発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2020年9月23日 No.1621 H.A.L.'s One point impression!! - Soulnote S-3 vs ESOTERIC K-03XD |
H.A.L.レベル認定! このプレーヤーはただものではない! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1614.html H.A.L.'s One point impression!! - Soulnote S-3 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1618.html 上記の最後の一節を再度ご覧下さい。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 今日の段階では128万円のSoulnote S-3に対してマスタークロックジェネレーター ESOTERIC Grandioso G1は190万円という非常識な組み合わせでしたが、近日中に 私はもっと現実的で妥当な組み合わせのもとに分析的な比較試聴を行います。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- この試聴システムが準備出来ました!このセッティングです! https://www.dynamicaudio.jp/s/20200918161408.jpg この比較試聴システムは下記にて詳細をご覧下さい。 H.A.L.'s Sound Recipe / Soulnote S-3 vs ESOTERIC K-03XD inspection system https://www.dynamicaudio.jp/s/20200918161348.pdf 前回マスタークロックジェネレーターを接続して激変したSoulnote S-3ですから、 今回も当然のごとく47万円という価格のESOTERIC G-02Xにて10MHz正弦波を注入します! そして、K-03XDには新型メカVRDS-ATLASが搭載され、更にESOTERIC独自の電流 伝送方式ES-LINK Analogも搭載されています。これと対抗してどうなのか!? さて、上記のシステム構成一覧にて語られていない項目を確認のために記しておきます。 先ずSoulnote S-3に関しては付属木製ボードは使用せず、二種類ある付属品フットの スパイクを取り付け、再生モードは設計者のデフォルトというNOS(ノンオーバー サンプリング) モード、ディスプレーは全て消灯状態にて試聴。 K-03XDでは私の選択にて16fsにてアップコンバートし705.6KHzにて再生、そして 当フロアーにて約80時間以上のバーンインを行いディスプレーは全て消灯状態にて試聴。 奇しくも両者の開発責任者はお二人とも加藤さん、それぞれにネット上で解説を しているのでこれも参考のために紹介しておきます。 ■Soulnote開発者による解説 https://www.kcsr.co.jp/soulnote.html https://online.stereosound.co.jp/_ct/17390474 ■ESOTERIC K-01XD & K-03XD 紹介動画 https://youtu.be/4-4jokt8KoI 両者ともに開発における情熱と技術論を駆使しての解説ですが、 Hi-End Audio Laboratoryとして私に何が出来るのか!? それは開発者たちも経験した事のないグレードの音質で、彼らが知り得なかった 自身の開発結果を私の耳と感性にて音として表現し評価することです。そして、 その結果を私なりの言葉として皆様に情報提供していくことです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 上記のような心構えで試聴を開始しましたが、今回H.A.L.にしては低価格? という両者を取り上げたのは、先ず私は高額商品だけに依存しているのではなく 価格に関わらず良いものは紹介し推薦していくという基本方針を再度示しておき たいということがあり、そこにSoulnoteという14年前に創立したブランドの 個性的な新製品が私のレーダーに引っかかったという事なのです。 しかし、この個性とは何かを知らずして語ることはしたくないので、今回は同価格帯 という土俵を作り、そこでの比較によって個性を浮き彫りにしようと試みました。 そして、同価格帯と言えば、まだ他のブランドの製品も複数あるのですが、今回は 当フロアーのリファレンスであるESOTERICを軸足に据えることで判定がしやすく なるだろうという思いがあり二者に絞り込んでの研究的試聴を行うことにしました。 これを読まれた各社が同様にH.A.L.にて自社製品を試聴評価して欲しいという お申し出があれば前向きに検討させて頂きますし、別に上から目線で言っている のではなく謙虚な姿勢で対応させて頂きますので誤解なきよう追記致しました。 従って、私はその土俵にて二者を競わせるわけですが、どちらかに軍配を上げる のかということを結論とするつもりはありません。 その意味では今までのインプレッション記事のように特定商品一つだけを語るの ではなく、今回は二者の比較による勝敗決定が目的ではなく、比較することで 両者の魅力を掘り起こしていこうとするものです。さて、話しを戻しましょう。 以降は二機種をブランド名のみで表記致します。また試聴の流れとしては最初に ESOTERICを聴き、その次にSoulnoteで同じ曲を聴くという順番にしています。 また、Soulnoteの出力電圧がESOTERICより若干大きいので曲によって私の判断で 微妙なボリューム調整を行っています。 H.A.L.'s One point impression!! - ESOTERIC Grandioso C1X https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1612.html そして、この段階を述べておきますが、上記ではES-LINK Analogの素晴らしさを 繰り返し語っていますが、ESOTERIC K-03XDにも搭載されているものです。 後述する多数の課題曲でも確認のためにES-LINK Analogによる試聴を行っていますが、 これはESOTERICでの特定製品のみしか組み合わせることができないので、今後の 試聴に関しては両者ともに通常の電圧伝送XLR(2HOT)接続のみでの比較としています。 さて、それでは最初の課題曲はこれです。 ■石川さゆり「天城越え」よりトラック2の「朝花」 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2012/11/06/15333.html このギターバージョンの「朝花」は左右に二本のアコースティックギターと センターに素晴らしい歌唱力のヴォーカルというシンプルな編成の録音です。 後日に発表する某社の新製品ケーブルの開発過程で私が試聴に使用した経験から、 先ず楽器の数が少ない録音からと今回の比較試聴の最初の課題曲として採用しました。 先ずは第一ラウンドとして軽くESOTERICからSoulnoteでと続けて聴いてみると… 「参ったな〜こりゃ! 予想と違うぞ!」 さらっと一回聴いた時の第一印象がこれです。両者ともに素晴らしいのです! 私が今までに行ってきた試聴では開発中のケーブル、インシュレーターなどの アクセサリー関係など、コンポーネントはそのままで微妙な音質差を追求していく ということが多く、アナログ信号の最上流というプレーヤーそのものを比べれば もっと大きな違いが最初から見えてくるものだと思っていたのですが、予想とは 違い両方ともに僅差でありH.A.L.レベル認定というパフォーマンスで始まったからです。 しまいにはES-LINK Analogでも聴き、どこかに違いがなければならないと分析力と 集中力を高めながら、想定外のスタートから私はこの曲を10数回繰り返して聴いて しまいました。その結果、聴き込むにつれて二者の違いが次第に解ってきたのです! 先ず過去の試聴でも散々述べてきた音像サイズについてはESOTERICの方が小さく 凝縮されたフオーカスを結びます。しかし、Soulnoteの音像がぼやけているとか 曖昧であるという事ではありません。HIRO Acousticではそれが解ってしまうのです。 次にギターの質感に関しての違いとして、SoulnoteはギターのE線からA線にかけての 太く低い音階の弦がエネルギッシュに音量も大きく聴こえ、その傾向もあってか 低音階の音像も僅かに大きくなります。ESOTERICでは六本の弦すべてが均等な エネルギー感という鳴り方で音像サイズも音階によって変化することはありません。 更に音場感の造形における傾向としては、以前にも使った例えですが、目の前に 浮かぶ音像と残響の消え方を山の形としてイメージしてみると、ESOTERICは富士山型と いうことで、なだらかな傾斜の稜線が広がる裾野の広大さを思わせる余韻感の存続性が 印象に残りました。 それに対してSoulnoteはアルプス型と例えられる傾向で、残響の消え方は傾斜が 急な角度で減衰していくようで、音像を取り巻く余韻成分はESOTERICに比べると 淡泊であるように感じられます。多分ESOTERICは16fsという高いレベルでのアップ サンプリングをしていることに対してSoulnoteのNOSとの比較による違いかと思いました。 いずれにしても、第一曲目で感じた事は両者の特徴を私なりにデフォルメして 述べているものであり、それほど大きく極端な違いではないと言い添えておきます。 しかし、この一曲をしつこいほどに繰り返して比較することで、私の頭の中には 次第にある仮説が浮かんできました。その仮説とは、この後に聴いていく課題曲に おいて、どのような相違点が見えてくるかという音質的な傾向の予測というものです。 最初の一曲目で感じ取った音像サイズ、楽音の質感、音場感の造形という三項目は 果たして今後に続く多彩な選曲において、どのような特徴を見せていくのかという 指標と評価のパラメーターとして設定することが出来ました。 ■Espace 溝口 肇 bestより「1.Espace」「2.世界の車窓から」「10.Offset Of Love」 http://www.archcello.com/disc.html http://mizoguchi.mystrikingly.com/ このベストアルバムは各曲ともに異なるレーベルでのリリース曲を集めたものであり、 年代も違う各国のスタジオで収録され、各々で伴奏ミュージシャンも違うし録音 エンジニアもばらばらで、楽曲としての成り立ちだけでなく録音センスも一曲ごとに 違うという面白いCD。 演奏する音階に関係なくチェロの音像サイズが小さい順では「10.Offset Of Love」 次に「2.世界の車窓から」そして「1.Espace」が最も大きな音像として聴こえる。 更にチェロとの遠近感という観点では手前に張り出してくるような至近距離で 聴こえるのは「1.Espace」であり、伴奏楽器と横並びの遠近感ということでは 「2.世界の車窓から」となり、そして「10.Offset Of Love」におけるチェロは 伴奏楽器よりも奥深くに位置する遠近法が感じられる。 「10.Offset Of Love」は1991年にパリのスタジオで収録された。これを最初に聴き、 次は1997年にロンドンのLiving Stoneスタジオで録音された「2.世界の車窓から」、 最後に1988年ニューヨークのMedia Soundスタジオで収録され、名手Seigen Onoが レコーディングした「1.Espace」を聴く。 特にこのディスクは最近のケーブルやコンポーネントの評価に多用するようになり、 チェロという楽器は録音センスによって音像サイズが大きく変化する事を注視している。 ホール録音などではチェロが演奏する音階が高くなると音像は小さくなり、 反対に低音では音像が大きくなるという傾向がスピーカー再生ではよくあること。 ところが、このディスクではスタジオ録音として楽器ひとつずつの鮮明さが大きな 前提となっていますが、チェロの音像サイズに関しては上記のホール録音のような 傾向は見られず、各々きっちりとトラックごとにコントロールされているのです。 ESOTERICで「10.Offset Of Love」を聴く。ある意味でGrandioso P1X+D1Xという 同社のフラッグシップモデルで聴いてきた傾向と同じなので聴き慣れた感じ。 Soulnoteで聴く…、おや!? これは!? この感じ設計者の加藤さんは知ってか知らないでか! 前述のようにチェロの音像は遠くに感じられ、スタジオ録音にして遠近感を持たせた 空間表現としてチェロの音像サイズは小さく表現しているというのが以前からの 私の分析であり、それは上記のようにESOTERICのソースコンポーネントにて感じて きた印象だったわけです。それが正しいとばかり思っていたわけですが…。 「いや〜、このチェロの表現いいです! 素敵です! 美しいです!」 前曲ではSoulnoteの音像サイズは多少大きめという評価をしていたわけですが、 楽音の数が増えた事と遠近感という録音センスの表現法が違う事、そして何より チェロという楽器の歌わせ方というか鳴らし方に関して、その質感がすこぶる 聴き手の感性を揺さぶるというSoulfullな音なのです! 音像サイズを測るゲージが私の耳と感性には備わっているのですが、この曲で聴く チェロの音像は水平方向に残響を広げるという傾向を持っています。それは音像の 輪郭が曖昧になるかどうかという微妙な一線ではあるのですが無難にこなしています。 その上でSoulnote独自の調味料の配合があるのか、その音色の何とも魅力的なこと! 口当たりの良い味があり耳当たりの良い音色があるとすればズバリこれでしょう。 艶やかに響き滑らかに展開するチェロの質感に私はぐっと惹き付けられました! 絵画における遠近法の描き方として遠くのものは輪郭と色彩感をぼかすという 手段がありますが、Soulnoteは音楽においてそれを見事に描いているのです! くっきりとした輪郭の音像でも他の楽器と比べて音量を下げれば遠くに感じられます。 しかし、それに加えて原色ではなく微妙な白、または黒を調合してチェロの音色に 絶妙なぼかし効果を施したら風景画の遠くの樹木の描き方のように遠近感が高まる。 言葉の綾でぼかし効果と言いましたが楽音が濁っているということではないのです。 しっかりと透明性のある響きであり、左右に広がっていく残響に濁りは微塵もない。 演奏の主役を距離感をもって表現する時のSoulnoteの魅力として1ポイント! ESOTERICで「2.世界の車窓から」を聴く。続いてSoulnoteで聴く。 おや!? これは!? そこで私がやったのはESOTERICでもう一度聴き直すということ。 「これはお見事! トップモデルと同格のESOTERICの血統がこれでしょう!」 先ず冒頭のキックドラムの質感の違いに驚くと共に私の仮説が証明されたという 出だしの分析でした。実に引き締まり重量感もあり鮮明な輪郭のキックドラム! その低域の解像度と素晴らしい描写力は次の瞬間に登場するエレキベースでも 証明され、極めつけの音像の凝縮と濃密感、そして重量感の素晴らしさが凄い! また、金物のパーカッションの鮮やかさ、ドラムのタムがヒットした際の抜群の テンションの高まりなど複数項目で私が信頼するESOTERICの真価を確認した! その後に登場したチェロが何とも凛々しくセンターに立ち上がり、克明な再現性が 弦の摩擦感まで引き出すかのような素晴らしい分解能を音像の中身として提示する! 伴奏楽器と横並びの遠近感ということでは「2.世界の車窓から」と前述していますが、 ここでは音像サイズが絞り込まれることと輪郭表現が殊更に鮮明であるという二点から、 チェロの質感が大変リアルに描かれる描写力が各音像の分離感として引き立っています! これは文句なしの出来栄えと称賛のみでありESOTERICの魅力の再発見として1ポイント! さあ、多数の伴奏楽器を伴った二曲において各々の魅力を確認してきましたが、 ぐっと接近したチェロのソロバートから始まる「1.Espace」ではどうなるのか? 先ずESOTERICで…、そう〜こういう音像だよね。上級機同様のシルエットに安堵する。 そしてSoulnoteでは…!? おや!? これは!? ここでも私がやったのはESOTERICでもう一度聴き直すということ。すると… 「なんとまあ! そういうことですか! 私の仮説にドンピシャリじゃないか!」 ぐっと沈み込む低音階のチェロのアルコが空間を揺さぶるように登場し、擦られ 振動する弦に指先で触れたら弾かれそうな強力なチェロがセンターに躍り出る! 溝口 肇の左手が素早くチェロのネックを駆け上がり、一瞬のうちに指板を捉え ビブラートを与えながら高音階へと駆け上がる数秒間の展開に目を見張る! 冒頭の低音階における演奏では前述のESOTERICの血統とも言える分解能の素晴らしさが 音像を引き締め、摩擦感を空気に乗せて伝えてくるような迫真の演奏に感動した! すると演奏の進行と共に高音階のアルコが登場してくると、何とした事か! 「10.Offset Of Love」で痺れるような魅力に惹き付けられたSoulnoteのチェロが 同じ奏者の同じ曲での進行に伴い見事にここに表れてくるのだから堪らない! チェロの質感に適度な柔軟性と解放感を与え、甘やかな弦の音色は演奏の進行に 伴い玉虫色に変化していくような多色構造の響きのレイヤーをソロ演奏に授けた! こういう音色は明らかにSoulnote独自のものであり、私は今までに経験のない 美的要素をチェロの倍音の素晴らしい拡張性の中に発見することが出来たのです! いやいや参りました! 一曲の再生音の中でESOTERICとSoulnote双方の得意とする 表現力の個性が演奏する音階ごとに、演奏者がたどるスコアーのフレーズごとに 発見できるとは予想もしていませんでした。これは聴けば解かります! ある方からチェロは人の声に最も近い楽器ということを聞いたことがあります。 この後にヴォーカルの各種課題曲などスタジオ録音の多数の再生音で上記と同じく 再生帯域や楽器の発音方式、様々なレコーディングセンスによる演奏などでも 比較してきましたが、それら全ての印象を述べることは分析結果の重複ともなり 違う方向性での選曲を考えてみました。 オーディオシステムで音楽を聴く人は好きな楽器に各々の思い入れがあるものです。 ピアノや打楽器のアタックは鋭く、こう鳴って欲しい。弦楽器や声楽は艶やかに 滑らかに、こう鳴って欲しいという期待感と先入観があるものです。 私にはそのようなことはないとは言い切れませんが、経験則の多さとレベルの高さ、 そしてサンプルとして試聴した再生音の絶対数など、人が聴いて美しいと感じ、 また多くの再生音から得られる最大公約数的な忠実再生という視点から極力 再生音に対する個人的偏見? 好みというものを排除することを意識しています。 しかし、私も人間である以上、私は良いと思っても他の人は気に入らないという事、 あるいはその逆も大いにあり得ることでしょう。 そこで人々が自分なりに認識している楽器の音という観点ではなく、客観的に 再生音に表れた変化を冷静に比較するための選曲を試みることにしました。 ビヨークが2001年に発表したアルバム「Vespertine」(ヴェスパタイン)の 6.フロスティ - Frosti (Interlude)間奏ということで1分41秒という短い曲。 https://www.amazon.co.jp/Vespertine-Bjork/dp/B00018QIPC http://www.cdjapan.co.jp/product/UIGY-7059 私が持っているのはSACDです。全12曲が収録されていますが私が使用するのは この一曲だけ。正直に言って他の曲は私にとって難解でありなじみがないものです。 ビヨークが作曲しオルゴール用にアレンジした曲で、エレキベースが途中から入って 来るのですが、文字通りオルゴールとそれをサンプリングした音源、また一部では ハープのように聴こえる楽音も収録されているようです。 これを先ずESOTERICで執拗に何回も繰り返して聴き続け、頭の中にオルゴールの ムーブメントが思い浮かぶほどに記憶してSoulnoteに切り替える! この時、DSD信号は直接にESOTERICのMaster Sound Discrete DACに送り込まれ、 またSoulnote独自のNOS(ノンオーバーサンプリング) モードは機能せずにオフとなり、 直接片チャンネル2個、合計4個使用しているDACチップES9038PROに送り込まれ、 その電流出力はType-R Circuit初段直前でIV抵抗1本により電圧に変換され出力される。 そのためESOTERICではSACDの再生レベルは通常CDに比べて約4dBほど低くなるが、 Soulnoteの出力レベルはそのまま。私はプリアンプでのボリューム設定において ESOTERICでは-23dBとして試聴し、Soulnoteでは-30dBまで絞り音量を揃えた。 キリキリと巻き上げたゼンマイのストッパーが外れた瞬間の音「ビシュン!」から始まる… 「おー!! たったこれだけの簡単な原理の音源なのにこれだけ違うのか!!」 音源である金属製の櫛(コーム)がピンに弾かれた瞬間の音、この歯(ティース)は 音階に合わせて調律されている単音階からなるひとつの音としてESOTERICでは忠実に 高音の輪郭を描き、正に空間にピンポイントで定位させ克明に再現してくる。 櫛の歯一本が弾かれた音なのに、しかもスピーカーユニットが存在しない中空の 一点に定位する音なのに、その空間にもたらすエネルギー感の豊かさを直感する! それは小さな金属の一片が連続して弾かれるということで、ピアノのように それ自身では余韻感を持たないものであろうが、巧妙なスタジオワークで施された リバーブがHIRO Acousticによって広大な音場感として表現される。 オルゴールという小さな音源をマイクで収録し録音し、それをスタジオでの作業で 空間表現が出来るように加工し、再生時には聴き手の好みで音量を上げられるので、 もとの小さな音源が拡大解釈され一種のスペクタクルとして眼前に展開する。 これをSoulnoteで聴くと微妙に隣り合う歯が共振しているのか複数の音色が感じられる。 そして何よりもピンが弾いた瞬間の音に肉厚感を感じる。これは魅力として感じるところ! そして、弾かれた櫛の一本ずつがもたらす音場感が激増するので、音場全体に 節度ある躍動感というか空気中に拡散していくエネルギーを感じる!! 単純な音源のはずであり管弦楽器のように倍音成分は含まないはずではあるが、 一種の楽音に対しての質感として音色を構成する情報量がこれほど違うとはどうしたことか! 私はこの曲をESOTERICの新作プレーヤーが登場した際に何度も聴いてきました。 古くはP-01+D-01からGrandioso P1+D1に世代交代した時にも、それがP1X+D1Xに 進化した時にも、この曲で記録されている音の質感と情報量の違いを確認して きたものだが、今回はSoulnoteによってオルゴールが空間を震わせるという体験を もって音楽の前に単純な音のエネルギー感としての個性を実感した! これはいい! これほどシンプルな音源なのに、その一音一音の描写力に厚みを持たせ、更には 残響が空間に作り出す音場感そのもを雄大に拡張するエネルギー感というものを 単純なサンプル音源となる music box によって両者の特徴を確認しました! この場で表現する課題曲に関して精巧な音作りという点でスタジオ録音の数々で 観察と分析を続け、当初感じていた仮説というものを証明出来るだけの経験値を 積み重ねてきましたが、特徴を魅力と個性として理解するために最後はやはり オーケストラを聴かなければと思い始めました。 しかし、数あるオーケストラの録音でも前述したように聴く人によっての思い入れがあり、 このオーケストラ、このホール、この指揮者、最後にこのレーベルの録音だっら こう鳴って欲しいという期待感と先入観があるものでしょう。 事実、私もここで多数のオーケストラ作品を聴くうちに上記のような各項目における個性が、 マーケティングを意識した音作りの結果として商品化され、生の録音データにスタジオでの 音質的調整が施されているということを感じ取っていたものです。 そこで私の耳で判断してオーケストラの音にお化粧や演出をしていないと思われるこの選曲! ■マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」1893年版スコアーによる第二楽章 2.花の章 https://www.kinginternational.co.jp/genre/kkc-6022/ このフランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)レ・シエクルでの録音は2018年の 最新テクノロジーによる高品位なデジタル録音ですが、使用している楽器は ピリオド楽器ということで百年前の楽器を集めて録音されたものです。 ですから近代的なオーケストラで聴ける弦楽器とは違うガット弦で高音階が微妙に ひきつったような印象があり、管楽器もドイツ製とオーストリア製という古いもので 暗い音色と音量が小さいという特徴があります。 つまり、作曲者が当時聴いていた楽器を使用して、マーラーの感性を忠実に再現 しようという試みによる、最新録音により忠実度を高めた時代物の楽器による演奏なのです。 先ず最新録音であるがゆえに各楽器の音像の捉え方は極めて鮮明であり、更に 指揮者の感性によるものかマスタリングによるリバーブの追加が極めて淡泊と いう特徴もあります。ゆえに他のオーケストラの録音とは違った観察点があります。 さて、私の仮説が証明できるのか、そして結論をどのように説明するのか? 私はESOTERICでも三回、Soulnoteでも三回と執拗に聴き込みました。 すると今回は…、おや!? これは!? と、いうことはありませんでした! 私の仮説通り、推測通りの展開となったのです! ■ここで結論を言いましょう! ESOTERICは三角形、Soulnoteは台形です! 上記にも絵画における遠近法の例えをしましたが、左右スピーカーという音源の 二点と、その向こうに定位する楽音にて三角形をイメージして下さい。 この三角形を左右音源を底辺として向こう側にばたんと倒して奥行き方向に楽音が あるようにすると、その頂点に向かっての二辺が集束する先端に音像があり三角形 の高さが距離感を表し、遠近法の消失点が三角形の頂点であるという図式を イメージして欲しいのです。 そして、ESOTERICの高解像度かつ素晴らしく音像を凝縮してフオーカスを極めた 音場感の在り方を前記の三角形として例えることができるものです。 ですからスタジオ録音でもホール録音でも、各楽器における遠近感では距離感を もって定位する楽器も正確にピントが合い、克明な音像を描きながら、その周囲に 空いた空間に残響成分を拡散すべく余白を作り出していけるのです。 更にESOTERICの三角形に高さの違いによって、すなわち遠近の違いということですが、 楽器が近くにあっても遠くにあっても音像を縮小させるという作用があり、スタジオ 録音で演奏楽器が同じ距離感で横並びになっても各楽器に対する三角形は維持されます。 溝口 肇の「2.世界の車窓から」による印象を思い出して頂ければと思います。 極端に言えば左右のスピーカー位置に定位するものは、音源位置から奥行き方向への 直角三角形となり、センター定位では二等辺三角形、という感じでしょうか。 楽音の遠近があっても、どの距離感でも三角形を維持する音像位置をピンポイントで 表現するフォーカシングの素晴らしさがESOTERICの醍醐味と言えます。 オーケストラでは楽器の数だけ三角形が存在するということで、各パートの楽音は すべからくこの法則にのっとって音場感を形成し、緻密な定位と音像が素晴らしいのです! 以上の比喩に対して三角形の頂点を途中から切り取ってしまい台形にしたのがSoulnoteです! 上記同様に台形の高さによって遠近感を感じ取ることが出来ます。 台形の上に当たる短辺が音像サイズということになりますが、これは録音センスと 楽音の質感によって大きさは変化しますが、ESOTERICのようなピンポイントサイズ ではなく演奏によってある程度の幅と面積を持つようになるというイメージなのです。 溝口 肇の「10.Offset Of Love」で私が絶賛したチェロを思い出して頂ければと思います。 さあ、ここからがSoulnoteの真骨頂というべき音像と音場感の造形力となります! 上記の課題曲第二楽章 2.花の章での冒頭のはかなげなトランペットの音色と質感。 コントラバスのピッチカートとアルコ両方の奏法で感じられる重々しく広がる存在感。 少し後方で広がる木管楽器の残響、ここでも素晴らしいチェロとビオラの重奏パート。 それらがヴァイオリン主部の位置関係から遠目に展開するも、後方では台形の短辺と 例えた音像の絶妙な広がり方と展開がオーケストラを包み込むような背景を描くのです! それは低音弦楽器と管楽器の両方に共通する美点としてステージ後方に響きの オーロラを思わせるがごとくの残響による後方支援を行い、オーケストラにおける 音場感そのもののスケール感を拡大し素晴らしく盛り上げてくれるのです! これはSoulnoteだけしか出来ない芸当でしょう! この台形効果は前述の課題曲にて既に現れていたものであり、私はその段階で仮説と してSoulnoteの個性のあり様を感じ取っていたのですが、最後のオーケストラを聴き 結論としてまとめることが出来ました。 そして、更に追記をしなければならないことがあります! 音像と音場感の造形という事だけがSoulnoteの特徴ではなく、台形として例えた 音像の中身、すなわち楽音の質感と音色に関して私が知り得なかった素晴らしい 色彩感と響きの多様性を持っており、私の美意識を痺れさせるほどの美しさがある という事なのです。 ビヨークが作曲したオルゴールでの印象を思い出して頂ければと思います。 Soulnoteの独自の技術力は加藤さんの情熱により他社にないアイデアと発展性で 音に対するアプローチを重ね、正に魂に響く演奏装置として仕上げられたことに 惜しまぬ称賛と敬意を表するものです。素晴らしい仕事でした! さて、以上の研究結果をもってH.A.L.に新しいリファレンスプレーヤーが誕生した ということを皆様にもご報告したいと思います。 私が述べた各項目の仮説を是非皆様の耳で確認して頂ければと思います! 営業的結論! どちらを選んで頂いても間違いはありません! |
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