《HAL's Monitor Report》


No.0175 - 2003/5/8

神奈川県藤沢市在住 K・S 様より

モニター製品 B&W Signature 805

連休前の4/23に,川又さんからの在宅試聴やりますという配信をたまたま会社で
確認。即座に、S805の希望を返信すると、なんと好みのレッドバーズアイ版を
手配いただけるとのご連絡があり、大感激。

ちょうど、翌日、単身赴任先から藤沢の自宅に出張で戻る予定でしたので、
急遽,単身赴任先で使っているスピーカー・スタンドを分解・梱包して自宅に
配送して試聴に備えました。

また、連休中にアナログLP漁りに来るついでに拙宅に泊まりに来ることに
なっていた友人に連絡したところ、なんと自作の真空管(300B)パワー・
アンプ持参で現れるとのこと。

お互いに前からS805が気になっていましたので、この時点でもしかしたらその
まま持って買える可能性もあるなとの予感。

”管球王国”最新号に小型スピーカーを管球アンプで鳴らす特集が出ていた
こともあり,これは興味深い比較試聴ができそうだと踏んでおりましたが、更
に、別の友人が,予定していた宿が満室で新潟旅行がキャンセルとなり,代わり
にマランツ#7プリを持ち込み合流、大試聴会と相成ることになりました。

連休前の出張仕事を片づけて帰宅すると,S805は連休初日の4/26にタイミング
良く配送されてきました。(よく見ると4/26(土)配送日指定となっており
ました。川又様のご配慮に感謝)

心躍らせながら箱を開くと、S805は通常のビニール袋ではなく、まるで高価な
ブランド物のバッグの様に白いフェルト状の袋にくるまれて梱包されておりま
した。あの美しい光沢仕上げですから,これだけのことが必要かと納得。

(光沢仕上げのエンクロージャーを磨くためのpolisherも同梱されておりまし
た。このあたり、Userの心をくすぐりますね。また発砲スチロールの緩衝材
の内側が例のエンクロージャーの曲線通りにできていて、妙に関心。)

取り出してみると、タイガーバーズアイ仕上げがは人気で、なかなか手に入
らないと聞いておりましたがレッドバーズアイ仕上げ予想通りの美しさで気
に入りました。

早速、単身赴任先でCDM-1NT用に使っているスピーカースタンドに載せ、配線
しようとしたところ問題発生。

拙宅のスピーカーと切り替え試聴のためバナナプラグで配線しようと思ったの
ですが、簡単に抜けたCDM-1NTと異なりターミナルのバナナプラグ用の穴がピン
できっちりとふさがれており、容易には抜けません。説明書にも欧州での安全
上の理由で塞いで出荷している旨の記載があるだけ。

爪をはがしそうになりながらようやく1本抜くのが精一杯で,仕方がなく通常
配線に戻して接続。(その後、どうにも不便そうなので、Mailで日本マラン
ツに問い合わせたところ、連休中にも関わらず、翌日にはピンの抜き方を連
絡いただき、無事バナナプラグでの接続ができました。まことに素早い顧客
対応で関心)

拙宅のシステムは、”清水の舞台から飛び降りる覚悟で”購入したP0s+VUKP0
を除けば、HAL'sCircleの諸氏のシステムとは比べ物にならない入門者向けです。

 CDトランスポート:エソテリックP0s(電源ケーブル PAD AC-ISUTARU)
           |
 < デジタルケーブル:PAD デジタルPROTEUS ABS/EBUx2(176KHz) >
  < WordSyncケーブル:PAD デジタルCOLOSSUS(Plasma)BNC >
           |
  DAC :エソテリックD70(電源ケーブル
  Dynaトレードセンターオリジナルのアクロテック6N-P4020)
           |
  < バランスケーブル:PAD AQUEOUS >
           |
  PreMaimnアンプ:McIntosh MA6900
(電源ケーブル 5555の3F/1Fで紹介していたN2/DAC-1D)
           |
< スピーカーケーブル:JBL JSC1000バイワイア対応4芯+JSC500
                    (スパーツィーター) >
           |
 Speaker:JBL S3500 + JBL UT025(スパーツィーター,12KHzカットオフで使用)
 フローリング床+カーペット+60x50x3cmの黒御影石ボード+J1Projのインシュ
 レーターを介して付属のスパイク+スパイク受けで設置

今回<<< B&W S805 >>> フローリング床に45cmの木製スピーカー台で設置

 その他:SACDPlayer :SONY SCD XA-777ES(マルチチャンネル対応)
     アナログPlayer :Victor QLY-55+DENON DL103R+FR FRT3Gトラン
     ス(古いシステムです)
     友人持ち込みシステム:真空管Power 300Bシングル自作 7Wx2
                真空管Pre  マランツ#7(再発キット版)
     電源Tap:AudioTechnica AT-PT1000(電源ケーブル N2/DAC-1D)

今回の試聴の目的も最高に近い入力を得た状態で,世評の高いS805を使って、
我が家の他の機器の実力を確認することでした。


さて、ようやくP0sでCDの試聴開始です。

1曲目:ピーター・シンコッティ:”デビュー”から4曲目”Sway”
(HAL-Iで聴かせていただいた曲です。なかなか、あのときの様に”壁が
消失する”感じには鳴ってくれませんが)

出だしから、S3500に対してはS805のSN比が良いことがわかります。声も生々
しくCenter定位,ピアノの音も綺麗。ところが、バスドラのところがで音がのび
ない?おかしいと思ったところ、アンプ出力の4Ω端子に繋いだままでした。

指定の8Ωに繋ぎ直し、気を取り直して再び聴くと、MA6900のメーターで20-30Wまで
Powerを入れても、腰砕けせず伸びやかに鳴るようになりました。

大きさからは想像もできない鳴りっぷりです。一つ一つの音が大変緻密に整って
おり、情報量が多い感じです。比較するとS3500が大味なことがわかります。
低域も、想像していたより遙かにのびており、通常の家庭では十二分ではない
でしょうか。

2曲目:ゲルギエフ指揮 キーロフ歌劇場管弦楽団:リムスキーコルサコフ”
シエラザード”冒頭

これは最高でした。大きさからは想像もできないようにスケール感豊かな
に音場が広がり、さらに、指揮者の位置で聴いているかのように、オケの
各パートがどんな動きをしているかがわかります。

どなたかが、P0sの感想として書いていらっしゃった事を実感しました。


S3500では全体のスケール感は更に豊かですが、細部が今ひとつ聴き取れない。
左手奥の方からティンパニーがわき上がってくる箇所がありますが、S805では
まさに演奏者が息を詰めて出番を待ち、そのときに一気に叩く様子がわかるよ
うな鳴り方をします。

S3500だと,ティンパニーがわき上がってくる感じがぼやけてしまいます。
特に、後日、置き方を部屋の長手方向から横手方向に変えて、より左右の広く、
かつ接近してセッティングすると更に見通しが良くなりました。

総じて、細部にこんな音が録音されたいたのかと発見するところが多く、
オーケストラを聴く楽しみが倍増します。分析的に聴く方にはもってこいです。

3曲目:ソニーロリンズ:”サキソフォンコロッサス”から2曲目”You don't
 Know what love is"

4曲目:エディ・ヒギンズトリオ+スコット・ハミルトン:”マイフーリッシ
ュハート”から1曲目 ”マイフーリッシュハート”

サックスの入ったJazzはどうか?さすがに、これはJBL S3500の圧勝。
ロリンズの野太く男臭い豪放なテナーの音はS3500の独壇場でした。かすれ気味に
出るスコット・ハミルトンのテナーもS805だとちょっと優等生的に鳴ります。
エディ・ヒギンズのピアノの音は、S805の方が繊細で美しく聞こえます。
S3500だとちょっと低域が勝ち過ぎる感じ(セッティングの問題もありましょうが)

5曲目:ヘレンメリル+クリフォードブラウンから2曲目”You'd be so nice
to come home to”

6曲目:フランクシナトラ:”SwingEasy”から9曲目”My Funny Valentine”

古いVocalはどうか?これは、S3500に比べ歌手の口が小さくかつ子音のきつさ
がとれ良好です。この時点で、Vocal好きの友人がS805を好きになりそうな予感。


その後は、シューベルト弦楽四重奏曲”死と乙女”(アルバンベルクSQ)、
ショパン・ポロネーズ集(M・ポリーニ)、アート・ペッパー・ミーツ・ザ・
リズムセクション、夜のブルース(ビル・チャーラップ・トリオ)等々聴きまく
りましたが、S805はほぼオールマイティに何でも高品位に鳴らすことがわかりま
した。

しかも、一音一音がたいそう細やかに磨かれており,いままで聴こえなかった音が
耳に届きます。優等生すぎてつまらないという人がいるやもしれませんが、大き
さも手頃でセッティングの変更も容易だし、値段も”清水の舞台から飛び降りる
覚悟”をせずとも手の出る範囲ですので,普通の家で聴くならこれ以上のChoiceは
ないんじゃないかとさえ思えます。

ただし、小生の好みからすると、もう少し低域の量感が欲しい、JazzもS3500の
様な熱気で鳴って欲しいという更なる願望があり,S3500の代わりではなく、それ
とは別に1台欲しくなるTypeです。

やはり、両方を1台で鳴らしきれるSpeakerが理想です。S800なのかS9800なのか
4348なのか全く他のSpeakerなのかはわかりませんが、P0sを鳴らしきるSpeakerは
しばらくは勉強というのが小生の結論です。


そうこうする間に、冒頭に記したのとは別の友人2名が試聴に参上。

お一人は、若いのにシーメンスのフルレンジ+平面バッフルやグッドマン・アキシ
オム/ガラード301にデッカのカートリッジ/McIntoshC29+MC240/ワディアの
CDPlayerでClassicを聴いておられる強者です。

ワインを飲みながら、P0sでCDを聴きまくりました。

ちなみに、CDPlayerを777ESにすると、一聴してわかる差に一同仰天。
777ESだけ聞いていれば、これはこれで十分良い音なのですが,P0s+D70の音はBass
の低域の伸び/分解能、ピアノの右手の打鍵の伸びやかさ等次元が違い過ぎました。

ビンテージ派の方の感想は、”久々に現代的な音を聞きました。
両スピーカーとも往年のビンテージ世代からずいぶん技術は進んでいますね。
CDはやはりいいやつ良く、音の改善度が大きいのを再確認”とのこと。

ただし、ピアノはシーメンスが良いともおっしゃっておりました。
もうお一人は色々なジャンルのCDをご持参下さりましたが,”S805だと今まで
聴いていた音とは別の新しい鳴り方で驚き、S3500は今まで聴いてきたものの延
長上か”との感想で、やはりS805に興味を示されました。


さて、翌々日、ようやく、職場のある四日市から2名、埼玉の鴻巣から1名の方々
到着、件の真空管アンプでの試聴と相成りました。

ひとしきり、小生の試した曲でP0s+S805の実力を確認。”小さいけど、実に良く
鳴るし、本当に良いSpeakerだね”というのが皆の最初の感想。

 ここからはアナログ音源でVocal主体に試聴を続けます。

1曲目:山下達郎:”On The Street Conner Vol.1”

これは達郎の一人多重録音LPなのですが、冒頭のハモリから圧倒されました。
MA6900ですと、音場が広がりスケールを感じるのですが、その分CenterのVocalが
やや薄まるのに対し真空管の組み合わせ(#7+300B)ですと、CenterのVocal
のがぐっと厚みを増し,声も滑らかに・明らかにレンジ/音場とも狭いのですが、
Vocalを聴くにはもってこいのSystemに思えます。
ここで四日市の友人は早くもニンマリしておりました。

2曲目:ヘレンメリル+クリフォードブラウンから2曲目”You'd be so nice
to come home to”

最初の5曲目と同じ曲をLPで。
この曲は、P0s+D70を持ってしてもヘレンメリルの声が伸びと暖かみを欠き、まだ
まだと思わせる難物でしたが、ここでは、ついに”ニューヨークの溜息”そのもの
の血の通った声が聴けました。

小生には、S805を鳴らすには、電源の強力な最先端アンプが必要で,真空管アンプ
で鳴らすというイメージはなかったのですが、これには驚きました。

 これで決定です。

300Bを持ち込んだ四日市の友人が、”このS805を車に積んで帰る”ということ
になり、川又さんにご連絡。魅力的なお値段を提示いただき、即決と相成りました。

連休最終日の混雑をを避け5/4にレッドバーズアイ(友人の好みの色でなによりで
した)のS805を、東京/横浜で買い漁ったVocal盤とともに友人の乗ってきた黒の
BMW323iの後部座席に積み込み、ついでに小生も一緒に乗り込んで、無事、四日市
にお嫁入りさせることができました。

翌5/5、名古屋でSpekerStandを購入しセッティング完了。
友人は、幸せそうにS805+真空管アンプでVocal盤を聞き入っている事でしょう。



HAL's Monitor Report