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H.A.L.担当 川又利明
    
2020年11月20日 No.1638
 H.A.L.'s One point impression!! - Siltech Crown Series

H.A.L.'s One point impression!! - Siltech Triple Crown Series
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1631.html

総額¥25,500,000.という規模のTriple Crown Seriesは上記のように素晴らしい
音を聴かせてくれましたが、本文にもあるように戦略的には下位モデルの
Crown Seriesがセールスの本流となると考えられます。

何分にもTriple Crown Seriesの高額なシステム構成と比較すると、Crown Seriesが
安く思えてしまうものですが、それでも結構なお値段であることに変わりはありません。

そこで極力前回同様な下記のシステム構成にて限られた時間ですが試聴することが
出来ましたので、絞り込んだ選曲での印象をまとめてみました。

■H.A.L.'s Sound Recipe/Siltech Crown Series-Inspection system
https://www.dynamicaudio.jp/s/20201115174614.pdf

特定の楽音を注視しての分析は前回散々行ってきましたので、今回は全帯域で
定番の課題曲を最初に聴き第一印象を探ってみました。

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団

今回はシグナルパスの二か所にSiltech Crown Seriesを使用したものであり、
同社の個性と魅力がどの程度発揮されているのかということは、あくまでも
私の過去の記憶によるシステム構成との比較であり主観であることを最初に
述べておかなくてはならないと思います。それを前提にしても…

「いや〜、冒頭の弦楽五部の合奏の音色は何と美しい事か!」

スタジオ録音の鮮明な楽音に対する各論として相違を述べるには時間が足りないが、
このオーケストラの合奏部を聴いた瞬間に品格として素晴らしい素質のケーブルで
あると納得させられてしまいました。

私はケーブルの吟味に当たり極小の音像と広大な音場感という相反する要素を
重要視すると繰り返し述べてきましたが、このオーケストラの質感を一聴して
個々の楽音の分離感よりも音色という美点に惹き付けられてしまいました。

それは管楽器の音色にも当然言えることであり、特に金管楽器の質感が解像度を
維持しながらも極めて精密かつ滑らかな響きが快感とも言えるほどで良いのです!

4分を経過したあたりから第二主題の旋律が弦楽によって奏でられる頃には、
Siltechの持ち味として例えられる色艶の素晴らしいヴァイオリンが冴えわたり、
流れるようなメロディーの中に精緻な弦楽器群が一定の広さとして面で感じられ、
その集合体に異なる弦楽器の音色が多数存在している響きのレイヤーが美しい!

今回は分析的な聴き方というよりはオーケストラの演奏の流れに沿って自然体で
私は音楽そのものを受け止めていた…、というよりも空間における楽音の調合と
いうか響きの一体感として広大なサウンドステージを目の前に見ていたと言えます!

そんな響きの美しさを念頭において次の課題曲へと進みました。

■Espace 溝口 肇 bestより「1.Espace」「2.世界の車窓から」「10.Offset Of Love」
http://www.archcello.com/disc.html
http://mizoguchi.mystrikingly.com/

この三曲は近年では欠かせない指標となる楽音の集大成であると感じているものであり、
一枚のCDに記録されている各トラックでのチェロという楽器の質感が曲ごとに大きく
異なり個性をもって収録されているからです。

「1.Espace」のソロ演奏のチェロは今まで述べてきたシステム構成による差異が
ここでも表れているのですが、前述のオーケストラによる響きの調合という視点が
ソロ演奏の醍醐味として雄大に展開する響きの拡散領域の素晴らしさに息をのむ!

「2.世界の車窓から」はイントロでのキックドラムの迫力に先ずは合格点をつけ、
背景となる多数のパーカッションの切れ味に納得し細かい粒子となって展開する
伴奏楽器の情報量の素晴らしさに思わず膝を打ってしまいました! これはいい!

「10.Offset Of Love」冒頭のギターの存在感はクローズアップした迫力という
よりは一歩引いて距離を保ち、やがて登場する他の伴奏者と同じテンションと
スケール感を配慮しての響きと察する。

センターからのベースと遠近感をもったチェロの濃密な響きと、周囲に展開する
残響成分が心地よい空間を再構成するかのように、オーケストラで感じ取った
響きの調和がスタジオ録音でも見事に感じられる。これは素敵ですね〜!

その余韻に浸っていたら次のトラック「12.Shadows and Light」が始まってしまった!

1994年にパリのArtistic Palaceで録音された曲であり、冒頭から荘厳な響きの
シンセサイザーが背景を作っていく。

その後に今までに例のない深く長いリバーブによって重厚な響きを醸し出す演出による
溝口 肇のチェロが登場する。待てよ、この雰囲気は…、そして更に聴き進むと
どこかで聞いたような女性ヴォーカル、いや、これは歌ではなくVoiceだろう…。

ここではっと思ってブックレットのクレジットを見ると、ピアノとボイスの欄に
Yoko Kannoと記されているのを見つける。

Yoko Kanno…、どこかで聞いたような名前とその声、何だっかな〜と考えつつ
演奏が進むうちにひらめいた! そう、あの映画の世界観と似ていると!

ここでネットで調べてみると…、溝口 肇の元妻 菅野よう子(Yoko Kanno)だと!
https://www.grandfunk.net/people/yoko-kanno/
https://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/-/Artist/A008451.html

そして、あ〜、あれだったのかというのが攻殻機動隊-Stand Alone Complex-です!
あのイメージを私は感じ取っていたのです!(知る人ぞ知るという映画ですが)

この曲では三人のパーカッショニストが参加しており、シンセサイザーの作る
深々として広大な空間イメージと、長く深いリバーブの残響を引くチェロ、
ギターとピアノが時折中空の一点で軽やかに響くパートも絶妙であり、それらの
大きな空間表現の中でパーカッションが細やかに多彩な響きで展開される!

後半ではSidney Thiamという男性のVoiceがエスニックな口調でのスキャットを
左右チャンネル間に渡り展開し、チェロのメロディーの合間を絶妙の持ち味で
埋めていくアレンジが素晴らしいのです!

オーケストラで感じ取っていた空間での音色と響きの調合という印象が、このCDで
今まで取り上げなかった一曲で抜群のマッチングで演奏され、Siltech Crown Seriesが
伝送しているアナログ信号のテイストに見事なテイストを感じ取っていたのです!

楽音の分析という各論ではなく、演奏の全体像が俯瞰出来るように適度な距離感を
リスナーに提供し、スピーカーから放射された音波が空間で調合され響き合うと
いう再生音の醍醐味として、一つの世界観を私はSiltech Crown Seriesに感じました!

私が推薦できるケーブルは一つの方向性だけでなく、別の価値観というものを
Siltechに教えてもらったということでしょう! さあ、これからが楽しみです!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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