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2021年4月22日 No.1657 H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - ESOTERIC Grandioso G1X |
2021.03.17-No.4540-H.A.L.'s Brief Newsより 「私が今日取り組んだ試聴の謎かけ画像とはこれ!」 一見して何を試聴したのか?謎かけ画像とはこれです! 大いなる期待をこめた新製品ですが、近日入荷予定という事だけお知らせ致します。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210317184741.jpg 2021.04.12-No.4546-H.A.L.'s Brief Newsでは 「新製品ESOTERIC Grandioso G1Xは既に常設展示を開始しております!」 お気付きでしたでしょうか? 前号のインプレッション記事にて下記の試聴 システムの紹介でさりげなく掲載してありました。 H.A.L.'s Sound Recipe / Westminsterlab Quest & Rei - inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20210406172310.pdf いわば前号での長文のインプレッションにおける音質の素晴らしさを既に担って いたという事なりますが、近日中にGrandioso G1Xの詳細記事を掲載したいと 思っていますので続報にご期待頂ければと思います。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1655.html H.A.L.'s Sound Recipe/ ESOTERIC Grandioso G1X-inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418112114.pdf 上記のシステム構成にて比較試聴出来るように致しました。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- Grandioso G1Xのデビューはこのようにメールマガジンでも紹介してきましたが、 この新製品をどのように位置付け紹介していくのかに私は大変悩んでしまいました。 それは2016年8月に発表していた次の記事があったからです。 当時はまだシングルウーファーのHIRO Acoustic MODEL-CCS Improvedでした。 H.A.L.'s One point impression!! - ESOTERIC Grandioso G1 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1317.html 今読み返してみてMaster Clock Generatorという分野の製品に関して、上記の 旧型製品の登場の際に私としては語り尽くした感があり、これを上回るもの 進化したものとしてのGrandioso G1Xを果たして語ることが出来るのだろうかと いう自信喪失に陥ってしまったというのが本音です。 それほどGrandioso G1における完成度の高さを私なりの実験的試聴によって納得し、 その後継機種に対して更に何を求めるのかという事そのものを私は見出すことが 出来なかったわけです。 Grandioso G1の進化系とはどういうことなのか…、さて、どうしたものか… 究極のMaster Clock Generatorとはどういうことなのか、それを自問自答する事 から始めなければとGrandioso G1において行った分析を再考してみたのです。 7年前に述べた上記の記事より必要と思われる記述を下記に抜粋してみました。 でも、時間がありましたら全編を通読して頂ける事をお薦め致します。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 引用開始 さて、今回は貴重なGrandioso G1試作機の当フロアーでの滞在期間は一週間。 その中で私が試聴出来るのは実質三日間程度ということで、上記システムにて 色々なケースでの音質比較をしましたが、その音質を語るためには皆様に多少の 予備知識をお持ち頂いてからの方が得策かと考えましたので少しお付き合い下さい。 そもそも、私がMaster Clock Generatorを重要なアイテムとして取り扱うように なったのは2001年のこの頃からでした。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/151.html dCSのMaster Clock Generatorに関して、こんな言いがかり? もつけていました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/234.html Cesium Frequency Standardというセシウムのマスタークロックも試しました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/281.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/283.html こんな昔からマスタークロックに関しては色々なことをやってきた歴史があります。 そして、ESOTERICからMaster Clock Generatorの第一号機が発売されたのは2003年、 G-0とG-0sでした。 https://www.esoteric.jp/downloads/archive/brochure/g-0_g-0s.pdf ESOTERIC製のMaster Clock Generatorを初めて試聴したインプレッションが下記です。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/240.html 1997年発表の初代ESOTERIC P-0に初めて装備されたワードシンクでしたが、当時は ESOTERICにはMaster Clock Generatorという製品は存在せず、dCSの992という プロ用の製品があるのみで、それが992/2というバージョンアップを受けて業界初の クロノス(Chronos)というルビジウム発振器の開発へとつながっていったものでした。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/151.html さて、このようにざっくりと16年ほどの歴史がある家庭用ハイファイシステム向けの Master Clock Generatorという今までの存在に共通することがあるのです。 私たちはMaster Clock Generatorの新製品が出るたびに±0.05ppb(=±0.00005ppm)の ように表記される発振精度というポイントに注目してきたわけですが、実は音質を 左右する要素として、ワードシンク信号を受信するコンポーネントが外部からの 高精度なクロック信号を受信した時に、それに同期させるために必ず必要だったのが PLL(phase locked loop)位相同期回路だったという事実です。 つまり、いかに高精度で素晴らしい基準信号を受け取っても、それを実際の音質に 貢献するように生成し直すためにPLL回路は重要な役割を担っており、その精度と 品質によって音質も左右されるという事実でしょう。 これに気付いたESOTERICはG-0sという自社製のMaster Clock Generatorを発表した後、 あの名器P-01&D-01において新機軸となる機能をユーザーに提供しました。 「WORD SYNC 入力ポジションを通常の IN モードと Rb IN モードを新たに設定し、 Rb INが選択された場合にはルビジウムのような高精度クロックとの同期のために 変動範囲と追従のさせ方をチューニングした PLL回路が選択される。」 これは下記の随筆17Pでの一節ですが、PLL回路の重要性を12年前に認識していたのです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/060906/oto-no-hosomichi_no53.pdf このように製品本体のパネル上でユーザーがクロック設定を操作できる機能性は その後に発売された一体型プレーヤーX-01にも「CLOCK MODE」スイッチとして https://www.esoteric.jp/downloads/archive/brochure/x-01_ux-1.pdf 装備されましたが、その後は製品内部で入力されたクロック信号に自動追随する 設定に変更されて現在ではP-02X/D-02Xにてクロックモード設定があり、それに よってユーザーによる音質選択が出来るようになりましたが、基本的には前述の PLL回路によってマスタークロックに同期させるという手段は変わっていません。 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p02xd02x/index.html 私が今回Grandioso G1を試聴して感動したのは、今まで必須項目だったPLL回路を 使用しない音であり、何とGrandioso P1 D1には既にG1の登場を予見した設計が なされていたという事なのです!! この取り扱い説明書の28Pをご覧下さい。 https://www.esoteric.jp/jp/product/p1/download 同様に14Pをご覧下さい。そして、このウィンドウを開いたままで続きを読んで下さい。 https://www.esoteric.jp/jp/product/d1/download そして、両者ともに「MCK10M」という設定にご注目下さい。この設定はESOTERICの 他の製品には存在しないモードであり、高品位な外部のMaster Clock Generatorに 完全に依存した再生を可能にしたものです! (中略) さて、ここまではP1 D1のクロック設定は[IN]として外部クロック、すなわち内蔵 クロックをPLL回路によって同期させるクロックシンクモードにて比較してきました。 前述のように過去のMaster Clock Generatorという製品の使用法すべてにPLL回路 という存在が関わっていた再生手段であり、私の経験則もすべてこの領域で検証 してきたものですが、ここからがG1が間違いなくGrandiosoの一員であるという 事実をガツンと突き付けられた新発見がESOTERICの中でも唯一Grandiosoシリーズの 組み合わせでしか実現できないPLL回路に依存しない再生音だったのです!! 前述したP1 D1の説明書のウインドウはまだ開いているでしょうか? これまでの試聴でG1の新機能も実験し、PLL回路を使用する他のコンポーネントでも 10MHzが受信できれば使用できるということで評価をしてきましたが、ここで最後に メニューのクロック設定[MCK10M]に切り替えての試聴をすることにしたのです。 この設定はESOTERICの他の製品には存在しないモードであり、高品位な外部の Master Clock Generatorに完全に依存した再生を可能にしたものです! P1 D1などには22.5792MHzの内蔵クロックがあり、CDのピックアップ関連では 44.1KHzに分周して動作させ、オーディオデジタル信号も同様に内蔵クロックを 使用しています。 その内蔵クロックに対して外部のMaster Clock Generatorからのクロック信号に PLL回路を使ってクロックシンク(同期)させていたものですが、[MCK10M]にすると G1からの10MHz信号を内蔵クロックに置き換えて使用するモードとなり、PLL回路を 使用しない再生音が実現したのです!! 各機器に内蔵するクロック精度は当然G1に匹敵するものではありませんが、 PLL回路を使って精度・安定度をあくまでも同期させるという状態でした。 イメージとしては大きな歯車が左右にあり、その中間に小さな歯車を挿入することで 左右の歯車の動きが同期するという感じでしたが、小さい歯車が噛み合う箇所で極めて 微量の機械的ゆとり、ガタツキというと大げさですが連動するための遊びがなくてはなりません。 左右の大きな歯車の片方が内蔵クロックで、もう片方がMaster Clock Generator、 そして真ん中の小さい歯車がPLL回路とご理解下さい。 それの遊びと例えたのはジッターというイメージで良いと思います。 その遊びがなくては、いくらオイルを指してもスムースに動かないのは想像できると思います。 そして、この[MCK10M]モードでは中間に入った小さな歯車を省略し、左右の大きな 歯車が直接噛み合うというイメージかと思います。こんなデジタル再生は私も初めてです!! 未体験であるので、私は最初何を期待していいのか分かりませんでした。 デジタルフィルターの選択によって音質が微妙に変化するくらいの程度だろうと 想像し、変化の方向性が予測できないので本当に何も期待していなかったのです。 そもそもはGrandioso G1 P1 D1という三者が揃わないと実現できないことであり、 いかに高価なMaster Clock Generatorがあったとしても単体では出来ないことです。 ですから、期待に胸膨らませて、という展開では全くなかったのです。しかし… もう何度目か忘れてしまう程繰り返して聴いてきたTWO TREESをスタートさせました。 「あー!!これ、いっちゃってます!!トランス状態の音です!!物凄いです!!」 私がG1の第一印象で語った、下記の胸の内のコメントと比較して下さい。 「…(無言)、!?(戸惑い)、なんでだ!(驚き)、そりゃないだろう?(想定外)」 新製品G1の最初に感じた印象はG-01との比較によるコメントだったのですが、 この[MCK10M]モードでは比較する相手がないのです!!それほど違うのです!! サックスの楽音は空調機を使ったスタジオの空気で吹き鳴らされていたのしょうか? ところが[MCK10M]にした途端に大自然の懐深い森林、それもマイナスイオンを多分に 含んだ新鮮な空気の中で響き渡っていくような自然さというイメージでしょうか。 とにかく楽音の鮮度そのものが根本的に違うのです。ピアノも当然のことながら 早朝の森林で木々の間に響き渡りながら自然な減衰で消滅していくような印象。 敢て例えるなら、下記のAGSを使用した時の変化とでも言いましょうか。そうです、 演奏している空間の鮮度が究極的に向上したという感じでしょうか!! http://www.noe.co.jp/product/pdt1/pd1_12.html サックスのリードのバイブレーションが心地よく解像度を上げて湿り気を帯び、 キーとバルブのメカニズムによる開閉音という付帯音が鮮明になるが聴きやすい。 あたかも森林の木々に反射を繰り返しながら自然に減少していく残響の最後の 一滴まで克明に空間に保持し、以前にない音場感を提示し始めたのです!! 不思議なことにノイズフロアーが前例のないレベルまで引き下げられた結果として、 前述のような空気の清浄化が行われ音場感がみずみずしく拡大したと感動したのも つかの間、サックスの音像そのものにも変化が表れていることに気が付く! G1に切り替えると音像サイズは収束し凝縮していったわけですが、ここでは逆に 音像が多少膨らんだのではないか? という印象を持ったのです。おかしい…。 しかし、しばらく聴き続けていくうちに私の錯覚であったことが分かってきました。 サックスのリードという発音体は時にジリジリ、ジュルジュルという微妙な振動音を 発して、それまでもが正確に録音されているのですが、そのサックスの音の発祥 ポイント、楽音の核とも言うべき中心部分から同じ面積の空間に広がっていく 過程にて再現している音色の諧調、グラデーションの段階が更に細かく細分化 されていたという事なのです! 音波は1/1000秒で34センチ進行しますので、その時間軸では0.001秒で半径34センチの 球体として音波は360度の全方位に球面波として膨張し進行していくわけです。 その極めて短時間の一瞬の繰り返しによって耳に感じる音波を左右二つの音源で あるスピーカーから正確な位相で再生されると、リスナーの耳には立体的な定位感 として前方の空間に音源位置を感じ取るわけです。 私には1/1000秒ごとに34センチ、68センチと拡大していく音波の進路となる空間、 その中心部から遠ざかる過程で、音色の濃淡、音量の大小、テンションの緩和と いうような微妙な変化を伴いながら楽音が拡散していくのが見えてしまうのです! PLL回路を使用していた設定の時には感じ取れなかった、サックスのソロバートでの 極めつけの解像度の向上が、音像の中に多数の音色の階層が存在していたことを [MCK10M]の設定が教えてくれたのです。これは聴いて頂ければ分かります! 天体望遠鏡で眺めていた火星でも木星でも、それまでは単純な光点だったものが 輪郭が見えるようになり、更に倍率を上げた高性能な望遠鏡ではリングの詳細が 見えたり天体表面の色合いや起伏が見えてきたような変化とイメージして下さい。 つまりは、音像の中身と周辺の情報量が拡大したことで、音像のシルエットが 投影される面積がグラデーションの増大によって、あたかも広がってしまったの ではないかと錯覚してしまったわけです。 実際には音像の周辺に発生した微細な残響、響きのオーラが以前にもまして鮮明に 見えるようになってしまい、音像がまとう羽衣が微風になびく華麗な動きによって 私にはふくよかに変化したかの如く見えてしまったのでしょう。 そして、何よりも音像が膨らんだのでは、という錯覚を直後に打ち消したのがピアノの 音像が打鍵の一つずつで完璧なセパレーションを見せる分解能の素晴らしさでした。 打鍵というよりも、ピアノの弦の振動が高速度撮影されたスローモーションで 見えるのではないかと思う程のリアルさで、一音一音がくっきりと正確に描かれ、 その一音が空間を漂い消滅するまでをずっと眺めていられる安心感は初めてでした! 流れるようなピアノの演奏は楽音の連続として空間で新旧の音波が交わりながら 響きを空間に留めるのですが、一瞬の時間差で発生した音のひとつひとつに一切の 混濁がないので、音像の鮮明さ輪郭の明確さを視認しながら聴ける素晴らしさです! さあ、こんな未体験の音を突き付けられると[MCK10M]モードで聴くSAMBIENTAが 楽しみでなりません。私はC1のボリュームを4dBほど大きくして待ち受ける…。 「何という事だ!!パーカッションの一粒一粒が輝いているじゃないか!!」 マスタークロックの違いを試聴するには立ち上がりが鋭い楽音、例えばオルゴールや ハープなどで、ピン!と張り詰めたテンションから弾かれた音を注視すると、その 解像度や音像の輪郭などの違いで比較出来るものなのです。 同時に、弾く楽音のインパルス応答がどうかというチェックと同時に、ギターや ピアノのように鋭い立ち上がりの楽音から発生した余韻のあり方を観察するなど、 空間表現の違いでもマスタークロックの性質を分析することが出来ます。 そんな習慣を16年間繰り返してきた私が、今目の前で展開する多種多様な パーカッションの楽音を初めて体験する驚きと感動が脳裏を駆け巡る!! HIRO Acousticが構築する広大な音場感は微細な情報を高解像度で映し出すスクリーンの ようであるが、反射効率の極めて優れたスクリーンの全面に渡り、まるで色とりどりの クリスタル・ビーズを盛大に振り撒いたような小粒な輝きの乱舞が私も目と耳を虜にした!! 銀幕を背景に空中にばらまかれたピースに光が反射し、きらきらと輝きながら 多様な打楽器の細かい音がHIRO Acousticを包み込むように展開する素晴らしさ!! こんなに鮮やかでリアルなパーカッションは聴いたことがない!! この曲でもセンターで立ち上るサックスの響きに関する情報量の物凄さは同様な分析。 その背後にシンセサイザーの重厚な低音が湧き起こってくると…!? 「なに!この低域!!マスタークロックはウーファーにも利くのか!!」 P1 D1の[MCK10M]で受けたG1のクロック信号が、HIRO Acousticのたった22センチの シングルウーファーに数十グラムのマスウエイトを追加したがごとく作用し、 ウーファーのfo(エフゼロ)を強制的に引き下げたかのような豹変ぶりに私は興奮を 抑えられなかった!! ぐっと沈み込む低音の波動感がHIRO Acousticの周辺に湧き起こり、それは同時に 私の体表に見えない脈動として伝わってくる実感に思わず私の体が固まった!! 再生帯域が超低域まで伸びると楽音の質感から緊張感が取り去られ、ずっしりと しつつもゆったりと印象に変化してくるものだが、HIRO Acousticの低音は決して 膨らむことなく100Hz以下の低域においても楽音の輪郭を鮮明に聴かせる。 無機的ではあるが逆に正確無比な低音が、更に音階を下げてウーファーを揺さぶる ダイナミックな超低域は以前には経験のない重量感で私を惑わす!!こんなのありか!! 前述の大小三つの歯車でPLL回路の存在感を例えたが、G1の超高精度なクロック信号が 低域の再現性まで変化させてしまうという事実を眼前に突き付けられ、歯車が回転して 伝えていくのは回転数の同期という事だけでなく、楽音のエネルギー感もロスなく 伝送させていくという事なのだろうか。 私はこの低域の変化を聴いて、今までの常識と既成概念があっさりと覆された事を 確認するために、低域のチェックポイントを含む数曲の課題曲を聴きまくった!! そのいずれでも過去に経験のない低域の重厚さ、解像度の素晴らしさ、緩みない テンションの高まりという各項目を間違いのないG1の成果として認めたのです!! これには参りました。私にして想定外の発見であり、マスタークロックに関わる 効果のあり方に新項目が追加されたと断言致します!! さて、ここでP1 D1の[MCK10M]モードに関わる有意義な試聴実験を私はもう一つ 行ったことを最後にお知らせしなくてはならないでしょう。 実は、このP1 D1の[MCK10M]モードというのはG-01から出力した75Ω矩形波の TTLレベル(4.5〜5Vppに相当)の信号でも動作させることが出来るのです。 ただし、ESOTERICとしてはP1 D1のクロック設定で[IN]と[MCK10M]の音質的な違いは ユーザーの選択ということで、特に声を大きくしての推奨のコメントは発していませんでした。 その理由も含めて、私はG-01で[MCK10M]モードを試してみたのです。 結果的には上記にて私が感動した[MCK10M]の魅力は残念ながら感じられませんでした。 むしろPLL回路を使ってのクロックシンク[IN]の方が好ましい曲もありました。 やはりGrandioso G1が開発されてこその[MCK10M]モードの価値観ということかと思います。 さて、今回ご無理を申し上げてお借りしたGrandioso G1の滞在期間は本日まで。 今まで絞り込んだ選曲でG1の根源的な存在価値を私は確認してきましたが、最後に やはりオーケストラを聴かなくては!ということで定番の課題曲を楽しもうと思った。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二・第四楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 恒例の第二楽章の冒頭で弦楽五部の合奏が始まった瞬間に私はたじろいてしまった。 今まで何回聴いたか分からないオーケストラがこんなにも変わってしまうとは!! 「ホール録音のオーケストラこそ[MCK10M]モードの威力が最も大きいのでは!!」 先ず最初に印象に残るのは弦楽器の質感、特に音像が細かく再現される変化だった。 第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ビオラと主旋律を演奏する弦楽器の質感が あろうことか玉虫色の美しさに変化したと言ったらいいだろうか! 弦楽奏者の集団として捉え、その群像として各パートの合奏そのものが一個の楽音と して聴いてしまうことが多いでしょうが、この時表れた弦楽五部の内面の音、指揮者 でしか聴けないだろうオーケストラの内声とも言うべき演奏者一人ずつの音色の違いが これ程までに克明に再現された事例を私は知らない。 楽音の塊を無理やりベリベリと引きはがしていくような分離感ではない。 束ねられたものを一本ずつ丁寧により分け解きほぐしていくかのような自然な 分解能が弦楽五部のすべてに表れている。 そして、肝心なことは解きほぐされた一本ずつの質感に、これまでのスタジオ録音での 試聴で体験してきた余韻感が演奏者個々にしっかりと付帯しているという実感なのです。 一本に分けても余韻感が鮮明であり、それらが合奏として複数の音色を放ち、 それがホールの空間で交差し調和しながら響きの連鎖を巻き起こす快感が素晴らしい!! その分解能は当然、管楽器の各パートにも変化をもたらし、木管楽器のふくよかな 響きが空気中に溶け込んでいき、金管楽器の立ち位置を明確にしながら遠方から ステージ背後の壁面を立ち上る響きに音響的ベクトルを感じ取ることが出来る。 トライアングルの輝く音には誇張感がなく、スピーカーの特長としてトゥイーターの 存在感をこれ見よがしにすることなく、控えめな音像サイズでステージの奥行きを 感じさせる遠近感が大変素晴らしい!! 「おや、このオーケストラは全体が遠のいた感じだぞ!!」 これはどういうことかというと、弦楽器にしても管楽器にしても各パートの楽音に 対する距離感が一定になり、オーケストラ全体がHIRO Acousticの後方に一歩下がり ステージの遠近感が今までよりも遠くに感じられるのです!! 再生システムとスピーカーの特長として、オーケストラの特定の楽器が手前に せり出してくるような鳴り方を経験した方もいらっしゃると思います。 コントラバスが鳴ると近くに寄って来きたり、大太鼓が鳴るとウーファーに 張り付いたような位置関係でステージの手前に移動してきたりという現象です。 しかし、HIRO Acousticの持ち味である帯域別のエネルギー感を極めて均一にする事、 特定の楽音が手前にせり出してくる現象はないということは私は承知しています。 スピーカーの特長を理解している上で、ソースコンポーネントの変化によって、 電気的な信号伝送の特長としてオーケストラの各パートに前後関係の基準があった わけですが、それは大変信頼性の高いものでした。 ところが、Grandioso G1 P1 D1のセットで[MCK10M]モードでオーケストラを聴くと、 レーザー測距機で各パートとの距離をきちんと取り直したかのように、弦楽器、 管楽器、打楽器という各々のポジションが極めて明確に均一に整列されるのです。 これはオーケストラをはじめとするクラシック音楽全般を聴いておられる皆様に とっては、まさに青天の霹靂ともいうべき再生音の新世代感覚と言えると思います!! 引用終了 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 長い引用でしたが要約するとMaster Clock Generatorの音質を語る上で、 そのクロック信号を受信するコンポーネントにおけるPLL(phase locked loop) 位相同期回路が必要であり、その重要さによって音質的評価も下されるという事。 そして、Grandioso P1 D1の[MCK10M]という位相同期回路に依存しないPLLレスと いう新方式による音質を私は最高レベルの音質として高く評価していたことです。 ★しかし、私はここで重大な告白をしなければなりません★ Grandioso G1の発売当時における上記の実験的試聴の数々では確かに[MCK10M]の 解像度と情報量の素晴らしさに感動し絶大なる評価をしたのですが… その後、日常的なスタンスでの試聴、お客様に対する実演をこなしていくうちに 再度の比較検討を行った結果、Grandioso P1 D1のクロック設定は[IN]として内蔵 クロックをPLL回路によってMaster Clock Generatorに同期させるクロックシンク モードにてGrandioso G1を使用し皆様にお聴かせてきたという事だったのです。 散々に[MCK10M]を喧伝しておきながら、当の本人がお客様に聴かせたい音質として 再度冷静に検討した結果、正にオーディオ的判断で選んだ実演音質とはPLL回路での 同期による音だったのです。 なぜかと問われれば私の感性による選択としか言いようがないのですが、この設定で 演奏した音質にて皆様に認めて頂き高い評価と販売実績があったということを この場にて釈明と共に告白致します! では、なぜ私の感性で[MCK10M]から[IN]に戻してしまったのか、オーディオ的判断とは どういうことなのか、そして、これをどう説明したものか…? 陸上競技の短距離走で100分の1のタイムを争うランナーは軽量で鋭いスパイクが 施されたシューズをはきます。下記はイメージとしての参考リンクです。 https://www.mizuno.jp/track_field/manual.aspx https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/trackfield/tguide2018/spikeuse アスリートの筋力を無駄なく、そしてトラックの路面コンデイションに対して 敏感に確実にガツッとグリップさせるための選択。思えば、これが[MCK10M]の 音質的傾向だったのかもしれません。下記の一節を思い出して下さい。 「イメージとしては大きな歯車が左右にあり、その中間に小さな歯車を挿入する ことで左右の歯車の動きが同期するという感じでしたが、小さい歯車が噛み合う 箇所で極めて微量の機械的ゆとり、ガタツキというと大げさですが連動するため の遊びがなくてはなりません。 左右の大きな歯車の片方が内蔵クロックで、もう片方がMaster Clock Generator、 そして真ん中の小さい歯車がPLL回路とご理解下さい。 それの遊びと例えたのはジッターというイメージで良いと思います。 その遊びがなくては、いくらオイルを指してもスムースに動かないのは想像できると思います。 そして、この[MCK10M]モードでは中間に入った小さな歯車を省略し、左右の大きな 歯車が直接噛み合うというイメージかと思います。」 陸上競技場のトラックを鋭いスパイクシューズで踏みしめた時、そこには一切のガタツキ 遊びはなく、100mを20数歩という正に飛んでいるようなストライドによるスプリンターの 走力を支えるものは、がっちりと路面に咬みつくような究極的な摩擦力というかスパイクに よる動的支点の確立だと思われます。[MCK10M]での音とはこんなイメージでしょうか。 それはスピーカーが表現する音像に対して一切の昧さを排除して、やや硬質に 感じられるが微動だにしない定位感と克明な輪郭を極細のペン先で描くような、 ひたすら解像度を重視する方向性の音のだったかもしれない。 あまりにダイレクトな再生音には一切の“遊び”はなく、ある意味での緊張感を はらんでいて分析的な聴き方としては良かったのかもしれません。 短時間のリスニングであれば短距離用スパイクシューズのようなイメージで、 ランナーの足をいたわるようなクッション性よりも足で地面を蹴るエネルギーを 如何に無駄なく確実に地面に伝えるか、正に足とシューズの一体化という目標に ふさわしく、課題曲を集中して聴く時には[MCK10M]で聴いてもストレスを感じずに 済んでいたのでしょうか…。 ところが近年では競技用シューズは丈夫で軽量であればいいというものではなく、 下記に見られるような新たな機能性を持ち始めていました。 次のような話題から規制するほどの実績があったということでしょう。 ナイキ厚底「1強」に待った。五輪延期で激化、シューズ開発競争。 https://number.bunshun.jp/articles/-/844149 日本人選手を変えた厚底シューズ。五輪前規制の衝撃と走者への影響。 https://number.bunshun.jp/articles/-/844634 話題となったナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% https://www.nike.com/jp/running/vaporfly 長距離用の厚底シューズのようにソールの技術によってバネ性と反発力を持たせ、 同時に足も保護しながら疲労感も抑え、アスリートの脚力を効率よく発揮するための カーボンファイバープレートなど科学的な研究成果として長距離ランナーにとっての 走力を高める技術が証明されたものでしょう。これを言い換えれば… 長時間のリスニングを前提として、ハイファイとして必要な要素は当然確保しつつ、 演奏者の情熱やテクニックも、そしてダイナミックなエネルギー感もリスナーの メンタルにストレスを感じさせない音質として実現する方向性ではないかと…! 緊張感よりも癒しとリラックスを求め、分析よりも鑑賞、分解能よりも美意識の追求、 そして何よりも音楽の躍動感が向上するような方向性にシフトするとしたら… あくまでもイメージですが、思えばこれが[IN]の音質的傾向だったのかもしれません。 オーディオ的判断と前述しましたが、音を聴く目的として音楽のあり方をどう受け止め、 再生音の中に何を求めていくのか、という自然発生的な私の感性による選択によって Grandioso P1 D1 G1三者の連携において[IN]すなわちPLL回路による音質で音楽を 楽しみながら聴くというスタンスに変化していってしまったのでした。 これは今までESOTERICの開発陣にも知らせていなかったことなのですが、私が標準的な 試聴に関して選択したクロック設定について、今だから言えるという技術的な背景を この段階で述べておきたいと思います。先ず前述の下記の一節を再度引用します。 「その内蔵クロックに対して外部のMaster Clock Generatorからのクロック信号に PLL回路を使ってクロックシンク(同期)させていたものですが、[MCK10M]にすると G1からの10MHz信号を内蔵クロックに置き換えて使用するモードとなり、PLL回路を 使用しない再生音が実現したのです!!」 PLL回路を使用しないことがシンプルイズベストという短絡的な発想をしてしまい、 同時に私の技術的知識不足があったという事実を認めつつ、PLLレスという方法が オールマイティーであるかの如く文章をつづっていた私は深く反省することになりました。 上記の「G1からの10MHz信号を内蔵クロックに置き換えて使用するモード」という 処理を実現するためにはオーディオデータのサンプリング周波数を整数倍でなく 10MHzをCDフォーマットの基本サンプリング周波数の256倍として使用する必要があり、 そのためにコンバートする専用回路(IC)を搭載しなければならなかったという事実を 今になって知ることになったのです。このICはGrandioso P1に搭載されています。 具体的には10MHzを基準周波数とするためには、10000/256=39.0625kHzとなり、 ES-LINK(HDMI)接続の場合は8倍なので、312.5kHzのサンプリング周波数へと コンバートしてGrandioso P1からD1に伝送されており、PLL回路よりも複雑な 信号処理を行っていたというのです。 言い換えればクロック信号の取り扱いという面でPLL回路を使用しないという面では 一定のメリットはあるのだが、ディスクトランスポートGrandioso P1から出力される オーディオデータのサンプリング周波数を上記のように変換する必要性があったと いうことで、コンバートするアルゴリズムによっても固有な音質的特徴があるという 研究成果が現在のESOTERICにはあるというのです。 つまり、PLL回路を使用するメリット、デメリットの解釈そのものがESOTERICにおける 研究開発の時間を経て変化し進化してきたということなのです。 今更私が選択したGrandioso P1 D1 G1の連携においてPLLを使った[IN]の音質を 正当化するわけではないのですが、陸上競技の短距離用スパイクの例えのように 短時間での特定した志向性の音質としては画期的な発見であったと思った事が、 長距離用厚底シューズの例えのようにハイファイであることを前提としての聴きやすさ として長年採用してきたことの背景だったと現時点では言えるようになったのです。 そして…、Grandioso G1の登場から三年後に次のようなGrandiosoシリーズの “X化”がスタートしました。 H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - ESOTERIC Grandioso P1X & D1X https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1548.html 上記ではGrandioso P1XにおけるVRDS-NEOからVRDS-ATLASへ、Grandioso D1Xにおける 旭化成AK4495SからMaster Sound Discrete DACへという進化にスポットを当てての 解説をしていますが、Master Clock Generatorとの連携においては特に触れていません。 それは私の意志というよりも、クロックリンクの方式論争という枝葉となる部分より メカニズムやDACといった幹となる部分を大きくブラッシュアップすることでの躍進を 狙っていたESOTERIC開発陣の意図するところであり、極力回路をシンプルにするように 考え、上記の[MCK10M]つまり10MHzダイレクトLINK機能は非搭載となっていたのです! もちろんマスタークロックとしては、10MHzをメインで使うことを想定しているので、 入力回路やPLL回路は10MHzに特化したチューニングが施され、それに同期する内蔵 VCXO発振器も発振器内部の部品や回路、回路パターンも新設計のものに進化している。 これがGrandiosoシリーズのMaster Clock GeneratorにおけるX化の真意だったのです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ■ESOTERIC Grandioso G1X - Hidden Storyとは!? https://www.esoteric.jp/jp/product/g1x/top さて、先ずは今から15年も前になりますが、Master Clock Generatorという分野に 関して私が取り組んでいた下記の記事を改めて紹介致します。 衝撃レポート/こだわりの検証 ESOTERIC G-0(50万円)はG-0s(120万円)より音がいい!! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/401.html 上記より抜粋したものが下記の一節にご注目下さい。 ---------------------------------------------------------- http://www.dynamicaudio.jp/file/060131/g0s-inside.jpg この写真はG-0sにてフロントパネルが上になっている構図のものです。 この画面の左側にTAECと書かれた小さな基板がありますが、これがクリスタル発振器です。 この上にわかりにくいと思いますが、TEACの文字の下に丸いコンデンサーが見えますが、 そのすぐ左側にある小指の先ほどの黒い小さなパーツが水晶発振素子です。 ---------------------------------------------------------- 上記の写真ように単純な一枚の基板で発振器が構成され、更にむき出しとなっている 水晶振動子とはこんなにシンプルで小さなパーツなのですが、この小さいパーツを ディスクリート化したということはどういうことなのか? 順を追って説明します。 2021年4月時点での同社サイトにおけるGrandioso G1Xの紹介内容を補完すると… この段階で公開されていない内部構造の画像を先ずご覧下さい。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418145745.jpg 先ず今までESOTERICのMaster Clock Generatorではルビジウム発振器が最高峰と いう位置付けが長年されてきましたが、そのデバイス自体がパーツメーカーの主動 による設計と供給に依存するしかなかったわけです。 前述のように自社での研究開発の成果を音質として表現するためにはGrandioso D1Xの 「Master Sound Discrete DAC」と同様にESOTERIC独自の設計によりモジュール化した 「Master Sound Discrete Clock」を開発しGrandioso G1Xに搭載しました。 上記写真の手前右側にあるESOTERICロゴのパーツです。クローズアップしたのが下記。 このモジュールのサイズは大よそ150mm×90mm×70mm程度。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418145723.jpg 上記写真ではESOTERICのロゴがある面はシルバーで側面は銅のような色ですが、 撮影時の演出的なライティングで独特な色になっているだけで、厚みのあるブラスト 仕上げのアルミのプレートであり外装の丸くなっている角の部分と同じ仕上げとなる。 そのプレートの下にボックス状の容器がありますが、新潟の燕三条のメーカーに特注で 作ってもらったという真空断熱技術を用いた大型チャンバーとなっており、容器を構成 する各パネルには保温のための十分な厚みがあり真空層を挟む二重構造となっている。 この容器は70mm×60mm×30mm程度の大きさなのだが、小さいパネルを溶接して 組み立てられたものであり、上記のロゴ入りプレートは容器のフタではなく、 真空容器を抑えて固定するためのプレートであるという。 Master Clock Generatorの心臓部であるモジュールの中身とは何か? 安定した発振を得られる最大サイズのSCカット水晶振動子ESOTERIC SC1とはこれです! https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418144649.jpg このSCカットの水晶振動子は軍事用ミリタリーレベルの性能を有するものであり、 これまでの経験から水晶振動子のサイズが大きいほど音質的に良い結果が得られて いたということで、デバイスメーカーでなるべく大きなサイズの水晶振動子という ESOTERICのリクエストにて選定し、それをさらに選別して「ESOTERIC 10.000M SC1」 と刻印している。 この丸いデバイスの直径は大よそ15mm程度のものでPCBに密着させハンダ付けされ、 そのハンダ付けされた銅箔ごとヒーターの役割のトランジスターを使って暖める。 「TP85℃」と刻印してあるが基本的には85℃に温度を保ち使用し、水晶振動子 1つ1つに対して最適な温度を測定し、その温度で動作させるようにヒーター回路は 専用のマイコンにより制御されている。 上記容器によるオーブンで一定温度で発振回路を動作させるが、暖めるための ヒーター回路がなるべくON/OFFや強弱のないように真空断熱のケースで覆っている。 水晶振動子・回路・ヒーターそれぞれに専用電源回路を搭載、クロックを担う大型の トロイダルコアとシステム制御用EIコアのWトランス構成により、相互干渉を抑え クリーンな電流を供給。電源トランスの大きさはGrandioso G1と同等。 上記サイトでは主な仕様として記載があるが、出力信号:10MHzにて正弦波で 50Ω仕様のBNC出力×5系統を構成する。 外形寸法:445×132×448mm(W×H×D突起部を含む)重量は23kgと補足する。 周波数精度 ± 0.01ppm 以内(出荷時) クロック安定時間 約10 分 出力レベル サイン波 0.5 ± 0.1Vrms/50Ω Grandioso G1Xの出力基板が下記、MIL規格SMAコネクターを採用している。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418145828.jpg ここでGrandioso G1Xのリアパネルを見て頂きたい。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418160041.jpg 前作Grandioso G1にて採用し私のインプレッションでも大きな効果と評価した 「アダプティブ・ゼログラウンド」モードのスイッチが装備されている。 これはグラウンド電圧の変動によるノイズ(ランダムジッター)防止により高い 効果を発揮するとG1の説明にあったが、Grandioso G1XのNormalモードでは電圧の 変動によるノイズが含まれているのを承知の上で、音質で選択し使用するという 考え方なのかとESOTERIC開発に質問してみました。すると… 「G1Xにおいては、出力バッファ回路とその電源回路を作り直し、より安定度の 高いものとしています。またG1Xにおいても、アダプティブ・ゼログラウンド モードを選択することができ、音質的にお好みで選択できるようになっています。 G1の説明文の中のグラウンド電圧の変動によるノイズはアダプティブ・ゼロ グラウンドの方がノーマルよりも優秀であると言わんがために、言葉が過激に なり過ぎていたのではないかと考えています。」 という事で、私がここで思い出したのは前述のクロックモードにおいて[MCK10M]と [IN]の二種類があり選択出来たように、Grandioso G1Xではグランドモード二種に おいてユーザーの好みの選択が出来るという可能性を残したというものでした。 ■ESOTERICサイトにあるバージョンアップサービス(VUK-G1X)に関しての補足 心臓部のクロック・モジュールと出力基板を含むすべての回路基板を交換し、 Grandioso G1X仕様にバージョンアップ バージョンアップ価格 800,000円(税込 880,000円) 4月1日受付開始、作業開始は6月を予定 上記のバージョンアップに関しては結果的に電気的特性はGrandioso G1Xと同等に なりますが、トップパネルの取り付け方法に関しては異なりますのでご注意下さい。 Grandioso G1Xではセミフローティング構造ですが、バージョンアップではシャーシから すべて変更となってしまうため従来の取り付けをそのまま使う形となります。 またフロントパネルもそのまま流用となり、従来クロックの安定を示す正面から 向かって左側のLEDがクロックの安定のインジケーターと出力のインジケーターを 兼ねるような表示となります。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 大変長い前置きとなってしまいましたが、これからの試聴において述べていく分析の パラメーターがGrandioso G1Xを語る上での音質的特徴として理解して頂くために 私が必要と感じたものであり敢て紙面を使わせて頂いたものでした。 上記ではアダプティブ・ゼログラウンドに関しても説明していますが、私の選択で 新旧二機種の比較において両者ともに本機能はオンとして試聴することにしました。 また両者ともにPLL回路を使用したクロックモードであることは言うまでもありません。 恒例ですが試聴システムは以下の通りとしました。 H.A.L.'s Sound Recipe/ ESOTERIC Grandioso G1X-inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20210418112114.pdf 今までESOTERICの新製品と言えば、各種ケーブルもESOTERICブランドを使用してという ことが通例でしたが、今回からは肝心なBNCクロックケーブルも含めて電源ケーブル以外は Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Cable各種を使用していることを追記しておきます。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/yas/spl.html ちなみに上記システムにてGrandioso D1XからプリアンプC1Xの接続も音像を支配すると 表現してきたTa.Qu.To-XLRを使用しES-LINK Analogにて伝送しています。 常設展示から三週間経ち、その間ずっと24時間電源オンの状態で初期バーンインを 完了している状態で、いよいよ本格的な比較試聴を開始したのです! 先ず最初の選曲は前作Grandioso G1の試聴でも使用した次の課題曲からスタートです。 ■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1 http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html http://www.dynamicaudio.jp/file/100407/UncompressedWorldVol.1_booklet.pdf TRACK NO. 3 TWO TREES / TRACK NO. 4 SAMBIENTA プリアンプをMUTEしてラックの裏側に回りBNCケーブル三本を差し替えて、 再度センターポジションに戻り、Grandioso P1XとD1Xがクロック同期するまで ディスプレーの点滅を眺め、シンクロしたことを確認してからMUTEを解除して リモコンでトラックを指定して再スタートする。 この作業の繰り返しを何回繰り返したことか…! 私が慎重な試聴をする時には両目をしっかりと開けて眼前に展開する音像と音場感の 両方をしっかりと目視し観察しています。音が空間に出現する度に視線は頻繁に動き、 絶えず音像の位置を追跡するように目線が動いていることを自覚しています。 1センチ角の方眼紙でサイズは1平方メートル、約1万個の方眼紙のセルがあるとしたら、 それをスピーカーの前面に四枚並べ、そこに描かれる音像に対してセルの個数や位置、 更に各セルにはどのような音色が当てはまるのか、そんなビジュアルをイメージして 比較試聴する際には合計4万個(あくまでイメージですが)ものセルが造形する音像の 成り立ちと、セルに当てはめた音色の濃さが減少し消滅していく過程の余韻感という ものも観察しているものです。つまり二枚のビジュアルでの間違い探しをするのです。 そんな私が最初の課題曲で躓きました。Grandioso G1とG1Xの新旧を比較して新製品の 方が格段に優れいてるというジャッジを即断出来なかったのです。G1も素晴らしいのです! これまでのGrandiosoのX化としてディスクトランスポートもDACもプリアンプも、 そして未入荷のパワーアンプに関しても前作に対して開発費に見合う値上げが されて来ました。Grandioso G1の190万円からG1Xは200万円と僅差となりましたが、 一曲目の課題曲でも僅差なのです。これは難しい… この課題曲に関してはGrandioso G1のインプレッションにおいて実に長大な文章量にて 語り尽くしていますので、その各論における比較において重複する要素も多く、 この場では多くを述べませんが両者ともにほぼ互角と言っても良いくらいなのです。 10万円の価格差で並行生産として継続するのであればG1を選択されても良いのではと 思うほどに、この課題曲では両者の魅力というものを再確認したに過ぎないと感じました。 ただ…、微妙に引っかかることもあるのです。これをどう表現したものか…? 簡単な例えとして★マークが良いでしょう。 前述の方眼紙という表現をしましたが、この★が沢山集まって音像を構成していると イメージして下さい。Grandioso G1では★ひとつずつの五つの頂点で尖っている先端を 更に鋭く、刃物を研ぎ澄ますように鋭角的な鮮明さとして聴かせてくれるとしましょう。 ところがGrandioso G1Xでは★の形はしっかりと維持したまま、この図形の中身というか 質感に濃密濃厚さが感じられ、図形が重なり合うことで輪郭線に微妙なグラデーションが 見られるような傾向を示すのです。表現を変えれば厚みがありしっとりしているのか。 TRACK NO.3 TWO TREESではサックスのリードに息が吹き込まれた瞬間の鋭い反応が緩和され、 ピアノの打鍵の一音ずつのタッチに感じられる厚みというか微妙にふっくらした音像サイズ とも言えますが、Grandioso G1Xに切り替えた時に起こった変化を現段階では抽象的ですが 私の感性が反応して二枚の絵の間違い探しの結果として無理やり導き出しました。 TRACK NO.4 SAMBIENTAでは冒頭からの細かい多数のパーカッションの一粒ずつの 響きでも感じられ、センターに浮かぶサックスでも認められ、その背後で叩かれる スネアドラムの質感においても同様な印象がありました。しかし参ったな〜! 私が常々語っている音像と音場感の関係をG1とG1Xに当て嵌めどう解明していくのか? ここでリファレンススピーカーHIRO Acousticに寄せる信頼感として音像と音場感の 再現性が大変に素晴らしく敏感であるということに注目しとっておきの選曲を行った。 大貫妙子 初のセルフ・カバー・アルバム 「pure acoustic」 http://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/products/upcy-7097/ 【最新リマスター/SHM-CD仕様】より7.「突然の贈りもの」 Westminsterlab Rei & Questを語る下記で詳細を紹介し1.「雨の夜明け」を聴きました。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1655.html しかし、この7.「突然の贈りもの」には他の曲とは異なる大きな特徴があるのです。 ヴォーカル、ピアノ、ベース、サックスという全てがセンター定位なのです! そして、冒頭からの三分間はピアノ伴奏による大貫妙子のヴォーカルのみという進行で、 私が聴きたいポイントである音像と音場感の関係を適切に評価し分析することが出来ます! 最初にGrandioso G1で聴くと…。 「お〜、凄い! Ta.Qu.To-Cableの素晴らしさと相まって見事に集束した音像だ! 」 スピーカーユニットが存在しないジャストセンターに浮かび上がるヴォーカル、 同ポジションの背後でしっとりと、しかし打鍵の一粒ずつが極めて鮮明なピアノ! 三分を経過すると待ちかねていたようにベースがセンターに重なる間奏に入り、 その背景にぽっかりとサックスが浮かび上がるセンター定位の見晴らしの良さ! 四つの楽音がHIRO Acousticのセンターにて見事な解像度で描かれる快感に何の 不満があるだろうか! さあ、これをGrandioso G1Xで聴くとどうなるのか。 何度目か忘れてしまうほど繰り返した配線切り替えの手も進み定席に戻り、 リモコンでテンキーの7を押すと…。 「あ…、これ…、いいです! こんな展開をマスタークロックがやるのか!」 音楽信号は一切伝送しないマスタークロックのはずなのに、こんなシンプルで 判定しやすいセンター定位の四人の演奏者に新しい表情が見て取れるという驚き! 大貫妙子の声には微妙なふくよかさが宿り艶めかしさが堪らない魅力として変化した。 ピンと張り詰めていたピアノの打鍵の瞬間に一種の安堵感を催す緊張緩和作用がある。 三分間の出待ちで登場するベースは濃厚さを増し引き締まった質感に好感を覚える。 リードの切れ味鋭いサックスにはほんのりとした湿り気を感じるのはなぜ? 「そうか! そういう事だったのですね! X化で目指していたものはこれだったのか!」 シンプルでアコースティックな録音、更にすべてセンター定位で音像の確認ができ 拡散していく余韻感も観察しやすい選曲の妙でG1Xの方向性が見えてきました! 問題は、これをどのように表現して皆様にお伝えするのか…、ここでいつも悩む! 前述の★マークでの例えを言い換えるとこう表現できる。 聴き馴染んだGrandioso G1での高解像度は素晴らしいのだが、G1Xと比較すると 細い5ミリ芯のシャープペンシルで描いたデッサンと言えるのではないか! ヴォーカルの唇の動き、ピアノのタッチの鮮明さ、ベースのピッチカートの締まり方、 サックスのリードのバイブレーションの響き、それら全てが極めつけの分解能で 空間に描写されるリアルさは正にシャープペンで描く繊細な表現であったと! それに引き換えGrandioso G1Xでは硬度2Bの鉛筆で描かれたデッサンそのものだ! 軟らかさを感じる2Bの鉛筆の芯は最初は尖っているのだが、各楽音の輪郭線を書き 終わった頃には程よい丸みを帯びていたのだろう。 最初の輪郭を再度上書きすると楽音の質感に微妙なふくよかさが加わり、丸くなった 2Bの芯で描く線そのものに微妙なグラデーションが発生してくる。 鉛筆を斜めに持ち替えて細かく動かすことで音像の中身に濃厚さが増していき、 黒鉛と粘土で出来た鉛筆の芯が引いた線を指先で擦ると濃淡のあるぼかしの効果で 余韻感が音像周辺に広がっていくような響きの階調による空間再現性がいいのです! ぼかしの効果は音像の輪郭を絶妙な節度をもって曖昧さを含むようにするのだが、 決して音像サイズそのものを膨らませているのではなく、音像の中身に別種の エネルギー感を注入したように濃密な質感へと再構成していく。これは素晴らしい! この変化、似ているのか? Grandioso D1XでDiscrete DACを初めて聴いた時の音に!? いや、まだだ、はやる気持ちを押さえて次の選曲ではどうか! ■Melody Gardot/Sunset in the Blue[SHM-CD]より1.If You Love Me https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/products/uccm-1260/ https://www.universal-music.co.jp/melody-gardot/about/ センターにヴォーカルという音像は欲しい。優れたスタジオワークでミックスされた 多様な伴奏楽器を交えて、2B鉛筆でのぼかしの効果を更に確認するための選曲。 Grandioso G1で最初に聴き前述の方眼紙のセルの集合体がどんな音像を構成するか、 最近多用するようになったMelody Gardotを聴き直し、しっかりと頭の中に比較前の ビジュアルを定着させた。もちろん聴き慣れたG1での再現性に関しては記憶の通り。 シャープペンと2B鉛筆の違いは果たしてどう表現されるのか…、早くも予感が走る! 「これは…いい! 響きが重なり合い調和するということはこういう事なのか!」 冒頭のストリングの質感の変化に先ず気が付き驚く。今まではプラスチック板に アクリル絵具で描いていたヴァイオリンだったのだろうか、光沢感のある弦楽器 として原色の鮮やかさが目につくような、メリハリのきいたストリングスは音量を 上げていくとヒステリックにさえ感じる局面があったのだがG1Xの心地よさは何なんだ! それが清々しく感じられる響きの重奏に変じて、ストリングスの音色そのものに 空気感をはらんだ開放感というか耳に優しい滑らかさと潤いを感じる弦楽となる。 Melody Gardotの歌声が浮かび上がると、乾燥していたスタジオに高性能な加湿器を 設置したかのようにしっとりとした声質に安らぎと癒しを感じてしまう優しさに安堵する。 前曲のヴォーカル同様に音像サイズは維持したままで、鉛筆によって描かれる歌手の 表情には陰影が加わり、唇の動きさえも見えるようになり、更に発せられた声が なだらかな減衰カーブで空間に余韻を振りまき消滅していくまでの過程を適度な ぼかし効果として空間のキャンバスに描いていく描写力の高まりが素晴らしい! フレーズの最後に残された歌詞の発音では吐息に近い耳元をくすぐるような空気の 振動まで感じてしまい、目に見えない音の説得力として実態感を増すヴォーカル。 派手ではなく、しっとりと歌いながらも力強さを感じる声量のゆとりに音量とは 無関係なエネルギー感と迫力をもたらすG1Xの底力がゆっくりと胸に浸透してくる! ギターの軽やかなカッティングが背景を飾り、しっとりとしたドラムのブラシでは スピーカー周辺の空気にさざ波を起こし、間奏に登場するトランペットでは マウスピースに吹き込む息にさえ鉛筆でのぼかしテクニックが感じられる妙技! 主役であるヴォーカルの存在感を重視して、ゆったりとしたストリングスが絶妙な 弱音から再度空間に浮かび上がってくるアレンジの巧さが引き立つエンディングに ほ〜と思わずため息を漏らす美しさにX化の真骨頂を感じたのでした! スタジオ録音の高品位な楽音個々に関して必要な分解能を維持したままで、 演奏者一人ずつに栄養ドリンクをふるまったような活力をもたらし、正に鉛筆での デッサンに見られるような巧妙なぼかし効果による美意識の発見という素晴らしさ! 鮮度の高い音質を確認しつつMaster Clock Generatorの役目とは何なのだろうかと、 こんな音が欲しかった…という潜在的欲求をヴォーカル曲で満たされると、 オーケストラでの比較に進まざるを得ないと自分を納得させた再度の切り替えに臨む。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 今となっては目隠しをされても手で触れればGrandiosoだと分かるデザインの特徴と 同じくらいに定着してしまった課題曲をかけることに。G1でも聴き慣れた選曲。 スタジオ録音でクローズアップされたヴォーカルと楽音のイメージから、今度は ぐっとカメラを引いて壮大なホールの空間とステージを念頭に置きG1Xで聴くと… 「なっ何なんだ! この弦楽の質感の美しさは! 同じGrandiosoなのか!」 聴き慣れた曲だけに冒頭の弦楽五部の合奏が始まった瞬間に驚喜していた! 先ず感じるのは弦楽器群の演奏に躍動感というかエネルギー感を感じるような変化。 ヴァイオリンの演奏者の数だけ集団の中に個々の奏者の分離感と存在感を感じる…、 と思ってきた優秀さの評価基準が一気に崩壊していくような驚き! G1では弦楽器群の集合体として大きな楕円形を横長に書き、その中に小さい丸で 弦楽奏者一人ずつをシャープペンで書いていたというイメージでしょうか。 それと同じ図形を2B鉛筆で描いたらどうでしょうか? 演奏者一人ずつの丸い輪郭線は 太くなり微妙なグラデーションが加わり、更に指先で均すように擦ってみたという感じ! 漆黒の輪郭線は微妙にぼやけ、隣り合う奏者とも空間で響きの交換と調和が計られ、 合計26人のヴァイオリン奏者が発する余韻感が混然一体となって響き渡る美しさ! この私にして、こんなボストン交響楽団の弦楽を聴いたのは初めてという驚き。 当然のように、その作用は管楽器にも表れ冒頭の弦楽五部の合奏と相まってステージ 上手から湧き起るトランペットの爽快な響きに何のストレスも感じない透明感というか 滲みと雑味が払拭された新種の音色となって私を納得させてくれた!これ素晴らしいです! 更に木管楽器では空間にポツリと孤立していたことを音像の鮮明さと解像度の良さ として認知してきたものが、その軽やかな響きは空中を伝搬してステージの天井に 向けて拡散していく有様にうっとりする! 2Bという芯の硬さがちょうどいいのか! 中盤から展開する第二主題の弦楽がゆったりとうねり、木管楽器のパートがフレーズ ごとに切り替わり、音量を抑えたトランペットが再度登場してホールを満たしていく 充実感に今までになかったオーケストラの素晴らしさがG1Xによって発見出来た喜び! 今一度言いますが、オーディオ信号とは無縁のはずのMaster Clock Generatorによって オーケストラにもたらした変化に圧倒され、近代録音によるマーラーを続けて聴くことに! ■マーラー:交響曲第五番 嬰ハ短調 第一楽章 フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 https://www.kinginternational.co.jp/genre/hmm-905285/ 第一番の第二楽章でトランペットの質感における激変を力説していたのだから、 この課題曲でも当然チェックしたいポイントであることは言うまでもない。 G1でシャープペンと例えたトランペットが始まった。これは承知の音…。 配線を切り替える私の頭の中では既にG1Xでどう変化するのかを予測していた…。 「お〜! こうなるのか! マスタークロックの威力とは、ここまでやるか!」 本稿で述べた課題曲だけでなく当然他の曲も多数聴いてきました。 それらで感じたことは2B鉛筆の比喩にならうもので方向性としては確認出来て いたと思っていたのですが、この時のオーケストラではMaster Clock Generatorと いう存在感の大きさを見直さざるを得ない驚きだったのです! 真鍮製の磨き上げられたトランペットのイメージはG1でも爽快な音色として しっかりと描かれていましたが、ゴールドブラスと言われる銅85%と亜鉛15%で 作られた楽器のように光を反射して輝く音色であったと思います。これも悪くない。 それがG1Xでは銅と亜鉛にニッケルを加えた洋白という素材で、渋い銀メッキで 作られたトランペットのように、きらきら輝くというよりは軟らかく芳醇な響きと いうイメージで透き通るような質感で響き渡る爽快感に感激してしまったのです! 冒頭のトランペットから数舜後、叩き出すようなオーケストラのフォルテを経て ゆったりとした主題を繰り出す弦楽器の感触が堪らなく美しい! これはいい! 前曲のボストン交響楽団はフィリップスレーベルの録音で弦楽重視の感があり、 スタジオでのマスタリングで施されたリバーブのあり方を私は好意的に見ていました。 それに対して、このCDは2017年のセッション録音であり、ロトがマーラーを振った シリーズ他のようなピリオド楽器ではないので、当然金管楽器も現代の楽器で豊かな 音量感に支えられたもの。しかし、スタジオワークでの音の演出は大変に少なく控えめ。 H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acousticにしか出せない低域!! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1481.html オーケストラのセッションレコーディングにおける価値観を上記にて述べ、 更に重たい低音を軽く出すというHIRO Acousticの魅力を述べていました。 それと同じ課題曲において、前曲のマーラーで述べたように弦楽器と管楽器の 両方ともに絶妙な力感と美しさをGrandioso G1Xが引き出したということは もちろんだったのですが、更にセッションレコーディングという無観客による 録音環境によって微小な低域成分に関しても格段の美意識と表現力を有している という事が分かったのです! コントラバスのピッチカートの低音が実に鮮明であり新鮮だった事から始まり、 グランカッサを軟らかいヘッドのマレットで穏やかに細かく連打することで、 その打音はゆったりと続く、たゆたうような低音をホール全体に響かせる素晴らしさ! その情景がHIRO Acousticによって克明に再現され、私の周辺の空気に心地よい 波動感をもたらしたということに心から感動してしまいました! この重低音の弱音での響き方、それは正に2B鉛筆の丸まった芯を斜めにして軽く 画用紙に当てながら、細かく擦るようにうっすらとした黒鉛による音のカーテンを 紙の上に描いてくれたということでしょう! これはシャープペンでは出来ない! Master Clock GeneratorのX化、オーディオ信号が流れるものではないので、 一見地味に見える分野ではありますが、新世代をXとするならば開発研究の 成果としてGrandiosoシリーズのX化にこそハイエンドオーディオの血統をつなげる 真の目的があったのだと実感したのでした! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ESOTERICにおけるX化の歴史とは…、同社のハイエンド志向というものに私が 携わってきた歴史と同じくすると考えると1997年12月27日に私の元に届いた 下記にて述べている歴史的名器P-0から始まったものと思い出される。 随筆「音の細道」第44話「Standing ovation」 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto44-1.html そして、その志向を継続し第53話「VRDS-NEOの覚醒」へとつながっていった。 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto53.html http://www.dynamicaudio.jp/file/060906/oto-no-hosomichi_no53.pdf 既に読まれた方も多いと思うし、これも長文なので抜粋にて述べていきたい。 冒頭の1ページにてNHKの人気番組プロジェクトXを引用しているが、思えば ESOTERICのX化の源流は既に17年前に存在していたのだと! 本稿の長文化を少しでもセーブしたいので引用は避けるとして、是非34ページからの 「挑戦への勇気」がもたらしたもの を再読して頂ければと思います。 そして、ここだけは引用してもお伝えしたかった事が次の一節です。 「2002年10月8日、当時33歳だったある人物がハルズサークルに入会登録されました。 その方は…!? 姓:加藤 名:徹也 フリガナ:カトウ テツヤ 勤務先名称:ティアック(株) そうです、本随筆の第一部でご紹介している P-01 の開発リーダーである 加藤徹也 氏その人です。」 上記でもハイエンドオーディオの血統をつなぐ…、と表現しましたが、現在に おけるESOTERICのこだわりと情熱が前述の歴史として今につながっていなければ 価値がないものです。そして現在では… エソテリック株式会社 取締役 開発・企画本部長 加藤徹也 ESOTERICの歴代の開発者たちの思いを受け継ぎ、この立場においてGrandioso シリーズを更に進化させているキーマンの存在を私は最後にご紹介したいと思いました。 ESOTERICの新製品も、GrandiosoシリーズのX化においても、当フロアーにて私と 一緒に音質確認をして頂いた来た同志意識があることを誇らしく思っています。 更に今後に控えるGrandioso M1XのX化でも同様な取り組みをしていくことでしょう。 Grandioso G1Xのパフォーマンスはしっかりと受け止め確認致しました。 それを忠実に日本中のオーディオファイルの皆様に実体験して頂くこと、 最後に私の使命を再確認して締めくくりたいと思います。 |
担当:川又利明 |
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