発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2022年1月13日 No.1694 H.A.L.'s One point impression - New Generation GOLDMUND |
GOLDMUNDの存在を知るようになったのは1987年に発表されたプリアンプMIMESIS 2と パワーアンプMIMESIS 3という超薄型であり当時としても大変高価なアンプからでした。 切れ味鋭いハイスピードアンプとして定評を得た両者は、当時隆盛を極めたハイ エンドスピーカーWilson AudioのWATT&PUPPYとの組み合わせで専門誌の紙面を 賑わせていたものでした。そして、H.A.L.創立の翌年1993年の事…国内初の試み として同社のフラッグシップスピーカーGOLDMUND Apologueを私は体験したのです。 下記のページが良い資料となっています。 https://goldmund.com/history/ 第4話「究極の音を体験し、理想の到達点を知ることの価値を問う」 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto04.html そんなGOLDMUNDの歴史と特徴を私なりに解説していたのが下記の随筆。 これは是非ご一読頂ければと推奨致します。 第18話「黄金の口が語る美意識」 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto18.html そして、1997年には新世代スピーカーとして下記のようにEPILOGUEが登場。 第41話「最終幕のプロローグ」 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto41.html このように2022年に創立30周年を迎えるH.A.L.の歴史とはGOLDMUNDの歴史と言い換え 出来るほどに長く深いものであり、そのピークとして思い出されるのが下記のアンプ。 GOLDMUND TELOS 5000(2008年発売当時:税別¥38,000,000.)重量260Kg 下記は最新型なので参考まで。サイズと重量は変わらず。 https://goldmund.com/telos-5500-nextgen-power-amplifier/ 上記のH.A.L.創立時は隣のビルの旧店舗でしたが、2001年にオープンしたDynamic Audio5555になってから現在の試聴室に展示したGOLDMUND TELOS 5000がこれ。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20211225131638.jpg そして、同時にTELOS 600(B&W Nautilus用で4セット)とTELOS 2500なども並べ 下記の画像のように今では考えられないような展開を行っていたものでした。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20211225131624.jpg https://www.dynamicaudio.jp/s/20211225131647.jpg そして時は流れ、経営方針の不一致から長らく輸入業務を続けてきた当時の ステラヴォックスジャパン株式会社から離れ別会社による輸入が続いたものの、 事実上は日本市場から姿を消していた数年間が続いていたものでした。 その10年間のブランクの末、下記のように株式会社ステラが輸入を再開しました。 https://stella-inc.com/stellawebsite/goldmund-range/ 2021/02/15(月)10:41に発せられた当時のプレスリリースが下記になります。 https://www.stella-inc.com/news/data/goldmund20210215.pdf ざっくり私とGOLDMUNDの関係を紹介しましたが、2021年2月に輸入再開されたという ニュースを耳にしても、私は直ちに動かなかった…今まで静観していたのでした。 GOLDMUNDに対しては多くの思い出と複雑な思いがあったからですが、そんな私の 冷却期間を経て遂にH.A.L.に戻ってきたということなのです。 そして、前述のようにGOLDMUNDを大々的に展開していた当時にはなかった存在、 HIRO Acousticによって新しい切り口と視点にてGOLDMUNDとは何かを再発見しようと 私も10年ぶりの試聴に取り組むことにしたのでした。 H.A.L.'s Sound Recipe / New Generation GOLDMUND - inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20211225113441.pdf 以前のGOLDMUNDはラックからケーブルまで血統を重んじるブランドとして、 同社の音質表現にはこだわりを持ってきたものですが、現在では上記のように 統一ブランドにて音質をアピールするという縛りはなく輸入元との協議による システム構成としてセッティングしました。 現在の輸入元担当者からも「以前のGOLDMUNDと比べてどうですか?」という質問を 受けるのですが、当然ながらブランドとしてのコンセプトが変化してしまったら 困るという思いの反面で進歩していなかったら逆に価値がないと私は考えました。 そして、上記システムでは10時間以上試聴しました。先に結論を言えば… 「さすがGOLDMUND、文句のつけようがありません!」 HIRO Acousticと出会ってから私は音像と音場感という評価ポイントを連呼してきました。 しかし、その源流にはGOLDMUNDの記憶があったという事を思い出したのです! 極めつけの解像度で描く音像はたった左右二つのスピーカーから再生される空間に ピンポイントの定位感で凝縮された音像を描き、その周囲にはスタジオワークで 造形された広大なサウンドステージが出現する。 GOLDMUNDは膨らんだ膨張した低音は出さないという象徴的な個性があり、それは 同時にHIRO Acousticの最大の特徴でもあったわけですが、両者のコンビネーションで 私の眼前に現れた克明な音像と広大な音場感に圧倒されてしまいました! それを更に深く掘り下げていこうと記憶をたどりながら思いついたこと…。 実に多くの音の記憶はあるものの、疑り深い私は10年前の記憶を頼りにするのではなく、 全くの新参者として新世代GOLDMUNDを迎え、音楽を裸にするスピーカーHIRO Acousticを 厳正なる評価基準として試聴していくことにしたのです。 そして、それは血統を重んじるブランドとして全盛期のGOLDMUNDでは必ずと言って 良いほどに同社のケーブルを使用してきました。それが同社の音質的思想を察知する 上で必要な事だと考えていたからであり、同時にGOLDMUNDの開発者たちの意志でも あると当時のC.E.OであるMichel Reverchonからも言われていたからです。 しかし、現在のGOLDMUNDのラインアップにはケーブルはありません。何かが変わった? https://goldmund.com/ そこで、以前からHIRO Acousticを鳴らす時には定番としているH.A.L.リファレンス ケーブルにて伝送系を入れ替え、下記のシステム構成へと変更してみたのです。 H.A.L.'s Sound Recipe / New Generation GOLDMUND - inspection system Vol.2 https://www.dynamicaudio.jp/s/20220108162259.pdf 更に幸運なことに長らくの歴史をたどってきた当フロアーに眠っていたGOLDMUNDの LINEAL Cableを発見し、上記システムにてDACとプリアンプ間というアナログ信号の 最上流にて比較試聴出来るようにしたのです。 以前のGOLDMUNDの記憶は同社の音作りとして自社製ケーブルの影響力を巧みに応用して いたのではないか、それをY'Acoustic System Ta.Qu.To-Cableにそっくり入れ替えたとして どんな変化があり、また一部のインターコネクトケーブルをLINEAL Cableに変更したら、 その影響力を分析しGOLDMUNDの音質に対してケーブルがどのような影響力を持っていたかが 実験出来るのではないかと考えたのです。 ここにしかないHIRO Acousticというスピーカー、ここにしかないTa.Qu.To-Cable、 そして幸運にも長らく眠っていたLINEAL Cableがここにあったという三大要素からも Hi-End Audio Laboratoryにしか出来ないH.A.L.だからこそ実現した組み合わせなのです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- GOLDMUNDのイメージはケーブルによって影響を受けていたものだったのか? RCAアンバランス接続によるLINEAL Cableにて課題曲を聴き、その後にバランス 伝送によるTa.Qu.To-Cableに切り替えて試聴する。 ESOTERIC Grandioso D1XのRCAとXLR出力端子に両ケーブルを接続し、プリアンプ MIMESIS 22H Nextgenの入力2と5をリモコンでスイッチするというシンプルな比較。 この時点で述べておきたいことがある。GOLDMUND全盛の頃、世の中は既にバランス 伝送のアンプが主流を占めるような時代であったが、GOLDMUNDはフローティング アースのアンバランス伝送アンプであり、メガヘルツ帯域まで伝送する超広帯域 ハイスピードアンプなのです! と私は誇らしげに説明していた事を思い出す。 昔のGOLDMUNDのアンプには確かにXLR端子は装備されていたのですが、1番ピンは オープンとなっており疑似的にバランス接続は出来たのですが、実際にはアン バランス伝送であったのです。ですから当時はXLR接続は推奨していませんでした。 しかし、現在のMIMESIS 22H Nextgenはバランス伝送、電源部も独立し以前よりも 25ミリ程高くなり重厚なデザイン、そして私が記憶している昔のプリアンプよりも 発熱量が多く放熱用スリットのあるトップパネルに触れると穏やかな熱を感じる。 このような基本設計の変更を進化とするべきなのでしょうが、以前のLINEAL アンバランスRCAケーブルの音質的傾向がGOLDMUNDのサウンドイメージと どのように関わっているのかを検証することから私の記憶を上書きしていこうと 考え付いたものでした。 さて、そんな目的のための選曲ですが、先ず最初に注目すべき視点は何か、 音像と音場感というポイントを確認するために選曲したのはこれ。 ■溝口肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」 https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099 http://www.archcello.com/disc.html 「1.世界の車窓から」最近多用しているハープ奏者 堀米綾とのデュエットによる シンプルであり素晴らしい録音です。 https://www.ayahorigome.com/ https://www.ayahorigome.com/biography ハープだけの約14秒間のイントロ、その最後の4秒間は余韻だけという展開で始まり、 そこに溝口肇のチェロが登場し、聴き慣れたメロディーがセンターで演奏される。 これを先ずはLINEAL Cableで聴くと… 「お〜、何とも小気味よいシャープなハープ、切れ味鋭いGOLDMUNDはさすがだ!」 冒頭のハープのソロという局面で直ちにわかるGOLDMUNDの解像度の高さと見事に 引き絞られたテンションのピッチカートがはち切れんばかりの質感で提示される。 左右スピーカーのセンターにくっきりと浮かぶようにチェロが登場し、巧妙に 仕組まれたリバーブの残響が広がっていく音の景観を目の当たりにする快感! これこそGOLDMUNDなのではと楽器は二つだけという小編成の録音作品で感じる 空間情報の素晴らしさを私は安堵感を持って聴き続けました。いいです! そして、Grandioso D1Xの出力をXLR2に切り替え、プリアンプのリモコンで入力5を 押すとカチッとわずかな動作音でバランス接続に変更されたのを確認し再スタート。 「えっ! これは!? 同じアンプなのに何で情報量がこんなに変化するの?」 経験のない人が私の背後で聴いていたら解からないであろう、気が付かないであろう 音質変化という微妙な事かもしれませんが、私にとっては大きな差異として感じられた! ハープの弦を弾いた音は音階は同じであってもテンションが違うのです! ピンッと張り詰めた一音が爪弾かれた瞬間に放射される余韻感の増大が、逆に弦の 核心部の鮮明さを高め音像の輪郭を描き出すという変化を発見した喜びに震える! 一弦ずつの残響が増大したことにより、今まで左右スピーカーのセンター三分の一 程度の大きさに展開していたハープの響きが左右両翼にまで広がりサウンドステージと しての余韻感の拡散領域を一気に拡大するのだから堪らない!これは素晴らしい! 誤解なきように追記すればハープの音像そのものが肥大化したという現象ではなく、 一弦ずつの音源として点在する音像ひとつずつが引き絞られ鮮明化された上で、 その残響の拡散領域を倍加させているということで音場そのものが広がったのです! そんな補足説明は不要であるという事が直後のチェロによって直ちに証明された! 今まで何度聴いたか数え切れないほどに私の頭の中にはチェロの再生音の記憶が 様々な音質としてのライブラリーが出来上がっているのですが、バランス伝送による 新たなGOLDMUNDの魅力がこれほどに発揮された瞬間はなかっただろう! 録音センスによってチェロという楽器は音階によって音像サイズが変化するという 特徴をこれまでにも述べてきましたが、ハープ同様に楽音の中心部、音源の核心部 という濃密な音像の存在感を究極的に高め、その周辺に実に多彩な響きのレイヤーを 構成し残響のグラデーションが余韻を多層化させて拡散し、チェロの周辺に響きの オーラを湧き起こしたGOLDMUNDの情報量の物凄さに絶句した!これいいです! 以前はメーカー指定のLINEAL Cableが当然であり最上の組み合わせという既成概念が あったのだろうか、それを当たり前としてアンバランス伝送時代のGOLDMUNDアンプを 長らく評価して来たものですが、アンプの設計方針そのものがアンバランスであれば ケーブルも同様という当時の判断を肯定的に考えられるものです。 しかし、近代のGOLDMUNDがフルバランス伝送という変化、いや進化を遂げていた ということを、Ta.Qu.To-Cableによる空間情報の拡大というトリガーによって HIRO Acousticの敏捷性を刺激し再生音に表している実態を私は実感したのです! チェロとハープという極めて小編成でシンプルな課題曲でGOLDMUNDの進化の一端を 確認した私は、ヴォーカルを含めアコースティックな伴奏楽器で少し編成を大きく した課題曲で更に確認作業を進めていく事にしました。まだオーケストラは早い! ■大貫妙子 「pure acoustic」より7.「突然の贈りもの」 http://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/products/upcy-7097/ この「突然の贈りもの」はヴォーカル、ピアノ、ベース、サックスという全てが センター定位で、冒頭からの三分間はピアノ伴奏による大貫妙子のヴォーカルのみで、 これを聴いているだけで克明な音像と広大な音場感を同時に判断できる課題曲。 リモコンでMIMESIS 22H Nextgenの入力2に、Grandioso D1Xの出力もRCAに戻し、 前回同様にLINEAL Cableにて比較原型の音のテンプレートを頭の中に書き込んでいく。 「いや〜、これだけ聴いていたら何も文句なしだ。これを結論としてもおかしくない」 そして、Ta.Qu.To-Cableに切り替えて再スタートさせると…、すると! 「うわ! まるでリマスター盤じゃないか! リバーブを深く多くしたのか?」 センター定位のピアノは左側に高音階、右側に低音階という序列で鍵盤を並べ、 その中心で大貫妙子が歌う三分間、もうこれだけで勝敗はついたと直感する! ピアノの余韻感が左右HIRO Acousticの距離感から更に奥行き方向に響きの遠近法を見せ、 音像のコアと言える核心部から広がるヴォーカルの響きは左右と上空に向けて余韻の 滞空時間をぐっと引き伸ばし、完全に消滅するまでの時間軸を秒針の動きとして イメージさせるほどに中空に微小な響きを存続させていくという離れ技!これ凄い! まるでスタジオでのマスタリングをやり直したかの如く、音楽の鮮度が高まって いるのだから、バランス化されたGOLDMUNDの威力はここにありという情報量の 拡大がシンプルな演奏の随所で香り立つ興奮に私の体温は一度上がっていた! GOLDMUNDとHIRO Acousticの最大公約数的な特徴として、引き締まった音像のベースが ゆったりとセンターに浮かび、床に沈み込み垂れ流し状態の低音を否定する両者の 本意とする低域再生が重量感ある低音を空中に保持するという腕力を見せつける! ドライに録音されたベースにはリバーブという脚色はないが、センター後方に ぽっかりと浮かぶように登場するサックスはヴォーカル同様に残響成分が増加して いることを瞬間的に認識できるほどの瑞々しい響きが私の感性をくすぐる!いいですこれ! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- GOLDMUNDが不在の時代、2014年に登場したHIRO Acousticを制作した廣中さんも 当時はGOLDMUNDのアンプを使用していたという。だからという訳ではありませんが、 両者に共通する音質的傾向を察知していた私が是非聴いてみたかった曲がこれ。 H.A.L.'s One point impression - B&W 801D4 Vol.2 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1691.html 上記の第三楽章で紹介していた曲で、1992年のCDということで当然廃盤ですが、 この曲はGOLDMUNDとHIRO Acousticが持つ音質的ベクトルにジャストミートなのです! Cassandra Wilson / Dance To The Drums Again https://bit.ly/3EBQ2gs 10.Dance To The Drummer Again Drums : Bill McClellan Percussion : Jeff Komunyaka Haynes* Vocals : Cassandra Wilson Written-By : Cassandra Wilson 再度アンバランス伝送に切り替え聴き始めると、以前に聴いたB&W 801D4とHIRO Acousticとの違いが先ず思い起こされる。能力の違いというよりも個性として 両者の表現力の在り方を既に納得済みの分析ということで安堵感を持って聴いた。 冒頭は左チャンネルのスピーカー軸上に定位するコンガから始まり、右側では 高音の金物パーカッションが細かくリズムを刻み、パンポットで左右に動き回る ジュルジュルという一種不気味な楽器がセンターの空間に登場します。 これは恐らくオーストラリア大陸の先住民アボリジニが演奏する民族楽器の ディジュリドゥ(Didgeridoo, Didjeridu)かと思われます。 これは楽器の本体は木製なのですが発音原理から金管楽器だという独特な楽器。 それと同時にHIRO Acousticの遥か奥から重厚で長い余韻を伴う大口径のドラムが 4秒間に一度というペースで重量感が素晴らしい壮大な打音を叩き出してくる。 「スピーカーをコントロールしてるね〜、見事な制動感これでいいんじゃない!」 素直な印象は前曲通りの評価で、これだけ聴いていれば何も問題はないのですが…。 この曲では何が起こるのか、一般論で言えば凝りすぎだろうと思われてしまう私の 悪癖ではありますが、10年ぶりのGOLDMUNDに対して深掘りしていく事が敬意の表れ という思いでバランス伝送に切り替えて聴き始めたのです。すると…! 「うわ!なに!この疾走感は! 打楽器の音像に輪郭補正を行ったがごとくの解像度!」 先ずは4秒ごとに叩かれる重厚な大口径ドラムの打音だが、25センチウーファーを 縦に二個配置しバスレフポートも含めての低域再生を行うB&W 801D4のドラムは 正面から見て左右スピーカー間隔の八割程度の面積から湧き上がってくるように 聴こえていた。大きめの音像ではあるが質感が素晴らしいので気持ちよく聴ける。 しかし、HIRO Acousticではスピーカー間隔の三割程度という面積において、 打音の発生源となるドラムそのものを描き出するように音像が見えるのです! しかも、大口径ドラムのヘッドにドラムスティックがヒットした瞬間を露わにし、 そのインパクトの瞬間を引き締まった打撃音として描写するのだから堪らない! HIRO Acousticの横並び構成による二基のウーファーの中心点は床から83センチの 高さにあり、密閉型というエンクロージャーによりバスレフポートという二次的 音源もなく振動板のみが発する低域が低音打楽器の音像を見事に屹立させる! このHIRO Acousticの象徴的な低域再生をGOLDMUNDは完全に肯定しサポートした! 思わず脳裏に浮かんだ疾走感とは、この強力なドラムがセンター奥で爆発し、 その爆風が如くの強烈な音圧が前後左右に瞬間的な波状拡散をしていく迫力を 目の当たりにしたからに他ならない!こんな高速反応の空間表現があっただろうか! ゆったりと広がっていたはずのCassandra Wilsonのヴォーカルも気が付けば センターに濃厚な歌声のコアを描いており、絶妙なリバーブがスピーカー周辺に 湧きたつ余韻を展開していく。 やがて男女のバッキングヴォーカルがオーロラのように揺れる遠景を描き始め、 多数のパーカッションが中空に散りばめられていき透明度が素晴らしく気持ちいい! B&WのD4シリーズで採用されたBiomimetic Suspensionによるミッドレンジユニットの 革新性は高速反応かつ超低歪という事は承知しているが、振動板に関してはD3シリーズ からのコンティニュアム・コーンであり、それはケブラーコーンのような繊維束を 編んだものではなく、細い繊維がガーゼのように隙間を開けて織られており繊維が しなやかに動くことができるもの。 そのためピストンモーション・モードから分割共振モードへ連続的に移行し、 境目がわからない。この連続的なモードの移行をcontinuumと称しているのですが、 そこには極めて微妙な柔軟性があり音質に貢献しているということ。 しかし、HIRO Acousticのミッドレンジドライバーはドイツaccuton社のセラミック ドライバーであり、この振動板には全帯域において一切の変形というものはない。 http://www.hiro-ac.jp/unit01.html このセラミックドライバーが同社の大きな特徴であり、正に音像を造形する上でキー ポイントになっており、ヴォーカルでも打楽器でも高速反応の威力が音になっている。 この曲でヴォーカルが登場するとジャストセンターで強烈なタムの打音が炸裂する。 そのアタックの強烈さ、そして打撃の後に見事な減衰特性で左右に拡散し消滅して 行くまでの余韻がGOLDMUNDの高精度な追随性で描かれていく情景に我を忘れる! インパクトの瞬間をどれほど時間軸を圧縮して再生するか、打撃音の立ち上がり から消滅までを正に衝撃波とも言えるエネルギー感の連鎖を体感しつつ、それを 空間を使って表現するという情報量の素晴らしさ、これがGOLDMUNDだろう! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ■マーラー交響曲第一番「巨人」小澤征爾/ボストン交響楽団/1987年録音の[3]を聴く 録音の古い順に写真左上から[1]右へ[2][3]、下段の左から[4][5][6]として。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210519123606.jpg 切れ味鋭く鮮烈なインパクトの瞬間を高精細に描くGOLDMUNDは、その高速応答性を 象徴する打楽器やピアノだけに存在価値があるのだろうか、いや違うのです! 超広帯域ハイスピードアンプということの本来の意味は正確な波形伝送という事。 弦楽器のような連続する楽音において、その歪感のレベルは自然で耳に優しい音色、 清々しく清浄な響きとして認識されるものなのです。 そこでオーケストラです。前回同様にLINEAL Cableにて聴き始めました…。 「いや〜、何の迷いもなく美しい弦、そして透き通る管楽器、もうこれでいいじゃないか!」 Ta.Qu.To-Cableによるバランス伝送に切り替えて、リモコンでスタートする段階で 私の頭の中には既に模範解答の如くGOLDMUNDの美意識が湧き起っていたのです! 「あ〜美しい、きれいだ。滑らかだ。清らかだ。これですよコレ!」 何とも陳腐な感嘆符が連続しそうな言葉ですが、迫力だけでない美的要素の共存が GOLDMUNDの真髄であると内心で喝采を叫ぶ私は第四楽章まで聴き続けてしまった! ハープの弦一本の爪弾きから始まった新世代GOLDMUNDの美意識がオーケストラで結実した! 私の耳と感性は音による美意識に反応し、美食と同様に先天的味覚によって初めて 口にしたものでも美味しさが分かり、聴き慣れた楽音のはずなのに初めて耳にした 再生音に先天的聴覚によって美音という認知を自然と受け入れてしまったのです。 オーケストラに関しての分析は楽音一個ずつの各論として述べる事を今回は止めました。 何故か? 「黄金の口が語る美意識」は経験を共有しなければ理解されないだろうと考えたからです。 皆様と当フロアーでGOLDMUNDの美意識を共有することによって真実を伝えたいからです! |
担当:川又利明 |
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 kawamata@dynamicaudio.jp お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください! |