《HAL's Monitor Report》
No.0064 - 2001/05/07
神奈川県川崎市在住 M,Y 様
モニター対象製品:marantz SA-1 KRELL FPB600cモニター対象商品1:marantz SA-1
実は「SA-1」のモニター直前にスピーカーの入替がありましたので、そのプロセスからお話したいと思います。少々長くなりますが興味のある方はお付き合い下さい。 プリアンプ ラックスマン/C-9U パワーアンプ1(Hi) デンオン/POA−3000ZR パワーアンプ2(Low) アキュフェーズ/P700 スピーカーシステム B&W/N801 ケーブル類 オヤイデ他、自作品多数 電源は全て200V〜100Vへダウンステップし専用回路を使用しております。[好きな音楽ジャンル] 歌曲系クラッシック、民謡、演歌、パンク系、以外なら何でも聴きます。 冒頭に記したようにスピーカーをJBL4344からN801に入れ替たばかりで、耳がまだ馴染んでいませんし、当初N801のレポートも考えましたが4344を否定するような気がしてならないのでやめました。ではなぜ?今回入替になったかというと、実は手放す直前の4344は、相当手の込んだチューニングを施しており、一般の4344とは似て非なる音を奏でていたからです(ヒドイ音という意味ではない)。つまりN801は、私の「4344改」に中高域の音の傾向がすごく接近しており(質的には別物ですが)、しかもずっと悩ませ続けてきた「4344」の低音処理を、N801は、ほぼ理想的鳴り方を示していたからなのです。一言「なんだ、自分が目指している音がこんな近くにあるじゃないか」と。本来対照的ともいえる両機の音が、自分の好みで調整した結果N801によってより鮮明に見出せたというのは意外という他ありません。「オーディオって面白いな」とつくづく思います。 何度も云うようですが、JBL4344が嫌に成った訳ではありませんし、いつか又チャレンジしたいという気にさせる「何か」をこのSPは持っています。もしこのレポートを読まれている方でこのSPを内臓ネットワークで鳴らしている方がいらっしゃったら黙って「マルチアンプ駆動」にチャレンジして下さい。 きっと惚れ直しますよ。 次に、パワーアンプの選択ですが「在庫」が色々とあったので、その選定は試行錯誤(試聴)した結果、上記の組み合わせに成った次第です。他にエントリーした機器は「テクニクスSE-A7000Ver4」「LaxmanM-10」「アキュフェーズA-50V」「カウンターポイントSA-220」といったラインナップでした。なぜこの様な機器があるかと申し上げますと、先の4344マルチ用で購入してきたものなのです。セパレートエントリー機ばかりですが、音質の違いを楽しんでいました。今回初めから「バイアンプ」を考えておりましたので、その中からHi用とLow用を好みに近いものをチョイスした次第です。まさかその中から15年前のDENONが健闘するとは思ってもみなかった展開でした。 そういったプロセスがあった上でのレポートですのでよろしくご理解の上お願い致します。 [試聴ディスク] マランツ テスト用CD/DMP does DSD(SACD&CDデュアルサンプリングディスク)※先日市販されているのを知りました。 初めにSACDの音をチェックしたいと思いますが、あいにく手持ちのディスクが無い為、予め川又店長様に用意して頂いた2枚のディスクのうち1枚をモニター用に使わせて頂きます(CDとSACDのハイブリッドディスク)。まず自分のCDPでそのディスク(CD)を何回も聴いてからテストに入りました。(とても優秀な録音であるというのが確認できました) マランツ テスト用CDより 1、2曲目 「Manfredo Fast」 *CDの音質 実在感があり、迫真の演奏であった。ピアノが主にフューチャーされている曲だが、普段ピアノに関心が薄い私でも「カツ−ン」というピアノの音は初めて聴いた気がする。(と気付かせた)個人的に好きな打楽器については、「シンバル」の生々しさ、そしてそのアタック時のグゥーンという低い音の成分がとてもリアルに再現された。録音の優秀さも手伝ってか、全ての楽器の立ち上がりが凄い。 *SACDの音質 多くの方が言うように明らかに「空間」が広くなった。アタックの鋭さなどは若干削がれ、中央にあった楽器が少し遠くへ移動してしまった感じである。 まだちょっと判らないので次曲へ進みます。 3、4曲目 「Steve Davis」 *CDの音質 まさにテストCDと思わせる楽曲である。インプロヴィゼーションの極みといった感じ。全てがリアルで緊張感みなぎる演奏がレコーディングに立ち会っている気にさせる。こうして聴いてみるとSA-1のCDの音質も素晴らしいと思う。「シューン」というシンバルの爽快感とハイハットを一発クローズドオープンした際の床から伝わる振動及び空気の震える感じが凄い。 ハイライトは4曲目中盤からパーカッションがリズムを刻み、それに絡みつくアコースティックベースのエキサイティングなプレイだ!アーティスト達が目配せをしつつ楽器と共に身体を揺らせてリズムをとる光景がみてとれる。かかと?!で床を踏みその振動がアコースティックベースの胴に伝わる際の音とも云えぬ「ブルッ」という空気が圧縮される様な音波に、リスニングルーム全体がきしみ、久々に真のボディソニックオーディオを味わった。その超低音にN801のウーファーがぶっ飛ぶかと思ったが「何の事?」という感じで"フルフル"とほんの少しストロークしているだけで余裕の表情をみせていた。(川又店長の随筆は紛れも無い事実だったと改めて実感) *SACDの音質 やはり空間感が縦横に広くなり、レコーディングルームが3割程度広くなった感じがする。このCDの4曲目冒頭で左方寄りから人の足音が収録されているのだが。それが「はっ」とする生々しさで聞こえてきた。もちろんCDを聴いても判るのだが、「はっ」とはしなかった。なんだろうこの違いは?と思いながら曲は進んで行く。さて例のハイライトである。CDではベースと足踏みの音に圧倒されてしまい他の演奏には気が回らなかったのだが、SACDではパーカッションの弾け感が見事で、レコーディングスタジオに「パァーン」と炸裂する。「凄み」こそ薄らぐ感じだが、全体のバランスは明らかにSACDの方が自然である。アコースティックベースの弦タッチも生々しい。 5、6曲目 (好みじゃ無かったので割愛させて頂きます) 7、8曲目 「Joe Beck&Ali Ryerson」 *CDの音質 7曲目「Summertime」の演奏は程よい広がり感を持ったギターのイントロから始まり、フルートによるおなじみの美しいメロディーを奏でる佳曲だが、そのフルートがとても芯のある音で録られており、トランジェントの優劣さが厳しく問われる曲でもある。CDの場合それがなんとなく誇張された感じで、少々耳についた。(音量大というのもあるが) *SACDの音質 聴き比べてしまうとこの曲はSACD圧勝という感じ、イントロのギターからして広がり感及び浮遊感がまるで違う。そして、フルートに至ってはマウスタッチの「ピュッ」という擬音が極めてリアルで、鳥肌が立った。うるささは微塵も感じさせない、どうやら「こういう曲はSACD有利」というものがなんとなくわかってきた気がする。 9、10曲目 「Gaudeamus」→男女混声合唱曲? 私は普段こういう曲は聴いておりませんでしたが、今日聴いてとても感動したので、初心者なりに感じた事を両者取混ぜてレポート致します。 まず結論から云ってこの曲の比較は甲乙つけがたいものでした。ぱっと聴いた感じは確かにSACDの方が独特の音場の広がり感がとても新鮮かつ感動的で「あっこれはもう決まりだ」と思ったのですが、じっくり聴き比べるとやはりコーラスの人々が少し遠くにいる感じがし、個人的に「初めてだからもっと前の席で聴きたい」という衝動からか、CDの若干狭い空間表現(比較して)と「口元が良く見える」こちらの方が良く思えてきたのも事実です。おそらく一度、生を聴きに行けばどちらが良いか(本物か)判断出来たかと思います。 後記 結局、購入には至らなかったのですが、想像以上にSA-1 のCD再生の音質がしっかりしており、見直した次第です。注目のSACD再生における「摩擦音系」のリアルさと、「空間表現」の素晴らしさには感動しつつも、果して?今後自分の好きなアーティストの作品が、SACD化され市場に出るかどうか判らない様な現状では、今回購入迄踏み切れなかった一番の要因と成ってしまいました。しかし、その実力と可能性は充分見出せましたし、とても満足の行くものでした。早くSACDソフトを充実させてもらいたいものです。 又、SACDもさる事ながら改めてN801の実力を知りました。高域方向はまだ硬めの音で参考程度の状態ですが、低域に関しては恐るべきポテンシャルを秘めていると実感した次第です。 川又店長、無理を言ってすみませんでした! 続いて・・・ 実はSA-1返却後、いよいよN801と真剣に取り組み、早々と別の弱点が露呈してしまったのです。 (2)大食漢!?N801 その瞬間はあっけなく訪れました。私の好きな女性ジャズボーカリスト「ダイアナ・クラ−ル」を心地よく準ハイパワードライブをしていた時、何気ないところで「異音」を発しました。そう、それは「チリッ」というスピーカーからの悲鳴でした。その後少しボリュームを絞った位置で何度か聴きかえすと、「異音」は聴こえてきませんでした。再び元の音量で聴きながらアンプをよく見ると、2つのアンプのメーター照明が演奏のリズムと共に「暗くなったり明るくなったりしているではありませんか!お判りですよね、壊れたわけでは無く限界下での演奏だったのです。今までこのアンプ達にこんなに負荷がかかっていたことは殆どありませんでした。その理由は前機4344改はネットワークスルーだった為、能率がとても高かったからという根拠からです。(因みに電源は200V−30Aを専用に引き込んであります)「うーん」と思わず考え込んでしまいました。そういえばプリのボリューム位置が今までの3割増しからそれ以上のところにあるのには気付いておりましたが、現在の国産アンプはサチュレート寸前まで音がちゃんとしているのでまさかとは思っておりました。しかも準ハイパワー・・・・というのは私にとっていつもより控えめという意味で、正直云うとN801の大食漢ぶりに呆れると同時に「こんなもんでネを上げるとは情けないな」とさえ思った程です。それからです、アンプやコードを取替引き換え始まったのは!毎夜繰り広げられるその奇行に同居人も呆れておりましたが、結局収拾つかなくなり「ダメダコリャ」と潔く諦めました。もうそれからは音楽を聴く気に成らなくなってしまったのです。(小さい音で聴けば済むことですが) 憎きN801!一般にこんな状況に陥った時、多くの方はどう思考回路を働かせるのでしょうか? 1 我慢する 2 N801を放り出す 3 アンプを取り替える 理性を失った私は同居人にナイショで、そーっと「川又店長」へメール送信し、前記出来事を報告。やはり返ってきたのは「アンプの限界」とのこと。 川又店長お奨めのアンプは、私の聴き方から察するともはや「KRELL」しかないと云う事でしたが、まずは自分の予算と機器での組み合わせ及び部屋でのモニタリングを相談したところ、すぐに「FPB600c」どうですか?と返事が返ってきました。(早すぎる!) 実は個人的に「KRELLの顔って好きでないのね」。と川又店長へ云ったら「とにかく音を聴いて下さい」と云う事でした。他店でFPB300の音を聴いたことがあり、そのときの印象は「良くも悪くも普通の音」という印象があったので、とりあえずそのパワーに期待してモニターする事と成りました。同居人には「ダイナのN801購入に伴うサービスの一環だよ」と嘘も方便とはまさにこの事だと舌も快調でした。 モニター対象商品2:KRELL FPB600c (3)600c導入 いよいよ600Cが我が家へ来たのは、あれから2週間も満たない平日の夜でした。アクシスの木村さん達に「残業」迄させての搬入でしたが(ご苦労様でした!) 、手際よくセッティングして頂きすぐに音出し開始・・・・。始めはやはり「眠いような冴えない音」木村さんからのアドヴァイスを受けしばらく鳴らしこむことに。その日は夜も更けてまいりましたのでほどほどにしましたが、2時間位経った頃、音のフォーカスが"ピシッ"と揃ってきたのが確認できました。又、ハイパワーアンプでありながら小音量再生も大変実在感のある音を発したのには感心しました。 [試聴ディスク] さていよいよ本番です。私の愛聴盤から3枚セレクトしました。 1 When I look in your eyes/Diana Krall 2 DOUBLE EDGE/村田陽一ソリッドブラス 3 HOLST・THE PLANETS/ジェイムス・レヴァイン指揮=シカゴOC&C 1での感想 このアルバムのボーカル再生にて国産アンプが悲鳴をあげたので、もはや「テストディスク」の1枚と成ってしまいました。 彼女が声を張り上げた時、それを破綻無く再生することが目的でしか聴けなくなってしまっていたこのディスクを、久しぶりに歌と演奏に集中して聴く事が出来たのが何よりの収穫でした。歌の抑揚と空間に拡がる余韻が美しく余裕たっぷりに聴かせるあたりは今までに無いものでとても興奮しました。やはり改めて「パワーだな」と思いながらあっという間に聴き終えてしまいました。 2での感想 このディスクはチンケなシステムだと中高域ばかり強調され、とても耳障りに聴こえてしまう録音物であるが、実は大型のシステムで剛性のあるウーファーを搭載するスピーカーでハイパワードライブすると本領を発揮します。 N801と600Cの組み合わせは、まさに理想的な再生結果をもたらしました。先日彼らのライヴを目の当たりにして来た私は、すぐそこに村田陽一が居るような錯覚を覚え、特に5曲目「SQUIB CAKES」での"村上ポンタ秀一"特注カーボンドラムセットが放つ"ソリッドかつマッシヴ"なドラムサウンドをほぼ同スケールで再現しN801のウーファーユニットが1センチ強のストロークを繰り返すベードラは、我が家の通し柱と基礎の土台を縦方向に揺さぶり圧倒的音圧で迫って来ました。感心したのは「ホーンの音」に慣れていた私の耳にN801の黄色いコーンスコーカ−ユニットの音が心地よくしみわたり、ブラスの音がはじける様は「ホーンと違う明晰な説得力があるんだな」とつくづく感心し、このからくりは「クレル独特の脂気というか濃厚さがあって表現される音」だと思いました。(国産の時はもっとあっさりした表面的な音だった)そろそろやばくなって来ました! 3での感想 普段あまりクラッシックを聴かない私は、比較的新しく激しいものが好きで、この様な選曲に成りました(録音の良い物が多いというのもあるが)。いろいろ聴いた中で「グラモフォン」のは、中低域が誇張された印象を持っており、4344とは今一つマッチしないものでしたが、N801はその辺のネガティブな要素を一気に払拭してくれました。B&Wをレコーディングモニター用に使っているせいかどうかはわかりませんが、絶妙なマッチングをみせたのを報告致します。 火星でのスケールの大きい重々しい演奏、低いうなるような弦と咆哮するブラス群、圧倒的スケールで再現されるパイプオルガンが不安感を一層高め、ハイパワードライブアンプの必要性をこの演奏で再認識しました。600Cで鳴らす前はこの様な感覚はもっと希薄でした。 木星での優雅でダイナミックなパフォーマンスも、楽しく音楽に浸ることが出来、その余裕の再生音がスピーカーの存在をも忘れさせるものでした。 トータルで云える事は * 大音量でもうるさい感じが全くしない。(不思議です) * 大音量でも音像が肥大しない。(これはスピーカーか?) * 小〜大音量までの音色とレンジが均一。(中身が詰まっている感じ) * 定位が安定している。(前は大音量にすると、左右の音がかぶってきた) まとめ 以上、足らない点を少し補足致しますと、私の云う"ハイパワーの必然性云々"とは、私自身が平均して音楽を聴く音量が大きいという特殊性と更に今回N801が予想以上にアンプのパワーを喰うという事がわかり、実体験としてその様な見解になった次第です。SS誌の何号かは忘れましたが、故・井上卓也氏が「N801のウーファーは逆起電力が凄いのでまずこれを征しなければならない・・・」等と記述されていた記憶があります。小さなエンジンをレッドゾーン付近でぶん回し続けるより大きなトルクのあるエンジンをゆるゆると回していたほうが心情的にも経済的にも余裕が生まれるという例えにも当てはまるかと思います。それから今回「カタログスペック」なるものがあまり参考にならないという事を実感しました。 結果、600Cを導入することに成った訳ですが、冒頭でも記している通り、まさかたった2ヶ月程でこの様な展開になるなど夢にも思いませんでした。何より「資金計画」等何も無かった訳ですから大慌てです。恥ずかしながら、今まで使用してきたセパレートアンプや、押入れなどに眠っていた「古い思い入れのあった機器」全てを引っ張り出し(大切に保管していました)1台づつ夜が明けるまでメンテナンスを施し、「某オークション」に一気掲載、何とか軍資金を作った次第です(結構良い値が付き驚きましたが)。 又、この様な高額な商品を自宅モニターするという事でいささか躊躇する私に、川又店長から「気に入らなければいつでも返却して下さい」と予め云われ「じゃぁ」と思ったのも束の間、「参考までに」と画期的プライスを提示されたメールを素早く配信され、その息をもつかせぬテクニックには感服し、余計に悩ましい数日を過ごさせて頂いた訳です(皮肉じゃありません、川又マジックです!?) とはいえ選択の自由はもちろんある訳ですから、ダメなら「要らない」といえば良いと思いますし、こういうプレゼンを積極的に行う"ハルズサークル"ならではの特典だと理解してますから、どしどし利用するのが我々の選択肢であると!(理性との葛藤になるでしょうが)。でもね、川又店長、実は「良い買い物をした」と満足しております。今後ともよろしくお願いします。 最後に、だらだらと私見を述べてまいりましたが、最初N801のモニターレポートを書き始めていた頃、SA-1に色目を使い、ほどなくパワーアンプの入替と、それぞれ中途半端に書き止めていたレポートを無理やり結合した為、全く取り留めの無いレポートに成ってしまった事をお詫びいたします。 長々と済みませんでした。 追伸 その後、200V仕様に切換えましたところ、より一層エネルギッシュかつSNの向上が確認出来たことを報告致します。 |