H.A.L.'s One point impression!! - CH Precision Vol.1
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1670.html
上記の第一報にてVol.1としていたのは最初から続編ありきと考えていたから。
試聴し始めた当時のシステム構成は下記にてご覧下さい。
H.A.L.'s Sound Recipe / CH Precision - inspection system
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210731174913.pdf
上記にてCH Precisionの新世代フラッグシップモデルを同社のフルシステムにて
試聴開始して、想像以上のパフォーマンスを最初から発揮してくれました。
そして、最近の新製品アンプの検証から学習した事の一項目はバーンインの重要性と
述べていましたが、その次の段階で私が確認しなければならないと考えていた項目が
以前から気になっていたハイエンドケーブルCrystal Connectを全面採用したことでした。
https://www.zephyrn.com/crystalcable/index.html
私はバーンイン期間を含めて約二週間ほど聴き続けてきたわけですが、CH Precision
本来の音質を解き明かすためにはケーブルによる特徴づけを排除した試聴と分析が
必要であろうと考えていました。
これはCrystal Connectというケーブルの良し悪しではなく、それをもひとつの個性
として理解しなければCH Precisionの本領が見えてこないだろうという思いからです。
そこで下記のシステム構成にて第二段階の試聴を開始したのです。
H.A.L.'s Sound Recipe / CH Precision - inspection system Vol.2
https://www.dynamicaudio.jp/s/20210809115500.pdf
シグナルパスの全てとクロック用BNCケーブルをH.A.L.のリファレンスとしている
Ta.Qu.To-Cableに変更することで、逆にケーブルのみの傾向と特徴を理解し、
二種のケーブルからCH Precisionの最大公約数的な音質を探り出そうということです。
L10とM10のGLOBAL FEEDBACKの選択に関しては音像と音場感の両方で、前述のように
Crystal Connectの特徴も理解して行ったということで間違いはないと確信し、
Ta.Qu.To-Cableに切り替えてからも十分なバーンインを行ってからの試聴です。
私が以前から抱いていたCH Precisionの特徴と魅力という記憶と照合し、それを
上回る音質も確認しましたが、この音は逆に6年前の音の方が良かったのでは…
という厳しい評価もしており、正直に言って第二ラウンドの試聴に大きく期待していました。
当フロアーで散々に使用を続けてきた各種Ta.Qu.To-Cableですが、しばらく通電
していなかったので、エンハンサーCD-ROMで再度のバーンインを行い聴き始めたら…!
■溝口 肇「the origin of HAJIME MIZOGUCHI」
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3355&cd=MHCL000010099
http://www.archcello.com/disc.html
「1.世界の車窓から」
これはいい課題曲を見つけたと重宝しながら聴いています。
ハープ奏者 堀米 綾 とのデュエットによるシンプルであり素晴らしい録音です。
https://www.ayahorigome.com/
https://www.ayahorigome.com/biography
広く使われるコンサートハープはダブル・アクション・ペダル・ハープのことで
7本のペダルがあり、各々の操作で半音ずつ上下させる機能がある。日本語では
ハープを竪琴というわけですが、その言葉からはピンとこなかった事実がありました。
竪琴と言うと腕で抱えられるサイズの楽器をイメージしてしまい、単純にフレームの
中に多数の弦が張ってあり弾いて音を出す楽器だと思っていました。
でも、実際にはピアノの鍵盤数に匹敵する47本の弦を張っているコンサートハープは
共鳴胴を持つ撥弦楽器ということで、ギターや琴と同じように弾かれた弦を共鳴させ
音を響かせているという楽器なのです。単純に弦を弾いた音だけではなかったのです。
ヴァイオリンと同じ弦楽器でありながらオーケストラでは挿入楽器として使用され、
ステージの奥から短いフレーズを響かせるパートが多いものですが、スタジオ録音で
極めて鮮明にクローズアップされた14秒間のイントロをハープだけが奏でると…
「おー!何と豊かな響きで余韻の美しいことか!素晴らしいサウンドステージだ!」
たった14秒間のハープの演奏に秘められた極めつけの情報量がほとばしり始めたのです!
このハープの余韻がこれほどまでに含まれていた録音だったのかと驚いてしまいました!
ハープの弦には各オクターブのハ(C)の音が赤、へ(F)の音が青(黒)と識別の
ために色が付いていますが、CH PrecisionとTa.Qu.To-CableがHIRO Acousticを
鳴らした情景を例えるなら、弦には微粒子の金粉がまぶしてあったかのように
弾かれた瞬間に微小の金粉が飛び散り空間に飛散し中空に舞い上がりキラキラと
漂いながら響きの余韻を可視化したと言えるでしょう!更に…
この14秒間のハープだけのイントロでは最後の4秒間ほどは弦を弾いていない。
ハープの上のフレームはNeckと呼ばれ、折れ曲がる部分はKneeと称され、そして
下のフレームはBodyで弦の下側を支える共鳴胴はSoundboardと表現される。
堀米 綾のハープはセンター定位なのだが左側に高音、右側には低音階と展開し、
このパートで最後の一音を弾いた後は共鳴胴を感じさせる残響だけが漂うのです!
この鮮明なる余韻が空間を浮遊し黄金の微粒子が消滅していくまでの情報量の凄さ!
CH Precisionの各コンポーネントを流れる音楽データをTa.Qu.To-Cableという血管が
担った時に表れたのは響きから余韻までの圧倒的な情報量の爆発的増加だったのです!
たった14秒間の、それもハープだけという再生音に私がなぜこれほど驚喜し感動したか?
その訳は続くチェロが登場するとCH Precisionが発する情報量と、それを空間に展開した
際に重要な威力を発揮するノイズフロアーの究極的な低さとなって表れて来たのです!
1987年から放送開始された同名のテレビ番組はあまりにも有名ですが、この2012年の
アルバムでは新録音されSACDとして発表されたもの。聴き馴染みあるメロディーでは
ありますが素晴らしい高音質であり、その魅力を支えるのはデュオの演奏を展開する
サウンドステージの極めつけの透明感溢れるノイズフロアーの低さ!
CH Precisionのソースコンポーネントからアンプまで、その設計思想の第一義が
近代録音の魅力として前例のない静寂感を二人のアーチストの背景に提示したのです!
そして、この溝口 肇のチェロの音像表現の素晴らしさ!
以前から多用しているアルバム、Espace/溝口 肇 bestで一曲ごとに録音した年代も
スタジオも、録音エンジニアも異なり様々なチェロの質感があると述べてきました。
https://archcello.com/discography/
それら過去に聴いてきた溝口 肇のチェロの中で最もシンプル、かつストレートな
質感と音色であり、実に絞り込まれた見事な音像がスピーカーのセンターに浮かびます!
以前にもチェロという楽器はスピーカーで再生すると音階の上下移行に伴って音像
サイズが変化すると述べたことがありました。高音では細く小さく、低音では太く
大きくという変化が感じられます。
しかし、この時のHIRO Acousticから発せられたチェロの音像は見事にセンターに
留まり微動だにしない定位感を有しており、演奏の強弱によって響きの領域を
フレーズごとに拡大縮小させることはあっても楽音の中心点を明確に提示します!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1667.html
HIRO Acousticのスピーカーユニット個々をCH Precisionが究極的な制動力をもって
駆動しているという実感があり、上記インプレッションで述べていた「音の香り」
更に「音楽の芳香」という私のオーディオ的嗅覚で捉えた美意識があるのです!
究極的な制動力とは大音量の打楽器の迫力で議論するのではなく、微小信号の
情報量を残響としてどれだけ再現できるかという事であり、アンプの駆動力とは
極めつけのノイズフロアーという前提での余韻感の表現力と言えると思います。
3ウエイのHIRO Acousticで三つのドライバーユニットが完璧にコントロールされ、
チェロという楽器を緻密な連携で描き切るという能力をCH Precisionで確認しました!
これを声を大にして叫びたいわけですが、次の選曲で威力を発揮してくるのは何か?
そのヒントとは38センチの魅力です!
「14.帰水空間」
課題曲として今後も聴いて行けるだろうと、これも良い発見をしたと思っています。
この曲でユニークなのはシンセドラムの打ち込みによる打音で左右とセンターの三点から、
各々異なる音色のドラムとして登場し約20秒間一定のリズムだけを聴かせるところ。
左チャンネルからは重低音のドラム、右チャンネルは明るく抜けのいいドラム、
センターではわずかに音階の高い打音と高音階のパーカッションがきらめく。
そんな人工的なドラムだが逆に正確無比な打音の繰り返しを曲の最後まで続け、
それが最前列に並び手前に張り出して来るかの迫力があり前後の定位感を保ち、
それとぴったり寄り添うような重厚なベースがセンターに登場する。
このベースの重量感が向上していることを一言追記しておきます!
その後ろ背景にキーボードのシュールなハーモニーが展開し始めると、真逆な
アコースティックなチェロ、マリンバ、ピアノが交代で主題の旋律を奏でる。
前曲のハープ同様に、この時のマリンバもピアノも左側に高音、右側に低音階と
展開し、センター定位ながらも独自の音場感を提示してくる。
極めて明確な低音リズムと幻想的とも言える奥に展開する三者の楽器が個性的な
空間表現を提示し、帰水空間というタイトルから連想される癒し効果が心地いい。
「このドラムの質感、なんでこんなに引き締まったテンションと倍音の豊かさなんだ!」
前曲でハープの質感に言及していますが、余韻感が素晴らしいということは逆に
言えばインパクトの瞬間がどれだけ鮮明か、立ち上がりがどれだけハイスピードか
というトランジェント特性の素晴らしさの裏返しでもあるのです!
こんな曲の進行は既に頭に入っているのですが、リモコンでスタートさせた一瞬で
たちまち38センチの威力が発揮されたのです!何のことか?
HIRO Acousticのトゥイーターとウーファーのセンターという二点間の距離が38センチ!
重低音から最高音までの垂直方向での音源が38センチという位置関係であり、
その上下範囲でフルレンジ再生を行っているということがHIRO Acousticの大きな
魅力となっているのです!
他社のダブルウーファー構成のスピーカーでは上下に二個のウーファーが配置されて
いるのが一般的ですが、左右のトゥイーターとウーファーが形成する四角形の面積が
広くなるということは低音の音像サイズも大きくなってしまうということです。
HIRO AcousticのMODEL-CCCSのウーファーは横並びという構成がここでも生きてきます。
チェロは音階によって音像サイズが変化すると前述しましたが、ミッドハイユニットと
ウーファーの距離が離れていると変化量は大きくなります。
これはドラムやベースという低音リズム楽器にも言えることで、ウーファーの
ストロークが大きくなるにつれて音像サイズも大きくなってしまう宿命があります。
しかし、38センチという距離感では多数の楽音において再生周波数帯域が変化しても、
リスニングポジションからはひとつのフルレンジユニットとして感じ取る事が出来ます!
ハープのような楽音はミッドハイレンジのスピーカーだけが出しているのか?
ドラムのように楽音はウーファーだけが出しているのか?
いいえ、全ての楽音は3ウエイの全てのスピーカーで完成されるものです。
3ウエイのユニットが如何に正確な位相管理をされているか、如何に正確なレスポンスで
駆動されるか、クロスオーバーネットワークの設計を含めて設計者の腕の見せ所であり、
前記のフルレンジユニットとして認められるかどうかのポイントです。
そして、この3ウエイのユニットに対してCH Precision M10の駆動力、制動力の
素晴らしさが発揮されたということでしょう!
イントロのドラムにおける質感の変化に驚いていると、きらめく高音のパーカッションが
展開し空間の大きさを押し広げて、センターに前曲同様に素晴らしいチェロが登場します。
この後のマリンバの質感も変化したことに直ちに気が付きました。
マレットが木琴を叩く瞬間のコツンという感触が音になっていて、コロコロと
転がるような高音階での連打がひとつずつ分離感をもって聴こえるリアルさに痺れます!
その後を引き継ぐピアノの粒立ちが克明になり、左右スピーカーの間隔に広がる
鍵盤の展開は巧妙なパンポットで広がりを感じさせ、打鍵の瞬間から発せられた
響きには適量のリバーブが施され余韻感を演出させて空間に溶け込ませていく!
かすれた音色のキーボードが背景を飾り、ウィンドチャイムのキラキラと輝く響きが
空間を飛び去って行くように展開し、高域での情報量の素晴らしさをここでも実感した!
再びセンターに戻ってきたチェロがゆったりとした旋律を奏で、揺らぐことのない
定位感を最後まで保ちつつペースダウンしていき、無音の空間が戻り幕を閉じる。
CH Precisionの素晴らしさは本物でした!
ここで第二段階のCH Precisionに対する評価として、Ta.Qu.To-Cableの開発時の
試聴ポイントを思い出しながら、最大の特徴として掲げた一節を再度引用します。
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/yas/spl.html
他のケーブルにはない最大の特徴! 音像を支配するTa.Qu.To-SPLの神業!
他のケーブルにはない最大の特徴! 音像を支配するTa.Qu.To-XLRの神業!
開発者の吉崎さんには上記のように音像を如何に絞り込むかという目標を求めて
いたのですが、これは言い換えれば如何に音場感を発揮出来るのか、という意味
でもあったわけです。
音像が明確になるということは、楽音の輪郭を鮮明にすることで周囲の空間に展開する
響きと余韻とを感じ取りやすくし、音源と残響のセパレーションをくっきりとさせると
いう能力をTa.Qu.To-Cableに求めてきました。
吉崎さんが私に試聴評価を求めてきた多数の試作品をどのように分析し評価したか、
正に音像と音場感の両立であったわけです。
二種のケーブルからCH Precisionの最大公約数的な音質を探り出すと述べましたが、
上記二曲以外にも多数の課題曲を聴いてきました。
それら全てにおいて今回述べたポイントが確認出来た事は言うまでもありません。
そして、皆様が愛聴する曲においてもCH Precisionシステムの素晴らしさを
感じ取って頂ければと願っているものです。