《HAL's Monitor Report》
No.0199 - 2003/8/21 東京都武蔵野市在住 T・K 様より モニター製品 Marantz PM14SA Ver.2 & Marantz Professional PA01 「アンプの音質は、何で決まる!値段?進化?」 序段 「H.A.L.'s Monitor 夏休み特別編」に参加させていただき、ありがとうござい ました。今回は、明確なテーマがあって、「アンプの音質は、値段に比例するか、 設計の進化に比例するか」というものです。我が家のプリメインアンプは、Jeff RowlandのConcentra(2ではありません。)メインアンプ部は、Model2ベース ということで、すでに設計完了後、8年ほど経っていることになります。これに、 ConcentraIIを比較対象とすれば、同一路線上で、さらに音質向上することは間 違いないと思います。でも、旧モデルを買った人間のひがみもありますが、単純 なアップグレードはつまらない。 そこで今回お願いしたのが、川又店長のリファレンスアンプのひとつにもなって いる、マランツのアンプです。でも、それほど高価なプリメインはありません。 ターゲットとしては、PM14SA Ver.2ですが、定価23万円。Concentraは、110万 円でしたか? そこで、事前に店長にお伺いしました。あまりに段違いですから、無駄ですよ、 という答えを予想したのですが、その返信は、以下のようなものでした。 「PM14SA Ver.2 は高域の情報量については、コンセントラよりも良いものがあ ります。しかし、ジェフの質感である低域のグリップされたドライブ感はあるの でそれとの選択になると思います。」 ここで、取らぬ狸の皮算用が始まります。もし、PM14SA Ver.2 が気に入れば、 Concentraを下取りにだして、お金があまるかも。それを、DACのバージョンアッ プにも廻して・・・・ ということで、今回のmonitorを正式にお願いした次第です。あわせて、一部で 非常に好評なような、Marantz ProfessionalのPA01もお願いしました。 試聴 我が家の構成は以下のとおりです。 CD DRIVE:Esoteric P-50s (Power Cable:acrolink 6N-P4050Fを使用した自作) (コンセント:PAD CRYO-L2) ↓ Digital Cable:PAD Digital Colossus(BALANCED) ↓ DAC:Marants Project-D1 ↓ INTERCONNECT:AET 1.2mm 銀線 使用 自作(BALANCED) ↓ AMP:Jeff Rowland Concentra (Power Cable:ACOUSTIC REVIVE 6Nアニーリング銅単線 2.0mm を使用した自作) (コンセント:OYAIDE SWO-DX) ↓ SP Cable:PAD Mizunosei ↓ SP:CELESTION A1 ラック:Zoethecus ここに、そのままmonitorでお借りした機器を入れ替えての試聴です。 まずは、箱を開封して、電源を入れて、暖まっていない状態で軽く聞いて みます。ときに、この状態でも激変することもありますが、今回は、PM14、 PA01いずれに換えても、それほど大きな変化はありません。逆に言うと、 23万円および15万円が、110万円にいい勝負をしているとも言えます。で も、大きく勝っていることもないようです。アンプが暖まるのを待って、 慎重に聞き込んでいきます。 試聴には、ヴェルディの序曲集、ラベルのボレロ、マーラーの交響曲5番 などを使用しました。 PM14SA Ver.2 アンプの比較は、それほど経験がないのですが、Concentraと、きわめて 近い性格のような気がします。私のレベルであれば、比較しないとそんな に差を感じないような世界です。大きな視点で見れば、価格差ほどの差を 感じさせてくれないようなPM14のがんばりです。 細かく比較をすると、高域がスカッと上方に抜けているような感じで、の びのびと開放感があります。これが大編成のシンフォニーではエコーが綺 麗に響くのを助けるのか、いい印象を与えます。 アンプを変えると、不思議なことに、スピーカー間での定位する位置が、 上下に変動することがあります。高域の抜けのよさとも関係するのかもし れませんが、PM14はConcentraより上方に定位します。(これは、Model 12もそうでした。) ただ、ボレロのはじめ(各パートが交代で旋律を繰り返す部分)や、マー ラー5番の最初トランペットのように、ソロに近い状態では、Concentra の方が、つやがあるというか、立体感があるというか、濃厚な感じがしま す。また、全体的にも低音のどっしり感は、Concentraの方が明らかに上 です。しっかりとしたピラミッド構成で、厚みがあるConcentraに対し、 艶やかな高域を奏でるPM14というところだと思います。 PA01 Concentraに近い世界を醸し出すPM14に対し、かなり違いを見せるPA01で す。高域はPM14ほどスカッとしていることはありません。低域もConcentra よりは控えめ、PM14よりは少し多めかな?という感じです。でも、中域に 独特のつやがあるのです。これは、ConcentraにもPM14にもないもので、 全く別次元の世界を構築します。中域がまったりとした感じです。 Professional monitorというのは、独特の世界があるのかもしれません。 実は、このPA01、我が家のDACと同じ設計者の方とのこと。Project-D1も独 特の世界なのでしょうか。 結論 今回のmonitor、実は心中穏やかでないものがありました。もし、PM14が、 Concentraより優れていたら、Concentraは手放すでしょう。でも、我が 家に初めてHiENDオオーディオの世界を見せてくれたConcentra。かなり愛 着があります。値段も結構しますしね。 というひいき目があるのは事実ですが、ここはやっぱりConcentraに軍配 をあげます。一番のお気に入りは、ソロが奏でるときの、つやと厚みです。 これがJeff Rowland の色気ではないかと思います。Model12 は、もっと すごい色気ですけどね。 テーマ、アンプの音質は何で決まるか。これは、実は私がアンプというは デジタルと違い、完成された技術であるから、設計の時代によらず、値段 が支配する、と考えてきました。ですから真空管アンプもあり、バブル以 前のLoDやオーレックスなど、今はオーディオから撤退した日本の大メー カーの中古品が、それなりの値段で売買されているのだと思います。でも、 実はアンプもまだまだ未知の領域があって、新しいアンプは高価な過去の アンプに肉薄する面もあるというのが今回の結論です。 謝辞 今回、かなり無理のある比較の機会を与えてくださった川又店長、および マランツ社の山神様に御礼申し上げます。 |