《HAL's Monitor Report》


No.0057 - 2001/03/18

北海道函館市在住 KI様

モニター対象製品:PAD TIP

 結論から書きましょう。
 PAD社のトータル・アイソレーション・ボード(TIP)は例えハイエンドの機器でなくても、十分に音質の変化をもたらします。

 1 はじめに
 ここ10年ほど仮想現実に関する技術革新はめざましいものがある。あたかも、現実の世界が眼前に広がっているかのように感覚を「錯覚」させるのである。当然、音の仮想現実の技術も進歩してきている。たとえば、ダミーヘッドに取り付けたマイクロホンで集音してそれをヘッドフォンで聞くと、頭の中に立体音場が広がる。
 私はオーディオシステムも一種の仮想現実の装置ではないかと思う。コンサートホールの客席で聞いているかのような音の広がりを眼前に作り出してくれるからである。私は、できるだけ現実に近い音質、音の広がり感を作り出したいと願っている。少なくとも私の理想とするオーディオシステムはこのようである。しかしながら、「あたかもコンサートホールで聞いているかのように」CDソフトを鳴らすことは容易ではない。だからこそ、オーディオは終わりがないのだと思う。

 2 TIPの来訪
 なんとか、少しでも理想の音を再生して欲しい、そう考えていた時、川又さんのホームページで目に留まったのはPAD社のTIPだった。実は、アイソレーション・ボードには、正直言って半信半疑だった。(今でも魔法にかかっているかのようである。)大音量で音楽を再生しない限り、演奏に影響する振動など起きるのだろうか?また、CDの音質に影響するほどの電磁波が一般の家庭内に充満しているのだろうか?などなど。とにかく、「百見は一聞にしかず」ということで、川又さんにメールをして、モニター試聴をお願いしたのであった。
 函館に雪が深い頃、TIPが届いた。開封するとずっしり重い金属の板であった。ちょっとおしゃれにテーブルの上に置いて装飾品などをその上に飾っても悪くないかななどと感じた。とにかく、CDプレーヤの下に設置することとし、試聴を開始した。

 3 「恐るべし!!」TIP
 ここで、私のシステムを紹介させていただきたい。

  リスニングルーム:6畳と4.5畳を合わせた部屋
  CDプレーヤ:日本マランツ CD−7 + PAD ACイスタル
  プリアンプ:タグマクラーレン PA20r + PAD ACコロッサス
  パワーアンプ:タグマクラーレン 100P
  スピーカ: アコースティックラボ ボレログランデ
  スピーカケーブル:PAD MIZUNOSEI
  インターコネクトケーブル:PAD MIZUNOSEI
  その他:コーナーにはASCのチューブトラップ
 まず、いつも聞いているアイネ・ゾフィー・ムッターの「四季」をプレイした。
 第1印象は、「音量が小さくなった!」であった。続けて「あれ!音の延びが今までと違う」であった。そして、あとは、「恐るべし!!」と数回口ずさんでしまった。
 次のCDは、ヨー・ヨー・マのシンプリバロックの1曲目をセットした。
 もう、音量が小さいという印象は消えていた。第一印象は、「あれ!ヨー・ヨー・マとバックのオーケストラとの間に奥行き方向に距離がある!」であった。第2印象は「チェロの音質が変わった!」であった。つやつやしてリスニングポジションの方向にのびてくるのである。そして、あとは、「恐るべし!!」という感想だけが残っていた。
 最後に、タイタニックのサウンドトラックを試聴して、その日は終わろうと決意した。そうしないと「後引き豆」のようにきりがないからだ。タイタニックのサウンドトラックは、PCM録音されているため、私がよくリファレンスにしているCDの1枚である。このアルバムの1曲目と最後の曲を聴くことにした。まず、1曲目の笛が聞こえて来る。「綺麗なリードだ!!」、「後ろ斜め方向へ笛の余韻が伸びて行く」のであった!!
 これはやはり、「恐るべし!!」である。次に最後の曲。二つの笛がくっきり分離して聞こえる。やはり、斜め後方への反響音が美しい。聴き終わって、ただただ、興奮が続き、同時にまるで、魔法にかけられたような奇妙な感覚だけが残っていた。

 4 TIPによって変わったと感じた聴覚印象のまとめ
 読者には「恐るべし」と言われてもなにがどう恐ろしいほど変わったのかわからないと思われるので、ここでまとめをさせて欲しい。
(1) 空間の広がり感の変化:左右方向の広がりにはあまり変化がなかったが、上下方向及び奥行き方向への音場の広がりが明らかであった。特に、斜め上後方への音空間の広がりは顕著であった。
(2) 反響音がいっそう、聴こえるようになった。しかも、その持続が長い。それだけではなく、反響音の聴くえる方向に指向性があった。上・または、斜め上後方へと反射音が伝わっていくように聴こえた。

 5 プリアンプの下にTIP
 ひとしきりTIPによる音の変化を楽しんだ後、TIPをプリアンプの下に設置してみた。
 同じ上記の曲をかける。第一印象は再生音が大きくなったことである。しかし、音空間広がり感・反響音の持続感は消えてしまった。妙に太った音という印象であった。

 6 ハイエンドでなくてもTIPの価値があるしかし?
 TIPを機器の下に置くだけで音質が変わる。少なくとも私にはそう感じられた。聴覚印象はたしかに変わった。しかし、大脳の前頭葉で、つまり理屈の上ではまだよくわからない。機器の下にTIPを置くと有害な電磁波から逃れられるのか?物理学の博士号を取得できるほど研鑽を積まないとこの疑問は解決されないのであろう。ま、なんであれ、音が変わるのだから、魔法にかけられている方が幸せだと思っている。
 高価なオーディオ機器でなくても、TIPの効果は確実に聴感上現れる。
 この結論をもってモニターレポートの終わりとしたい。

 7 終わりに
 今回、TIPの自宅試聴をお願いしたところ、快く快諾いただきました。
川又さんにこの場を借りてお礼を申し上げます。

HAL's Monitor Report