発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.1203 2015年3月29日 「オーケストラを裸にするHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Improved!!」 No.1199 2015年3月11日 「特報!!HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Improvedとはこれだ!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1199.html No.0661 2015年3月21日 「体験したら語りたくなるHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCSの音!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear0661.html 上記にて述べてきたHIRO Acoustic Laboratoryの物作りが他社と全く異なる点は 何かと言うと、それは製品としての完成度を高めるための研究と開発にゴールは ないということでしょう。 廣中さんと知り合ってからやり取りしたeメールの数は既に100件以上、ここで 鳴らした音、マラソン試聴会の会場で鳴らした音、そして当フロアーを実験場 として行ってきた何種類ものトライアルによる音質進化の事実。 正に当フロアーと共通のLaboratoryというネーミングにふさわしい情熱を込めて 廣中さんは自らスピーカー作りが天職だとおっしゃる。 メーカーとしてはひとつの製品の企画設計から発売まで、一つの型式による 製品の発売で一区切りとして、その後の開発によって得られたものは次世代の 新製品として世代交代を行うのが普通です。 歴代の製品が積み重ねられていく歴史の中で、自分はあの時代のものを使って いるという認識をユーザーに強いるものでしょう。しかし、廣中さんにゴール はないのです。いつまでも、いつまでも自分の理想を追求し続けることが生き がいであり楽しみなのです。そんな人が作り上げた製品を手にした人に対しては 作者の情熱が続く限りの進化も同時に提供するという思想が素晴らしいのです。 スピーカーを売らねばいけないというビジネス上での多数の制約から離脱した オーディオ製品は私が知りえるところでは極めて稀な存在です。そして、私も 自分の情熱と感性が貢献出来るMODEL-CCSの進化を誇りに思うものです。 2014年10月3日に初めてMODEL-CCSを聴き、そして廣中さんと知り合い、廣中さん の人柄と情熱を知るに伴い、スピーカー本体の価格があまりにも高価になって いくのに商品として提供出来る限界を心配し、あまりに高価では良いものでも 使ってくれる人がいなくなってしまうのでは…、という思いから必然的に当初 のネットワーク設計に関してはコストを抑えるということを意識されたという。 しかし、ここでの再生音を聴き、このスピーカーの潜在能力がここまで高いと いうことを実感され、やり残したことがあってはいけませんよ…、と私も進言 してたどり着いたのがMODEL-CCS Improvedであったわけです。 私は3月4日に初めてMODEL-CCS Improvedを聴き、この↓贅沢なインダクターが もたらしたウーファーの素晴らしい改革、選りすぐりのキャパシターとレジス ターが生み出した中高域の見事な情報量を実現したネットワークの素子がこれです!! http://www.dynamicaudio.jp/file/20150310-improved03.jpg コイルはカナダ製特注品、コンデンサはフランス製、抵抗はドイツ製、一部に 銀を使用したパーツを使用。プリント基板は不使用、10mm厚のベーク板に手仕 上げで配線。内部配線はすべてナノテック社製でスピーカー端子はWBT製です。 精密な加工によってネットワークボックスに誇らしげに削り出されたテキスト。 MODEL-CC*シリーズに共通のネットワークなのでMODEL-CCXとされました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20150310-improved01.jpg 上記のパネルが組み上げられたネットワークボックスの出力側外観がこれ!! http://www.dynamicaudio.jp/file/20150310-improved02.jpg スタジオ録音の課題曲ではImprovedモデルの素晴らしさをたちどころに理解し、 潜在能力が更に奥深く無限に思える程の可能性を秘めていると実感されました。 当然、初日からオーケストラの課題曲も聴いていたものですが、中空に展開する 多項目の情報量が激増していることを確認し、ホール録音においても素晴らしい 再現性であることが分かりました。しかし…、私は新型ネットワークのバーン インがほぼ出来上がっただろうと思われる三日目、四日目の再生音を聴き、 特にオーケストラの弦楽器に関するニュアンスで一末の疑問と高レベルな要求 を廣中さんに投げかけることになりました。私も自分に嘘がつけないからです。 Improvedモデルの音に不満はありません。しかし、実に多数の世界中の製品を 長年聴いてきた私にとって、解像度が向上し分解能が高まり一音一音の鮮明さ が増すということと、特にオーケストラでの弦楽器を意識して私の感性が求め る微妙な質感に私はこだわっていたのです。 現時点での完成度は今までにない高みに登りつめたMODEL-CCS Improvedに対して 私が要求するポイントを検証するために、スピーカーケーブルをバイワイヤー とする下記のシステムで試聴に臨んだ。 ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Improved inspection system ◇ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC G-01(税別¥1,350,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g01/index.html and ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥360,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html and TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER and finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ESOTERIC 7N-DA6100II BNC(Wordsync用)×3 (税別¥750,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso P1 (税別¥2,500,000.)本体 ★E.M.G-board二枚使用 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html and ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥360,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html and TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER and finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ★Grandioso P1+D1の接続は付属:HDMI Cable http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1083.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso D1(税別¥2,500,000.) ★E.M.G-board 四枚使用 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html and ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html and TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER and finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ZenSati Seraphim / Interconnect cable XLR 1.5m(1Pair 税別¥1,823,000.) http://www.zensati.com/ http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/960.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso C1 (税別¥2,500,000.) ★本体にE.M.G-board二枚使用 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c1/index.html and ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html and TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.) http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER and finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ZenSati Seraphim / Interconnect cable XLR 8.0m(1Pair 税別¥5,645,000.) http://www.zensati.com/ http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/960.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso M1(1Pair 税別¥2,800,000.) ★E.M.G-board 二枚使用 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/m1/index.html and ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html and finite element Pagode Master Reference HD10+CERABASE 4P(2台/税別¥720,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ZenSati Seraphim / Speaker cable 3.0m/Bi-Wire(2Pair 税別¥9,408,000.) http://www.zensati.com/ http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/960.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Improved(1Pair予価1,300〜1,400万円) http://www.hiro-ac.jp/ ……………………………………………………………………………… 私が望んだオーケストラにおける弦楽器の質感に関するこだわりを一言で表現 するのはなかなかに難しい事であり、多少の前置きが必要になりました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20150318-ozawa_boston.jpg 上記の写真は私が常々課題曲として使用している小澤征爾/ボストン交響楽団 によるマーラー交響曲第一番「巨人」の最初の録音であるLPとCDの両者です。 1977年のボストンシンフォニーホールでのアナログ録音であり、幻の第二楽章 と言われる「花の章」(Blumine,Andante allegretto)が収録されている貴重な ディスクで当時42歳という小澤征爾の姿が大変若々しい印象で大切なコレクション として今までにも多数のスピーカーで時折聴いてきたものです。 今まではアナログ録音特有のふくよかさと、ある意味で緩和されたテンション のオーケストラは多数のスピーカーで心地良さを感じさせるものでした。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20150318-ozawa_mahler.jpg そして、上記の次の写真ですが、前述の1977年の録音が左ですが、中央にある のが1987年にデジタル録音されたもので、当時52歳という小澤征爾の表情には ゆとりと自信が感じられるものです。このディスクが私の一番のお気に入りで あり多数の試聴で定番課題曲として使用しているものです。 右のディスクは2008年に録音されたもので、小澤征爾が73歳にして三度目の 録音となったマーラー交響曲第一番であり、サイトウ・キネン・オーケストラ を指揮しての長野県松本文化会館でのライブレコーディングです。 1977年盤はGRAMMOPHON、1987年盤はPHILIPS、そして2008年盤はDECCA(SHM-CD) と各々のレーベルも違うので音質は当然三者三様ではあります。今までに多数 のスピーカーでこの三枚を聴いてきましたが、それぞれに個性と魅力が感じら れるものであり、甲乙つけがたい好演であり録音です。 その中でも最も弦楽器の質感が滑らかで美しく、また個人的な好みもあって 私の一番のお気に入りであり定番課題曲としているのが1987年盤でした。 そして、前述の私の微妙な要求とはこのディスクを聴いての思いでした。 さて、こだわりの対象とした録音は1987年盤であるとした上で、なにゆえに 小澤征爾による三種類のマーラー交響曲第一番に言及したかというと、実は 過去に比較試聴したスピーカーたちと比べてMODEL-CCSによる各々の再生音の 印象が驚くほど違っていたからです。言い換えれば、三種類の音質の格差が 極めて大きいということがHIRO Acousticで聴いて初めて実感され、驚きと 同時に発見したということなのです。 1977年盤はオーケストラ全体との距離感が大きく遠い、ホールエコーの在り方も 控えめであり、弦楽器の質感はあっさりとしていて淡白、金管楽器はいぶし銀 のごとく輝きを抑え込んだ鳴り方。一瞬、こんな音だっけ? と過去に聴いた 印象とのあまりの違いに絶句するほどでした。総じて古風な音なのです。 2008年盤はSHM-CD仕様ということで楽音の鮮明さが際立ち、弦楽器の集団では 手櫛で髪に指を通すうような分離感で演奏者一人一人の存在感が浮き彫りになります。 打楽器の立ち位置が鮮明に分かり、木管楽器のソロパートはズームアップされ たように忽然と空間に現れ、ホール全体に響きが融合し満ち溢れる余韻感など ほぼ無きに等しいくらいに音像そのものを際立たせるような録音なのです。 複数の項目で1977年盤と2008年盤は対照的な要素があることをここまで鮮烈に 聴かせてくれたのはHIRO Acousticが初めてでした。これには驚きました!! 正にオーケストラを裸にするようなスピーカーではありませんか!! そして、この対照的な両者に対して1987年盤はどうかと改めて聴き直すと、 今まで好印象を持っていた弦楽器の滑らかさ、美しさ、ホールエコーの中で 溶け合うような響きの充実感というのは、あくまでも推測なのですが、実は マスタリングの過程で演出されたものではないのか? という思いがしてきたのです。 ホール録音のクラシックはホールエコーだけで残響成分には何も手を付けてい ないと考えている方も多いと思いますが、実はスタジオワークにて実に様々な 処理を行って商品化しているものなのです。ですから、どこどこのホールの 響きがディスクから感じられるというようなことは明確には特定出来ないこと であり、マスタリングの必要性はスタジオ録音のものと同様なのです。 これ程にオーケストラの録音の性質を克明に描き出してしまうHIRO Acousticは 確かに正確無比と言えるのですが、それを肯定的に評価して私が要求した 情緒的ニュアンスの追加をどのように確認すべきかを考えてみたのです。 せっかくスタジオワークで美しく仕上げられたオーケストラの再生音がある。 HIRO Acousticはその仕上げの妙技をそのままに描き出すスピーカーなのだが、 メークアップされた音質を認めた上でスピーカーが果たすべき忠実性とは一体 どのような観点で検証すれば良いのだろうか? 私はこのチェックポイントを確認するための選曲に数日間悩みました。 ただただ麗しい響きだけを印象付ける録音ではいけない。オーケストラの演奏 空間の特徴をあるがままに提示してくれる素材として適切な音源とは何なのか。 それを探し出し確認するまでに数日を要し、これだというディスクを発見し 今までに五回も試聴してきました。私がこだわった選曲とはこれです!! 小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラによるブラームス交響曲第四番・ ハンガリー舞曲第五番・第六番(90年当時PHILIPS 426 391-2) なぜこのディスクにしたのか、というと録音された場所がホールでもスタジオ でもなく、何と教会での録音だからです。ベルリンのダーレムにあるイエス・ キリスト教会で1989年に録音されたものであり、この教会では1960年代に かのカラヤンが好んで録音に使った空間なのです。 私は1963年にカラヤンとベルリンフィルがベートーベン全集を録音していた 当時のモノクロ写真を見たことがありますが、その録音風景をここでご紹介 することは著作権の問題から出来ないと諦めていたのですが、ネット検索で ちょうど良いブログが見つかりましたので下記に紹介しておきます。 ■ベルリンのコントラバス奏者高橋徹のBlog http://toruberlin.exblog.jp/21641646/ このような環境で録音されたということが試聴の中で次々に実感されたのです。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 第一楽章のお馴染の旋律が流れだした瞬間に、先ず私は他のスピーカーで聴い てきた印象との違いが大きく感じられました。それは、この録音を何の説明も なしに他のスピーカーで聴いたとしたら、まず教会で録音したものとは思われ ずに多くの人がコンサート用ホールで録音されたものだろうと感じてしまう ことだろうという音場感全体の感触です。 これはあくまでもHIRO Acousticとの対比という私の個人的な意見ですが、 逆に言えば他のスピーカーでは各社の求める方向性において空間表現の個性が 音楽を楽しむ上での肯定的演出ということで様々な音場感のあり方を意図的に 創作した、ひとつの美意識の表れとしてホールなどの臨場感を含ませた音質に なっていたものと考えられます。 上記のようにホール録音でのオーケストラで再現性がこれほど異なるものかと いう驚きを経験した後に聴き始めた私は、先ずオーケストラ全体を耳で感じた 距離感とリスナーの位置関係として教会録音という特徴を印象付けられました。 ホール録音のオーケストラでは客席からステージを見上げるような構図で、 上手から下手への水平方向のステージの床をイメージするような土台があり、 弦楽器群を前面にして奥行き方向に管楽器や打楽器という距離感があります。 まさに観客がステージを眺めているような位置関係と言えば良いでしょうか。 しかし、この教会での録音では自分がオーケストラに接近し、各パートを俯瞰 するように斜め上から見下ろしているような感覚があります。弦楽器と同様な 距離感で管楽器や打楽器も展開し、むしろ弦楽器群の中から管楽器の楽音が 湧き起って来るようなイメージなのです!!ぐっと集約された配置で自分を取り 巻くように展開するオーケストラが、これ程実感されるとは思ってもいませんでした。 それだけMODEL-CCS Improvedは録音環境をも忠実に再現するという事です。 それが教会録音という特徴を先ず最初に私に感じとらせてくれたのです!! そして、同時にこの録音では前述のマスタリングの事例のように、スタジオでの 音質的な処理が極めて少ない事、実に自然な収録音そのままの質感が見事なのです!! 弦楽器の質感はスタジオで人工的なリヴァーヴを追加していないという素直な 音色であり、それは弦楽奏者の人数分だけ個別の音色が空間でブレンドされて いることを示し、ヴァイオリンを至近距離で聴いた時の摩擦感、胴の木質感が 響きとして感じられる事でも更に証明されるようです。 メジャーレーベルのホール録音ではホールの響きの中で溶けあった弦楽器として、 残響成分を長引かせたリヴァーヴによって高音階のパートでは集団であるはず の弦楽五部の各々のパートがひと束にまとめられてしまうような響きの操作が ありますが、この録音では高音階での弦楽器は時にテンションと緊張感が高ま るかのようなドライな残響として演奏者の数だけの楽音の分離感をわずかに 残しているのです。 それは管楽器にも当てはまり、教会という空間の中でオーケストラ全ての楽音 の残響時間が同一であるということでも証明され、スタジオで特定の楽音だけ リヴァーヴを追加しているということが逆に新鮮に感じられます。色々な録音 を聴いていると、オーケストラの特定パートだけが妙に響きを長く印象的な 残響を付加されていることを改めて感じられるものでした。 当然、ホールよりも小さい空間の教会では演奏者同士の間隔も、各パートの 距離も小さくなるものですが、それを正確にMODEL-CCS Improvedは再現し、 教会の高い天井という空間をオーケストラ全体が共有しているということを 自然に聴き手に感じさせるのです!! その好例がハンガリー舞曲で叩かれる打楽器の残響でしょう。実は、この録音 の打楽器の印象的な音をデモの中で意図的にお聴かせすることが過去に何度も ありました。他のスピーカーで再生すると、確かにこの打楽器の音はホール よりも空間が小さいせいでボリューム感が増強されているのではないかとさえ 思えるものなのです。しかし、MODEL-CCS Improvedは違いました!! スピーカーの個性として作り手の意志によって許容される低音の演出的量感を 含んでいる音とは全く違うのです。そこに誇張された低音の響きは皆無と言えます!! 一つ屋根の下で演奏される楽音は音場感を同一にしているという、当たり前と 思われながらも中々実現出来なかった演奏空間の忠実な再現性を見事にMODEL- CCS Improvedは可能にしているのです。本当に素顔のオーケストラなのです!! 「E.M.G-boardの新開発オプションで広がる更なる可能性とは!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1202.html 私は、この録音を五回も繰り返して聴きましたが、実は以前の四回までは上記の E.M.G-Jumperを使用していない時期、つまりコンポーネント一台につき一枚と いうセッティングだったのですが、本日は上記レポートのようにパワーアンプ 以外には二枚ずつのセッティングで聴き直した五回目だったのです。 以前に感じていた音場感を各パートの楽音が同一のものとして聴ける安心感。 打楽器の強烈な音が暴走しない正確な低音と、管楽器も含めて余韻感が統一 されている素晴らしい再現性!! MODEL-CCS Improvedで聴くオーケストラは格別です!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、この教会録音のオーケストラは反面教師的にImprovedモデルの高域に おけるチューニングの成果を述べたいがための布石だったのです。 そして、3月17日(火)のことでした。私が的確な言葉で一言で言えない要求を 廣中さんは察して下さり、Improvedモデルのネットワークに改良を加えるべく 工具や測定器を持参されてのチューニングを行ってくれました。 Improvedモデルのネットワークボックスの中身は三階建て構造になっていて、 その最上階にトゥイーター用素子が格納されています。各素子のメーカーと 結果的な定数は同じくして、クロスオーバーを適正化する調整となりました。 これによりミッドレンジとトゥイーターのクロスオーバー周波数付近での レスポンスを更に最適化して、その副産物としてトゥイーター用のアッテネーター を大幅に小さな値にできました。その結果、高域のダンピングファクターが 相当改善され、高域のダイナミックレンジが広がり高感度になったのです。 数値で言うと約1.5倍ほどダンピングファクターが改善されています。これに よってミッドレンジとのつながりが良くなり、高域の暴れが若干改善されたと いう報告が廣中さんからありました。 測定上ではわずかな違いなのですが、聴いた上では大きな前進でした!! これが冒頭で述べたHIRO Acousticの物づくりの姿勢なのです!! http://www.dynamicaudio.jp/file/20150328-ccxImprovde22.jpg 私は教会録音での空間表現と質感の自然な振る舞いを十分に確認し、Improved モデルは更に忠実にオーケストラを再生するという確信を得た後に、長年愛し 続けている1987年盤のマーラー交響曲第一番「巨人」を聴き直しました。 あ〜、美しい!!弦楽器の質感に潤いが感じられるということは、微小信号に よって形成される芳醇な余韻感が空間に漂い出したという事です!! それはスタジオワークによって演出され、華麗なメークアップを施された演奏 だと分かっていながら感動できる音質だと納得出来るものでした。 私が望んでいた微妙な弦楽器のニュアンスの修正が見事に達成され、それは 豊潤なホールエコーの再現性の向上にもつながり、弦楽器の質感にうっとり するような潤いを与えてくれたのです!! 私はHIRO Acousticとの出会いで「音楽を裸にするスピーカー」と例えました。 それは録音環境の違いをも表現するものであり、いったんはオーケストラをも 裸にしますが、そこにプロの技で素晴らしいメークアップを施したということ を美意識の解釈として肯定することが出来るようになったという事です!! 音楽が着膨れしていけません。先ずは素顔であり演奏本来のシルエットを取り 戻すことを可能にして、ドレスアップとメークアップのセンスが正確にリスナー に伝わる事が大切だということでしょう!! 繰り返しますが、HIRO Acousticの開発にゴールはありません!! 私はこのスピーカーを知る事によって自分自身の感性も成長した事を実感し、 廣中さんに感謝しているものです。 一生モノという言葉の真実がどのような価値観を示すものなのか。 オーディオ業界にとって新機軸というべきHIRO Acousticに今後もご注目下さい!! |
担当:川又利明 |
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 kawamata@dynamicaudio.jp お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!! |