《HAL's Monitor Report》
No.0026 - 2000/09/18
福島県 グランドスラム 様 モニター対象製品 Connoisseur 4.0 1.自己紹介
初めまして。グランドスラムと申します。住まいは、福島県会津坂下町(「あいづ
ばんげまち」と読みます)で、職業は小学校の教員をやっております。 2.ハルズレポートを書く経緯
普通ですと、「レポートを書くから製品をモニターさせて」となるわけですが、私
の場合は少し違いました。簡単に経緯をお知らせいたします。 実は、このブリーフニュースが来る2週間前、地元のオーディオ店で私は友人から こんな相談を受けました。「コヒレンスの中古って出ないですかね。」それに対して 私は、「もう生産を打ち切ったから、難しいかもしれないね。でも、手放したい人は きっといるから聞いてみるよ。」と答えたのでした。川又さんにも相談したのです が、新品はあるが中古は出る様子はないとのことでした。しばらく待つしかないかと 思っていた矢先に、先ほどのブリーフニュースの内容です。これ幸いとばかりに、川 又さんに連絡をしましたが、まだ先のことでもう少し待って欲しいとのことでした。
コニサー3.0とコヒレンスUの違いについて川又さんといろいろと話をした後
に、私の頭に浮かんだのは、3.0の弟分の4.0でした。コヒレンスUは240万
円、中古にしても120万円前後でしょう。コニサー4.0は160万円、少し安く
してくれればコヒレンスUの中古と対して変わらないではありませんか。そう考えた
私は、すぐに川又さんにメールを打ちました。「コニサー4.0を貸してくれません
か?」と。 ところが、ここで、予想もしない出来事がまたしても、ブリーフニュースで! 「名古屋のお客様がコニサー3.0と4.0の音の違いを聴くために、HALに来店さ れて、5時間かけて試聴された」という内容でした。ということは、現在コニサー 4.0がHALにあるということですよね。すぐにメールを打った私に川又さんからの 返事は、こうでした。 「今回の特別な貸し出しの代わりに、試聴した感想をハルズモニターに書いていただ けませんか?」 一も二もなく承諾した私の元には、2日後、コニサー4.0が送られてきたのでし た。本来の目的は友人にコヒレンスUを買う前に、コニサー4.0を勧めようとした のですが、この時点では私がコニサー4.0の音を聴きたくて仕方が無くなっていま した。 3.試聴機器とオーディオルーム
私はオーディオだけではなく、ビジュアルも一緒に楽しんでいますので、ここでは
両方一緒に載せておきます。オーディオ好きな方にとっては、訳の分からない機器も
あると思いますがご容赦を。
○ スピーカー ウィルソンオーディオ X−1グランドスラム ○ トランスポート エソテリック P−0(電源ケーブル:ドミナスAC) ○ DAC ワディア ワディア9 ( 〃 :ゴールドムンドパワーコードS) ○ プリアンプ ジェフローランド コヒレンスU ○ パワーアンプ ジェフローランド モデル9T (電源ケーブル:オーディオクエスト) ○ サラウンドプロセッサー EAD シアターマスター オベーション ( 〃 :ゴールドムンドパワーコードS) ○ サラウンドスピーカー ウィルソンオーディオ WITT ○ サラウンド用アンプ ナカミチ PAー70CE ○ DVDプレーヤー パイオニア DV−AX10 ( 〃 :オーディオクエスト) ○ プロジェクター ソニー VPH−G70QJ ( 〃 :カルダスゴールデンパワーケーブル) ○ スクリーン スチュワート HD130(150インチ4:3) ○ スピーカーケーブル カルダスヘックスリンクゴールデン5C(2m) ○ 接続ケーブル トランスポート〜DAC オーディオクエスト オプトリンクU DAC〜プリアンプ カルダスゴールデンリファレンス(1m) プリアンプ〜パワーアンプ レイオーディオバランスケーブル(6m) ○ 電源レギュレーター シナノ HSR−510(トランスポート、DACに使用) ○ ラック関係 ゾーセカス(パワーアンプ、プリアンプ、トランスポート、 DACに全面使用)
私のオーディオルームは、母屋から離れた一戸建ての住宅になっています。農地法
や建築法などいろいろとあった末に、今のような一戸建てになってしまいました。
専用のオーディールームですから、中も外もそのためだけに作りました。 4.コニサー4.0vsコヒレンスU(試聴編)
さて、いよいよコニサー4.0の試聴記事を書く段になりました。今まで読んでい
ただいた皆様、ありがとうございます。ここからは、川又さんが良く試聴に使うソフ
トと自分の普段聴いているソフトを利用して、両者の違いを述べてみたいと思います。 ○「大貫妙子/アトラクシオン」から5曲目「四季」
これはもう皆さんにお馴染みの曲かと思います。イントロのアコースティックギ
ターとウッドベースのハーモニーにハンドベルの流れるような音色、そして、大貫妙
子の浮かび上がるようなボーカル。これを中心に聴きます。 そして、同じようにウッドベースでも、指が弦を弾く音と弾かれた弦が残す余韻の 違いがはっきりと判別できます。ウッドベースの方が、低音域への展開なので、弾かれた 弦の震える様子がよく分かります。驚いているところに、さらなる追い打ちが!そ う、ハンドベルです。 まるで目の前で実物が鳴っているように鮮やかな音で鳴り出したのです。「チリリリリーン」 そのハンドベルの響きが消えるか消えないかのうちに、大貫妙子の艶やかなボーカル が被さってきます。「つないだ手に夏の匂い、海へと続く道…」 先ほど強い音と思ったのがここで分かりました。今までよりもボーカルの密度がセ ンターに凝縮されたからだったのです。スピーカー中央から、大貫妙子の声が語りか けてくるようです。アコースティックギターやウッドベースも密度が凝縮されたため に、今まで以上にリアリティが増しているようです。 驚いてばかりはいられませんので、次にコヒレンスUにつなぎ替えて聞き直しま す。 イントロが流れ出したとたんに感じたのは、聞き慣れた音で「ほっ」とする音だとい うことです。コニサー4.0よりも一つ一つの音を明確にしない代わりに、余韻がき れいに抜けていきます。聞き慣れた音ということもありますが、コニサー4.0より も聞き易いというか、集中して聴かなくてもいい音です。 ○「ロリポップ」から1曲目「ワルツ<金と銀>」
これもお馴染みの「ワルツ<金と銀>」です。 ここで、コヒレンスUへ切り替えます。コヒレンスUで聴く「ワルツ<金と銀>」 は、バイオリンを強調するわけでもなく、かといって、全体に埋もれてしまうわけで もなく、きれいなメロディーラインを聴かせてくれます。例のトゥティから演 奏が急激に止まる部分では、コニサー4.0ほどではありませんが、余韻がきれいに 抜けていく様子が感じられます。 余韻までも厳密に再現しようとするコニサー4.0と余韻を美しく聴かせようとする コヒレンスUとの違いでしょうか。 ちなみに、この曲の出だしの部分にはハープが入っているのですが、このハープの 音の余韻がどれだけ広がるか、またハープがどれだけ奥に位置するかもチェックに使 うことができます。私はこのチェックをしたために、ドミナスACをP−0に使う羽目 になってしまいました。どうしてデジタル信号しか流れていないトランスポートの電 源ケーブルを替えるだけであれほどまでに音が変わってしまうのでしょうか。不思議 です。P−0にドミナスACはベストマッチといっていいでしょう。 ○「フォープレイ」から1曲目「チャント」 これもお馴染み「フォープレイ」です。聞き所はやはり、出だしのバスドラの一発 でしょう。 さらに、3分ぐらい経ってからのコーラスとベース、ドラムが重なり合う場面での迫 力あるサウンド展開でしょうか。 コニサー4.0で聴くバスドラは、一聴すると軽い音のように聞こえます。バスド ラと言うよりも、オーケストラのティンパニーのような感じの軽さがあります。その 軽さを感じさせながらも、ドラムの皮が震えながら音が減衰していくのが感じられま す。きっと微少レベルのリニアリティーが優れているのでしょう。「微少レベルのリ ニアリティー」という言葉は、CDプレーヤーやDAコンバーターなどのデジタル機器 でよく使われますが、プリアンプで感じたのは初めてでした。もしくは、アメリカの オーディオ雑誌的に言うならば、「ノイズフロアーの低減」と言うのでしょうか。 コヒレンスUで聴く「フォープレイ」のバスドラは、適度な重さがあり、一聴して バスドラと分かるものです。コニサー4.0と比べると音のスピード感こそ劣るもの の重厚感という点では上回っています。コニサー4.0のように、コーラス、ベー ス、ドラムがそれぞれ分離して迫って来るというのではなく、それぞれが程良くブレ ンドされて迫ってくる感じです。 同じような音量でも、コニサー4.0の方が、耳にきつく感じることが多くありま す。このようなフュージョン系の音楽では、コニサー4.0の音離れの良さがそう感 じさせてしまうのでしょうね。もっとも、音量が大きすぎるせいもありますが…。 (この曲をかけているときは、隣の人と話しても大声を出さないと良く分からないほ どです) ○「サラ・ブライトマン/タイム・トゥ・セイ・グッバイ」から1曲目「タイム・ トゥ・セイ・グッバイ」 こちらもお馴染みの曲です。ノーチラスシリーズのデモの際は良く流れていました ね。 この曲でもサラ・ブライトマンとアンドレア・ボチェッリのボーカルは、中央に定位 し(ボチェッリは若干左より)声に張りがあります。大貫妙子の時と同じように、定 位が凝縮されたために二人の声の微妙なニュアンスが分かります。その分、ボーカル だけに神経が集中してしまい、バックに流れるオーケストラのメロディーには関心が 薄くなるような気がします。別に音が弱くなるとか薄くなるわけではないのですが、 ボーカルの力強さとの対比で、薄く感じてしまうのでしょう。 それが、コヒレンスUですとうまくマッチングして、出だしの弦も美しく聞こえま すし、ボーカルとオーケストラともうまくミックスして聞こえます。 プリアンプに選別機能があるわけではないのですが、コニサー4.0は主にメイン となるボーカルに対して、コヒレンスUは両方に同じようにスポットライトを当てて いる感じがします。 ○「イッツ・オンリー・ア・バラード/中西保志」から1曲目「最後の雨」
私の大好きな1曲です。録音も良く、チェック用としても活用しています。 ステレオサウンド誌で評論家諸氏が、「感情のひだまでもあらわにするようなアンプ」 とコニサー3.0の試聴で書いていましたが、まさにその意味が分かるような気 がしました。弟分の4.0でこうですから、兄貴分の3.0はいったいどんな音がす ることやら…。 そんな思いを抱きながら、コヒレンスUで中西保志を聴くと、いつも通りの中西保 志でした。切々と情感を込めて歌う彼のボーカルには思わず涙してしまいます。ここ でもコニサー4.0の時にはあまり感じなかったバックのサウンドとの調和も感じる ことができます。 やはり、コニサー4.0は、その音楽その音楽でメインの音に対して自動的にス ポットライトが当たるようになっているのでしょう。コヒレンスUと聴き比べるとこ う感ぜざるを得ません。よく言われる音の出し方の違いなのでしょう。
この後も何枚もCDを聴き比べたのですが、私にはコニサー4.0とコヒレンスU
との違いが次のように感じました。 コヒレンスUで聴く「四季」は、竹藪をバックに従えて、日本庭園のような場所 で、ボーカルの大貫妙子を中心として、コンサートのようにその後ろにアコース ティックギター、ウッドベース、パーカッション、ストリングスが並んで演奏してい るという感じです。観客の視線は常に後ろの竹藪を視界にとらえながら、その前の ミュージシャンたちに焦点が合います。 少し焦点をはずしても、後ろの竹藪があるので安心感があります。もしくは、ステー ジ上で演奏しているので、後ろには壁があると考えてもらっても結構です。定位して いる音と音の間、またはその後ろ側にも何かしらつながりがあるような感じがするの です。 ところが、コニサー4.0で聴く「四季」はこう聞こえます。地中海をバックにし た小高い丘の上でミュージシャンたちが演奏しているところを想像して下さい。太陽 は燦々と降り注ぎます。周りには焦点を合わせるような障害物はありませんから、視 界は無制限といえます。その中に、ミュージシャンたちが演奏しているのです。まる で、浮かび上がるように。 直接的な音はもちろんですが、その音の余韻が空のどこまでも広がっていく感じがし ます。 コヒレンスUの限定された空間での広がりではなくて、その限定が解き放されたよう な感じがするのです。 分かっていただけたでしょうか。 5.コニサー4.0vsコヒレンスU(使い勝手編)
これはもう圧倒的にコヒレンスUが優れています。 次に、これはこの製品だけのことかもしれませんが、バランス入力時にハムが出ま した。(コニサーは通常2番ホットに対してコヒレンスは3番ホット、そしてコニサー は アンバランス伝送ということから同様な症例は他でもありました。設定を変更すれ ばまったく発生しませんのでご安心下さい。川又より) 川又さんに相談したところ、製品の構造上、ハムが出る場合もあるとのこと。今回 は、バランス入力をあきらめ、アクロテックの6Nピンケーブルで入力しました。内 部回路がアンバラですからしょうがないのでしょうか。
最後に大きな問題が。といっても私が実際に購入するとしたらと言うことですが。 6.終わりに 2週間という短いようで長い、いや、長いようで短いモニター期間でした。友人に 聴かせるために借りたものでしたが、その大半は私が聴いていました。なぜかって? 友人は、コヒレンスUのデザインも好きで、音はコニサー4.0の方が優れているこ とは認めながらも、デザイン面での好みとパワーアンプにモデル8SPを使っている ために純正組み合わせへの憧れが優先し、コヒレンスUを購入してしまったからで す。 今回は、買おうか買うまいか非常に悩みました。何度も川又さんに特別価格を提示 してもらおうと思いました。しかし、終わりににもあるように、いくつかの不備も あったし、何より大きかったのは、今までコヒレンスUを愛用してきた思い入れがあ るからでした。
コニサー4.0の音は嫌いではないですし、求める音の方向性から言っても間違い
ではないと思います。でも、私は、車で言うといつもスポーツカーに乗っていたい人
間ではありません。高速をハイスピードでクルージングできる車の方が好みです。 今回のモニターは、川又さんとスキャンテックのご厚意によって実現したもので す。この場を借りまして御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございま した。 |