《HAL's Monitor Report》
No.0021 - 2000/08/24
四国 阿波の国の住人 様 モニター対象製品 PAD システムエンハンサー Rev.B 〇自己紹介 四国 阿波の国の住人 ポップスも落語もJAZZもグレゴリア聖歌もルチアーノ・ベリオも聞くけれど、 私にとって、一番大事な音楽は、J.S.Bachです。E.ヨッフムの「道徳的規範とな る音楽である」という言葉を自分で納得したくて聞き続けています。 【概要】
PAD のシステムエンハンサー Rev.Bをオーディオフィジックのカルデラ(スピー
カー)、 Spectral(アンプ等)+MIT(ケーブル)で構成したシステムにおいて連続演
奏する処理を行った。この結果、ノイズフロアの低下により、聴感上知覚できる
空間が拡大し、また、楽音がより自然に明確に提示された。この変化は、アンプ
などの機器を交換した時の変化量に比べれば僅かであり、また、充分な演奏時間
を必要とするが、質的には本製品でしか得られない独特の効果が認められた。な
お、我が家のシステムの音質を一定の水準に保つためには、8時間×2回の処理
が1月に1回必要であると考えられた。 【はじめに】 取説によれば、本製品は、数時間演奏する事によりシステムの状態を“正しく” 整えるという。本製品の演奏によるシステムの音質変化を評価する場合、比較の 基準は、数時間以前の音なので、評価は困難をともなう事が予想された。また、 オーディオファイルは、このようなアクセサリーの使用による音の違いが判らな いと表明することを恥とする心理が働くために暗示にかかりやすい傾向があると 考えられ、本製品の音質改善効果に関しては、健康な懐疑の目を向けて、十分検 討する必要があると考えた。実際、システムエンハンサーに関しては、“裸の王 様”現象を、私は、密かに危惧している。そこで、エンハンサーに関するこれま での経験を踏まえ、本製品の使用した際にシステムの音質は変化するのか?その 変化は改善効果であるか?さまざまなシステムでも同様な効果が期待できるのか を検討した。 【システム】 SPEAKER SYSTEM Audiophisic CARDELA II POWER AMPLIFIER :Spectral DMA-150 PRE AMPLIFIER :Spectral DMA-20 D/A CONVERTER Spectral SDR-2000Pro CD TRANSPORT Spectral SDR1000SL をトランスポートとして使用 RECORD PLAYER :IMMEDIA RPM-2 + Graham engineering #2 PICUP-CARTRIDGE Lyra Herikon SYSTEM RACK :YAMAHA Dシリーズ、天然檜の厚板(3寸)等 SPEAKER CABLE:MIT MH750e+ DIGITAL CABLE :MIT Reference Digital AC POWER CABLE :MIT Z-cordII、 AC POWER LINE TREATMENT DEVICE :MIT Stabilizer II INTERCONNECT CABLE MIT e+ 注:これまでPADのシステムエンハンサーRev.Aにて月1回処理を行ってきた。比較試聴に用いたCD:Bachのカンタータ、ピアノ曲 その他。HALへのレポートな ので共通言語としてヨーヨーマのシンプリーバロック。桂米朝の落語のCD(落語 の CDとはと訝しく思う人が多いかとは思うが、米朝が喋らずに動作だけの場合に どれだけ気配が伝わってくるかがポイントとなる。また、システムによっては、 無音部分と、声の部分において背景ノイズが明確に異なる場合があり混変調歪み のチェックにも有用である)他に、カサンドラ・ウイルソン、コラ・ボケール、 ピアソラなど多数 【結果および考察】 〇我が家のシステムで必要とした処理時間
我が屋のSpectral―MITのシステムは、これまでもPADのエンハンサー Rev.Aで
1月に1回程度、定期的に処理を行ってきている。従って今回のエンハンサー
Rev.Bによる処理は、始めてシステムをバーンインする場合とは異なっている事に
注意して頂きたい。 〇エンハンサー処理によリどのように変化したのか 聴感上のノイズが減少した。ここでいうノイズは、サウンドステージを埋め尽 くしている"靄"のようなものである。本製品を演奏することで"靄"が晴れた。本 製品の演奏前にはその"靄"の存在には気づきにくいように思う。演奏後には、音 場の見通しが良くなり、サウンドステージの拡大を意識する事になった。天井が 高くなり、左右、奥行きが広くなった。また、ノイズフロアが下がった事により、 一つ一つの楽音の存在が、際立った。この際立ち方は、コントラスト、輪郭が強 調されるというものではない。そこにあることを単に提示するだけである事を強 調しておきたい。また、高域が滑らかになり、聴感上は、滑らかな、さりげない 表現に変化した。ボーカルにおいては子音が滑らかに、あるいは発音の過程が自 然に提示された。そう言う意味では、これまで使用してきたシステムエンハンサー Rev.Aと結果的に得られる音質は同様であるが、得られた透明感は、 Rev.Bの方が 少し高いように感じた。エンハンサー処理をしなかった場合に比べたらシステム の透明感は格段に上昇するが、Rev.AとRev.Bの違いは必ずしも大きい物ではなか った。 また、エンハンサー処理による音質変化は、アンプやコンバーター、ケーブル などの機器を交換した場合に比べると必ずしも大きくはないが、システムをある 一定の状態に整える効果は他の機器やアクセサリーには求め得ない物であり、日 常のメインテナンスの一環として、また、機器選定の時のコンディショニングの ためのツールとして有用であると考えられた。 以上に述べた事は、ヨーヨーマでも米朝でも Bachのカンタータその他でも同様 であった。一つ一つの楽音がすっくと立つ感じである。特に米朝の落語では透明 感の高まりにより、無音部分の気配がより明瞭に伝わってくる。カンタータでは 演奏者達の配置がより明瞭になり、激しい怒りや悲しみなどの、言わば“負”の 感情表現も明瞭となる。ピアソラのリズムが、息詰るようにではなくすんなりと 提示されるなど表現の幅が広がり、より自然になったことが聞き取れた。ベリオ の歌曲で、キャシー・バーバリアンの驚異的な声のバリエーションが見事に提示 された。脱帽! システムの持つ音質を評価するに当たって、私は、この様な表現の幅の広がり を最大のポイントにしている。解像力の高さ―子音の自然な提示、激しい―穏や か、柔らかな―硬質な、静かな―煩い、歓喜―怒り・悲しみ こう言った一般には 相容れないと考えられている対極の表現が(それがソースに入っているものなら) 自然に出てくるようになるのがより高い次元の再生であると私は、考えているが、 本製品による処理によりこの点に関して改善が見られた。 これまで、1月に一回、定期的にエンハンサー(Rev.A)処理を行ってきていた ので、同じく、始めのRev.Bの処理から一月後に再度エンハンサー処理を行った。 やはり初回と同じく、処理以前には気がついていない"靄"が消えるという音質変 化が認められた。従って、通常の使用ではシステムは何らかの(PADのエンハンサー によってのみ?)可逆的な音質変化を起こしており、定期的にエンハンサー処理 をする事により一定水準の音質が得られる事が示唆された。 〇カルダスのゴールデンリファレンスでの結果 また、大場商事様からカルダスのゴールデンリファレンスのACケーブル、イン ターコネクト(RCAピン、バランス)、スピーカーケーブルをお借りし、試聴を行 った。ケーブルは何れも殆ど新品であり、従って全く始めてバーンインを行う場 合に相当する。処理前には、スピード感 /テンポ感が遅いために、"乗れない"モ タツキ感があり、また、僅かに輝く高域の強調感の為にメリハリが付き過ぎるき らいがあり、そのために、少しボリウムを上げると僅かながら喧しさを感じる面 が見られた。そこで、本製品を、夜間、昼間流しつづける処理を行った。8時間 処理の 3回目の前後でも音質変化が認められたので、音質が安定するまで更に処 理を続けたところ8回目にようやく安定した事が認められた。この処理の結果、 楽音の際立ちの明確さが自然になった。このゴールデンリファレンスは、空間感 は広いのであるが、演奏ノイズや観客からのノイズを控えめに提示し、また音を 楽器単位でまとめて提示する傾向が認められた。また充分な解像力を持ちながら、 子音が強調されにくいと言う美点も示してくれた。 MITのケーブルだと音楽は、音の、単音の集まりからなっていることを示される ように感じるが、カルダスのゴールデンリファレンスの場合は、演奏会場で演奏 に集中して聞き入っている感じに聞えると言ったら良いだろうと感じた。もしも、 カルダスのゴールデンリファレンスもシステムエンハンサー処理を行わなければ、 高域の強調された、テンポ感の遅い、モタモタした面だけしか聞く事は出来なか ったであろうが、本製品により、ボーカルや弦の滑らかな表現が高い次元で可能 であり、かつ、乗りの良い面を見せてくれたのである。 新品のカルダスのケーブルではエンハンサー処理による音質安定に8時間×8 回もかかってしまった。一方、私の Spectral-MITのシステムでは8時間×2回で 安定した。これは、これまでに一月に 1回程度エンハンサー Rev Aで処理を続け てきたからであろうと考えられた。従って、始めての機器をシステムに導入する 場合には64時間程度のエンハンサー処理が必要であると考えられる。 〇エンハンサー(Rev.A)処理により悪化した経験
過去のシステムエンハンサーRev.Aの使用経験を述べると、本製品の演奏により
音は変化するが、必ずしも"良い"方向に変化するだけではない場合があることも
報告しておきたい。結果として詰まらない音に収束する事もあるのである。本製
品の繰り返し演奏により安定した音がそのシステムの本来の音であると考えるな
らば、詰まらない音になったそのシステムは,"悪い"システムである事になる。従
って明確な商品名をここに示す事は憚られるが、 "私のシステムに"国産の某高級
アンプメーカーのステレオパワーアンプ、また、某オーディオケーブルを組みこ
んだ時がまさにこの不幸な例であった。 我が家のSpectral―MITのシステムにおけるエンハンサー処理による音質変化を 目の当たりにすると、エンハンサー処理による聴感上の変化を単なる“気のせい” で説明するのは困難であると考えられる。とはいえ、【始めに】で述べたように、 評価の困難さのために音質変化は単なる“思いこみ”あるいは“気のせい”であ る可能性を完全に否定する事はできない。しかしながら、一方で良いはずである に違いないと思って聞き始めた某パワーアンプや某ケーブルにおいて、この様な “改悪”効果が見られた事は、逆に、私が感じ取る事ができた改善効果が単なる “思い込み”に起因するものではない事を示唆していると考えられた。 〇システムエンハンサーの効果の理論的背景
PADのジムオッドが述べている、「低温処理により整列した原子レベルの配列が、
常温に戻しても維持される」とするクライオジェニックの理論は、私には理解す
ることが困難である。従って、この CDの演奏による音質改善に関して、なぜこの
様な変化が起きるのかに関しては、私には全く説明する言葉を持たない。数年前、
はじめに(Rev.Aを)試した時も、変化するはずが無いと思い、批判的に、時間(1
月)を置いてはエンハンサーの演奏、試聴を繰り返した。どう批判的に考えて聞
いてもエンハンサーの演奏のたびに明らかに音は変化した。改善した。しかしな
がら、これが、彼の理論の正しさを証明する物であるのかどうか私は判断できな
いでいる。ただ、オーディオの場合、設計者の考えはどうあれ、結果(出てくる
音)が良ければ良いアイテムであるとしか判断できない。「白い猫でも黒い猫で
も、ねずみを取る猫は良い猫」なのである。勿論、オーディオ機器は科学技術を
基にしたものであるから、当然機器選択の際には、開発者の理論は、納得できる
方が当然精神衛生上ベターである。しかしながら、本製品は、理論は、理解でき
ないが、音は納得できると言う場合もあるという例だと私は考えている。本製品
がどのような働きをしているのかを科学的な言葉で説明する事を、私は上に書い
た事情で放棄するが、感覚的には、以下の様に書くことはできる(あくまでも感覚
的に)。「日ごろ演奏している楽音には何らかの"偏り?"がありその結果システム
全体に極僅かの変位??を残す。これは蓄積し???、聴感上"靄"が聞えるよう
になる。 PADのシステムエンハンサーはこのシステム内に残った"靄"の原因であ
る蓄積した変位を解消することができる。」もうオカルト的な話しで恐縮である
が、こう考えると説明がつきそうな感じなのである。 〇私が薦める実際の使用法 このようにエンハンサーRev.Bは、(PADの解説には釈然としないものを感じな がらも)現在、我がリスニングルームでは必須のアイテムとなっている。実際の 使用にあたっては、音質変化が収束するまで本製品の演奏を続けるべきである事 を私は強調したい。取説には確かに 5回のリピートでよろしいと明記してあるが、 実際には一晩の演奏を1単位と考え、変化を確認しながら、音が落ち着くまで数日 間の演奏を行う必要があると私は考えている。エンハンサー処理によるシステム の音質変化は必ずしも“良い方向”にだけ動くのではなく、元に戻ったり、逆に 悪くなったりを繰り返しながら次第に変動幅は小さくなり、ある一定の音質に収 束していく。従って、安定した音質になるまで充分待つ方が良いと考えられる。 一旦、安定するとあとは、月に一回程度の処理で落ち着くことになる。 〇他のユーザーレポート 他のユーザーのモニターレポートを読んでみても、私の感じた変化とほぼ同様な 結果であると考えられた。詳しくは各レポートを御確認下さい。 〇音質変化が聞き取れなかった例
実際に本製品を使用して、変化がなかったとする人も私の知人に複数いる。 【読者へのメッセージ】 ただ、上に述べたような音質変化は、実際に本製品を使っていただき聴感上の 変化を確認して頂かないとなかなか納得していただけない内容であることは、私 自身の経験に照らしても容易に想像できます。ですから、PADのジムオッドの理論 が素直に納得できる方、あるいは納得はできないけど、システムの音質改善さえ すればとお考えの方は、一度本製品を使いになる事をお勧めします。 【謝辞】 最後になりましたが、本製品をプレゼント頂きました、川又店長とシーエスフィー ルド様、また、カルダスのゴールデンリファレンスのケーブル類の試聴の機会を 与えてくださった大場商事様に深く感謝いたします。 |