこられるのか!?

「お〜、いけます!ここまで出すか!というよりも低域の質感も素晴らしい!」

今までに述べてきた01シリーズの音質的傾向を元に、私が予想した低域の再現性が
ピタリと一致して引き締まった音像と放射される残響成分が確認される。いいです!

冒頭からハイテンションのドラムが炸裂し、前述したインテグレーテッドアンプの
価値観というものを考えると、こんな記憶が蘇ってきた。

デビューしてからの数年間、私はHIRO Acousticの可能性を引き出すチャレンジを
色々と試みてきたが、パワーハンドリングの限界を試そうとして当時多用していた
爆発的なダイナミックレンジの課題曲をCH Precision M1で鳴らした時の画像がこれ!

HIRO Acousticを1,300Wでドライブした瞬間
https://www.dynamicaudio.jp/s/20240618160326.jpg

これを裏付ける実験的試聴を6年前に行った際の下記エピソードも紹介。

H.A.L.'s One point impression!! - Very Exciting Sound by HIRO Acoustic and Accuphase
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1482.html

上記より下記の一節を抜粋引用。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

アンプのパワーメーターを消灯させた方が良いと前述していながら、私はマルチ
アンプシステムで各々のアンプが一個のスピーカーユニットに対して、どんな
パワーを送りこんでいるのかに興味を持ち、8台のアンプのピークメーターを
呼び起こしてすべてのメーターにピークホールドを設定していた。果たして…。

A-250は40ポイントのバーグラフの他に五桁のデジタル表示にて数値化したパワーを
ピークホールドさせてみると、なんと! トゥイーター1個に対して瞬間最大で526W。

同様にミッドレンジには465Wというパワーを送り込んでいた。M-6200のメーターは
レッドゾーンの中間で静止しており、7オームのウーファーで換算するとピークでは
300W以上が出力されていたことになる。

MODEL-CCCSの4個のユニットに対して、このパワーハンドリングが何をもたらしたのか?
それは音量だけではないのです!ボイスコイルで熱に変わってしまった電流でもないのです!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

マルチアンプドライブで3ウエイの各帯域に投入されたパワーを合計すると約1,300W。

しかしながら一般的な先入観からウーファーが一番パワーを食うというものではなく、
トゥイーターとミッドレンジにおいても予想以上のパワーが消費されていた事が解かる。

私はいたずらに大音量で試聴するばかりではなく、当フロアーのエアボリュームと
選曲によって適切な音量設定を行っているものですが、HIRO Acousticを研究する
という時期には限界を探るため色々な実験も行っていたという一例です。

さて、一般的にアンプのカタログにおいて定格出力という項目に記載されている
ワット数に関して、特にクラスAとかクラスDという表記がなければ大概のアンプは
AB級動作を行っているというものであり、小信号ではA級動作であっても一定の
歪率の範囲内であれば100Wから300W程度のスペックを表記しているケースが多い。

というよりも、アンプの定格出力の数値に関してA級動作という表記がなければ、
自動的にAB級動作であると思って頂ければ間違いない。

アンプのA級、AB級などの違いを私の拙い文章と知識で説明すると長くなってしまうので、
ここでは増幅方式の違いに関しては述べませんが、上手に説明しているサイトを下記に
紹介しておきますので参考にして頂ければと思います。

A級、AB級、D級……オーディオアンプの「方式」の違いとは?
https://www.phileweb.com/review/column/202310/20/2244.html

上記サイトでも論点として「クロスオーバー歪み」という要素があげられていますが、
特段に目新しいものではなく既に45年くらい前には当時のオーディオメーカー各社が
「スーパーAクラス」とか「ニュークラスA」などのネーミングでクロスオーバー歪みが
発生しない回路を開発して当時のアンプで商品化していたものでした。

その時代ではA級かB級しかなかったものであり、各社がつけたネーミングはともかく
一定出力まではA級動作し、それ以上のパワーでは緩やかにB級動作に移行していくと
いう方式が一般化し、それが今で言うところのAB級の起源となっているようです。

そんなアンプの歴史を振り返りながら、アンプの新製品が持ち込まれてきた際に
AB級動作のアンプだと説明されると、私は「A級動作領域は何ワットくらいですか」と
いう質問をよくメーカー担当者にしていた事を思い出します。

例えば何社かにAB級動作で定格出力100WというアンプではA級動作領域を尋ねると…、

完全なA級動作としては数W程度という回答がありました。カタログ表記の10%から
30%程度しかA級動作しておらず、それ以上はB級動作に移行し定格出力のワット数
までを出力しているという事。つまり、こう言う流れとなります。

近代のアンプでは増幅段の動作方式に純A級という表記がなければAB級動作であるということ。

カタログ表記の定格出力が何百ワットであろうと、その中でA級動作しているのは
数十パーセントなのですが、それを表記する約束事・規格がないので公開されていない。

それから、海外製アンプのスペックでは誇らしげに数百ワットのパワーと謳っている
ものを良く見かけますが、その定格出力の数値の裏付けとなる全高調波歪率(T.H.D)が
表記されていないものもありました。これも?なのですが、カタログスペックとして
どの項目を記載するかという約束事もないので各社の自己判断に任されているだけです。

実は、この全高調波歪率(T.H.D)は定格出力と対になる規格指標であり、簡単に言えば
歪率が悪化しても良ければ定格出力の数倍まで瞬間的なパワーが出せるというものであり、
どんな大音量を出すかという事でパワーの大きさを誇るのではなく、音質の議論の上で
重要視される全高調波歪率の数値にこそ注目しなくてはいけないということなのです。

ありていに言えば、定格出力とは設計者が目指した音質追求の一環として全高調波
歪率の最高値を特定し、その歪率を維持して出せる出力の上限ということになります。

さて、ここで今回のHIRO Acousticを使った試聴で直感したF-01の瞬間的な大出力の
再現性の素晴らしさに感動したところで、そのスペックを切り出してみました。
https://www.esoteric.jp/jp/product/f-01/spec

定格出力:30W+30W(8Ω、A級動作)60W+60W(4Ω)
全高調波歪率:0.008%(1kHz、8Ω、30W)

これを前提にして私は次の質問を設計者に投げかけたのです。

「さて、A級30W/8ΩでHIRO Acousticの場合には4Ωとすれば60Wなのですが、
 純A級動作と言いましても設計者が決めたある領域での動作であり、
 それ以上のパワーでは緩やかにAB級動作に移行していくというのが一般的かと思います。

 F-01の定格出力は承知の上で設計上でA級動作領域ということでは、
 どの程度の出力までとなっているのでしょうか?」

すると、今まで私が他社のアンプに対して質問した回答のどれよりも明確に、
そして飾ることのない淡々たる技術者の言葉でこんな回答がきたのです。

「F-01ですが、製品仕様A級30W/8Ω×2chに対して実際はマージンを持った設計をしています。
 検証データでは1ch駆動であれば46W(1%歪)まで出力可能です。
 同様に4Ω駆動では製品仕様60W×2chに対し1ch駆動で87W(1%歪)となります。

 更に4Ωの2ch駆動、10%歪では100Wに達しますので、1ch駆動の10%歪では100Wを
 超えての出力が可能です。 

 2Ω以下での最大出力のデータはございませんが、HIRO Acousticの最小インピーダンスは
 2.5Ωとの事ですので、瞬時であれば帯域によっては200Wに近い領域が出ている可能性がございます。

 ただし、これらはB級動作領域での値となり、A級動作領域はあくまでも30W/8Ωとなります。
 実際にボリウムを上げてHIRO Acousticを駆動しているときはB級動作領域での動作と思われます。

 F-01は製品仕様に対して電源に余裕を持った設計をしているため、スピーカーとの
 組み合わせによってはスペック以上の駆動力を感じる場合があるのかもしれません。」

さあ、ここで私が試聴の際に求める音量という事を前述していました。その経験から
今まで述べてきた課題曲での感想において、01シリーズの魅力と特徴を表現してきましたが、
F-01で聴いてきた各課題曲では再生音の何割かはB級動作の音質であったと、白状しなく
てはならないということです。それでも素晴らしいのだから仕方ない!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

記憶と考察からフェードアウトして、K-01XDSEのカウンター1:03からの続きに戻る。

極めて良質な低音楽器を私が求める音量で確認し安堵すると、ウィンドチャイム、
鈴などの高音階のパーカッションが、細かい金箔を中空に撒き散らしキラキラと
輝きながら紙吹雪のように舞い踊る情景をHIRO Acousticの中間に描き出すと、
ステージ中央にあてられたスポットライトの真ん中にチェロを構えた溝口肇が表れる。

前述してきた01シリーズによって描かれるチェロの音像は引き締まった筋肉質であり、
新発見した色彩感が音色の多様性を見せつけて朗々としたアルコの響きを放ちつつ、
弓の動きを目と耳で感じさせるような立体感でスピーカーセンターに浮かび上がる!

右側の中間定位でピアノが短いフレーズを転がすと、多数のパーカッションが背景を
飾り付けるように左右空間のいたるところに出現し、ここはA級動作の音質だと
誇らしげに空間に舞い踊る打音の一粒ずつを見事に定位させてくる。素晴らしいです!

「このマリンバの打鍵の一つずつに、こんな明確な音像と定位感があったのか!」

同じ旋律をたどるように右側に表れたマリンバの小気味よい楽音が、高速で振るわれる
マレットの残像として耳に残るほどのリアリティーで連打されつつ、左側の高音鍵盤に
向けて打音の音像を展開していくグリッドの細やかさに感動する。これいいです!

再度、間奏を引き受けたチェロの演奏は私の脳裏にVUメーターの踊る針を連想させた。

繊細かつ力強いアルコの繰り返しにおいて、ピンピンと躍動するメーターの針。
まだ、A級動作か、この辺からB級のパワー感かと勝手にF-01の出力段が汗をかいて
いるような風情を思いつつ、(T.H.D)なんて気にしなくても音が良ければ全て良し!

「このピアノ、弾けてます!こんな鋭く細い音像から、こんな余韻を飛ばしていくなんて!」

右側の中間定位で切れ込んでくるピアノの質感がどうにも美しいのだから困ってしまう。

瞬発的なアタックが鮮明なピアノの打鍵、その一つずつはAB級動作の利点として、
定点観測できる一弦の音像を空間に固定し、更にインパクトの瞬間から空間へと
拡散していく打音の発祥から消滅までという信号の強弱におけるF-01の仕事ぶりに
AもBも関係なし!という開き直りの感動とため息の連携をもたらすのだから文句なし!

私が求めるボリュームに対して、仮にF-01のフロントパネルにVUメーターが
あったらどうなっていたのか!?

A級30W/8Ω、だからどうなの? 瞬間的に200W以上を出したって歪率低下なんて解かるの!?

ここで追記しておきたい現実として当フロアーのエアボリュームにおいて、
各種課題曲の再生で私が求めた音量に関してF-01の定格出力に対する評価をしましたが、
一般家庭において30ワットというパワーで鳴らしたら相当な音量感になるという事実です。

実は上記のESOTERIC設計者のコメントにはこんな続きがあったのです。

「ちなみに、最大出力値はスピーカーのインピーダンスに対して完全にリニアに
 追従しておりませんが、30W/8Ω、60W/4Ωでリニアとなる様、トランスなどの
 電源設計を行っているため、それを超える領域は、わずかなロスが数値となって現れます。」

能率が低めのHIRO Acousticの音量感は多数のアンプで経験したきましたが、
私は上記以外の多数の課題曲でも試聴したのです。しかも結構な音量で!

ここでいう設計者のスピーカーインピーダンスに対する出力のリニアリティーとは、
技術的にはインピーダンスに反比例する出力の数値ということなのですが、
その極限パワーでのロスという意味に関して私は別の解釈をしてしまいました。

それは歪率のロスです。

公開されているスペックの歪率の悪化をロスと解釈すれば、基本設計の優秀な
A級アンプが定格出力以上のパワーを瞬間的にひねり出し、全高調波歪率:0.008%が
数パーセントまでロス、低下したとしても聴いている人間には察知できるもの
ではないということです。(個人差があることを前提としての発言ですが…)

むしろ、小さい音量の信号であればA級動作の利点を明確に音質に仕上げ、
瞬間的な大音量での楽音においてB級動作に移行しても品格を維持できる実際を、
01シリーズのパフォーマンスとして私の耳と感性が認めてしまったという事なのです!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私は執筆業のプロではありません。アマチュアであって良かったと思う時があります。

良いと思ったもの美味しいと思ったものだけを語ればいいからです。

そう思っていないものを報酬を得るために書かなければならないとしたら苦痛でしょう。

そして、今回の試聴を通じて価格だけではない音質評価を体験出来た事を嬉しく思っています。

「Grandiosoにない魅力を01シリーズから引き出すことが出来るのかどうか!?」

これは実感として出来たと思っています!

「高価なラインアップを実現できないユーザーに対してサイズダウン・プライス
 ダウン、そしてクォリティーも妥協し求めやすくしたというのが01シリーズなのか?」

いいえ、ESOTERIC K-01XDSE & F-01+PS-01F & G-01XDの各々は、
その価格以上のパフォーマンスを目指し実現したものと私は判定しました。

ご精読に感謝しつつ、長文だった割に今回は簡単な結論となりました。

「皆様に自信をもって推薦致します!」

■ご予約頂ければ上記システムの試聴準備をさせて頂きますので何なりとご相談下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/appoint.html

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!


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