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H.A.L.担当 川又利明

No.1166 2014年11月7日
 「H.A.L.'s One point impression-HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Vol.1」


    《音楽を裸にするスピーカーで私は音を見つめている…》

つい思い出してしまいました。こんな企画もやりました。お時間があったら
ちらっとのぞいてみて下さい。当時のハルズサークルでヒットした商品でした。

2011年5月3日 
No.812 「新企画⇒New product release“Musicmask”の魅力」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/812.html

私が数々のオーディオシステムを試聴し検証する時はどのように聴いているのか?
私は比較試聴の極意として再生音をビジュアル的に記憶し、まるで間違い探し
の二枚の絵を比較するように次の音と比較するということを以前から述べています。

私は眼前にある左右二台のスピーカーの中間定位や音像表現を視覚的に捉え、
スピーカー周辺の空中にグラフパターンを上乗せしてイメージし、そのマス目
一つ一つの違い、そのマス目の大きさや連鎖などを視覚的に記憶するように
聴いているのです。

ですから、スピーカー周辺や背後にある物体や風景に向かう方向性に対して
定位感や距離感を推測し、空中にピンを刺してポイントを三次元的にプロット
するような習慣が身についているわけです。

これは映画のターミネーターでアーノルド・シュワルツェネッガー演じる
ターミネーターが未来から現代にやってきた時に、周辺を見ているシーンで
視野の中にカーソルやポインターが動き回り、見ている物体を瞬時にして分析
認識するシーンがありますが、それと似たようなイメージとお考え下さい。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私の試聴方法というか試聴している時には、私の眼球は盛んに動いていると
言うことを述べていた一節ですが、これは現在でも、これからも変わりません。

今日も私の眼は盛んにHIRO Acoustic MODEL-CCSの音を追跡しました!!
実は、MODEL-CCSは最初に聴いた時よりも進化していたのです!!

10月3日に初めてMODEL-CCSが持ち込まれた時、そのミッドレンジとトゥイーター
のハウジングの下にはテフロンテープが貼り付けられていました。それは、
各々のハウジングを前後に動かしてタイムアライメントの調整をしやすくする
ために摩擦を減らしたいということ、同時に電気的な絶縁も出来るという事で
廣中さんは考えておられたようです。その時、廣中さんに私はこう言いました。

「どんなに剛性が高く質量があっても振動します。毛足の短いフエルトを
 ハウジングの下に貼り付けたらいかがですか…」と。

そんなアイデアを提供したら廣中さんは早速やって下さったのです。ご自身も
変化の大きさに驚いたということで、今現在ここにあるMODEL-CCSは簡単な事
ですがミッドレンジとトゥイーターのハウジングを機械的にアイソレーション
されたものなのです。そして、その効果は予想以上のものでした!!

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

今回もこの曲を聴いて唖然としてしまいました。この私にして語るべき言葉が
思い当たらないという“物凄い音”であり“途方もない音”なのです!!

このように驚きの発見とも言うべきMODEL-CCSの音を私は次のように述べていました。

「私とて理想の音というものを組み立て出来る形として持っているものではない。
 つまり、全く次元の異なる新種の音を聴かされて、初めて自身の求める音とは
 これなのではないかと覚醒させられることで理想の音というものを自分の感性
 の上で認識できるのである。」

MODEL-CCSの潜在能力の大きさを垣間見る思いであり、単純でありながら基本的
なチューニングの成果がここまで飛躍的な向上を見せるとは予想外だったのです!!

良くケーブルの議論で7N、6Nとかの99.999…の小数点以下の桁数で表現したり、
マスタークロックジェネレーターの発振精度のppmという単位にも同様に小数点
以下の桁数が話題になりますが、今私が聴いているMODEL-CCSは正に桁違い!!

何が桁違いかというと言葉での表現が難しいのですが、月並みですが音の純度と
いう表現がふさわしいかもしれません。

朝露に濡れた新緑の葉先に溜まった水滴が朝日を受けてきらっと輝きながら、
その透明度の高さに葉脈の仔細な模様が透けて見えるかと思うと、逆に周囲の
景色を球面となった表面に映し出すようなイメージでしょうか。

大型スピーカーと比べればMODEL-CCSはコンパクトであり、海や湖のような
スケール感ではなく水の最小単位として一滴というイメージ。そして、水滴の
向こう側にある緻密な模様と色彩感を完璧に見せてくれる極めて純粋な透明感。

MODEL-CCSそれ自身のチューニングにも大変敏感に反応し、録音の品位とコン
ポーネントやケーブルの能力、電源や室内環境などにも忠実に克明に、そして
敏感に反応するように周囲の景観を反射して見せてくれるイメージとも言えます!!

前述のように人が感じる美しさというのは、既に体験済みの記憶と照合して
感じられるものではありません。その対象に触れた時、見た時、聴いた時に
初めて感じられる感動なのです!!

この私にして前例のないオーケストラは弦楽器であれ管楽器であれ、そして
トライアングルという最小の楽器でさえ、言葉では例えようのない美しさを
現在のMODEL-CCSは平然と聴かせてくれるのですから驚異の一語に尽きます!!

私が音を語るオーディオ用語の数々、質感、定位感、解像度、空間表現、等々
それら全ての項目で類い稀なる純度の高さは前例がないのです!!

MODEL-CCSは音像の構成要素となる輪郭再現性や音色や質感も、音場感を司る
三次元的な空間構成力の全てにおいて抜きん出ている事を実感させられました。

これまで体験した事のない次元の音なのですから、どこかのメーカーの特定の
スピーカーに例えるような表現は出来ません。これは聴いて頂くしかないのです!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私はマーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章を事例に出しましたが、他の
オーケストラでも当然同様な感動がありました。もっと聴き続けたいという
願望がCDトランスポートのリモコンに手をやる動作を凍りつかせます。

自然に第三楽章が始まると、またそこで発見と感動です。試聴室の照明109個を
LEDに変えた事の最大の恩恵は冷房を止めても以前のように室温が上がらない事。

私はエアコンを止めて第三楽章を聴き始めた。コントラバスのソロによるアルコは
ゆったりとした調べを奏でながら、右側のセンター寄りにぽっかりと浮かび、
その音像がくっきりしながら膨らむ事がなく、実にリアルなソロ演奏の立ち
位置を広大な空間の中で明確に提示して行きます。

第三楽章では葬送行進曲のゆったりした主題で、大太鼓をゆったりと鳴らす。
胴の両端に張られた膜を直角に叩くのではなく、膜に寄り添うように奏者の
腕が流れる一瞬にタッチするように、なでるように叩く音が連続する。
 
第四楽章では対照的に管楽器があたかもシンコペーションを意識しているかの
ように打楽器の打音を待ってから強力な楽音を噴き出す場面で、スピーカーの
ウーファーがどくんと脈打つような打撃を見せる。
 
大太鼓の奏者が叩いた後の響きの長さを推し量り、震えている太鼓の膜に手を
当てて消音しているという場面を!! 
 
MODEL-CCSが正確無比に微弱な音を大太鼓から引き出し、それを滞空させて
いる間は間違いなくうっすらとして白い霞のように打音の響きの残滓が見える。
それが、奏者が手を当てた瞬間にすっと消えてしまったということだ。
 
迫力ある打音は他のスピーカーでもいくらでも出せるだろう。しかし、打音の
滞空時間をぴたっと止めてしまう演奏者の手の動きを見せてくれるたのは私に
して初めての体験なのである。
 
実は、今まで述べてきた事は別の言葉で言い換えることが出来る。MODEL-CCS
というスピーカーはローレベルの低域を極めて忠実に再生するということなのだ!!
この極めて忠実に、というというところがポイントだ!!

もう16年前になる私の古い随筆で引用した下記の手書きの図面をご覧頂きたい。

https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/pho/zu-oto45-01.gif

このように密閉型スピーカーとバスレフ型スピーカーの低域特性の違いがある。
次に下記では当時のAVALONが問題視していたバスレフポートの共振周波数より
少し高い帯域で起こる周波数特性の乱れを下記の図面でイメージして頂きたい。

https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/pho/zu-oto45-02.gif

この両者から言えることが二つある。一つは密閉型スピーカーの方が低域再生
帯域はバスレフよりも低い帯域まで伸びているということ。バスレフ型は
特定の低域を増量するが、超低域に届く前にストンとレスポンスが低下すると
いう傾向がある。

もう一つは、二番目の図にあるように、バスレフポートの共振はウーファーに
作用して低域の質感に変調を与える可能性があるという事。逆に言えば、この
キャラクターが色々なスピーカーの個性的な低域となるわけだが、ウーファー
から出力された低域をリサイクルするという事は、低音の増量と引き換えに
録音信号に含まれていない低音を再生音に付加してしまうという宿命がある。

そして、MODEL-CCSには上記二種の変化要因が全くないのである!!
MODEL-CCSのウーファー用エンクロージャーの内部を再度ご覧頂きたい。
http://www.hiro-ac.jp/innne1.html

強靭なアルミニウムのパネルの内部には複雑な彫り込みを行い、高調波と内部
定在波の影響を軽減し、一枚ずつ造形が違うブレーシングの補強材の精巧な
工作と頑強な取り付け方法の見事さ。

ブレーシングのビスの周囲を良く見るとトルクレンチのシャフトをさし入れる
ようなスペースもない。そこは工具よりも正確なトルクでビスを締め上げる事が
出来る職人技によって組み立てられているという完全なハンドメイドの傑作。

このウーファーのエンクロージャーはいかにして低域を増量・補強しようかと
いう目的ではなく、いかに正確に低域のエネルギーを消滅させるかという一点
を目的として作られているのです。その発想が見事に音になっている素晴らしさ!!

ここで、私が最近テストに盛んに使用する選曲がこれ。
UNCOMPRESSED WORLD VOL.4 - on the piano/のボーナストラックである
18.Kirk Montreux / ETERNAL DESERT(LA CALIMA EDIT)です!!
http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html

今までのピアノソロ17トラックの録音とは全く異なる前衛的でダイナミックな
2分46秒の演奏が素晴らしい。

ピアノの弦をひっかくような音でスタートを切ると、Matthias Freyが演奏する
Yamaha C3グランドピアノがセンターの左側に、クラシックギターがセンター
右寄りに中間定位して実に歯切れのいいサウンドを展開します。

音像とテンションは見事に引き締まり、MODEL-CCSは広大な空間提示を行い
ながらデュオの演奏が1分を過ぎるという頃、掛け合いの演奏が次第にテンポ
を落として、カウンターが1:00のところで一瞬の無音状態を迎えます。

そして、1:02のその瞬間にパーカッションを散りばめて、猛烈なドラムが左右の
MODEL-CCSを完璧に同期させて重厚でありながらスピード感のある重低音を
豪快に叩きだすのです!! この反応の素晴らしさ、純粋無垢な低音の解像度の
見事さ、更に注目すべきは大迫力の低音がきっちりとした減衰特性で正確に
大振幅の低域を消滅させ、また繰り返すという制動力の素晴らしさなのです!!

スタジオ録音による低域であっても、そのエネルギー感がMODEL-CCSの周辺に
緻密な編隊飛行の余韻感を見せてくれる爽快さ!! 明らかに100Hz以下の重厚な
低域をくっきりと描きだす、わずか22センチのセラミックウーファーの実力!!

ホールでの大太鼓でも感じたローレベルの低域再現性は、この曲でのドラムの
ダイナミックな瞬発性を支えながら、低音が正確に減衰し次の楽音に音場感を
提供するということ。これが極めて忠実な低域という真意なのです!!

“物凄い音”であり“途方もない音”こんな陳腐な言葉を今回は恥ずかしげもなく
使ってしまいましたが、私には自信があります。

皆様も体験すれば同様な言葉が頭の中を駆け巡ってしまうからです。
さあ、ご来店あれ!! そして、発見して下さい。感動して下さい!!
MODEL-CCSはそのために生まれてきたのですから!!

追伸
そうそう、今日はHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCSにちょっぴり仕掛けを
しまして、金曜日まで二日間のエンハンサーCDのリピートをセットしました。

これで更に潜在能力が発見出来れば面白くなってくるでしょう。
仕事が面白くなってくるというのはいい事ですね〜。今週末は聴き頃ですよ〜。


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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