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H.A.L.担当 川又利明
    
2022年4月1日 No.1699
 新企画⇒New Original product release-Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Isolator

■Hidden Story - Ta.Qu.To-Isolator

Y'Acoustic System代表 吉崎さんより
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/yas/index.html

実は、2020年の10月ごろからずっとインシュレーターの開発をいたしておりました。
Ta.Qu.To-Cableを開発していた過程で、インシュレーターの音が気になってしまい、
ブラックラビオリとH.A.L.'s E.S.Insulatorとリラクサの良いとこどりをした
欲張りなインシュレーターが出来ないものかと、試行錯誤をしておりました。

今は最終検証中でございますので、完成しましたら、またお時間頂けるタイミングに
検証頂けると幸いです。初期段階の試作第一号の画像は下記になります。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126170246.jpg

因みに、写真では樹脂素材に薄い制振ダンパーが張り付いているだけに見えますが、
制振ダンパーの部分は、中に10mmほど彫りこまれており、制振ゲル、CFRP板、制振
ダンパーの複層構造になっております。この開発動機は次のような発想からでした。

インシュレーターを開発しようと思い立ったのは、Ta.Qu.To-Cableの開発が進み
視える情報が増えてくるとインシュレーターによって音楽のバランスが変わって
しまったり、特定の帯域に癖を感じたりする事が増え色々なインシュレーターを
試してもインシュレーターの音が気になってきてしまったからです。

全帯域の音像をバランス良くコントロールして、音楽をより立体的に浮かび
上がらせてくれる、単純に機器の持つポテンシャルをイイ感じに引き出してくれる
インシュレーターが欲しくて開発に着手しました。

現在の素材や形状に至ったわけはTa.Qu.To-ZeroやTa.Qu.To-Cableでの経験から…

@単一素材では無く、柔・剛の複合素材で機器側とラック側をそれぞれ制振・
 アイソレーションすること

A特定帯域に癖が出にくく、コントロールし易い素材で構成すること

上記を念頭に、金属・樹脂・エラストマー・ゲルなど、さまざまの素材・形状・
サイズ・厚みを試しました。

まず形状ですが、Ta.Qu.To-Zeroの様に専用設計で完結できる場合は、接地面を
半球状にするのがスパイクと面設置 両方の良い面を引き出しやすいと考えております。

しかし、汎用インシュレーターの場合、機器側・ラック側共に素材や厚み・
重量など、条件がバラバラですので、どの条件でも、スパイクと面設置 両方の
良い面を得られる方法は無いかと試行錯誤した結果、制振ダンパーを接地面と
面設置で密着一体化させる方法に至りました。

(この為、本領発揮まで設置から時間を要する結果となっております)

制振ダンパーのサイズですが、様々なサイズを検証したのですが、1点あたりの
サイズを大きくするとスパイク系の利点が失われ素材の音がどんどん乗ってくる
方向になりましたので、密着一体化の恩恵を受けつつ、安定して設置出来る最小の
サイズとして現在のサイズになりました。

インシュレーターの高さは37mm(樹脂部35mm+制振ダンパー上下1mm)で樹脂の
直径が30mm、制振ダンパーの直径が20mm、サイズ・構成が上下対象なのも、
音が一番安定したからです。

因みにCFRPディスクも音質的な理由から、積層するカーボンを全てクロス素材の
板を特注製造した物です。

一般的なCFRP板は積層する表面はチェッカー模様のクロス素材ですが、中の積層材は
一方向のカーボン繊維でそれを積層毎に90度交差させて出来ております。

追試の結果、制振ダンパーのサイズをお送りした物より0.2mm小さくして、設置前の
制振ダンパーへの負荷を無くしたところ、本領発揮までの時間は短縮されましたが
やはり安定するまで半日〜1日は必要な感じです。

同条件で、使用個数を増やした場合どうなのかの実験も含め、更に改善できないか、
先日の試聴で得た経験を生かして取り組んでおりますので暫しお時間下さいませ。

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Ta.Qu.To-Cable同様に私はなぜ吉崎さんが作ったものを高く評価するのかというと、
H.A.L.で吉崎さんが聴いてきた音質によって開発の原点と目標が設定されてきたと
いう事であり、当フロアーでの音質経験値のレベルの高さを私も承知しているからのです。

つまり、H.A.L.の音を研究し尽くしてきた感性によって開発の方向性が決定され、
H.A.L.での検証によって確認していくという開発手段を信頼しているからなのです。

その一端としてTa.Qu.To-Cableにて音質一変と述べている下記の記事を読まれた
吉崎さんは日帰りで大坂から上京され、丸一日H.A.L.にて試聴をしていかれました。

H.A.L.'s One point impression!! - CH Precision  Vol.2
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1674.html

2020年8月 吉崎さんより

昨日は、溝口肇の例の2曲を課題曲に加えて、色々と実験をしておりました。
現状の制振ダンパーは埋め込む穴との隙間を完全に無くす為、穴の径に対して、
0.2mmほど大きく、押し込む様に入れ込んでおり、設置前の状態から一定の圧力が
制振ダンパーに加わっている状態でしたので、その圧力を抜けば密着時間が短縮
され初期音質の向上に繋がるのでは?

と考え、穴の径より0.1mmほど小さくした状態で試しましたところ、設置初期の
音質が改善されました。

この後、構成素材の厚み比率の見直しなど、諸々詰めさせて頂き2種類ほど、
納得できる改良版が出来た時点でお送りさせて頂ければと考えております。

2020年9月 吉崎さんより

インシュレーターようやく川又さんに聴いて頂けるモノが出来上がりましたので
2種類トライアルをお送りさせて頂きます。

先月、川又ルームにお伺いして川又さんのお話しやCHの体験から、やはり目指す
方向は「各音像を凝縮し音楽をより立体的に浮かび上がらせる」に尽きるかと
思い直し素材の種類、厚みなど1から構築しなおしました。

(前回の物は、心地良さも両立しようとしていました)

結果、厚みや構成は元より、制振エラストマーの種類も全然違うモノになりました。
@は前回と同様の高さ、Aはほんの少し高さが高くなっております。
インシュレーター本体に「青テープの上に@」「黄色テープの上にA」と印を付けております。

また、BF-3ならまた売りたいね〜と仰っておられましたので、初期性能として、
BF-3と互角以上に24時間後には本領発揮できるように致しました。

24時間後は、各音像が凝縮されて音量が少し下がった様に感じられますので
試聴ボリュームを+0.5dB上げて検証頂ければ幸いです。

2種類お送りしたうち、24時間後の音としてよりTa.Qu.To-CableらしいのはAかな〜と思います

比較用にBlackRaviori BF-3もお送り致しますので、比較検証用にお使い頂ければと思います。
@Aの感触が良ければ、川又さんの必要個数をお作りしてお送りいたします。

大変お手数をお掛け致しますが、ご検証のほど宜しくお願い致します。

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Ta.Qu.To-Cable開発時と同様に大坂在住の吉崎さんから数種類の試作品を送ってもらい、
それを私が試聴して評価をフィードバックし次の試作品を作るという繰り返しで、
共同作業として今回も開発を進めていきました。

最初の試作品が届いたのは2021年の夏でしたが、当時はコロナ禍が拡大した時期でもあり、
また当フロアーに多くのコンポーネントが持ち込まれ課題試聴に追われていたものでした。

そのために届いた試作品を試聴するまで大分時間がかかってしまったものでしたが、
初期段階の試作品の内部構造は下記のようになっていました。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126171527.jpg

上記にて24時間後の音質と述べられていますが、実は私が初期段階の二種類の
試作品を試聴した際に、セッティング直後の変化が薄い、一日・二日と時間を
かけないと良さが解からないという事では商品としてインパクトに欠ける。

セッティング後に熟成期間がかかるのは解かるが、それはセットした直後に起こる
変化が評価出来るものであり、その延長線上に熟成した魅力が表れてくるという事を
使用開始の第一印象としてお客様に理解してもらう必要がある、ありていに言えば
まだ音質的には納得出来ないと私が言ったからなのです。

また、上記の初期型試作品の内部構造を見て次のようなやり取りもしていました。

川又
断面図を見ると黒い本体から1ミリか2ミリ上下に露出している部分なのですが、
実際に荷重をかけると圧縮されて黒いボディーにコンポーネントの底面が接触
してしまうことはないでしょうか?

吉崎
試作Bは上下ともに2mm露出しております。
一般的な機器重量で、圧縮されてもコンポーネントと接する事はまず無いです。
50k〜60kgでも大丈夫だと思われます。

試作Cは上下ともに1mm露出しております。
35kg程ですと、接する事は無いと思われます。

川又
それから、CFRPとは、「Carbon Fiber Reinforced Plastics」の略で「炭素繊維
強化プラスチック」という事だと思いますが、断面図を見ると上下に三枚ずつ
使われていますが、厚みはどのくらいあるのですか?
また、このCFRPは荷重をかけても変形、圧縮はされませんよね?

吉崎
CFRPは川又ルームに有るWestminsterlabの天板などに使われている、いわゆるクロス
模様のカーボンです。このカーボンの板から円盤状に切り出したものとなります。

特注全クロスと記載しているのは、通常のカーボン板は、板の表と裏の面はクロス状の
カーボンシートを使い、中身部分は直線状のカーボンシートを90度ずつ交差して多数
積層し焼き上げて製造するのですが、今回使っているカーボンは、表裏以外の中身部分も
全てクロス状のシートを使った物となります。

全クロスのカーボン版は、コストが高く標準品にはないので、特注で作って貰ってます。
CFRPは標準品でも鉄の9倍強いですし、荷重をかけてもビクともしません。

川又
沈み込む柔軟性があるとしたらエラストマーだけという理解で良いですか?

吉崎
沈み込むのは、制振ダンパー部と制振エラストマー部となります。

川又
インシュレーターではなく、アイソレーターというネーミングで良いのですね?
その辺もこだわりの命名ということで、インシュレーターは使わずということですね?
> Ta.Qu.To-Isolator

吉崎
はい、製品分類としてはインシュレーターですが、名称としてはアイソレーターとなります。

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2021年秋となりましたが、当時はB&W 801D4を国内最速で試聴し展示導入も行い、
このスピーカーに関するプロモーション活動に忙しくしていましたが、やっと
時間を作り第二段階という4種類の試作品を試聴することが出来ました。しかし…

川又より

出社してエアコンを回し室温25℃、湿度は55%という状況で試聴しました。

■溝口 肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」
「1.世界の車窓から」「10.Offset Of Love」「14.帰水空間」

使用したのはGrandioso P1XとC1Xの両方に同じナンバーを同時使用。
選曲は上記の三曲に絞り込んで、最初に一晩セットしておいたCを聴き、
それを外して2回目、更にBに変更し最後に確認のためCに戻してと
四通りの状況で試聴しました。

先ず一晩経過したCの状態を確認しましたがセッティング状態に問題はなく、
左右片側ずつではなく前後二個ずつをセットするという方法にて行い、
最後にコンポーネント全体を持ち上げて置き直すという事で注意しセットしました。

「1.世界の車窓から」

一晩おいたC→比較するものがないので最初の印象は良好の一言。
何もなし→ハープの音像が不鮮明になり音場感も小さくなり駄目だ〜という感じ。
セット直後のB→ハープの輪郭が鮮明になり何よりチェロがいいですね〜。
セットし直したC→ハープの余韻感の美しさ響きの良さを確認。でもチェロも膨らむ感じ。

「10.Offset Of Love」

一晩おいたC→イントロでギターのまとまりよくRchでのコンガの切れもいい、これがスタート。
何もなし→ギターぼける感じ、チェロも曖昧、う〜ん、褒めるとこなし(笑)
セット直後のB→ギターいいです、コンガの切れ味いいです、チェロの音像がきれい。
セットし直したC→ギターの余韻がきれいですがコンガがちょっと緩くなりベースが膨らむ。

「14.帰水空間」

一晩おいたC→当たり前のように冒頭のドラムがいい、高音のウィンドチャイムがきれい。
何もなし→ドラムだめです、滲んでしまいました。空間が出ない、音像の輪郭だめ。
セット直後のB→このドラム一番いい、チェロの音像も秀逸、やはりこれかな〜
セットし直したC→高域はきれいなのですが低域が甘いということが確認できました。
でも、あくまでもBとの比較においてという事なのですが、総合的にはやはりBかな〜

簡単で申し訳ないのですが、先程まで二時間以上かけて色々と聞き直しました。
BもCも三日間程度の熟成をさせての比較は出来ませんでしたが、音楽性というと
解釈が色々ありますがCの美点は高域の楽音で発揮されるように思いました。

反面Bでの低い音階のドラムやベースなどの音像は大変良いと思いました。
これはお客様の印象に残りやすいセールスポイントになると思いますので、
方向性としてはBのチューニングと安定性を高めるということで良いと思います。

しかし、この段階でも私は納得していませんでした。

吉崎さんより

追加テストして頂き誠に有難うございます。
頂いたインプレッションは、私がBCに感じている事と同じと感じております。

Cの音楽的解像度と記載させて頂いた意味は、ピアノなどのタッチと言うか
微妙なニュアンスがより感じ取りやすかったので、そう表現させて頂きましたが
低域など全体で勘案しますと、川又さんの仰るとおり、やはりBかと思います。
Bを完成形へと仕上げさせて頂ければと思います。

2021年11月 吉崎さんより

ようやくTa.Qu.To-ISOが完成致しましたので、2セット発送致しました。

完成まで時間を要したのは、接着剤の種類によって音が変わるため条件に合う接着剤
シートを5種類検証していたのと、ちょうどBに使用している、制振エラストマーの
新型が出ましたので、メーカーから取り寄せて併せて検証しておりました。

結論として、前回気に入って頂いたBの良い所はそのままに更なる音像の凝縮と
立体的な音場が達成できたと思います。

川又さんに「コレですよコレ!これぞTa.Qu.To」と言って頂けると言いなぁ〜

最終の音質になるのは、変わらず2日後となります。

1日後、音像は1段凝縮されますが、重心が少し高域よりになります。
2日後、音像は凝縮されたまま、ウェルバランスになります。

お忙しいなか申し訳ございませんが音質の検証をお願い致します。
画像と内部構造もお送り致します。

Ta.Qu.To-Isolatorパッケージ仕上がり
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126182334.jpg

Ta.Qu.To-Isolator仕上がり外観
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126182353.jpg

Ta.Qu.To-Isolator最終段階の内部構造
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126182405.jpg

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

年末年始にも課題山積で色々なプロモーション活動に取り組み、試聴システムも
二転三転と変更していましたが、最近やっと落ち着いて試聴出来るようになりました。

H.A.L.'s Sound Recipe / Ta.Qu.To-Isolator - inspection system
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126145612.pdf

上記の試聴システムにてGrandiosoコンポーネントに使用した状態が下記になります。

Ta.Qu.To-Isolator for ESOTERIC Grandioso C1X
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126145603.jpg

Ta.Qu.To-Isolator for ESOTERIC Grandioso P1X
https://www.dynamicaudio.jp/s/20220126145552.jpg

一見すると結構内側にセットしているように見えますが、直径が30mmという
Ta.Qu.To-Isolatorは使用するコンポーネントのボトムプレートに対して外側周辺
近くと標準フットの内側とセットする場所の選択に自由度があります。

セットする位置関係においても微妙な音質変化があるのですが、大まかに言うと
外側周辺近くに広げてセットすると響きが豊かになり音場感優先モード、逆に
4個の距離感を縮めて内側にセットすると楽音の集約・密度感が高まり音像優先
モードという感じで使い分けが出来ますのでお試し頂ければと思います。

そして、上記の画像のように今までのインシュレーターとの違いを感じ取るため、
私は音像優先モードというセッティングで試聴することにしました。

音像優先モードと称していますが、これは別に音場感という空間情報を犠牲に
するという事ではなく、音像を集約集中させることで音像サイズの凝縮を図り、
同時に楽音が凝縮したことで生じる音像周辺の空間に残響の拡散領域を広めることで
サウンドステージが大きくなる事を期待してのセットアップであるとご理解下さい。

また、今回の試聴に関してはTa.Qu.To-Isolatorをセットして一週間経過後の音質も
チェックしており、使用前・使用後という短時間での比較試聴も行ってきました。

後述する音質変化の印象に関しては、着脱による短時間の比較と一週間経過後の
印象と両方を併記する形で、セッティング後の熟成による変化を回想的に語りつつ
使用直後に見られる変化を中心として述べていきたいと思います。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■H.A.L.'s One point impression - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Isolator

オーディオの世界ではインシュレーターと呼ばれる商品は多種多様なのですが、
その基本的な傾向と特徴、そして効用を私の考え方で説明させて頂きます。

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市販のインシュレーターの材質としては金属、木材、アクリル、合成または
天然皮革、水晶(人工の結晶体)、セラミックなどなど実に色々なものがあります。

そして、インシュレーターの機能性を示す効果のあり方は二種類あります。
スパイク構造に代表されるように機械的接点を点支持にすることで共振を防止、
または振動を伝搬する際に振動モードに歪を与えないでメカニカル・グランディングを
とるというもの。説明のためにこれを[A]とします。

もう一つは、点支持ではなく面接触させることでコンポーネントそのものの
振動を吸収する考え方で、既存のフットとラックの棚板の間で緩衝材として
機能するものです。説明のためにこれを[B]とします。

この二種類の機能性・効果には各々にメリットとデメリットがありますが、
その各論を私が述べてしまうと両方式の商品に対してイメージダウンになり
ますのでノーコメントとしておきます。もちろん両方の製品には特有の効果が
ありますので商品価値は認めた上での説明ですから、誤解なきようよろしく
お願い致します。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、上記の解説をしかけたところでしたが製品名を特定しなければ問題は
ないだろうと判断致しまして、この製品の特徴を述べるためにインシュレーター
全体の総論として[A]と[B]の傾向について比較説明したいと思います。

先ず、上記のインシュレーターの機能性を[A]と[B]によって分類するという事は
製品そのものの硬度、つまり材質の硬さということに置き換えて説明出来ます。

[A]の分類による特徴としてはインシュレーターそのものが硬質で硬い材質で
あるということが言えます。この場合にはコンポーネントの振動そのものを
制御するということで、リジッドな材質で機械的な支点を明確にします。

その結果、フォーカスイメージが鮮明になり音像の輪郭がくっきりとして
そのために音場感や奥行き感の向上に寄与するという働きがあります。

また、同様な効果を狙ってコンポーネントに純正付属品として同梱されている
フットやスパイクなども設計者が意図した音質をユーザーに届けるという責任
を追求するものとして私も歓迎するものです。

しかし、この[A]の分類では弱点もあります。それはインシュレーターの下側、
つまりラックの棚板であったり床面であったり、インシュレーターをセット
する土台となるものの性質と環境に影響を受けるという事です。

インシュレーターの下側に接するものが木材かコンクリートや石か、または
ガラスかなどの材質の変化によって、その材質特有の響きというか傾向を音質に
含むようになってしまいます。つまり、インシュレーターの下側とのアイソ
レーション効果はあまり期待できないという事です。

では[B]はどうでしょうか?点支持ではなく面接触させることでコンポーネント
そのものの振動を吸収する考え方、という事は材質はある程度の柔らかさ柔軟性が
必要と言えます。指で押してみて形状が変化する程の柔らかさ、また究極的には
エアーサスペンションのようにインシュレーターの上下にあるものを完全に
アイソレーションするというものも[B]の範疇に含めても良いかもしれません。

[B]のような性質のインシュレーターは余韻感が大変美しく、響きの要素が
一種の浮遊感として音場感を形成するという傾向もあり、同時にアナログ
プレーヤーのようにハウリング対策としてコンポーネントの設置場所からの
振動伝搬を遮断するという効果もあります。

言い換えれば設置場所の影響を受けないということが[A]と反対のメリットと
して述べることが出来ます。そして、響きの美しさという項目に貢献度が大きい
インシュレーターとして[B]の特徴を述べることが出来ます。

しかし、[B]の分類でも弱点もあります。残響成分がきれいに再現されるという
楽音の消滅方向への時間軸の推移に関しては魅力的なわけですが、リズム楽器の
アタックの鋭さ立ち上がりという点では多少甘口になります。

そして、低域の楽音の音像もすこしゆったりとしたイメージになります。
この方が雰囲気があって好ましいというユーザーはそれで良いでしょう。

これを見方を変えて説明しますと、コンポーネントが発する固有の振動があった
場合に、その振動を制御し減衰させるという機械的な抑制効果は少ないと言えます。

極論を言いますと、振動しているものをフローティングさせるので害はなくな
りますが、その振動にブレーキをかける、あるいはがっちりと抑え込むという
働きは期待できないという事です。

材質として柔軟性あるものは振動を遮断するというアイソレーション効果は
ありますが、柔らかい材質であるが故にコンポーネントを機械的にホールドする、
がっちりと固定するということには不向きという傾向があるのです。

[A]と[B]の特徴をメリット・デメリットとして述べましたが、私が注目している
Black Ravioliとは一体どちらに属するのか? ここがポイントです!!

最後になってBlack Ravioliという商品名が出てきましたが上記は次の一節でした。

2011年7月11日 No.840「気になるBlack Ravioliの中身と特徴を解説!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/840.html

このBlack Ravioliはハルズサークル会員の皆様にざっと300個近くの販売実績と
なり大ヒットした商品でしたが、上記の続きとなる結論までは長くなりますので
興味関心のある方は上記リンクをご再読頂ければと思います。

さて、インシュレーターという商品の機能性を説明しましたが、実は前述の解説は
単純に機械的振動に対するものでした。そもそもインシュレーターとは振動対策を
行うという観点で作られてきたものなのです。

そして、本日から試聴を開始したTa.Qu.To-Isolatorは上記の[A]と[B]の両方の
メリットを巧妙なアイデアと技術力、そして作者の音質に対する絶妙な感性から
誕生したというところまで述べておきたいと思います。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

上記は既に公開済みの文章からの一部引用ですが、インシュレーターではなく
アイソレーター、Ta.Qu.To-Isolatorというネーミングの根拠を皆様にご理解
頂ければという一節です。

今回の検証は音像優先モードというセッティングで開始しましたが、この論点を
判じやすい選曲として演奏者が最少人数という小編成の録音から始めました。

■Cheryl Bentyne「THE COLE PORTER SONGBOOK」より11.Bigin The Bigin

このCDは大分前に廃盤となっておりレーベルのデータも現在は存在していないので、
適切なURLの掲載は出来ないものなのでネット検索して内容をご覧頂ければと思います。

2009年リリースされたアルバムに納められている一曲ですが伴奏はドラムだけです!
そのドラマーの名はDave Tull。下記にてアーチストのリンクを紹介しておきます。
https://davidtull.com/

冒頭の7秒間はドラムソロ。このキックドラムは印象的であり、スタジオでの音質的
加工が施されていない空気感をはらむアコースティックな打音。ビーターがドラム
ヘッドを叩く瞬間から周辺に残響が広がっていく過程が観察できる好サンプルでもある。

同時に再生するスピーカーによって倍音成分の表現に変化が表れやすい傾向があり、
特にバスレフポートを持つスピーカーでは音像と音色に大きな違いが出る。

しかし、HIRO Acousticでは位相がずれたり遅れたりする低域ではないので、膨らまず
スピーカーのセンターにしっかりと音像を描く事が出来ることで変化を察知できる。

Grandioso P1XとC1Xにてスパイク内蔵の純正フットにて先ずは比較用テンプレートと
して聴き、再度リピートして音像の存在感をしっかりと記憶させてから重たい両者を
持ち上げてTa.Qu.To-Isolatorをセットしリモコンのスタートスイッチを押した…!

「うわ!何ですかコレ!音像サイズ四割縮小、音像エッジくっきり、濃密濃厚な音色!」

スタートしてから8秒後に登場するヴォーカルに関しても同様な変化がある!
これをどう表現したものか!? そうだ、音の等高線理論でいこう!

小学生で習う地図の等高線です。等高線の間隔は斜面の角度を表していますが、
今までは富士山の稜線のようになだらかに間隔のあいた等高線が左右スピーカーの
間に広がり、音像そのものも正面から見るとゆったりとした存在感であったか。

それがTa.Qu.To-Isolatorをセットしただけで等高線の間隔がぐっと縮まり密になり、
同時に楽音の核というか中心点に対して音圧が密集しアルプスの稜線のような急斜面として、
山頂を上空から俯瞰し見下ろした構図で言えば見かけ上の面積が見事に凝縮する!

そんな音像の急斜面から滑り落ちて行くかのように楽音の芯から拡散していく残響
成分が広がっていくのですが、やがて広い裾野によって余韻が運ばれるように展開し、
響きの消滅までの経過時間をしっかりと認知できるような情報量として漂っていく!

キックドラムだけに関わらず各種のタムがヒットした瞬間から放射する残響が
中空に拡散する描写力も同時に格上げされており、打音の点音源と言えるピン
ポイントの音像が瞬時のスピード感でストロボのように明滅し展開する気持ち良さ!

Cheryl Bentyneのマウスサイズも四割縮小という変化もドラムと同傾向が確認され、
ヴォーカルの音像がくっきりと立体的に中空に浮かぶ妙技に内心で拍手喝采する!

ここまでだったら前述の[A]の分類というインシュレーターでも出来なくはないのだが、
音像と残響に関する観察点だけでなく私の耳は声の質感の変化にロックオンしていた!

ドラムという打楽器とヴォーカルにおける選曲はTa.Qu.To-Isolatorの検証を行う
スタートとしてジャストミートした選曲であったと納得し、シンプルなデュオの
録音における音質的傾向も確認していた。それが次の選曲につながっていく…!

■DIANA KRALL「LOVE SCENES」より11.MY LOVE IS
https://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccv-9580/

ヴォーカルとドラムのデュオという前曲から次はヴォーカルとウッドベースのデュオ。
以前から何度も試聴に使用してきたChristian McBrideの素晴らしいベースがポイント。

そして前曲で感じていたデュオの録音としての特徴が確認されたというのはこれ。

この曲でのウッドベースはノンリバーブでドライな音質で録音されており、
ソリッドで輪郭が鮮明な低弦の質感がくっきりと表現されている。

それに対してヴォーカルには巧妙なリバーブで上下左右に拡散していく余韻感を
演出的に施しており、同時にDIANA KRALLのフィンガースナップがパシ!パシン!と
鋭い音で弾ける音に関しても長い余韻を中空に広げていくという音作りの妙がある。

同じ空間で両者が演奏したら絶対に起こり得ない絶妙な音響的コスメティックだ!

さあ、ノーマルGrandiosoで先ずはウッドベース、弾けるフィンガースナップ、
そしてヴォーカルという三大要素を二回ほど繰り返し比較原型を耳に焼き付けた。

そこにTa.Qu.To-Isolatorをセットすると…!?

「音像ダイエットが素晴らしい!ベースの変化凄い!弾ける指にジャストフォーカス!」

ほぼ同時にスタートするのはベースとフィンガースナップ、低音のベースと高音の
フィンガースナップという対照的な再生帯域の二種が同時炸裂!これが既に激変!

弾ける指の音に音像があるのか、というと懐疑的になる方もあると思われますが、
ここにも音の等高線理論が当てはまるわけです。

カラー地図の等高線は標高が低いところは薄い茶色、標高が高くなるにつれて
濃い茶色に変わりつつ、山頂に至るところでは赤い茶色へと塗分けられている。

前曲同様にTa.Qu.To-Isolatorの効果は先ずは等高線間隔の縮小という変化を示し、
使用前に比べると密集した等高線が表れ急斜面に変化して俯瞰図では面積も縮小。

正面から見た投影面積が凝縮した一点に弾ける指の位置をポインターで指し示す
事が出来るような緻密な定位感で、瞬発的な音源となった音像の中心部は真っ赤!

拡散していた音圧がぎゅっと凝縮して一点から破裂するようなフィンガースナップに
最初の変化を確認している暇もなく今度はベースだ!

これは前曲のドラムよりも解かりやすいかもしれない!
Christian McBrideの指が弦を弾いた瞬間のデティールが浮き上がるように鮮明化!

浮き上がるようにと例えたのは前述の等高線理論の山頂部の盛り上がり方、
薄い色から深く濃厚な色に変化していく稜線の角度の例えのように立体的に張り出す
ように迫ってくるベースそのものが音像サイズをぐっと縮小しているからこその変化!

更地の砂場で両手を使って周辺の砂をかき集め砂山を作ったようなイメージで、
散らばっていた低音をぐっとスピーカー中央に集約してきたイメージ!

そして何よりも、かき集めた砂の質量は一定面積に対して大きくなり、ずっしりと
重量感あるベースに豹変しているのだから驚く! おや、とここで思い起こす事が…。

DIANA KRALLのヴォーカルに表れた変化の方向性はもはや推測可能な変化だった!

前曲同様に音像サイズの縮小は期待通りの効果をもたらし、ベース同様に凝縮した
濃密感溢れる質感に刷新され等高線理論の裾野効果というもので広大な音場感を示す!

マウスサイズの小型化により口許がビジュアルとしてHIRO Acousticのセンターに
ぽっかりと浮かぶだけでなく、立体的に残響を拡散し始めた変化に言葉を失う!

更に歌声の質感にも変化を感じる。おや、とここで思い起こす事が…。

実はTa.Qu.To-Isolatorを一週間継続使用し、同じ課題曲を聴いてから取り外した
時に感じた、逆方向での変化で最も印象に残った特徴を思い出したのです。

「お〜、一週間熟成させると低域の重量感が増したのか、声の質感も滑らかに!」

ここで開発者の吉崎さんのコメントを思い出す。

「制振ダンパーを接地面と面設置で密着一体化させる方法に至りました。
 この為、本領発揮まで設置から時間を要する結果となっております」

不思議なことにTa.Qu.To-Isolatorは使用時間を経るごとに再生音の質感に作用し、
低音に重みが増してくること、ヴォーカルなどの連続楽音に滑らかさが出ること、
すなわち前述の[A]と[B]二種のインシュレーターの特徴を合わせ持つようになる!

本当か? 直径が30mm、接地面となる制振ダンパーの直径はたった20mmという
Ta.Qu.To-Isolatorのエージング効果は音楽をより美味しくするのか!?

さあ、そこで次の課題曲を選曲したポイントが見えてくるわけです…!

■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1 よりTRACK NO. 3 TWO TREES
http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html
http://www.dynamicaudio.jp/file/100407/UncompressedWorldVol.1_booklet.pdf

やはり以前から多用してきた次の選曲はピアノとサックスのデュオというパターン。

この原稿の中で比較した状況を語っているが、実際にTa.Qu.To-Isolatorの取り外し
作業をやった回数は数え切れないほどの回数であり、重量級のGrandiosoシリーズを
左手で持ち上げ右手でセットするという骨の折れる作業を何度も繰り返してきました。

そして、三曲目のポイントとして音像優先モードというセッティングから始めて、
前曲まではセンター定位の打楽器と弦楽器にヴォーカルという選曲でしたが、
この曲はいわば三分割定位という録音なのです。

左右スピーカーの間隔を三分割、センターのLchの中間にサックス、センターとRchの
中間にピアノという定位で録音されており、その両者がまるでECMレーベルの録音の
ように実に美しい余韻感を放っているという広大なサウンドステージが聴きどころ
という事で、楽音の発祥から消滅までの時間軸が長く響き渡り音場感というチェック
ポイントを優先するか音像主義なのかという聴き手の好みも分かれる選曲。

これも先ずはノーマルGrandiosoで二回ほど聴き、上記に述べたスピーカーという
音源が存在しない中空に音像をどのように浮かび上がらせるのか、聴き慣れた
課題曲ではあるが音像の在り方を確認しつつ繰り返し比較原型を耳に焼き付けた。

さあ、またしてもセッティングです、そして…!?

「お〜、そうきましたか! 音像の濃密感、余韻の緻密さ、音場感の広がり、全て良し!」

前述のようにセンター定位ではないテュオの演奏ですが、ここでも音の等高線理論で
例えるなら、このようなリバーブが深く長い録音では等高線の間隔はやや広く、
残響が拡散していく領域が大変に広いので楽音の中心点をひたすら凝縮するだけと
いう変化の方向性ではいかがなものかと半信半疑であったわけです。

センター左寄りのサックスの残響は右チャンネルのスピーカーからも反復する
エコーのように響きの繰り返しが聴こえてくるほどのリバーブのかけかた。

しかもセンター定位ではないので、反対チャンネルへなびかせていく残響成分を
描写できる領域が広く、繰り返しのエコーがしっかりと認識できる録音の特徴がある。

この曲でTa.Qu.To-Isolatorがやってくれたことは、前例の例えのようにカラー地図では
標高差によって等高線の高さが高くなるにつれて色が濃くなっていくという表現をしたが、
その色彩感の濃淡を一段階、いや二段階ほど濃厚に茶色を濃くしていったということだ!

もちろん音像サイズの縮小という変化も察知しているのだが、それは四割縮小と
いうところまでいかず三割程度の縮小としておいても良いのですが、とにかく
楽音の質感において濃密感がぐっと高まったという事が強い印象なのです!

サックスのリードの瞬間的なざらっとした擦過音のような微小ノイズから音像の
定位を改めて認識する場面もあり、凝縮した音像から放たれた残響が反対チャンネルに
飛翔するがごとくの展開で余韻を留める空間をぐっと拡張する快感が堪らない!

ピアノにおいても等高線の間における色彩感が濃厚になった変化が打鍵の瞬間から
網膜に残る残像のように響きのレイヤーを構成していく妙味に思わず唸ってしまう!

敢てサウンドステージの広大さを録音に含めてあるという演出に対して、
Ta.Qu.To-Isolatorの使用によって等高線の間隔を狭め斜面の角度を大きくし、
音像の投影面積を縮小するという変化のベクトルはそのままに、色彩感を濃厚に
変化させるという新たな評価ポイントを私は頭の中にメモしていったのです!

音像モードと言いながら音像の中身に対するチェックポイントが新たに発見出来た
という事から、楽音そのものの質感にTa.Qu.To-Isolatorはどのように作用するのか、
同様にシンプルなデュオの録音にて次の選曲の目的が浮かび上がってきました。

■溝口肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」より1.世界の車窓から
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099
http://www.archcello.com/disc.html

ピアノの鍵盤数に匹敵する47本の弦を張っているコンサートハープは共鳴胴を持つ
撥弦楽器、同じ弦楽器でも分類の違う二種の楽器によるデュオの録音であり、
ハープは音階ごとに一弦ずつの定位を左右に広げて録音したセンター定位によるもの。

ハープだけの約14秒間のイントロ、その最後の4秒間は余韻だけという展開で始まり、
そこに溝口肇のチェロが登場し、聴き慣れたメロディーがセンターで演奏される。

最近の試聴では欠かすことのできない課題曲となっていますが、やはりノーマル
Grandiosoで二回ほど聴き、今まで聴いてきた記憶を上書きすることから始めた。

それほど多数のテストで聴き続けてきた選曲なので、聴きながらチェックポイントに
記憶の付箋を付けてTa.Qu.To-Isolatorをセットしてからの比較に備えて行った。

Grandioso P1XとC1Xを持ち上げた回数は何度目になるか忘れてしまうほどであり、
両者の重心がどの辺にあるかも解かってしまうほどにセットのコツも覚えてしまった。
さあ、どうなるか…!?

「ありゃ〜、これはいけません、この曲を聴いてしまったら元に戻れない!」

冒頭の14秒間のハープを聴いた瞬間に私のジャッジは既に決まったも同然!

等高線理論で言うと、斜面の角度を表す等高線の間隔は二の次として、いきなり
山頂の最も赤茶色、いや真っ赤とも言えるピンポイントの尖った頂点が出現した驚き!

山の稜線の傾斜はどうかというよりも、真っ先に空間に表れたハープの爪弾きに
よる極小の音像が浮き上がる。まるでレーザーポインターの赤い光点が空中に
点在し始めたのですから堪らない! これには参りました!

しかも、その赤い山頂から弾き出された鋭いピッチカートが響きの芳香を撒き散らし、
左右のHIRO Acousticのトゥイーターより上の空間に余韻の滞空時間を見せびらかす!

コンポーネントとラックに対する接地面はたった20mmの円形というTa.Qu.To-Isolatorは、
スパイクのように鋭い点接触ではないのに、ここまでフォーカスイメージを収束させると
いう事は一体何なんだろうか!

今まで聴いた記憶のないハープがチェロの登場を待ち受けると…!?

「ここまで絞り込むのか! ライザップに二か月通った溝口肇のチェロがこれか!」

センター定位のチェロに起こった変化は凄まじかった!

これぞ音像モードという狙いの通り、音響的コルセットで引き締められたボディーの
チェロがすっくとセンターに浮かび上がった情景に思わず見惚れていた私がいた!

その音像は四割減のサイズでくっきりとシルエットを目視できるのだが、決定的に
違うのは響きの連鎖を倍加させて空間に放出しているという音場感の素晴らしさだ!

輪郭のラインが音階によってなびいている情景が見て取れるようであり、演奏の
躍動感が脈打つようなチェロのシルエットを境にして、明確な残響成分として
余韻を空間に送り出していく正確な音像と拡大した音場感の両立!これでしょう!

以前にも記憶があるのですが音階が低くなるとチェロの音像が膨らみ、逆に高い音階
では縮小するという呼吸体のような音像の変化はHIRO Acousticの特徴とも相まって
見事に払拭され、溝口肇の腕の動きにつれて弓の動きが見えてきそうなアルコが
響き渡る実に爽快な演奏に過去の記憶がすべて更新されていくのが気持ちいい!

インシュレーターには[A]と[B]の二種類があると前述していましたが、これまでの
試聴で感じ取ってきた変化はいずれかのメリットの延長線上にあるのか、という
発想がこの段階で覆された。これは[A]と[B]の融合的進化としか言いようがない!

それを確認するために、ぐっと編成の大きな録音での試聴へと進めていく事にする。
これまでの試聴の記憶が鮮明なうちに同じアルバムから「14.帰水空間」をかけることに…!

これまでの課題曲はアコースティックな雰囲気を重視したもので、センター定位と
いう録音にて音像の在り方を聴き取っていこうとしていたものですが、それとは
ある意味で対極的な選曲と言えます。

「14.帰水空間」は冒頭からシンセドラムの打ち込みによる重低音の三種類のドラムが
左、右、センターと一定のリズムで曲の最後まで叩かれ続ける。

ドラムをスタジオで演奏したら多少なりとも室内の残響が感じられるものであり、
前述の課題曲でも感じた空気感をはらむ打音という音質になり録音の個性が感じられる。

しかも、センター定位のドラムであれば左右スピーカーからの同位相、同レベルの
再生音として左右二個のウーファーによって形成される虚像としての音像となるが、
Lchスピーカー、Rchスピーカー、そして左右スピーカーの合作となるセンターの
ドラムには一切の空気感、アコースティックな要素がない無機的な打音ということ。

電子的に作られたシンセドラムの打音が左右各々のスピーカー一台ずつから再生
されてくるということで、ある意味で比較のための音源として都合がいいと言える。

これも比較原型のノーマルGrandiosoで以前からの音質を耳に刻み込んでいく。
さあ、もう一度やるか〜という気合を入れてTa.Qu.To-Isolatorをセットすると…!?

「えっ! 人工的合成音であるシンセドラムの音がなぜこうも変化するのか!」

L/Rチャンネルの個々のスピーカーの軸上から聴こえてくる左右ふたつのドラムの
輪郭がぐっと引き締まり、前述の等高線理論がこの低音でも確認された。

スタジオのドラムブースという個室で叩いたドラムでさえも空気感をはらんだ打音
として幾分の残響が左右チャンネルから再生されるという理屈は解かるが、この時の
シンセドラムの変化はなぜ起こったのか、きっちりと片チャンネルだけにしかドラム
の信号は流れていないはずなのに…、と思っていたわけです。そこで思い付きの実験!

プリアンプの入力端子に接続していたDACからのケーブルを抜き差ししてみたのです。

先ずは右チャンネルを外してみると、おや! 左チャンネルのドラムの残響が聴こえる!
逆に左チャンネルのケーブルを外してみると右チャンネルのドラムが少し漏れ聴こえてくる!

そういう事だったのですか! 左右スピーカーだけからモノラル的に片チャンネルずつに
信号音が供給されていたのではなく、シンセドラムと言えども左右チャンネルの共同作業
として打音が再生されていたのか、と思わぬ発見というか気付きがあったのです。

左右のスピーカー一台だけで鳴らしていたのではと思っていた合成音のドラムが、
実は左右チャンネル合作の打音であり、それが個々のスピーカーのオンアクシスに
定位させていただけだったとは!

だからこそTa.Qu.To-Isolatorの効用がシンセドラムでも発揮されたということか!

この謎解きが出来てからというもの、私の視点と解釈も新しくなったというもの。

ドラムのイントロからセンターに登場するベースの音像に関しては予測通りに
等高線理論に従った引き締め効果と質感の重量化がしっかりと確認された!

その後に高音階の各種パーカッションが空間に散りばめられていく描写力は前述の
ハープのピンポイント音像同様に極めつけの鮮明さで展開し、いよいよチェロが登場。

「うわ〜、手前に押し出してくるドラムに対してチェロの遠近感の凄い事いいですコレ!」

音像が引き締められるということは楽音の残響が展開すべき空間が広くなるということ。

等高線の間隔が凝縮されるという例えそのままに、音像の輪郭も鮮明になると今度は
音像の遠近法が引き立ってくるということなのです!

それにしてもチェロの音色が滑らかになっているという変化を私は見逃しません!
連続楽音の質感に潤滑効果、潤いを響きに加えるという美技がここでも発揮されます!

しかし、驚きはそれだけではありませんでした。この後に続くマリンバとピアノの
ソロバートにおいて、恐ろしくインパクトの瞬間がクリアーに再現される変化!

打楽器の立ち上がり反応速度が倍加したように切れ味のいい瞬発力の高まりを見せ、
そして驚くことに左右にパンポットで音階ごとに展開するマリンバの余韻感が
極めつけの持続時間をもって空間に消え去っていく美しさに驚く!

当然ピアノの打鍵の瞬間の鮮明さも引き立てられ、その残響が拡散していく領域が
HIRO Acousticの左右両翼にまで拡大し絶大な美しさで空中を飛び去って行く!

スタジオ録音だからこそのシンセドラムに対して、アコースティックな楽音の緻密な
音像が左右スピーカーのはるか先に遠近法の消失点を空間に示し消えていく素晴らしさ!

これは前述の[A]と[B]二種のインシュレーターのどちらか一種類では成し得ない成果であり、
引き締まる音像と拡大する音場感というTa.Qu.To-Cableの素晴らしさを小さなアイソ
レーター(もうこの段階ではインシュレーターとは言えない)によって実現してくれた
ということを最大級の賛辞とともに皆様に報告できる自信が持てたのです!

さあ、スタジオ録音の課題曲で多項目の検証を行った私は最後に何をしたのか!?
一週間という時間をかけて熟成させたTa.Qu.To-Isolatorを使って締めの選曲です!

■マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団/1987年録音の[3]を聴く
録音の古い順に写真左上から[1]右へ[2][3]、下段の左から[4][5][6]として。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210519123606.jpg

一週間セットしたままだったTa.Qu.To-Isolatorはラックの棚板、もしくはコンポーネントの
底面に緊密に張り付いていたのか、取り外す際にはパリン!という感じで剥がれます。

第一楽章の木管楽器の陰影がなんで薄くなってしまうの?

第二楽章の弦楽合奏の響きが単調になり余韻感のレイヤーが消え去ってしまうの?

第三楽章のコントラバスはこんなに軽い響きだったのか?

第四楽章のグランカッサはもっと雄大ではなかったか?

「あ〜、なんという喪失感か!」

えっ、たったこれだけか!? はい、これだけにしておきます。

それでなくとも長文なのにオーケストラでの各論を語り始めたら更に長くなってしまいます。

そして、最も重要で音楽のテイスト、味わいという点で格差が生じるオーケストラに
関しては皆様のシステムにてTa.Qu.To-Isolatorをお試し頂いて、皆様なりの結論を
出して頂ければと考えました!

使用前・使用後の短時間における比較試聴も楽しんで下さい。
そして、三日間セットした状態から取り外してみて下さい。

更に一週間熟成させてから取り外した時に皆様の心境に喪失感が湧き起るかどうか?
この後のつづきは皆様のシステムでの体験から導き出して頂ければと願っています。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

最後に一言追記しますが、このTa.Qu.To-Isolatorを推薦したい対象ユーザーは
ある意味で熟成したシステムをお使いの方々になるであろうと私は考えています。

その熟成とはどういう意味か?

先ず、使用されているコンポーネントがひとしおのグレードであり、それらに対して
一定の満足感を持たれている皆様という意味です。つまり、使用システムの何かを
アップグレードしたいという気持ちを持たれていない皆様ということになります。

次に上記のinspection systemでもお分かりのように、振動対策を施しているラックは
もちろんのこと、電源関係やケーブルにも気配りし、使用環境に存在する他の要因への
対策も行ったりということで、コンポーネント以外の要素にも情熱をもって取り組んで
おられるという皆様ということになります。

もちろん前述の対策を全てやっているということではなく、いずれかの対策ひとつでも
実行していればという意味ですので誤解なきように一言追記しておきます。

このような熟成と自覚しながらも、今後はどのような方向性において音質向上の
手段があるのか…、と思案していらっしゃる皆様には大きな魅力となり得ることでしょう。

もっと簡単に言えば、現状システムおいて何らかの疑問や不満を持たれていた場合に、
それを解決するための対処療法としては推薦しないという考え方であるとご理解下さい。

どなたでも使えるTa.Qu.To-Isolatorで皆様の愛機に隠された潜在能力が発見出来る
ことを私は期待しているものであり、皆様に育てて頂きたいと願っているからです。

Ta.Qu.To-Isolatorはインシュレーターの既成概念を変えてくれることでしょう!

■H.A.L.'s Original product Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Isolator 販売価格

税別販売価格¥68,000. (1セット4個入り)

税込み販売価格¥74,800.(送料無料)となりました!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ハルズサークル会員限定企画を実施しておりますので是非ご入会下さい!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/circle.html

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!


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