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2019年10月22日 No.1564 新企画⇒New Original product release - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-SPL |
New Original product release - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-SPL [1]Ta.Qu.To-SPL(Speaker Line)誕生のきっかけ H.A.L.'s Hidden Story!! - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Zero https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1496.html 非常識かつ前代未聞のこだわりと技法によって作られたスピーカーTa.Qu.To-Zero。 その特徴を紹介した上記より抜粋した下記をご覧下さい。 ■Ta.Qu.To-Zeroの神経と言えるケーブルのこだわりというHidden Storyとは!? 超高剛性というボディーの内部でTa.Qu.To-Zeroの各パートを接続する内部配線は何か? と吉崎さんに質問するとあっさりと教えてくれました。これは企業秘密ではないのか? このメーカーのスピーカーケーブルです。 http://duelundaudio.com/cable/ Duelund Wire 12awg (DCA12GA)Tin Plated Hook-up Wire https://www.partsconnexion.com/DUELUND-82323.html 使用箇所はというと、ウーファー、ミッドレンジ、トゥイーターの各ユニット。 クロスオーバーネットワーク内部、それと本体をつなぐスピコンケーブルなど 全てこのケーブルを統一して採用した。 12AWGと低域でも十分な太さが有り、より線なので高域にも問題無いということで、 場所によって本数などは変えていない。因みに、このメーカーの抵抗、コンデンサ、 コイルの音質は世界最高峰と評価されているという折り紙付きです。 ただし、低域エンクロージャー内とスピコンケーブルは、このケーブルをテフロン チューブで被覆して使用している。 こんなノウハウを明かしてくれましたが、その理由は簡単! 音が良かったから!! 上記の販売サイトを見れば米ドルでのメーター単価は書かれていますが、上記の ように全て統一ケーブルとしたため使用量は相当な長さになっています。 今回は第二章ということでいったん区切りをつけることにしますが…、しかし! Ta.Qu.To-ZeroのHidden Storyはまだまだ続くのです!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 私が知る限り世界中のスピーカーメーカーでクロスオーバーネットワークに こんなパーツを使っているところはありません。Hidden Storyの続きを下記にて 先ず紹介しておかなければと思います! https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019131148.pdf さて、優秀なスピーカーは再生システムにおける変化に対して敏感に反応するものです。 コンポーネントはもちろん、電源環境の変化やラックなどの機械的な変化に対しても、 そして各種ケーブルに関しても同様に反応し変化します。 Ta.Qu.To-Zeroも当然のごとく各種の変化要因を与える度に変化し、様々な実験的 試聴を行う中で多彩な音質を聴かせてくれたものでした。その変化の有様を観察し 体験してきた私はTa.Qu.To-Zeroのアイデンティティーとして確立すべきは、その 直前で影響力を発揮しているスピーカーケーブルではないかと考え思いついたのが この一言です 「吉崎さん、Ta.Qu.Toのスピーカーケーブル作ってみたら!?」 今になって思えば何とも無責任、かつ無謀な発言であったことでしょうか。 上記のHidden Storyを公開した後に次は何をすべきかということを、私は吉崎さんが そんなに本気にするとは思ってもおらず口走ってしまったのでした! すると… 2018/12/22 (土) 13:06に頂いたメールで次のような報告を頂いたしまったのです。 「川又さんに頂いたスピーカーケーブル開発のミッション始動に向けて、 とりあえず線材を発注致しました!」 えっ、吉崎さん…本気になっちゃったんだ…、と大丈夫かな〜と心配になってしまいました。 2018/12/25 (火) 18:17に頂いたメールで更なる本気度が伝わってきました。 「カナダから線材(5m2ペア分、30万ほど)が到着致しました。内容的には、+−1本あたり 内部配線と同じモノ(12awg)を2本と更に追加で細い銀線(26awg)を追加した贅沢な 3本体制で、それぞれにテフロンチューブを通してから、それらを制振材などで振動の アイソレーションと静電気対策する方向でトライしようと考えております。」 吉崎さんが今までに使用してこられた各種ケーブルはいずれもハイレベルなものばかり。 世界中のケーブルメーカーに対する幅広い情報と、実際に使用しての経験は当フロアーで 長年に渡り鍛えられた耳と感性において評価されてきたものであり、その理想は高い! あ〜、どうしよう…。吉崎さんを本気にさせてしまってケーブル作りに必要な材料と 工具関係も次々と買い揃えていったという報告を頂くたびに私の一言でとんでもない ことになってきたな〜、冷や汗ものの年越しとなったものでした。 そして、2019年が明けた1月から、吉崎さんは自宅で研究、H.A.L.で試聴の繰り返し という研究開発に没頭されていったのでした…! [2]音質的実績から選択された導体を躊躇なく採用したTa.Qu.To-SPL スピーカー同様に妥協することなく理想のケーブルを作りたい、その素線として 重要な導体はTa.Qu.To-Zeroで採用し、その音質的な評価に確信をもち、コアと なる導体は躊躇なく下記ブランドを採用した。 http://duelundaudio.com/cable/ このDuelund Coherent Audioの各種製品の中から採用したのが下記です。 Duelund Wire 12awg (DCA12GA)Tin Plated Hook-up Wire https://www.partsconnexion.com/DUELUND-82323.html さて、今後の文書による解説を分かりやすくご理解頂くために、この段階で Ta.Qu.To-SPLの内部構造を下記にて先にご覧頂くことにしましょう。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110539.jpg 先ず最初に、その中心から見ていくとDCA12GAは錫メッキ銅線であり、Ta.Qu.To-Zeroの 内部配線に使用されたものと同じです。ただし、あくまでも素線としての選択であり、 目指すスピーカーケーブルとしては様々な技術が積み重なっていくのです。 プラスマイナスで四芯構成となっていますが、各々でDCA12GAを二本、そしてプラス側 には上記の図面では太く見えますが実際には極めて細い純銀線が追加されて束ねられ、 この銀線も同社のDuelund Wire 26awg Silver & Cotton/Oil Hook-up Wireです。 [3]徹底した制振構造とユニークなアイソレーション方式を開発したTa.Qu.To-SPL 上記のDuelund DCA12GA一本ずつを油浸透コットン被覆で包み、更にその上に シルク被覆を巻き付けて一本のバンドルを仕上げ、スタークワッド四芯構造として 電界の影響を打ち消す対極伝送導体の全周囲に巻き付けていくのが下記の素材。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110603.jpg 振動吸収ゲルは、元々リークテスト研究の過程で生まれた物で、極めて低硬度の 液体に近い樹脂で伸縮性と耐久性に優れた素材。それを処理するとこうなる。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110621.jpg もう、これだけで十分な制振構造となっているが、吉崎さんは更にこだわった! 下記の写真に写っているものは何だろうか!? https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110646.jpg これは高密度真鍮スリーブです。 https://www.techflex.jp/metal-shielding/brass-braid 極めて柔軟性が高い振動吸収ゲルの周囲に真鍮素材を使用することで導体内部に 起因する振動と外来要因の振動をアイソレーションすることを目的として、 強く引っ張る事で密着させ、その状態をキープするのに端末を圧着した仕上げを 施すと下記のように美しく引き締まります。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110659.jpg そして、更にもう一層の外皮シース仕上げとして静電気帯電防止スリーブです。 https://www.techflex.jp/metal-shielding/flexo-anti-stat これも同様に両端を強く引っ張ることで収縮し両端の固定法も上記同様です。 この処理を施すと下記のように重厚感と高級感が高まり引き締まった外観となります。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110711.jpg しかし! ここで言っておきたいのは上記のように徹底した振動対策と帯電防止処理を 行っているのに、このスピーカーケーブルは実に軟らかく引き回しが大変楽なのです。 さあ、いよいよ他社にはないユニークであり素晴らしいアイデアをご紹介しましょう! 名付けて! S.F.I.S(Self floating isolation system)です!★特許取得済み 前記の内部構造図で「制振ダンパー」としているグレーの手裏剣のような形のもの。 この材質はTa.Qu.To-Zeroのアイソレーションでも使用したクレハエラストマーの VBRAN G-N57という5mm厚のシート素材で、適度な柔軟性と形状維持が同時に可能。 それをハンドプレス機によって一個ずつ抜型を使って打ち抜いて作っていくのです。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019171033.jpg このS.F.I.Sを25センチ間隔で取り付けると下記のように床からフローティングし、 床からの振動から完全にアイソレーションするという独自機構なのです! https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110527.jpg これをどのように使って頂くのか、本来がマニアでありユーザーである吉崎さんは 使い手の視点を重視して下記のような説明書を同封してくれます。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019173324.pdf 皆様もご存知のようにケーブルメーカー、アクセサリーメーカーでも色々な ケーブルインシュレーターを商品化して販売しています。木製、アクリル製、 金属製など様々な素材で作られているものですが、床からケーブルを持ち上げる という単純な機能性ではありますが個々に特徴があります。 しかし、柔構造ではありながら制振効果を最大限に発揮するよう設計された Ta.Qu.To-SPLにおいて、その音質を特定するだけの効果とケーブルそのものとの マッチングということを考えるとS.F.I.Sは大変素晴らしいアイデアであると思います! さあ、上記のように内部構造とケーブル支持構造において軽量であり柔軟性ありと 述べてきましたが、その特徴を持つTa.Qu.To-SPLの端末は対照的な構造としました。 柔軟性あるリードワイヤーの分岐点において、各種スリーブを強く引っ張るという 張力を維持する端末、そこは収縮チューブで圧着するのですが、下記のように重厚な 素材によって最終的な振動対策にとどめを刺しているのです。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110506.jpg 特注デザインによるステンレスカプラーにて両端を固め、美しい仕上げのカーボン パイプの内部にも充填剤を施し、アンプとスピーカーの両ターミナルとつながる リードワイヤーからの振動対策をこのパートにて完結させました! ここだけはズシリとする感触がありますが、ケーブルそのものは柔軟性があり、 出荷の際の化粧箱にもこのようにゆとりを持って収納できるようにしてあります! https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110516.jpg 今後述べる音質評価に期待して頂ければと思いますが、そこに至る開発コストも 含めてTa.Qu.To-SPLの価格は次のように決定しました。 ■Ta.Qu.To-SPL 完全受注生産 / 納期は受注後約一か月程度 1.5m 税別¥650,000. / 1Pair 2.0m 税別¥700,000. / 1Pair 2.5m 税別¥750,000. / 1Pair 3.0m 税別¥800,000. / 1Pair 0.5m追加ごとに+¥50,000.にて特注可能 [4]他のケーブルにはない最大の特徴! 音像を支配するTa.Qu.To-SPLの神業! 皆さんはスピーカーケーブルに何を求めるだろうか!? オーディオの世界でHi-Fiとは、High Fidelity(高忠実度)の略語であり、再生 システム全体がもたらす変容に対し原音との対比において、高忠実度を例える 表現として昔から次のような格言が言い継がれてきました。 「何も足さず何も引かない」 これはスピーカーとコンポーネントの性能にも求められる項目でもありますが、 当然各種ケーブルにも同様な思想が求められてくるものです。しかし… どんな音を原音とし、何を基準として「何も足さず何も引かない」と考えるのか。 この原音という定義づけに関しては甚だ特定しがたく結論は出ないだろう。 スタジオやホールで演奏された楽音は一つではなく、音響的な環境と聴き手の 位置関係で聴き手一人ずつに異なる楽音が存在する。 同様に録音のためのマイクをセットする際にも、そのポジションによって音質が 変わるので一定の楽音としては捉えられない。ましてや、その後に続く記録方法に よる音質差、スタジオでの音質調整・マスタリングによる補正方法の違い、更に 商品としてパッケージ化される記録媒体による傾向の違い、そして、肝心なスタジオ モニタースピーカーとアンプなどの品位の違いなど多項目に渡る音質が存在する。 これらを経て商品化された音楽ソフトをユーザーが再生する際の環境の違いと オーディオシステムの性能も加わり、原音という定義づけは困難とも言える。 では、Hi-End Audio Laboratoryを標榜する私として、何を基準として音質を追求 するのかというスタートラインを述べておきたい。 ハイファイオーディオという言葉が使われ始めて既に半世紀近く経っているが、 良い音とはどんな音か、某評論家が述べた解説で再生周波数帯域が広いこと、 ダイナミックレンジが広いこと、歪率が低いことという三要素があった。 私にしてみれば、現在では上記の三要素は至極当然のことであり、既に議論すべき 項目ではなくなっているという前提のもとに、私の経験則に基づき感動できる音と いうことが求めるべき音質という事になる。 しかし、それは当フロアーにおける過去の膨大な再生音の実例というものであり、 普遍的な定義づけということは、これひとつと断定できないもどかしさがある。 簡単に言えば、この音を聴け!ということになってしまう。 それは私の独断と偏見と言われても仕方のないことなのだが、文字と言葉では 伝えることが出来ない感覚の世界観として、上記の三大要素の他にも多数の パラメーターで音質を判定しているという私の職業的感覚と言わざるを得ない。 つまり、食べ物の味を言葉では伝えらず、唯一の方法は同じものを食べた時の 笑顔と味覚の共有しかないという事である。そして、美味しさを評価する人の 経験値のレベルが高くなればなるほど、その人の美味しさという感覚のレベルも 高くなり、その普遍性をもってして他者への説得力も高くなっていくと思われる。 私なりの音質評価のゴールとしては感動できる音という事であり、一般人と比較 して私の経験値と音質評価のパラメーターが大変に高く多いということで、 このTa.Qu.To-SPLの音作りにおける分析と評価を述べていくことにする。 理屈っぽくなってしまいましたが、前述において音作りという表現をしましたが、 「何も足さず何も引かない」という発想からすると、そもそもスピーカーケーブルで 音を作るということが許されるのかどうか、これが最大のポイントなのです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- それでは先ずTa.Qu.To-SPLの音質を決定していったシステム構成を下記にてご覧下さい。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019181346.pdf 吉崎さんが作ったTa.Qu.To-Zeroはもちろんですが、どちらかというとHIRO Acoustic MODEL-CCCSを中心とした試聴を繰り返してきました。 そして、この後に一般的なスピーカーケーブルでは体験することがなかったという 私でさえ初めてというエピソードを述べながら音質を評価していくのですが、 Ta.Qu.To-SPLのカーボンパイプに貼り付けられているステッカーには次の一節があります。 「Verification by H.A.L. I」文字通りH.A.L.にて検証されたという意味です。 H.A.L.'s One point impression!!-Transparent MAGNUM OPUSの感動!! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1557.html とんでもないケーブルたちがやってきます!!Transparent OPUSフルライン!! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1351.html ここで私の結論を先に言うと、私が当フロアーで聴いてきた多数のスピーカーケーブルの中で、 上記で述べているTransparent MAGNUM OPUS/MOSC 8 (2.4m)税別¥8,300,000.と 同社のOPUS/OSC12(3.6m)税別¥5,250,000.の下に位置する音質としてTa.Qu.To-SPLを 評価したということです! もちろん、世界中には多数のケーブルメーカーがあり、各社のトップクラスの 製品を愛用されている皆様においては異論ありとおっしゃるでしょうが、あくまでも 上記のシステム構成と当フロアーにおいて私が実物を確かに聴いたものという範囲での 評価であることをお断りしておきます。 将来的には当フロアーに持ち込まれたスピーカーケーブルによって、前述の私の ランク付けが更新されることも十分にあるわけですから、あくまでも私の実体験に 基づく範疇での評価であるとご理解頂ければと思います。 そして、Ta.Qu.To-SPLの音質検討をしている過程にて、吉崎様はTransparent MAGNUM OPUSを じっくりと試聴され、そのエッセンスをもTa.Qu.To-SPLに生かしているということを ご報告しておきます。 さて、本章をまとめるために最も重要な事実を述べておきます。 Ta.Qu.To-SPLの試作第一号は4月末に当フロアーに持ち込まれました。 慎重にバーンインさせて試聴をしていましたが、当時の私は感動しなかったのです。 それからも色々なコンポーネントがここにやってきて、実に多数に渡る組み合わせで 試聴を繰り返し、私が感動出来なかったという事を吉崎さんにお伝えするまでに 一か月以上の時間がかかりました。 そこから吉崎さんの執念に燃える開発の悪戦苦闘が始まったのです。 これは企業秘密なので公開は出来ませんが、吉崎さんはスピーカーケーブルを チューニングするという技術をお持ちでした。 当フロアーに試聴予約がない時間、あるいは私が連休でクローズしている日などは 貸し切りとして、とにかく膨大な時間をかけてのチューニングを繰り返し、その チューニング変更を行う前と後の比較が出来るようにして頂き、私がじっくりと 両者を比較するという過程におけるキャッチボールを何度となく繰り返してきました。 私が明確に記憶しているだけで9種類もの音質があり、それを設定の各項目ごとに 比較試聴しながら私が選択した方向性へと進化していったのです。 その間にも吉崎さんは多数の設定変更を行い、私に聴かせるべき候補を二つ、 ないし四つに絞り込んでチューニングしていたので、ご本人は20種類以上の 設定を聴きながら開発を続けてきたという事になります。 つまり、Ta.Qu.To-SPLは吉崎さんの推奨する設定で絞り込んだ候補の音質を、 私が実際に聴きながら選択していった結果たどり着いた音のケーブルなのです! 前章で紹介した見た目は変わらないケーブルが、これほどに再生音の支配力があるのか、 という驚愕の事実を知り経験を繰り返してきた私は大変に勉強になりました。 そして、前述の“音作り”という意味が、この経験から生まれてきたものなのです。 Ta.Qu.To-SPLは皆様のスピーカーに新しい世界観をもたらし、皆様のアンプが出力 している情報量に新しい項目を追加してくれます! 「何も足さず何も引かない」それは何から足さず引かずなのだろうか? そもそも未知の要素が“何か”にあるわけで、Ta.Qu.To-SPLは何も足したり引いたりしません。 ただ、その言葉以上のことをしようと思っても出来なかったケーブル開発者たちに とってTa.Qu.To-SPLは大いなる脅威であることは間違いありません。 スピーカーとコンポーネント、そしてケーブルの設計者、開発者の人々でさえ 知らなかったパフォーマンスをTa.Qu.To-SPLは与えてくれるのです! 私の推薦の根拠は体験そのものです。それに勝るものはありません。 今後、H.A.L.のリファレンス・スピーカーケーブルはTa.Qu.To-SPLに決定します! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- どんなスピーカーケーブルでもテスターで測れば抵抗値はゼロ。オーディオ ジェネレーターから正弦波を出力し、アンプを通じてスピーカーケーブルの 端末でオシロスコープで観察しても伝送周波数帯域は数百キロHzまで平坦。 そんな初歩的なテストの結果は当たり前であり、電気的な測定では無味乾燥な 反応をするスピーカーケーブルなのですが、その両端にはアンプとスピーカーと いう増幅と変換器があるために、実際の再生音においては聴感上での周波数特性 に変化が起こる。 あるケーブルでは低域の重厚感にしびれ、あるケーブルでは高域の輝きに驚く。 そんな経験は皆様にもあると思いますが、測定上での結果と聴感上での周波数特性に おける違いを私たちは長らく議論の中心点としてきたのではないでしょうか!? というよりも、低音が出るケーブル、高温が伸びるケーブルというレスポンスの 違いを論じるということに終始していたのではないかと思います。 でも、それは無理もないことでしょう。私たちは完成品のケーブルを比較してみる 事しか出来ないからです。私の経験からも周波数特性が分かりやすい視点として 目の前に現れるので、論点としてはどうしても最有力の項目となってしまいました。 しかし! 上記のように吉崎さんがチューニングを進めていく過程において、この 私でさえ経験したことのないスピーカーケーブルという存在に新たな判断材料を 発見してしまったのです! このTa.Qu.To-SPLの開発のために聴いてきた課題曲は相当数に及び、その全曲での 音質評価を述べることは時間的にも文章量としても大変なので、最も多用して 音質変化が印象的だった数曲を事例として述べてみたいと思います。 H.A.L.'s One point impression!!-Transparent MAGNUM OPUSの感動!! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1557.html 上記の本文から次の一節を紹介しますが… -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 次の選曲はこれ。最近はある目的のために多用していた課題曲です。 ■Espace 溝口 肇 best よりタイトル曲の1. Espaceです。 http://www.archcello.com/disc.html http://mizoguchi.mystrikingly.com/ -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ここで「ある目的のために」と書いていますが、その目的とは、実はこの時点で 既にTa.Qu.To-SPLの各設定における比較試聴を始めていたわけです。 そして、本章で述べたい画期的な音質変化がこの辺から表れていたのです! ですから是非上記の「ある目的のために」から続く文章を再読して頂ければと 強くお勧めします。 更に今後の私の感動と分析に関連する項目として次の一節を引用しておきます。 「その大前提としてHIRO Acousticでは膨らんだ曖昧な低音は出さないので、低域の 音像を確認することが容易であり同時に音像の背後と周辺の空間をも見ることが出来る。」 これが大変重要なポイントであり、今後述べる課題曲の全てにおいて共通する 音質評価の基準となっていることです。更に次の一節も欠かすことは出来ない。 「つまりは、大編成の音楽では各パートの音階が違う楽器に対しては聴き手の好み によって、低音はこう高音はこうあるべきという主観的判断で解釈しても罪はない という事になるだろう。 しかし、チェロのように低音から高音に至るまでの広い音階の中で、一人の奏者 ひとつの楽器が奏でるという質的統一性がないと不自然になってしまい、私は そこをチェックポイントとして選曲したものだった。 一人の奏者が一本の楽器を演奏するという局面において、音階や音量によって 自然な質感が音色と空間表現の両方で満たされること。これは大変に高レベルな 要求かもしれないが、私はMAGNUM OPUSが見せてくれた素晴らしい再生音の造型と いうことに他のケーブルではあり得ない価値観を認めてしまったのです!」 これから述べることの結論を、この段階で言ってしまうことになりますが… 「しかし、こんな価格のケーブルが果たして売れるのかどうか、それは未知数であり 輸入元アクシスでもデモ機サンプルを所有していないという状況で、試聴によって お客様に価値観を提示するという事は今後出来ないものです。 今回の経験によってオーディオシステムによって最高の音質を望むという情熱的な ユーザーからの相談を受けた時に、その情熱に対して投資を恐れないという お客様が現れた場合に私が推薦できるケーブルのトップにMAGNUM OPUSを位置付ける ことが出来たという事は大きな収穫であったと思います!」 そうです! “こんな価格のケーブルが果たして売れるのかどうか” これに関する私の最終結論としてTa.Qu.To-SPLを推薦できる自信が出来たのです! その根拠とは何か、そこで再度下記を引用しました。 「非常に多くの倍音を含むチェロという楽器はバスレフ型スピーカーで聴くと、 (全てのバスレフ型スピーカーという意味ではありません)弓で弦を擦るアルコでの 演奏ではバスレフポートから排出される低音の在り方によって音像が見えにくくなり、 左右スピーカーの空間に茫洋とした低音を響かせることが多い。 そのような場合には楽音そのものが空間を埋め尽くし音像が認識できなくなり、 よって空間も見えなくなってしまう。つまり左右スピーカーのセンターにくっきりと 音像が立ち上がることにより、その輪郭を境にした奏者の周辺にある空間が見える ようになるという事なのです。」 これはHIRO Acousticというスピーカーであるからこそ語れることなのですが、 私が吉崎さんから提示された9種類の設定の中で、確か3番目と4番目の比較試聴を 開始した時のことでした。 Ta.Qu.To-SPLは音像を造形するのです! 言い換えれば、今までふんわりとした曖昧だった音像の輪郭を鮮明に描き出し、 更に音像のサイズをギュッと引き締め陰影感のある彫像のごとく左右スピーカーの 中間にくっきりと描き出すという他のケーブルではあり得なかった解像度の極みを もたらしてくれるのです!! 前述のようにスピーカーケーブルを評価する尺度を周波数特性を中心とする視野しか 持っていなかった経験からすると、この変化のベクトルは大いなる発見でした! 音楽を構成する楽音の音像、そこに音があるという実態感をスピーカーケーブルが 構築して眼前に並べていくという能力があったという事実を私は初めて体験したのです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 1. Espace 名レコーディングエンジニアSEIGEN ONO(オノ セイゲン)のサウンドデザインによる スタジオ録音であり、溝口 肇がリードソロをとりながらMaxine Neumanのセカンド チェロが加わるというデュオの演奏。 このアルバムの他の曲では楽音のない時の背景は無音。演奏そのもののS/N比は 素晴らしくいいのだが、このトラックだけは背景にテープヒスのような高音の わずかなノイズがある。 私は以前からマスタリングエンジニアのひとつのテクニックとして、敢て真空管の ラインアンプを通すことで楽音の質感とニュアンスをアレンジしているという事を 耳にしたことがあるが、このトラックはSEIGEN ONOの意思によるものか、そのような 細工がされていることが微小な背景ノイズから推測できる。 そのテクニックがチェロという楽音に温度感と柔軟性を与えているのだろうか、 ギスギスした感触はなく滑らかなアルコの低音がセンターから湧き上がってくる。 今までは、そのチェロが発する余韻感の広がりによるものだろうと思っていたのだが、 チューニングが進んていったTa.Qu.To-SPLが音像に素晴らしいダイエット効果をもたらす! 左右スピーカーの中間に漂っていた楽音のエネルギー成分というか、響きの グラデーションが次第に淡く薄くなって広がっていく情景に違和感を持つ人は いないと思うのだが、それは音像サイズをコントロールするという概念と技術が ないスピーカーケーブルを使っていた場合に限定されるということに気が付く!! Ta.Qu.To-SPLは石や木材の塊をノミや刃物で削り出していく彫刻のように、音像に 刃を入れ響きのぜい肉を削り出し、次第に演奏者の姿が浮き彫りにされてくるような 輪郭の鮮明さと、音の塊を削っていくことで音像サイズが次第に引き締まり立体感を 増してくるという変化をもたらす!! それはアルコで演奏されるチェロの余韻感というポイントでも確認された。 チューニング開始前と比較して高音階における残響時間が延長され、リバーブで 拡散された余韻感の滞空時間もぐっと伸びていく。 同時に開放弦に近い低音階の残響成分も空間への浸透圧が等しくなったかのように、 スピーカーの前後左右に拡散領域を拡大していく。 つまり、彫像のごとくに音像が明確になると前後感、奥行き感も鮮明になり、 チェロという楽器の中心点における音色が最も濃厚な部分と、余韻として空間に 放たれていく残響とのセパレーションが克明に描かれるということなのです! Ta.Qu.To-SPLは聴感上で大変ワイドレンジであるのだが、それは刺激成分を含まず 極めつけの清涼感をもたらす高域であり実態感ある低域として推薦したい!! その倍音成分が前述の要因からも豊かに響くようになりチェロに楽音に滑らかさを もたらすという事も周波数特性に起因する音質変化として追記しておきたい。 音階によって音像サイズが変化するが音色と質感はそのままにというチェロの音で、 他のケーブルでは体験しえなかった音像と背景の見事なコントラストをTa.Qu.To-SPLは 可能にしたという驚きと感動が、全ての音楽で今でも聴くたびに感じられるのです! 2. 世界の車窓から 1987年から放送されている長寿番組のテーマ曲でお馴染みのメロディー。 冒頭のキックドラムの連打と同時に展開する高音階のパーカッションが凄い! 上記ではアルコという奏法による連続する楽音において音像を造形すると述べたが、 それをもっと如実に聴かせてくれるのがキックドラムの音。これがまた素晴らしい! フット・ペダルにセットされたビーターがドラムヘッドを打つ、そのインパクトの 瞬間から発せられる打音はスピーカーのエンクロージャー方式によって独自の響きを 付加してしまう場合があり、スピーカーケーブルの音を論ずる以前の問題として 低音の質感を判定する基準を台無しにしてしまう。 しかし、HIRO AcousticとTa.Qu.To-Zeroにはその心配がない! その上で言えるのは 打楽器における音像の引き締まり効果というのは、言い換えればテンションの高まり という表現が適切なのかもしれない。 今まで「ドム! ドム!」というイメージだったのが「ダン! ダン! 」と切れ味を増す。 前述のチェロの楽音の核となる中心部の音色が濃厚になったという変化同様に、 キックドラムのインパクトの瞬間は誰でもわかる大きな変化と言えるだろう! 左右チャンネルに広がりるパーカッションが散りばめられる空間のS/N比は素晴らしく、 打音のひとつひとつの背景はまったくの無音。 その透明感ある空間にどっしりと根を張ったようなエレキベースが登場し克明な 低音を弾き出す。その音像サイズは半分ほどに引き締まっているのが分かる! センター定位のベースはドライで残響を残さないという録り方、それに対して 同じセンターから湧き上がる溝口 肇のチェロは爽快な残響を引き連れて響き渡る。 たくましさを感じるチェロの低音はベースの低音と同じセンター定位であっても 混濁することはなく完璧な分離感で奏でられ、両者の背後で金属的な打楽器の音が 何重に交叉しても見事な遠近法によって前後に距離感をもって響き渡る気持ち良さ! ほほ〜、と感心してしまったのは音像の引き締め効果というものは低音楽器における 観察として感じていたものだが、多種多様なパーカッションの質感でも確実に音像の 縮小と余韻感の充実が実感される。これはいいです! Ta.Qu.To-SPLを使い始めると同じスピーカーが描く音像そのものを、楽音の音階の 高低の区別なく引き締め縮小するということがどなたでも判ることでしょう。 新聞の写真もグラビアの高精細な写真も拡大していけば点・ドットの集合です。 微細な点を描けるということは画像の情報量として解像度が上がるという原理も お分かり頂ける事と思います。 Ta.Qu.To-SPLは音のドットを究極的に細かく描くことが出来るケーブルであり、 そのドットの集合体はあたかもバラ撒いた砂鉄の中に落とした磁石によって磁界の 模様が出来るように音像を集約していくという機能性を持った初めてのケーブルです! こんなスピーカーケーブルは他にはありません! [5]ダンピングとアイソレーションとは違うという意味を美音として聴かせるTa.Qu.To-SPL 上記ではTa.Qu.To-SPLの最大の特徴であり他社ケーブルにはない機能性として 音像の集約と縮小ということを述べましたが、それは音像を鮮明にすることで 奥行き感と立体感の創造にもつながるという効用とも共通すると結びました。 さて、ここで私が大分昔にやったいたずらを紹介することにしましょう。 それは特定のスピーカーとコンポーネントに関わらず、スピーカーケーブルに 質量を加えるという単純な実験でした。 スピーカーの下に敷くというか、置いて使用する約2キロ程度の大理石のキューブが ありました。その一個を床に置きスピーカーケーブルを乗せます。更にその上に 同じ大理石を乗せ、左右で六ヶ所、ケーブルを石で挟むという状態を作ったのです。 合計24キロという大理石で左右のスピーカーケーブルを挟み、その前の音質と 比較すると面白い現象が起こりました。 何もせずに床にスピーカーケーブルを這わせた時に比べて余韻感が減衰するのです。 これが良いかどうかは好みという事になるでしょう。 スタジオ録音のドラムやベースを比較的音量を上げて聴く、その際のスピーカーは 大口径ウーファーでバスレフ型のスタジオモニター的なものを使い、低音楽器の 引き締まり方を求めるような時にはスピーカーケーブルに重しを乗せるというような 方法でダンピングの効いた低音の迫力というものも評価の対象になるかもしれません。 これは重しを乗せるという単純な方法ですが、ケーブルそのものに金属でもいいし 質量のある材料を巻き付けたりという方法でも同様な現象が起こります。 これは導体に対して荷重をかけたりして、ケーブルそのものを押さえ込むことで 振動しないようにするということで、その結果として余韻感が減少するのです。 つまりダンピングすることで楽音から発生した響きを調整することで音像を明確に しようとするものであり、その実験は簡単にできるので試してみるのもいいでしょう。 そんな変化が起こるという事を前提にして、私が前述した「何も足さず何も引かない」と いう理屈がここでも出てくるわけです。 余韻感が減少したとして原情報から響きというものを引いてしまったのか。 あるいは重しを乗せる前には余分な響きが足されていたのかという推論です。 そして、その次にケーブルにおける“音作り”という考え方も、吉崎さんの手による 各種設定による変化の中から選択したという観点では、ある音質を特定したという 意味で作者が作り出した音の一種とも言えるかもしれません。 ここで私が上記のダンピングするというエピソードをなぜ思い出したのかというと、 Ta.Qu.To-SPLで聴くヴォーカルが実にチャーミングで美しいからです。 そして、更にオーケストラにおける弦楽器の質感と管楽器の音色の素晴らしさを Ta.Qu.To-SPLで実感したからなのです。 H.A.L.'s One point impression!! - Y'Acoustic System Ta.Qu.To-Zero Vol.3 https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1500.html 上記で使用したCheryl Bentyne「THE COLE PORTER SONGBOOK」の11.Bigin The Biginです。 Dave Tullのドラム伴奏だけというCheryl Bentyneのヴォーカルが冴えわたる一曲。 http://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICJ-567/ 前述のように音像引き締め効果が抜群に発揮されたDave Tullのドラムは言うに及ばず、 Cheryl Bentyneのヴォーカルのしなやかさ滑らかさが明らかに以前と違うのです! この爽快無比なヴォーカルの空間への拡散と、前述のように膨らまずテンションが 高まったドラムというシンプルな演奏であればこそケーブルの真価が見えてきます! H.A.L.'s One point impression!! - HIRO Acousticにしか出せない低域!! https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1481.html そして、上記で試聴した、マーラー:交響曲第五番 嬰ハ短調 フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 録音:2017年2月20-22日/シュトールベルク街スタジオ(ケルン) https://ml.naxos.jp/album/HMM905285DI2 このアルバムの第一楽章Trauermarschでの壮麗なトランペットの響きによる空間展開、 グランカッサの重厚かつ雄大な響きなどはTa.Qu.To-SPLで聴くと惚れ惚れしてしまいます。 そして、最も印象的だったのがハープと弦楽器のみで演奏される第四楽章Adagietto。 幾重もの弦楽のハーモニーが空間を埋め尽くし、弦楽五部の各パートの響きが 空間に立体交差する余韻感を提示する、ため息が出るほどに美しい調べ。 主に中高域の余韻感というものが上記の選曲において功を奏したものか、弦楽器の 絶妙であり、しなやかな質感はTa.Qu.To-SPLに込めた作者の美意識の表れであると 私は感心してしまいました。 音像が引き締まっただけでなく、なんでこんな空間表現が出来るのか!? これです! 広大な空間を表現するのに必要な要素、それは極めて微細な余韻成分を いかにして忠実に再現できるのかということになってくるのです。 そこで前述のスピーカーケーブルに重しを乗せたり、ケーブルの導体を締めつけるが ごとくのダンピングを行うことの是々非々ということになってくるのです。 ここで思い出して頂きたいのが次の画像です。 https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110621.jpg Duelund DCA12GAという導体をコットンとシルクという二重の繊維質で包み込み、 振動吸収ゲルを巻き付けるという導体をフローティングさせたがごとくの構造。 そして、更にS.F.I.Sというユニークなアイデアにより床からフローティングし、 床からの振動から完全にアイソレーションするという独自機構なのです! https://www.dynamicaudio.jp/s/20191019110527.jpg それを私は次のように解説していました。 「導体内部に起因する振動と外来要因の振動をアイソレーション」 スピーカーケーブルに重しを乗せたり質量のあるものを巻き付けたりという手法は、 ずっしりとした重量感をまとわせることで、手にした時の実感として振動対策の効果を 想像してしまうでしょうが、実は質量を印加するだけでは振動は完全には止まりません。 特定周波数における固有の振動モードが変化するだけなのです。 それは不思議なことですが、ケーブルの内面的には電気的な音声信号を流す導体にも 振動モードがあり、スピーカーから出力されて空気中を伝わってくる音波によっても 外的な振動をもたらすという内外の振動モードに対する影響があるということです。 そして、それはケーブルを重くする事だけでは解消できるものでもなく、その方法に よる副産物として再生音の微弱な余韻感が減じられてしまうというのがダンピングなのです。 Ta.Qu.To-SPLは内面的な導体の振動モードに関しては上記の繊維質の二重構造と 振動吸収ゲルにおいて隔離し、外的要因に関してはS.F.I.Sによってケーブル全体を 分離するという手法によって振動モードの変化による影響を回避しているのです! これがTa.Qu.To-SPLにおけるアイソレーションなのです! 押さえ込み締め付けるというような機械的な荷重と圧力によって減衰してしまう 余韻感と空間情報は、私が上記で述べた感動できる音という目標に対して、実は ふさわしくない手法であったということです。それも聴けば解かってしまいます! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- スピーカーケーブルというアイテムの音質評価のパラメーターで、この項目なら この曲を、このポイントならこの演奏個所を、という評価項目ごとの選曲は確かにあります。 私は経験上で多数の項目をチェックするのにふさわしい選曲というノウハウを持って いるものと自負していますが、Ta.Qu.To-SPLの開発に当たり実に多くの選曲で試聴 してきましたが、チューニング前後の比較試聴という吉崎さんとの音のキャッチ ボールの最終段階で使用したディスクはこれでした。 Kirkelig Kulturverksted 30 years’ fidelity http://kkv.no/en/musikk/utgivelser/2000-2009/2004/divers/ Kirkelig Kulturverksted(KKV)は、1974年にErik Hillestadによって設立された ノルウェーの会社兼レコードレーベルです。 私がこのディスクを初めて紹介したのは2004.11.27-No.1007-での配信でした。 この当時からハードウエアだけでなくハルズサークルでは優秀な音楽ソフトも 提供していたものです。その一節を引用しますと… _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/「Only H.A.L.'s Circle member's limited sale!!」 今年6月に行った同企画においてもたくさんのご注文を頂き本当にありがとうございました。 皆様のコレクションに魅力的でありレアなディスクが増えたということで喜んで頂けた様子でした。 さて、今回は音楽の趣味がどのような好みの皆様にも楽しんで頂けるであろうという 私の推薦盤の限定販売のお知らせです。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- まず最初にご紹介するのは世界一長いレーベル名のこれです(笑) http://www.kkv.no/ kirkelig Kulturverksted(シルケリグ・クルチュールヴェルクスタ)という大変 長い名前のノルウェーのレーベルです。「教会の文化工房」という意味です。 私も10年ほど前から知っているレーベルであり、この試聴室にも何枚もディスク をコレクションしています。その中でも「これは!!」というものを絞り込んで 皆様にご紹介いたします。 (1)Thirty Years’Fidelity ハルズサークル価格 税込み¥3,500. 文字通り同社の30周年記念コンピレーション・アルバムです。 Mortensrud churchというモダンデザインの建築を様々な構図と編集で40ページ 以上の見事な写真集としてセンスの良いジャケットになっています。 同レーベルの中心的なアーチストの名曲を15曲収録しており、大変鮮明な録音の 楽音とヴォーカルの質感、そして私がコンポーネントの分析で音像とフォーカス イメージを絞り込んで更に音場感をかもし出すというチェックポイントを多数 含んでいる録音です。 教会で録音されたものをじっくりとミックスし、マスタリングを入念に行うことで 現行CDの規格でありながらゆったりとして高品位な音場感が収録されている。 特に私は3.7.8.14トラックの演奏には他にはない魅力を感じており、ヴォーカルが 空間に浮かぶということを知り尽くした録音技術を賞賛したい。 15トラックではなんと、アランフェス交響曲のおなじみのメロディーを教会で ピアノとチェロがすこぶるつきの美しさで演奏しているからたまらない。 時間が許せば全曲を聴きながらレポートしたいところだが、残念だ。 引用終了 ということで、今から15年前のことでした。一口で言うと相応のオーディオシステムで このディスクを聴くとハイレゾという言葉は全く不要と思えてしまう素晴らしさなのです。 曲名はノルウェーの言語なので私は発音出来ませんが、15年前にはなかった同社の情報が 現在ではwebで集められますので、下記の選曲の参考として関連リンクを貼り付けました。 クラシックでもジャズでもない、ロックやポップスでもない、このKKVのアルバムで 私はTa.Qu.To-SPLの完成度と素晴らしさを確認していったのです! 7. Som En Storm, O Hellig And - Ole Paus & Oslo Chamber Choir https://www.youtube.com/watch?v=9CJBropx7SE ちょっと調べてみると、このOle Pausはスウェーデンとノルウェーのバラードの 伝統におけるノルウェーの吟遊詩人であり、作家、詩人、俳優とのこと。 彼はノルウェーで最も人気のあるシンガーソングライターの一人と考えられ、 ボブ・ディランに相当するノルウェー人であり「国民の声」と言われていという。 この曲の冒頭は大変美しいオスロ室内合唱団による合唱から始まります。そして、 この混声合唱が始まった瞬間に私の口は半分開き、声にならないほ〜というため息が…。 「なんという美しさなんだ! この透明感溢れる歌声が広がっていく空間と余韻の素晴らしさ!」 ノルウェー語でSom En Stormとは「嵐のように」という意味らしいのだが、その嵐の 前の静けさを歌ったらこうなるのだろうかと思ってしまうほどの清々しいコーラス! もうこれだけでTa.Qu.To-SPLのアイソレーション効果の恩恵というものが実感される! そして、左右チャンネルに二本のギターが軽やかにカッティングを刻むリズムが入り、 センターにはウッドベースが登場する。ここです! センター定位のベースは膨らまず広がらず極めて鮮明な輪郭を描くのだから堪らない。 そして、そのペースの定位は同じくするが更に遠方の上の空間からサックスが登場する。 このサックスは十分にウェットな質感を保ち、正に点音源と指さすことが出来るような 引き締まった音像から呆れるほど広大な音場感の広がりをもって展開する。 そんな楽音の舞台装置が揃ったところでOle Pausの渋いヴォイスが出現する! 歌うでもなくラップのように叫ぶでもなく、しっとりとしながらグルーブ感のある ヴォイスが正に吟遊詩人として語り掛けてくるリアルさに背中がぶるっとする! 知らぬ間にOle Pausの背後にはオルガンが表れ、長いトーンの合間に細かい音符を挟み、 ギターとベースの背景に風に揺らぐ音響カーテン、いや、オーロラのように煌めき 揺れる響きの背景を形成する。これがまた素晴らしい! 二本のギターはヴォイスの合間に交互にスリリングな見せ場を作り、間奏での サックスを再度迎え入れ、リードのバイブレーションをたなびかせるサックスとの 連携において、あたかも教会という豊かな響きの空間で吹いているような美しい 音場感を私の眼前に展開していった! この音場感はいったい何なんだ! youtubeでパソコンのスピーカーで聴いている皆さんには想像も出来ないハイエンド オーディオの極みとも言いたい演奏空間にしびれていると、オスロ室内合唱団の コーラスが冒頭の主題をもう一度繰り返し、その厳かな響きが数秒間私の頭の中に 余韻のリフレインを残して幕を閉じる! いや〜、これには震えました!! 10. Mitt Hjerte Alltid Vanker - SKRUK / Rim Banna https://www.youtube.com/watch?v=42fIQbjp3bY SKRUKは1973年に設立されたノルウェーの合唱団で、指揮者のPer Oddvar Hildreと 共に現在まで広範囲な活動をしている。Rim Bannaはパレスチナの歌手、作曲家。 この曲も、くれぐれもパソコンのスピーカーで聴いて誤解なさらないように(笑) Rim Bannaが登場するのは冒頭の一分間だけ。しかし、このソロバートが凄い! 伴奏はウッドベースだけ。それも、わずかにそっと弦に触れるだけという弱音の ピッチカートでヴォーカルに寄り添うような低音の起伏を響かせる。 このRim Bannaのソロヴォーカルが聴かせる音像の忠実さ克明さという描写力に驚く! 同時に彼女の歌声によってスピーカーの周辺に出現するサウンドステージの素晴らしさ! それはヴォーカルの質感に先ずは安定した艶やかさと滑らかさが感じられるという 基本構造の上に成り立っていて、ここで強くTa.Qu.To-SPLのアイソレーション効果が 人間の声をここまでリアルに浮き上がらせるのかという発見に言葉を失う! いい!! 一分後にセンターからアフリカ系パーカッションの乾いた打音が出現し、同時に 右チャンネルからは一定間隔で鳴らされる鈴の音が幻想的な空間を醸し出す。 その辺からベースは低音階のピッチカートで存在感を示し始め、先ずはSKRUKの 男声合唱が重厚なベールを思わせるハーモニーで湧き上がってくる。ここがいい!! 幾重にも重なるコーラスはパートごとの分解能を理路整然と示し、センター右寄りの 中空に極めて鮮明であり美しいピアノが登場する。このピアノの質感は絶妙な立体感と ともに、まさに空間を転がるように一鍵ずつの打音の連続と、その瞬間から放出される 透明感抜群の響きの連鎖を展開していく。これは見事! ピアノの一弦にも音像あり! ゆったりした男性合唱が招き寄せるように女性コーラスが登場し、youtubeでも分かる バラード調の旋律が上品なうねりを伴って重なり合っていく。素晴らしいです! 右チャンネル寄りのピアノが儚なげなメロディーを奏でていると、左チャンネル寄りの 後方から女性ソプラノが立ち上がり清涼感溢れるみずみずしい歌声を披露してくる。 伴奏楽器はシンプルであるが繰り広げられるコーラスの響きの階層は美しい連なりを見せ、 それを縫い上げるようにピアノの美音が演奏空間を引き締めながら、しっとりと幕を下ろす。 スピーカーケーブルにおけるアイソレーション効果が創造した美的空間の醍醐味に、 演奏が終わった後も数秒間、私は動けなかったことにハッと気づく! 15. Adagio From Concerto di Aranjuez - Aage Kvalbein https://www.youtube.com/watch?v=1KUgvujn_1g Aage Kvalbeinはノルウェーの チェロ奏者であり、ノルウェー音楽アカデミーのチェロ教授。 それにギターとオルガンというシンプルな編成によるアランフェス協奏曲という取り合わせ。 恐らくはパイプオルガンのある教会で録音したものと思われる。実はこの曲は Ta.Qu.To-SPLの開発において最も厄介な課題曲であり、逆にTa.Qu.To-SPLが完成 した今では、その真骨頂を聴かせてくれるという選曲でもある。 収録を楽器ごとに行ってスタジオでミックスするという録音ではなく、恐らくは 三人の演奏者が同じ教会という空間で一発録音したのではないかと察する内容。 チェロ奏者の息遣い、オルガンのパイプをかすめる風切り音、譜面をめくったのか わずかな接触音などバックグラウンドノイズが冒頭から聞こえるライブ感がいい! 厄介な課題曲というのは教会というひとつの空間での録音でありながら、チェロと ギターとオルガンには三者三様の異なる音場感が存在すると感じたからです。 パイプオルガンは背後から空間を包括するような響きの展開で一定なのですが、 ギターとチェロは演奏の進行状況で異なる余韻感を持ち、特にチェロは最初のアルコと 間奏でのピッチカートでは響きに違いが感じられたからです。小うるさいことで失礼! スタジオ録音であればヴォーカルや楽器ごとにブースが分かれ、マルチマイクで 個々の音をドライに鮮明に録音し、それを時間をかけてミックスしてバランスを とるという手法ではないというのがポイントなのです。 そのような方法であれば、個々の楽音にかけたリバーブの存在も分かるので、 楽器ごとの音像をチェックして分離感も意識し、それぞれの楽音の響きが どのくらいオーバーラップしてもよいのかという判断もしやすいもの。 しかし、この曲のようにひとつの空間で収録された演奏の各パートを、臨場感としては ひとつの音場感に留めたいが、楽音の立体感としては適切なセパレーションも出したい ということが私の要望だったからです。そんな我が儘が厄介な選曲という理由です。 チェロとギターはほとんどセンター定位なのですが、ギターはわずかに左寄り、 チェロはわずかに右寄りという定位感があり、最初はギターでのお馴染みの旋律と なるコード進行の4フレーズが爪弾かれ、そしてチェロが入ってくる。そして… Ta.Qu.To-SPLの開発が進み、今まで述べてきた各項目の完成度が高まってきたと 実感できたのは、先ず冒頭の4フレーズのギターの再現性でした。すると… ここです! 教会という大空間でギター奏者の前にマイクが置かれているという 構図は推測が出来るもので、その残響と音像の関係もライブ録音に近い雰囲気と いう事でおれば簡単に済ませてしまっても良いでしょう。 ところが完成したTa.Qu.To-SPLは、のっけからこのギターの音を浮き上がらせると いうか、3Dのように立体的に盛り上げて聴かせるという芸当をこなしてしまったのです! 大空間を背にしているはずなのに、ギターの一弦ずつの音像が集約され縮小されたと いう効果なのでしょうか、まるで飛び出す絵本のようにぐっとこちらに押し出して 来るかのようなエネルギー感の集約を見せ、音響的クローズアップとでも呼びたい 楽音の集中力を高めているのです! こんな違いをスピーカーケーブルが出すのか!! 短時間で察知した変化はギターだけでなくチェロにも引き継がれ、今までは平面的に 聴こえていたアルコの響きに一種の緊張感をもたらし、そのテンションの高まりが 立体感として表現できるような陰影をもたらすのですから驚いてしまいました! アルコで弓を切り返し低音階ではゆったりと残響を広げたかと思うと、今度は 高い音階に移行すると音像がキュッとコンパクトになり、放出する余韻感に 幻想的な明るさをもたらすように展開する。しかも艶やかな音色が実に魅力的! パイプオルガンが長い単音を通奏する際に教会内部の一次反射音が感じられるような、 大きな空間を想起する音場感の中で、交互に旋律を奏でるギターとチェロの掛け合いは 同時にライブ空間での程よい音像サイズが観察できるようになったのです! Ta.Qu.To-SPLの最大の特徴である音像と空間表現の両立ということがシンプルな 編成の録音において見事に発揮されたという一曲です!! いやいや、こんな変化をケーブルが出すのか! いやいや、これこそTa.Qu.To-SPLの真骨頂だったのです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ここで第四章の冒頭で述べた一言を再度記しておきたい。 「皆さんはスピーカーケーブルに何を求めるだろうか!?」 私は今の段階になって、この言葉を撤回しなければと考え始めているのです! なぜか!? それは聴感上の周波済特性にまつわる議論に終始していた私、あるいは私たちは Ta.Qu.To-SPLの音を知らなかったからです! つまり、Ta.Qu.To-SPLの音を知らなければ相変わらず過去の論点でのみスピーカー ケーブルを評価するしかないということです。 この私のリリースをご一読頂き、そして皆様のスピーカーでお試し頂いたとしたら、 その時こそ「皆さんはスピーカーケーブルに何を求めるだろうか!?」と問いかける ことが出来るでしょう。 2019年秋、H.A.L.の音は変わりました! そして、これからは皆様のスピーカーの音を変える時なのです! |
担当:川又利明 |
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