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H.A.L.担当 川又利明
    
2019年8月13日 No.1557
 H.A.L.'s One point impression!!-Transparent MAGNUM OPUSの感動!!

No.1186 2015年1月14日「輸入元サイト更新よりも早いアップグレードサービスと新製品速報!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1186.html

思えば前代未聞のMAGNUM OPUSが発表されたのは上記のように2015年のことでした。
私もこれまでにTransparent OPUSまでは体験していたものの、MAGNUM OPUSに
関しては聴くことが出来ない4年間だったわけですが、輸入元アクシスの好意により
遂にスピーカーケーブルにおいて初体験という機会が訪れたのです。

この私が初体験というスピーカーケーブルがやってきます!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1554.html

たかがケーブル、されどケーブルという概念は関心のない人々にとっては体験しなければ
知り得ない世界観だけに、その体験のクォリティーによってケーブルに対する価値観が
大きく変わっていくものでしょう。

その意味でも私がここH.A.L.において実演するケーブルの実体験レベルというものは
世界屈指のクォリティーであると自負するところです。

さて、おさらいとしてTransparent MAGNUM OPUSとはいかなるものかは下記をご覧下さい。
http://www.axiss.co.jp/cms/wp-content/uploads/2015/01/Transparent_News_2015MagnumOpus.pdf

しかし、このような資料を何度読んでもケーブルの価値観は理解できないものです。
私も発表当時はそのように思っていましたから!

期間限定で私に貸し与えられた日数は長くはありません。しかし、このような
ケーブルはつないだ初日に真価を発揮するものではないと百も承知の私は、
先ずエンハンサーCD-ROMを50時間以上リピートさせてからの試聴に臨みました。

私が初体験したMAGNUM OPUSはスピーカーケーブルMOSC 8 (2.4m)税別¥8,300,000.です。
その存在感ある姿を記念として撮影したものが次の写真です。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190811154542.jpg

資料には「あたかもブガッティ・ヴェイロンやパガーニ・ウアイラなどのスーパーカーを
思わせる優美なフォルムを持つカーボンファイバーのハウジングとノニルフェノール2
液性エポキシ・レジンによる8kgを超える究極の重量級ネットワーク・モジュール」と
ありますが、実物を目の前にすると納得させられてしまいます!
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190811154532.jpg

そして、自信をもってコーディネートした今回の試聴システムは下記にて。

H.A.L.'s Sound Recipe / Transparent MAGNUM OPUS - inspection system

https://www.dynamicaudio.jp/s/20190811154523.pdf

今までずっとHIRO Acoustic MODEL-CCCSはモノパワーアンプ4台でバイアンプにて
鳴らしてきましたが、このケーブルの真価を聴き分けるために敢てパワーアンプは
2台としてフルレンジ動作にて使用しました。

バイアンプのメリットは十分に承知しているものの、MAGNUM OPUSを中高域のみ
低域のみに使っての検証は意味がなく、また同じケーブルを2ペア用意することも
不可能であり上記のシステム構成としましたが、聴き始めたら…そんなことは
どうでも良くなってしまうような新世界が現れたのです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団

私は美辞麗句を多用して特定商品を褒めそやすということはしない主義なのですが、
音質評価の第一関門として この曲で引っかかってしまったら先には進めないというほどの
試聴回数の多い第二楽章が始まった時に私はこの言葉を使う事を躊躇いませんでした!

「なんだこれ! 圧倒的な美しさと分解能の共存! こんなボストンシンフォニーは初めてだ!」

スピーカーもコンポーネントも従来通り、いや! バイアンプを止めているというのに
この圧倒的な弦楽器の美しさと滑らかさはどういう事なんだ!

スピーカーケーブルを変えただけで、しかもパワーアンプは1セットだけというのに
オーディオシステムの音質的支配者とはこれだったのか!

Transparent OPUSのインターコネクトとスピーカーケーブルを使用した事は何度も
あるが、その際に感じたオーケストラの充実感と滑らかな弦楽器の質感はOPUSでも
確認してきたのだが、これは次元が違う!

そして、以前の記憶と照合して極めて重要な評価項目を発見した。
冒頭の弦楽五部のアルコによる流麗な合奏部でトライアングルが叩かれる。

他のスピーカーケーブルでは、そのトライアングルの音はどうだったか。
「カチィーイィーイィーイーン」と言葉で表すとこうなっていたと思う。

トライアングルの打音は明るく輝き、その煌めきが強いほどオーディオマニア的には
高域の情報量が多いのだ、などと私も考えていたものでした。

そして、その打音の質感には上記の言葉で韻を繰り返すように響きに揺らめきがあり、
高音のみのうねりが感じられること、星の瞬きのようにキラキラと輝くように響くことも
解像度の成果として良いことなのだと勝手な評価基準を作っていたようなのです。

ところがMAGNUM OPUSで聴くトライアングルは「カチィーーーーン!」という音なのです!

つまりトゥイーターが躍動する高音打楽器の響きに揺らめきはありません!

そしてトライアングルの音像は極めつけに絞り込まれ極小サイズで空間に浮かびます!
余韻がうねるような強弱感をもって響きの過程で瞬くような傾向は皆無です!
これこそ自然なトライアングルの楽音だったのです!

オーケストラのステージの広さからして大変小さい楽器であり、その存在感を
どのように再現するかという解釈で私は重大な過ちを犯していたのではと気が付いたのです!

つまり、トライアングルの音が派手に聴こえ、強く明るく輝き、揺らめくように余韻を残し、
星の瞬きのように響きのうねりを見せつけてくることが情報量の多さでもあり分解能の
素晴らしさなのではないかと長年に渡り信じてきたようなのです。

ところがMAGNUM OPUSで聴くトライアングルで私は自分の過ちに気が付いたのです!

以前に評価してきたものは実は変調歪に侵されてきたトライアングルだったのだと!

私が鳴らすオーケストラは、この部屋のエアボリュームと音響特性を活用して充分な
ダイナミックレンジを堪能できるレベルの音量で聴いています。

その音量ではトゥイーターにも瞬間的には数百ワットというパワーを送り込んで
いることが普通であり、たった1インチのトゥイーターに対して相当なパワーで
駆動している状態があります。

ここでTransparentの技術資料から新しいネットワーク技術という次の一節を引用します。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

MAGNUM OPUSのケーブル設計/製造技術の革新はネットワーク精度のさらなる向上を促しました。
ネットワークはオーディオ帯域に干渉してS/Nや信号品位を悪化させる高周波ノイズを
フィルターリングすると同時に、ケーブルの可聴帯域内における電気的共振を抑制し、
信号の純度を高いレベルで守るトランスペアレント独自の優れた技術です。

ケーブルはわずかではあれ、それ自身が L/C/R 成分をもちます。
そしてそれは、ある時定数の電気的共振回路を形成し可聴帯域内で信号に作用し
スペクトラムを滲ませます。また、外部からの RF ノイズを誘い込むアンテナと
しても働き、微小信号を変調させます。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

オーディオケーブルにおいて音質を決定するものは導体の材質、絶縁法と構造と
いう三大要素だと私も以前から理解していました。

そこにネットワークによるフィルタリング技術という概念と実際の技術を投入して
いるのは世界的に見てもTransparentとMITくらいのものではないだろうか。

そこに着目していないケーブルメーカーにとっては、そんなの関係ない! という
自己主張があり、それでも音質的に優秀なケーブルはありますが、研究課題として
取り組むだけの意欲と開発力・技術力がないからという実態もあると思います。

私はここまでオーケストラにおけるトライアングルという一つの楽音にこだわった
分析と解釈を述べてきましたが、それをマニア的偏見と言われてしまえばそれまで
でしょうが、高域再生において聴いて解りやすいサンプルを提示したに過ぎないと
私は考えています。その証拠はあるのか!? はい、あります!!

他のケーブルでは聴くことのできない弦楽器の美しさと滑らかさ、管楽器の質感が
正確な余韻感によってもたらす空間再現性の素晴らしさ、大編成オーケストラに
おいて各パートの楽音が本来あるべきサイズの音像として捉えられる忠実さ!

どの項目においても高域の変調歪から解放された時の美意識をMAGNUM OPUSが私に
教えてくれたからに他ならず、それは誰しも聴けばご理解頂けることだからです!

そして、その性能と特徴はその後の課題曲でもすべてに渡り実感できたからです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次の選曲はこれ。最近はある目的のために多用していた課題曲です。
■Espace 溝口 肇 best よりタイトル曲の1. Espaceです。
http://www.archcello.com/disc.html
http://mizoguchi.mystrikingly.com/

ソロのチェロのように聴こえますが実はセカンドチェロも含むデュオの演奏です。
ホール録音によるクラシック系のチェロの録音は多数ありますが、ホールエコーを
含んだ録音では音像と音場感の在り方がそもそも余韻を多く含んでの空間表現であり、
課題曲として私が求めていたチェックポイントにそぐわないと考えたからです。

チェロは人間の声に最も近い周波数分布の楽器と言われていますが、摩擦感のある
震えるような弦の振動が感じられる低音階から、キュッと絞り込まれる高音階まで
音階によって音像サイズが変化して聴こえるポイントを重視してのスタジオ録音での
チェロを私は課題曲としてよく使用してきました。

ずっしりと重みのある低音から始まるスタジオ録音の鮮明なチェロが、HIRO Acoustic
MODEL-CCCSの高解像度、高速反応のウーファーから溢れ出てくると…!

名レコーディングエンジニアSEIGEN ONO(オノ セイゲン)のサウンドデザインによる
スタジオ録音とは思えない素晴らしい音場感が先ず私の耳を惹き付けます!

先ず、この第一声を聴いた瞬間に私はMAGNUM OPUSの存在感を察知しました!

「おー! 読書では行間を読むというが、MAGNUM OPUSでは空間を見ろということか!」

スタジオ録音にしてチェロの紡ぎ出す余韻感をどのように録音に封じ込めるのか、
それはレコーディングエンジニアのセンスでありマスタリングの妙でもある。

1988年にニューヨークのメディアサウンドスタジオで録音されたこの曲では、
チェロの楽音に尾を引くようなリバーブではなく、聴き手に演奏空間をイメージ
させるような巧妙な余韻感が施されていた。そして音像も見えるのが凄い!

非常に多くの倍音を含むチェロという楽器はバスレフ型スピーカーで聴くと、
(全てのバスレフ型スピーカーという意味ではありません)弓で弦を擦るアルコでの
演奏ではバスレフポートから排出される低音の在り方によって音像が見えにくくなり、
左右スピーカーの空間に茫洋とした低音を響かせることが多い。

そのような場合には楽音そのものが空間を埋め尽くし音像が認識できなくなり、
よって空間も見えなくなってしまう。つまり左右スピーカーのセンターにくっきりと
音像が立ち上がることにより、その輪郭を境にした奏者の周辺にある空間が見える
ようになるという事なのです。

その大前提としてHIRO Acousticでは膨らんだ曖昧な低音は出さないので、低域の
音像を確認することが容易であり同時に音像の背後と周辺の空間をも見ることが出来る。

これらの要素を考慮して更に私が他のシステムで鳴らした同じ曲の音質を思い出しても、
今ここで鳴っているMAGNUM OPUSによる超高解像度の低域の素晴らしさと空間表現の
見事さが、先ず私の耳と過去の記憶に対して格の違いを見せつけてきたという事だ!

演奏が進むとMaxine Neumanのセカンドチェロがセンター左寄りの空間に登場し、
アルコからピッチカートに切り替えての二人のチェロが空間で交叉する響きを発する。

左手の微妙なビブラートが楽音を震わせながら音階は駆け上がり、低音階での音像
サイズから急激に縮小されたチェロが絞り込まれたフオーカスをセンターに描きだす!

「あっ! 優しい滑らかなチェロだ! 音像はタイトでも余韻感はふくよかとは凄い!」

溝口 肇の左手が素早くチェロのネックを滑り降りてf字孔近くの指板を捉え、
キリッと引き締まったテンションの艶やかな高音を空間に解き放つ有様を、
カメラをクローズアップするように左右HIRO Acousticのセンターに描き出す。

前述の大編成オーケストラにて芳醇な響きの質感にうっとりした思いが、今度は
チェロ一本が奏でる音階のすべてに当てはまり、超高域におけるフィルター効果が
もたらす楽音の清浄効果にESOTERICとHIRO Acousticは見事に反応したことを証明した。

それは言い換えれば再生音全体におけるノイズフロアーの究極的な低減効果というか、
楽音と無音であるべき周囲の空間の識別を可能にしたものであり、残響の最後の
一滴が消える瞬間を捉えているからこそ本物の静寂という対比が実現するというもの!

楽音の質感に影響を及ぼしている変調歪は音色の変化や雑音成分として、本来の
音質とは別物として直ちに認識できるものではない。むしろ楽音の性格的な変化
というか、耳で聴いて美味しいか不味いかという感覚的な判断で初めて解るもの。

多数の高音楽器と低音楽器が混在する演奏では、その楽音ひとつずつに対して
再生音の特徴としての大小、強弱、濃淡という分析が出来るだろう。

言い換えれば、ジグソーパズルの一ピースのサイズが多少大きくても小さくても、
組み合わせ隣り合わせるピースとの境目の形状が一致すればはめ込むポジションは
ここだと納得させられてしまうかとごとくである。

つまりは、大編成の音楽では各パートの音階が違う楽器に対しては聴き手の好み
によって、低音はこう高音はこうあるべきという主観的判断で解釈しても罪はない
という事になるだろう。

しかし、チェロのように低音から高音に至るまでの広い音階の中で、一人の奏者
ひとつの楽器が奏でるという質的統一性がないと不自然になってしまい、私は
そこをチェックポイントとして選曲したものだった。

一人の奏者が一本の楽器を演奏するという局面において、音階や音量によって
自然な質感が音色と空間表現の両方で満たされること。これは大変に高レベルな
要求かもしれないが、私はMAGNUM OPUSが見せてくれた素晴らしい再生音の造型と
いうことに他のケーブルではあり得ない価値観を認めてしまったのです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

MAGNUM OPUSの滞在期間は限られているので、ここ数日とにかく聴きまくりました!

上記ではホール録音の大編成オーケストラとスタジオ録音でのチェロだけという
対照的な二曲を事例に上げましたが、この間にも多数の課題曲を聴き続けてきました。

私は価格に迎合することなく自分の分析と評価でオーディオ製品の音質を判定する
主義ですが、このTransparent MAGNUM OPUSは最高クラスのスピーカーケーブルだと
言い切れる自信があります!

しかし、こんな価格のケーブルが果たして売れるのかどうか、それは未知数であり
輸入元アクシスでもデモ機サンプルを所有していないという状況で、試聴によって
お客様に価値観を提示するという事は今後出来ないものです。

しかし、今回の経験によってオーディオシステムによって最高の音質を望むという
情熱的なユーザーからの相談を受けた時に、その情熱に対して投資を恐れないという
お客様が現れた場合に私が推薦できるケーブルのトップにMAGNUM OPUSを位置付ける
ことが出来たという事は大きな収穫であったと思います!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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