《HAL's Monitor Report》


No.0090 - 2002/3/3

愛知県名古屋市在住
          H.A.L.'s Circle Review-☆-No.0119に
          登場した名古屋に住んでるT・I 様より

モニター対象商品 PAD SYSTEM ENHANCER

http://www.cs-field.co.jp/pad/products/sys.htm

かつて、エージングの大切さを説いた人に長島達夫氏がいる。
長島氏はまず、オルトフォンSPUのエージングの大切さを説いた。
また、ジェンセンのエージングに心血を注ぎ、結局、その一生分の時間
を費やしてしまった。

また、瀬川冬樹氏は好きな音楽を辛抱強く掛け続けることでエージング
すべきと説き、テープなんぞをリピートして手っ取り早くエージングする
事を強く否定した。

そんなことでは自分の好きな音楽を聴くのに適したスピーカーにならな
いというのである。

なにを大げさなといわれる向きもあろうが、そうして、慎重にエージン
グされたシステムは、すばらしい音がしたものである。

ここでいう、エージングとは今でいうバーンインであり、それが余りに
時間がかかるのでエージングと混同されたというのが本当のところでは
ないだろうか。

しかし、そうやって、鳴らし込むことはオーディオの本当の楽しみといえ、
それは年余にわたるものである。

そう信じて僕の今のスピーカー(タンノイ)とのつきあいは9年にもなる。
ずいぶん音もこなれて、いい音をしていると思うし、反面、限界も来たか
と思うところもなくはない。また、本当にエージング(年取った)したの
かもしれないと思うとこれまた悲しい。

    ところがだ、・・・

PADのSystem Enhancer CDをためして、僕はひっくり返ってしまった。
出ないと思っていた音が出てくる!

まず、一晩、System Enhancer CDを掛けっぱなしにする。
じゃー、ピコピコ、こっ、こっ、なんの意味だかわからんが期待して寝る。

朝起きる…。

部屋に入ってみて、同じピコピコジャーが、何かすっきりして、何か部屋
の空気が澄んだ気がする。(ホントだって!)

まず、カーペンターズのデスペラードを掛けてみる。
前奏のハーモニカのエコーとピアノのソフトだがしっかりとした音が澄ん
で聞こえてくる、ここまでのこの空気がパーと晴れている、その中をカレ
ンの声が、その前の息継ぎから、口の動きも分かるようなリアルさで聞こ
えてくる。カレンの声は決して前に出て定位しているわけではない。

しかし、あまりのリアルさのためかそこで歌っているかのような錯覚がする。

そして、大きな発見は、ドラムが味のある演奏で効いていること。
そう、カレン・カーペンターはドラマーであった事をここで納得したので
あった。そして、ポップスはいろいろな音が重ねられていることが分かる
ものだから、ついつい色々聞いてしまう。

ここで、オーケストラを、サイモン・ラトル/ウイーンフィル、ベートー
ベン第5番を聞いてみる。去年秋に、実際の演奏に接した人もいるだろう。

僕は第6番を聞いたが、恐ろしくすばらしい演奏であった。
このCDを最初聞いたときは、やっぱり生の方がいいのかなと正直思った。

そして、今日聞いてみて、いやーそんなことはないね。

このCDもいいです。

なにが一番変わったかというと、コントラバスとかチェロの低弦の音、
弾むように、軽やかに、しかし、しっかりと聞こえてくるものだから、
演奏の骨格がしっかりとして、だから、ほかの弦楽器、管楽器の演奏も
しっくりとあって、ラトルが意図する「疾風のような(ライナーノート
の表現を借りました)」演奏にウイーンフィルの独特なうねるような
音の渦が溶け込んでくる、すばらしい演奏が聞こえてきました。

ここで、もしかしたらと思って、アナログレコードでワルターのブラ
ームス第4番を聞いてみる。

ああやっぱりそうだ、低弦の音が明らかに良くなっている。
不思議なことにCDだけじゃなくて、アナログも良くなっている。

僕は重低音は望んでいない。軽やかな低音、たとえば、コントラバス
は弾むように聞こえなければならない。

しかし、なかなか出ないその音が、あっさりとストレスなく出て
いる。これですよ僕が長年求めていたのは。

僕が感じる明らかな改善点は、低音の音がクリアーで澄んでくる
ことである。コントラバスだけの(例えばゲーリー・カーとか)の
レコードでは弓と弦が擦る音、ボディーから出る音は割と容易に出
るが、管弦楽団のレコードでは不鮮明になりがちである。

これが、擦る音がリアルに出るようになって明らかに良くなる。
また、ドラムのヒットする音、弾く音その瞬間の音が明らかになって
くる。そのせいか、音が全体として、ストレスなく、自由に出てくる。

でも、焦点はしっかりしている。

音の立ち上がり(立ち下がり?も)が早くなるんでしょうか。
ユニットの無駄な動きがなくなるのでしょうか。

これが、あのピコピコジャーを一晩掛けただけで出てくるとは。

ここでたとえ話をしてみましょう。

昔のスポーツ選手はあまり基礎トレーニングをしないで、ゴルフなら
ひたすら球を打って、野球の投手ならひたすら投げて、鍛えてきました。

事実、その方法で高みに達した選手もいます。

ところが、今は、トレーニング方法が確立して、タイガーウッズは
ドライバーで350ヤード、アイアンでも250ヤード飛ばすことが
出来るし、ロジャークレメンスは40歳近くなのに160キロ近くの
球を投げることが出来る。

それらは昔では考えることもできない革命的なことです。

選手自身の資質も大切ですが、それ以上にトレーニングメソッドの
進歩が不可能を可能としたのです。ここでトレーニングというと
パワーアップだけを連想しがちですが、そうではありません。

パワーアップだけではなく、その、パワーを効果的に発揮させるた
めに、筋肉の柔軟性を高めたり、関節のストレッチをしたり、動体
視力を高めたり、また食事に気を配ったり、疲労を取ったりという
総合的なものです。

僕がPADのSystem Enhancer CDについて感じたのはこれです。

僕のステレオは効果的なトレーニングを受けて、シェイプアップされ
たのです。だから、今まで出すことが出来なかった能力が明らかにさ
れて、今まで出せなかった音が出るようになったのだろうと。

となるとPADのジム・オッド氏はオーディオの名トレイナーということ
ですか。

この製品はオーディオの歴史の中でも革命的な進歩をもたらすもの
だと考えます。なにしろ、数ヶ月から、数年間必要だった鳴らし込み
という作業がたった半日から数日で終わって、より効果的なのだから。

3万数千円は高くない。(僕はとても安く買いました、すいません)

皆さんすぐ買いなさい。

あなたのステレオも350ヤードを飛ばし、160キロの球を投げる
ことが出来るかもしれません。

最後に大変有用な製品を紹介してくれた、ダイナミックオーディオ
川又店長、並びにシーエスフィールド今井社長には、心からの謝辞を
表したい。

どうもありがとうございました。

そして、PADのジム・オッド氏に一言、

「ジムさん、あなたはオーディオの天才だ!」

追伸:PADのジム・オッド氏に、「ついでといってはなんですが、
      アナログオーディオも鍛えてやってくれませんか。」


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