発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2016年6月のある日、私は「oreloB」というタイトルのLPレコードを聴くことを 楽しみにして出社してきました。これ何と読むかお分かりですか? 不思議な言葉です。 そして、不思議なことは題名だけではありません。至極当然のことですが、LPと いえば針を落とすのはレコード盤の外周であり端っこですが、何と! このレコードは 普通のLPであればエンドループのある内周に針を落とし、外周に向かって逆方向へ トレースしていくという大変珍しいLPレコードなのです。 なぜこんなことをしたのでしょうか? 昔のレーザーディスクを除いてCDやSACD、DVDやBDなどの光学系ディスクはConstant Linear Velocity(線速度一定)という回転方式です。つまり内周と外周では回転数が 違うという事です。 それに対してLPレコードはConstant Angular Velocity(角速度一定)で最初から 最後まで回転数は同じです。ここでちょっと電卓を使って簡単な計算をしてみましょう。 LPレコードは3分間で100回転しますので、毎分33.3回転という事は1秒間で0.555回転、 トレースする距離は直径30センチとして外周では94.2センチとなります。よって、 最外周では1秒間に約52.3センチほどトレースすることになります。 そして、レコードのレーベルの直径は10センチですが、大方のレコードで音溝が 刻まれているのは直径12センチくらいまででしょうか。同様に計算しますと内周 での円周は約37.7センチであり、1秒間に約20センチほどトレースすることになります。 さて、LPレコードの45-45方式では左右チャンネルで同位相で同レベル、同じ波形の 信号が刻まれた音溝は、V字型の音溝の深さは変わらずに左右に移動します。 この原理に際して正弦波を記録したとしたら、上から見るとアルファベットのS字 の連続のように見えることでしょう。 例えば耳に聞こえる周波数帯域の中心で1KHzを上記の方式にて記録したとすると、 一波長のSの長さは外周では0.523mmとなりますが、内周では0.2mmとなり、更に 可聴帯域の上限とされる20KHzでは外周では0.026mmとなり、内周では0.01mmです。 ここで参考までに下記の動画ご覧になると良いでしょう。 https://goo.gl/bIlrT2 普段は何気なく聴いているLPレコードの内周の音ですが、情報を記録するための 器として、この記録方式から内外周で起きているトレースする距離に倍以上の差が あるわけで、更に信号レベルが大きくなるという事は音溝の振幅が大きくなり、 スタイラスチップの先端がトレースしなければならない線距離も大きくなります。 要約すると角速度一定のLPレコードにおいて外周に対して内周では記録再生共に 周波数帯域とダイナミックレンジの上限に関して大きなハンディキャップがあると いう事なのです。さあ、こんな基礎知識を元に「oreloB」の種明かしをしましょう!! ■逆方向に再生するTACET Play Backwardsの日本語解説を下記にてご紹介します。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160618-TACET_LP.pdf ■このユニークな方式で今月発売された新譜をご紹介します。 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン交響曲第9番/SACDでも同時発売です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160618-TACET_LP219_SACD219.pdf ■ハーフスピード・マスタリングの作品もあるTACETのLPレコード一覧は下記にて。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160618-TACET_Jun2015.pdf 「oreloB」とはご存知のモーリス・ラヴェル/ボレロであり、サイドBのラ・ヴァルスを 含めて、逆再生レコードを今日はじっくりと味わってみようと思ったのです!! 試聴システムは当然H.A.L.らしく下記のラインアップです。 ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / TACET Play Backward LP - inspection system ◇ ……………………………………………………………………………… TechDAS Air Force One (税別¥7,000,000.) http://stella-inc.com/10techdas/ with Graham Engineering PHANTOM II Supreme 10inch (税別¥1,280,000.) http://stella-inc.com/009graham/index.html with My Sonic Lab Signature Pratinum(税別¥750,000.) http://www.mysonic.jp/ with Soulution 750 (税別¥2,600,000.) http://www.noahcorporation.com/soulution/750.html and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Vitus Audio-Andromeda Interconnect cable XLR 1.5m(税別¥1,070,000.) http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Vitus Audio SL-102(Anodized Gray) (税別¥7,130,000.) http://www.vitusaudio.com/en/79989-SL-102 ★E.M.G-board 各々二枚使用 Vitus Audio-Andromeda AC Power cable 1.5m(税別¥420,000.)付属 http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html and TRANSPARENT PLMM2X+PI8 (税別¥770,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Vitus Audio-Andromeda Interconnect cable XLR 7.0m(税別¥3,490,000.) http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Vitus Audio SM-102(Anodized Gray)(税別¥13,800,000.) http://www.vitusaudio.com/en/121301-SM-102 Vitus Audio-Andromeda AC Power cable 1.5m×2(税別¥840,000.)付属 http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html and TRANSPARENT PIMMX(税別¥540,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Vitus Audio-Andromeda Speaker cable 3.0m(税別¥2,120,000.) http://www.cs-field.co.jp/brand/vitus/products/andromeda.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Sonusfaber“IL Cremonese”(税別¥5,800,000.) http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/20160304_IlCremonese_release.pdf ……………………………………………………………………………… ■“What TACET ?”を輸入元サイトでご覧下さい。 http://www.hifijapan.co.jp/tacet.htm ハルズサークルのベテラン会員は覚えていらっしゃるかもしれませんが、もう 11年前になりますが“よんちゃん行脚”という企画で取り上げたレーベルでした。 管球式マイクなどの独自のレコーディング機材を使用し、自社で録音したマスター テープを使用してディスク化しているレーベルであり、特に弦楽器の傑出した質感と 自然なマスタリング音質が素晴らしい作品を送り出してきました。 さて、KLAUDiO 超音波式レコードクリーナーでしっかりと洗浄してBoleroを聴きましょう!! http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1179.html -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 180gの重量盤ですがAir Force Oneでしっかりとバキュームして、このために新調した My Sonic Lab Signature Pratinumの輝くボディーと針先に集中し、内周のリードイン グルーブにしっかり狙いを定めてGraham Engineering PHANTOM IIを動かし、アーム リフターを弾くように操作して針を降ろした。 プリアンプのミュートを解除するとサーフェスノイズの彼方から聴き慣れたお馴染みの 囁くようなスネアのリズムが始まり、ハープがしとやかな響きを漂わせ、フルートに よる主題が始まると…、あとは身を任せて聴くだけという心境になり、気が付くと 私の指がスネアと同じリズムを刻み踊り始めている!! クラリネットが同じ旋律を引き継ぐ頃には、この録音の質感が管楽器でも極めて 自然であり、スタジオワークで加工した演出が極めて淡泊であるのに気が付く。 軽やかな弦楽器のピッチカートが始まり、ファゴットが軽妙なタッチで引き継ぐ頃には 最初のサーフェスノイズは既に聴こえなくなっており、ミュートしたホーンが、 そしてサックスへとリレーされていく旋律に伴い、スネア奏者がスティックの 持ち方を長くしてわずかずつ音量を上げていく様が見えてくるようだ!! メジャーレーベルの録音によるBoleroはここにも数枚あり、過去の記憶と照合する。 ソロバートの演奏一つずつが始まると、その楽器にふさわしい音響的な演出が 施されるのか、高域が鮮やかになったり、そこだけ余韻が長引いたり、管楽器の 交代が起こるたびにスポットライトを切り替えているようなきらびやかさが あったのではなかろうかと思い始めた。 Netherlands Philharmonic Orchestraによるディスクは私も初めてかもしれないが、 管楽器の各々に提供されるホールエコーは均等であり、楽器の音階によって輝きが 異なることもなく、次第に大きくなっていくスネアの打音が拡散していく空間の サイズも、すべてが調和のとれた同一空間での演奏であることを的確に伝える!! 今まで指揮者は手首の動きだけで指揮していたが、いよいよ弦楽器が入ってくると 次第に腕から肩までも動き始めた頃、私はTACETが用いる真空管の機材による独特な 質感がアナログディスクでも見事に表現されていることに思わず興奮した!! 指揮者によっては短くても15分強、長いと17分を超える長大なクレッシェンドを ゆっくりとたどっていくBoleroはスネア奏者にとっては苦行の一曲。演奏の長短に 関わらず完璧に一定のリズムを要求され、見ると内周から始まったトレースは中間 ほどを経過している状態。さて、ここからだ!! 指揮者の動きは既に上半身だけにとどまらず、体全体を使って各パートに威厳を送り、 弦楽器のアルコの反復で主題が壮大なドラマを織りなすころ、外周に向けて移動する カートリッジが残る音溝を惜しむかのように怒涛のクライマックスに向けて突き進む!! 音量の増大に対して得られる限りの物理的利点をトラッキングの確実さに表し、 スネアがツインになって見事な同期を見せながら弦楽のうねりの中で跳躍する!! CDのように分秒とカウンターなどないアナログレコードの再生において、聴き手が 感じるビジュアル・イメージをそっくり受け入れるような演奏空間の視野の広さ!! IL Cremoneseが発する弦楽器の質感の美しさと、ステージの奥行き方向に消失点を 感じる遠近法の見事な響きの連鎖が外周に近づくにつれて次第に私の体温を引き上げる!! 動作モードを固定バイアス純A級に設定したVitus Audioが発する熱が演奏そのものに 乗り移ったかのように、この16:33という録音の頂点に向けて弦楽奏者の上半身が 波打つような連携を見せながら完全に主題を引き継ぎ、ティンパニが堂々たる連打を ゆっくりと奏で始めた。 この長大なクレッシェンドの高まりを記録するにあたり、今までは物理的条件が 次第に不利になる内周に向けてカートリッジが進んでいったとしたら、この曲の 躍動感をどのように捉え表現できるのだろうかと、じっとしていられない高まりに 指揮台の上で体全体が躍動する指揮者の興奮を、この逆再生Play Backwardsという ユニークな試みが見事に捉えた!! 絶頂を迎えるオーケストラにトロンボーンのひねりある演奏を合図に、スネアは 最後の一打をカウントダウンし、グランカッサが強烈な打音で締めくくった瞬間、 外周に向けて進行していたカートリッジはリードアウトグルーブで最後の仕事を果たす!! オーケストラの楽員すべてが静止した瞬間に放った余韻が、Air Force Oneの ターンテーブルがゆうに三回転する程の時間で、アナログレコードとは思えないような 長く美しく響く余韻のデクレッシェンドを外周にある最後の音溝に刻んでいたのです!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- サイドAのBoleroに感動した私はサイドBの「La Valse」にも大変興味を持った。 というよりも聴き馴染んだBoleroよりも新鮮な選曲であり、成り行きを想像しながら 聴くのではなく一瞬先にどのような旋律と展開が繰り広げられるのか、未知数の La Valseを聴かずにはいられなかったのでしょう。 早速裏返した重厚な黒いビニール盤の内周に再度針を落とすと、内周のせいなのか サーフェスノイズの質感も穏やかに感じられる。 ゆっくりと弓を弾くコントラバスのアルコが背景ノイズから染み出してきたかの ように浮かび上がり、先ずは混沌とした低音がステージの上に敷き詰められていく。 すると、ファゴットが短いパッセージをつぶやき始め、囁くようにヴァイオリンの 細かい反復が不完全な旋律を細切れにしてステージの広さをほのめかしていく。 弱音が支配する音場感はしたたかに私の目の前に大きな空間を提示するようになり、 冒頭のサーフェスノイズが早くも耳に感じられなくなってくる。 内周にしては見事な情報量を早くも発揮しながら、オーケストラの各パートは 主題による統率がされないままに少しずつカートリッジを外側に移動してくる。 木管楽器が交代で短い旋律を奏でると、弦楽五部の各パートも交代で短いパートを 繰り返し、フルートとハープが入れ替わりで短い合図のようにソロを取り、それに 呼応するかの如く、冒頭では不調和だった弦楽が素晴らしくロマンチックな主題、 うっとりするようなメロディーラインを奏で始めた!! フランス語でワルツを意味するLa Valseの主題とはこんなに美しく心を打つ旋律なのか!! そのリズムがやっと弦楽器によってワルツであることを証明し、このTACETの録音の 品格が演出を避けた楽音の質感として完璧に調和したステージという空間を広げる!! 真空管のテイストを録音に染み込ませた弦楽器の音に惚れ惚れしながら、弦楽の 調べに心安らぐ数舜を楽しんでいると、オーボエがすっくと立ち上がりフルートとの 絶妙な掛け合いに弦と管との質感が見事な共通項を持っていたことに驚く。いいです!! カウンターはないので正確な経過時間は分からないが、おおよそ4分くらいだろうか、 突如としてグランカッサの強打がSonusfaber“IL Cremonese”のサイドウーファーを 揺さぶってセンター奥に響き渡る!! この自然なホールエコーを含んだ大太鼓の質感が極めて素晴らしいのです!! LPレコードで聴くシンバルの輝きがステージを一瞬明るくしたかの錯覚に囚われると、 金管楽器のパートが華々しく存在感を示し、流麗な弦楽器の旋律を背後から煽り たてるように響きのオーラを引き出していく。 ラヴェルは初版の譜面に次のような標題を寄せていたという。 「渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。 雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされた ダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。 B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。 1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である。」 このイメージでA部とB部がどの辺を示すのか分からないが、弦楽の主題がワルツの リズムで揺れ動く群衆を表したとしたら、その流れるような旋律の合間に響く 豪快なグランカッサと炸裂する打楽器は光が跳躍するシャンデリアだろうか。 しかし、私が感動したのはLPレコードにしてダイナミックで高速な立ち上がりで 叩かれるグランカッサの余韻の素晴らしさだ!! 一瞬の打音がホールにおける一次 反射音が録音にしっかりと記録されており、極めて短時間で演奏空間のスケールを 聴き手に体感させてくれる大振幅の音溝のうねりを耳で感じる快感がここにあった!! 弦楽の演奏に緩急が施され、コントラファゴットの低音がソロバートを奏でる 頃には繰り返される主題が次第にテンポを速め、クライマックスへと続く階段が 残り少ないことを示し始めた。 弦楽のワルツが頭に定着したころ、次第にそのリズムを崩すようにして管楽器との 連携を解除し、思い出したように主題を散りばめながら、そして時折の空白部を作り、 指揮者の手の平が床の向けられて静止する場面を連想する。 コントラバスの短いピッチカートが濃厚な響きをステージに蓄え、トランペットが サーチライトの光線を夜空に放つように響き、思い出したように主題の旋律を 弦楽器が奏で、ワルツを踊る人々のステップが次第に早くなるようにオーケストラ そのものが急ぎ足になってくる!! この空間の一体感と多数の楽音の調和、特に弦楽器のしなやかで潤いある質感は アナログレコードだからではなく、TACETの手による音楽の造型であり、次第に 膨れ上がっていくようなオーケストラのフォルテを克明にトレースするための 外周の記憶容量という器のサイズアップがうねるような響きの洪水をしっかりと 刻みつけている安心感が聴き手の興奮を誘ってくる!! 怒涛の最終章を黒い円盤の淵で描き切った瞬間、やはりすべての奏者が静止した 後に放たれた残響が空中で漂い消えていくまで見送り、エンドループが終演の ベルを鳴らすようにプツプツと周期的なノイズのリピートで幕引きとなった!! 片面に一曲しか収録されていない贅沢な逆再生Play Backwardsレコードは次に 私に何をさせたのか!? 滅多にあり得ないことだが、立ち上がった私は再度… 内周に針を戻して聴き始めていたのです!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 私はこのPlay Backwardsというシリーズを三タイトルともに聴きましたが、 この音源は皆様に自信をもって推薦致します!! ■輸入元では販売も行っています。 http://www.hifijapan.co.jp/order.htm そして、セールスだけでなく感動を皆様に提供したいというのが私の本心です。 上記システムにて演奏するTACET Play Backwardsの三作品を皆様に体験して頂きたく、 皆様のご来店をお待ちしております!! 上記サイトでは定価販売としていますが、このTACETのLPレコードをハルズサークルの 皆様に会員価格でご提供できるように新企画を実施致します!! ただし、輸入元への配慮として会員価格は配信での一般公開は致しません。 先ずはハルズサークルにご入会下さい!! |
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