発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2021年6月17日 No.1664 H.A.L.'s One point impression!! - SPEC RPA-MG1 & RPA-MGC |
H.A.L.'s One point impression!! - SPEC RPA-MG1の非常識 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1578.html 上記にて非常識と述べていましたが、SPEC RPA-MG1にはもう一つの非常識がありました。 私は次のインプレッション二編においても同一ブランドのプリとパワーアンプの 両方が揃って初めて同社が目指す本当の音というものが理解できると述べてきました。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1655.html https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1660.html しかし、SPECとしては600万円という高価なパワーアンプに対して純正のプリアンプを開発 するという予定はないというのです。それは前回の下記試聴システムにも表れていました。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191127143216.pdf Volume Cntroller SPEC H-VC1000 税別¥200,000.を使用しているからです。 これは同社が推奨するピュア・ダイレクトシステムとしてボリュームコントロール だけを行うものだったのですが、今回ピュア・ダイレクトコントローラーとして 入力セレクター機能を追加し、ボディー構造にもパワーアンプと同様の思想を踏襲 した新製品RPA-MGCが発売され下記システムとして当フロアーにセットされました。 https://www.spec-corp.co.jp/audio/RPA-MGC/index.html H.A.L.'s Sound Recipe / SPEC RPA-MG1 & RPA-MGC - inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20210614165215.pdf 今回のシステム構成は以前のボリュームコントローラ―が違うというだけではなく、 先ずスピーカーは音楽を裸にするHIRO Acousticに変更し、更にケーブル関係は Y'Acoustic SystemのTa.Qu.To-Cableに統一し、ソースコンポーネントとしても ESOTERIC Grandiosoシリーズを採用するということで、最近私が各社アンプの 新製品を評価する際のリファレンスシステムにSPECを組み込んだものです! ただし、私のこだわりからRPA-MGCの使用方法としてはあくまでもボリューム調整 だけで、Grandioso D1Xの出力はRPA-MG1に直結しておりRPA-MGCの入力セレクターは 使用していないものです。接点は少ない方が良いという単純な判断であり、SPECが 標榜しているピュア・ダイレクトシステムのあり方を尊重したセッティングです。 H.A.L.'s One point impression!! - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Zero with SPL & XLR & BNC https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1625.html 以前にSPEC RPA-MG1を試聴したシステム構成と最も大きな違いはスピーカーなのですが、 それを象徴するコメントを上記より引用しました。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- マッチョで筋肉質な演奏者か細身でしなやかな身のこなしの演奏者なのか、 その体格をズバリそのままに再現するのがHIRO Acousticであり、録音における音の 演出としてまとった衣服が何であれ透視するかの如くに本質を暴き出すことを “音楽を裸にするスピーカー”として表現してきました。 Ta.Qu.To-Zero & Cableというコンビネーションで私が感じ取った美意識とは、 演奏者の体形よりもシルエットの美しさを優先した音像表現であり質感の表現と いう確認が出来ました。それが“音楽をドレスアップするスピーカー”なのです。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 音楽をドレスアップするスピーカーTa.Qu.To-ZeroによってRPA-MG1の魅力を確認 したわけですが、音楽を裸にするスピーカーHIRO Acousticに切り替えたことで 私は新たな局面に遭遇してしまったのです。 そこで私はRPA-MG1に対して、ちょっとしたチューニングを施し試聴することにしました。 何をやったのか? それはここでは述べない事にします。 なぜかと言えばスピーカーがHIRO Acousticである場合に限るという大前提があるからです。 他のスピーカーだったら必要ないチューニングであるかもしれませんし、あくまでも 私のこだわりによるトライによって、RPA-MG1の別の一面が見えてきたことに加えて 隠された魅力が引き出されたものとお考え下さい。 従って、他社製プリアンプなどの組み合わせによる相性を議論する比較試聴ではなく、 SPECが推奨するRPA-MG1とRPA-MGCによるピュア・ダイレクトシステムとしての単独 試聴であり、今まで私がパワーアンプの評価は純正プリアンプと組み合わせして 初めて理解できるものという発想に近い試みであるということを最初に述べておきます。 ですから今回は何かを加えたり取り換えたりした際の音質変化という視点ではなく、 以前にも述べた下記の思想により研究結果としてSPECとはここまで表現できる パフォーマンスを持っているのだという可能性の追求と音楽を楽しめるかという ポイントに重きを置いたものです。 「Hi-End Audio Laboratoryという概念から私は考え直してみました。(中略) そして、私の研究目的として私自身のレベルアップを元に研究対象製品の価値観を 高める努力と実演を行い、それによって体験者の経験値すなわち感動できる音質の レベルアップも同時に行っているということです。 簡単に言えばハイエンドと呼ばれる製品の音質をユーザーが感動し納得できる 音質にて実演し、その価値観を販売前に啓蒙し理解して頂ける環境とノウハウを 備えていなければならないということになります。それが専門店の使命です。」 SPEC RPA-MG1とRPA-MGCの組み合わせによるピュア・ダイレクトシステムによって どんな感動と発見があるのか…、先ずは肩の力を抜いて比較試聴のための選曲と いうよりは私が好きな音楽を文字通り楽しもうということで、数日間に渡り十分な バーンインと鳴らし込みを行ってから聴き始めました。 ■Melody Gardot/Sunset in the Blue[SHM-CD] https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/uccm-1260/ https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/about/ 以前から何回も試聴に使ってきた上記のCDですが、凝り性な私は同じタイトルにて マスタリングによる音質の違いがあるのではと通常CDの直輸入盤も購入しました。 https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/074-2561/ そうこうしているうちにApple MusicでDeluxe Versionという別テイクを収録した ものがあるのを知り、更にCDでもDeluxe Editionも購入してしまったのです。 ■Melody Gardot/Sunset in the Blue[SHM-CD]Deluxe Edition https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/uccm-1264/ 三種類のディスクで「1.If You Love Me」を聴き比べましたが、マスタリングの違いは 議論するほどのレベルではなく私はほぼ同じ音質かと判断しました。まずこれです… 左側からヴァイオリンのしっとりしたイントロから始まり、直ぐにMelody Gardotの ヴォーカルがセンターに登場し、その背後にストリングスが展開するロマンチックな 旋律の素敵な一曲。 ほぼセンター定位のベース、わずかに右にずれてギターが定位し、ミュートされた トランペットもセンター定位でまとまりの良い配置。何よりも印象的なのはドラム。 終始ブラシだけで軽やかにタムのヘッドを触れる程度にリズムをとり、時折り 左右スピーカーからシンバルにタッチするようなブラシの打音が広がりを見せる。 最近多用している選曲ではありますが、SPEC RPA-MG1が聴かせるストリングスの 透明度の高い質感と音色が強く印象付けられる。実に美しい弦が先取点を上げた! 濁りなく透き通るようなストリングスの質感にGrandioso D1Xの飛びぬけた情報量を 感じ取ることができ、ピュア・ダイレクトシステムの目指すところを示唆する素晴らしさ! その驚きと発見は直ちにMelody Gardotのヴォーカルに引き継がれ、本人はクールに 歌っているのだろうが得も言われぬ肌の温度感というか、実にしっとりした歌声に 彼女の熟成した歌手としての魅力を感じ取る事が出来る。これがまた実にいい! その声質は決して平面的な描写ではなく、彫刻のような立体感ある陰影を音像として示し、 ふっくらとした余韻をはらみながら空間に溶け込んでいく残響に身震いする妖艶さを感じる! ドラムのブラシによる囁くようなゆったりとしたリズムと同様にギターの爪弾きも 実にチャーミングな音量と音色でヴォーカルの脇を固め、一流のサイドメンとして しっかりと響きの中に存在感を示す。 先日、you tubeでMelody Gardotのライブ映像を見た時にも、バックのアーチスト たちの控えめながら見事にシンガーをサポートする伴奏に聴き入っていたが、 映像がなくともこのセッションの素晴らしさが伝わってくる感激に浸ってしまった。 Deluxe Editionには「9.From Paris With Love」のAcoustic Versionが収録されている。 この二曲を聴き比べてみたかった! 先ずはレギュラートラックの「9.From Paris With Love」を先に聴くことに…。 イントロは前曲同様にストリングスの本当に素晴らしいハーモニーからはじまる。 パリの風景に欠かせないセーヌ川のゆったりとした波を思わせるストリングスの 旋律にうっとりとしていると、水面にきらめき反射する日差しをイメージさせる ハープが実に美しい響きをメロディーに散りばめていく。 そしてセンターにずっしりと重みを感じるベースが表れ、ついでMelody Gardotの ヴォーカルが登場した瞬間に少し大げさだが私は雷に打たれたかのような衝撃が 背筋を這い上がってきたことに驚く! 何なんだ!これは! 今まで何度も聴いてきたはずの曲がこれほど新鮮で美しく力強く感じられるのはなぜか! しっとりとリズムを刻むドラムのブラッシングと軽やかなギターの爪弾きも前曲と 同じ構成が背後を固め、トランペットに代わりヴァイオリンソロがセンターより 微妙にずれた右側に登場するのですが、スタジオ録音とは思えないほどの響きが 素晴らしい余韻を振りまき、ヴォーカルが途絶えた間奏で見事な存在感を示す。 それにしても、この曲でのストリングスのアレンジが本当に素晴らしいこと! 無音という暗闇に少しずつ日が差し込むように、静けさの中にふんわりと漂う妖精の声の ように、Melody Gardotの歌声に絶妙な色彩感で響きのオーラをなびかせる弦楽旋律の 何と美しい事か! ベースとヴォーカルのというセンター定位の音像、そしてストリングスの広大な 音場感という両者を目の当たりにした時、私が施したチューニングの一手が正に SPEC RPA-MG1に新たな音楽の息吹をもたらしたことを確認したのでした! そして、Acoustic Versionです。 同じくブラシで叩くドラムは左右に広がり展開し、ずっしりとしたベースがセンターを固め、 アコースティックギターがセンター定位で軽やかに爪弾かれ、後半ではエレキギターが 右側に表れるという小編成での伴奏。 そして、Melody Gardotのヴォーカルが中央に浮かび上がるのですが…、おや!? レギュラートラックでのストリングスやハープもいわばアコースティックな楽器なのに、 敢てAcoustic Versionというのはどういうことなのか? それを私は考えていたのでした。 確かに伴奏楽器の数は少なくなっていますが、それだけなのか? そうか〜、とヴォーカルを聴いた瞬間に脳裏をよぎった観察結果にピンときた! なんと、ヴォーカルのリバーブをほぼ取り去ってしまい裸の歌声となったMelody Gardotがそこにいたのです! オンマイクで実に鮮明なヴォーカルの背後にストリングスが奏でた旋律をここでは 男性コーラスが受け持ち、Melody Gardotの背景に色気たっぷりのメンズの歌声が並ぶ のですから堪ったものではありません! 実に粋なアレンジのAcoustic Versionではないですか! 更にレギュラートラックでのソロヴァイオリンに代わり、エレキギターが巧妙な 職人技の演奏を披露し、ぐっとムーディーな雰囲気を醸し出す演出にうっとりです。 生の声というとわざとらしい表現になってしまいますが、このトラックで初めて 聴くようなMelody Gardotの飾り気のないリアルな歌声にこそAcoustic Versionの 真意があっのだとSPEC RPA-MG1に教えられてしまったのかと気が付きました! 最後にもう一つAcoustic Versionのおまけ(笑) 曲のエンディングで右側に残っているノイズがはっきりと聴こえますが、これ… エレキギターのギターアンプのディストーションをわざと残していたのです! 毎晩のようにエンハンサーCD-ROMをリピートさせて、これでもか!と熟成させた 今回のSPEC RPA-MG1とRPA-MGCでのシステムを毎日聴き続け、上記以外にも多数の 選曲で前述の分析を肯定する傾向を発見してきたのはいうまでもありません。 それら全ての選曲でのインプレッションを述べる事は大変な事なのですが、 これだけは書いておきたいというダイナミックなオーケストラの一曲があります。 ■Rhapsody on a Theme of Paganini Op.43 / パガニーニの主題による狂詩曲 反田恭平(ピアノ)、アンドレア・バッティストーニ(指揮) RAI国立交響楽団 / 東京フィルハーモニー交響楽団 https://www.kyoheisorita.com/ https://www.kyoheisorita.com/album/rachmaninov/ この「パガニーニの主題による狂詩曲」は2015年9月に東京オペラシティーホール でのライブ録音で東京フィルハーモニー交響楽団との共演です。ライナーノーツには 演奏時間は記載されていませんがカウンターを見ると23:44でした。 課題曲としては長い演奏なのですが、今までに感じたSPECの魅力を確認するため この全トラックを聴かなくては…、いや違います! 聴きたくて仕方なかったのです! これも序奏の8秒間でもう私はノックダウンさせられてしまいました!! 反田恭平がデビューアルバムで演奏に使用したニューヨーク・スタインウェイ モデルCD75を、このオーケストラとの共演でも使用したのではと思う程の独特な 音色と質感なのですが、その和音の鮮明さと切れ味の素晴らしいテンションと、 まさに演奏者の技量を示す正確な高速演奏の素晴らしいピアノがHIRO Acousticの 向こう上面の空間にポン!と浮かび上がるのですから驚きました! この主役の座は左右スピーカーのセンターにピアノだけの演奏空間として設けられ、 その左右と奥行き方向にオーケストラの各パートがきっちりと定位感を持って並び、 特に私が感心したのが東京フィルハーモニー交響楽団の弦楽の素晴らしさでした。 指揮者の薫陶が音に表れているのか、力強く透明性が高く、それでいて滑らかに 五部が協調する弦楽合奏のパートは録音の素晴らしさも同時に示しています。 RAI国立交響楽団が演奏したイタリアのホールの響きとは明らかに違う余韻感であり、 日本らしいという表現を歓迎したいホールエコーがオーケストラを優雅に包み込んでいます! スネアの弾ける打音は実に切れ味良く、高速で操られるスティックの残像が響きの イメージにも一致して鮮明なリズムを空間に飛ばし、時折のグランカッサの鮮烈な 打音の消滅がSPEC RPA-MG1とRPA-MGCの素晴らしい伝送能力として機能しているのが 明らかに確認できます!! コントラバスのピッチカートのように響きと余韻が両立して欲しい演奏、大太鼓が 強烈な打音を叩き出す一瞬のエネルギー感の放出、相反するような低音処理に関して この両者の貢献度が素晴らしいということをHIRO Acousticを通じて堂々と表現して くれる爽快感がたまらない魅力なのです!! 特に私が好きな展開は13トラックの第8変奏における反田恭平の鮮烈な演奏と、 それに素晴らしい同期を見せるオーケストラの迫力が素晴らしい空間表現を示し、 スピード感と躍動感が一気に駆け抜ける演奏に興奮してしまいました!! そして、23トラックでの第18変奏では対照的にメローでゆったりした旋律が打鍵の あとにも空間に響きを漂わせ、流れるような弦楽器との旋律の交差に魅了されます!! 前述の一節で実に美しい弦が先取点を上げた!と私は思わず書いてしまいましたが、 23:44の課題曲を聴き終えて、減点要素は何も見つかりませんでした。 というよりも、聴けば聴くほど私は加点してばかりいます! 今年になってから優秀な海外製アンプを何組か試聴して来たが、日本製であるSPECに 国産である特徴は何かないのかと探してしまったのですが、逆に海外のアンプでは 感じられなかった調和感というか整然とした解像度の素晴らしさに思い当たった。 ESOTERICというソースコンポーネント、SPEC RPA-MG1とRPA-MGCによるダイレクト伝送、 Y'Acoustic SystemのTa.Qu.To-Cableによる音像と音場感のコントロール、そして 何よりもHIRO Acousticという公明正大な評価基準というMade in Japanの有機的な 連携プレーが録音データという電気信号に命を吹き込んだ音楽の造形に感動したのでした! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 2021年4月からの新型コロナウィルスの第四波による緊急事態宣言が発出されてから、 今回で六作のインプレッションを発表するというハイペースが続いてきました。 これは正直に申し上げて皆様にも想像が出来ると思いますが、不要不急の外出を 自粛するということで来店のお客様が極端に減少し、私が試聴室を自由に使える 時間が大変多くなったということでもあります。 しかし、その中でもHi-End Audio Laboratoryという研究所としての活動は留まることなく、 逆に研究成果としての優秀なコンポーネントの分析と評価に努力してきました。 緊急事態宣言の中で来店を促すことは出来ませんでしたが、その間に蓄積してきた 研究成果を近い将来の“コロナ明け”が実現した時に、これまでの私の活動を実際の 演奏として皆様に聴いて頂ける事を楽しみにして頑張ってきました。 オーディオ雑誌やネットでの記事による音質評価は膨大な数となりますが、 文章で語ったことを実際の音として実演してくれるところはありません。 でも私が述べた音を事実として皆様に体験して頂くことは可能です。 ここが違うのです! H.A.L.の研究成果は無料にて公開し皆様に体験して頂くために 私はこれからも聴き続けていく事でしょう! 皆様とお目にかかれる日を楽しみにしております! |
担当:川又利明 |
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 kawamata@dynamicaudio.jp お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください! |