《HAL's Monitor Report》
No.0065 - 2001/05/18
北海道函館市在住 KI 様
モニター対象製品:PAD製ACケーブル ドミナス2本 ACケーブル タンタス2本はじめに 今回の試聴の目的は,PAD社製ACドミナス及びACタンタスの組み合わせにより再生音がどのように変化するのかを確認することであった. 方法 1 試聴対象製品: PAD製ACケーブル ドミナス2本,同じくACケーブル タンタス2本であった. 2 試聴システム:システムの概要は下記の通りであった. スピーカ Acustic Lab Bolero Grande コントロールアンプ TAG McLaren PA20r パワーアンプ TAG McLaren 100P CDトランスポート Esotheric P-Os D/Aコンバータ dCS Delius 吸音拡散ポール ACS Tube-trap スピーカ及び インターコネクトケーブル PAD Mizunosei デジタルケーブル PAD Digital プロテウス アイソレーションボード PAD T.I.P.3 試聴ケーブルの接続機器: 接続機器として,P-OS・Delius・PA20rを選択した.原則として,PA20rには,タンタスを固定して接続した.そして,CDトランスポート(P-Os)とDAC(Delius)には,下記の組み合わせで試聴を実施した. (a)ドミナス―ドミナス:P-OsとDeliusともにドミナスを接続した. (b)ドミナス―タンタス:P-Osには,ドミナス,Deliusにはタンタスをそれぞれ接続した. (c)タンタス―ドミナス:P-Osには,タンタス,Deliusにはドミナスをそれぞれ接続した. 4 試聴に用いたCD: 試聴用CDソフトは次のようであった.選択の基準は単に聞き慣れているということのみであった. Greig for relaxation(第1曲目) バグマル・プラディロヴァ ハープ協奏曲集(第1曲目) 諏訪内晶子 ブルッフバイオリン協奏曲(第3楽章) 大貫妙子 アトラクシオン(第5曲目) キースジャネット Whisper Not(第1曲目) サラブライトマン Time To Say Goodbye(第1曲目) 5 評定尺度: 試聴の印象を次の尺度上で評定した.評定は,9段階(+4〜−4)の9件法で行った.例えば,@の奥行きの項目で は,「最も深い」が+4であり,「最も平面的な」が−4である.ゼロは,付属のケーブルでの印象とした.評定者は筆者のみであったため,当然の事ながら主観的な評定になってしまったことは否めない. (1)奥行き: 「とても深い」−「とても平面的」 (2)水平:「とても広い」−「とても狭い」 (3)垂直:「とても高い」−「とても低い」 (4)音の解像度:「とても高い」−「とても低い」 (5)音の明瞭度:「とても透明な」−「とても濁った」 (6)楽音の強さの変化:「とても強弱がある」−「とても変化なし」 (7)高音の自然さ:「とても自然な」−「とても人工的な」 (8)中音の自然さ:「とても自然な」−「とても人工的な」 (9)低音の自然さ:「とても自然な」−「とても人工的な」 (10)残響音の広がり:「とても広がった」−「とても広がらない」 (11)余韻の長さ:「とても長い」−「とても短い」 (1)〜(3)は,立体感がどれだけ再現されるかに関する項目である.(4)〜(5)は音の解像度明瞭度に関する項目で,評定値が高いほど細かい音の動きを表現できること,透明度の高い音となっていることを示す.(6)は音の強弱といったコントラストがはっきりしているかどうかを示す項目である.(7)〜(9)は,音の自然さを示す項目で,これらの評定値が高いほど,CDソフトを聴いているという感じがなくなり,あたかも生演奏を聴いているかのような印象を起こさせることを示す.(10)は,残響音の減衰が自然であるかどうかを評定する項目である.この値が高いほど,残響成分が再生されているという印象を示す.最後の(11)は,余韻の持続性を評定する項目である. 6 手続き: PA20rの音量を一定にし,且つ,Deliusのフィルターを1に固定して一つずつ試聴を実施した.最初に付属ケーブルでの試聴を一通り行い,次にケーブルを交換してランダムな順序でCDソフトを再生して聞き終わった直後に評定を行った. 試聴結果 試聴の結果として,評定値を下記の表にまとめた.全ての組み合わせにおいて,+2以上の評定値であり,このことは概して試聴ケーブルがPADの高い技術力を具現したといえよう. 1 ドミナス―ドミナス 表の通り,最も評定値が高い. 印象としては,スピーカの存在を全く感じさせない.余韻は3次元的に拡散していった.まさに,音波は球面波であり,球面上に拡散するという音波の理論上の性質を体験させるサイエンスデモンストレーションのようだ(実際にはもちろん球面拡散ではないが).サウンドステージがスピーカの左右距離をはるかに超えて広がっていった.ボーカルの音像はシャープにフォーカスを決めていた. さらに驚いたことには,ピアノ・バイオリンの音が「くすぐったい」感じがする.音でくすぐられているような快感を覚えるのははじめてであった. 2 ドミナス―タンタス 印象としては,スピーカの存在が戻ってきたという感じだ.サウンドステージは上記のドミナスコンビネーションに比べるとやはり小さくなっていた.且つ上下方向への広がり感の減少は顕著で,コンパクトにまとまった感じがした.しかし,音が前方にせり出してくる感じ,迫力感は増したようにも感じられ,この点は興味深かった. 3 タンタス―ドミナス 第1印象として,ドミナス―タンタスの組み合わせよりも広がり感があった.スピーカの存在はなおも,感じられるが,全体的音場の印象はドミナス―ドミナスに近い.水平方向の広がりはドミナス―ドミナスのコンビネーションと変わらない.コンパクトに小さくなった感じもなかった.ただし,ドミナス―タンタスに比して,奥行きへの広がりが少ないように感じられた.解像度はドミナス―タンタスよりも高いようだった.特に,ピアノの1音1音が綺麗だった. [番外編] タンタス―ドミナス―ドミナス 番外編としてP-Osにタンタス,DeliusとPA20rにドミナスをそれぞれ繋いで試聴した.第1印象はノイズフロアが静かになったことである.すっと,抜けるような静かさが広がった.背景雑音の少なさは,ドミナス―ドミナスと同程度であった.前にせり出してくる迫力はドミナス―ドミナスよりも劣るようであった. 結論 音の入口に近いP-Os・Deliusにドミナスを繋いだ場合には,心地よいこれまでのオーディオ人生で体験したことのない音場が眼前に広がった.それに対し,P-OsかDeliusどちらか一方にドミナスを繋いだ場合には,先ほどとは異なった音場を実現してくれた.さらに,コントロールアンプにドミナスを繋いだ条件はさらに前者3パターンとは一風変わった音場となった.それぞれがたいへん魅力的な再生を演出していた. 2本のドミナスコンビネーションはオーディオシステム全体が全く変わってしまったかのような音場再生を実現した.再生される音場を変化させるには,音の入口に近いCDトランスポート及びD/AコンバータのACケーブルを変更することがきわめて有効であると結論づけられる. 謝辞 筆者の無理難題にも関わらず,自宅試聴を快諾いただきました川又店長及びCSフィールドの今井社長に心よりお礼申し上げます. 表 評定結果
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