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H.A.L.担当 川又利明
    
2020年12月14日 No.1641
 H.A.L.'s One point impression!! - Soulnote P-3 & S-3

半年前からiPhoneを使い始めた私ですが、その用途はもっぱら音楽鑑賞です。
ゲームでもSNSでもなくAirPodsを耳に挿して、歩いている時や通勤電車に乗っている
時などはずっと音楽を聴いています。

今でこそApple Musicのライブラリーは相当な曲数がたまっていますが、
使い始めの頃は10代の頃に聴いた洋楽の懐メロをSiriの音声検索で探しては
コレクションに追加していくのが面白くて仕方なかったものです。

10代の頃はロック、ポップス、ジャズなどなど当時はFENと言っていたFar East
Network(極東米軍の極東放送網.1997年にAFNに改称)や普及してきたFMステレオ
放送などラジオを通じて音楽をむさぼっていたものです。

ゾンビーズ、スリードッグナイト、ニール・セダカ、CCR、ミッシェル・ポルナレフ、
レオ・セイヤー、ラムゼイ・ルイス、ザ・モンキーズ、バッドフィンガー等々、
実に多数の洋楽を検索しては当時では考えられなかった高音質で聴けるのですから、
青春時代に聴いていた音楽をiPhoneで聴けるようになったのは大げさに言えば
私の人生の一大変革というものでしょう。

そんな洋楽懐メロの一曲として私がSiriで検索したのがEric Carmenの「All by myself」です。

1975年の曲ですから既に45年も経っていると改めて10代の当時の自分を思い出して
しまいました。お若いハルズサークル会員の皆様はきっと知らないでしょうね。
今はラジオではなくネットの時代というものでしょうから…こんな曲です。

https://www.youtube.com/watch?v=iN9CjAfo5n0

https://www.youtube.com/watch?v=lLdSx9Abdy4

そして、つい最近知ったことなのですが、この曲はセルゲイ・ラフマニノフの
ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18第二楽章を元にして作られたとは驚きでした。
45年前の私はラフマニノフなんて名前も知らなかったと思います。

さて、つい最近お客様に教えて頂いたKHATIA BUNIATISHVILIというピアニストの演奏に
感銘を受けて彼女のCDを数枚買いこんだのです。その中に下記の二枚があります。

https://www.dynamicaudio.jp/s/20201213143940.jpg

この写真の上が次のCDです。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/khatiabuniatishvili/discography/SICC-40072
こちらの方が¥1,600.と安いのですが下記の企画によるものでした。
極HiFi CDという仕様になっていました。これを以降「極HiFi盤」と表記します。
http://www.bestclassics100.jp/

同じラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ですが、下が日本盤のみBSCD2仕様という
下記のCDです。これを以降「BSCD2盤」と表記します。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/khatiabuniatishvili/discography/SICC-30427

あのEric Carmenの「All by myself」の原曲を聴いてみよう、しかも音源は同じでも
仕様の異なるディスクと言いながら、両者ともに高音質を謳っているディスクなので
その違いとはいかなるものか、私の好奇心はぐっと加速してきたのでした!

その試聴にこそ使ってみたかったのがこれです!

■H.A.L.'s Sound Recipe / Soulnote P-3 & S-3 inspection system
https://www.dynamicaudio.jp/s/20201213143951.pdf

やはり付属品の木製ボードは使わずSoulnote P-3とS-3は下記のようにセットしました。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20201213143909.jpg

Soulnote S-3に関しては既に下記にて私なりに分析した特徴を述べていました。

H.A.L.'s One point impression!! - Soulnote S-3 vs ESOTERIC K-03XD
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1621.html

オーディオにおいて電気信号を機械的信号に変換するスピーカーや光信号を電気
信号に変換するCDプレーヤーもトランスデューサー(変換器)と言えます。

よって、ある種類のエネルギーを別のものに変える装置なので、変換の前後では
エネルギー様式が異なるものであり、各々の同一性を定義することは中々に困難と
言えるものです。

そこに特徴があるわけでハイファイという範疇の中であれば、機器の個性という
肯定的な見方で個人の趣味における選択肢として楽しむことが出来ます。

そのような発想で上記二社のCDプレーヤーを比較したわけですが、入出力ともに
電気信号であるアンプという事では測定できる音楽信号の波形という厳然たる
根拠があり、入力と異なる波形が出力された場合には歪として認識されます。

しかし、ハイファイオーディオの場合には信号波形の相似性という事だけでは
音質の違いを証明できない要素もあり、アンプの能力と個性という事では耳で
聴いた上での価値判断ということになります。

私が当フロアーで検証するSoulnote製品の第二弾としてプレーヤーとプリアンプを
リファレンスシステムに組み込んでの試聴ですが、これは最終結論ではありません。

Soulnoteというブランドの最終評価はパワーアンプの登場を待ってのものであり、
今回は序章というべきトライアルであることを最初に述べておきたいと思います。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、例えば第一楽章冒頭の和音の連打部分において、
ピアニストは一度に10度の間隔に手を広げることが要求されており、ピアノの難曲と
して知られ極めて高度な演奏技巧が要求されるという。

先ずは誰もが聴いたことがあるというほどに知名度の高い第一楽を値段の高いBSCD2盤で聴く。

ゆっくりとした和音連打をクレシェンドし続けながら打ち鳴らし、それが最高潮に達した
ところで主部となる聴き慣れた旋律を耳でトレースして懸命に記憶する10分間とした。

そして、冒頭部を再度リピートさせて記憶を固めてから値段の安い極HiFi盤で聴くと…

「うわ! 何これ! ピアノの質感が激変! 特に左手で弾く音色が違いすぎ!」

冒頭の和音の連打部分からして全く異なるピアノに絶句する。こんなに違うのか!
印象的なのは低音階の打鍵での鋭角的かつ躍動感ある質感へと変化したこと。

ピアノの低音弦における振動は指で触れたら弾かれそうな勢いであり、更に目に
見えるほどの鮮烈さで響き渡る力強さと鮮明さに驚いてしまったのです!

うねるようなオーケストラの旋律が眼前の空間で躍動し、始まりは主役がピアノで
ありながら弦楽部と伴奏を入れ替わるような主題の更新により女性ピアニストとは
思えないようなダイナミックな演奏が展開していく。

私が冒頭のピアノで感じた極HiFiでの変化は低音弦の迫力という要素にも関係し、
オーケストラのトゥッティがロシア的な性格の旋律を歌い上げ、その間ピアノは
アルペッジョの伴奏音型を取り交ぜながら進行していく。

そのオーケストラの重厚感が管弦両方の演奏に感じられ、しかも両者の分解能を
高めていることを私の耳にこれでもかと突き付けてくるような説得力を発揮した!

Soulnote S-3がピッアップしてアナログ化した過程において、ディスク仕様の違いを
ここまで引き出したという確証を実感しつつ、正にパワーアンプを駆動するという
位置付けにおいてSoulnote P-3が果たした役割という両者の共同作業において、
音源への忠実度を極めるという作業を私は目の当たりにした。正に極HiFi盤だ!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、次はAll by myselfを探しに行こうということで第二楽章を先ずはBSCD2盤で
聴き始めた。力強く盛り上がった第一楽章とは対照的に情緒的かつ緩徐的な弦楽
合奏から始まる旋律が美しい。Eric Carmenはこれをモチーフにしたというフレーズを
時折り見つけては感動し、比較対象をしっかりと記憶に刻みながら次の展開に期待
しつつ聴き続けた。

そして、極HiFi盤に入れ替えてS-3のリモコンを手にしてセンターポジションに戻る。

「おいおい、今度は冒頭の弦楽合奏から…、いや管楽器も、更にピアノもだ!」

ピアニシモの弦楽合奏がゆったりと始まった時、その空気感が変化したことに気付く。

清浄化された空気により楽音の透明感が高まったという印象で、弦楽五部の各パートの
精密さが向上し響きの要素が鮮明に感じられるという美点が素晴らしい!

気が付かない程自然なクレッシェンドによる神秘的な弦楽序奏が美しい和音を展開し、
ピアノがゆったりとリラックスした音色で入ってくるが、その響きの鮮明さが向上し
後方でのコントラバスのピッチカートの響きに融合するかの楽音のシナリオを空間に描く。

そのシナリオはAll by myselfのフレーズに寄り添ったものかと思っていると、
その上からフルートの甘美で息の長いメロディーが入ってくる。

その後、最初フルートで奏でられたメロディーがクラリネット、ピアノ、
ヴァイオリンへと受け継がれていく過程において、All by myselfのフレーズの
一部が交代制で演じられていることに気が付く。

Eric Carmenの創作に感心しつつ私は上記の管楽器の各パートにおける音像の鮮明さが
ディスクを変えたことで大きく向上していることに同時に気が付き、質感の向上は
同時に残響成分の時間延長とも言える空間表現の拡大という視点でも感動してしまった!

わずかにテンポが上がり、ピアノが第二主題を思い悩むかのように短調で奏でる。

ファゴットや低弦、更にフルートとオーボエなどと絡み、ピアノがメロディーを
奏でて盛り上がる過程において、このシステム構成における情報量の素晴らしさに
改めて納得と感動にひたりながら45年前の名曲と頭の中で擦り合わせていた自分に気が付く。

その後ピアノソロになりテンポも上がり華やかな分散和音の後に再度オーケストラと絡んで、
ピアノのカデンツァへと進み、その上で最初のメロディーをヴァイオリンが奏でて再現する。

このヴァイオリンに音色は更に磨きがかかり、音像は鮮明になるし余韻感は向上し、
終焉部のピアノの右手が和音を波のように揺れて奏でながら、最後はピアノだけで
優しく静かにまとめる。この最後のピアノの響きの消え方が素晴らしくいいのです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、ここで下記Soulnote P-3の取り扱い説明書9ページをちょっと見て下さい。
https://www.kcsr.co.jp/image/SOULNOTE/p3_usermanual.pdf

[8]GNDスイッチをSEPARATIONにするとSoulnote P-3の電源インジケーターはブルー
https://www.dynamicaudio.jp/s/20201213143919.jpg

CONNECTIONにするとP-3の電源インジケーターはレッドとなります。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20201213143930.jpg

このスイッチによってどう音が変わるのか、当然私は実験してみました。

すると、前述の表現を借りればSEPARATIONは極HiFi盤、CONNECTIONはBSCD2盤と
言えると思います。結果的には極HiFi盤の音質が何と言っても素晴らしいのです。

私はなぜ[8]GNDスイッチをわざわざ付けたのか、SEPARATIONが音質的に良いならば
必要ないのではと設計者の加藤さんに質問したのです。答えは簡単でした。

「私の理論を証明したかったからです!」
https://www.kcsr.co.jp/detail_p3.html

ソースコンポーネントは変換器であると述べましたが、アナログ信号の根源を
先ずは3シリーズで完成させ、それを引き継ぐ3シリーズのプリアンプを開発した。

この両者の開発と完成を当フロアーで検証し、H.A.L.レベルであると確認しました。
そのコンビネーションでの質的調和は言うまでもなく、現時点で他社コンポーネントとの
組み合わせに関しても推薦できる音質です!

私はSoulnoteの3シリーズへの発展に関して、設計者の理想追求という執念とも
いうべきこだわりのコメントを多数拝聴してきました。

それはSoulnoteというブランドネームの根底にある思想が新しい物作りのステージに
到達したという近未来への期待感でもあります。

H.A.L.にしては低価格!? いや、失礼。良いものは良いと価格にこだわらずに
推奨していく私の主義に一致したブランドがまたひとつ発見出来たのです。

Soulnote、すなわち魂の音。
今後の製品開発に期待しつつ現行製品の音質を推薦します!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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