No.0039 - 2000/11/7
浜松市在住 N・I 様
モニター対象製品:MARK LEVINSON NO383L / JEFF ROWLAND DG Concentra
すでに購入後20年近くも経った、TANNOY ARDENUの更新をずっと考えていた。
ARDENUを購入したときは、僕はまだ学生で、その後の長期ローンに結構苦しんだなあ、とか、あの時BILL EVANSのWALTZ FOR DEBBYの再現性で納得がいったから購入したんだ、とか思い出していた。
B&W Nautilus802は、発売間もない頃、試聴して、その鮮明さ、音の広がり、スピード感の速さに圧倒され、いつかは欲しいと思うようになっていた。
ARDENUは確かに、50年代や60年代の録音にはそれらしい音を出すが、最新録音やフュージョンでは、その限界が明らかだった。だから、CDを買っても通り一遍の試聴となってしまったものが多い。
この夏、HALの川又さんからのメール情報で、Nautilus802の掘り出し物があることを聞き、ついに購入してしまった。まずは、SPからの更新で、順次古いシステムをそれなりに変えていく積もりだ。それなりと言うのは、やはり予算上の制約がある中での更新だからだ。
さて、現在のシステムは次のとおりである。ハイエンドの皆さんとは、まったく異なる古いシステムであることをご容赦願いたい。
SP: B&W Nautilus802
PRE AMP:YAMAHA A2000
POWER AMP:LUXMAN MQ70
CDP:PIONEER PD-T07HS Limited
プリメインアンプのプリ部分使用と、パワーアンプは5極出力管6CA7で45W×2(8Ω)である。
Nautilus802購入後、以前とは違うなあ、との感想はあったが、最新のアンプ、特に輸入アンプの実力を自宅で確認したいとの思いに駆られて、川又さんに無茶なお願いをした。
「MARK LEVINSON NO383Lと JEFF ROWLAND DG Concentraを貸して下さい。」
INTEGRATED AMPとしたのは、予算とメーカーごとの音の違いを確認したいからであった。川又さんからは、輸入代理店と相談して何とかしましょう、の返事。
予定どおり、10月17日に両方とも到着。早速、愛聴アルバムでの試聴を始める。僕のお気に入りは、ピアノを中心としたJAZZ。最近はヨーロッパのアルバムを買うことが多い。
まずは、MARK LEVINSON NO383Lからだ。一見して分かるマークレビンソンらしいフォルム。ずっしりと重たい。見た目も重厚だ。ボリュウムは40.0にした。
1 寺井尚子 「PURE MOMENT」
若手ジャズバイオリニスト。2回もコンサートに行ってしまった。このアルバムは第2弾。クラシックの基礎が十分あるため、聞いていて気持ちがいい。99年6月東京録音。
マークレビンソンではどうか。1曲目のAdios Noninoを聞く。力強いバイオリンだ。女性ということを意識させず、ぐいぐい引っ張る。さすがマークレビンソン。802の能力の引出しがすごい。シンバルの音のきらめきもいい。7曲目のFirst Love、しっとりとした中に奥深い音色がうかがえる。
2 MICHEL CAMILO&TOMATITO 「SPAIN」
ピアノとギターのデュオ。ピアノもいいが、Tomatitoのフラメンコギターがいい。スペインの香りがあふれている。99年アメリカ録音。
1曲目のSpain Introから、すでに納得できる深みのあるギターだ。音の立ち上がりもいい。802はいいなあ、と実感する。2曲目Spainは、1曲目と違いスタートからギターとピアノが絡み合って飛ばす。迫力がある。でもうるさくない。
3 VLADIMIR SHAFRANOV「White Nights」
北欧出身のピアニスト。歌心ある素晴らしい演奏だ。澤野工房の作品はレベルが高い。
2曲目のI remember Clifford を聞く。あれっ、音が少し曇っている。演奏はいいが、音はこんなだったかな、と思う。12曲目のDjangoも同様。90年録音なのに、録音のアラが見えてしまう。でもいい演奏だから許そう。僕は、音を聞いているのではなくて、演奏を聞いているのだから。
4 Michel Petrucciani 「Solo Live」
Petruccianiは、フランスが生んだ偉大なピアニスト。惜しくも99年1月に36歳の若さで他界してしまった。しかし、この天才は多くのアルバムを残している。僕は、アメリカからフランスに帰国してからのDREYFUSレーベルでの生命感あふれる演奏が大好きだ。
さて、このライブは97年2月のフランクフルトのもの。1曲目のLooking Upは、ピアノの立ち上がりがスタートから良い。従来のシステムでは、こんなにリアルではなかった。5曲目のHome。大好きな曲だ。圧倒的な説得力である。
5 Chano Dominguez 「CHANO」
Chanoは60年生まれのスペインのピアニスト。躍動感あふれるスペインらしい演奏を聞かせてくれる。このアルバムは、92年スペイン録音のもの。初リーダー作品だ。
1曲目のREFRITOでは、ピアノのリアル感、スピードがある。パーカッションの鳴り方には圧倒される。2曲目のNAIMAも同様。ベースの響きがいいなあ。
6 John Mclaughlin 「Time Remembered」
アコースティックギターでMclaughlinが、クラシックのギターカルテットとともに、ビルエバンスの作品を演奏している。落ち着きと気品がある作品。93年3月イタリア録音。
1曲目PROLOGUEはギターの響きが深い。2曲目のVERY EARLYは、ギターのピッキングのリアル感がなんともいえずいい。
7 木住野佳子 「Fairy Tale」
GRPレーベルで最初の邦人ピアニスト。ファーストアルバムである。非常にダイナミックレンジの広い録音である。Eddie GomezやMark Johnsonなどの名手を得て伸び伸びとした歌心のある演奏である。95年4月アメリカ録音。
1曲目のBeautiful Loveは、音の広がりがあって低音に迫力があり、いわゆるHi-Fiな音である。6曲目のStella By Starlightは、サックスの音色がいい。
8 Fleurine「Close Enough For Love」
オランダの美人ボーカル。オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語を話す才媛だそうだ。日本語もついでに話せばいいのに。相棒のピアニストはBrad Mehldau。恋人同士だそうで、確かにこのマッチングはただのセッションと思えない阿吽があるように感じる。99年6月アメリカ録音。
1曲目のThe Logical Songは、甘いだけではなく、凛とした厳しさが伺える。こんな風には、前のシステムでは聞こえなかった。
9 Thierry Lang「Thierry Lang」
詳しいことは知らないが、北欧系のピアニストのようである。96年11月ノルウェー録音。知的でリリシズムのある演奏がなかなかいい。。
1曲目Yellow Storyを聞いてビックリした。シンバルの音がいぶし銀である。絡んでいくピアノの音。ベースの入り方が決まっている。実は、この曲はベースを主役にした曲であったのか。ベースの存在感は何物にも変えがたい。見直しました。
次に、JEFF ROWLAND DGの Concentraに変えてみた。特徴ある銀色の波を打ったような美しいパネルである。ボリュームは、66.5で試聴した。さて、同じアルバムがどうなりますか。
1 寺井尚子 「PURE MOMENT」
1曲目のAdios Noninoを聞く。音色の美しさと輝き。確かに美音である。7曲目のFirst Loveでは、意外と乾いたバイオリンの音。でも美しい。
2 MICHEL CAMILO&TOMATITO 「SPAIN」
1曲目のSpain Intro。ピアノの響きがいいなあ。ギターとピアノの分離がいい。2曲目Spainの立ち上がりもいい。音もきれい。迫力もある。これは聞きほれました。
3 VLADIMIR SHAFRANOV「White Nights」
2曲目のI remember Clifford を聞く。やはり、音が少し曇っている。でも落ち着きのある音。12曲目のDjangoも同様だが、シンバルの音がなかなかいい。
4 Michel Petrucciani 「Solo Live」
1曲目のLooking Upは、ピアノがきれいだ。リアルでPetruccianiが今弾いているんだなあ、と思う。5曲目のHome。ピアノの右手の音色がいい。響きも音のまとまりもいい。
5 Chano Dominguez 「CHANO」
1曲目のREFRITOは、スピードよりも深みを感じる。パーカッションよりもピアノの存在感。情報量も十分である。2曲目のNAIMA。すごくいい。圧倒的なピアノのボリューム感。でもベースの低音は、マークレビンソンよりも弱い。
6 John Mclaughlin 「Time Remembered」
1曲目PROLOGUEはギターの張りのある音。2曲目のVERY EARLYは、ギターの
美しさがいい。
7 木住野佳子 「Fairy Tale」
1曲目のBeautiful Loveは、音の広がりよりも音の深みを感じる。6曲目のStella By Starlightは、サックスの音色が美しい。
8 Fleurine「Close Enough For Love」
1曲目のThe Logical Songは、女性らしい張りのある色気を感じる声。
9 Thierry Lang「Thierry Lang」
1曲目Yellow Story。シンバルの明るさ。ピアノも明るい。キラキラ輝いている。でも、マークレビンソンでは圧倒的だったベースの鳴り方には不満である。ベースはマークレビンソン方がいい。
マークレビンソンとジェフローランド。音色はシンプルなマークレビンソンに対して、きらびやかなジェフ。特にジェフは中高域の美しさがとても良かった。逆に低音の馬力はマークレビンソンの勝ち。スピード感も同様。
インテグレイテッドアンプのまとまりは、総合的に見てマークレビンソンの方がよい。ただし、優等生的な感じもする。もちろんジェフの楽器感ある魅力的な音も捨てがたい。こうなると、ジェフの音にマークレビンソンの馬力を加えたような音が欲しいということになる。これって、やはりセパレートでないとダメなんですか。川又さん。
今回の私のわがままに対応していただきまして、有難うございました。また、お店で聞かせていただいて、自分の音作りをしていきたいと思います。
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