No.0072 - 2001/07/24
神奈川県秦野市在住 S.S様
モニター対象製品:PAD
ACイスタール 2.0m
ACタンタス 2.0m
ACドミナス 1.0m(実寸1.5m)
「PADより第二、第三の刺客(大蛇)そして、本命ドミナス(ツチノコ)捕獲作戦…・・」
1.はじめに
前回、MAXIMUSスピーカーケーブルとHDI RCAであっさりと大蛇(*紫色液体の入った、もしかしたらこれが毒?毒蛇??)に噛まれ、すっかりPADの音、感性の虜になってしまった私ですが、CDプレイヤーの電源ケーブルが直付けノーマルだったので、それはいかんと思い川又様にとりあえず、コロッサスの見積もりを依頼したところ、「ACでしたらTANTASをお勧めしますよ。私がお勧めした理由もご理解いただけると思います。」と意味深な言葉が・・・・・・
*紫色の液体はシグネチャーモデルで採用されている液体で、EMI耐性が40%も向上しているそうです。
ということで、今回新たにPADから第二、第三の刺客が送り込まれました。
そうイスタールとタンタスです。
どうしてタンタスの他にイスタールを借りようかと思ったのかというと、PADのHPより構造図を眺めてみると、非常に設計が似ていたからでかつコロッサスの直近の上位モデルだからでした。 非常に興味がありました、構造も似ているようで、音はどれほど違うのか、値段の差は音にどう現れるのか?
そして川又様の意味深な言葉と……・
その後、川又様からの「ドミナスも試聴しては?」との甘い言葉に誘われ、本命のドミナスも後から合流という形になりました。
2.使用機器:CD: LUX D-500X'sII
AMP:同 L-580
SP:DIATONE DS-205
インターコネクト:PAD HDI-RCA
SPケーブル:PAD MAXIMUS Bi-wire
コンセットボックス:
千曲 CPS-22-CL( CD用 )
CSE H66CL(AMP用)
電源ケーブル:
PAD ACコロッサス(直付けを改造してAMP用に)
壁コンから千曲 CSE L7R
壁コンからCSE CSE L10
壁コン:ナショナルのHグレードの一番安い奴
3.試聴ディスク:古内 東子: 魔法の手
宇多田 ヒカル: Distance
グロリア・エステファン: デスティニー
ジェシカシンプソン: イレジスタブル
サザンオールスターズ: 稲村ジェーン
バラッド 3
これら試聴ディスクはいわゆる、雑誌等で推奨ディスクとかになっている物ではありませんが、どのディスクでも、ボーカリストの微妙な息遣いや透明感の高い声、伸びやかな声が感じられますし、また比較的録音状態が良いと思われるので試聴対象にしました。サザンオールスターズのCDは、男性ボーカルの生々しさ、ホールトーンの確認に使いました。
4.試聴記
とりあえず、パッケージを開け、タンタス、イスタールを取り出すと、あれっ?コロッサスみたく硬くないぞ。これらは練り線だったのです。どうりで柔らかいわけです、そして太い割に、取り回しがよく好感が持てました。コロッサスの不満は硬すぎるので、取り回しが悪いことでした。
タンタスをCDPへ、イスタールをAMPへ接続し、ボリュームを上げ、お気に入りのCDをかけると、お決まりのようにたいして良いとは思えませんでした。
とりあえず、1週間様子をみるかという感じで、毎日のように就寝直前までコンサート会場さながらで試聴を繰り返していると数日後から徐々に変化が表れ始め、いつものように耳あたりが良くなってきたのでした。またシステムエンハンサーも併用しバーンイン終了!!
下記は、CDプレイヤーに使った場合の個々の評価です。というのも我が家ではアンプよりもCDプレイヤーの方が差が明らかにでたから、分かりやすかったからです。
イスタールの印象ですが、全体的にコロッサスの上位版という感じです、どのファクターも平均的にコロッサス+αといった感じです、ただし音の開放感、レンジの広さはイスタールの方が明らかに自然です。逆に締まった感じの音、スピード感のある感じは、コロッサスの方が強いですね。
もちろんノーマルと比べたら、それはそれは、比較にならないほど良いのですが・・・・・一度PADの音を耳にしてしまって、慣れてしまった私の耳にはそれほど感動は得られませんでした。
しかし初めてこの自然な音質・SNの高さを聞いた人には強烈なインパクトがあると思います。私がACコロッサスで最初に受けた印象は今でも忘れられません。 コロッサスと値段差はほとんどないですし、コロッサスよりも半歩確実に進んでいますし、練り線のためコロッサスよりも取り回しもよいので、今コロッサスを検討されている方で大き目のスピーカーを使われている方には、+αでイスタールを購入することをお勧めいたします。
タンタスの印象ですが、一聴して気付いたことは、低音に馬力、ダンピング?弾力感が出てきたことでした。弾力感が出てきたので音に力強さ、躍動感等が出てきて、聴感上のダイナミックレンジが明らかに拡がりました。この辺の余裕感はコロッサス、イスタールとは、明らかに違いますね。
スピーカーのセッティングを変えた?もしくは、パワーアンプを変えたかと思うぐらいの低域のパワー感、そして全体に余裕・ゆとりのようなものが出てきて思わず、笑みが。これだこれだ!!これが真のPADだ!!
これが川又様の言っておられた
「ACでしたらTANTASをお勧めしますよ。私がお勧めした理由もご理解いただけると思います。」
の理由だったのでした。たぶん。
また音場感にいたっては、特に奥行き方向が、マイナス数十cm壁の奥にまで深まったような錯覚さえ覚えました。それに伴い、ボーカルにはより深みが加わり、あたかもボーカリストがスピーカーの間に立っているかのような存在感も一段と増えてきました。
私は女性ボーカルを主に好んで聴いているのですが、試しに大好きなサザンをかけてみた所、これがビックリでした!?一聴して、出だしから今まで聴いてきた私の知っている桑田圭佑と声が全然違うのです、少し擦れたハスキーな感じや、マイクとの距離感、声の深み等が凄くリアルに聞こえてきてこりゃーいいやと。そしてサザンのCD稲村ジェーンの各曲間に挿入されている、映画館内での寺脇康文と女の子の声、それと映画館の寺脇康文達の後ろで聴いているかのような臨場感、映画館内に居るかのような空気感、これがあきらかに違います。
ケーブルの値段は国産の中級CDプレーヤー以上ですが、その音質の向上ぶりは、その値段のCDプレーヤーに交換するよりも明らかに次元の高い物になりました。満足満足、さー支払いどうしよっかなー、頭を沢山の諭吉達が舞っていました。(^^;
そして本命のドミナスですが、まず届いたパッケージの大きさにビックリ、さらにパッケージを開けてビックリ!?重さもケーブルとは思えない尋常な重さでした、電灯に透かして見ると、紫色の毒が一杯詰まっていました。大蛇というより、これは幻の「ツチノコ」です。
ドミナスの印象ですが、タンタスの上位版というより、全く次元が違いました。異次元ですねこれは。なぜ皆さんが、ドミナス・ドミナスというのかよく分かりました。タンタスの実力でビックリしていた私の想像を遥かに超越しており、ジム・オッド氏のオーディオに対す熱い執念のようなものを感じました。全帯域でタンタスの2歩先をいっていますね。参りました、脱帽です。
一聴した瞬間にだれもがこの音・音質・空気の自然さの違いに気がつくかと思います。
製品の構造も明らかに違いますし、タンタスがドミナスに近づいたという情報を聞いて、両者でどれぐらい違うのかと気にはなっていましたが、私の感覚では残念ですが、タンタスはまだまだドミナスレベルに近づけていないといった感じです。タンタスだけ聞いていれば、問題はないのです。
値段も倍近く違うのですから、当たり前なのかもしれませんが。タンタスの性能が低いのではなく、ドミナスが凄過ぎるのです、オーディオファイルからしてみれば、神様・仏様・ドミナス様といった感じでしょうか?
感覚的には、とても静かな音がします。静寂の中、スピーカの中央からスーッと音が出て来る感じです。
スピーカーの存在を感じさせない?そこまでは残念ながら私のシステムでは感じることは出来ませんでしたが、これは私のシステム全体の質の低さによるもの、HDI・マキシマスでさえもドミナスから生まれたピュア-な音楽情報をスピーカーに伝達しきれていないのかもしれません。
また音の粒子までもが手に取るように分かる、といったのが特徴でしょうか。特にボーカルの息遣いやボーカルの存在感がタンタスの2歩以上、上を行っていました。「圧倒的ではないか!!」
スピーカーからボーカリストが出てきたような感じです。
私のシステム自体、マキシマス・HDIにより空間表現が格段にあがっていたのですが、ドミナスによりその空間表現がオーディオの空間表現(バーチャルな世界)から現実の空間へと近づいているような錯覚に陥られます。これには本当に驚かされました。
今まではオーディオって良い音だな-って思っていましたが、ドミナスに交換すると、ボーカリストってこういう声質、歌声だったんだーと感じられます、オーディオのボーカルから本物の生音・肉声に近づく、これが一番の違いでしょうね。
低音のダンピングもタンタスよりもさらに上を行っています、またボリュームを上げても耳障りな感じが全くありません。そして女性ボーカルを聞いて目をとじていると自然と眠くなるのです、おそらくスペクトラムがノイズに埋もれることなく、綺麗に減衰して広がっているのでしょう、そのため自然な倍音成分が心地良く、脳を刺激しアルファー波が出まくっているのではないかと想像します。
CDの44.1kHz 16bitsのフォーマットの奥深さ、確かさを再認識させられました。
この製品(作品)は、ジムオッド氏のオーディオに対する熱意・情熱がものすごく感じられる、力作というか芸術品ですね。もしこれが特別限定生産で、数本しか世界に存在せず、オークションにかけられたら全世界のオーディオファイルから、どれだけの値段がつけられるのでしょう??
我が家の古いCDプレイヤーに付け替えてこれだけの差が出るのですから、皆さんがお持ちの最新のオーディオ機器、特にデジタル機器(SACD, DVD-Audio, セパレートCD)に使ったらどんなすばらしい音が聞けるのでしょう、想像しただけでワクワク・ドキドキしてしまいます。
ハイエンドオーディオ機器を持たれている方には絶対にお勧めしたいアイテムですね、絶対に後悔しないとおもいます。生涯現役でいられるケーブルです。
ただし、ケーブルとしては実際相当な覚悟がいる値段なのは確かですよね、なんてったって、一般サラリーマンの月収レベルの値段ですから。(^^)
全体の印象を表とグラフにまとめてみました。
表:各製品の音質評価
| | 低域 | 低域分解能 | 中域 | 中域分解能 | 高域 | 高域分解能 | S/N感 | 余韻感 | 立体感 | 空間表現力 | 合計 |
コロッサス | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 50 |
イスタール | 5 | 5.5 | 5.5 | 6 | 5 | 5.5 | 5 | 6 | 6 | 6 | 55.5 |
タンタス | 7 | 8 | 7 | 8 | 7 | 8 | 9 | 8.5 | 8.5 | 8 | 79 |
ドミナス | 9 | 9 | 9 | 9.5 | 9 | 9.5 | 10 | 9.5 | 9.5 | 10 | 94 |
図:各製品の音質評価
図:各製品の音質評価
低域/中域/高域:これらは、それぞれの音域の品位、質感、量感等。聴感的に音が良いなーと感じる主要素。
低域/中域/高域分解能:それぞれの音域の解像度。聴感的にスピード感、歯切れの良さ、各楽器の分離感等につながる要素。
S/N感:全域のS/N感。聴感的に音の静けさ、透明感、軽やかさ等につながる要素。
余韻感:全域の余韻感。聴感的に微弱音の余韻、各楽器のリアルさ等につながる要素。
立体感:全域の立体感。聴感的に微弱音の立体感、前後の奥行き感等につながる要素。
空間表現力:全域の空間表現力。聴感的に音の広がり、臨場感、空間、空気感等につながる要素。
ACコロッサスを5(基準)として、10を満点として、それぞれの項目で、主観的に感じた割合を各項目の点数とした。
5.総評
やはりCDPのノーマルの電源ケーブルがCDPの本来の性能を引き出せていなかったのでしょう。いや精一杯の特性は出ていたのですが、PADによって眠れる性能(力)がさらに湧き出てきたのでしょう。
電源ケーブルについては、各オーディオ機器の開発時、どのオーディオ機器メーカーもそれほど注力していないと思います。法律上の問題もありますし。
特に私の使っている機器の開発時代は、電源ケーブルは現代のモデルのようにACインレットを標準で装備はしておらず、電源ケーブルによる音の変化もそれ程まじめに受け止められていなかったように思います。もちろん現状もメーカーも最高のものをACインレットに差し込んでテストはしていないでしょう、機械に同梱用のケーブルでテスト、試聴しているはずです。それなりの高級機にはそれなりのものがついているのかもしれませんが。
各メーカーもこのような隠れた性能がPADによって引き出されているとは思ってもいないでしょうね。
以前まで、私も電源ケーブルによる変化はそれ程大きなものとは思っていませんでした、PAD ACコロッサスと出会うまでは。出会わなければ良かったのかもしれません・・・・・そして今回出会ったイスタール・タンタス・ドミナス、特にタンタスやドミナスの性能には目を見張るものがありました。
確かに電源ケーブルとしては、一般の人からは想像も出来ないほどの超高価な2製品ですが、これらの音に一度触れてしまうと、あとには戻れなくなってしまいます。そう大蛇(ツチノコ)に噛まれたり、にらまれたら最後です。
特にドミナスによって電源を供給された機器は、本来持っている性能をフルに発揮し、想像も出来ないほどの自然な音楽を聴かせてくれました。
いや出会って良かったのです、同じオーディオ装置で、こんなにもすばらしい、自然な音楽に触れることが出来るようになったのですから。そしてイスタール・タンタス、そしてドミナス様、素敵な音楽を私達にプレゼントしてくださってありがとうございます。
そしてドミナス様、来年の七夕に是非逢いましょう!(^^)
6.謝辞
最後になりましたが、このようなすばらしい企画をされているダイナミックオーディオ、川又店長様に感謝させていただきたいと思います。
そしてシーエス・フィールド様、このような高価なPAD社ケーブルを数週間にわたりご借用いただきまして誠にありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。
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