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2019年12月31日 No.1580
 H.A.L.'s One point impression!! - Accuphase E-800

■H.A.L.'s Sound Recipe / Accuphase E-800 inspection system Vol.1
https://www.dynamicaudio.jp/s/20191217175355.pdf

先ず今回は上記の非常識なシステム構成からご覧頂ければと思います。
スピーカーケーブルの方がアンプより高いという組み合わせ。

今は珍しいくらいのシャンペンゴールド仕上げが逆に新鮮に見えてしまいます。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20191228143531.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20191228143540.jpg

日本中で98万円のプリメインアンプに対して、こんな組み合わせで試聴させる
販売店はあり得ないでしょう。なぜ、こんなことを私が始めたのか…その真意は!?

このAccuphase E-800は私の研究課題として今後国内外の色々なスピーカーでの
試聴と評価を行っていくつもりですが、その大前提として次の二項目を最初に
述べておきたいと思います。

その.1 オーディオシステムにおける相互補完と相互否定に関して

こんな高価なスピーカーで聴かせれば、どんなアンプでも良く聴こえるよ。
これは一面ではその通りなのですが、私の考え方は逆なのです!

「音楽を裸にするスピーカー登場!!その名はHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS!!」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1160.html

このHIRO Acousticは音楽だけでなく録音も、そしてコンポーネントも電源も
ケーブルもラックも、全ての要素を裸にしてしまうスピーカーなのです。

HIRO Acousticで聴くことにより、オーディオ製品の真の評価が下されるということです!

つまり、ダメなコンポーネントであったら直ちに馬脚を現し、その本性が音になって
しまうという私にとっての絶対基準であるわけです。

想像してみて下さい。新人アーチストが広大な客席と豪華な内装、そして演奏者には
的確なピンスポットを当てるという完璧な照明設備を備える一流のコンサートホールの
ステージに立たされたようなものでしょう。

それだけ厳しい判定基準の根拠となり得るシステム構成、同時に当フロアーにおいて
アンプ以外の製品に関しても多数の検証事例を生んできたHIRO Acousticを、
どのように鳴らしたかということは私にとっての絶大な自信となっているものです。

この組み合わせはAccuphase E-800を擁護するものではありません。
極めて厳しい審査基準としてAccuphase E-800を裸にしてしまうシステム構成なのです!

その.2 私はアマチュアであり物書きのプロではありません。

私は、この場で多数の事実を述べてきました。そして、それを音として証明できます。
何を対象にするかは私の選択です。それをどのように表現するかは私の自由です。

私はメーカーや輸入商社からびた一文のお金ももらっていません。
それは私の自己主張に関する大いなるこだわりであり、またオーディオ専門店の
営業職というプロフェッショナルとしての矜持でもあります。

良いものは価格に関係なく推薦し、だめなもの納得できないものはノーコメントです。

そのような姿勢はこれからも変わることはなく、Hi-End Audio Laboratoryという
名前の由来のように好奇心のおもむくままに研究者的立場と知見によって自分の
感性を磨いていきたいと思っていますので研究対象は価格にこだわっていません。

そんな私の元に評価を求めて持ち込んで頂ける製品の提案をお待ちしています!
そして、私から持ち掛けた好奇心の対象となった製品をお持ち頂いた各社に感謝しています。

■CLASS-A PRECISION INTEGRATED STEREO AMPLIFIER Accuphase E-800(税別¥980,000.)
https://www.accuphase.co.jp/model/e-800.html

2019 Tokyo international Audio ShowにおけるAccuphaseのブースにおいて、
営業担当者に私がE-800を聴いてみたいと言葉をかけましたが、その希望を
きちんとかなえてくれた担当者の誠意によって今回の感動体験が実現したものです。
http://iasj.info/tokyo-international-audio-show/2019/

私の第一印象での素晴らしさは日を追うごとに確信的な評価に変わるのですが、
厳しい課題曲を聴いていくうちに様々な分析も加わっていきました。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

2018年5月30日 No.1473 Accuphase/アキュフェーズ取り扱い開始!!
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1473.html

上記のように新規取り扱いを開始したAccuphaseはいきなり下記のように私の
リファレンススピーカーであるHIRO Acousticとの共演を果たしたのでした。

H.A.L.'s One point impression!! - Very Exciting Sound by HIRO Acoustic and Accuphase
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1482.html

H.A.L.'s One point impression!! - Very Exciting Sound by HIRO Acoustic and Accuphase Vol.2
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1483.html

上記のシステム構成で同社のトップモデルであるA-250を2セット4台使用して
バイアンプで私は既にHIRO Acousticを鳴らしていたのですが、そんな私の記憶と
評価は今回のE-800によって根底から覆されてしまったと言えます!

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団

恒例の課題曲を聴き始めた瞬間からE-800が発する音楽性に私は衝撃を受けました!
明らかに私が承知しているHIRO Acousticとは違うのです!

当然のことながらボストンシンフォニーホールのステージにあるのは以前と同じ
楽器であり演奏者であり指揮者による演奏のはず。しかし、情景が違うのです!

見慣れた庭にある樹木、岩と石、緑の苔と鯉が回遊する池、庭園を構成する要素は
同じはずなのに、一流の庭師が造園技術を尽くして剪定し枝ぶりを整えるだけで
樹木の生命力が蘇ったように変化し、枝葉の印影が岩と石の表情を和らげていく。

庭園の構成要素は同じなのに、職人技が各パーツの存在感を引き立て鮮明にする
だけで目にする情景に生命力が宿り、庭師の感性によって自然界の調和が再構成
されるということで芸術作品と言える素晴らしい光景が新たに誕生したかのようだ!

HIRO Acousticと最新最高のESOTERIC Grandiosoシリーズによって描かれていた
オーケストラの構成要素が、オーディオの庭師として例えたいAccuphase E-800が
もたらした職人技によって新しいボストンシンフォニーが誕生したのです!

私はこの一曲を聴き今まで使用してきたオーケストラの課題曲を全て聴き直さなければ
ならないと直感し、多くの時間をかけてあれもこれもと馴染みあるオーケストラを
片っ端から聴き直しました。

それらすべてにおいて上記の庭師に例えた職人技によるオーケストラの新境地として
共通するAccuphase E-800の特徴を分析することが出来ました。

そして、今まで聴き続けてきたHIRO Acousticとの相違点を頭の中に箇条書きして
いくように印象に残ったポイントを記憶に留めていくのですが、この段階で私が
以前から聴いてきた高価なアンプとの違いをどのように受け止めるのか、どのように
それを語るのかという行為に関して十分なまえおきをしておかなければならないと
考えています。

数百万円から一千万円を超える価格のセパレートアンプを長らく聴き続けてきた私は、
それらの音質に対してE-800の価格なりの妥協を認めた評価はしたくないのです。

それらセパレートアンプの価格、サイズ、重量などを考えれば、たった?98万円の
プリメインアンプなのだから、このくらいの音質差は仕方ないだろうという発想で
私はE-800を評価したくないのです。つまり安かろう悪かろうという尺度で評価
するにはAccuphase E-800の音は最初から突出していたという事なのです。

私は上記の「物書きのプロではありません」という一節で私は研究対象は価格に
こだわらないと明言しており、過去に私が推薦した多数の製品ではケーブルよりも
安い価格の製品が多数ありました。

しかし、そのこだわりはコストパフォーマンス、費用対効果ということで価格が
安いのだから手加減して評価すればいいという発想を真っ向から否定してきました。

価格の高低に関わらず、この音はこれにしか出せない! という個性と魅力を発見し
世に広めていきたいという事が私の真意なのです!

このような考え方から、この段階で明言しておきますが、Accuphase E-800の個性と
魅力は同ブランドの他のアンプも含めて唯一無二の素晴らしさがあるのです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

人とはげんきんなもので美味しいものはもっと食べたい、美しいものはもっと見たいと
思ってしまうのが人情というものでしょう。

私は今までに経験のないオーケストラの美しさに参ってしまい、オーケストラの
多くの課題曲を総なめで聴きまくり、そして再度、マーラー交響曲第一番は
第二楽章だけで終わらず第四楽章まで止められずに聴き続けてしまいました。

「あ〜、何と美しい弦楽器だろうか、何と透き通る管楽器だろうか!」

すべてのオーケストラで言えることは先ず弦楽器の美しさだろうか。
それはE-800独自の美意識であり他のアンプでは感じられなかったこと。

解像度とハーモニーの美しさが共存し、思わずぞくっとするような未知の音色と質感!

弦楽五部の各パートにおいて特に14人の第一ヴァイオリン、12人の第二ヴァイオリンと
いう集団の内部に微細な音色の違いが存在していることを丁寧に引き立てる素晴らしさ!

例えれば、真っ白なパレットに七色の絵の具を絞り出し、それを横一列に並べたとする。

それを細い絵筆で左から順に横へならしていくと、一色また一色と筆にからんだ色が
右に行くにつれて重なり合い、横に動かした筆の両脇には混じりきらない絵の具が
幾層もの色彩のレイヤーを構成し、しまいには七色の縞模様となるが個々の色は
細い流れとなって原色を保っている…、そんなイメージだろうか!

パレットの白はアンプのS/N比という例えでいいでしょう。明るい絵の具の色も
鮮明な色彩を純白の上でくっきりと見ることができ、その色彩を水で薄めていく
過程で濃淡のグラデーションを広げていき音場感として例えることも出来るでしょう。

このような色彩の存続性と例えられる弦楽器の美しさは私とて初めての経験!

パレットそのものにわずかでも色がついていれば、あるいはざらっとした表面であれば、
色彩のレイヤーは見た目の傾向が変化したり、均等な色相にはならないでしょう。

超低歪と高S/Nの両方が確立されたアンプだからこそ実現できた弦楽器と言える。

そして、上記の前提による管楽器はピンポイントの極めて小さい音像をジャスト
フォーカスで定位させ、その音源位置からホールという大空間に向けて素晴らしい
余韻をなびかせていく情報量の多さに舌を巻く! これは何とした事か!

これは言い換えればソースコンポーネントとして組み合わせしたESOTERICの
Grandioso P1X+D1XがE-800に送り込んだ情報量の素晴らしさとして置き換えできる
評価ポイントだと考えられる。しかし、あれだけの情報量をどう処理したら
これだけのオーケストラを演奏することが出来るのだろうか? そこで思いついた!

アンプに入力された音楽信号の情報量を司るのはボリュームコントロール。
先ず私はそこに注目した。
E-800のカタログを手に取ると冒頭に書かれているのがこれ。《Balanced AAVA》

AAVAとは(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)のこと。
何々…、バリアブルゲイン…、どこかで聞いたことがあるな〜、と記憶の引き出しを
探し回り、頭の片隅に引っかかっていたキーワードからファイルを見つけ出した!

VICTOR A-X1000 ¥129,000(1985年頃)
https://audio-heritage.jp/VICTOR/amp/a-x1000.html
VICTOR P-L10 ¥250,000(1981年発売)
https://audio-heritage.jp/VICTOR/amp/p-l10.html

40年近く前の若かりし頃に私が考えたセールストークが今になって蘇るとは!?

アキュフェーズが特許をもつハイテク・ボリュームAAVAなのですが、実は上記の
Vari-gainという単語から発想を飛ばすと上記の古いアンプがヒットしたのです。

下記にアキュフェーズのカタログからの一節を引用します。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

《可変抵抗体》を使用しないAAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)は、
音楽信号がインピーダンス変化の影響を受けず、高SN比、低ひずみ率を維持しながら、
音質を変化させずに音量調整が可能です。

本機ではプリアンプC-3850の技術を応用、AAVAを2回路平衡駆動しバランス入力→
バランス出力の完全バランス回路を実現する『Balanced AAVA』を搭載しています。(図1)
*《AAVA(音量調整)システム》は、アキュフェーズ株式会社の特許です。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

AAVAの原理をカタログでは(図1)として説明しているのですが、これがどうも難解なのです。
どう説明したらいいのか、ずっと悩んでいたのですが上記のオールドモデルの
資料にあるブロックダイアグラムを見て、はたと思いつきました!

■川又流 AAVAのイメージ

先ず最初に上記のVICTOR A-X1000とP-L10の資料にあるブロックダイアグラムに
注目して下さい。

肝となるテクノロジーは電圧電流(VI)変換を行っていることです。
この音楽信号を電圧から電流に変換しているということを前提に…

ソースコンポーネントは文字通り音源、これを水源・貯水池としましょう。
この水源から16本の幅が異なる用水路があり、それが16個のV-I Convertersです。

ちなみに、この水源から用水路に水を送り込む強力なポンプの役目を果たしているのが
同社の得意とするHigh Voltage Current Feedback Amplifierという事になります。

この用水路には各々に水門があり、その水門の開け閉めをコントロールするのが
Accuphaseが設計したアルゴリズムで動作するCPUという事になります。

このCPUが16基の水門のレベルをどのように開閉し調整するかを決定しますが、
それは使い手が回すボリュームノブの角度によって計算処理されます。

16本の用水路の異なる幅というのは通過できる水量、つまり電流の大小という
例えとなり、大量の水を流したい時には16基の水門は全開に近くなりますが、
小音量での再生という場合には幅の広い水門から順に閉じられていきます。

逆に小音量で流れる音楽信号電流も少なくなってくると、16基ある水門の幅の狭い
方から何番目までを、どのくらいのレベルで開閉するのかCPUがコントロールします。

この水門は大きいものから1/2で始まり、1/2の2乗から1/2の16乗までと解像度を
増していくことになり、16基の水門は全開と全閉とで最後には2の16乗で65,536通りの
組み合わせがあり、定格出力時のS/Nは何と115dBを確保しています。
更に入力換算雑音では-127dBという驚異的なノイズフロアーを実現しています。

つまり大音量を必要としない時には電流が流れる用水路の水門、回路が閉じられる
ということで残留ノイズと入力換算ノイズの両方を合理的に高めていくものであり、
特に9番目から16番目の水門における微小信号の調整精度が飛躍的に向上し、必要な
信号電流だけを他の用水路の影響なくして通過させているという事なのです。

そして、E-800は同社のフラッグシッププリアンプC-3850同様にBalanced AAVAと
しているので、プラスマイナス両方で32本の用水路と水門ということになり、
その徹底ぶりがオーケストラにおける情報量の素晴らしさに直結しているのです!

ちなみに、AAVAではチャンネル間のクロストークもほとんど発生せず、1kHzで
120dB(100万分の1)以下の漏れという驚異的なセパレーションを実現しています。

Balanced AAVAでは32本の用水路を通過した水流(電流)は合流して一筋の流れとなり、
再度I-V Converterによって電流から電圧へと変換されパワーアンプへと入力されます。

それでは一般的な可変抵抗器による音量調整の原理はどうかと言いますと、
水源から引き出される用水路は1本です。そして、その水門は1基だけであり、
その水門の開閉はボリュームノブから機械的に連結したアッテネーターにて
行うのですが決定的な違いがあります。それは電圧伝送ということです!

簡単に言いますと、他社のボリュームコントロールの多くは水源から送り出す
水圧を水門で検出して信号としているという事でしょうか。

水門を閉めて行けば水圧が高くなります。上記のメーカーの説明を引用します。

「AAVAは音楽信号がインピーダンス変化の影響を受けず、高SN比、低ひずみ率を
 維持しながら音質を変化させずに音量調整が可能です。」

つまり水門が受ける水圧がインピーダンスということでいいでしょう。

信号電流を1本の用水路で流す時に水門を開けてインピーダンスを下げることで
音量を大きくしますが、逆に音量を絞り込むということは水門を閉めていくと
いうことで水圧が大きくなり、水門から流れ出た水流が乱れてしまうということです。

この水流の乱れが歪感となる可能性があるのですが、いやはや…E-800が聴かせる
オーケストラの美音に関しては、清らかな清流から雄大な大河へというダイナミック
レンジが保証されているという事も追記しておかなければなりません。

マーラー交響曲第一番の第三楽章での葬送行進曲で、ティンパニの4度下降の刻みに
乗って展開するコントラバスの物憂く虚ろな印象の主題から、オーボエのおどけたような
カノン風の旋律が加わり、グランカッサの重厚でありデリケートな音量の低音部が
ホールを漂っていく究極のノイズフロアーの要因が理解されてきました。

微小信号を忠実にスピーカーに送り込むということはプリメインアンプにとっての
大きなメリットではないだろうか?

その楽章が終わり数秒間の無音から、嵐のように運動してと題された第四楽章の
シンバルの鮮烈な打音から湧き起るフォネテッシモを予測して、同じボリュームを
維持しても破綻しない強力なE-800のパワー感が炸裂する爽快感が堪りません!

この第四楽章に至る前にコントラバスのピッチカートが何でこんなに鮮明なのか。
ティンパニの打音は何でこんなに切れるのか。

グランカッサの余韻は何でこんなに最後まで漂うのか。
低音楽器の振る舞いが殊更に素晴らしいとE-800の他の一面に関心が高まった。

大型セパレートアンプの醍醐味とは違う美意識がE-800にはあるのではないか!?

さあ、そして私の好奇心はオーケストラ以外の選曲へと飛んで行った!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ここでも前述のようにAccuphase E-800の根本的な美意識をホール録音で確認し
堪能した私の視線は、上記の低音楽器の素晴らしい表現力を分析すべく必然的に
スタジオ録音の課題曲をも全て聴き直すという作業に没入して行ったのです!

ここでも実に多数の課題曲を聴きまくり、オーケストラ同様に色々な曲の中で
最大公約数的なE-800の特徴を理解することができたと思う。されど試聴した
全曲の印象をすべて語るのは困難であり、私が分析したポイントを述べるために
次の二曲を中心とした解説を試みたいと思う。

H.A.L.'s One point impression!! - Very Exciting Sound by HIRO Acoustic and Accuphase
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1482.html

上記から次の一節を引用開始

■HIRO Acoustic MODEL-CCCSをオールAccuphaseでマルチアンプ駆動するシステム
http://www.dynamicaudio.jp/5555/7/H.A.L.'s_Sound_Recipe-HIRO_Acoustic_Accuphase.pdf

合計13台ものコンポーネントを使用してのシステム構成、先ずはチャンネル
ディバイダーと8台のパワーアンプを用意したラックに収納するにも一苦労しました!
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.06.25.02.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.06.25.03.jpg

当フロアーのリファレンススピーカーHIRO Acousticとの本邦初のシステムが完成!
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.06.25.01.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/2018.06.25.04.jpg

■FIFTY SHADES OF GREY ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK
  3.THE WEEKEND / EARNED IT(TRADUCIDA EN ESPANOL)
http://www.universal-music.co.jp/p/UICU-1262

冒頭のダイナミックな低域の破裂音とも言える立ち上がりから、重厚であり重々しい
低音が床に垂れ落ちてくることなく見事に空中にとどまって消えていく未体験の音。

ウーファーに一台ずつのパワーアンプがボイスコイルに直結されることで生まれた
制動力の高まりが再生音に何をもたらしたのか、フレミングの左手の法則によって
発生するパワーが純度を高めることでダイヤフラムに叩き付けるエネルギーが強化
された結果、この低域の高速反応を可能としたのだ! 何たるグリップだ!!

ミッドハイのユニットに比べて振動系の質量が大きいウーファーでの変貌ぶりは
アンプダイレクトによるトランジェント特性の究極の高まりであるはずだ。

それは当然、中高域ユニットにも同様な恩恵をもたらすが、それは再生される
音楽の種類と楽音本来の質感再生という進化のベクトルをいっきに拡張したと
いうことではなかろうか!?

私が聴いたすべての曲での印象を述べることは困難なので、音質表現の事例には
限界があり全曲での分析を書き続けるのは無理だと思いつつ、今夜は閉店後に残り
ひとりでじっくりと聴き直してみたかった選曲がこれ。

■HELGE LIEN / SPIRAL CIRCLE   7. Take Five
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245411462

このTake Fiveは大胆にもドラムソロからスタートする。特に録音品位にこだわった
ディスクという触れ込みはないが、実に素晴らしい録音に冒頭から度肝を抜かれる!

ストロボライトの高速な点滅をイメージさせるようなドラミングの素晴らしさに
目と耳を奪われる。各種の金物を多数散りばめて叩くパートと見事な切れ味のタムが
空中を飛び回るがごとくに展開し、引き締まったキックドラムでは打撃の瞬間と
終息の間に余分な音のぜい肉を排した素晴らしい打音が炸裂する!

ピアノは前述のような余韻感を含ものではなく眼前で弾いているようなアタックの
鋭さと、鍵盤が左右に並んでいるビジュアルが目の前に映写されるようなリアルさ。

そのピアノはベースのざらっとした重低音のアルコが始まると左手のみで低音階の
リズムを刻み始めるというトリオとしての緊密な連携が素晴らしいプロフェッショナルな
演奏を私は大音量で気持ちよく聴き続けてしまった!

アンプのパワーメーターを消灯させた方が良いと前述していながら、私はマルチ
アンプシステムで各々のアンプが一個のスピーカーユニットに対して、どんな
パワーを送りこんでいるのかに興味を持ち、8台のアンプのピークメーターを
呼び起こしてすべてのメーターにピークホールドを設定していた。果たして…。

A-250は40ポイントのバーグラフの他に五桁のデジタル表示にて数値化したパワーを
ピークホールドさせてみると、なんと! トゥイーター一個に対して瞬間最大で526W。

同様にミッドレンジには465Wというパワーを送り込んでいた。M-6200のメーターは
レッドゾーンの中間で静止しており、7オームのウーファーで換算するとピークでは
300W以上が出力されていたことになる。

MODEL-CCCSの4個のユニットに対して、このパワーハンドリングが何をもたらしたのか?
それは音量だけではないのです! ボイスコイルで熱に変わってしまった電流でもないのです!

スピーカーに入力された音楽信号に対して、その信号波形をどれだけ忠実にボイス
コイルを介して振動板に対する制動力を高めているのか、という一点にマルチアンプ
システムの本当の魅力という事実に終結すると実感しました!!

そして、その制動力の究極の高まりが音の立ち上がりだけではなく、異例のサイズと
言えるほどに音像を凝縮させた成果の副産物として、楽音の余韻が記録されている
時間軸の最後の一端まで微細な響きを完全に再現しているという、未経験と言える
広大な音場感の創生に重要な貢献をしているということなのです!!

LCRという電子素子を音楽信号が通過せざるを得ないという事実が必要悪とは言わないが、
アンプとスピーカーユニットが直結されることによってアンプの本領が発揮され、
全帯域でトランジェント特性が想像を絶する向上をしたとしたら、そこには音楽の
豊かさ、演奏者の情熱とセンスが浮かび上がってくるという事!!

それがマルチアンプシステム本来の素晴らしさではないだろうか!!

                                引用終了

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、上記と同じスピーカーHIRO Acoustic MODEL-CCCSを使用したマルチアンプ
システムでの経験談として、先ず着目点としてTake Fiveで各アンプのパワー
メーターが示した数字をチェックしておきたい。

トゥイーター一個に対して瞬間最大で526W、ミッドレンジには465Wでウーファーには
ピークでは300W以上が出力され、合計では約1,300W近くという大出力。

アンプのカタログでは定格出力という項目があり、一定の歪率の範囲での連続出力と
いう条件のもとにスピーカーのインピーダンスに応じたワット数で表現されます。

上記のA-250では400W/2Ω、200W/4Ω、100W/8Ω、M-6200では600W/2Ω、300W/4Ω、150W/8Ω、
ちなみにE-800では200W/2Ω、100W/4Ω、50W/8Ωとなります。

参考までにマルチアンプ駆動した場合はMODEL-CCCSの各ユニットの公称インピーダンスは
トゥイーター4Ω、ミッドレンジ6Ω、ウーファー1台では6Ωとなるので、各々のユニットに
対する電力供給は大変厳しい労力をパワーアンプは担っていたという事になります。

但し純A級アンプのA-250でのA球動作領域は約100Wくらい、E-800では50Wくらいまで
であり、それ以上は緩やかにAB球動作に移行していきます。

そして、アンプの測定項目としてディストーションカーブというグラフがあり、
縦軸に歪率、横軸に出力としてスピーカーのインピーダンスによって数種類の
カーブが描かれます。

一般的には真空管アンプの場合には、そのカーブは定格出力以上になっても
緩やかに右上がりになっていきますが、ソリッドステートアンプの場合には
定格出力を超えると急激に歪率は上昇していきます。

しかし、ディストーションカーブの下限である定格歪率は近代的なアンプでは
THD(全高調波歪)やIM(混変調歪)は0.01%から0.05%前後と大変優秀な数値となっています。

これらが出力の増大に対して歪率が増えていき定格出力の数倍という大出力となった
場合でもようやく1%前後となるのですが、人間の聴覚における歪率の検知限という
事になると正確なデータはなく、パルシブで瞬間的な楽音ではほぼ認識できないでしょう。

正弦波のテスト信号を意図的に歪ませて連続信号で果たして何パーセントの歪率で
被験者が再生音の歪を認識できるかというテストがあれば私も受けてみたいものですが、
今までそのような経験はありません。

つまり一般的には定格出力の数値は一応表記されますが、実際の音楽再生においては
定格出力の数倍のパワーをスピーカーに送り込んでいるという事実をこの段階で
ご理解頂ければと思います。この状況が後々の説明でもキーポイントになってきます。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ここで前述のオーケストラの試聴に際して私はE-800の低音楽器の振る舞いが殊更に
素晴らしいと述べていましたが、実は今まで語っていなかった私なりの実験と、
その結果により選択した鳴らし方に関するエピソードをお知らせしなくてはと思います。

本稿では解説の視点を分かりやすくするために課題曲を絞り込んでの表現をして
いますが、実際にはオーケストラの間にも多様な選曲を挟んで試聴していました。

さて、一般的なプリメインアンプでは2チャンネルのアンプが搭載されているわけですが、
スピーカー出力が二系統装備されているものも多数ありE-800もAとBの出力端子があります。

しかし、出力端子が二系統あるもののアンプのチャンネル数は二つしかないので、
アンプの出力段から単純に並列としてAとBの二種類のスピーカーを鳴らすことが
できるという機能性として認識している人が多いと思います。

もちろん二種類のスピーカーは同じアンプによる音質で聴けるという事が前提ですが、
同じアンプの出力なのだからスピーカー出力Aだけで、スピーカーケーブルもシングル
ワイヤーとして、スピーカー側で低域と中高域の入力端子をジャンパーケーブルで
接続した場合と、A+Bの両方でバイワイヤー接続として鳴らした場合で音質が同じに
なるはずだと考えました。

だって同じ性能のアンプから並列で取り出した出力なのだから、スピーカーケーブルの
接続法は違えども同じ音質にならなければ理屈に合わないではないかという発想です。

もちろんシングルワイヤーの場合に使用するジャンパーケーブルにもこだわりがあり、
私はKIMBER KABLEのKS-9038(税別20万円)を使用しています。
http://dm-importaudio.jp/kimberkable/lineup-ka/l4/Vcms4_00000167.html

Accuphase E-800のスピーカーAの出力のみシングルワイヤーで上記のKS-9038と
Y'Acoustic System Ta.Qu.To-SPL/5.0mで数曲を聴き、その後に同じスピーカー
ケーブルでバイワイヤーとして出力A+Bで比較してみたのです。すると…

電気的にはスピーカー出力AもBも並列で同じ信号を出しているのにも関わらず、
出力A+Bバイワイヤーの方が情報量、分解能、音場感、楽音の質感など全ての
項目でA単独の音質を上回っていることが確認できたのです。

よって以降は全ての試聴を出力A+Bバイワイヤー接続で行っていたという事も
重要なポイントとして現時点で述べておきます。

これは後述するE-800の能力、魅力と使いこなしという考え方で重要なポイントに
なってきますので覚えておいて頂ければと思います。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、ここで上記の課題曲を試聴しての分析に話しを戻します。

■FIFTY SHADES OF GREY ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK
  3.THE WEEKEND / EARNED IT(TRADUCIDA EN ESPANOL)
http://www.universal-music.co.jp/p/UICU-1262

上記のようにHIRO Acoustic MODEL-CCCSをマルチアンプ駆動した場合、各ユニットの
公称インピーダンスを紹介しましたが、E-800での試聴は当然のことながら純正の
クロスオーバーネットワークMODEL-CCX Improvedを使用している。

そして、システム全体でのインピーダンスに関しては公称4Ωとしながらも、
下記データのように100Hz付近から約2.5Ωまで低下するという難物である。
http://www.hiro-ac.jp/technical.html

この課題曲は録音レベルが大きく通常のCDよりもかなり大きな音量となるが、
私はE-800のボリュームを最初は-36dB、そして-34dB、更には-32dBと上げながら
三回繰り返して聴いてしまった。

E-800は前述のように200W/2Ω、100W/4Ω、50W/8Ωとリニアパワーを発揮するが、
最大出力電力は360W/1Ω、272W/2Ω、165W/4Ω、90W/8Ωを誇り、ディストーション
カーブが1%に達するポイントが270W付近ではあるが、私が求めていく音量では
マルチアンプシステムの場合を思い出すと瞬間的には1000Wくらい出ていたのではと
想像している。

E-800のパワーメーターを注視していると瞬間的に0dB、レッドゾーンの100%から
200%にピークホールドされる局面を曲の最初から見続けていたわけです。

「おー! これでも破綻しない! なんと物凄いドライブ力なんだ!」

アキュフェーズの設計者に最大出力よりも更に大きな出力を求めた場合、E-800と
しては過大出力を検出するとどうなるのかと質問したところ、パワーメーターの
インジケーターが点滅しプロテクションが機能したことをユーザーに知らせると
同時にMOSFETスイッチを使用したプロテクション回路が動作して出力を遮断するという。

一度はその光景を見たいものだと思ってボリュームを上げていくのだが、
今まで一度もギブアップしたことはない。

何とも強力な電源による駆動力の素晴らしさということを実感したことを記しておきたい。
それほどハイパワードライブ出来ます!

レッドゾーンに振り切れるバーグラフ・メーターを見ながら音質を確認していく。

「お〜! この低域はいい! オーケストラで感じた要素がこの曲でも表れているぞ!」

冒頭のダイナミックな低域の破裂音とも言える鋭いインパクトから、重厚である
はずの低音が質感を維持したままで広大な空間に拡散していく快感が素晴らしい!

このウーファーの駆動力は本当にプリメインアンプなのかと我が耳を疑う迫力!

そしてセンターに浮かぶヴォーカルの音像がキュートに絞り込まれ、MODEL-CCCSの
ウーファーとミッドレンジの連携作業による輪郭の再現性が際立つ! これは凄い!

スネアの打音とパーカッションの切れ味は群を抜いて素晴らしく、パッシブクロス
オーバーネットワークで鳴らしていることを忘れるくらいのテンションの高まりが
アンプのドライブ能力は数値では表せないという事実を突きつけてくる!

そしてヴォーカルのリバーブの美しさ! これはオーケストラで感じたことを
スタジオ録音でも明らかに立証するものであり、インパルス応答が素晴らしいと
いう事が連続する楽音においても質感の充実につながっていると実感する!

「いやはや…、この音に難くせをつけることができようか! 参ったな〜」

鮮明なスタジオ録音による音の洪水を眼前に目撃し、ダンピングファクターが
1000というスペックが頭に思い浮かぶ…。そういうことか!

目視出来るほどの大きなストロークで激しく振動するウーファーを見ていると、
その挙動から大きな逆起電力がアンプにフィードバックされてくるだろうという
ことが想像できる。それがいわゆるIM歪として質感を崩してしまうのだが…。

スピーカーを低電圧駆動させるということがアンプに求められる必須項目であり、
そのためにスピーカーからの逆起電力をいかに制御するかが問われるところ。

よくオーディオ初心者向けの豆知識として、となり合うスピーカーがあった場合に
鳴らさないスピーカーの入力端子をショートさせてウーファーが共振しないように
するというノウハウがある。

実際に何もしていないウーファーを指先で小突くとボンボンという音がして揺れる。
ところが入力端子を何らかの導体でショートさせると、その音はコンコンという
感じに変わりウーファーの振動板は小突いても動かなくなります。この原理です。

言い換えるとアンプの出力インピーダンスを究極的に引き下げることでショート
状態を作り出し、スピーカーからの逆起電力が来ても動かないようにすればいい。

この理屈はダンピングファクターと呼ばれ、例えば8Ω負荷時のダンピング
ファクターが100のアンプの出力インピーダンスは8Ω÷100=0.08Ωとなる。

E-800のダンピングファクターが1000ということは、上記の通り計算すると
出力インピーダンスは0.008Ωということで、正にショート状態に近似する!

では、どうやってアンプの出力インピーダンスを引き下げるのか!?
先ずは回路構成。パワーMOSFET、6パラレル・プッシュプルという贅沢さ。

許容損失電力約200W、ドレイン電流約30Aの大電力パワーMOSFETを6パラレル接続で
プッシュプルA級動作で、1ペア当たりのパワーの負担が1/6に軽減されるため、
大電力領域での動作が安定し特性が向上し同時に低インピーダンスを実現した。

そして、上記のプロテクション回路でも述べたMOSFETスイッチの採用です。
一般的には機械式接点を持つ『出力(プロテクション)リレー』を用いますが、
接点の摩耗や異物の付着によりインピーダンスが増加し、性能や音質が劣化する
という問題がありました。

E-800では接点のないMOSFETスイッチを採用することで、経年劣化の問題を解決し、
長期に渡る信頼性を確保しています。また、音楽信号がリレーという接点を通る
ことによる音質劣化を避けることができ、定格電流が非常に大きく(100A)、
ON抵抗が非常に低いMOSFETスイッチを採用している。

つまり優秀な回路構成の出力段からスピーカーへのシグナルパスにおいて、
リレーによるインピーダンス上昇をも抑制しているという事なのです。

更にもう一つあります。このもう一つの要素を思い知ることになったのが次の曲。

■HELGE LIEN / SPIRAL CIRCLE   7. Take Five
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245411462

この曲で私が設定したボリュームは前曲よりもアップして-30dBという大パワー!

上記にて引用したマルチアンプシステムとは違いバイワイヤー接続としてパッシブ
クロスオーバーネットワークを使用しての試聴。

New Original product release - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-SPL
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1564.html

但し、スピーカーケーブルは上記のTa.Qu.To-SPLを2ペア使用しており、このケーブルの
特徴として他のケーブルにはない最大の特徴! 音像を支配するTa.Qu.To-SPLと述べて
いたことを思い出して頂きたい。

このケーブルによる尋常ではない音像のコントロール、しかもバイワイヤーという
使い方も前述の解説から端を発して私の分析を裏付けるものとなってきたのです。

この曲はいきなりのドラムソロから始まるのですが、私が最も注視していたのは
キックドラムの質感であり再現性でした。すると…

「おー! これは何という事か! 大型パワーアンプよりもハイスピードじゃないか!」

もう、この一言に尽きます! とにかくキックドラムの切れ味がシャープなこと!

当然のごとくウーファーの振動板はちぎれんばかりのストロークで躍動していることが
見て解かるのですが、ズンッ、ドンッではないのです。バシッ、ドシッという感じで
余分な響きを出さずドライでハイテンションの打撃音が素晴らしいのです!

「いやいや〜、断言はできないがマルチアンプ駆動よりも引き締まってるかも!」

危険な喩えではありますが、このハイパワーで叩き出されるキックドラムは重厚な
音色であるのに尾を引くような残響を残さず、ダンピングファクター1000という
威力を音にして聴かせるという素晴らしさ!

主に低域に関して議論されるダンピングファクターというものですが、ここでは
その威力が高音階のパーカッションにも多大な影響をもたらしているのか、正に
ヒットした瞬間の光速(高速の変換ミスではない)反応が空間に炸裂します!

このハイテンションは一体どこか来たのか! ダンピングファクターを上げるために
アンプの出力インピーダンスを下げるもう一つの手段。それは…

アンプにおけるNFBの帰還量を多くすることで出力インピーダンスが低下するということ。

古くから使われている、負帰還:NFB(Negative Feedback)という技術の功罪は真空管
アンプの時代から色々と議論されていますが、真空管アンプでは出力トランスが
必要になるという条件があります。しかし、ソリッドステートでは出力段と
スピーカーが直結されるのでNFBの応用が良い方向で採用できます。

そこでアキュフェーズがやったこと。Balanced remote sensingです!

アンプの回路でNFBのフィードバック信号をどこで検出するか。

これは設計者によって複数の方法があるのですが、往々にして出力段の回路内部で
検出した信号をフィードバックしているケースが見受けられると思います。

しかし、アキュフェーズの場合にはスピーカー出力端子の一点から検出し、
更にそれをマイナスのグランド側でも行うというバランス設計のNFBとしているのです。

よってスピーカーからの逆起電力の第一波が到来する出力端子での検出信号が
フィードバックされることになり、あらゆるスピーカーの多様な仕様からなる
ウーファーからの逆起電力に対して最も正確なNFBメソッドを確立したということでしょう!

このBalanced remote sensingは同社の他のアンプでも既に搭載されているので、
E-800で初めてというものではなく、私が受けた印象を裏付ける直接要因ではないと
思うのですが、ここで前述のスピーカーAの出力のみシングルワイヤーとバイ
ワイヤーとして出力A+Bで比較したというエピソードが思い起こされるのです。

私はアキュフェーズの設計者に上記両方のフィードバック信号の検出点に
関して質問しました。

Balanced remote sensingのフィードバック信号の検出点は、スピーカーAの場合、
あるいはBの場合というように単独出力としたら、AとBの各々でスピーカー端子の
プラス・マイナスの両方から検出するというのです。

つまり、この場合のフィードバック信号は一系統のスピーカーからの逆起電力に
反応したフルレンジでの再生音による性質のフィードバック信号という事になります。

ところが出力Aで中高域とし、出力Bを低域とした場合、その両者からの逆起電力に
よる影響を別々に検出して帰還させる信号として合成したものになるという。

ここからは私の推論となりますが、HIRO Acoustic MODEL-CCCSのウーファーから
戻ってくる逆起電力を出力Bのプラス・マイナスの両方から検出出来るということで、
低域側に対するフィードバック信号の性格というか精度が高くなったのでしないか
と考えてしまったのです!

もちろん、同社の他のアンプでも、あるいはマルチアンプ駆動した場合でも、
Balanced remote sensingは生かされているので私の思い過ごしかもしれないが、
このTake Fiveでのドラミングの物凄さを体験したことから、E-800によるセンシングの
在り方がミッドレンジとウーファーの両者に共通の効果をもたらすフィードバック信号を
作り出してしまったのではと一人合点してしまいました! それほど素晴らしいのです!

この曲は炸裂するドラムの各パートでの打音と打音の瞬間的な無音状態が何回も
ありますが、その空白の一瞬ではBalanced AAVAによる静寂感が素晴らしく、
強烈な打音の余韻が鮮明な尾ひれをつけて空間に溶け込んでいくうちにピアノが入ってきます。

お馴染みの変拍子によるTake Fiveの旋律は適度な緊張感による音像の凝縮が見られ、
心地よいテンションの張り詰め方が打鍵の一粒ずつを丁寧に分離させ、転がるように
空間を飛び回る描写力に魅せられてしまいました!

今までサポート役に回っていたウッドベースが中盤ではアルコに切り替えてソロを取る。
いや〜、ここでも低域の制動力がベースの摩擦感をくっきりと描き、他のアンプでは
ふっくらさせるベースの音像をきっちりと締め上げる爽快感が堪らない! これいいです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

プリメインアンプとして全てがアキュフェーズ史上最高スペックとなるよう開発した。
という一節が同社のコメントとしてあるのですが、果たしてそうなのでしょうか?

いや、違うと私は考えてしまいました。

私はスペックは素晴らしい音の証明のひとつにはなるが、スペックが素晴らしければ
音がいいという事にはならないものです。

アキュフェーズはプリメインアンプという方式を借りて、価格とサイズ・重量が
大きく上回るというセパレートアンプに出来ないことをE-800で成し遂げたのだと!

このAccuphase E-800は当フロアーに現存する、あるいは今後やって来る世界中の
ハイエンドスピーカーを相手にして十分な能力と魅力を発揮するだろうということを
私は強く確信し、それを実際の演奏として日本中の音楽愛好家に聴いて頂きたいと
思っています。そして…

あのスピーカーで聴いたらAccuphase E-800はどんな音を出すのか?

ではなく…

Accuphase E-800で鳴らしたら、皆様が使っている、あるいは知っている
スピーカーをどう変えてしまうのか?

その動機にこそ私がAccuphase E-800を推薦する価値があるという事なのです!

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http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/circle.html


川又利明
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